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[15911] 【習作&ネタ】“大魔王”と“悪”の技を受け継ぐもの(オリ主 ドラゴンボール×ドラクエ 現実→???→多数の世界) 
Name: 天魔◆b849f691 ID:747c6004
Date: 2010/02/25 12:02
初めまして、天魔と申します。

1、この作品の主人公は、DBとドラクエの技を使います。

2、DB、ドラクエから何人かキャラが出ます。

3、オリジナルの魔法、技、キャラが出ます。

4、最強物になります。

5、主人公が使う技は、基本的に“悪”の技です。

6、原作のキャラの性格が違うものになるかもしれません。

7、ドラゴンボール、ドラクエだけでなくその他の作品ともクロスします。

8、更新が不定期になるかもしれせん。

追記

9、ご都合主義を含みます。

初めて小説を投稿するので、粗末な文章になるかもしれませんので、読んで気分を害される方や、上記の設定が嫌いな人は、読まないほうがいいかもしれません。
感想でアドバイスをもらえるとうれしいです。

よろしくお願いします。



[15911] プロローグ
Name: 天魔◆b849f691 ID:747c6004
Date: 2010/05/22 04:37
プロローグ






「う~ん、なんなんだろうこの状況は?」



俺の名前は、斎藤大輝、何の変哲もない大学生だ。

趣味はゲームで、最近はまっているのはパソコンの二次小説を読むことだ。

特にドラクエやドラゴンボールは大好きだ。


-うん、間違いなく俺は斎藤大輝だ。

けれど、俺は少なくても、空に浮かぶなんてことはできない。

それに・・・

俺は近くにあった、電柱に手を伸ばす。

--スゥ--

俺の手は電柱に吸い込まれていった。

これは俺の特技なんかじゃない。

せいぜい、俺の特技・・・というより、人に自慢できるのは、最後までやり遂げようとするねばり強さぐらいなものだ。

こんな空に浮いたり、壁抜けみたいなことはできない。

「チッ、なんなんだよ。」

俺は、困惑しながら下を見る。

下には、多くの人たちが集まってる。

そして、俺はその中心に目をむける。

そこには、


救急車に乗せられていく、血まみれの“俺”の姿があった。


「・・・なんか、俺が空に浮いていて、もう一人の俺が下にいるなんて、
 まるで、幽体・・離・・・・脱」

そこまで、口にして俺はますます混乱した。

「ちょッ・・・まてよ!!今の俺って幽霊なのか?!!」

て、ことは、俺って死んだのか。

・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・

「じょっ、冗談じゃねぇぇぇーーーーーーーーー」

自分でもビックリするぐらいの大声が出た。

「俺が死んだ!?何で!?どうして!?」


--しばらくして--


「はあ~~~。」

俺の口から長い溜息が出る。

あの後、しばらく混乱していたけど、今はある程度落ち着いた。

(自分が幽霊になったなんて認めなくないけど、これじゃあな~~。)

改めて、自分の状況を整理する。

体が浮いていて、物体を通り抜けられる、誰にも見えない・声が聞こえない。

-うん、間違いなく世間で言う幽霊だ。

「はあ~~~~。」

また溜息が出る。

(冗談じゃねえぞ、本当に。)

(て、文句言ってもしゃあねし。)

とりあえず

「なんでこうなったか、考えるか。」

そう言って、今朝から~今までのことを思いだす。



(たしか、明日学校が休みだから、朝方まで趣味に没頭していたはずだ。)

ちなみに趣味ってのは、新しく買ったドラゴンボールのゲームな。
これが結構面白いんだよな~・・・って、こんな事考えている場合じゃないと、
え~と、それから確か・・・

(腹が減ったから、近くのコンビニに行って・・・・)

「そうだ、その後!」

俺の頭の中に、コンビニの帰り道のことが浮かぶ。








「う~~ん、まさか朝まではまるとはおもわなかった。」

朝早く、人のいない道を一人の青年がコンビニに袋を片手に持って歩いてる。

「しかし、明日・・・じゃなくて今日か、マジ休みでよかった。」

そう言うと青年-大輝-は本当に助かったという表情をした。

しばらく、歩いて行くと。

「うん?」

大輝は急に立ち止まり。

「なんだ?」

あたりを見回した。

しかし、

「気のせいか。」

そう言うとまた歩き出す。

しかし、

--シュッ--

「ッ・・・な・・んだ。」

いきなり、空気がふるえたと思ったら、大輝の背中が鋭利な刃物で切り裂かれたような血が噴き出した。

「・・つぅ・・・く・うあ・・。」

大輝は、痛み耐えて犯人を見ようとしたが。

「な・・な・・・ん・・・・・で。」

そこには大輝以外の人影がなかった。

やがて、大輝の精神は闇に落ちた。









「わけわかんねぇ。」

とりあえず、自分に何かおこったのは確かだ。

(けれど、あの時自分以外は、誰もいなかったはずだ。)

なのに、なんで。

(たく、死んだと思ったら何が起こったかわからず、自分が幽霊になってる。)

「まるで、二次創作にある、トリップの小説のような展開だな。」

心底そう思う。

(まさかこの後、神様が現れたりするのか?・・ハハ、まさかねぇ。)

そう思っていると。

---まさかこんなことになるとは---

「な!!なんだ!?」

いきなり声が聞こえたと思ったら。

---余のもとにこい---

「!!!!?」

体が引っ張られるような感覚。

「な、なんなんだよーーーーーー!!」

大声を出しながら斎藤大輝は、この世界から消えた。







「どこだ・・・ここ?」

俺はあたりを見回す。

そこは、白い空間が永遠に続いている。

(なんか、ドラゴンボールの精神と時の部屋みたいだな。)

そう、それは自分が好きなアニメの場所にそっくりだった。

「おいおいおい、まさか本当に神様の仕業か!?」

(いったいどこの小説だよ。)

混乱した頭でそう思っていると、ある考えが頭に浮かんだ。

(まてよ、これが本当に夢じゃなくて、本当に俺が読んだ二次創作のような展開だ
 と、この後、神様が出てきて、「自分の失敗でころしちゃった。」とか言うはず だ。)

(そうしてその後、「蘇らせてやる。」とか言うはずだから、
 蘇らせてもらおう。)

よし、とガッツポーズをする。
 
これで幽霊じゃなくなる。

(あ、でもこうゆう展開だと違う世界に飛ばされるから、なんとか、元の世界に戻してもらはないと。)

そう思っていると。

「おまえか?巻き込まれた人間とゆうのは?」

と、老人みたいな声が聞こえた。

「あ、あの・・・・・!!」

俺は声が聞こえた方に首をむけたが、声が詰まった。

「・・あ・・あ・・あああ・・!!」

まともに喋れなく、こんな声しか出ない。

目の前にいる人物は、老人だった。

顔には、しわがあり、年は80~90ぐらいのかなり高齢にみえる。

しかし、そんな高齢にもかかわらず自分のような一般市民にもわかる、威厳がある。

体にはゲームに出てくる魔法使いが来ているようなローブを纏い。

頭には冠のようなものをかぶっていて、その冠の両端からは角のようなものがはいている。

髪は白と銀の中間あたりのような色で、胸あたりぐらいまで伸びていて。髪の色と同じ色の立派な髭を生やしている。

その堂々たる姿はどこかの王様のようだ。

そして、なによりも--

--ペタン--

と、俺は立っている力も出ず床に座ってしまう。

そう、なによりもその体から感じる圧倒的な威圧感。

それが俺の声をでなく、力が入らない原因だった。

「あ・あああの・・あの・・あなた・・・は神・・様です・・か?」

なんとかこれだけは言うことができた。

少なくてもこれを言えた俺は褒められてもいい思う。

そう思っていると、目の前の老人(神様?)は自己紹介をした。

「確かに余はおまえたちの中で神と呼ばれる存在だが、厳密に言うと神ではない。」

目の前の老人の言葉は静かだったけど、不思議と俺の耳に残る声だった。








「余の名はバーン、かつて魔界の王であった大魔王バーンだ。」

























あとがき

初めまして、作者の天魔です。

このサイトで数多くの作品をみて自分も書いてみたいと思い書きました。

まだまだ、初心者ですけど、完結まで頑張りたいと思います。

感想でアドバイスなどもらえるとうれしいです。
















[15911] 第一話 修正
Name: 天魔◆b849f691 ID:4dc52c8b
Date: 2010/05/22 06:41
第一話







「へ?」

それが俺の目の前の存在-バーン-の自己紹介を聞いた第一声だった。

(大・・・魔王?)

魔王てあれだよな、ドラクエのラスボスとかに出て来るやつのことだよな。

冗談・・・じゃないよなぁ

正直言って、この威圧感は異常すぎる。それに俺がここに連れられて来る時も、気づいたら、ほかの場所にいたっていう魔法みたいな現象だったし・・・・

じゃあ、本当に大・・・・魔王?

(え・・・えぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー)

心の中で絶叫を上げる。

(ちょ・・・魔王て、いfぁbるwmrwあべんb)

頭の中が自分が幽霊になったと理解した時のように混乱している。

(おおお落ち着け、落ち着け俺、そうだよまだバーンさんが悪い人だって決まったわけじゃないんだ。)

(ゲームや小説なんかでも悪魔や魔族にもいいやつがいるんだし。)

と、俺が一人で考えてると。

「おい、なに呆けておる。」

と、バーンさんが話しかけてきた。

威圧感を感じるなか、なんとか顔をあげる。

「余が名乗ったのだ、小僧おまえも名乗るのが礼儀というものだろう?」

それを聞いてまだ名前をいってなかったので、名乗ろうとしたけど、

「あ・・・あの・・あの・お・俺・・の・・。」

と、全然自己紹介できていない。

原因としては、バーンさんから感じる威圧感なんだけど。

「ふむ、ただの人間にはこれでもきついか・・・。」

--スゥゥゥ--

「あれ?」

威圧感が消えた。

「ほら、これで喋れるであろう?」

「は、はい。」

威圧感が消えたおかげで、なんとか喋れるけど・・・・

「あ・・あの・・腰が抜けて立てないんですけど・・・。」

「・・・・・・」

そ、そんな目で見ないでください、しかたないんです、立てなくなるほどの威圧感なんて、いままで感じたことがないんですから。

「ふうぅ。」

バーンさんから小さい溜息がでて、どんどん目線が高く・・・・あれ?

あれ?俺、浮いてる

「な、なんだ!?」

幽霊になったとはいえ、浮かぶのには慣れてないので、あわててしまう。

俺があわてていると、下に椅子とテーブルが現れた。

バーンさんは椅子に座ると、俺を向かいの席に座らせた。

「ほら、これで楽になっただろう。」

「は、はい・・ありがとうございます。」

話から察するにバーンさんが今のをやったんだと解った。

「それで、小僧おまえの名前は?」

そういえば、自己紹介の途中だった。

「えーと、俺の名前は斎藤大輝といいます。」

今度はうまく自己紹介ができた。

「ふむ、大輝か・・・では大輝よお前は今の自分の状況をどこまで理解している。」

と、バーンさんが質問してきたので、考える。

Q、ここはどこ?
A、まったく知らない場所。

Q、何でここにいる?
A、わからない。

Q、ここに来る前はどうしていた?
A、自宅のマンション近くで幽霊やってました。

結論、幽霊やっていたら、全然知らない場所にいた。

(全然意味わかんねぇ)

考えても、わかんなかったので、バーンさんにそのことを言う。

「あの、全然わからないです。」

「そうか・・・では余が答えよう、まず何が聞きたい。」

と、バーンさんが言ったので、俺は質問をする。

「え~と、じゃあここはどこなんですか?」

「ここは、名もなき空間、お前が住んでいた地上でもなければ、天界でも魔界でもない。」

(天界?魔界?)

俺はバーンさんからの返答を聞いて、困惑した。

(おいおい、なんか、ますますゲームや小説みたいな話だな。)

(それに、バーンさんも大魔王て名乗ってたし・・・・て!)

「あ、あのバーンさんは大魔王て言ってましたけど、本当なんですか?!」

声を少し荒げて言う。

「確かに余は昔、魔界の王で、大魔王とよばれていた。」

「そ、そうですか。」

す・・・すげーーーー、お・・俺、今魔王と喋ってるよ!!

しかも、ただの魔王じゃなくて、大魔王と!!!!!!

「じゃあ!俺を連れてきたのも、さっき浮かしたのは魔法なんですか!!?」

「ああ、余の魔法だ。」

す、すげげげげぇぇぇぇーーーーーーーーーーー

ほ、本物だーーーーーーーーーーーーーーー

大輝が一人で興奮していると。

「おかしなやつだ。」

バーンさんがそう言ってきた。

「へ?・・・俺、おかしいですか?」

おれは不思議に思って、聞き返す。

「ああ、おかしい・・・普通の人間が余と対峙するだけで、さっきまでのお前のように恐怖するものだ。なのにお前はさっきまでの恐怖がなく、今は嬉しさが見える、だからおかしいといったのだ。」

あ~まあ、さっきまでは怖かったけど、今はそれほど威圧感は感じないし、それになによりも・・・・

「え~とですね、俺ゲームとか好きなんですけど。」

「ゲーム?」

「はい、それで俺の好きなゲームに魔王ていう存在が出てくるので、今の俺の状況て、有名人に会ったようなものなんです。そりゃ、最初は怖かったですよ、正直言って殺されるかと思いました。けれど、バーンさんは立てなくなった俺を椅子にすわらせてくれたし、今も俺のことをきずかってくれてますし。だから、そんな怖くないです、・・・それにバーンさん、なんかそんな悪い人には見えないですし。」

「・・・・・」

俺が答えると、バーンさんは黙ってしまった。

変なこと言ったかな?

確かに最初、大魔王て聞いた時はドラクエに出てくるような人間を殺す魔王が頭に浮かんだけど、バーンさんそんな悪い人にはみえないし・・・。

「ふっ、余が悪い人ではないか。」

バーンさんが少し笑って、そう言った。

「大輝よそれはお前の勘違いだ・・・余は大昔、数多くの人間を、いやこの地上を消そうとした。」

「へ????」

地上を消そうとしたって、あまりにもスケールが大きいのでかなりまぬけな声が出た。

「余はかつて・・・それこそ、何万、何億もの数えるほどがバカバカしくなるほどの昔、軍を率いて地上を攻めた。その時、多くの人間が死んでいった。もっとも、余も最後は人間と神々の遺産に敗れたのだがな。」

そう言うとバーンさんは悲しいにのか、嬉しいのか、よくわからんない表情をした。

「それにしても、神々を憎んでいた余が神になろおうとはな、皮肉なものだ。」

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

俺はバーンさんの話を聞いて疑問に思たことがあった。

「あのバーンさんは最初に会った時も自分のこと神と言ってましたけど、本当なんですか。」

そう、最初バーンさんは神と呼ばれる存在て言ってた、けれどこれはおかしい、ゲームと現実がどう違うのかわかんないけど、神と魔王は本来敵対するような関係だ。

仮に本来仲がよかったとしても、バーンさんの話の中で、神々が憎いと言っていたからいい感情はいだいてないはずだ。

(なのに、なんでバーンさんは自分のことを神と言うんだろう?)









「ふむ、その質問に答えるにはこの世界のことを話さないとな。」

「この世界のこと?」

そう言うとバーン語りだす、この世界について。

「大輝よこの世界はお前が住む地上、天界、魔界があると言ったのは覚えているか?」

「はい・・・あのそれって異世界てやつなんですか?」

大輝が聴くと、バーンは首を振った。

「正確に言うには違う、異世界と言うのは読んで字のごとく、異なる世界、並行世界のように決して交わることがない世界のことを言う。」それに対して天界、魔界は方法さえわかれば自由に行きき出来る世界のことだ。」

そう答えるバーンに対して、大輝が興奮したように聴く。

「じゃあ!俺も方法さえわかれば行くことができるんですか!!?」

「ああ、できるぞ。」

バーンの答えを聞いて大輝はますます興奮する。

フィクションのなかでしか聞いたことないようなことが、次々に起こって大輝のテンションはうなぎ登りだ。

「さてと、興奮しているとこ悪いが話を続けるぞ。」

バーンがそう言ったので、大輝は興奮を抑えて聴く姿勢になる。

「さっきも言ったが、この世界には地上、天界、魔界、その他いくつかせの世界がある。その他の世界はそれほど規模が大きくないないので、主なのは最初に言った3つだ、そして、我々はそれを1つの世界としてる。」

「我々?」

バーンが言ったことに対して大輝が?を浮かべる。

「そう我々、神になれるほど強い力を持った者たちのことだ。」

「はい????」

大輝はますますわからなくなった。

「大輝、もしお前が過去にいくことができたらどう思う?」

「そりゃ便利じゃないんですか、未来を知ってるわけだから、いろいろ有利だろうし。」

大輝のゆう通り、未来を知っているのは大きなアドバンテージになる。

「では、お前が今の科学・・・飛行機など空を飛ぶ概念がない時代にに持っていったらどうだ?」

「かなり有名になると思いますよ、だって、空を飛ぶなんて、その時代の人たちにとっては・・奇跡・・みたい・な・・・こ・と・・だし。」

大輝は喋っている途中で気がついた、、空を飛ぶことができる、今の時代では珍しくはないだろうが、昔の人たちにとってはそれは奇跡だろう。

まるで、不可能を可能とする神のように。

「気付いたようだな・・・この世界の神とは全世界の中でもっとも強大な力を持っている者がなるのだ。それこそ、不可能を可能と出来るほどの力を持っている者がな・・・」

むろんただ力が強いだけではなれないがな、そう言ってバーンは話を締めくくった。

そう、単純に力があれば、不可能を可能とすることができる。

一番、力が強力であれば神と名乗ってもおかしくないだろう。

「・・・・・・・」

大輝は驚いている、それも当然だろう、今まで神など空想上かと思っていたのが、実は自分たち人間でもなれる可能性があるのだから。

(なんつーか、すげースケールが大きいな・・・あれ?)

大輝は考える。

(地上、天界、魔界、その他の世界から一番強い人がなるってことは!!!)

