警察の厄介にならない方法としては、「食うに困る」ヒトを出さないこと。あるいは、「彼が殺されては困る、彼が財産を奪われては私が困る」と思う味方をたくさん作ること。そのためには、味方となるべき人たちと長い時間懇意にし、相互に離れ難い付き合いをし、あるいは彼から借金をし(返済できなくなると困るから)、雇用を与え(職がなくなると困るから)、ということをしていかねばなりません。全部やらないといけないわけではありませんが、これらはすべて、拳銃を買ってきて自衛するよりも何倍もお金がかかります。
だから、この戦略を採る場合、GDP比で軍事費以上のコストを覚悟しなければなりません。標準的に軍事費はGDPの2%程度とすると、5%とか、それ以上を投入する勘定です。イスラエルのような常時緊張状態にある国家を基準に、その数倍と考えると、GDPの何割という金額を安全保障に使うことになります。
これは大方の国にとって現実的ではありません。だから「ユーロ圏」を除くどの国もこの戦略は採っていません。手っ取り早く自衛します。
しかし、比較的安めの方法があれば、この戦略も捨てたもんじゃありません。ワタシはこれを真剣に考え、前々回連載で植林と南洋浮体工場として提示しました。
日本の軍事費節約法
ほかに裏技として、人質を取る、という作戦があります。これには2つの方法があります。まずは、敵になりそうな相手の親族を人質に取る。これは実際に戦国時代によくあったことで、世界各地でも一般的にあることです。しかし、民主国家でこれをやるのは困難です。最近の例として、これに良く似た作戦に、「人間の盾」があります。
もう1つは、同盟国の軍隊を自国に駐屯させることで人質に取る方法です。ある国に軍事介入しようとすると、その同盟国も巻き込んでしまう。だから同盟国も一緒に敵に回す覚悟がないと、その国に介入できなくなるのです。
日本は、冷戦時代以来、ずっとこの方法で軍事費を節約してきました。米軍は敵に回すと厄介な相手ですから、外国は日本にちょっかいを出さなくなります。その代わり、アメリカと仲の悪い国とは日本も仲が悪くなります。
アメリカは日本に駐屯することで、日本の離反を防げます。ガードマンに監視されているようなものですが、国防費が安上がりなので、日本はそれを肯んじたのです。
しかしこの構造では、取った人質が暴れることがあり、一定の危険性があります。要するに、自国を軍事占領されているようなものですから。
特に基地周辺住民はたまらないです。
そこで、今からの選択肢として、自前の国防戦略と引き換えに、この人質戦略を放棄することもありえます。
しかし相当程度のコストと、抑止力の低下を覚悟しなければなりません。米軍は、日本に置いてあるかどうかは別として、軍隊全体としてみれば核武装しているので、本格的に米軍を敵に回すとなると、核攻撃されるリスクも考慮して戦術を考えなければならなくなります。
日本は核兵器を持っていないので、単純に日本だけが相手ならば、核報復を怖れる必要はありませんから。
それも嫌なら、安直に核武装するという選択肢もあります。なぜって抑止効果に対して費用が安いから。ワタシはこの戦略は嫌ですが。
地理上、紛争に巻き込まれる恐れがある
さて、議論を後半、日本の置かれた軍事的環境に転じましょう。
今、韓国の哨戒艦が沈没したことで、韓国と北朝鮮の間に軍事的緊張が走っています。ここで、もし戦争状態が発生した場合、韓国の同盟国である米国が韓国軍の支援に補給などの空輸をする場合、岩国基地が一番近いです(日本の民間空港だと、福岡空港や佐賀空港もありますが、日本国内で知事の説得や法的な調整が必要と思われ、有事とはいえ紛争の初期局面では自由には使いにくいでしょう)。