かんぽの宿に関する鳩山元総務大臣の言動については、よくわからないことが多い。ワタクシの目には彼が基本的な不良資産処理への理解をかいていると映る。また西川社長に対しては、鳩山氏は問題そのものを超えた別の感情を持って臨んでいるように思える。 最大の争点であるかんぽの宿売却問題は、ワタクシの知る限り郵政民営化で売却そのものは期限付きでMUSTであるということで国会議決済みだと思う。昨年から話が進められ入札手続きもルールにのっとって行われた結果がオリックスであると理解している。だいたい、かんぽの宿問題は不良資産処理の問題であり、西川社長はその処理の責任を負っているだけであって、不良資産を作った責任はそれ以前の経営と監督官庁にある。 安値で売ろうとしたのが気に入らないらしいが、「ほかで高値で売れた」ことを証明できなければ「その値段でしか売れない」という抗弁が成り立つ。最後の段階で世田谷の物件が外されたりというややこしい状況はあったとされるが、いずれにしても入札はオリックス1社しか残らなかった。最後の段階でもう1社は降りた。不良資産処理は大体そういうものだということは、多少なりとも経験のある金融関係者ならすぐわかる。売れるときに安値で処理した方が結果的にコストが安くつくことは多い。資金効率にくわえその処理にかける人件費や維持費や長引くことによる資産価格劣化、さらには価格そのものの不確実性を早い段階で解消するというメリット、そして法律によって期限があることを考えれば、たとえ「投げ売り」と見えても結果的には正解だった可能性は高い。バルクセールというのは不良資産処理でポピュラーなやり方である。鳩山氏には不良資産処理という発想が根本的に欠けているうえ、過去の日本の金融危機で起こった出来事に対する理解力と知識が欠けているように思える。 市場性のない資産である。そもそも赤字を垂れ流している資産である。誰もがほしがるものでもないし、雇用の問題も含めて考えればある程度ノウハウのあるところと話し合って(話し合ったかどうかはわからないが)能力のあるところに譲渡して処理するのは悪いことではない。ビジネスの場にいる人間としてはそう思う。 高値で作った施設が著しく安く売られるのはけしからん、というのは行動ファイナンスでいう「サンクコスト」の問題であり、通常非合理的な行動としてとらえられている。本来は問題にするなら作った時の決定プロセスを問題にすべきだろう。そんなに赤字を垂れ流して国民のお金を食いつぶしている施設を作った決定プロセスを問題にし、そのような高値で作ってしまった契約に談合がなかったのかどうか調べる方がいい。作ってしまったものを処理するのは敗戦処理であるが、本当に責任を負わなければならないのは戦争を始めた人間である。 まあかんぽの宿については所管大臣が信念を持って反対されたのだから、それはそれでいい。彼にはその権限があった。その代わり、売却が中止になった結果の得失については今後数年間しっかりとモニターしてもらいたい。大臣が止めた結果結果的に損失が膨らんだ場合、鳩山氏にはそれなりの責任を取ってもらうしかない。もちろん金銭的にだ。国民の税金を無駄遣いさせた責任である。私が彼の言動で最も危なっかしいと思うのは「正義」だのなんだのという言葉を軽々しく振りかざすことである。法務大臣時代のアルカイーダの知り合い発言といい、この人本当に大丈夫か?と思うことが多い。いずれにしても、我々はすぐにこういう出来事を忘れてしまう悪い癖があるが、平成24年の売却期限までにはこれの損得勘定についてきちんと検証してもらいたいと思う。 ただ、今回の問題は本当はもっと根の深いものだと思っている。要するに小泉改革に端を発した対立がここで火を吹いているわけである。単純な人間がそういう深い対立の先兵として使われただけかもしれない。小泉改革も結局花火を打ち上げただけで終わった。郵政民営化は実現したが、こういう処理は進まない。一時的に気分を良くした功績はみとめるが、プライマリーバランスの均衡も福祉削減も結局引き継がれることはなかった。今回の問題も小泉改革の検証とセットでやらないとフェアではないとは思っている。 |
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鳩山総務相辞任と日本のカントリーリスク
おとぽっぽこと鳩山総務相が辞任した。仕事中も Twitterfox (Firefoxプラグイン)をつけっぱなしにしているので、かなり早い段階で知らせてもらった。ほんとニュースの代替になるね、これは。 ...続きを見る |
ずんちゃか株式投資雑記帳 2009/06/15 00:32 |
