追及─ペット流通のブラックボックス
犬オークションの現場
(AERA 2010年5月31日号掲載) 2010年5月28日(金)配信
年間35万頭
2008年度、全国の地方自治体に引き取られた犬は11万3488匹に上り、うち8万2464匹が殺された。本誌ではこれまで、大量の捨て犬を生み出す犬の流通システムの「闇」を暴いてきた。
流通システムの根幹を成しているのが、ペットオークションだ。31ページのチャートを見てほしい。ペットショップ(小売業者)は、その仕入れ先のほとんどをオークションに依存している。ブリーダー(生産業者)にしても、出荷の5割以上がオークション頼り。推計だが年間約35万匹の子犬が、オークションを介して市場に流通している。つまり現在の犬の流通は、オークションなしには成り立たなくなっているのだ。
オークションは日本独特の流通形態。現在全国で17ないし18の業者が営業している。売り上げは、ブリーダー(出品者)とペットショップ(落札者)の双方から集める2万〜5万円程度の入会金、2万〜5万円程度の年会費、一匹あたりの落札金額の5〜8%に相当する仲介手数料から成り立っている。
このビジネスモデルが誕生したのは約20年前といわれる。それ以前はペットショップとブリーダーが相対で取引をしていた。次第に異業種からの参入者が増え、犬の流通量も増えたことから相対取引が限界になった。犬ビジネスの拡大が、オークションを生み出したといえるが、同時に別の問題を生んだ。
悪徳ブリーダーの温床となり、幼い子犬(幼齢犬)が流通する舞台となり、トレーサビリティー(生産出荷履歴追跡)の障壁ともなっているのだ。ある大手ペットショップチェーンの幹部はこう話す。
「オークションは動物取扱業の登録さえしていれば、特別な審査もなく誰でも入会できるのです。またブリーダーとペットショップが直接交渉できない仕組みになっていて、出品生体の親の情報やその管理状況などの情報もわかりません」
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