大輝はあわててバーンに聞く。

「バーンさん!!それじゃ、バーンさんて今この世界で一番強いんですか!!?」

「そうなる。」

バーンはなんでもない風に言うがそれはどんだけすごいんだろう?
自分が住んでいる地上でも一番強いならそれだけでもすごいだろう、それを多くの世界の強者よりも強いなんて、どれほどすごいのか大輝はもうわけがわからなっかた。

(ちょ、俺ってそんなものすごい人と今まで話していたのーーーー!!!)

正直、大輝にはもうバーンが雲の上の人をとおり超して宇宙のはるか彼方の人に見えた。

「そう驚くな、余とて多くの時間をかけて神になったのだ。」

「多くの時間?」

大輝は疑問に思う、バーンが戦う場面は見たことがないけど、最初に会った時の威圧感、それが更に強くなって襲いかかって来ることを考えたら--

-うん、俺会った瞬間ショック死するわ-

一秒もしないうちに答えが出た。












「さて、大輝よこれで余のことや世界のことは大体理解したな?」

「はぃ。」

大輝の頭はもう次から次へと出てくる、とんでもない話にショートしていた。

「さて大輝よ。」

バーンが今までより真面目な顔をする。

「なんですか?」

急に真面目な顔をしたバーンに大輝は少し驚いたが、今までの話に驚きすぎて、たいして驚かなかった。

「なんで余がお前をここに連れてきた理由を話そう。」

「――ッ!!」

大輝はその瞬間、思い出した。自分が死んで幽霊になったことを。

「バ、バーンさん俺は生き返られますよね?!!」

大輝は慌てて聴いた、大輝は生き返られると思った、今まででバーンがどんだけすごいのかを知ったし何よりも神様なのだから、きっと自分のことも何とかしてくれる。

そう思った。






















---だが---







「残念だが・・・・」







神たるバーンなら確かにたいていのことができよう

しかし、神の力を持ってもできないことがある。

---なぜなら







「余の力ではお前を生き返らせない。」


---なぜなら、神もこの世に生きる生き物なのだから。













あとがき
どうも、作者の天魔です。
この小説を書いていて思ったのですが、他の作者の方たちはすごいです。
これよりも長い小説を書き、なおかつ面白く書けるのですから。

さて、第一話を書き、このようなオリジナルの設定を書いたんですがどうでしたか?

では、また今度。



感想返し

<海原さん>
 感想ありがとうございます、面白くなるよう頑張ります。


<窓さん>
 はい、それを参考にしました、これからもどこかで見たようなシーンがでるかも しれませんので、読んでもらって、見つけてくれると嬉しいです。


<B3さん>
 作中で少し書きましたけど、バーンもかなり強くなってますから、DBのキャラ が相手でもやりあえます。 
 それに考えてみてください、自分にバイキルト、スカラ、ピオラをかけ
 相手には、ルカ二、メダパニ、マヌーサ、ラリホー、ボミエなどをかければ十分
 通用します。





















[15911] 第二話(上) 修正 あとがき追加
Name: 天魔◆b849f691 ID:05af5c6e
Date: 2010/05/22 13:08
第二話(上)









“神”

それは、人間という存在をはるかに凌駕する存在。

それは、全知全能の存在。

生き物を蘇生する、時間を操れる、大地を天候を意のままに操る。

そのような奇跡を起こす存在。

だが、はたして神は万能なのだろうか?

もし、神が万能というなら、なぜ戦争がおこる?

なぜ、罪のない人が死ぬ?

なぜ、みなが幸せな世界にならない?

なぜ?なぜ?なぜ?

なぜ、神はみなを救わない?

----














「そ、そんな・・・」

大輝は絶望した。

唯一の希望が砕かれたのだから、無理もないだろう。

「な、なんでですか?!!バーンさん神様なんでしょう!!?」

思わず、声を荒げる。

目の前の存在・・・バーンは神と名乗った。

ならなぜ、高々人間一人を生き返れせないだろう?

なんで?!どうして?!

「ルムハ。」

大輝が取り乱していると、バーンが呪文を唱えた。

「あれ?」

そうすると、大輝は落ち着きを取り戻した。

さっきまで、頭の中がごちゃごちゃだったのに、今はすごいすっきりしている。

「落ち着いたか?」

バーンが問いかける。

「あ・・はい・・・・あの今のは?」

大輝は不思議に思って、聴いた。

「今のは“ルムハ”、簡単に言うと、対象の気分を落ち着かせる呪文だ、メラよりも下の最下級呪文よ。」

(ルムハはってそんな呪文あったっけ?)

大輝は疑問に思った、自分はそれなりにドラクエには詳しい。

なのに、今までルムハなんて呪文には聞いたことがない。

(ま、いいか、そんな呪文もあるだろう・・・・・あれ?)

大輝は再び疑問が浮かんだ。

(さっきバーンさんメラって言ったよな?・・・メラ。ドラクエの中では最初の方に覚える初歩的な呪文だ。)

(て言うことは、バーンさんてドラクエの世界の出身なのか!?、魔界の王とも言ってたし。)

大輝がそう考えた。が、そうすると、奇妙に思った。

(まてよ、あれはゲームの世界の話だ。)

(確かに今の俺の状況はゲームや漫画、パソコンで読んだ小説のような、夢みたいな状況だ。)

(けど、これは夢なんかじゃない!。)

そうこれは、夢ではなく、紛れも無い現実だ。

だがそうすると、おかしなことになる。

現実に魔法なんてものがあるの聞かれれば、100人が100人、Noと答えるだろう。

バーンの話の通り(第一話参照)だと、この世界はいくつかの世界で成り立っている。

その世界のなかに(バーンが住んでいた魔界のように)魔法というものがあってもおかしくない。

だが、少なくても大輝の世界-地上世界-にはそんなものはない。

とゆうことは、大輝の世界は他の魔法文明がある世界と交流したことがないことになる。

ならなぜ?地上世界にはゲームや漫画とゆう形でバーンが使っている魔法(ドラクエの魔法)があるのだろう?

それに---

(バーンさん俺たちの世界に戦争をしかけたって言ってたしなあ。)

そう、バーンは昔、地上世界に戦争をしかけた。

これが本当だとすると、地上世界に魔法の痕跡があってもおかしくない。

そして、それを基にして物語として、語り継がれれば現代のゲームや漫画に書かれていてもおかしくはない。

(けれど、俺はそんな話は知らない。)

そう大輝は・・いや地上世界の人間はそんなことは知らない。

もしそんな戦争があったら、なんらしかの形で残っていてもおかしくないのに。

(考えててもしゃあないし、聴いてみるか。)

と、大輝はバーンに自分が疑問に思ったこと聴こうとする。

「あの、バー 「余が使う魔法がなぜお前たちの世界でゲームなどのフィクションの形で存在するのか・・か?」 !!」

大輝が質問する前に、バーンが問いかけてきた。

大輝は驚いた、自分が聴こうとしていたことを当てられたからだ。

「そう驚くでない、余は神だ、なんの力もないただの人間の考えくらい位読める。」

バーンは?を浮かべてる大輝にそう答えた。

(そういやぁ、ドラゴンボールなんかでも人の記憶を読み取ってしなあぁ、バーンさんも同じ神だからそんぐらいできてもおかしくないか。)

と大輝は、納得した。















「さて、大輝よお前の質問に答えよう。」

バーンさんがそう言ってきたので、俺は耳を傾ける。

「では。先ずなぜ余の魔法がお前たちの世界でフィクションとして存在しているか?」

バーンさんがそう言ってきた。

(ほんとなんで、俺たちの世界に存在してるんだろう?)

俺は心底そう思う。

「大輝、我々の世界の神の存在はどういう覚えてるか?」

「え~と、いくつかの世界があって、その世界の中から一番強い人が神になるんですよね。」

バーンさんが質問してきたので、俺は答える。

「そう、簡単にいえば、その通りだ。」

バーンさんがそう答えた。

良かった間違ってなかった。

俺は気になっていることを聴いた。

「あの、バーンさん、バーンさんは昔、地上世界に戦争をしかけたって言ってましたけど!地上世界って!俺が住んでいる世界で間違いないんですか!?」

「ああ、お前たちの世界で間違いない。」

俺はバーンさんの答えを聞いて、疑問に思った。

「じゃあ、なぜ俺たちの世界にバーンさんたち魔族や魔法の痕跡がないいんですか?」

そう、俺はそれが不思議に思った、そんなことがあれば、教科書に載っててもおかしくないのに。

「それは、さっき言った神々のせいだ。」

「神々???」

俺は???を浮かべる、神々てバーンさんのことなのか?

「そう、神にも世代交代というものがある・・・数年で代わることもあれば、数万、数億で代わるものもいる。」

(す、数億って。)

お前らどんだけ生きるんだよ。

「神が変われば、方針も変わる、人間を優遇する者もいれば、魔族を優遇するもの、その他の種族を優遇する者など様々だ。」

そこまで言って、一回言葉を区切り、少し声を荒げて言う。

「そして、余が生まれた時は人間が優遇されていた!人間は太陽の光が届く、平穏な世界をあたえ!我々魔族は、暗くよどんだ魔界に閉じ込められた!余はそんな神々が憎かった!!!」

正直言ってビックリした。

さっきまで話してたような穏やかな表情じゃなくて、本当に憎んでいると表情に出していたからだ。

正直言って、めちゃくちゃ怖いです。

威圧感が襲ってきます。

--ガクガクッブルブルッ--

体も震えています、だから威圧感を消してください、マジこえ~よ。

「そして、余は魔界に真の輝きを呼び、神になるため地上に攻め入った!!!」

そこまで言って威圧感を消してくれた。正直言って助かった。

バーンさんが地上に戦争をしかけた理由は解ったけど。

なんで、俺たちの歴史に載ってないないのが、神々のせいなんだろう?

「そして余は敗れ去った。」

俺が不思議に思っていると、バーンさんが続けて説明した。

「我々魔族の脅威が去った後、地上世界は繁栄を続けた、しかし、今度は人間同士で問題が起こった。」

「人間同士で?」

え~と、それって

「それって、戦争ですか?」

「その通りだ。」

あ~やっぱり、いつの時代もあるんだな。

「人間たちは共通の脅威が去った後、今度は自分たちの欲望のために争った。これは、神々も見守っているしかなかった、どこかに味方するわけにもいかず、地上世界に直接干渉するのは禁止されているからだ。やがて、争いの火種は大きくなっていき、世界が滅亡する目前まで行った。」

世界の滅亡てどんだけ争っていたんだよ。

「人間たちは、気づかなかったんですか?」

少なくても、世界の滅亡までいけばさすがにやめると思うんだけど。

「ああ、己の欲望に囚われた人間ほど愚かな者はいない。それに、世界の滅亡といっても、最初はいきなり消えるわけではなかった。」

最初は?

「最初は人間たちが作った、魔導兵器による大気汚染や幾多の兵器におよるエネルギーの消費など、原因だった。」

え~と、つまり兵器による化石燃料とかの有限エネルギーの消費や大気汚染で人間が住めなくなる。

そういった意味での滅亡ってことか。

「それが、ある時、人間たちが黒の核晶-くろのコア-を作ろうと研究しだした。」

「黒の核晶?」

なんか、また新しい単語が出てきた。

「黒の核晶・・・魔界の奥地にある黒魔晶という魔力を無尽蔵に吸収する石を原材料とし呪術で加工して完成させる、悪魔の兵器だ。その破壊力は大陸を跡形もなく吹き飛ばす。」

た、大陸て、核兵器なんかよりもやばくね、それ。

「もっとも余も昔、それを地上に落とし地上を消滅させようとしたがな。」

「えええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!!!」

ええそりゃ大声もでます!目の前の人、そんな物騒なもの使おうとしたんですよ。

「そう大声をだすな、結局失敗したのだから。」

そう言ってもですね・・・・・うん、ちょっと待てよ。

「あの、まさか俺の世界に残っていたりしませんよね?」

お願いだから、残ってないて言って!!

「ああ、残ってるかもしれないな。」

はい、アウトォォォーーーーーーーーー

「残ってるって、のおあvmpんびぱvみbんpg」

ええ、取り乱しますよ、大陸を吹っ飛ばすの兵器が自分の世界にあると言われているんですから!!!!

「ルムハ。」

俺が取り乱していると、バーンさんが呪文を唱えた。

「ふぅー。」

気分がかなり落ち着いた。

便利な魔法だな。

「安心しろ、余が落とした黒の核晶はその当時の人間たちがどこかに封印した、爆発の危険もない。」

そうは言ってもですねぇ~

しかし、そんなもの作ろうとしたなんて、

「あの作ろうとした人間はどんな恐ろしいものかしらなっかたんですか?」

そう、仮にも自分たちの世界を消滅させようとした兵器だ、さすがに戦争のためとはいっても、そんなもの作ろうとはしないと思うけど。

「それは時の流れのせいだろう・・・黒の核晶を作ろうとした人間たちは我ら魔族と争っていた時代より数千年も後の出来事だからな。」

あ~確かに数千年未来の人間が数千年も昔のことは知らないよな。

「なぜ数千年後の人間たちが黒の核晶のことを知ったのかはわからん。魔族が持ち込んだのか、その当時の人間が何らかの方法で知ったのか・・・なんにせよ、それが地上世界の滅亡を早めることにした。」

そりゃ、そうだよな・・大陸を吹っ飛ばす、そんな兵器、何個も作ったら一瞬で世界が吹っ飛ぶわ。

「そこで神々は一度リセットした。」

「リセット?」

どういう意味だ?

「神々は地上世界を守るため、そこに住む人間たちを一度消した。」

「なっ!!!」

け、消すって

「消すといっても肉体を消滅させ魂を転生させることだ。」

「て、転生?」

それって、小説なんかにあるあの転生のことだとね?

「そう・・人間の魂を一時的に保管し、黒の核晶や大気汚染などの原因になった魔導兵器、魔法文明の記憶を封じ、地上世界が回復した後、再び肉体を与えて転生させる。」

その後は、お前が知っている歴史通りだ--バーンさんはそう言って締めくくった。

あれ?でも--

「何でそれで、俺たちの世界にフィクションとして残るんですか?」

それが疑問だった。

バーンさんが歴史に残んないのは解ったけど、それだと記憶を封じ込められた魔法文明も残んないはずだし。

「それは魂の記憶だ。」

俺が考えていると、バーンさんがそう言ってきた。

「魂の記憶?」

「そう・・・いかに記憶を封じ込めようと、なんらかの原因で思い出すこともある。とは言っても、せいぜい曖昧な記憶しか思い出せないけどな・・・恐らくお前たちの世界で我々のことを思い出した者が、ゲームなどの形にしたのだろう。」

バーンさんはそう言った。

なるほど、曖昧な記憶しか思い出せないから、さっきバーンさんが唱えた“ルムハ”なんて言う最下級呪文とかよりも、メラやヒャドなんていった目に見える魔法の方が記憶により深く残ったてことか。

俺が初めてドラクエの魔法を知った時、なんかやけに頭に印象ずいたのはせれが原因だったのか。

それにしても---



「神々ねぇ。」

なんつーか、バーンさんが俺たちの世界を消滅させようとしたのには驚いたけど、その原因を作ったのは神様なんだよな。

しかもその後、自分たちが守ってきた人間が世界を消滅させようとしたなんて。

「皮肉だな。」

口から自然にその言葉が出てきた。

皮肉・・・本当にそう思う。














「大輝、これがお前たちの世界に余が使う魔法が存在している理由だ。」

バーンさんが話しかけてきたので、考えるのをやめ聴く姿勢になる。

「では、次はなぜお前が生き返れない理由を話そう。」

「!!ッそ、そうですよ、なんかまたスケールが大きい話で忘れていましたけど、何で生き返らせることができないんですか?!!・・・バーンさんがドラクエの魔法をつかえるんなら、蘇生呪文のザオラルやザオリクがあるんでしょ!!」

そう、ドラクエには蘇生呪文があるはずだから、それを使えば、俺も生き返れるはずだ。

仮にも大魔王、今は神になっているんだから、魔力とかの問題はないと思うんだけど?

俺がそう考えていると。

「それは・・・・どうやら帰ってきたようだな。」

バーンさんはそう言って、俺の後ろの方を向いた。

何だろう?

