金総書記、5回目の大規模粛清断行(下)

 しかし、スパイ組織捏造事件で多くの被害者(処刑者の家族だけで数万人)が生まれ、民心が揺らぐと、金総書記は2000年に同事件を捜査した幹部数十人を一斉に粛清した。「権力に目がくらみ、党と大衆を離間させ、敵の奸計(かんけい)に乗った」というのが理由だった。

 また、金総書記は2004年に権力掌握の動きを見せた張成沢(チャン・ソンテク)組織指導部第1副部長(当時)一派を追放し、06年には市場経済を一部導入した朴奉珠(パク・ボンジュ)首相らを更迭したが、いずれも「血の粛清」というレベルではなかった。しかし、今年初めに貨幣改革失敗の余波で民心が大きく揺らぐと、40年来の側近の朴南基部長を銃殺するなど、再び大規模粛清のカードを切った。北朝鮮内部に詳しい消息筋は、「幹部の不正で人民の生活が苦しいと宣伝している」と指摘した。

 しかし、北朝鮮の雰囲気は過去とは全く異なるという。消息筋は「今や北朝鮮の住民も何が問題かを知っている。幹部は自分たちに何の過ちがあるのかと不服で、住民は粛清があっても何も変わらないと不満を募らせている」と語った。

 最近中国を訪れた北朝鮮住民は、「内部の不安はこれから始まる」とみる人が多い。今年は春に寒さが続き、農作物が冷害による深刻な被害を受け、肥料供給もほぼ中断し、今年の農作物収穫は期待できない状況だ。韓国開発研究院(KDI)は7日、北朝鮮経済の動向に関する最新のリポートで、「北朝鮮のコメ価格が上昇し、為替相場が暴落している」と指摘した。幹部層にも動揺が見られるという。事業所の幹部は従業員の食糧を供給できなければ、ポストから追われる立場に置かれている。

 「朴南基も責任を取って死んだのに、お前は何だ」という抗議が目立つようになり、階級秩序までもが崩壊しつつあるという。チョ・ヨンギ高麗大教授は「権力世襲の過程で、再び『血の粛清』が起きる可能性がある」と指摘した。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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