「オルタナティブ政治経済研究所」

オルタナティブ政治経済研究所

2010年6月9日(水)

「国防戦略」なき国会議員でいいんですか?

景気や雇用の前に、まず生き延びることを考えるべき

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 島ごと引っ越すことができない以上、残念ですが、これが沖縄にとっての抑止力ということではないでしょうか。

 申し添えておきますが、ワタシは中国が日本の仮想敵国だということを主張しているわけではありません。米国と中国が歴史的宿命のような大抗争を始めるというような、石原莞爾ばりの戦略論を言っているわけでもありません。

 また、沖縄の現状がこのままでいいと申し上げているわけでもありません。

 議論の前提としているのは、能力と意図は別であり、軍事問題は「能力」を基本として構想すべきであって、「意図」なんか政治状況次第で10分もあれば変わってしまうだろうということなのです。こちらの「能力」は何年もかけて築いていくものです。「意図」に不穏なものを感じてから対応策を準備しても、間に合わないのです。もっと言えば、米軍の「意図」や自衛隊の「意図」だって、いつ変わるか分かりません。そこで、「意図」が変わらないように同盟関係を修復し、自衛隊のシビリアンコントロール(文民統制)を磐石にしなければならないのです。

 国防を考えるというのは、そういうことです。

安全保障政策を語れる政治家はいるか?

 最後に若干の提言を。

 軍事力について思考停止することはやめましょう。抑止力は、実際に武力行使が起こらないようにするためのメカニズムです。まずは、そのことを理解しましょう。

 ただしワタシは、日本にとってお似合いなのは、非軍事的な安全保障政策だと思っています。この戦略はコストがかさみ、維持がたいへんであることを理解しましょう。また、本当のギリギリのところでは抑止力として弱いことも自覚しましょう。

 そのうえで、主体的にこれを選択するのです。

 今回の参院選では、多段階の安全保障政策を提案し、展開できる政治家を探しましょう。これはなかなか難易度の高いことです。地域の候補者に該当する方がいなければ、比例区で探しましょう。

 ワタシは、前回連載や前々回の連載でいくつか非軍事的安全保障政策の具体案を提案しています。例えば、沖縄に限って言えば、ここに国連のPKO(国連平和維持活動)部隊の大規模な演習基地を置き、日本が全額を負担して、揚陸戦防衛訓練やゲリラ戦対応訓練、沿岸警備訓練などを常時行うことが考えられます。

 これをすると、沖縄に手を出そうとする国は、PKO参加国すべてを敵に回すからです。核武装している米軍には劣りますが、一定の抑止力にはなるでしょう。また、平時には多くの国の兵士が沖縄に来ますから、知日派を増やすことにも貢献します。ただ、演習基地周辺が危険であることに変わりはないので、そうであるにしても、全体の規模は縮小したほうがもちろんいいです。

 これはちょっとした一例です。しかし、それだけが正しいとは思いません。

 ご自身の国防戦略は、何が理想ですか? 我が国は、民主国家です。国防方針自体も、ワタシたちが選挙で選んだ国会議員や、その中から選ばれる首相以下の政府が決めていくのです。

 参院選というこの機会に、空論ではない理想論を闘わせるべきなのです。まだ周辺地域が平時であるうちに ・・・。

コメント欄へのご意見、ありがとうございます。ご指摘の点に共感するところも多く、いずれ記事内にも反映させていただければと思います。今回は、締め切りの関係上、テーマの載せ換えが間に合いません。ご理解いただければ幸いです。今後ともよろしくお願い申し上げます。


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著者プロフィール

タナカ(仮称)

大手証券会社の企画部門で働く会社員。1989年に大学を卒業、某大手資産運用会社、某総合研究所を経て現職。某業界団体の専門検討部会の委員を務めるほか、環境問題のNPO法人(特定非営利活動法人)を立ち上げ、そのほか複数のNPO法人の理事を務めている。


このコラムについて

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政権交代から約1年が経った。政党・政治家が“国民の審判”を仰ぐ2010年夏の参議院選挙を目前に迎える。「ダメなら首相を、それでもダメなら政党を、取り替える」。それだけでは、もはや現状を打破できないだろう。改めて政治の原点に立ち返り、今だからこそ、国民が選挙で起こさなければならない行動があるはずだ。

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