追及─ペット流通のブラックボックス
犬オークションの現場
(AERA 2010年5月31日号掲載) 2010年5月28日(金)配信
幼齢犬流通を助長
これと密接にかかわるのが幼齢犬の問題だ。犬ビジネスでは、子犬ほど需要が高いからだが、それは一方で、遺棄につながる危険性を持っている。
幼齢犬問題の第一人者で、米ペンシルベニア大獣医学部のジェームス・サーペル教授は編著書『ドメスティック・ドッグ』で、こう指摘している。
「ペットショップにいる子犬は(中略)社会化も不適切で、初期経験も異常であったり、悲惨なものであったりする場合があり、こうしたことによって成犬時に問題行動が発生しやすくなると考えられる」
犬の社会化期とは、犬としての社会的関係や人間を含む社会への愛着を形成するための時期のことをいう。適当な社会化期を経ずに流通過程に乗ってしまった犬は、問題行動を起こす傾向があるのだ。
そして犬の問題行動は、飼い主による遺棄につながりやすい。本誌が全国の政令指定都市と関東、近畿などの都府県計29自治体に情報公開請求して調べた結果では、07年度に各自治体に引き取られた犬計1万1892匹のうち実に32%が「問題行動」を理由に捨てられていた。
ではいつが犬の社会化期で、どのタイミングなら親元から引き離しても問題がないのか。前出のサーペル教授は過去の研究事例から「社会化期は生後3〜12週の間であり、感受期の頂点は6〜8週の間」「6週齢で子犬を生まれた環境から引き離せば子犬は精神的打撃(精神的外傷)の影響を受けることになる」と記している。
バックナンバー記事
- UFO対策やめた理由 (AERA 2010年6月4日(金))
- 出雲の小沢「アメとムチ」 (AERA 2010年6月3日(木))
- 普天間移転「有力空港」 (AERA 2010年5月27日(木))
- 水ダイエットの危険性 (AERA 2010年5月21日(金))