毎日新聞が15、16日実施した全国世論調査で民主党の失速と自民党の低迷が鮮明となり、夏の参院選は混戦模様だ。民主党は小沢一郎幹事長が目標に掲げる単独過半数どころか、社民、国民新との連立与党での過半数確保も危ういとの見方も広がる。2大政党のどちらでもない「第三極」としてキャスチングボートを握ろうと新党結成が4月に相次いだが、支持を伸ばしているのは先輩格のみんなの党。参院選後の「連立組み替え」をにらんだ駆け引きも始まっている。【須藤孝、中田卓二】
「小沢さんは『参院選で負けたら自分の出番だ』ぐらいに思っている」。民主党のベテラン議員は指摘する。
支持率が落ち込んでも民主党が「小鳩」体制を崩さない背景には、衆院で300議席を超える圧倒的多数を維持していることがある。ただ、参院で与党が半数に届かない「ねじれ」の再現になれば、政権の不安定化は避けられない。参院選の敗北を見越し、民主党内で論じられ始めたのが「連立組み替え」論。93年の衆院選後、「非自民」の細川連立政権を実現させた小沢氏の手腕に対する期待がそれを支える。
調査では「参院選後、民主党がどの政党と連立を組むのが望ましいか」を尋ねた。「民主党の単独政権」との回答が25%で最も多かったが、それに続いたのが「みんなの党との連立」の13%で、「自民党との大連立」の12%とほぼ並んだ。現在の「社民党、国民新党との連立」は9%にとどまり、「公明党との連立」は4%だった。
みんなの党への期待は「参院選が今、行われたら比例代表でどの政党(候補者も含む)に投票するか」の回答にも表れた。民主党が22%と前回調査(4月17、18日)から7ポイント減らしたのに対し、みんなの党は15%(前回比3ポイント増)で自民党の18%(前回比3ポイント減)に迫る勢い。2大政党を離れた層の受け皿になっている。
民主党の参院の非改選議席は62。単独過半数(122議席)には、大勝した07年参院選と同じ60議席が必要だが「夢のまた夢」(党幹部)という状況だ。国民新党と社民党が改選議席の計6を維持したと仮定すると、民主党は48議席で与党過半数を確保できるが、それすらも危ぶむ見方が強まっている。
また、社民党は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設に反対し、参院選後は消費税引き上げを巡っても民主党と対立することが予想される。社民党の連立離脱も視野に「組み替え」対象として取りざたされるのが「第三極」、中でもみんなの党だ。民主党の参院幹部は「いきなり公明党というわけにはいかないし、自民党から引っ張るにも数に限界がある」と「民・みん」連立の可能性を指摘する。
みんなの党の江田憲司幹事長は16日の民放番組で「公務員制度改革や、市場経済への根本的な見方が民主党とは全然違う。絶対にない」と否定。早くも駆け引きが激しくなっている。
民主、自民両党が低迷する中、「第三極」が参院選で勢力を伸ばすことに「期待する」との回答が54%に達した。「期待する」と答えた人に議席を増やしてほしい新党を挙げてもらったところ、みんなの党が38%で、新党改革15%、たちあがれ日本10%、日本創新党3%だった。
舛添要一氏は「日本の首相にふさわしい政治家」でトップの13%を獲得したものの、同氏と答えた人のうち新党改革を支持したのは3%。42%は支持政党のない無党派層で、舛添人気は必ずしも自身の新党と結び付いていない。舛添氏は16日、「独り勝ちだと唯我独尊になる」とみんなの党をけん制。たちあがれ日本の園田博之幹事長は「有権者は迷っている。われわれが伸びる余地はある」と今後の巻き返しを期す。
世論調査で消費税引き上げの賛否を聞いたところ、賛成48%、反対47%と伯仲した。民意が分かれる中、各党は参院選でどこまで踏み込むかに頭を悩ませそうだ。
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◆鳩山内閣を支持しますか。
全体 前回 男性 女性
支持する 23(33) 25 21
支持しない 62(52) 65 60
関心がない 14(15) 9 17
民主党の首相だから 16(14) 18 13
指導力に期待できる 1 (1) 2 1
政策に期待できる 13(18) 13 13
政治のあり方が変わりそうだから 69(66) 66 72
