THE COLLECTORS



THE COLLECTORSの『音楽を続けるということ』、web完全版インタビュー


 1986年、ザ・フーやピンク・フロイド等ブリティッシュ・ロック/サイケ・ロックに影響を受けた加藤ひさし(Vo)と古市コータロー(Gu)を中心に結成。翌87年にアルバム『僕はコレクター』でメジャーデビュー。91年にリズム隊が小里誠(B)と阿部耕作(Dr)にメンバーチェンジし現メンバーとなる。バンド結成20周年の2006年には日比谷野音にて記念ライヴ。翌年、傑作アルバム『東京虫バグズ』をリリース。2009年よりスタートした加藤ひさしと古市コータローによるポッドキャスト『池袋交差点24時』も話題となっている。今年、約2年ぶりのオリジナル・アルバム『青春ミラー(キミを想う長い午後)』をリリース。恒例の渋谷クラブクアトロ・マンスリーライヴも4月から8月まで開催決定!
  モッズ・シーンのみならずならず、数多くのミュージシャンからリスペクトされている日本のロック・バンドの重鎮〈ザ・コレクターズ〉のリーダーでありVo/Gtの加藤ひさしに話を訊いた。

『青春ミラー(キミを想う長い午後)』
Columbia Music Entertainment
COCP-36086
4/7 Release



  ロックンロールって、生活に一番近い所にある、バイタリティある音楽

■『青春ミラー(キミを想う長い午後)』、今回も素晴らしいアルバムでした。毎回いいんですけどね。
加藤:
毎回いいからさ。ちょっと違う表現ないの?
■……今回も良かったとしか言えないです(苦笑)。前作『東京虫BUGS』も良かったし。
加藤:
だから、ずっと良いんだって。
■そのコンスタントに、2年おきぐらいにちゃんと出しているのも凄いですよね。
加藤:
しかも同じレコード会社(コロムビア)からね。今のご時世にね。
■その秘訣は何なのでしょうか?
加藤:
その質問はよく訊かれるんで、色々考えたんだけど……同期のバンドって結構いるんだけど、ザ・プライベーツとかレピッシュとか、ブルーハーツもそうだし。まぁブルーハーツはフロントの2人はそのままでバンド名は変わってるけど、相変わらず人気があっていいけど、他の連中はメジャーから離れたり、同じようには活動できてないじゃない。唯一、BUCK-TICKだけだよ。デビューした87年も、(アルバム)デビュー日も11月21日リリースで一緒だから。同級生ではBUCK-TICKだけだね。俺達は一回メンバー変わってるけど、コンスタントにずっと活動できているのは。
■活動休止もすることなくですね。
加藤:
自分達のペースでね。色々訊かれるんだけど、あまり政治力とかでは続けられないよ、やっぱり。相手はCDを作ってくれる企業だし、その間に事務所もあるわけだし、自分達は生活してかなきゃいけないわけだし。となったら、それができるだけの実力があるってことだよ。コレクターズってそんなすごい大ヒットがあって、その曲をみんな聴きにコンサートに来るようなバンドじゃないでしょ。何が言いたいかって、才能があるってことな。
■はい(苦笑)。
加藤:
才能があるから、みんながいつまでも「いつか行けるんじゃないの!? もったいない。もうちょっと頑張ってみよう」と思ってくれるんじゃないかね。
■あー、夢を見られる部分がいつまでもあると。
加藤:
そうそう。「今回、アレだったけど、次は絶対じゃない」とか。それが「今回のアルバムはなんかピンと来ないなぁ」ってのが2作も続いたらさ、数字的にまぁまぁイケてたとしても、周りが続かないと思うよ。
■モチベーション的な部分ですね。
加藤:
モチベーション的な部分もそうだし、その辺がコレクターズは運も良かったし、それだけやっぱりバンドやるのに向いてたんだろうね。
■まぁそういうことでしょうけど(苦笑)。いやー、今作の『青春ミラー』ってタイトルから、なかなかキてますね(笑)。
加藤:
それはどういうふうにキてるの?
