ヒールに徹して己をさらけ出すしか道はない
筋金入りのサッカーファンであるプロレス界のトップレスラー、蝶野正洋(46)が、岡田JAPANへの“黒い提言”をデイリースポーツに託した。25年間在籍した新日本プロレスを退団し、フリーとしてリング外にも活躍の場を広げる“黒のカリスマ”は、高校時代まで長身DFとして活躍した元サッカー選手。2つのジャンルを経験した独自の観点から、監督、選手、対戦国、自身のサッカー史、サポーターという5つのテーマを語り尽くした。
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岡田監督が5月の日韓戦後の迷走発言でバッシングされた。彼に対するオレの第一印象は“日本の官僚”だ。あの容姿は海外で描かれる日本人のイメージ像と重なる。ここは発想を転換し、マイナス要因をプラスに転化して「岡田武史」というキャラクターを対戦国に対してポジティブに有効活用すべきじゃないか。岡田さんは今こそ、ヒール(悪役)への自己プロデュースが必要だ。
90年代、オレはレスラーの“労働組合”だった「nWo」(※)で“委員長”として闘争し、00年代は新日本プロレスの取締役、現場監督を務めてきた。そうした経験を踏まえた上での“ヒール転向論”なんだ。
もちろん、国内に向けてはベビーフェース(善玉)でなきゃいけない。選手は世論を気にするからね。岡田監督は“日本の顔”としてチームの士気を高めていくべきだ。一方でカメルーン、オランダ、デンマークのメディアに対してはヒールとなって正反対の顔を使い分けるんだ。日韓戦後の“無自覚な迷言”ではなく、“よく考えた暴言”を対戦国に吐くんだ。
例えば「初戦の相手はたいしたことないから主力を休ませる」とカメルーンを格下扱いして遺恨を作る。相手を「バカ監督」呼ばわりする強気な姿勢もいい。対戦国限定で「初戦で負けたら辞任する」と予告し、試合をあおる。辞めなくても“ずる賢い日本の官僚”だから構わない。開幕直前にカメルーンをお忍び視察して相手サポーターに殴られてみるのもいい。サッカーだってプロである以上、見てもらってなんぼの商売だからね。
出発前、鳩山前首相とのツーショットは何とも象徴的だった。いずれも当時の世論は逆風。ベビーフェースでいたくても、なれない状況だった。鳩山さんは電撃辞任したが、岡田さんはヒールに徹して己をさらけ出すしか道はない。だから今こそ、言いたい。岡田監督、黒くなれ、オラ!!
※nWo 96年に米団体WCWで誕生し、蝶野が反体制ユニットとして新日本に導入。大ブームとなり、97年度はTシャツだけで6億円を売り上げた。99年にトップが武藤に代わり、00年消滅。他分野との交流も積極的でプロ野球・横浜の三浦大輔、鈴木尚典、中日の山本昌、山崎武司(現楽天)、サッカー日本代表の中山雅史、岡野雅行、大相撲の千代大海らも“構成員”だった。
◆蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)1963年9月17日、米シアトルで生まれ、東京・三鷹市で育つ。都立永山高ではDFとして活躍。84年に新日本プロレスでデビュー。同期の武藤敬司、故・橋本真也さんと闘魂三銃士と称される。G1、IWGPヘビー級王座など数々のタイトルを獲得。今年1月で新日本を退団しフリーに。自身のブランド兼事務所「アリストトリスト」の社長。家族はマルティナ夫人と1男1女。得意技はSTF、ケンカキック。186センチ、108キロ。