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蝶野正洋のオレにも言わせろ

闘莉王!〜愛息と重なるハイブリッドな男

 今大会は日本の選手にとってチャンスだ。“名将”が指揮官なら、選手は結果を出しても、おいしいところを監督に持っていかれる。その点、今回は「上に頼っていてもしょうがない」と気も引き締まるし、やりがいがある。たとえ負けても、それは監督の責任だ。

 オレは初回で岡田監督にヒール転向を提案したが、ヒールがいれば、当然、ヒーローが求められる。本田選手だ。ロシアという欧州ではマイナーな舞台を自ら選び、そこで成長して日本代表の柱になった。歴代エースの役割は彼しかいない。

 オレは「アリストトリスト」というブランドを通して、オタク的だったプロレスファンのセンスを変えてきたつもりだ。ファッションはプロ意識の表れ。本田選手はサッカー界のファッションリーダーとしてカズ(三浦知良)以来の伝統を継いでいる。ヒデ(中田英寿)に続く男だよ。

 本田選手の両手首の腕時計とか、グラウンド外のこだわりは絶対に必要だ。サッカーはチームワークの世界。豪傑でワンマンな振る舞いをしていても、根は気配りのできる常識人なのだから、彼も派手にやればいい。

 一方で、オレが個人的に一番気になって仕方がない選手は闘莉王だ。

 06年W杯で開催国ドイツが準決勝でイタリアと戦った7月4日に俺の長男・正独(なおとく)ジャメインが生まれた。日本とドイツ(マルティナ夫人)の“ダブル”だ。名前にはドイツの「独」を入れた。闘莉王選手も日本に帰化したとはいえ、複数の国の血が入ったハイブリッド(※注)。息子との共通点から彼に親近感を覚える。

 マルティナは02年の日韓W杯決勝で母親と横浜の会場でドイツを応援した。今回は家族ぐるみで日本から闘莉王選手を応援するよ。コートジボワール戦でのドログバ選手へのファウルは残念な結果となったが、彼の気迫を感じた。オウンゴールも気にするな。本番は頼むぞ、闘莉王!!

 ※ハイブリッド 直訳すれば、複数の異質なものを組み合わせ、一つの完成形を成したもの。闘莉王の父は日系2世、母はイタリア系のブラジル人。03年に日本国籍を取得するまでの旧名はマルクス・トゥーリオ・リュージ・ムルザニ・タナカだった。

 ◆蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)1963年9月17日、米シアトルで生まれ、東京・三鷹市で育つ。都立永山高ではDFとして活躍。84年に新日本プロレスでデビュー。同期の武藤敬司、故・橋本真也さんと闘魂三銃士と称される。G1、IWGPヘビー級王座など数々のタイトルを獲得。今年1月で新日本を退団しフリーに。自身のブランド兼事務所「アリストトリスト」の社長。家族はマルティナ夫人と1男1女。得意技はSTF、ケンカキック。186センチ、108キロ。