俺はそう思って、後ろを向くと。

「ヒィッ!!」

--ガタッ--

思わず情けない声を出して、椅子から転げ落ちた。

後ろをむいた先には一人の人?が立っていた。

白っぽいローブを顔まで纏って、首?に大きいネックレスのようなものを付けている。

そこまではいい、そこまでは---

俺がビックリして情けない声をだしながら、椅子から転げ落ちたのは。

その、なんつうか・・・変なんだよ。

ローブの前が開いていて、普通そこから、体が見えるはずなんだけど。

その人?は黒くて見えないんだよ、影になっているとかじゃなくて、本当に見えないんだよ。

しかも、その黒くなっているところの胸?が光っているし、目?もなんか光っているし。

正直言って、幽霊がローブを着てる・・・そんな感じだ。

俺がそう思っていると、その人?はバーンさんに近づいていった。

「戻りました・・・バーン様」

「御苦労・・・ミストバーン」














●ルムハ・・・オリジナル魔法、対象の興奮状態などを鎮める魔法。
       しかし、混乱などは治せないので、戦闘にはそんな役に立たない。
       作品中のような時は便利。
       ランクとしては最下級の呪文。
       







あとがき

疲れた~、オリジナルの設定を書くとこんな疲れるものんですね。
さて、今回の話を見てこんなのバーンじゃないとか思った人もいると思いますが
このバーンはある程度性格が丸くなっています。イメージとしては、神と融合したピッコロのようなものです。
いずれ、そうなった理由や世界観の説明などを書き投稿します。

追記
このバーンは神になって他の世界のことを見守っているので、自分たちの存在がゲームになっていたり、現代で使われている言葉もしゃべります。(今回あったフィクションとか)

黒の核晶について作者の説明不足があったので追加しました。



では次回。




感想返し

<G3さん>
 偶然とは違うです、その理由は次回書く予定です。
 あと、あとがきにも書きましたが、この作品バーンさんは性格が丸くなっています、なので、原作道りではないです。
 文章が稚拙すぎるのは作者の力不足です。
 これからも感想お願いします。



<∀さん>
 はい、チートです。
 ドラクエの呪文はかなりすごいと思います。
 バイキルトなど攻撃力を二倍にしますからね。
 つまり、肉体が強ければそれだけ攻撃力が上昇するわけだから、孫悟空やベジー
 タなんかに使ったりしたら・・・・・・・・・



<ろむな人>
 使いません。あれは技というより、ナメック星人独特の能力だと作者は考えてます、使うのはあくまで“技”です。
 
























[15911] 第二話(中)
Name: 天魔◆b849f691 ID:05bc9d00
Date: 2010/05/22 13:11
第二話(中)










「バーン様、残念ながら、取り逃がしました。」

「そうか・・・」

バーンさんが、今来た人-ミストバーンというらしい-の報告を聞いてそう嘆いた。

「まあよい・・・さすが太古の遺産なだけはある、一筋縄ではいかないか。」

「そのようです。」

バーンさんとミストバーンさんが話している。

俺は状況が飲み込めず、バーンさんに聴く。

「あの・・・バーンさんそっちの人は・・・?。」

話しに割り込んだ、悪いと思ったのか、小さな声が出た。

「うん?・・・ああ、この者はミストバーン、余の側近よ。」

俺はバーンさんの紹介を聞いて、ミストバーンさんの方に顔を向ける。

う~ん、なんか寡黙な人だ。

それが、俺の第一印象だった。

「大輝よ、これから、お前が生き返ることができない理由、そして、なぜ余がお前を呼んだか・・・・その理由を話そう。」

バーンさんがそう言ってきたので、俺はバーンさんの方に顔を戻す。

「先ずはこれを見よ。」

バーンさんがそう言うと、目の前の空間に映像が浮かんだ。

そこには---

「ッツ!!」

そこには俺が映っていた。

映っていた俺は人気のない道を歩いていた。

それは、俺が死ぬ直前に歩いていた、マンションへの帰り道だった。

(そうだ、俺はこの後・・・)

画面が高い視点に変わった。

「なっ!!!」

驚いた声がでた。

画面には俺が背中から血を噴き出している場面がでている。

そして--俺を切りつけた犯人は・・・




「デビルアーマー。」




そう、俺を切りつけた犯人は、ドラクエに出てくるモンスター

---デビルアーマーだった。

体全体を鎧で包み込み、右が黒、左が赤、という左右非対称の色の鎧を着てる。

左手には、骸骨のような悪魔のような模様が書いてある、盾を持っている。

そこまでは、俺が知っているデビルアーマーだった。

違うのは、持っている武器だった。

俺が知っているのは、槍の半分が大きい刃になっている戟のような武器だった。

けどそのデビルアーマーは剣を持っていた。

別におかしくはない、戟のような武器はゲームの中だけだったから、現実にいたら、少し違うかもしれない。

けど、そいつが持っている剣はおかしかった。

刃の部分が二つの叉に別れていて、剣の刃の先が斧みたいになっていて

そして、その付け根に赤黒い球がついていて。

その球みたいに、全体が赤黒い色をしていた。

そして一番変だったのが---

(動いている?)

そう、その武器は叉に別れた部分が生き物みたいに動いていたんだ。

(なんだよ・・・あれ?)

そう思った。

こんな剣見たことがない。

禍々しい---その言葉が似合う剣だった。

そう思っていると、その剣をを持ってるデビルアーマーは俺に近づいた。

そして、俺の体から、光の球が出てきた。

デビルアーマーはその光に球の剣を近づけて---

--ガガツ--

後ろに、飛び退いた。

いきなり頭上からムチの用な物が自分に向かってきたからだ。

デビルアーマーが顔を上に向けると、そこにはミストバーンさんがいた。

ミストバーンさんは右手をデビルアーマーにむけて、その向けた手の指が伸びていた。

どうやら、さっきのムチみたいなのはこの指だったみたいだ。

--ヒュルルッ--

ミストバーンさんは指を戻して、デビルアーマーを見つめている。

デビルアーマーもミストバーンさんを見たまま動かない。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

--ビュンッ--

次の瞬間、デビルアーマーが消えたかと思うと、ミストバーンさんの目の前に現れて、剣で切りかかった。

--スゥ--

しかしミストバーンさんはそれを難なく避ける。

--ブンッ、ブンッ、ブンッ--

デビルアーマーは剣での追撃をするが、ミストバーンさんは難なくかわす。

しばらく続いていたが、デビルアーマーは追撃をやめ、距離をあける。

--ボオッ--

デビルアーマーの剣に炎が宿る。

(あれって・・・もしかして、火炎切り!)

そう、それはデビルアーマーの特技の一つ火炎切りだった。

--ビュンッ--

デビルアーマーは今までより速く動き、姿が消えたと思えばミストバーンさんの後ろに現れた。

デビルアーマーはそのまま切りかかったが。

--スゥ--

またしてもミストバーンさんは避けて、右手の指を伸ばし、あのムチみたいな攻撃をする。

そのスピードから避けるのは無理だろう。

コンクリートの道路に深く突き刺さっていたほどだ、デビルアーマーの鎧も簡単に貫くと思った。

--ガツッ--

しかし、デビルアーマーはそのスピードに反応して、盾で防御した。

しかも、その盾の模様が生き物みたいにミストバーンさんの指を咥えているのだ。

ミストバーンさんは離そうとするが、どうやら離れないようだ。

デビルアーマーはその隙を逃さず、剣で切りかかった。

--バッ--

しかし、ミストバーンさんは左手を向けてたとおもったら。

--ギギギッ--

デビルアーマーの動きが止まった。

まるで、見えない糸が絡まったようだ。

デビルアーマーが動きを止めたら、ミストバーンさんの指を咥えていた盾も指を離した。

ミストバーンさんは指を戻すと、

--ジャキッ--

指が剣みたいになった。

--ザンッ--

ミストバーンさんは、そのままデビルアーマーを切り裂いた。

--シュウッ--

デビルアーマーは消えていき。剣だけが残った。

ミストバーンさんが剣に近づいていく。

--カッ--

剣が光り一瞬画面が、光で見えなくなった。

光が治まると、そこには剣の姿は見えず、ミストバーンさんが佇んでいた。

--ヒュン--

ミストバーンさんは、そのまま消えた。

















「あの・・・・今のは?」

大輝は困惑しながら聴く。

自分が殺される場面や生れてはじめて、高度な戦闘を見たせいだ。

「あれは・・・・あの剣は“聖魔八武具”の一つ、“魔剣ネビリム”。」

「聖魔八武具?魔剣ネビリム?」

大輝はバーンに聞き返す。

「そう・・・・太古の昔、それこそ余がまだ生まれる前、まだ神々がいない程の大昔。」

バーンは、まるで昔話を聞かせるように話しだす。

「全ての生きとし生けるものが覇権をめぐって争っていた時代に作られた、兵器・・・・いや、兵器と呼ぶのでさえ甘すぎる代物だ。その威力は、黒の核晶を凌駕する。」

「なっ!!!!」

大輝は驚いた、それもそうだ・・・黒の核晶は大陸を吹っ飛ばすほどの威力だ。

それすら超える破壊力が、あの剣にあるのだから。

「聖魔八武具は太古の遺産だ、しかし、そのあまりの恐ろしさにはるか昔に封じられてた。そして、その管理は代々神たちがおこなってきた。しかし、ある時何者かが封印をやぶり、聖魔八武具を手に入れようとした。」

バーンは、さらに言葉を紡ぎだす。

「“聖魔八武具”・・・・すなわち、“魔剣ネビリム”、“聖剣ロストセレスティ”                
                 
                 “魔杖ケイオスハート”、“聖杖ユニコーンホーン”

                 “魔弓アポカリプス”、“聖弓ケルクアトール”

                 “魔甲ディアボロス”、“聖甲ガルディウス”

                  の八つの武具・・・これら全てを手に入れようとした。」

大輝は、そう言い終わったバーンに自分が疑問に思ったことを質問した。

「あの~それって全部黒の核晶を上回る力があるんですか?」

「ああ、あるぞ。」

「えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

大輝はさっきよりもはるかに驚いた。

黒の核晶よりも強力な武具・・・・それが、八つもあるのだから。

「そう聖魔八武具は一つでも世界を一瞬で破壊するほど力がある、だからこそ封印されていたのだが、封印が破られ、七つの武具が行方不明になった。」

「え、で、でも。」

大輝はそうもらす。

自分を殺した剣は魔剣ネビリムとバーンが言っていたからだ。

(何で行方不明の剣が俺の世界にあったんだ?)

大輝は不思議に思う。

そんな物騒な剣なら、すぐ捜索されるかと思ったからだ。

それに---

「あの何で俺が殺されなくちゃいけないんですか?!それにあのデビルアーマーは?!」

大輝は声を荒げて言う。

デビルアーマーが存在するのはおかしくない。

違う世界(魔界とかなら)にいると思うからだ。

しかし、殺される理由がわからない?

斎藤大樹という人間は、善人か悪人と問われれば、善人だろう。

と言っても、善人かと言われれば、そんな善人ですと胸を張れないだろう・・・言うなれば、常識を理解している、どこにでもいる一般人だろう。

そんな、自分が殺される理由が解らない。

「封印を解いた者なのかはわからんが、ここ数年、ネビリムを使って魂を集めるものが現れた。」

大輝がそう思っていると、バーンが大輝の質問に答えた。

「魂を?」

「そうだ・・・大輝、お前が殺された後お前の体から出てきた、光の球だ。」

大輝はさっきの映像を思い出す。

確かに自分の体から光の球が出てきた。

「なんでそんなものを?」

大輝が不思議そうに質問する。

「それは、魂が人間・・・いや、生き物の体で最も強いエネルギーの塊だからだ。」

「強いエネルギー?」

大輝はまた?を浮かべる。

「そうだ・・・神々は一度お前の世界をリセットして記憶を封じ込めたが、魂に刻まれた記憶までは完璧に消せなかった。・・・魂の力とはそれだけ強力なのだ。」

魂--具体的に説明しろと言われて、説明できる人間はどれくらいいるだろうか?

例え説明できたとしても、それが正しいか証明できる手立てはない。

そんな不確定な存在。

しかし、バーンが言ったように神々でさえ完璧に記憶を消せなかった。

魂とはそれだけ強力な力を秘めている。

「そして、聖魔八武具は全て意思を持っている。」
 
「意思てことは、生きているんですか?」

大輝は思い出す、魔剣ネビリムが不気味に蠢いていたことを。

「そう・・・生きているということは成長をする、戦えば戦うほど、敵を倒すせば倒すほど強力になっていく。しかも全てがエネルギーを無限に高められていく。故に魂は聖魔八武具にとっては手っ取り早く、強力な力をつけるには、都合のいい餌なのだ。」

バーンの説明が終わった。

大輝は、

(戦えば戦うほど強くなっていくて、サイヤ人みたいだな。)

なんてこと考えていた。


















「あの、俺が殺された理由は解りましたけど、何で生き返れないんですか?」

俺の状態が幽霊=魂の存在のようなものなら、肉体さえあれば蘇ることができると思うんだけど。

「さっき言ったが聖魔八武具は余たちの理解をはるか上にいく太古の遺産だ。」

バーンさんがそう言ってきた。太古の遺産で強力な力を秘めているのは解ったけど、それが蘇ることとどう、関係するんだろう?

「ネビリムは、その中で厄介な能力を持っている。」

「厄介な能力?」

なんだろう?

「それは切りつけた相手の肉体を呪い、確実に死に追いやるものだ・・・しかもその体はいかなる医療も回復呪文をうけつけない。」

「か、回復できなくするって!!」

それは、どれだけ恐ろしいことなんだろう。

ゲームとかだと、そんなことどうした?

て思うかもしれないが、考えると、それは少しでも切りつけられれば、呪いを受けて死にいたり、しかも回復できない体になる。

(ほとんど、反則な能力じゃねえか)

(・・・・うん?回復できなくするってことは・・・)

「あ、あの!!それじゃ、それが!」

「そう、お前を蘇生できない理由だ・・・残念だが、聖魔八武具は余の力を上回っている。」

バーンさんが、俺の考えを肯定する。

(そんな・・・・・・)

深い絶望が俺を襲う。



--ポタッ、ポタッ--



「ひぐっ・・・・ひっぐ・すん・・・・」

俺の目から涙が流れる、なさけないと思うけど、もう生き返れない。

そう思ったら、涙が溢れてきた。

(もう・・・できないんだよな・・・家族に会うことも・・・友達とバカなことすることも・・・・・)

ハハ、今頃昔のことを思い出してきた、これが走馬灯てやつか・・・・





大輝が思い出すのはつい先日までの出来事。

大学に行き、友達に会い、遊び、実家に帰り家族と会う。

そんな、当り前であった日常・・・・



そんな日常が壊された・・・その絶望は計り知れない。

(もう終わりなんだよな・・・)

大輝がそう思っていると、





「大輝よ、生き返りたいか?」





「えっ?」

バーンがそう問いかけてきた、大輝はまだ涙が溢れている顔を上げる。






「一つだけ・・・・一つだけ、お前を生き返らせる方法がある。」





























あとがき
どうも、作者の天魔です。
今回初の戦闘シーンを書きましたが、いかがでしたか?
戦闘シーンを見て、ダイの大冒険を知っている人なら、
ミストバーンならデビルアーマーを瞬殺できるんじゃね?
て思った人もいると思います。
この作品のミストバーンも原作よりはるかに強くなっていますが、それだけ聖魔八武具は強力だと言うことです。

聖魔八武具の設定についてはどうでしたか?
正直言ってめちゃくちゃな設定だと思いますが、こうでもしないと話が書けないので、その点はご了承ください。

本来ならこの話でバーンが大輝を呼んだ理由を書こうとしたのですが、思ったより長くなってしまってので次回書きます。

ではまた次回。





感想返し



<プチ魔王さん>
これは作者の説明不足でした。
黒の核晶を研究したのは原作より数千年後のことです。
さすがにこれだけたっていれば、人々の記憶から無くなりますし、例え書物などに残っていたとしても、数千年も昔のものが現代の科学より強力だとは思わないだろうと思い書きました。



<九尾さん>
はい、そうです。
具体的には、細かなところでは違いますけどほぼ私たちの世界と同じ歴史をたどっています。



<通行人>
誤字報告ありがとうございます。
誤字て不思議ですよね、書いてる時は違和感がないのに、改めてみると、違和感ありまくりなのですから。
これからも、誤字があったら、報告してくれるといれしいです。





















[15911] 第二話(下)  修正
Name: 天魔◆b849f691 ID:68c0eb82
Date: 2010/05/22 13:16
第二話(下)













「生き返らせる方法?」

大輝は一瞬呆けた顔したが、その意味がわかった瞬間バーンに聴いた。

「な、何なんですか?!!それは!!」

かなり必死にその方法を聞こうとする。

無理もないだろう、自分が生き返られる方法があると言われたのだから。

「その前に大輝、お前は生き物を・・・人を含めて殺せるか?」

「・・・・えっ?」

大輝は予想外の質問にそんな声がもれた。

「それが、俺のこととどう関係するんですか?」

大輝はしばらくたって、バーンに聴いた。

「お前が死ぬ原因になった、魔剣ネビリム・・・これは、聖魔八武具の中では上位の力を持っている。しかも、ここ数年魂を食らい。力を増大させた。その呪いを解くためには同じ聖魔八武具の対極の存在・・・聖剣ロストセレスティが必要なのだ。」

「聖剣ロストセレスティ?」

大輝は?を浮かべながらその剣の名前を言った。

「そう・・・“光”と“闇”、“表”と“裏”があるように、聖魔八武具も“聖”と“魔”と言うように対極の存在になっている。同じ聖魔八武具の呪いを解けるのは同じ聖魔八武具の対極になるものだけだ。」

大輝はそれを聞いて、一抹の希望を聴いた。

「あの、一つ残っている武具がそれってことは・・・」

バーンは行方不明になったのは、七つと言っていた(第二話(中)参照)ので、もしかしたら、それが・・・と思い聴いたが、

「残念だが違う・・・余のもとにあるのは、魔甲ディアボロスだ。」

その希望は打ち砕かれた。

大輝は、ガクッっと肩を落とした。

しかし、すぐ顔をあげ、

「あの、それが俺が・・・人を殺すこととどう関係するんですか?」

と大輝は言った。

その顔には困惑の色が浮かんでいた。

呪いを解くのと、人を殺すというのが、どうしてもつながらなかったからだ。

「聖魔八武具は意思を持っていると言ったな。」

バーンンがそう言ってきたので、大輝は頷く。

「聖魔八武具は、契約者以外がむやみに使おうとすると、使おうとした者の肉体をのっとる。そして、のっとられった者はただ暴れまわるだけの、殺戮者になる。」

「えっ、で、でも、さっきのデビルアーマーは?」

大輝が思い出すのは、自分を殺した犯人デビルアーマー。

あのデビルアーマーは、少なくともそんな暴れまわっていたようには見えなかった。

もし、そんことをしたら、大輝がいた住宅街など吹っ飛んでいただろう。

「恐らく、契約者が剣に命じているのか、剣そのものが命令しているのかのどちらかだろう・・・そのおかげで、我らの追跡を逃れたがな。おまけに、ネビリムの反応を使用するまで、感じさせない・・・そして、捕らえようとすると使っていた者が消滅して、証拠を残さない。」

その声は、まるでその相手を感心するかのようだった。

「犯人はよほど用意周到なやつだ。」

バーンがそう言って、大輝はなるほどと思った。

使うたびに使用者が変わり、こちらに認識させない、しかも、尋問も拷問もできないのでは犯人を特定するのは難しいだろう。

しかし、

「あの、それでなんで俺が人を殺すんですか?」

大輝はそれだけが解んなかった。

全ての聖魔八武具が暴走の危険性があるのは解った。

そして、相手が暴走しているのなら・・・殺す危険性もあるのはわかったが、

大輝がそれを行う理由が見えてこない。

むしろ、そんなことすれば一瞬で自分が殺されるだろう。

「俺が探すのではなく、バーンさんや、ミストバーンさんが探せばいいんじゃないんですか?」

そう、仮にも目の前の存在は一流の実力者だ、自分が探すより、任せた方が確実だろう。

「我らはむやみやたらに動くわけにはいかないのだ。」

大輝の質問にバーンが答えた。

「先程も言ったが、犯人もその目的も特定できない、もしかしたら神の関係者の中にいるのかもしれない・・・放っておけばこの世界が消滅するかもしれない。それに我らがむやみに地上に干渉したら何が起こるか解らないのだ・・・仮に干渉して世界に影響が出たら本末転倒だ。」

