追及─ペット流通のブラックボックス
犬オークションの現場
(AERA 2010年5月31日号掲載) 2010年5月28日(金)配信
日本独特の流通システム。犬ビジネスの隆盛とともに巨大化し、複雑化してきた。
だがそれが、様々な問題の温床にもなっている。捨て犬を生み出す、「ブラックボックス」に迫る。
建物の中に入ると途端に、競り人の声がマイクを通じて大音量で聞こえてくる。その合間を縫うように、子犬や子猫のか細い鳴き声が耳に届く。
中央に小さな檻が据えられ、周囲を折りたたみ机が2重に取り巻く。約80人の男女が、普段着で折りたたみイスに座っている。天井から垂れ下がるボタンを手にしているのが、子犬を競り落としに来たペットショップのバイヤーたち。それ以外は、出品しているブリーダーだ。
関東地方の、国道沿いに立つペットオークション会場。プレハブ造りのこの会場で毎週、子犬や子猫の競りが行われている。
「プードル、メスでぇす」
「柴犬、オスでぇす」
競り人が独特の調子で一匹ずつ犬種名、性別などを読み上げる。するとビニール製の手袋をはめた男性が子犬を片手で高く持ち上げ、中央の檻まで運んでくる。途中、骨格や関節を確認するためか素手で子犬をさわるバイヤーもいる。
バイヤーたちは、檻の中の子犬とその上に据えられたモニターに映る伝票を凝視しながら、ボタンを握りしめる。2人以上がボタンを押し続ける限り、落札価格は1000円ずつ上昇する。すぐに5万円、6万円という値がつき、子犬が競り落とされていく。一匹につき数十秒、長くても数分で買い手が決まる。
競り落とされた子犬は、すぐに小さなカゴや箱に詰め込まれ、バイヤーの前に積まれていく。目の前に小山のようにカゴを積んでいくのは、誰もが知っている大手ペットショップチェーンのバイヤーたちだ。
こうして、毎週300〜500匹の子犬がこのオークションから関東各地のペットショップへと流通していく。
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