■語感的な響きと、言葉の選び方といい。
加藤:
それはちょっと照れるの?
■照れも若干、ありますね。
加藤:
そういうとこを知りたいんだよね。というのは、最近、OKAMOTO'Sとか神聖かまってちゃんとかさ、一緒にライヴ演ったりもするわけよ。明らかにロック感が違ってきてんのよ。そりゃそうだよ、俺達が歳とっちゃってるし。それと同じように俺達の年上のシーナ&ロケッツとライヴ演ったりしても、そういうロック感の差みたいなのを感じるわけ。だから若い連中が、コレクターズの『青春ミラー』とかの響きに対して、どんなふうに思うのか、すごく聞きたくて。
■それは、やっぱり天才だなぁと思う反面、ちょっと外したら怖いなっていう感じです(笑)。
加藤:
それは高校野球で言うところのスクイズバントと一緒だね(笑)。スクイズ失敗ほどカッコ悪いものはないからね。
■僕的にはスクイズ成功してると思います。
加藤:
今回も吉田仁さんがプロデュースで、ずっとやってくれてて。彼はコレクターズのことをよく解ってくれてるし、世代も近いんだよ。俺は『青春ミラー』ってタイトル、すごくいいなと思ったんだけど、仁さんはその辺がピンと来なかったみたいね。だから副題を付けた方がいいって話になって、(キミを想う長い午後)っていう副題を付けることよって、詞の内容がタイトルから垣間見れるようなモノにしようと。案外そういうのって大事だなと思った。俺の中では『青春ミラー』はカッコいいと思って迷いも無く付けてるけど、独りよがりになるから。作者は120%解って作ってるんだけど、聴き手は多分、作者の20%ぐらいしか解んないと思うのね。
■深いとこは解らないですからね。
加藤:
だからそういう意味で、俺が付けたモノが案外伝わらないのは、俺としても残念なのよ。
■でもこの『青春ミラー』って、良いタイトルだと思います。しかも今回、パンチのある曲が多いなと。歌詞も歌の内容も。
加藤:
パンチある。
■“青春ミラー”から“明るい未来を”“エコロジー”“トランポリン”と最初聴いた時、クラクラしましたけどね(笑)。
加藤:
いきなり前菜から油モノが出てきたみたいな感じ?いきなりこれかよぉ〜、またこれ!みたいな。
■それだけパンチあって、破壊力あるなぁって。
加藤:
特に“エコロジー”の破壊力なのかなぁ。
■“エコロジー”はすごいですね。エコ批判ですもんね。
加藤:
うん、エコ批判。
■僕、これすごく共感しました。
加藤:
共感するでしょ?