そう、バーンが危険視していたのそれだった。

もし、神候補の中に犯人がいたら、自分の留守を狙われるかもしれない。

仮にいなくても、自分たちが地上世界などに干渉したら何が起こるか分からない。

ミストバーンが、ネビリムを取り逃がした後、すぐ消えたのはそれが理由だった。

「そんな・・・あ、あのそれじゃ、他の体に転生させることはできないんですか?」

大輝はバーンの答えを聞いて、自分勝手だと思ったが、世界が消滅するかもしれないと言われてなんとか納得した。

そこで、代案をだした。

このままでは、自分がよく読む小説のように他の世界に行き聖魔八武具を集めさせられる。

そうなった場合、目の前の存在クラスの強敵と戦うことになるかもしれない。

大輝はそんなことはごめんだった。

そこで考えたのが転生だった。

転生・・・すなわち、他の体で生き返られることができたら、まだ希望がある。

自分の世界ならよし、例え違う世界でもバーンは方法さえわかれば(第一話参照)
行き来できるといったので、その方法を見つけて、両親や友達に会えると思ったからだ。

しかし--

「残念だが、出来ない。」

その淡い希望もかなわなかった。

「何でですか?!!バーンさん神様なんでしょう?だったらそれぐらい・・・」

大輝はそう思った。

それは自分が読んだ小説などでは簡単にやっていたからだ。

だが、これは現実であって、決して小説のような展開にならない。

「そもそも生き物を蘇生させるというのが、禁忌なのだ。」

そう、生き物を蘇生させる。

それができれば、どんな素晴らしいことなんだろう。

しかし、それは自然の摂理を犯すことであり、そんなことをすれば世界がめちゃくちゃになってしまう。

それに--

「それに大輝よそれは結局、人を殺して体を奪うことと同義だぞ。」

「えっ?」

大輝は頭に?を浮かべる。

それは自分が読んだ小説ではそんなこと言ってなかったからだ。

だが、考えてもほしい。

もし、現実に転生したとする。

そうすると、当然自分の魂が新たな体に入り、体を手に入れる。

--じゃあ、もとの持ち主の魂はどうなる?--

体を動かしているのは誰だ?--と聞かれれば、間違いなく自分が動かしている。

では動かしている精神=魂は誰のだ?--と聞かれれば、それも自分だ。

では---

もとの持ち主の魂はどうなる?

--答えは消滅する--

例え消滅しなくても、自分の魂に食われる・・・それは結局その人を殺すことと同義だ。

バーンはそう大輝に説明した。

「・・・・・・」

大輝はバーンの説明をい聴いて俯く。

無理もない・・・斎藤大樹という人間は、間違いなく一般人だ。

では、一般人が自分のせいで人が死ぬかもしれない。

それを解っていて、実行できるだろうか?

少なくても大輝にはできなかった。

「なら、なんで・・・」

大輝の口から唐突に言葉が漏れだす。

「なんで俺をここに連れてきたんだよ!!!!あのままほっとけばよかったじゃねえか!!!!」

大輝は敬語をつか使うことも忘れ、怒りの顔でバーンを睨みつける。

あのままほっといてくれたら、大輝は何も知らず成仏し、私たちが言うあの世に行ったであろう。

しかし、知ってしまった。

自分が生き返れる方法を・・・しかし、それがかなわないと知った。

一度希望をもたされて、希望を打ち砕かれた。

はたして、その時に襲ってくる絶望はどれほどのものなのだろう。


















俺はバーンを睨みつけたまま動かない。

当然だ、こいつの---こいつらが、聖魔八武具なんてのを盗まれなかったら俺は死ぬことがなかった。

--それはただの八つ当たり、実際、聖魔八武具が行方不明になったのはバーンより前の神が管理していた時だったが、そんなこと大輝が知るはずもない。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

バーンは俺を見たまま何を言わない。

俺は再び口を開こうとすると

「大輝よ、だからこそ余はお前を呼んだのだ。」

そんなことを言ってきた。

「だからどういう意味・・・・ですか」

少しは冷静さが戻ってきたので、敬語で話すことができた。

もっともまだ怒りは収まっていないけどな。

「死んだ者を蘇生させる・・・それは禁忌であるが、今回のことは別だ。今回のことは我ら神にも責任がある。だから、今回は特別に蘇えらせようとした。」

バーン・・・さんはそう言ってきたけど。

「それ、結局無理なんでしょう?」

そうだ、聖魔八武具はバーンさん・・・神の力を超える。

だから、バーンさんの力では蘇らせることができず、唯一の希望でもあるロストセレスティなんてのも行方不明だ。

しかも、バーンさんたちは長く現世に干渉するはけにはいかない。

(どう考えても無理だろう)

俺はそう考える。

もし、蘇ることができるのなら

「いや無理ではない・・・それはお前が聖剣ロストセレスティを見つけることだ。」

そう、それが俺が蘇れる可能性だ。

バーンさんたち神の中に犯人がいるのかもしれない

現世に長く干渉できない

ではどうすればいい?---

---それは、第三者の力を借りることだ。

そうすれば、自分たちは神や現世の監視ができるし、地上に影響をださなくてすむ。

しかし、そうすると

「それって俺が戦い・・・最悪人を殺すかもしれないってことですよね。」

そう、それが俺の決断を鈍らせた。

これが普通に落し物をさがすようなことだったら、俺も協力しただろう。

だけど、人を殺すかもしれないといわれれば、話は違ってくる。

殺す---喧嘩したときなど、つい言ってしまう言葉だが、それを実行したことなど俺にはない。

それに---

「俺そんな強くないですよ?」

そう--俺は格闘技なんか経験したことがない。

せいぜい学校の体育でやったぐらいだ。

もし仮に小説のように力をもらったとしても、うまく使いこなせないだろう。

ロストセレスティが契約者を見つけてなければいいが、見つけていた場合

最悪、戦闘になるかもしれないのだ。

そうなったら、俺は使い方も知らない力で戦うことになる。

そうなった場合、俺は殺されるだろう。

例え、俺の方が強いとしても、それは俺が殺すかもしれないということだ。

「安心せよ。余とここにいるミストバーンがお前を強くする。」

「強く?」

俺が考えていたら、バーンさんが話しかけてきた。

「そう本来なら余がお前たちをこの空間に呼ぶことも禁止されている。だが、さっきも言ったように聖魔八武具のことは余達神にも責任がある。だから、余はお前を呼んだ・・・お前を強くし、聖魔八武具の内一つでも集められたら、他の神候補や古参の神たちも文句は言うまい。だから、大輝よ・・・」

そう言って、バーンさんは俺を今までより真剣に見つめたきた。

「余に力を貸してくれないだろうか?」

そうバーンさんが言ってきた。

・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・


蘇りたいか?--蘇りたいにきまっている。

目の前の存在のようなものと戦ってもか?--怖いけど、それで生き返れるなら。


では、


--人を殺してもいいのか?--

「・・・・・・・・」

俺はしばらく考えたが、まだ答えを出せずにいた。

「今すぐ答えを聞かせてもらわなくてもよい。」

考え事をしていたら、バーンさんがそう言ってきたので、俺は一度考えるのをやめる。

--スゥ--

バンさんが手を俺に向けると、目の前に光の球が出てきた。

俺はその光の球をつかむと--

「これは・・・キメラの翼?」

その中にはキメラの翼が入っていた。

「それを使えば、この空間に戻ることができる・・・しばらく地上に帰って考えるといいだろう。」

バーンさんが言ったことに対して、俺は頷く。

この空間は何も無い空間なので、正直言って落ち着かない。

「大輝よ・・・余はお前がどんな選択をしても何も言わん。このまま、成仏するのもよし、強くなり、ロストセレスティを捜し蘇るのもよし。ただし・・・・」

バーンさんはそこまで言って、一度言葉を区切った。

そして、今までより少し目を厳しくして言ってきた。

「後者の選択をするなら覚悟しろ・・・ハッキリ言って地獄を見る。」

ジッとバーンさんの目が俺を貫き、

「そのことを踏まえて選択しろ。」

そう言ってきた。

--コクン--

俺は声を出さないまま、首だけで答えた。

--キュインッ--

俺の足もとに、魔法陣のようなものが浮かんだ。

俺はそのままこの空間から消えた。














「なにか言いたそうだな・・・ミストバーンよ。」

大輝が去った後、ミストバーンは大輝が去った場所を見ていた。

「いえ・・・・」

ミストバーンはそう答えるが、何か考えているようだった。

「かまわぬ・・・申せ。」

そんなミストバーンに、バーンは発言を諭す。

「では・・・」

諭されたミストバーンは自分の考えを、自らの主に答えた。

「あの大輝とかいう人間・・・とても聖魔八武具を集められるとは思いません。」

そう、ミストバーンは地上で敗れ去った後、ある世界でバーンとともに修行し、はるかに強くなった。

しかし、聖魔八武具はそんな自分をも上回る力を秘めている。

そんなものを、ただの人間が集められるとは思わなかった。

「ふっふっふっふはははははっ!!」

バーンはその考えをい聞いて笑いだす。

「バーン様?」

ミストバーンが不思議そうに聴く。

「はははっ・・・いや、確かにお前言う通り人間に集めるのは不可能だろう」

バーンはそう言う。

「だが・・・・」

一度言葉を区切ると。

「人間を甘く見ない方がいいぞ。」

ミストバーンが思い出すのは、かつて自分たちと戦った者たち。

確かに人間はとてつもない力を秘めているかもしれない。

しかし、それはあの時代の・・・神々にリセットされる前の世界の人間であって、今の世界の人間ではない。

ミストバーンが思っている頃、

バーンもまた思い出していた。

『おれはっ・・・・おまえを倒して・・!この地上を去る・・・!!』

それは天を左右できるほどの力をもった神々の遺産。

人間たちのために最後まで自分と戦った者。

『よっく目に刻んどけよッ!!!このバッカヤロ―――――ッ!!!!』

『ど・・・どう?女の子に傷をつけられた心境は、大魔王さんっ!!』

それは、人間でありながら、自分に抗ったもの。

そして---

あの世界で自分と言う存在をちっぽけな存在だと教えた人間。












ここは、地上、天界、魔界、その他の世界を含めた者たちの中で優秀な者が神になるため修行する場所。

名前を付けるとしたら“神界”と呼ばれる場所。

その荒野に二人の男が対峙していた。

一人は銀に近い髪の色をして、その髪が腰あたりまで伸びている、二十前半に見える。

十分、美青年にはいるほどの容姿をしている。

ただし、耳が尖っていて、頭の側面には左右に一つ合計二本の角を生やし、額には目のようなものがある。

この男の正体は“大魔王バーン”、仮初の姿ではない本物の姿である。

もう一人の男は、二十代前後と言ったところだろうか、髪は緑に黒が混ざったような色をしている。

顔はバーンが冷静とするなら、こちらは勝気な雰囲気だ。

こちらも、なかなか顔が整っている。

容姿は私たちのような人間だ。

変わっているとすれば、体に黒いマントのようなものを着ていることだ。

「どうした?仮にも大魔王なんて名乗っているだから、もうちょっと、頑張れよ。」

「はあっはあっはあっ」

その男がバーンに問いかける。

バーンの体はいたるところから出血して、体力もかなり使っているようだ。

対してもう一人の男は、怪我もなく、腕を組んで立っている。

「くっ!小僧めがっ!図に乗るなあぁーーーーっ!!!!」

バーンが手刀で襲いかかる。

カラミティエンド

バーンの得意技の一つ。闘気をこめた手刀であり、その威力は伝説の金属、オリハルコンと同等以上の力がある、自らが地上最強の刀と自負するだけでかなりの威力である。

しかし---

--ガギィ--

「この程度か?」

その男は何でも無いように腕で受け止めた。

「!!!!!」

バーンは驚いた、自分が地上最強と自負する手刀を簡単に受け止められたから。

「それにさっきから言っているだろ?俺は貴様よりも年上だ、小僧じゃないっ!」

--ピンッ--

男がバーンにデコピンをした。

--ヒュウーーッ・・・ドカン--

それだけで、バーンの体は吹っ飛び、岩に激突した。

「ぐっ・・・くっ」

その体は確実にダメージを負っている。

「もうあきらめたらどうだ?」

男がバーンに問う。

「貴様がどんなに頑張ってもこの地で数十億年修行を積んだ俺には・・・・・この“大聖天魔王”ロイド様には勝てねぇよ。」

目の前の存在-ロイド-の言葉を聞いて、憤慨する。

(くっ・・・高々人間が!!!)

バーンはそう思うが、力量の差は歴然であった。

(負けぬッ!!負けるわけにはいかぬッ!!!)

「余は大魔王バーンなり!!!!」

そう言い、何とか立ち上がる。

「ウォオオオオオオ!!!!」

バーンが自らの第三の眼-鬼眼-を潰した。

--ゴゴゴゴ--

そうすると、バーンに変化が訪れる。

今まで、人間の姿だったのが、不気味なモンスターの姿になった。

その顔の部分に、バーンが顔と上半身を少しだけ出している。

“鬼眼王”--バーンの魔力の源である第三の眼、鬼眼を全開にし肉体に上乗せした魔獣の形態。

この姿になったバーンは二度とは元には戻れない。

しかし、敗北より・・・目の前の存在に負けるぐらいなら、自の分体を捨てる。

それは、大魔王バーンの名を守るためか、ただ純粋にロイドに勝ちたいのかは、バーンにも解らない。

ただ--

「ハアアアアァァァァーーーーーー!!!!!」

目の前の存在に勝つのみ。

「ほうっ。」

ロイドはそう言葉を漏らし、自分に向かってくる存在を見ている。

目の前には数十メートルぐらいにも及ぶ、モンスターが迫ってきている。

ロイドはただそれを見つめているだけ。

--ドガァン--

そうしているうちにバーンがロイドを上空に打ち上げる。

--ガッ、ゴッ、ドガッ--

バーンはすかさず追撃をする。

「砕けて散れッーーーーー!!!」

--ズガアッン--

バーンはロイドを叩きつけた。

「はあっはあっはあっ」

ロイドは地面に叩きつけられた。

普通ならこれで死んでもおかしくないが。

「はあぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!」

バーンは上空から加速してロイドにとどめを刺そうとする。

それは、かつて自分の油断で敗れ去ったことがあるから・・・・確実に相手にとどめを刺すまで油断できないからだ。

--シュッ・・・パシィ--

「!!!!!」

しかし、とどめを刺そうとしたバーンの攻撃が届く前に、ロイドが着けていたマントがバーンの攻撃をふさいだ。

「グッ・・・」

そして、そのままバーンを弾き飛ばした。

バーンはなんとか体制を整える。

「おいおい、なんだよ今のは?」

「!!!!!」

バーンのは今までで一番の驚きを見せた。

それは、自分の攻撃を受けて、まるで何でも無かったかのように相手が立ち上がったからだ。

「まったく、もっと真剣にやってほしいよなあぁ、それとも真剣にやってこの程度だったのか?」

ロイドは不思議そうに問いかける。

「なら悪いことを言ったな、あやまるよ。」

言葉だけ聴くなら謝罪の言葉だが、その声音は明らかにこちらをバカにするものだった。

「・・・・・・」

バーンはその言葉を聞いても、なにも言えなかった。

かつて自分が戦った人間たちの行動に理解できず、困惑したことはあった。

しかし、今回のは違う。

恐怖・・・純粋な暴力という形の圧倒的力、バーンは生まれて初めてその感情をあじわった。

「そういや、お前面白い技を使っていたな・・・たしか、カイザーフェニックス
だったな、なかなか洒落た技だ。」

カイザーフェニックス

バーンが放つメラゾーマのこと、その姿はフェニックスの姿をしており、想像を絶する威力と優雅なる姿からついた名称。

「それじゃぁ俺も同じメラ系の技を見せてやろう。」

ロイドはそう言うと、右手を人差し指を上げた状態で手を上げた。

--ゴオオオオオ--

人差し指から巨大な炎が作りだされる。

その姿は---

「た、太陽。」

そうバーンが言ったように、太陽と見間違えるほどだった。

「サン・フレイム、安直な名前だが、これにふさわしい名前だと思わないか?」

「あ・・あっ・・・」

ロイドが説明するが、バーンには聞こえていなかった。

それだけ、目の前の存在が理解不能だった。

「それじゃ・・・くらいな!」

ロイドからサン・フレイムが放たれる。

バーンは呆然としながら、炎に飲み込まれていった。





「さて大輝よ、お前はどんな答えを出す。」

回想にふけていた、バーンはそんな言葉を漏らした。








なぜ、神はみなを救わない?

-----

いや、神はちゃんと救いの手を伸ばしている。

だが、神は万能ではない。

ほんのちょっと背中を押してくれるだけの僅かな手助けしかしない。

後はその人自身がなんとかする問題だ。

もっとも、その手に気づくかはその人しだいだが・・・

-----
















●サン・フレイム・・・オリジナル魔法、簡単に言うと、太陽の炎。
           安直な名前だが、その名で呼ばれるだけの威力がある。
           ランクは最上級呪文。








あとがき
疲れました。
今回はバーンが大輝を呼んだ理由とそれに対しての大輝の苦悩を書きましたがどうでしたか?
 
転生については作者の考えです。

作中においてミストバーンが修行で強くなったと書いてましたが、原作を知っている人のために、書いておきます。
ミストバーンもある理由により、強くなっています。いずれ理由を書くつもりです。

そして、ついに出ました、神界でのバーンの過去。

正直これ見て、バーンはこんな弱くないと思った人もいると思いますが、このときのバーンはナメック星でのベジータがフリーザの強さを知った時のような状況だと思ってください。

実際この二人って勝利に対しての執念の部分が似てると思いません?