西川社長続投は必要要件にて絶対要件ではない
この記事は直接書いていた時に消された記事だが、消す必要性は全く無いように感じる。 ...続きを見る |
よく考えよう 2009/06/22 11:43 |
内 容 | ニックネーム/日時 |
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確かオリックスと他社とでは入札の条件、たとえばどこぞの物件の従業員を他は3年継続して雇わないといけないのにオリックスなら1年でいいとか |
(・ω・)うろ覚えですが・・ 2009/06/14 20:09 |
西川さんの件にしても、珍銀行東京の仁司さんの件にしても、はたまた公社時代に三顧の礼で迎えられ公社改革に尽力された生田さんにしても(生田さんの件は西川さんにも問題があると思いますが)、制度設計の瑕疵を民間出身の経営陣に押し付けて批判する政治の風潮は、非常に不毛ですね |
von_yosukeyan 2009/06/14 20:12 |
今回の一件の勝者はオリックスさんで、高値づかみした資産をキャンセルするために鳩山さんを利用した、というのは陰謀史観すぎますでしょうか? |
HKPB 2009/06/15 01:05 |
(・ω・)うろ覚えですが・・さんコメントありがとうございます。確かにおっしゃるように入札条件についてはややこしい問題がいくつかあったように思います。露骨にそういう事例があったとしたら問題でしょうね。 |
厭債害債 2009/06/15 06:19 |
かんぽの宿問題については、ただただ呆れるばかり。 |
39歳無職 2009/06/15 06:57 |
そもそもかんぽはこんなもん作ったことを許してきた国民がアホだってことなんでしょうなー。政治家やら役人のせいにするのは楽ですが、最終的に一番悪いのはそういうことに無関心でやりたい放題を許してきた国民なんじゃねーかと思います。 |
Z 2009/06/15 14:43 |
こんにちは。国会議員なんて所詮ジァイアン的な発想のヤクザどもなんでしょうが、そもそもかんぽ加入者の金で建てたものを、「国民財産」の問題にすり替えてる時点でちゃんちゃらおかしいですよね。郵政も全体では黒字で財政支援もされてませんから、国民の金が使われているわけでもありません。とりあえず「反小泉・反麻生」で自分の議席を確保したいだけの選挙用パフォーマンスかと。 |
元U 2009/06/16 15:59 |
赤字赤字とおっしゃいますが、これは赤字となる経営を意図的にしていたもので、そんな状況を元に論議するのがおかしいのではないでしょうか。 |
sheepsong55 2009/06/17 21:11 |
39歳無職さん、どうもです。大衆受けといういぜんに私を含む大衆は結構その場の雰囲気で流されてしまいがちであり、そういう意味での自戒を促す出来事ではないかと思いました。 |
厭債害債 2009/06/18 17:34 |
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お伊勢参り 2009/06/19 18:10 |
それは、今回の西川社長批判、辞任追及が”魔女裁判”だからです。 |
お伊勢参り 2009/06/19 18:11 |
追記 |
お伊勢参り 2009/06/19 18:12 |
異論がいくつか… |
ナイ・パチーノ 2009/06/21 00:52 |
お伊勢参りさん、どうもです。詳細な主張ありがとうございます。ワタクシよりも過激な感じはありますが、趣旨にはおおむね賛同いたします。 |
厭債害債 2009/06/22 08:49 |
遅巻きなコメントなので見ていただけるか心配なのですが、思うところあり意見します。 |
経営学部の大学生 2009/06/27 22:16 |
経営学部の学生さん、コメントありがとうございます。おっしゃる通り、ポテンシャルとしては、その可能性はあると思います。ただしそれはリスクです。可能性だけでリスクをとるということがどれだけ大変か、企業の決定過程を知っている人にはきっと理解していただけると思います。鳩山氏がそれを理解しているとは思いません。もっと高いはずだというのは勝手なコメントとして言うのはいくらでも言えますが、ビジネスとして責任を取る立場では、ぎりぎりの決断を迫られていると思います。 |
厭債害債 2009/06/28 00:06 |
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