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【経済】

消費増税に含み 財政健全化へ舵

2010年6月5日 朝刊

 菅直人新首相の誕生により「政府は消費税増税を軸とした財政健全化路線へ舵(かじ)を切る」との見方が強まっている。財務相として増税論議の地ならしを進めつつ、増税と経済成長を両立させる方策を探ってきた菅氏。ただ、自らが増税へ踏み込むための前提と指摘していた無駄遣い削減の徹底や、特別会計の見直しは不十分で、こうした問題の解決も迫られることになる。 (白石亘)

 「来年度の国債の新規発行額は、本年度の四十四兆三千億円を超えないよう全力を挙げる」。菅氏は先月十一日の記者会見でこう表明し、財政膨張に歯止めをかける決意を示した。首相になってもこの方針を貫くとみられるが、実現は容易ではない。

 二〇一一年度予算は社会保障費の自然増や、基礎年金国庫負担の維持だけで、約三兆五千億円の歳出増が見込まれる。税収の大幅な回復は期待できず、一〇年度は十兆六千億円を確保した特別会計の埋蔵金など税外収入も、四兆円程度にとどまる見通し。仮にマニフェストへの歳出を一〇年度予算並みに抑えたとしても十兆円近い“穴”が空く計算だ。

 民主党は「歳出の無駄を削り、特別会計を含む総予算を組み替えて財源を捻出(ねんしゅつ)する」と主張してきた。しかし、事業仕分けは大規模な財源確保策にはならず、特別会計改革も手付かずの状態だ。

 国債頼みの財政運営を今後も続けられるかどうか、危ぶむ声は多い。月内に策定を目指す中期財政フレームと財政運営戦略で、財政健全化の道筋を示すことが「国際的な信認を得るにも不可欠」(財務省幹部)となっている。

 一方、菅氏は四日、消費税増税についても「あらためて必要な時に申し上げたい」と含みを残した。

 菅氏は財務相に就任した当初、増税について目立った発言はしていなかった。周辺が「明らかに変わった」と語るのが、カナダで二月に開かれた先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)。出席者からギリシャ財政危機の深刻さを直接耳にし、帰国後、消費税の議論を政府税制調査会で始めると宣言した。財務省OBは「言い方は悪いが、教育効果だろう」とみる。

 菅氏は「増税しても、使い道を間違わなければ景気は良くなる」と語り、ばらまきでも小泉構造改革路線でもない「第三の道」を模索するとみられる。

 ただ、みずほ総合研究所の草場洋方シニアエコノミストは「増税すれば家計所得が政府に移転し、可処分所得が減る。政府が増税分の一部を借金返済に充てれば、世の中に出回るお金は減る」と話し、増税と景気回復を両立させることの難しさを指摘する。

 

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