お遍路で人生修養し、囲碁で脳を活性化、自宅では妻と政治談議――。製造業の会社員の家庭に生まれ、議員になる前も、なってからも挫折を重ねた菅直人首相(63)は、これまでの自民党出身の首相とはかなり毛色が異なる。
小泉純一郎氏、安倍晋三氏、福田康夫氏、麻生太郎氏、そして鳩山由紀夫氏。ここ5代の日本のリーダーはみな、父や祖父が首相や閣僚を務めた政治一家の出。地盤(後援組織)・看板(知名度)・かばん(資金)とは無縁の徒手空拳で国政をめざし、初挑戦から衆院と参院で3連敗。それでもあきらめず、とうとう宰相の座に上りつめた。
自社さ政権での入閣をへて、民主党代表になった菅氏が四国八十八カ所巡礼に出たのは2004年。年金未加入問題で代表辞任した後だった。
頭を丸め、「自分を見つめ直したい」と1番札所から回り始めた。その後も合間を見ては歩き続け、直近に出かけたのは08年6月。53番札所の円明寺(松山市)にまで達している。
遍路を始めて「人間がまるくなった」というのが周囲の評価だ。自身もその効用を認め、昨年8月の高松市での演説では「『イラ菅』が治ったのも四国のおかげかもしれない」と語った。
趣味は囲碁。山口県宇部市で過ごした少年時代に始めた。近所のおじさんから教えてもらったのがきっかけだ。最近はインターネット対局に凝っており、深夜の帰宅後もパソコンに向かう。遊説先に持ち込んだノートパソコンで対局することも。
03年の民主、自由両党の合併前には、自由党党首だった小沢一郎氏と対局を重ねたことが知られている。この1月にも小沢氏と対局する計画があったが、「政治とカネ」をめぐる事件のあおりで立ち消えになった。
菅氏を陰に陽に支えてきたのが1歳年上の妻、伸子さん(64)だ。夫婦そろって議論好き。伸子さんの口癖は「私を説得できない政策は、有権者も納得しないわよ」。