民主党の首相だから 2(2) 2 3
指導力に期待できない 50(40) 50 50
政策に期待できない 25(35) 29 22
政治のあり方が変わりそうにない 22(22) 18 25
◆どの政党を支持していますか。
民主党 19(23) 22 16
自民党 15(14) 15 15
公明党 4 (3) 2 5
共産党 3 (3) 4 2
社民党 2 (1) 1 2
国民新党 0 (0) 0 -
みんなの党 9 (8) 11 8
新党改革 1 (-) 1 0
たちあがれ日本 1 (1) 1 2
新党日本 0 (0) 1 -
その他の政党 2 (1) 3 2
支持政党はない 43(45) 39 47
◆米軍普天間飛行場の移設問題で、鳩山由紀夫首相は沖縄県外への移設をあきらめ、首相が約束した5月末の決着も難しくなっています。5月末に決着しなかった場合、首相は退陣すべきだと思いますか、思いませんか。
退陣すべきだ 47(53) 48 46
退陣する必要はない 51(45) 51 51
◆民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体による政治資金規正法違反事件で、検察審査会は「起訴相当」と判断して検察に再捜査を求めました。小沢幹事長は辞任すべきだと思いますか。
辞任すべきだ 78 73 83
辞任する必要はない 19 26 14
◆舛添要一前厚生労働相が自民党を離党し、改革クラブの国会議員らと「新党改革」をつくりました。「新党改革」に期待しますか。
期待する 33 27 38
期待しない 64 71 58
◆2大政党の民主党でも自民党でもない「第三極」と言われる新党が相次いで誕生しました。参院選でこうした新党が勢力を伸ばすことを期待しますか、期待しませんか。
期待する 54 53 55
期待しない 43 45 41
みんなの党 38 49 30
新党改革 15 14 16
たちあがれ日本 10 9 11
日本創新党 3 3 2
その他の政党 27 21 31
◆あなたが日本の首相にふさわしいと思う政治家は誰ですか。
石破茂 6 7 6
岡田克也 4 7 2
小沢一郎 2 3 1
菅直人 6 8 4
谷垣禎一 1 1 1
鳩山由紀夫 3 3 3
平沼赳夫 1 2 0
前原誠司 12 15 10
舛添要一 13 9 16
渡辺喜美 9 11 8
この中にはいない 38 32 43
◆鳩山首相は衆院任期の4年間、消費税を上げないと言っていますが、財政難を理由に消費税を上げるべきだという意見もあります。消費税の引き上げに賛成ですか、反対ですか。
賛成 48 56 42
反対 47 41 52
◆参院選が今行われるとして、あなたは比例代表でどの政党、あるいはどの政党の候補者に投票しますか。
民主党 22(29) 27 17
自民党 18(21) 19 17
公明党 5 (4) 2 7
共産党 3 (5) 4 3
社民党 2 (2) 1 2
国民新党 1 (0) 1 1
みんなの党 15(12) 17 13
新党改革 4 (0) 3 4
たちあがれ日本 3 (3) 3 3
新党日本 1 (0) 1 1
その他の政党 18(17) 16 19
◆民主党は衆院で半数を大きく超える議席を持っていますが、参院選の結果次第で連立政権の枠組みが変わる可能性があります。参院選後、民主党がどの政党と連立を組むのが望ましいと思いますか。
民主党の単独政権 25 29 22
社民党、国民新党との連立 9 10 7
自民党との大連立 12 11 12
公明党との連立 4 4 5
みんなの党との連立 13 17 10
その他 30 25 35
(注)数字は%、小数点以下を四捨五入。0は0.5%未満、-は回答なし。無回答は省略。カッコ内の数字は前回4月17、18日の調査結果。新党改革の前回は「改革クラブ」の数字。
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15、16の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で調査。有権者のいる1576世帯から、1039人の回答を得た。回答率は66%。
毎日新聞 2010年5月17日 大阪朝刊