「小沢さんこそ出るべきです」。民主党代表選で田中真紀子元外相の擁立に動いた小沢一郎前幹事長に対し、田中氏が逆に立候補を迫っていた。田中氏が7日、朝日新聞の取材に明らかにした。
田中氏によると、鳩山由紀夫首相が辞任を表明した翌日の3日朝、東京・目白台の自宅の郵便受けに「至急会いたい」との趣旨のメッセージを添えた小沢氏の名刺が入っていた。3日昼、田中氏は小沢氏を訪問。小沢氏は名刺を「自分で届けた」と話したという。
2日の時点で小沢氏が代表選に田中氏を擁立する意向であることは耳にしていた。しかし、田中氏は「担がれたら国民に『政治を愚弄(ぐろう)している』と思われ、政治生命が終わる」と判断。3日の小沢氏との会談では逆に小沢氏に立候補を要請した。小沢氏の求めで輿石東参院議員会長も加わったが、「仕事のできる小沢さんが総理になるべきだ」と迫った。
田中氏は昨年の衆院選前に小沢氏と交わした「約束」も持ち出した。無所属だった田中氏は小沢氏の勧めもあり、民主党に入党した。その際、鳩山首相の後任を選ぶ代表選があれば「必ず出てください」と求め、小沢氏は「わかった」と応じたという。
だが、小沢氏は田中氏との会談で「自分が代表選を4日に決めた。もう半日しかない」と難色を示した。会談後、田中氏は別の議員2人と電話で「多数派工作」にあたり、3日午後には小沢氏に「100人以上を固めた」と伝えたが、小沢氏は「彼らは僕が出るとは信じていないよ」と消極的だったという。
3日夜には小沢氏から田中氏の留守番電話に「本当に申し訳ないが、今回は(立候補は)難しい」との伝言が入った。小沢氏系のグループのある議員からは「4日朝に会合を開く。数十人集まる。田中真紀子擁立を打ち出すので来てほしい」と打診されたが、田中氏は「勝手に発表したら離党する」とまで言い、断った。