■こういうこと歌ってくれる人、早く出てこないかなぁと思ってたので。
加藤:
もうみんなに言われた。伊藤銀次さんにもそう言われたし、大阪のFM局の人からも「よく歌ってくれた!」ってメールが来たり。多分、リリースされたら俺、NPOに袋叩きだね(笑)。
■でも度が過ぎたエコロジーってありますからね。歌詞にある「エコ税 エコバッグ エコポイント」とか、うさんくさいですからね。
加藤:
うさんくさいんだよ。だからエコロジー自体を批判しているわけではなくて、エコロジーに便乗した電化製品売るためのエコポイントとか、みんながエコって言い始めて、ノっちゃってるおばちゃんの顔とか見てられない。
■政治家もそうですからね。
加藤:
多分、その利権で儲けているからね。儲けた部分で、世の中良くなるように還元してくれるならいいけど、如何にも「地球のために良い事してます」っていうのが気に入らない。何して儲けてもいいけど「みんなの為にがんばって儲けてます」って嘘言って、儲けてる奴が一番嫌い。
■そこの真理を暴きたいわけですね。
加藤:
暴きたいね。こういうのは、その裏には利権が蠢いてるからね。
■そこをハッキリ歌えるかどうかが、ロックバンドであるかどうかだと思いますけどね。
加藤:
まさにそう思うよ。ロックンロールって、俺の中で生活に一番近い所にある、バイタリティある音楽だと思ってんのね。そういうモノって、時事ネタがあって当たり前だし、大人が普通に生きてて疑問に思った事を歌にするって、それは非難を受けようと、その人が正しいと思って歌うんだったら、それでいいと思う。ロックはそうでなきゃダメだと思うのよ。
■そうですね。
加藤:
一番コミュニケーションの早い手段としてロックンロールが機能しないと、もう古典だよね。ロックは古典芸能音楽になってしまうと思う。
■そういうことを歌ってくれるのが加藤さんイズムだと思います。この曲、アレンジも素晴らしい。最後の「E C O L O G Y」とかもうバカにしてますね(笑)。
加藤:
まー、でもまだシー・シェパードに比べたら、俺の方が優しいよ。あれ、体当たりばっかりしてんだもん(笑)。彼らの意見も解るけど、暴力で訴えるのはよくないよね。その国の歴史や文化を尊重しつつ、違う手段があるだろうと思うんだけどね。
■日本人のことを全く考えようとしてないですからね。
加藤:
欧米人って一番良くないのは、まだ自分達が地球の真ん中にいると思っていて。まぁ産業革命やルネッサンスを起こした国々ではあるけど、未だにそう思っているのが寂しい。20世紀的な物質主義の中で、イギリスやアメリカが世界をリードしてきたのは確かだし認めるけど、今、中国がここまで台頭してきて、インドとかもそう、アジアに移ってきてる中で、それを認めようとしない、彼らを見てると寂しい気になるね。
■確かに寂しいっていうのはシックリきますね。
加藤:
アジアの中で日本人は、そういうことを一番考えられる人種だと思ってるんだけどね。アジアでは欧米化がどこよりも早く進んだわけだし、アジアの一番端で、アジアを見渡してきたわけじゃない。それでいてヨーロッパやアメリカの良さも憧れてきたんだから。そういう意味で、やっぱり意見を言うべきだよね。だから“エコロジー”は、日本に育った大人が普通に考えてなきゃいけないこと。これ、スタンダードだよ。俺に歌われなくても、そう思ってるだろうけど。

  いつだって新しいモノを歌わなきゃロックじゃないから

■“明るい未来を”もそういう歌ですかね。
加藤:
まぁそうだね。とにかくこの歳になっちゃうと、次の子供にバトンタッチしなきゃいけないっていう気持ちにもなるのよ。まだまだ俺が一番!って部分もあるんだけど、どんどん下が出てくる中で、そういう仕事をしていかなきゃって思うようになったね。次の世代への良い手本とまでは言わないけど、大人が頑張ってるという、コレクターズがひとつの目標みたいになってくれたらいいなと思って。
■そうですね。コレクターズは昔から、明るめの曲を敢えて歌ってきたと思いますが、“明るい未来を”は曲名からも、そういう前向きなことを歌う曲の完成形に感じましたけどね。
加藤:
まぁ“トランポリン”もそうだしね。
■“トランポリン”もすごいですよね。
加藤:
「ずっと 飛んでいたい」って「ずっと 生きていたい」ってことだからね。人生って跳んだり落ちたりしてケガもするんだけど、それをトランポリンに例えると、遊んでケガしてる時って痛くても楽しいんだよ。そう思えば人生に於いて、考え方によっては、そんなに苦しいことでもないわけじゃない。昇ったら下がるに決まってるんだから。楽しい事があったら、悪い事があるに決まってるんだから。それも全部含めた上でトランポリンやってると面白いよねっていう。
■そう言われると深いですね。
加藤:
深いよ。「跳ねても 落ちても」って、そういう意味。
■以前の“SEE-SAW”と通ずる感じもあります?