感想でバーンの口調がおかしいとありましたが、正直言ってバーンの口調て難しいです、王様のような言葉を使うこともあれば、普通の言葉を使うこともあるし、「うぬら」とか古臭い言葉を使うこともあります。

作者もなんとか似せるように頑張りますが、もし、ここの言葉が変だという場所があったら、教えていただけるとうれしいです。

バーンの強さに関する感想があったので次回は設定を投稿しようと思いますので、そちらをご覧ください。

では次回。

追記
最後の文を書き忘れていたので追加しました。
ちなみに、第二話(上)の最初と合わせてお読みください。









感想返し


<さくさん>
次回設定を投稿するので、そちらをご覧ください。




<九尾さん>
はい、しています。
ミストバーンも強くなっていますが、それほど聖魔八武具が強力ってことで。




<とんじんさん>
こんな誤字があったなんて気づきませんでした、報告ありがとうございます。
バーンの口調に関しては、あとがきで書いたように、アドバイスをもらえるとうれしいです。
これからもお願いします。































[15911] 第三話 修正
Name: 天魔◆b849f691 ID:8cc2c8fc
Date: 2010/05/23 03:40
第三話













「・・・・・・・」

俺は地上に戻ってきた後、特に何もせずぼーっとしていた。

「・・・・・・・」

今も何もせず、ただじっとしているだけ。

ふと下を見る。

そこには、警察がいた。

どうやら、俺の死体を見て、なにかしらの事件性があるとみて捜査しているようだった。

もっとも、いくら捜査しようと、なにも出て来ないけどな。

なにしろ、神様が関係してる事件だ、ただの人間の手におえるものじゃない。

「・・・・・神様・・・か。」

俺は今まで会ったことを思い出す。

普通にコンビニに行って。

その帰りに殺された。

これでも、日常レベルで見れば大事件だろう。

でも、その後

変な空間に連れて行かれたとおもえば、大魔王って名乗る人が出てくるし。

しかも、その人が神様で、この世界のことを聞き

俺を蘇らせるには、

「人を殺すかもしれない・・・・」

そう、それが俺がただぼーっとしてる原因だった。

今までの人生で、そんなこと考えたこともなかった。

そりゃ、俺も男だし、英雄願望や正義の味方に憧れた・・・・・所謂、中二病ってやつを考えたこともあったし。

アニメやゲームの世界に行きたいと思ったことがあるよ。

けれど、

「これは違う・・・・・」

そうだ、これは紛れもない“現実”だ・・・・妄想なんかと違う。

「・・・・・・」

俺は考えるのをやめ、街の風景を見る。

どうやら、かなり考え事をしていたのか、もう夜だった。

街には明かりがともり、主婦の人の買い物帰りや、会社から帰ってくるサラリーマンの人がいた。

「・・・・・」

俺はふと、目に入ってきた光景を見る。

そこには、学生風の人たちが楽しそうにしていた。

本来なら、俺もあの光景のように、遊んでいたんだよなぁ。

そう、本来なら・・・・・・

「ちくしょう・・・・」

俺の口から自然に言葉が漏れだす。

そうだ、本来なら俺は、普通に学校に行って、普通に友達と遊んで、普通に就職して、普通に奥さんをもらい、普通に幸せな生活をするはずだった。

「普通・・・・か・・・」

普通・・・・・良いわけでもなければ、悪くもない・・・そんな中途半端な意味。

だけど、それですごせたら、なんて幸せなんだろう。

今の俺のような悩みに、悩むこともない。

それはどれだけ幸せなんだろう。

「ハハ・・・漫画なんかだと、失って初めて人は気づくっていうけれど・・・・ほんとだな。」

ほんと、あの日常に戻りたいよ。

「ハハハハ・・・・・はあ~~~~~」

もういろいろありすぎて、溜息がでるよ。

けれど、

「このまま、こうしてるわけにはいかないし・・・・・行くか。」

俺は、ある場所を目指し、移動をした。











---母---


私がその知らせを聞いたのは、突然だった。

その日は、特に変わったことはなかった。

いつものように起きて、朝食を作り、夫を見送って、家事をしていた。

--プルルルッ--

電話が鳴った。

「はい、斎藤です。」

そして、私は聞いた。

息子が---大輝が死んだことを。

初めは嘘だと思った。

大輝は特徴的なことはない。

しいて言えば、昔から体が頑丈なことと、妙なとこで負けず嫌いだということだ。

そして、最後までやり遂げようとする、頑張り屋さん。

その他は特になにもなかった。

しかし、私の・・・・・私たちの自慢の息子だった。

そんな息子が死ぬなんて・・・



私はいてもたってもいられず、病院に急いだ。

そこで、私は見てしまった---息子が、横たわっているのを。

「そ・・ん・な・・・。」

嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ・・・・・・・・

私はそう心の中で繰り返し、近づいていく。

「あ・あ・・・ああ・・」

そして、側まで近づいて知ってしまった。

息子が----大輝が息をしてないことを。



「うぅ・・うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー」



私は泣いた・・・泣いて、泣いて、泣きまくった。




それからは、あっというまだった。

葬式を終えて、親族の挨拶も終わって

私は今、大輝が使っていた部屋にいる。

「・・・・・・」

いつでも息子が帰ってきていいように、きれいにしていた部屋。

今は、そんな部屋がすごく悲しく見えた。

「大輝ぃ・・・」

また私の顔から涙が流れる。

葬式で枯れつくしたと思ったが、また流れてきた。








「・・・・・・・」













--父--

俺はその日、なにか胸騒ぎがした。

それが何か解んなかったが、

会社を休むわけにはいかず、そのまま出社した。

そして、その正体を知った。

--息子の死という最悪な形で--



今、妻が大輝の亡骸に縋りつき泣いている。

「クソッ」

俺はその光景を見て、自分に後悔の念が浮かんだ。

もし、俺が胸騒ぎを無視しないで、大輝に連絡していたら、

もし、一人暮らしをさせていなかったら、

もし、もし、もし、----

そんなことが浮かんでは消えての繰り返しだった。

「クソッ、クソッ、クソッ、・・・・」

俺は近くの壁を殴りつける。

完全な八つ当たりだったが、こうでもしないと自分がどうにかなりそうだった。



その後、大輝の葬式が終わって、家に帰ってきたが、妻は空元気だった。

俺は、そんな妻を見て、自分の心に悲しみと怒りが込み上げてきた。

あのあと、警察の方が来て、息子は--大輝は殺されたそうだ。

大輝の背中は刃物で切りつけられた傷があったからだ。

警察は殺人事件とみて捜査するそうだ。

しかし、目撃者もいず、証拠品も無いとのことで、捜査は難航するそうだ。

「ちくしょう・・・・」

俺はこぶしを握りしめる。

こんな怒りを感じたのは、今まで生きてきて初めてだった。

(どこのだれか知らないけど、必ずつきとめてみせる)

俺はそう心に誓い、妻を慰めるため大輝の部屋に向かった。








「・・・・・・・」













--親友--

俺は今日大学に行って、大輝がいないことに気がついた。

俺と大輝は、幼馴染だった。

家も近く、昔から一緒に遊んで、小・中・高・大学と一緒だった。

正直ここまで来ると、腐れ縁の域だと思った。

大輝は昔から体は丈夫で、休んだことなんかほとんどなかった。

(どうしたんだ?)

俺はそう思い、メールをしたが返ってこなかった。



その知らせは、実家のおふくろが知らせてきた。

大輝が死んだ。



俺は一瞬何を言っているのか、理解できなかった。

あの大輝が死んだなんて・・・

俺は大輝のマンションに行った。

そこに行く道の途中で、人が集まっていた。

俺は、恐る恐る尋ねてみた。

「あの、何があったんですか!!」

声が少し荒くなった。

「それが、人が死んでいたそうよ。」

聴いたおばさんはそう言ってきた。

(まさか、本当に!!)

俺は否定したかったが、周りの

「かわいそうに、まだ若かったんだろ」 「ああ、このマンションに住んでいる大学生だそうだ。」

という、話し声が、否定してくれなかった。



大輝の葬式が終わって、今俺は実家にいる。

おふくろがなにかと気を使ってくれたが、正直ほっといてほしかった。

「・・・・・・」

俺はただ、空を見つめていた。

ニュースなどでこういったことは見たことがあったけど、

自分の身近で・・・・・それも親友って言える人間に起こるとは思いもしなった。

「・・・・・・」

俺はただじっと空を見つめていた。













「・・・・・・・」

そんな人たちを見つめている男がいた。

大輝だ。

大輝は、そのまま佇んでいるわけにはいかず、実家に来ていた。

もしかしたら、なにか答えが出るかもしれない。

そんな思いを、いだいていたが、余計、悩むはめになってしまった。

「どうすりゃぁいいんだよ」

大輝はそう言い悩んだ。

自分が蘇るには、危険が必要だし、人を殺す危険があるかもかしれなからだ。

しかし、家族や親友の思いを知ってしまった。

それが、さらに大輝の重しとなった。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・うん?」

大輝は視界に何かが入ってきたと思い、その方向に目を向けた。

「うわぁ!」

そこには、ミストバーンがいた。

「な、なにしてるんですか?」

大輝は驚きながら聞くが、

「・・・・・・・」

ミストバーンは黙ったまんまだった。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

(ち、沈黙が痛い)

大輝は、何か喋ろうとすると、

「答えはきまったか?」

ミストバーンが問いかけてきた。

「いえ・・・」

大輝は小さく首を振って、答えた。

無理もないだろう・・・数日前までただの大学生だった大輝には今回のことは重すぎた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

しばらく、沈黙が続いた。

「あの・・・ミストバーンさんは何でここに?」

大輝は話しかけた、相談にのってほしかったが、目の前の人は、そんなことに向いていないと思った。

それでも、大輝は誰かと話したかった。

そうすることによって、少しでも気を紛らわそうとしたからだ。

「・・・魔剣ネビリムが再び貴様を狙ってこないかの監視だ。」

「そ、そうですか・・・・あれ、でもミストバーンさんって地上に降りちゃ、だめなんじゃ。」

そう、バーンたち神はむやみに他の世界に行ったらその世界に何らかの影響を及ぼす。

ミストバーンもバーンが側近と言っていたので、そうなるだろうと思い大輝は聴いた。

「力を抑えれば、ある程度地上にいても問題ない。」

大輝が思い出すのはデビルアーマーから助けてくれたときのこと。

(そう言えば、俺、お礼を言ってなかった)

大輝はそう思うが、立て続けに漫画やゲームのようなことが起きたんだから、無理もない。

「あの、助けてくれてありがとうございます。」

大輝は頭を下げながら、言う。

「勘違いするな・・・私は自分の任をまっとうしようとしただけだ。」

しかし、ミストバーンはそんなことを言ってきた。

しかも、照れているのではなく、本当にそう思っているようだった。

「それでも、俺が助けてくれたのは事実です・・・だから、ありがとうございます。」

普通お礼を言ってこんな態度をとられたなら、不快な思いをするかもしれないが、大輝はいろんなことがありすぎて、あまり気にしなかった。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

また沈黙が訪れた。

大輝はふと思ったことを聴いた。

「あのバーンさんは、昔、地上に攻めたって言ってましてたけど・・・・・その時の人間たちはバーンさんのことが怖くなかったんですか?」

バーンは昔、地上に攻め入った。

しかし、敗れ去った。

これは、地上の人間たちに負けたということになる。

大輝は信じられなかった。

直接対峙した自分にはわかる。

あれは人間がどうにかできるものではない。

だから、当時の人間たちがどう勝ったか気になった。

「わからん・・・・私は私であり、人間は人間、その気持ちなど、私が知るはずもない。」

しかし、ミストバーンの答えは何とも素っ気なかった。

「いや、そうですけど・・・・じゃあ、人間たちはどうやってバーンさんに勝ったんですか?。」

大輝は聴いた。

別にこれで自分の悩みが解決できるとは思ってない。

ただ---

「初めに言っておく・・・バーン様が敗れたのは、竜の騎士-ドラゴンのきし-にだ。」

「竜の騎士?」

大輝は?を浮かべる。

「竜の騎士・・・神々の遺産にして、人の心・竜の強さ・魔族の魔力を併せ持つ超戦士・・・バーン様はその戦士に敗れた。」

大輝はこの答えを聞いて、僅かに落胆した。

(それって、ドラクエに出てくる、勇者みたいなやつか)

ただ---人間でも頑張ればできるということを知りたかった。

もし、これがただの人間だったら、自分に勇気を与えてくれたかもしれない。

しかし、それは勇者のような存在が倒した。

(結局、選ばれた人間だけができるってことか)

大輝がそう思っていると。

「しかし、その中にただの人間が大きく関わっいたのはたしかだ。」

ミストバーンがそう言ってきた。

ミストバーンはある理由により、自身を鍛えて強くなった強者を敵味方問わず羨み尊敬する傾向がある。

そんな自分が認めたのはただの人間だった。

「ただの人間て言っても、どうせ、なにか特別な力を持っていたんでしょう?」

大輝はそう思った、だいたい勇者の仲間というのは、なにか特別な存在が多いからだ。

しかし、

「いや・・・その人間はただの武器屋の子供だった。ある意味、バーン様はこの人間に敗れたようなものだ。」

「えっ」

大輝は今度こそ驚いた。

武器屋の子供というのには別にそんな驚いてない。

ただの一般人が仲間になって、強くなっていくことなんて話、よく聞くからだ。

しかし、それがラスボスを倒す話はそんな聞いたことがない。



『一瞬…!!!だけど…閃光のように…!!!』

それは、人間の勇者ではなく。

『まぶしく燃えて生き抜いてやるっ!!!』

その勇者の仲間の子供でもなく、一国の姫でもない。

『それがおれたち人間の生き方だっ!!!』

自らが育てた天才剣士でもなかった。

血も優秀なものでなく、貧弱なただの人間。



そんな人間が、大魔王と恐れられたバーンの最強の守りを破り、

一度絶望した、竜の騎士をたちなおらせ、

最後までバーンに抗った存在。



ミストバーンはそこまで話して帰った。

「・・・・・・」

大輝はミストバーンの話を聞いて、考える。

--蘇りたいか?--

蘇りたい。

--バーンのような存在と戦ってもか?--

必要ならやってやる。

--自分が死に、相手を殺す可能性があってもか?--

怖い、逃げたい。けど・・・けど・・・・






「御苦労・・・ミストバーン」

「・・・・・」

名もなき空間にミストバーンは帰ってきた。

「ずいぶん、説教くさいことをしたそうだな。」

「いえ、そんなつもりはありません・・・・ただ聴かれたから、答えたまでです。」

バーンの質問に淡々と答える。

「そう、言うな・・・・・どうやら効果はあった様だぞ。」

バーンの目の前に光が現れた。

「・・・・・」

そこには大輝が立っていた。














俺は再びこの空間に来た。

バーンさんたちに答えを言うからだ。

「決まったか?大輝。」

バーンさんが問いかけてきた。

俺は自分の答えを言う。



「お願いします、俺を強くしてください。」



俺はそう言い、頭を下げる。

「・・・・一応聞いておくがなぜだ?・・・・ハッキリ言って地獄を見るぞ。」

バーンさんがそう言ってきたので、俺は答えた。

「人間はいつか死にます・・・・正直言って、今でも怖いです。でも、どうせ死ぬなら、最後まで抗ってみたくなりました。最後まで閃光の様に生きようと思います。」

一度に言葉を吐き出したせいか息が苦しくなった。

俺は空気を吸い、呼吸を整えバーンさんに答える。

「後悔したくありませんから。」

俺はそこまで言って、もう一度頭を下げる。

そうだ、人間はいつか死ぬ・・・けれど、今回のは納得できねえぇ、

なら、抗ってやるよ・・・・どこまでいけるか解らないけど、最後まで後悔しないように。


俺はバーンさんの目をまっすぐ見る。

「・・・・・」

「・・・・・解った、なら我らがお前を強くしよう。」

「は、はい。」

バーンさんがそう言ってきたので、俺はどう強くしてもらおうか考える。

(やっぱり、ドラクエの魔法は使いたいし、肉体もドラゴンボールの悟空やベジータクラスにしてもらいたいな)

(あ、あとなんか便利なアイテムとか、お金に換金できるものをもらおう)

俺がそう考えていると。

「では、早速修行に入る。」

「・・・へっ?」

なんてことを聞いてきた、俺は思わず間抜けな声を出してしまった。

「どうした?」

バーンさんが不思議そうに聞いてきた。

「いや・・・その・・・こういう場合、何か特別な力をもらえるんじゃないんでしょうか?」

俺はそう答えた。

よく読む、小説なんかだといきなり力をもらっていたから、俺ももらえるんだと思ったんだけど、

「・・・・・何か勘違いしているようだな・・・そんなことは不可能だ。」

そんなことを言ってきた。

いや、でも確かに力をもらっていたでしょう、修行するケースなんかあまり見たことがないぞ?

俺が考えていると。

「大輝よ今の貴様はコップのようなものだ・・・コップに大海原の水を入れてもただ砕け散るだけだぞ。それに、聖魔八武具を集めるには、ある程度の強さを身につけてもらは無ければいけないのでな。」

バーンさんがそう言ってきた。

え~とつまり、俺はコップ=今の俺の強さで、聖魔八武具を集めるにはそのコップが海ぐらいが全部入るぐらい、でかく=強く、なんなくちゃいけないってことか。

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

「はっはっはっ・・・はあ~」

世の中うまくいかないもんだな。

「では、ミストバーン頼むぞ。」

「はっ!!!」

そんな、俺を気に掛けず、話が進んでいた。

どうやら、ミストバーンさんが修行をつけてくれるみたいだ。

(はあ~~・・・・よし!気合入れていきますか!)

