遠くない将来に

June
08
2010

 正直に告白しますが、収入が多かったときは、食事する時「食べ残し、余剰購入」など意識することもありませんでした。いろいろあって収入が少なくなってくると、「粗食であることに腹がたって」、以前よりもたくさん食べるようになりました(太りました)。そしてもっと収入が少なくなってくると「もったいない」と思うようになり、今では、他人の「無駄」さえも非常に目につくようになってきています。貧乏だと言いたいわけではなくて、今しみじみと、なんて自分は食糧を無駄にしてきたことか、という反省と後悔を感じているわけですね。コンビニなどでも余った弁当やおにぎりは基本的に廃棄処分でしょう。大手のスーパーなどは、販売している食材の賞味期限が近づくと売れなくなるから、惣菜に転嫁して販売する。または、賞味期限の近い食材を格安で卸すこともあります。こういうシステムは非常に有効だなと・・・。辺見庸の「もの食う人びと」なんか読むと、タイの食糧リサイクル!?の様子が生々しく出てきたりしますが、本来、人間にとって尊いものであったはずの食糧が、これほど粗末に扱われている時代なんてなかったと、これだけは断言できます。今の日本の食糧自給率は約40%、韓国が50%、スイス50%、オランダ、イタリアが約60%とこのあたりが、先進国の中では非常に低い国々。私が「もったいない」と感じてる部分は、食品ロス率で、家庭やレストランなどでは約3.5%程度、そしてスーパーやコンビニなどは約10%ほど。しかし、この農水省のデータには、農家が商品作物として成立しないものを投棄してしまう部分を含んでいませんから、正確とは言い難いです。(実際には、米や麦以外の商品作物の約20%が投棄されているというデータもあります。)

 

 このままいけば、アジアや南米、そしてアフリカの人口がこのまま増え続ければ、食糧危機は確実にやってきます。1人当たりの摂取量の格差とか、人口増加率の変化とか、収穫量の変化など、難しい部分はありますが、それでも2050年までには世界人口は約100億人近くに達するのは間違いないと言われていて、そうなれば現在の1.5倍の食糧が必要になります(経済発展の度合いによっては2倍とも)。比例的に農産物や畜産物、海産物の収穫量が増えるというのは、ほとんど絶望的だそうです。

 

 「もったいない」というのは、2004年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんによって世界共通語になりましたが、いまは実感できます。本当に食糧は大切だと、理屈ではなく体感できていることが、私にとって非常に「嬉しいこと」なのです。そして、その「もったいない精神」をモノづくりに生かすことがとても重要だと思います。高騰したアルミ素材だって工夫次第でもっと効率のよい使い方ができるし、歩留まりも向上させることができる。不良品を出さなければもっと良い。余剰生産をしなければ、工数削減になりあらゆる経費が削減できる。当然、注意深く生産するために品質も向上する。生産効率の低下も発生しますが、コスト削減効果で相殺して余りあります。日本のモノづくりは何と言ってもこの点に集約されるのではないか、と考えています。「そんなこと当たり前だ」とお叱りを受けそうですが、ネット(総体)で考えればまだまだ「無駄」は山のようにあると思います。そしてこうすることは「モノづくりの厳しさを増す」と言うことには直結しないと思っています。

 

 工場で作ってそのまま販売する。これはネット時代だから可能になった大きな節約です。次に成すべきことは、製造のロスを可能な限り削ること。これをお客様に影響が出ないように成し遂げるためには、まず製造の意識を改革し、「出荷=店頭販売販売または対面販売」という考え方を徹底して我々が実践できないといけません。ですから「組立」というプロセスは、製品梱包のための作業になり、スムーズにお客様にお渡しする「対面販売の1プロセス」にならないといけません。それが、なかなか出来ないというか、いままで十分に出来なかった部分です。何せ、ハンドメイドで丹念に組み立てるわけですから、予期せぬ時間もかかるし、品質管理も大変だと・・。でも、それは、職人(プロ)の言うことではありません。経験や実績があればある程に消化できる課題もその中には多く含まれています。管理手法で回避できるアクシデントも決して少なくはないです。

 

 製造のロスは「もったいない」んです。良い製品を作っても、ゴタゴタしていると評価は相殺です。社長就任早々に愚痴めいた内容が多くなりましたが、6月の弊社の戦いとは、スタッフ1人1人と対面で徹底して話し合うことだと、この意識をベースにして、確固たる基盤を作り上げることだと考えています。そのためには一切の妥協をせずに、この6月、走り抜けなくてはいけません。

 

 

Posted by HOSHINO | この記事のURL |