加藤:
“SEE-SAW”とは全然違う。“SEE-SAW”はもうセックス・ソングだから。彼女を上に乗せるか下にするか?という。“トランポリン”は人生の歌です。
■分かりました。あと今回、一番グッときたのが“ライ麦畑の迷路の中で”ですが。
加藤:
きちゃったんだ。
■(笑)“明るい未来を”でも「サリンジャー」の名前が歌詞に出てきますが。
加藤:
それはサリンジャーが死ぬ前に書いたからね。去年から歌ってしね。
■ライヴで演ってましたからね。
加藤:
今年になって死んじゃったからね……。サリンジャーに呼ばれたね。
■“ライ麦畑の〜”は亡くなってから書きました?
加藤:
うん、亡くなってから。俺、まさか生きてたとは思わなくて。サリンジャーは若い頃にしか本を出してないから。「亡くなった」と聞いて、申し訳ないんだけど「え?まだ生きてたの」と思って。でも92歳だから、もう大往生だねって。やっぱ色々と思い出してね。サリンジャーを読んだ頃の自分を。十代で悶々とした頃。受験に失敗して、バンドも上手く行かないし、女にもフラれたりとかさ。そういう時に共感したモノってたくさんある。ザ・フーのビデオを観て、ギターをぶっ壊すシーンを観てスッキリしたとか、『ライ麦畑でつかまえて』は、そういう自分を形どったモノのひとつであることは確かだよね。
■そういう想いはギッシリ詰まったような歌ですね。
加藤:
その本を読んで、後から思い返したりもして。GREAT3の片寄が高校生の頃、俺がコレクターズの前のバイクってバンドをやってる時に、よくモッズのライヴに出入りしてて、俺と話するようになって、彼は高校生で可愛かったし、俺のこと尊敬してたみたいで、話した時「サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んで泣いたんだ」って話をしてたんだけど、俺はもう20代半ばぐらいだったから「青臭せーな」って(笑)バカにしたのを思い出したりした。自分も片寄の年代の時は、サリンジャーを読んで、そんなふうに思ったんだけど。でも、十代の時期に読まないと何も通じない小説なんだよなって。ティーンネイジの最後、大人になるかならないかって時。世の中が自分の思い通りになると思ってたのに、何ひとつならない。そんな時期に男子が読むと、とてつもなく訴求力のある小説だったなぁって思いだしてね。
■僕も19ぐらいの時に読んだんで解ります。
加藤:
それはいいことですよ。そこを逃すと、同じサリンジャーの小説でも、全く違うふうに感じると思うので。それはフーの“My Generation”とかでもそうだけどさ。ああいう曲を若い内に聴くのと、歳とってから聴くのでは全然違うでしょ。
■そんなバラッドみたいな曲も入ってますが、その次の曲がコータローさんが歌う“twitter”という。これは最先端のネタですね。
加藤:
当たり前じゃない!ロックンロールはいつだって新しいモノを歌わなきゃロックじゃないから。来年歌ったら恥ずかしいと思われるようなモノを歌うのがロック。
■“twitter”も、今だからいいんですよね。
加藤:
そうだよ。こういうの1年後に出したら笑われちゃうから。
■“twitter”も、今年中には落ち着くでしょうしね。
加藤:
やっぱりWEBから出てくるモノは短命だよね。でもそれは敢えて見越して歌わないと。
■加藤さんはtwitterやってるんですか?
加藤:
やるわけないじゃない。
■やってないで歌詞書いてるんですか(笑)。
加藤:
コータロー&ザ・ビザールメンってバンドのMySpaceを管理してんだけど、twitterと同期して飛んでくる奴がいて、それがいっぱい溢れちゃって面倒くさいんだよ。
■でもtwitterは、なんかすごいもんだなと思ったんですよね?
