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2010.05.11

「飲酒の健康影響」-(1)
安売り、広告に制限を 
WHOが対策指針

 飲み方を間違えると、健康を害して命にかかわることがあるお酒。たばこに続く健康阻害要因として、世界保健機関 (WHO)も本格的な取り組みに乗り出した。ただ身の回りにはアルコール飲料があふれ、入手は容易。被害を防ぐための課題を探った。20100511rensai.gif
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 WHOの執行理事会は1月、飲酒による健康被害から若者や女性、多量飲酒者らを守るため「アルコールの有害な使用を軽減するための世界戦略」と題した指針案をまとめた。
 加盟国に対し、アルコール飲料の過度な安売りの規制、広告の内容や量の制限、酒類メーカーがスポーツ・文化イベントのスポンサーにならないことを求める内容。たばこと同様に公共の場所での飲酒を制限したり、価格を引き上げることで、健康被害が起きやすい人の摂取を減らす方策も提言。
 ただ強制力はなく、具体的にどういった対策を講じるかは各国の判断に委ねられる。5月下旬にジュネーブで開く年次総会で採択の見通しだ。
 WHOによると、2004年に世界全体で250万人がアルコールに関係する原因で死亡。うち32万人は15~29歳までの比較的若い年齢層の人たちだ。アルコールの有害摂取に伴う死亡は、同年の世界の総死亡の3・8%を占める。介護などを必要としない期間を示す「健康寿命」に与える影響の大きさを示す指標で見ると、アルコールはすべての病気による影響のうち4・5%を占めていた。
 世界的には1人当たりのアルコール消費量は減少傾向にある。WHOによると、15歳以上の1人当たり年間消費量(純アルコール換算)は1960年代の年間約4リットルから徐々に増加し、80年ごろの6リットル弱をピークに減少。2000年以降は5リットル前後に落ち着いた。
 国立病院機構久里浜アルコール症センター の樋口進・副院長によると、70年代末に欧州を中心とした先進国で消費量の減少傾向が顕著になった。最近では逆にインドや中国といったアジアの新興国、東欧諸国の増加が目立つという。
 樋口副院長らの調査では、日本人の1人当たり消費量は60年代初めに約5リットルだったが、経済成長に伴って年々増加。80年代後半から90年代にかけて8リットル強に達し、90年代末から減少した。
 「最近は7リットル強まで減ったが、これは米国とほぼ同じ量」と、樋口副院長。「日本人は米国人より体格が小さく、アルコールを分解しにくい体質の人も多い。飲酒の影響をより強く受ける心配がある」と指摘する。(共同通信 吉村敬介)(2010/05/11)