俺は気合を入れて、どう強くなるかを考えてた。





この時、俺は知らなかった・・・・・バーンさんが言ってた、“地獄”の意味を

そして、その“地獄”が何百年間も続くことを・・・・・・


















あとがき

まずお詫びを・・・今日間違って、途中の文を投稿していまいました。
そちらの方を見た皆様には大変ご迷惑かけました。


前回設定を投稿すると表記しましたが、中途半端な説明になってしまうので、先に第三話を投稿しました。

今回は前回に引き続き大輝の苦悩とその答え、そして、残された人たちの心情を書きましたがどうでしたか?

やっぱり主人公が決断するために家族や親友にでてもらいました、よく言う“大切な人の~”ってやつです。

ミストバーンの口調はおかしくありませんでしたか?

バーン同様丸くなっていると考えると、こんな話し方だと思うんですが?

ミストバーンの話は神界でバーンに聞いたという設定です。

実際の話あの戦いはポップがいなきゃ全滅してたでしょ

次回からは修行編に入ります。

では、次回






感想返し


<ゆんたんさん>
設定と言っても、ネタばれ的なことは書きません。
まあ、駄作になるかは作者の腕しだいですが・・・・・


<九尾さん>
挫折してもらいました。
実際、真・バーンも人間を見下していたような態度をとっていたので、そんなことをせず必死に修行したら・・・・という設定です。
ちなみにバーンも強くなっていますよ。


<とんじんさん>
誤字報告ありがとうございます。
真・バーンは戦闘シーンは書きやすいんですよねぇ・・・ただ日常の会話というのがないので、そっちの方は難しいかもしれません。
差支えなけえば、これからもアドバイスをくれるとうれしいです。

















[15911] 第四話 少し残酷描写あり 修正
Name: 天魔◆b849f691 ID:33f10aef
Date: 2010/05/22 13:37
第四話












拝啓

お母様、お父様、お元気ですか?

あなたちの息子は残念ながらお亡くなりになりました。

しかし、神様たちに生き返らせてもらえるようになりました。

でも、もしかしたら、このまま死ぬかもしれません。

だって---



「イオ!」

「いやああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!」

「叫んでないで、避け続けなさい!」

「死ぬっーーーーーーーー!!!死んじゃうっーーーーーー!!!!!」



だって、後ろから魔法で攻撃してくる、メイドさんがいますから。











--10年前--

「こ、ここは?」

あの後、修行のためにミストバーンさんに連れて行かれたところは、島だった。

緑も多く、海もきれいで砂浜にはゴミ一つ落ちてない。

う~ん、なんか、南国のリゾートって感じだ。

「あの、ここでなにをするんですか?」

俺は疑問に思った。

普通、修行っていったら、山とかにいくイメージだったからだ。

まあ、島でやってもおかしくないけど。

「お待ちしておりました。」

俺が考えていると、後ろから若い女の人の声が聞こえた。

後ろを向くと---メイドさんがいた。

メイドといっても、客商売をしてるメイドじゃなくて、ちゃんとしたメイドさんだ。

十代後半から~二十ぐらいかな、

肌は健康そうな小麦色で、髪は長く銀に青色が混じったような色

後ろで縛って、二つに分かれている

おまけにスタイルも抜群。

気になったのは、耳が尖っていることかな。

「どうかなさいました?」

はっ!!い、いかん、つい見惚れてしまった。

だって、しかたないじゃん、こんな美人さん今まで会ったことがないんだから!!

「美人さんなんて、フフ、ありがとうございます。」

「へっ?」

なんか急にうれしそうな顔でお礼を言ってきた。

「声、出てましたよ。」

俺が困惑してると、メイドさんが説明してきた。

「マジ・・・ですか?」

「はい。」

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

(いや~~~~~~~~めっっっちゃ恥ずかしい~~~)

俺は恥ずかしくなって目をそむけてしまう。

(うう、まさか声に出ていたなんて)

「こちらの人が」

「例の人間だ・・・・後は任せたぞ、アンナ。」

「はい、お父様」

俺が恥ずかしがっていると、ミストバーンさんとメイドさん-アンナと言うらしい-

が話してた。

?なんか、今の会話おかしなとこなかったか?

『任せたぞアンナ。』

『はい、お父様』

・・・・ああ、そうか、アンナさんてミストバーンさんの娘なのか・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・・

・・・って

「なぁぁぁーーーーーーにぃぃぃーーーーーーー!!!!!」

俺は鼓膜が破れるくらいの大声を出した。

「お・・・おと・・・・おとうさん。」

俺はミストバーンさんを指でさしながら言う。

(いやだって、この二人が親子って)



ミストバーンさん・・・なんかローブで顔を隠して、いかにも怪しい人。

アンナさん・・・美人でスタイル抜群、おまけにメイドさん。



・・・・・うん、ぜってーーー嘘だ。


そう思ったけど、

(でも俺ミストバーンさんの顔見たことがないしなぁ。)

もしかしたら、アンナさんのような美青年なのかな?

「なにか勘違いしてるようだから言っとくぞ・・・アンナは私が生み出した魔法生命体だ。」

俺が考えてたら、ミストバーンさんがそう言ってきた。

(魔法生命体?)

頭に?が浮かぶ。

「魔法生命体というのは、主・・・私の場合お父様です。」

俺が疑問に思ってると、アンナさんが説明してくれた。

「その人がある呪法を用いることによって生み出された生命体・・・あなたたちの世界で言う九十九神のようなものです。」

九十九神って言うのは、道具とかが、長い時間かけて魂をやどしたものだ。

アニメとかだと、妖怪なんかで表現されることが多い。

けれど---

(妖怪には見えないよな)

アンナさんは、とてもじゃないが妖怪に見えない。

まあ、人間離れした美しさだけど。

「だから、ミストさんは私にとって、お父様なんです。」

ふ~ん、なるほどねぇ。

「・・・・・」

--フッ--

ミストバーンさんは何も言わず消えた。

・・・・って

「ちょっと、修行は!!?」

俺は思わず叫んでしまう。

だって、修行をつけてくれるんじゃなかったの!!?

「安心してください・・・大輝さんの修行は私が見ます。」

俺が困惑していると、アンナさんがそう言ってきた。

「アンナさんがですか?」

「はい。」

俺はさらに困惑してしまう。

アンナさんはとてもじゃないが、そういうのには向いてなさそうだったからだ。

あれ?

「俺、自己紹介しましたっけ?」

そう、俺は自分の名前を言ってない、なのに、アンナさんは普通に俺の名前を呼んでた。

「お父様たちから、ある程度のことは聴いていましたから・・・申し遅れました、私は大輝さんの修行兼お世話をします、アンナと申します。」

「あ、どうも、斎藤大樹です。」

俺たちは互いに頭を下げながら自己紹介をした。

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

「さて、それじゃ早速始めましょうか。」

互いに自己紹介を終えた後、アンナさんから説明があった。

俺の今の強さでミストバーンさんと修行したら、とてもじゃないが、修行にならないらしい。

最悪、死んでしまうかもしれないらしい。

もう死んでるんじゃないか?って思ったけど、どうやら違うらしい。

今の俺は魂が仮の体に憑依している状態で、その魂が消滅=死ぬともう蘇生できなくなるみたいだ。

ちなみに、仮の体っていうのは、バーンさんの魔法で作った体-魔力生命体の魂がないバージョン-だ・・・正直何でもありだな。

で、俺の基礎を鍛えるのがアンナさんということだ。

修行つけられるのか?っていったら、アンナさん、

「ハッ!!!」

って、掛け声とともに海に向かって、腕を振ったと思ったら、海が割れたんだぜ。

いや~ぁビックリしたね、こんなのアニメでしか見たことがなかったし、

それをやったのが、綺麗なメイドさんなんだぜぇ、や~マジびびった。


その後、俺は格闘経験もないし、体力も無いので、とりあえず体力作りから始めた。

・・・・・・・

・・・・・

・・・・

「で、この結果ですか。」

「ぜえっぜえっぜえっ」

アンナさんがそう言ってきたけど、しょうがないじゃないですか。

俺、そんなスポーツ万能じゃないんですから。

あの後、アンナさんがとりあえず俺の体力を測るということで、測定をしたんだが、

腕立て---43回---

腹筋---65回---

持久走---島一周で体力つきた---

って結果だった。

むしろ、運動とかやってなかったんだから、これだけの結果を出せたんだから、褒めてもらってもいいと思う。

特に最後の持久走。

島一周って、砂とかに足とられるし、なにげにこの島、でかいんだから、走り切れただけでもすごいと思う。


「み、水っ~~~~」

う~~疲れた~~~とりあえず水を飲もうと頼んだんだが。

「えっ?喉渇いてるんですか?」

なんてことを言ってきた。

「あ、当り前じゃないですか、あんな走った・・・・あれ?」

そう、普通あんな走ったんだから、喉が渇いててもおかしくないのに、全然渇いてないんだ。

なんで?

俺が不思議に思っていると。

「この空間は全体に凍れる時間(とき)の秘法がかけられています、だから喉やおなかがすくことはないんです。」

「凍れる時間の秘法?」


アンナさんが言うには、凍れる時間の秘法ってのは、時間を止める秘法らしい。

で、それが空間にかかっていて、その空間にいる俺たちにも効果があるらしい。

でも、俺たちの時間が止まっているのは、肉体のごく一部・・・さっきアンナさんが言ったような内容に限定するらしい。

そうしないと、せっかく鍛えても、自分がどれくらいの体力がついているのか?

とか、回復にかかる時間などがわからなくなるからだそうだ。

だから、この空間にいる限り、何百年間もいても問題ないらしい。

ちなみに、俺のもとの体--本体--もその秘法で保存されているそうだ。


「あれ?けどそれじゃ、俺が蘇ったとしたらどうするんですか?」

時間が止まってるのは解ったけど、俺が殺されたのは過去のことだから、どうするのか聞いてみたんだけど

バーンさんが人間たちから俺が死んだという記憶を消すそうだ。

いくら魂の記憶を消しきれないにしても、本人が生きてるんだから、なにも問題ないだろう、ということらしい。

まぁ、確かになにかの拍子に思い出したとしても、俺が生きてるんだから問題はないんだろうけど・・・・いいのか?

「いいんです。今回のことは例外中の例外ですからね。」

アンナさんが俺の考えを肯定してきた。

まあ、そう言うならいいか、俺も生き返りたいし。


「とりあえず今は強くなることを考えてください・・・聖魔八武具はそれだけ強力なのですから。」

アンナさんが真剣に言ってきたので、俺は頷く。

(そうだ、今はそれだけ考えよう)

俺は気合を入れなおした。

・・・・美人さんと修行できるっていう考えもあるけど・・・・

でも、それは甘かった。


---1年目---

体力をつけるため、腕立て、腹筋、持久走を続ける。

基本的な知識を学ぶ。

なんで勉強なんか・・・・・


---2年目---

水泳が追加されたが、そんな苦にならなかった。

山登りが追加された、こっちは少しきつかった。

重りが追加された。


---3~5年目---

あれから繰り返しだったが、なれるたびに重りが追加された。

急な流れの川のなかを歩かされた。

滝つぼに落ちた・・・なんとか助かった。


---6~7年目---

拳をきたえるためか、せいけん突きなどが加わった。

なぜかしらんが畑を耕された・・・・飯食う必要がないのに。


---8~9年目---

畑を耕すのに道具が禁止されて、手でやるようになった。

爪がはがれた。



で、冒頭に戻る。















「はあっはあっはあっ」

大輝は疲れて地面に寝そべっている。

10年目は今までやってきたことに加えて、アンナの攻撃を避けるのが加わった。

しかも、島を走る時は攻撃を避け続けながら走っている。

「大丈夫ですか?」

アンナが大輝を気遣う、ただし、アンナは息を乱してないどころか汗もかいてない。

「だ、だいじゅうぶ・・・じゃない。」

大輝はそんな返事をする。

無理もないだろう、朝から日が暮れるまでアンナの攻撃を避け続けたのだから。

ちなみに、この空間には朝と夜がある。

大輝の生活リズムが狂わないようにするためと、大体の時間のめやすにするためだ。

「はあ~~~」

「どうしました?」

アンナが心配そうに聞く。

「いや、俺って強くなってるのかなぁ~って思って。」

大輝がアンナに言う。

「大丈夫ですよ、前と比べたらそんな重りを付けて私の攻撃を避けれなかったじゃないですか。」

アンナの言う通り、今大輝は30キロの重りを付けている。

普通に考えて、並の人間がこんな重りをつけてアンナの修行をするのは不可能だろう。

「いや~そうはいっても、10年でこれじゃぁ。」

しかし、大輝は納得していなかった。

「そんなことありません・・・大輝さんはハッキリいって、才能がありません。

アンナは淡々とその事実を告げる。

「むろんこれは、地上世界の人間のほとんどに言えることです。そんな人が強くなるには、時間をかけていく必要があるんです。」

アンナの言う通り並の人間がバーンなどの強さに対抗するには、時間をかけて強くなるしかない。


「それに大輝さん、なんだかんだで、泣きごとを言わず、修行したじゃないですか。」

(あれは、泣きごとを言わないんじゃなくて、言えなかったんです!!)

そう、大輝は朝から夜まで修行していた。

そのため、終わるころには、喋る力がほとんどなかった。

もっとも、次の日には、何ともない体になっているのだから、アンナの教え方がうまいとしか言いようがない。

しかし、それが大輝の悩みのタネだった。

自分はこんなに頑張っているのに・・・・

そう思う大輝だが、今の彼の強さは、身体能力だけなら地上の人間のレベルを超えていた。




「はあ~~~」

大輝は回復した後、休みがてらに砂浜を散歩していた。

(俺強くなっているのかな?)

大輝はそう考えるのだが、比べる相手がアンナしかいないので、自信がないのは仕方ないだろう。

「うん?・・・ミストバーンさん。」

大輝が散歩していると、ミストバーンがいた。

ミストバーンはこうして時々この空間に来る。

「どうも、今日はどうしたんですか?」

随分態度が軟化したが、さすがに10年間、時々とはいえ顔を合わせていたのだから無理もない。

「どうだ?調子は。」

ミストバーンが問いかけてきたので、大輝は自分の悩みを聞いてみた。

「まあ~ぼちぼちですかな・・・あのミストバーンさん俺強くなっていますか?」

「・・・少なくても、10年前と比べたらな。」

ミストバーンはそう言うが、さすがに10年もたっているんだから・・・・と大輝は思った。

「ミストバーンさん、いつになったら、魔法とかを教えてくれるんですか?」

大輝は質問した。

10年間もただ鍛え続けて、まだ、魔法などを教えてもらってなかった。

大輝はそれが不満だった。

「こう~魔法とか使えたら、今よりも強くなるとおもんですよね・・・こんな修行しなくても。」

大輝はその不満を言う。

「・・・・・・」

ミストバーンはただ聴いているだけだった。

「魔法とかが使えれば、楽して強くなるんでしょう?」

大輝の不満は続く。

「・・・・・・」

「ですから・・・・って、どこ行くんですか?」

ミストバーンは大輝の話している途中にも関わらず、歩きだす。

「・・・・ついてこい。」

大輝は言われた通りついて行った。



「これは?」

ついて行った先には、魔法陣が書かれていた。

「乗れ。」

大輝は言われた通り、魔法陣に乗った。

(もしかして、魔法教えてくれるのかなぁ)

なんて軽い気持ちのまま

--キュィン--

魔法陣が輝きだす。

「な、なんだ・・・・」

大輝はその言葉を最後に意識が闇の中に沈んでいった。





(あれ、俺は・・・)

大輝が目を覚ました時、そこはどっかのテントの中だった。

(なんだ?ここ)

大輝がそう思っていると、

--ドォォォンッ--

という音とともに周りが炎に包まれた。

「て、敵襲っ!!!」

(て、敵!?)

なんなんだ・・・と大輝が思っていると、奇妙なことに気がついた。

(な、なんで体が勝手に・・・それに声が出せない!)

そう、大輝の体は本人の意思とは無関係に動いてた。

大輝はそのまま外に出ると---戦場だった。


周りから悲鳴が聞こえ、血が舞、火の玉や氷の塊がとびまわる戦場だった。

(なんなんだよ!??)

大輝が混乱していると、

「はあっっ!!」

剣をもった男が切りかかってきた。

やられる・・・そう思ったが、大輝の体は本人の意思とは無関係に攻撃を避けた。

「メラ」

助かったと思ったら、大輝の口から呪文が唱えられた。

もちろん、これは大輝が言おうと思って言ったんじゃなくて、勝手に出た言葉だ。

「!!!」

メラをくらった敵は直撃して倒れた。

敵は立とうとするが。

--ザンッ--

大輝が敵の足を切った。

「ぎいやややぁぁぁーーーー」

切られた敵は苦痛の表情をして苦しむ。

(や、やりすぎだ)

大輝はそう思ってやめようとするが、本人の意思と違い敵に近づき。

「メラ」

--ボオォ--

大輝はとどめを刺した。




(な・・・ん・・で)

大輝は困惑していた。

いきなり知らないとこにいたと思ったら、自分の意思とは関係なく人を殺したからだ。

(うっ・・・)

大輝は燃えた敵の死体を見て吐き気がした。

しかし、大輝の体には変化はみられない。

あくまで、意識がそう思っているだけだった。

--ドォン--

(ぐあああぁぁぁぁ!!!!)

いきなり後ろから熱と痛みを感じ倒れた。

そこには、敵がたっていた。


(いやだ、やめろ!!)


大輝はそう思い逃げようと体を動かそうとするが、動かなかった。



(動け、動け、動け、動け、動け、動け・・・・!!!)

だがどんなに頑張っても、体は動かなかった。

その間に敵は近づいてきた。


(いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ・・・・!!!)


「メラ」

大輝の願いむなしく敵は大輝にとどめを刺した。

まるで、さっき自分がやったように・・・


(熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い・・・・・!!!!)


大輝の体は燃え続けた。

肉が、血が、骨が、全てが熱いように感じた。









「はっ!!!!」

大輝は目を覚ました。

そこはもとの砂浜だった。

(俺・・・生きてる?)