加藤:
全然思わないよ。
■そうですか(笑)。でもこの曲は、twitterを薦めてますよね?
加藤:
コータローがね。
■あ、歌詞はコータローさんなんですか?
加藤:
俺(笑)。でも、あいつそういう流行りもんが好きなんだよ。iPhoneが出りゃiPhoneにするし。だから絶対、twitterも好きだよ。
■まぁiPhoneの人はやってますからね。
加藤:
絶対、やってるよね。
■でもほんと、この春に出すべき。
加藤:
曲だったねー。だからもう狙って作ったんだもん。
■じゃあ、詞も最近、書いたんですか?
加藤:
最後の方に歌入れしたから、すごく最近。ギリギリで書いた。とにかく今を感じられるモノを書きたいと思って。“ライ麦畑の〜”もそうだし。あれも違う詞を考えてたの。でも、とにかくタイムリーなモノを歌いたくて。それは常にそう思ってる。だから何曲かは詞を変えたよ。じゃないと2010年に出たアルバムって気がしないじゃない。
■確かに2010年って感じします。
加藤:
俺の中ではそれが大事。

  いつの時代でも通用するようなモノを作っていけるかが、俺の仕事

■あと、これもすごいなと思ったのが“孤独な素数たち”。
加藤:
素数ね。
■何ごとかと思いました(笑)。
加藤:
君はなに、理系じゃないの?
■理系じゃないですね。どちらかと言えば文系です。
加藤:
じゃあ、全然解んないでしょ?
■解んないことはないですけど……。
加藤:
世の中、割り切れないモノがあって当たり前ってことを歌いたかったんだよ。でもね、数学をちょっと好きな人だったら解るんだけど。「リーマン予想」っていうのがあってね。素数って2、3、5、7…って自分自身以外と1以外で割り切れない数字が素数で、延々続いていくわけだ。ところがある桁では素数が出てこなかったり、また突然素数が出始めたり、円周率のπみたいに延々に続いてくんだけど。それが何か法則性があるような形を持ってるの。その法則を解き明かそうとしてるのが「リーマン予想」。それを研究している数学者がいっぱいいる。それが解き明かされると、宇宙の始まりと終わりの数式というか、方程式に当てはまるんだって。そういうのを夢中で読んでた時期があって。だから素数って、漠然とただ割り切れない数字じゃなくて、何か世の中を構成しているモノのシステムの暗号みたいなモノなんじゃないかなって思われてんのよ。だから単純に数学の上での話じゃないの。
■そうなんですね。
加藤:
だから「闇の中で探している 孤独と孤独を結ぶルール」って歌ってるでしょ。それは、リーマン予想のことなんだよ。孤独と孤独=素数と素数、を結ぶルールを自分は探している。
■そういう法則なんですね。
加藤:
法則なわけ、探してる数学者がいっぱいいる。まだ解明されてないから。
■まだ解明されないモノがあるのもすごい話ですね。
加藤:
だって、円周率だって解んないじゃない。未だにスーパーコンピュータが3.14…って永遠動いてんだよ。解明されないモノっていっぱいあるんだよ。
■……素数の話、熱いですね。
加藤:
これで素数に興味を持つ人が出てくるかもしれない。すごいロマンがあるよね。
■あぁ、確かに壮大な話ですもんね。
加藤:
で、ちょっと知りたくなるでしょ。リーマン予想ってどんな予想だ?って。
■それを、なかなか歌うロックバンドもいないと思いますけどね。
加藤:
だからコレクターズなのよ。歌われちゃったら、コレクターズの十八番がなくなっちゃうから。ブッちぎってるよねー(笑)。初めて聴くでしょ、素数の歌?
