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医療新世紀
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2010.06.08

「飲酒の健康影響」-(5)
課題多い日本のCM 
海外では規制進む

 「日本のお酒のテレビ広告は、世界的に見て異常な状態にある」と話すのは、NPO法人・アルコール薬物問題全国市民協会(ASK) の今成知美代表。欧州を中心に広告内容や放送時間帯を法規制している国は多いが、日本はビール大手など業界団体が自主基準を定めるにとどまっている。
 今成さんは「健康リスクが大きい女性の飲酒シーンが日常的に放送されている。若者への影響も心配で業界の自主規制では不十分だ」と訴える。
 ASKによると、フランスやスウェーデンはほとんどの酒類のテレビ広告を法律で禁止する。オーストリアやスペイン、フィンランドなどでは、度数が高い蒸留酒などが禁止対象。ポルトガルのように酒類メーカーがスポーツや文化イベントに協賛するのを禁じている国もある。
 米国や英国、ドイツなどは日本と同様、業界による自主規制。ただ内容的には蒸留酒の広告をしない、ビールを飲む場面を描かない、登場人物は25歳以上とするなど、一歩進んだ内容だ。
 日本の業界の自主基準は、未成年者や妊婦、飲酒運転への注意表示の方法や、テレビ広告の放送時間帯などを定める。テレビ広告は平日午後6時以降、日祝日正午以降との申し合わせだったが、問題意識の高まりを受けて、今年秋からは日祝日も午後6時以降とする。
 内容も変わりつつある。発泡酒を手にした女性タレントが日替わりで登場するサントリーの広告に、今成さんらが「毎日飲酒を勧めているように受け取れる。女性の飲酒シーンや性的なアピールも過剰だ」と抗議したところ、同社はより健康的な表現に改めた。
 サントリーの徳田英典・ARP(アルコール関連問題)室長は「そうした意図はなかった。正しいお酒の飲み方を広める社会的責任もある。時代とともに表現を変えることも必要だ」と語る。20100608rensai.jpg
 キリンビールは業界の基準とは別に、女性が自宅などで一人で飲酒するシーンを使わないことを決めた。CSR推進部の大和田一夫・主査は「こうした飲み方はアルコール依存症につながる懸念がある。経営陣や営業部門にもこうした考え方が浸透している」と話す。
 ただ販売競争で酒類の価格が下がり、いつでもコンビニで買える状態。欧米のように公共の場で飲酒を禁じる法令も国内にはない。今成さんは「いまや日本は世界一の飲酒天国。広告や販売の在り方を大きく見直すべき時期だ」と強調する。(共同通信 吉村敬介)(2010/06/08)