大輝は困惑しながらも、自分の体を確かめる。

そこには、汗こそかいていたが、他は何も問題なかった。

(よ、よかった~~~~~)

大輝が安直していると、

「気づいたか。」

隣にミストバーンがいて話しかけてきた。

「い・・今のは?」

大輝はまだ混乱している頭で聞いた。

「今のは、幻惑呪文-マヌーサ-で幻を貴様に見せた。」

(幻・・・よかった~~~)

大輝は安直した後、キッとミストバーンを睨み、

「何であんなのをみせたんだよ!!!!」

怒鳴りながら言った。

「どうだった?魔法を使った気分は・・・・」

大輝はそれを聞いて、はっとした。

確かに自分は魔法を使っていたが、それは自分の意思ではなく、勝手にやったことだった。

「貴様が魔法をどんなものと思っているか知らないが、あれが魔法だ。」


魔法・・・それを使えばいろいろ便利だろう。

傷を治したり、他の場所に一瞬で移動できたり・・・・・・人を簡単に殺したり。

さっきの幻の中で使っていたメラはランクとしては、下級呪文だ。

しかし、下級呪文でも人を焼き殺すことができた。

はたして、その危険性を理解してない人間が使えばいったいどれだけの被害がでるのだろう・・・・・・


「・・・・・・・」

ミストバーンに魔法の危険性を説明されて大輝は、俯いてしまう。

確かに自分は、魔法の危険性は考えないで、ただ強くなろうとか、使ってみたいという理由だったからだ。

しかし、それは実際目の前で魔法を見せてもらい、その危険性を見せてもらえばいいだけの話。

こんなことをしなくても・・・・・と大輝は思った。

「私は貴様のような考えは好かん!!」

唐突にミストバーンがそんなことを言ってきた。

大輝は顔を上げて、ミストバーンを見る。

「鍛え上げれば強くなれることができる体を持っているのに・・・魔法を使うなとは言わん。しかし、それで楽をしようとする考えはな!!!!」

ミストバーンはそこまで言って、消えた。

「・・・・・・・」

大輝はただ呆けていた。















「なんだよ!あんな言い方しなくてもいいじゃんか!」

俺はあの後、ミストバーンさんに言われたことを考えてた。

そりゃ、魔法の危険性を考えなかったし、ドラクエの魔法を使ってみたいなぁ~って軽い考えだったよ。

でもさ、いくらなんでも、あんな幻みせなくてもいいじゃんか!!!

それに---

「ふん、強くなれる体を持ってるだぁ~、魔法で楽しようだぁ~、しかたねえじゃん、俺弱いんだし!!」

そうだよ、俺はただの人間で、ミストバーンさんみたいに強くねぇんだから。

裏ワザとか使わなくちゃ強くなれねぇだろう。

俺が怒りながら歩いていると。

「あら・・・どうかしたんですか?」

アンナさんがいて話しかけてきた。

俺は不満を言った。


--説明中--


「そうだったんですか・・・まったくお父様は。」

そういって、しかたがないなぁって顔をした。

「大輝さん、ごめんなさい。」

「別に、アンナさんがあやまることじゃ・・・・」

これは、ミストバーンさんと俺の問題だしアンナさんがあやまることはないと思う。

「お父様って必要あることしか言わない性格ですから。」

うん、それには賛成だな。


「大輝さん・・・もし大輝さんが強くなれない体だったらどうしますか?どんなに願っても、修行しても強くできない体だったら。」

アンナさんが唐突に聞いてきた。

「今の修行の意味がなくなるでしょう。」

そうだよ、せっかく10年間も修行してたのに、努力が報われないじゃないか。

「では、大輝さんそれが数千年も続いたらどう思いますか?」

どういう意味だ?

俺はアンナさんの質問の意味が解らず?を浮かべる。

「数千年も本人は強くなりたい・・・でも、その願いはかなわない・・・そんな体だったら。」

「そりゃ・・・ある意味地獄でしょう。」

強くなりたいのに、強くなれない。

どんなに努力しても、体の体質のせいで、強くなることができない。

本人にとってはものすごく悲しいことだろう。

俺はそのことをアンナさんに告げると、

「じゃあ、お父様がそうだったとしたら・・・どうします。」

「えっ」

アンナさんがそんなことを言ってきた。

俺は信じられなかった。


昔、アンナさんと一緒に修行していた時、

『アンナさんて、ミストバーンさんよりも強いんじゃないんですか?』

て、聞いたことがある。

それは、ただ単に、アンナさんの強さを目に見たからで、ミストバーンさんの強さを見たことがなかったからだ。

けれど、その時自分なんか足元にも及ばないって言っていた。

そんな人が強くなれなかったなんて。


「お父様は昔・・・それこそ大昔、そんな体だったんです。」

俺が考えていたら、アンナさんが話の続きをした。

「あ、でも今は違いますよ・・・ある方法で強くなれますから。でも・・・そうなるまで、そんな悲しい思いをしてきました。それこそ、多くの時間をそんな思いで過ごしてきました。」

俺はアンナさんの話を聞いて、自分と照らし合わせる。

10年間の努力が水の泡にある・・・・すげ~やだな。

「だから、お父様は大輝さんが許せなかったんだと思います・・・せっかく強くなれる体を持っているのに、楽しようとする貴方が・・・」

といっても、魔法のことについてはやりすぎですけどね---アンナさんはそう言って締めくくった。

「・・・・・・」

『強くなれることができる体を持っているのに!!』

俺はアンナさんの話を聞いてミストバーンさんに言われたことを思い出す。

思えば、あの時のセリフは俺だけに言っていたんじゃないのかもしれない・・・

「大輝さん・・・もう一度お父様とお話してはいかがですか?私も、魔法のことについてきつく注意しますから・・・ねっ?」

アンナさんがそう言ってきたので、俺は首を縦に振った。

















ここは、修行用の空間で、ミストバーンはそこにいた。


*バーンたちは、それぞれ役割を持っている空間をいくつか持っています。


--キュィン--

その空間の魔法陣が輝いた。

そこには大輝とアンナが立っていた。

「何か用か?」

ミストバーンが問う。

大輝は一歩前に出て


「すいませんでしたっ!!」


頭を下げながら、あやまった。

「・・・なぜ、あやまる・・・」

ミストバーンは再び問う。

「俺、俺自分のことしか考えてなくて!ミストバーンさんのこと考えてなかったんです!だから、こんなこと言うのはあれかもしれませんけど・・・俺を強くしてください!!」

ミストバーンはアンナの方を見る。

アンナはコクンッと首を振った。

ミストバーンは再び大輝に目を向ける。

「・・・・・」

「・・・・・」

しばらく、沈黙が続いた。

「貴様があやまる必要はない・・・あれは私が勝手にやったことだ。」

ミストバーンはそう言い魔法陣に歩きだす、

「・・・明日から、魔法及び闘気の修行に入る。」

その言葉を残して。

大輝はガバッと顔を上げて

「ありがとうございます!!」

と言い、再び頭を下げた。
















おまけ

「お父様、なに綺麗に終わらそうとしてるんですか?」

アンナさんがミストバーンさんを捕まえて、そう言った。

いかにも怒ってるって顔で。

「まったく。お父様!大輝さんはついこの間まで普通の人間だったんですよ!大体お父様は口下手なんですよ、必要最低限のことしか言わないからこういうことになるんです。わかっているんですか!!!」

「あ、ああ」

すげ~~あのミストバーンさんが押されているよ。

「いいですか、お父様・・・・・・」

その後、しばらくの間アンナさんの説教が続いた。

















あとがき

どうも、作者の天魔です。

今回の話は、大輝とミストバーンが少しでも仲良くなるようなエピソード書いたんですが、いかがだったでしょう?

そして、オリキャラ登場、しかもミストバーンの娘(ただし、血のつながりはなく、娘と言うより、創造物ですが)

まあ、登場させた理由はあれです、ミストバーンは修行を付けるとしたら、実戦派だと思い、理論や基礎を教えるため、登場してもらいました。

えっ・・・10年も修行しているのに、弱くないかって?

フフフッなにいってるんです、大輝はあくまで一般人です。

そうですね・・・ではDBのクリリンを例にしてみましょう。

クリリン

登場時・・・13歳

八年間、多林寺で修行。

亀仙人の時の100m走・・・10秒4

大輝が年単位で次のステップにいったのに対して、最初からしていた。

ね?こんな13歳、しかも日本にいると思いますか?

そう、つまりクリリンはただの地球人ではなく、“スーパー地球人”なんです!!!

だから、ただの地球人の大輝は勝てないのは当たり前なんです!!!!

・・・・・すいません、興奮しました。

でも、大輝は一般人なので強くなるのはかなり時間がかかります。

最後のおまけは特に理由はありません・・・なので気にしないでください。

では、次回。







感想返し

<とんじんさん>

いつも感想&誤字報告ありがとうございます。
まあ、修行は今回のようなことということで・・・・
これからも、差支えなければお願いします。


<九尾さん>

いつも感想ありがとうございます。
世の中そんなうまくいきません。
それに大輝はあくまで一般人で才能も無いです。
なので、かなり時間がかかります。

































[15911] 第五話 修正
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 13:39
第五話

*最後にアンケートがあります、よろしければお答えください。










--10年目--

「では、大輝さん、この中に入ってください。」

アンナさんそう言い、俺を目の前の機械に入らそうとする。

円柱になっていて、外の機械とチューブで繋がっている。

「これが?」

「はい、大輝さんの闘気量と魔法力量を調べる機械です。」


昨日ミストバーンさんとの話が(アンナさんは説教だったけど)終わった後、

これからの修行のめやすのために今の俺の闘気量と魔法力量を調べるそうだ。

それが目の前の機械というわけだ。

「簡単に説明します・・・この機械は対象の肉体闘気量・魔法力量を測定します。そして、そこから導き出される総合戦闘力を調べます。」

「総合戦闘力?」

闘気と魔法力はなんとなく想像つくけど・・・・

「総合戦闘力と言うのは、今のその人の強さの目安だと思ってください。ちなみに、大輝さんの世界の成人男性の総合戦闘力は約5前後です。」

それって、まんまドラゴンボールの設定じゃね?

・・・・・・まあ、もう気にしないけど。

ということは、これはスカウターの強化版みたいなやつか。

*スカウター・・・DBに出てくる相手の場所や強さを数値化する機械。



「では大輝さん、始めますよ。」

アンナさんがそう言ってきたけど、

「あの、俺は何をすればいいんですか?」

「特にする必要はありません。」

どうやら、ただ立っていればいいらしい。

--ピッピッピッ--

機械特有の電子音が鳴る。

「はい終了です。」

終わったようだ。

(なんか、すげ~簡単だったな)

「こちらが結果です。」

アンナさんが測定の結果が書かれた紙を渡してきた。

そこには、次のような結果が書かれていた。

--斎藤大樹--

肉体闘気量--48--

魔法力量--81--

総合戦闘力--48--

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

俺TUEEEEEEEEEEE!!!

あん?そんな強くないって、

バカ言っちゃいけませんよ!

俺の世界の成人男性の数値は約5前後。

そして、俺は48。

つ  ま  り!!

俺の実力は地上世界のレベルを超えているということだ。

しかも、魔法力がある。

これが高いのか、低いのかわからないけど、あるってことは魔法を使えるってことだ。

闘気も気になったけど、先ず魔法を教えてもらおうとしたんだけど・・・・・

「使えませんよ。」

世の中甘くなかった・・・・・




アンナさんが言うには、魔法力は誰でもあるらしい。

というより、なければその人・・・生き物は死んだ状態だそうだ。

ただし、中には死んでも魔法力や闘気を持てる例外もいるらしい。

で、何で使えないかっていうと、

なんでも闘気と魔法力の二つは密接に関係していて、どっちかが減少しすぎると、体を維持するため、残ったエネルギーを使うらしい。

・・・・・まあ、これだけじゃ解らなかったから、アンナさんが例を挙げて説明してくれた。


先ず、闘気もしくは魔法力が0ってことは、その体は死んでいる、もしくは仮死状態になっている。

そして、闘気=肉体エネルギー、魔法力=精神エネルギーと仮定する。

で肉体エネルギーを使う(運動など)と当然減っていく。

だけど、これが0になることはない・・・そんことになったら、今頃世界中で死者だらけになっている。

そこで登場するのが精神エネルギーということだ。

精神エネルギーが減少した肉体エネルギーをまかなうからこそ、体が生命活動を止めることはない。

その逆に精神エネルギーの場合は肉体エネルギーがまかなう。

つまり、肉体エネルギー=闘気、精神エネルギー=魔法力はどっちとも、生命活動に必要な“生命エネルギー”ということだ。

人間は無意識のうちにこの循環を行っているみたいだ。

で、俺の魔法力は81・・・・これがどんくらいかは以下の通り。


--魔法力(人間レベル)--

0・・・死んでいる、仮死状態

1~20・・・生命エネルギーをかなり消費して、危険な状態。

21~49・・・少し疲れた状態。

50~70・・・一般人が持つ魔法力。

200以上・・・ここから、魔法を使っても問題ないレベル。
        魔法使い初心者。

300~500・・・戦闘にでても問題ないレベル。
          下級魔法使い。

600~1000・・・中級魔法使い。

1500以上・・・上級魔法使い。

3000以上・・・大魔道師、賢者と言われるレベル。


ということになる・・・要するに一般人の中では少し高いだけ、

けれど、これじゃ魔法を使ったら危険だということだ。

といっても全く使えないというわけじゃない。

その使える魔法っていうのが、“最下級呪文”だ。

この最下級呪文ってのは、別名“家庭用呪文”と呼ばれる。

バーンさんが使っていたルムハ(第二話(上)参照)なんかは、戦闘などには役に立たないけど、夜眠れないときなどには役に立つ。

まあ、要するに“あったら、あったで便利”みたいな呪文ということだ。




「と、言うわけです・・・なにか質問はありますか?」

アンナさんが言ってきたけど、特になかったので首を横に振る。

「では、続きまして肉体闘気量・魔法力量・総合戦闘力について説明しますね。」

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

「が、主な説明になります。」

俺はアンナさんに言われたことを頭の中で整理すっけど、

これがけっこうややこしかった。



先ず闘気と魔法力についてなんだけど・・・

闘気は主に戦士タイプ・魔法力は主に魔法使いタイプが高い。

これは納得できる、ドラクエなんかでもそんなイメージだったからだ。

けれど、その使用方法がドラクエなんかとは違った。

さっきアンナさんの説明にあったけど、この二つは互いに循環している。

一流の使い手はこの循環を利用して変換させることができるらしい。

例えば、闘気が多く魔法力が少ない人間がいたとしよう。

この人間が魔法を使おうとしても魔法力が少ないから使えない。

けれど、多い闘気を魔法力に変換して使うことができるらしい。

その逆も同じパターンだ。

つまり、肉体闘気量が少ないからと言って、必ずしも身体能力が低いとは限らない。

そして、魔法力量が少ないからと言って、魔法を使えないとは限らないらしい。

けど、こういった変換を使うのはあまりいないらしい。

なぜなら、闘気が多い人間は、その闘気を使い、身体強化、傷の回復、気功波や気功弾などの遠距離攻撃と言った魔法の代わりとして使うことができるし。

魔法力の多い人間は、攻撃、補助、回復などといった、闘気の代わりに使うことができる。

だから、どっちかに片寄るのがほとんどだそうだ。





総合戦闘力ってのは、文字通りの意味なんだけど・・・俺を例に挙げてみよう。


肉体闘気量--48--

魔法力量--81--

総合戦闘力--48--


で、肉体闘気量=総合戦闘力ってなっているけど、これは俺が魔法を使えないからだ。

アンナさんの説明にあった通り、魔法を使って問題ないのは最低200以上なければいけない。

だから、俺の魔法力量じゃ、総合戦闘力に加算されず肉体闘気のみで数値化される。

まあ、100以上あれば僅かに加算されるみたいだけれど・・・・

けれど、循環できれば(俺の場合魔法力が少なすぎるので闘気に変換できた場合)
総合戦闘力を上げることができるとのことだ。


まあ、つまり、数値をあまり頼りすぎても意味がないということだ。














「それでは大輝さん、魔法及び闘気についての修行を始めます。」

アンナさんそう言った後、「実際に見てもらった方がいい」とのことで、さまざまな魔法を見せた。

攻撃はメラ、ヒャドなどといった、代表的な呪文。

補助は俺にバイキルトやピオラを俺にかけ体験させたり。

回復でホイミをかけたりした。

・・・・ていうか、アンナさんすご!!!!!

攻撃なんか、メラ、ヒャド、バギ、イオ、ギラを同時に使ったんだぜ!

しかも、涼しい顔でやっているし・・・・

「今のが魔法です、これを今から教えるわけですが・・・・・大輝さん。」

アンナさんが真剣な表情でみつめてきた。

「さっき使った攻撃呪文は主に下級呪文と呼ばれるものです、しかし、その呪文でも人を・・・生き物を殺すことができます・・・・・そのことを忘れないでください。」

俺はそう言われて、首を縦に振る。

ミストバーンさんにみせられた、光景を思い出しながら・・・・



「大輝さん魔法を使うには当然魔法力を使用します・・・魔法力自体は修行すれば上がります。しかし、ただ魔法力が多ければ魔法を使えるわけではありません。」

アンナさんはそこで一度言葉を区切り、黒板に図を書いた。

「魔法を使うには主に二種類の方法があります、その一つでほとんどのケースが契約によって使用できる場合です。」

アンナさんは黒板に書かれた魔法陣を指しながら言う。

「この契約というのは、

1、使いたい魔法と儀式によって契約する。

2、儀式に成功して、魔法力が十分だった場合魔法を使える。

といった、手順になります。」

「・・・・・それだけですか?」

「はい、それだけです。」

アンナさんに疑問を聞いてみたけど・・・それってすげ~簡単じゃね?