■初めてですね(笑)。なんか教育テレビかと思いました。で、“forever and ever”みたいな泣けるバラードも入ってて。
加藤:最後はタイガー・ウッズも登場する“イメージ・トレーニング”。
■“イメージ・トレーニング”もいいですね。これは明日もがんばろうみたいな気になります。
加藤:
なるよね。…なんか今回のアルバム、すごいシャープで僕は好きですね。
■正直、前作がすごく良かったと思うんですよ。
加藤:
『東京虫BUGS』は、メチャクチャ良かった。
■リズムもギターの切れ味が光ってましたね。それもあって、今回、かなり期待して聴いたんですが、前作とはちょっと方向性が違って。そこがまた違う良さがあって。
加藤:
『東京虫BUGS』を作り終わった後、自分が予想していたよりも良かったの。コレクターズのアルバムの中で一番いいんじゃないかって思うぐらい良かったから。なので、今回のアルバムを作る時に大変だったのは、『東京虫BUGS』の壁。
■あぁ、プレッシャーがあったと。
加藤:
自分で『東京虫BUGS』は超えられないと思って。“たよれる男”を超える歌を作れない。
■あの1、2曲目は相当でした。
加藤:
あまりにも強烈でね。もう『東京虫BUGS』の壁がね……今回、一番つらかったのはそこだね。自分でもプレッシャーで。
■だから『東京虫BUGS』と比べるわけではなく、今作にもコレクターズが詰まってると思います。
加藤:
そうだね。だから『東京虫BUGS』の方が好きだって言う人がいてもいい。なぜなら、すごくいいアルバムだったから。今回の『青春ミラー』が好きだって言ってくれれば、それはそれで嬉しいことだよね。自分でプレッシャーがある中で作ったアルバムだから。だから今回のジャケットは、『東京虫BUGS』とは全く違うモノにしようと思って。前はリリーさんのイラストだったのを写真にしようと。だから何もかも『東京虫BUGS』とは違うイメージのアルバム作りをした。
■写真で、加藤さんだけのジャケットってあまり無いんじゃないですか。
加藤:
そうだね。アルバムとしては、1人で立つなんて初めてじゃない。
■そうですね。写真として映るのも久しぶりですね。
加藤:
結構、久しぶりだよ。
■この今までに無い感じもいいですね。
加藤:
ジャケットはすごく気に入ってる。ジャケットは『東京虫BUGS』よりも好き。今回のは、なんかカッコいい。
■これ、鏡の中をグニャって加工してるんですか?
加藤:
それ、加工してるように見えて、そういう形のギターなの。イギリスのアーティストが世界で9本だけ作ったギターで、今は量産始まったんだけど。だから売られてたギターで、ちゃんと弾けるの。ネックもよく見ると、木なんだけどフレットも斜めになってる。けど、ちゃんと弾ける不思議なギター。今回の撮影で、鏡ごしに撮って歪ました感じにしたいと思って。そのギターを持ってる友人から、わざわざ借りて撮影したの。これはプロモーションビデオの中で見れるよ、コータローがプレイするから。
■コラムのタイトルが『音楽を続けるということ』なんですけど、コレクターズは今、23年目ですが、これから先も、ずっと続けていくんでしょうか?
加藤:
続けられたら幸せだよね。みんな色々な意味で続けられなくなるから。周りの同僚のバンドを見てても。一番はやっぱり仕事として成立しなくなると、続けられない。あと、病気になるかもしれない。もしくは誰かが脱退、みたいな事もあるだろうし。もう続けられなくなる理由なんてたくさんあるんだけど、でも自分はこれ以外の事考えられないんだよね。
■シーン全体的にCDが売れなくなってきてる現在、これから先もそうでしょうけど、それはどう考えてますか?
