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JR北陸線、平日朝“すし詰め” 新型投入も3両から2両編成に
(2010年5月23日午前7時15分)
平日朝の芦原温泉発福井行きの新型電車「521系」の車内。森田駅を過ぎるとぎゅうぎゅう詰めになった=7日午前8時10分ごろ撮影
JR北陸線の普通電車で3月以降、平日朝にすし詰め状態の満員電車が見られるようになった。ダイヤ改正で従来の3両編成の電車に代わり、2両の新型電車が通勤通学時間帯に走るようになったからだ。JR西日本は「利用状況を考慮した」とするが、乗客からは「車両を増やしてほしい」という切実な声が上がる。実際に電車に乗り、事情を探ってみた。
午前7時54分芦原温泉発福井行きの普通電車は、銀色の車体に青と白のラインの2両編成の新型電車「521系」。始発の時点で座席はほぼ埋まり、丸岡、春江で乗客がなだれ込んでくると車内はすし詰め状態。森田を発車するときには、立っている乗客は身動きできなくなった。
通勤で春江から毎日この電車を利用している40代の男性会社員は「3月までは座れたが、今では全く座れなくなった」と、額に汗を浮かべながら語った。
同7時42分敦賀発金沢行きも、鯖江を過ぎるとサラリーマンや学生らでぎっしり埋まる。鯖江市の男性会社員(40)は「電車の中だけは都会」と皮肉交じりに話し、「本当に車両を増やしてほしい」と訴えた。
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明るく静かで快適な乗り心地−。521系は、JR西日本が2006年に製作した2両編成の近郊型電車だ。敦賀までの直流化に合わせ、同年11月に湖西・北陸線の近江今津―福井間と北陸線の米原―福井間に10両を投入、今年3月のダイヤ改正に合わせて20両を追加した。製作費は1両約2億円。最初の10両は沿線の福井、滋賀両県が負担し、追加の20両はJRが負担した。
新型車両投入の理由をJR西日本金沢支社の清水哲雄広報チーフは「既存電車の老朽化」と説明する。投入に伴い減車となった「419系」は1968年に製造された寝台特急を近郊型に改造、「475系」は62年製造の急行を改造した電車で、ともに乗車口が狭く、車内に段差があった。
こうした点を新型電車は改善しており、清水チーフは「バリアフリー化して乗り降りが便利になり、万一の衝突時に備えて安全性も高めた」とアピールする。
しかし、定員や座席数は大幅に減った。419系は3両編成で定員298人、座席は176。475系も3両編成で定員314人、座席は218あった。2両の521系電車は定員が252人、座席は108にとどまり、定員だけをみても40〜60人減った。
新型電車の運行はダイヤ改正までは日中が中心だった。改正後は車両の追加に伴って運行区間を金沢まで伸ばし、通勤通学時間帯も走るようになった。このため「快適な乗り心地」どころか、大都会並みの満員状態が発生した。
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なぜJRは新型電車を2両編成とし、定員や座席数を減らしたのか。金沢支社は「近年の乗客の利用状況を考慮して投入した。理解してほしい」とする。2両でワンセットの構造のため、3両に増やすことができないこともネックになっている。
こうした姿勢に利用者からは「2両編成の電車を造ること自体が間違っている」(福井市の43歳男性)、「理解して、と言われても理解できない」(越前市の女性)という厳しい批判が上がる。
一方、福井大大学院工学研究科の川上洋司教授(交通計画)は「人口が減り乗客増が見込めない中、新たに投入する電車の車両を減らすのはやむを得ない面がある」と一定の理解を示す。
背景には、欧州に比べて公的助成が少なく、鉄道事業者が運賃収入のみに頼らざるを得ない日本の公共交通の在り方に問題があるという。同教授は「フランスでは都市の公共交通のコストは企業に課す交通税、自治体の助成金、運賃収入の三つで賄っている。だからサービスが良い」と話す。
国内では富山市が2006年から、市の財源でJR高山線の本数を増やしてサービスを向上させ、乗客増を目指す試みを行っている。
ダイヤ改正以降、不評が絶えない北陸線の普通電車も今の満員の状態が続けば乗客が減り、さらに本数や車両が減るという悪循環に陥りかねない。JRと利用者だけの問題ととらえず、沿線自治体も真剣に考えていく必要があると感じた。