サッカー・ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会が11日に開幕する。4年に1度のビッグイベントだけに、商機ととらえる企業が現地ツアーや関連グッズなどの販売に力を入れている。しかし会場が遠いことや、前哨戦で日本代表の敗退が続いたことなどから、前回06年のドイツ大会ほどの盛り上がりはない。日本代表が5月30日のイングランド戦で善戦するなど盛り返す動きもあり、各社は本番の熱戦に期待している。【井出晋平】
JTBが4月に発売した0~1泊4日の「弾丸ツアー」(約39万~40万円)は14日の日本-カメルーン戦、19日の日本-オランダ戦ともに定員200人に対し予約は約3割。観光とセットにした5泊8日のツアー(約56万円)も予約は定員の約6割。同社は「日本から遠いのが原因」と分析。0泊2日で約25万円のドイツ大会より高額で日数もかかることがハードルを上げている。
会場が遠ければ自宅観戦が増えそうだが、全64試合を放送する衛星放送「スカパー!」は新規加入者数が伸び悩む。W杯開催年は毎回、直前の5月に増加するが、今年は前年同月比約6%減少。今大会は初めて3D(三次元)映像に対応した放送も導入し、起爆剤と期待されたが、3D機器が発売直後で普及していないため反応は今一つという。
食事しながら大画面で観戦できるスポーツバーも予約は低調。東京・恵比寿の「フットニック」はカメルーン戦の立食の飲食料金を5000円から3000円に値下げした。「(試合開始が午後11時からで)平日深夜に外で観戦しようというファンが減っているようだ」(同店)という。
グッズ販売も振るわない。百貨店などで国際サッカー連盟(FIFA)のライセンス商品や日本代表グッズの販売コーナーを運営する「ジェイアクセス」(川崎市)によると、グッズの売上高はドイツ大会と比べ約2割少なく「初戦で良い試合をすれば、コア(熱心)なサッカーファン以外も盛り上がるはず」と期待する。W杯グッズを販売する小田急百貨店新宿店(東京都新宿区)も「今後の盛り上がりに期待したい」と話す。
W杯商戦の国内の経済効果について、第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「06年のドイツ大会の試算約2500億円より確実に少ない」と指摘し「日本代表がなかなか勝てないことに加え、景気悪化で06年より消費マインドが冷え込んでいる影響もある」と分析している。
毎日新聞 2010年6月4日 東京朝刊