肝臓障害を患う男性(19)=岡山県=の手術費用として集められた募金を横領したとして、広島県福山東署は7日、尾道市美ノ郷町の無職で夫婦の本山孝一容疑者(69)、二三(ふさ)子容疑者(69)を横領の容疑で逮捕したと発表した。
同署によると、両容疑者は共謀し、2005年7月、同市南蔵王町3丁目の金融機関で募金の口座を解約し、100万円を横領した疑いがある。孝一容疑者は「借金返済に充てた」と供述し、二三子容疑者は「解約したのは自分だが、一部は男性の母親に渡し、残りを夫に渡した」などと一部否認しているという。
男性は福山市に住んでいた2歳のとき、胆汁が分解されず肝臓にたまり、肝機能が落ちる肝内胆汁うっ滞症(バイラー病)と診断された。男性の親族らは肝移植手術を決意。1999年6月、同市の町内会などで「救う会」が結成されて募金活動が始まり、同11月に目標の約1950万円に達して終了した。男性の父親名義で口座が作られ、会のメンバーだった孝一容疑者が管理を任されたという。
男性は翌年オーストラリアへ渡ったがドナーが見つからず帰国。投薬治療で病状が落ち着いたため、18歳になってから手術する方針に転換し、約1950万円は口座で保管されていた。
手術費用を確認しようとした男性の母親が気づき、昨年5月、同署に相談した。同署によると、口座はすでに解約され、全額なくなっていたという。(中野寛)