「オルタナティブ政治経済研究所」

オルタナティブ政治経済研究所

2010年6月9日(水)

「国防戦略」なき国会議員でいいんですか?

景気や雇用の前に、まず生き延びることを考えるべき

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 急な政変で世間は騒然としていますが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

 そんなのワタシには関係ない? いやいや、そう言わず、政治への関心を失ってはいけません。特に、前政権が残した外交上の課題は、目先の政変に気を取られて流してしまってよい話題ではないのです。

 前回は、政治家が「言わないこと」を見破らないといけないと申し上げました。今回は、その代表例の1つ、国防問題を取り上げたいと思います。

 ワタシは戦跡を遊び場にして育ってきましたから、折に触れて国防問題を考えてきました。トーチカに記された壮絶な書き込みなどを見ると、指導者の無策がどれだけ国民をムダに死なせるかということ、また、民主国家においては国民が政治の主人公なのだから一般国民がきちんと政治の軍事音痴を監視しなければならないということ、を痛感します。そうしないと、国家・国民の生存が脅かされ、戦前のように対外的にも多大な被害・迷惑を与えてしまいます。また、無作為による軍事的空白が生じると、かえって無用の軍事的緊張を引き起こしてしまいます。

 政治を監視するとは、具体的には選挙で誰を選ぶかということです。このことは、最近の基地問題に関する前政権の迷走を見て、さらに痛感させられました。

 痛い、痛い、痛い、という感じです。

 そこで今回は、日本を取り巻く軍事問題のフレームワークについてお話したいと思います。ワタシは軍事専門家ではありませんので、その理解の範囲でのお話となります。このため、細かい兵器のあれこれは出て来ません。有権者である一般国民が知りうる公開情報程度の知識でしかお話できません。素人の井戸端会議です。しかし本来この問題は、専門家が適切な解説をして、一般国民のレベルを専門家に準じる程度まで引き上げる義務があると考えています。国家の生存に致命的な重要性を持つからです。それがうまくいっていないように思うので、恥を承知でワタシがここで無用の解説をしてみようと、こういうわけです。教条主義的な反論も当然に予想されるのですが、そのリスクを怖れて黙ってしまってはいけないと思うのです。

核兵器による防御は“簡単で安い”

 前半では、日本の生存戦略上の問題点、軍事的方法を放棄するならば何をしなければならないかをお話したいと思います。そして後半では、日本の置かれた軍事的環境についてコメントしたいと思います。最後に若干の提言を。

 世界の軍事力のGDP(国内総生産)比は概ね2%程度、米国、英国、フランスなどは少し高く、イスラエルなどは10%弱ということで、かなり高いようです。

 日本は今年の予算が4兆7903億円、GDPの一昨年度実績が約494兆円ですから、1%弱で少ないほうです。

 核兵器を持っているのは、米英露仏中の5大国に加え、インド、パキスタン、イスラエル(?)、北朝鮮(?)。

 軍事的圧力は、家族を抱えて食うに困った泥棒と同じようなものと考えてみてください。例えば包丁を買って他人に「金を出せ」というのは、一所懸命稼ぐより手っ取り早く、ずっと安上がりです。

 特に核兵器が“安い”。また、核兵器は「相互確証破壊(MAD)」という戦略により、自国を事実上の不可侵にします。だから、貧乏で対外的な干渉による体制崩壊に怯える国が核武装に走りやすい。

 食うに困ったヒトに人気のない裏道で包丁を突きつけられて「金を出せ」と言われた場合、どうするか。ちょっと想像してみてください。相手も腹をすかせた妻子を抱えて、改心して帰ることなんかできません。そうした状況で、金を渡せば助かるでしょうか。そういうこともあるかもしれないし、後腐れがないように殺されてしまうかもしれません。それは、こちらにはコントロールできない相手の判断に、自分の生死が委ねられてしまうということです。もしあなたが殺されてしまったら、自宅で待っているあなたの妻子は、路頭に迷ってしまうでしょう。

 それが嫌で確実に強盗から身を守るには、自分で身を守る方法を考えるか、ガードマンや警察が必要となります。しかし国際政治には強力な「警察」はありません。



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著者プロフィール

タナカ(仮称)

大手証券会社の企画部門で働く会社員。1989年に大学を卒業、某大手資産運用会社、某総合研究所を経て現職。某業界団体の専門検討部会の委員を務めるほか、環境問題のNPO法人(特定非営利活動法人)を立ち上げ、そのほか複数のNPO法人の理事を務めている。


このコラムについて

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政権交代から約1年が経った。政党・政治家が“国民の審判”を仰ぐ2010年夏の参議院選挙を目前に迎える。「ダメなら首相を、それでもダメなら政党を、取り替える」。それだけでは、もはや現状を打破できないだろう。改めて政治の原点に立ち返り、今だからこそ、国民が選挙で起こさなければならない行動があるはずだ。

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