ここから本文です。現在の位置は トップ > ライフスタイル >  > 記事です。

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

食卓どこへ:遺伝子組み換え 新種作物の審査停止

 ◇環境影響の検討会開催せず/飼料輸入に影響も

 民主党政権になってから、遺伝子組み換え(GM)作物をめぐる国の対応が停滞している。環境への影響などを審議する農水、環境両省の合同検討会が4月からストップしたままだ。日本はすでに米国から家畜飼料用などに大量のGM作物を輸入しているため、飼料輸入にも影響が出かねない。農水省の解説ホームページ(サイト)も閉鎖された。永田町かいわいのGMをめぐる最新の動きは--。【小島正美】

 農水、環境両省は4月下旬、GM作物の環境影響を評価する「生物多様性影響評価検討会・総合検討会」(委員8人)を開く予定だった。ところが、民主党側から委員の人選などで異議が出て、開催を取りやめ、以後、一度も開かれていない。

 検討会には四つの分科会があり、干ばつに強いトウモロコシなど約10種類のGM作物を審議していた。

 困ったのはモンサントやダウ・ケミカルなど米国の申請企業だ。

 検討会の承認を受けて、今年中に日本国内の隔離ほ場でGMトウモロコシなどを栽培し、そのデータを基に検討会でさらに審査を受ける予定だった。

 “GM大国”の米国やカナダは、日本で承認を得た作物を自国で栽培し、日本に輸出してきた。検討会が開かれないと、米国などでの栽培への影響も予想されるが、農水省は「再開のめどは立っていない」と言う。

 申請企業は焦る。

 「このままだと試験栽培が遅れ、米国・カナダと日本の承認に1年以上のずれが生じる恐れがある」(日本モンサント)「一刻も早く検討会の再開を」(ダウ・ケミカル日本)

 日本の穀物輸入業界からは来年以降の輸入の停滞を危ぶむ声も出始めている。

  □  □

 農水省はGM作物の研究開発状況などを解説したサイトを4月23日からほぼ全面閉鎖した。発端は「『遺伝子』ってなんだろう?」(12ページ)などの同省の解説冊子だった。

 今年2月、約60万部が茨城、栃木、群馬3県の小中高に配られ、日本消費者連盟が「学校の教師がメリットだけを一方的に教える恐れがある」などと同省に抗議した。民主議員も「マイナス面が書いていない」「内容を新政権に諮ったのか」などと批判し、サイトも閉鎖されてしまった。

  □  □

 一方、市民団体「食のコミュニケーション円卓会議」(市川まりこ代表)はサイト閉鎖などの理由を問う質問書を農相に送った。「GM作物を理解するうえで農水省の解説冊子やサイトは有用。なぜ閉鎖するのか。検討会の停止も異常事態」と疑問を投げかける。

 農水省は2012年までに家畜の飼料目的に組み換え稲を国内で栽培する計画を進めている。GM作物の研究をしている鎌田博・筑波大学大学院教授は「GM作物の科学的な情報を知るうえで農水省のサイトは欠かせない」としたうえで「食料増産など中長期的に見てGM技術は重要で、このままだと日本は世界から遅れかねない」と懸念している。

毎日新聞 2010年5月30日 東京朝刊

PR情報

関連記事

5月30日食卓どこへ:遺伝子組み換え 新種作物の審査停止

食 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド