04年に旧伊野町(いの町)の工事現場事務所を手投げ弾で爆破したとして、爆発物取締罰則違反などの罪に問われている2被告に対する県内4例目の裁判員裁判が7日、高知地裁(平出喜一裁判長)で始まった。被告が暴力団元組員らとあって、警備員2人が法廷内に常駐するなど、公判は厳戒態勢で行われた。両被告は起訴内容を認め、量刑が争点になった。公判は4日連続で行われ、10日に判決が言い渡される。
この事件では、指示したとされる暴力団会長の松崎高義被告(63)ら4人が同じ罪で起訴された。住所不定、元組員、杉本宏志被告(43)と香川県綾川町、元右翼団体構成員、小南光雄被告(63)の公判が先に始まり、2人は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
検察側は冒頭陳述で「当時、杉本被告は会長の高義被告に次ぐ立場で、手投げ弾を投げた松崎安一被告(47)に指示する役割を果たした。小南被告は安一被告を車に乗せ、現場まで運転した」と両者の役割を指摘。事件について「暴力団の組織的かつ計画的犯行」と主張した。
これに対し、杉本被告の弁護人は「高義被告の指示があり、会長には絶対服従という決まりがあった」と反論。「杉本被告の自首があってこそ、事件が解決した」と話した。また小南被告の弁護人は「役割は運転手に過ぎない」と主張した。
杉本被告を巡っては、昨年9月に別の裁判で、証人として出廷した際、傍聴していた暴力団関係者がさくを乗り越える脅迫事件があった。このため地裁は約30人の傍聴者が入廷する前に、金属探知機でボディーチェックを行った。
8日は、被告人質問などが行われる予定。
起訴状によると、2人は高義被告、安一被告と共謀し、04年5月4日午後11時10分ごろ、同現場事務所に手投げ弾を投げつけて爆発させ、事務所の壁面などを破壊し、約100万円相当の損害を与えたとされる。
今回は、男性2人、女性4人の裁判員と男性4人の補充員が選出された。裁判員らは公判中、終始緊張した面持ちで、手元の資料にメモを取るなどしていた。
地裁によると、裁判員候補者への呼び出し状は、まず4月26日に98人に発送。裁判所の判断で、さらに5月13日に32人に追加発送され、うち辞退者を除く計76人がこの日呼び出された。
実際に選任手続きに訪れたのは57人。被告の一人が元組員ということが関係してか、出席率は75・0%で、これまでで一番高かった前回(86・84%)から一転、県内の裁判員裁判では最も低い出席率となった。
選任漏れした高知市の自営業の男性(73)は「暴力団関係者だからと言って、辞退すべきではないと思った。制度を発展させるためには、仕方ないことだ」と語った。また、土佐市高岡町乙、看護師の女性(52)は「滅多にできない経験なので、選任されなくて残念」と悔しそうに話した。
毎日新聞 2010年6月8日 地方版