加藤:
ある意味、ロック・ミュージック、ポップ・ミュージックの良い時代って過ぎたんだと思う。クラシック音楽が全盛だった時代があったように、やっぱロック/ポップスにも全盛期ってあって。50年代の終わりから始まったロックンロールが、ビートルズの力を借りて60年代に大爆発を起こして、その後、そのエネルギーで色んなバンドがロック・ビジネスを持ち上げて70、80、90年代と、どんどん巨大になっていって、ひとつエンターテイメントとしてもう極まってしまった。今はピークを過ぎた後……何でもそうだと思うんだけど、ボーリングとか一時、どこでもあったボーリング場が無くなったように、音楽も流行り廃りがあって、ロック・ミュージックも今、刺激がそんな無いんだよね。だから俺は、ロック・ミュージックの質がどうこうとか、その感じはしてなくて。
■そこが原因だって、よく言われますけどね。
加藤:
そういう問題でもなく、ロック・ミュージック自体が持ってる旬の面白さが、もう潮時なのかなって。
■はい(苦笑)、なんか身も蓋もない意見ですが。
加藤:
でも実際、そうだと思う。ただボーリングだって、ボーリング場はあって続いてるわけよ。こうなってくると何が生き残るかって、質が良くて、ロックンロールの楽しみが解る連中を、幾らかでも増やしていくっていう。
■そこをコレクターズはやってるわけですしね。
加藤:
うん、俺が育ったロックの楽しい部分を、いつの時代でも通用するようなモノを作っていけるかが、俺の仕事だなって思ってる。やっぱりオリンピックの競技だってそうで、無くなる競技だって、足される競技だってあるんだから。だからロック・ミュージックも変わっていくわけで、またブームとか来るかもしれないけど。あとは分かり易く、圧倒的にルックスが良くて(笑)、それで大人も耐えうるようなロックンロールを演ってくれる奴が出てきたら、また火が点く気がする。今、お茶の間まで土足で踏み込むパワーが無いじゃない。それがなきゃダメよ、それがあってのロックンロールだもん。
■まぁでもコレクターズもパンチ力はあるんで――。
加藤:
全然あるよ。だから俺、歳とんないようにしないと。
■でも50近いとは思えないですけどね。
加藤:
もう、歩くヒアルロン酸って言われてんだから(笑)。
■あと、インターネットのポッドキャスト『池袋交差点24時』もすごいですよね。
加藤:
破壊力満点だよ。
■あれもあれでコレクターズの一側面ですね。
加藤:
そうだよ。もう本音だから(笑)。
■最後に、加藤さんにとって「音楽を続けるということ」は?
加藤:
生活だよ。君だってそうだろ、これ書かないと食えないでしょ?
■まぁそうですね。
加藤:
だから生活。

■Live Info.■
4/3(土) 仙台 LIVE HOUSE enn
 『LIVING FOUR KICKS 2010 SPRING 〜みちのくツアー〜』
4/4(日) 盛岡 Club Change
 『LIVING FOUR KICKS 2010 SPRING 〜みちのくツアー〜』
4/10(土)〜11(日) 大阪 OSAKA MUSE
 『LIVING FOUR KICKS 2010 SPRING 〜OSAKA MUSE 2 DAYS〜』
4/21(水) 渋谷 ENTERTAINMENT THEATER PLEASURE PLEASURE
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4/25(日) 渋谷クラブクアトロ
 『MONTHLY LIVE 2010“5 Story Rock Show”』
5/2(日) 名古屋CLUB DIAMOND HALL
 『ROCKWAVE BANDSTAND-Rebirth-』
5/3(月・祝) 大阪・心斎橋FAN J TWICE
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5/7(金) 京都 KYOTO MUSE
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5/15(土) Club Citta'川崎
 『30th ANNIVERSRY SPECIAL PARTY MODS MAYDAY '10』
5/30(日) 渋谷クラブクアトロ
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6/6(日) 下北沢GARDEN
 『Shimokitazawa GARDEN 1st Anniversary“KING OF ROCK”』
7/25(日) 渋谷クラブクアトロ
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8/29(日) 渋谷クラブクアトロ
 『MONTHLY LIVE 2010“5 Story Rock Show”』

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Interview&Text : 田代 洋一