そう思ったけど、やっぱり世の中甘くなかった・・・・



契約魔法は、結んだからってすぐは使えない。

これは魔法力の問題もあるけど、適性などの問題もあるそうだ。

適性ってのは、その呪文との相性でこれが良ければ使える確率は高いらしい

逆に悪ければ、下手したら一生使えないらしい。

そして、中には生まれつき魔法を使えない体質の人がいる。

こういった、人はいくら契約しても魔法を使えない。

まあ、こういったやつが魔法は才能に左右される、といういわれだそうだ。




「それで、二つ目ですが・・・これはあまり使える人間はいません。なぜなら、これは才能そのもの・・・天才と呼ばれる人しか使えませんから。」

アンナさんが二つ目の方法を聞かせてくれたけど・・・こっちは使えそうにないな。

これは、生まれつき魔法力の多い人間が使える方法だそうだ。

その方法ってのが、精霊もしくは何か道具を使い、魔法を使う方法。


精霊ってのはRPGなんかに出てくるやつをイメージしてもらえばいい。

でこの精霊っていうのは、魔法力が多い人間には見えやすいらしい。

その精霊と契約すれば魔法が使えるみたいだ・・・別名精霊魔法とも呼ばれるらしい。

まあ、精霊魔法の方は才能ある人間でも、ほんの一握りの存在しかいないみたいだけど。


道具を使うのは魔法使いの杖を思ってくれればいい。

この方法を聞いた時は普通の魔法使いと同じじゃね?って思ったけど、どうやら違うらしい。

凡人は杖をもっただけじゃ、魔法を覚えないけど・・・天才つまり才能がある人間は杖をもっただけで魔法が使えるみたいだ。

この杖が歩行器の役割を持っていて、そこから自分でどんどん覚えるようになるんだから、契約する方法よりもはるかに効率がいい。

しかも、うまくいけば自分専用の魔法を使えるんだから、ほんと才能ってのは一番の武器だよ・・・・





今俺は魔法陣の中にいる。

俺の場合、言わずとも才能がないとのことで、契約する方法の方を使うとのことだ。

「それじゃ、始めますよ。」

「はい。」

なんか、緊張するなぁ

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

「・・・・・はい、これであらかたの魔法との契約は終わりました。」

「・・・・・」

アンナさんはそう言ったけど・・・・特に変化は見られない。

ちなみに俺が契約した魔法は、攻撃呪文、攻撃補助呪文、補助呪文、回復呪文、その他・・・ようは、ドラクエの呪文のほとんどと契約した。

だけど、

「・・・・・」

体を見回したり、体に力を込めてみたりしたけど、変化は見られない。

「あの、アンナさんほんとに契約したんですか?」

俺は心配になって聴いたんだけど・・・

「だから、言ったじゃないですか、すぐ使えるわけではないと。」

とのことだ。

・・・・・・いや、俺もそう思わなかったわけじゃないけどさ・・・・

10年だぜ、10年間修行して使えないって・・・・・はあ~~~。



「それじゃ、適性検査をしましょう。」

そういって、アンナさんは何かの機械を持っている。

どうやら俺の適性を調べる機械だそうだ。


--適性検査中--


「・・・・はい、終了です。」

「大輝さんは攻撃呪文の中では・・・メラ系との相性がいいみたいです。」

アンナさんがそう言ってきた。

メラ系かあ~、ドラクエの定番の呪文だな。


ちなみに、攻撃呪文の説明は以下の通り。

メラ系・・・魔法力を炎に変換させて相手にぶつける呪文。

ヒャド系・・・魔法力を氷や吹雪に変換させて攻撃する呪文。

ギラ系・・・メラ系と違い、炎そのものではなく、どちらかと言えば、熱エネルギーで攻撃する呪文。

バギ系・・・かまいたいを発生させ攻撃する呪文。

イオ系・・・空気中の成分を魔法力で合成させ、爆発を起こす呪文。


ちなみに、アンナさんが得意なのは、ヒャド系とイオ系。


「続いて、攻撃補助呪文は特になにかと相性がいいのはありませんね、全部普通です。補助呪文は、フバーハやアストロンなどと言った防御系と相性がいいですね。回復系は・・・ザオラルなどの蘇生呪文と相性が悪いみたいですね、他は特に問題ありません。その他は特に相性がいいのはありません。」


アンナさんの説明が終わったけど、

「それって、悪いんですか?」

なんか、あまり相性がいいのがなかったけど・・・

「良くも悪くも普通です・・・並の人間じゃ、相性がいいのは大体2~3ですからね。」

つまり、俺が圧倒的に悪いわけではないみたいだ。














「・・・・・・」

俺は今、自分の中にある闘気を放出させようとしている。

あの後、魔法を使おうと思ったけど、案の定使えなかった。

そこで、魔法は一旦おいといて、闘気の修行に入った。

闘気には主に二種類の闘気がある。


“光の闘気”と“暗黒闘気”と呼ばれる二種類だ。


まあ、ゲームとかだと前者の方が正義っぽいけど、明確な違いはないらしい。

光の闘気は人間が使いやすくて、暗黒闘気は魔族が使いやすいとのことだ。

むろん、人間の中に暗黒闘気を使えるやつがいれば、魔族の中にも光の闘気を使えるやつがいる。

なんで、こんな呼ばれ方をしているかと言うと、昔、人間と魔族が争っていた時代。

当然この時代にも闘気がある。

で、そんときの人間が魔族が使う闘気の色を見て、呼び方を考えたそうだ。

*光の闘気は青・黄色・白などがベースの色、暗黒闘気は紫・赤・黒などがベース

まあ、人間にとっては、魔族が悪い奴ってイメージだからこの呼び方をしたんだと思う。

魔族側も別に気にしてなかったみたいで、“別にいいか”みたいな気持だったらしい。

しかも、暗黒闘気を使った人間は全員“悪”ってよばれる人間だったみたいだ。

それが原因で、光の闘気は“善”の心、暗黒闘気は“悪”の心から発生させられるという説が生まれた。

それが、尾ひれがついて地上世界や魔界などに広まったらしい。



俺はこの説明を聞いてある仮説が生まれた。

それは、俺が好きなアニメの“ドラゴンボール”での“気”の色だ。

あの作品のなかで使う“気”は闘気で間違いないと思う。

で、俺たちの世界は一度昔の神様にリセットされたけど、魂の記憶が僅かだけ覚えていて、ドラクエっていうゲームを作った。

もし、その記憶の中に闘気のことも含まれていたとしたら、これに納得がいく。

あの世界では孫悟空とかが使う気の色は青白い色や黄色っぽい色がほとんどだった。

これは“光の闘気”の特徴と一致する。

で、フリーザとかが使う気の色は紫や赤っぽい色だった。

これは“暗黒闘気”の特徴と一致する。

それに孫悟空は“正義”、フリーザは“悪”とした設定だったし、俺の考えは間違っていないと思う。



まあ、この仮説はおいといて、闘気の放出なんだけど、これは自分でやるしかないらしい。

自転車の乗り方を教えるようなものだ。

自転車の乗り方はある程度のアドバイスは教えられるけど、細かいとこは自分の感覚で覚えるしかない。

闘気も同じ感覚で会得しないだめらしい。

「・・・・・・」

今もなんとか放出しようとしてるんだけど、うまくいかない。

自分の中に何かエネルギーがあるってのは解るんだけど・・・・

「まったく解んねぇ」

そう、これを放出する感覚ってのが解んないんだよなぁ・・・・




--11年目--


「・・・・・」

あれから一年、アンナさんとかにアドバイス(自分の中の水をコップですくい上げる感じらしい)をもらって出来るようになったんだけど・・・・・

「紫色。」

そうなんだよ、俺の気の色、“紫”なんだよ・・・ということは俺の闘気は暗黒闘気ってことになる。

「・・・・はっはっはっ」

そうだよ、暗黒闘気でも別に悪いってわけじゃねえんだよ・・・まあ、悟空とかの色の方がいいと思ったけど。

「ふんっ!」

俺は気合を入れて、近くにあった小岩(人間が座れるぐらいの)にむかって放ったんだけど・・・・

(おせぇぇ~~)

遅いんだよ、飛ぶスピードがこう風船が飛んでるみたいだ。

--ドォン--

当たったけど、岩は壊れなかった。

(しかも、よわ!)

岩全体にひびが割れるぐらいの威力しかなかった。

(もうちっと、威力高くなんないんかな~)

俺は試行錯誤を繰り返した。



--12年目--

あれから繰り返す。

少しは威力も高まり、スピードも速くなった。

気のコントロールも練習する。


--13年目--

このころになると、小岩ぐらいなら破壊できるようになった。

コントロールもうまくできるようになった。


--14年目--

コントロールはうまくなったけど、威力はあいかわらずだった。


--15年目--

俺は今、岩(小学生ぐらい)の前にいる。

ある技を試すためだ。

両手首を合わせて手を開き、腰付近に両手を持っていきながら体内の気を集中させる

「か~~め~~は~~め~~」

そう、かめはめ波だ。

やっぱり、男なんだから一回は使ってみたい技でしょ!!

「波ーーーーーーーー!!!!」



--ドオオォォン--




「すげ~威力。」

目の前の岩は粉々になっていた。

「すげ~!すげーーーー!!!!!」

いや、これ興奮するね!!

やっぱ、憧れていた技を使えるって、すげ~きもちい~。


--ガクッ--


「はっはっ・・・・てあれ?」

なぜか知らんが、いきなり力が抜けて立てなくなった。

「なっ・・・はっ・・・・ほっ・・」

なんとか立とうとするけど・・・全然立てねぇ・・

(なんで?)

俺は不思議に思った、ただ“かめはめ波”を使っただけなのに・・・

うん?

かめはめ波?


かめはめ波・・・体内のエネルギーを凝縮させて一気に放つ技。


『エネルギーを凝縮させて一気に』

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

って、俺って気が少なすぎて、一気に放ったからこうなったわけ!!?

や、でも悟空って別に放っても問題なかったよね!!?

*悟空はサイヤ人っていうスペックがあります。しかも、人間の部類で天才に入る亀仙人でも50年かかって身につけたんです。
 そんな技・・・ただの人間で才能がない奴が、簡単に身につけられると思いますか?

A、できません♪


わっっかりやすい説明ありがとぉぉぉぉーーーーーー!!!!






「はあ~~~」

あの後なんとか回復して、歩けるようになったけど・・・

(今のコントロールじゃ、技としてつかえないんだよな)

そうなんだよ・・・気の量はまあ鍛えるからいいとして。

問題はコントロールなんだよ。

しかも、今よりうまくやんないと、闘気を使いすぎてぶっ倒れるんだよ。

これじゃ、ほとんど意味ないよなぁ~


(亀仙人さん、及びクリリンさん、天津飯さん、ヤムチャさん、餃子さんの地球組のみなさん)

(いままで、後期になると、ほとんど役にたってないとバカにしてごめんなさい)

(あんたら、気のコントロールや威力・技を数年単位でみにつけたんだよな)

(マジ尊敬します)

(しかも、亀仙人さん・・・あんたすごいよ)

(かめはめ波なんて技、一から作りだして会得できたんだから)


「はっはっはっ・・・・比べるのがばかばかしくなった。」


とりあず

かめはめ波、どうすっかなぁ~















おまけ

「・・・・なるほど、この技は体内の闘気を凝縮しそれを放つ。」

「しかも、コントロールがうまければ自分の意思で操れる・・・人間が編み出した技にしてはなかなかですね。」

そう言うアンナのそばで大輝は影を背負って落ち込んでる。

「ずーーーーん」

自分で効果音を言うほど落ち込んでるようだ。

アンナの近くには数十メートルの岩が跡形も無くなくなっていて、地面が地平線に向かって削らていた。

*ちなみにアンナの闘気の色は薄い黒と紫が混じったような色












あとがき

突然ですがアンケートを取りたいと思います。

この作品は“悪”の技を使うとのことなんですが・・・ゲームなどで魔人ブウなども使っていてので、

あれ?これも悪の技にはいるんじゃねぇ・・・って思ったんです。

デ〇モンのウォー〇レ〇モンとブラックウォー〇レ〇モンの必殺技も同じ名前だったけど、細かいとこでちがかったし・・・・

皆さんどう思いますか?

以下のアンケートによろしければお答えくださるとうれしいです。

①、かめはめ波は正義側の技なので使わない方がいい・・・という人は①を

②、このかめはめ波は大輝の闘気、つまり“暗黒闘気”を使った魔人ブウなどが使っていたかめはめ波なので一応悪の部類に入る・・・という人は②を

締切は2月5日の夜までとします。

差支えなければお答えください。


今回は説明がメインでした。

闘気についてはダイの大冒険の解釈に少しオリジナルをいれました。

では次回。







感想返し

<九尾さん>

そうですね・・・大輝は一般人なので。

大輝のレベルは今回少し触れました。
まあ、そこに気のコントロールが加わったものだと思ってください。

ドラゴンボールは仕方ありませんよ・・・亀仙人でも月を破壊できますしね。
ただ、DBのキャラでも魔法などは通じる描写などがあったのでそこを、うまく攻めれば、勝てるかもしれませんよ・・・それでも、破壊力は全作品トップなんですけどね。



<とんじんさん>

誤字&ミストバーンの口調についてのアドバイスありがとうございます。
作者もなんとか似せるように頑張ります。
しかし、ここをこうしたらいい、というとこがあったら、アドバイスをくれるとうれしいです。




















[15911] 第六話(上) 追加 修正
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 13:49
第六話(上)












--16年目--


「サバイバル・・・ですか?」

あの後、一年間闘気の総量を上げる修行

そして、なによりコントロールを上げるよう修行をした。

そのおかげで、なんとかかめはめ波を使えるようになった。

・・・・・・もっとも、まだコントロールは完璧じゃないけどな。

そんなある日、アンナさんが前触れもなく言ってきた。

「はい、サバイバルです。」


アンナさんが言うには、サバイバルは手っ取り早く闘気と魔法力を増やすにはいいらしい。

まあ、自然の中で過ごすわけだから、体や精神力が鍛えられるだろうけど・・・・


「と、言うわけで頑張ってください。」

「いや・・・・そんな笑顔で言われても。」

俺の目の前に、青い渦が渦巻いている。

まあ、あれだ、ドラクエの旅の扉だ。

「え~とこちらが薬箱、こっちが薬草などの図鑑、これが調理器具です。」

と言って、アンナさんがカバンを渡してきた。

「ていうか、アンナさん・・・俺まだ行くって言ってませんけど・・・」

サバイバルの修行が効率がいいってのは解ったけど、それで行くのとは別だ。

俺、現代っ子だし・・・・

それに--

「アンナさんたちって、他の世界に干渉しちゃ、いけないんじゃないんですか?」

アンナさんたち神、もしくはそれに近い存在は神界や一部の世界をのぞいて干渉するのが禁止されてる。

それは、そのあまりの力に干渉した世界になにか影響を及ぼすかもしれないからだ。

(一応、俺もそんな存在に修行をつけてもらってるんだから、その中に入ると思うんだけど?)

そう思った・・・しかし--

「大丈夫です・・・今の大輝さんのレベルじゃ、そんな影響ありません。」

とのことらしい

・・・・・いや、俺だって解っていたよ、

でも16年修行してもそれって・・・・・



「では、頑張ってください。」

そう言って、俺を送り出そうとする。

まあ、ある程度強くなったし、大丈夫だと思うんだけど・・・

「やっぱり・・・いかなきゃだめですか・・」

やっぱ、サバイバルはねぇ・・・

「大丈夫ですよ・・・高々半年ですから。」

いや、半年ってそれでもきついですよ。

「それに、重りも外していますから、今の大輝さんのレベルでも大丈夫です。」

確かに、かなり身が軽くなったけど・・・・

それとこれとはねぇ


*ちなみに大輝が今している重りは100キロ


俺が渋ってると

「大輝さん・・・・・今の修行をさらに辛くするのと、どちらがいいですか?」

そんなことを言ってきた。

「喜んで行かせてもらいます!!」

俺はすぐ返事したね!!

あの修行が辛くなるなら、まだ自然の中にいた方がましだ!!



俺は目の前の旅の扉に向かって歩き出す。

(よーし、頑張るか!!・・・アンナさんの修行よりましだろう)

俺はそう飛び込もうとすると・・・・

「あ、その世界は当然ですが、ここと違い時間がゆっくりではありません。ですから、喉も渇けば、おなかも減ります。なので、食料は現地調達してください。」

なんてことを言ってきた。

「へっ・・・本当ですか?」

「はい、だからそのために調理器具をかばんに入れた渡したんじゃないですか。」

なにをいってるんだ?って不思議な顔をされた。

いや、サバイバルって表現でうすうす感じてたけど・・・

「あの・・・万が一、行った世界で死んだら・・・・」

「アウトです。」

どうやら、思ってたよりも厳しいらしい。

「いや、アウトって・・・アンナさんたち俺を生き返らせるために頑張っているんですよね。」

俺が死んだ責任は一応神側にも責任があると思い、言ったんだけど・・・

「大輝さん・・・たしかにあなたを生き返らせるため私たちは頑張っています。しかし、それはあくまでも手助けです・・・あなた自身が強くならなければ意味がありません。それにこの程度で死ぬようなら、ロストセレスティを見つけるなど夢のまた夢です。」

という返事が返ってきた。

・・・・・・まあそうだけど


・・・・・うん?そういえば

俺が悩んでると、ある疑問が浮かんできた。

「あのここから出るってことは、当然時間が進むってことですよね。そうなったら、俺が蘇ったときどうするんですか?」

そう、俺が蘇った時バーンさんが他の人の記憶を消してくれるから問題ないって言っていたけど。

さすがに半年間も音沙汰なしだとおかしく思うんだけど・・・

「あちらの世界と地上世界の時間の流れは違うので大丈夫ですよ。」

とのことだ

・・・・もう心配するのやめよ




「いってらっしゃい。」

アンナさんが笑顔で俺を送りだす。

あの後、少し悩んだけど、やっぱ行くことに決めた。

このままじゃ、強くなるのに時間がかかる、

そうなれば、生き返るのに時間がかかると思ったからだ・・・・やっぱ早く生き返りたいし。

「それじゃ・・・いってきます。」

俺はそう言って、旅の扉に飛び込んだ。






「大輝さん・・・無事に帰ってきてください。」

アンナはそう言って、大輝の無事を祈った。

その姿は弟の無事を祈る姉のようだった・・・・・




















「ここが・・・・」

大輝が降り立った世界は荒野だった。

周りには岩しかなく、殺風景な風景だ。

「・・・・・とりあえず、寝床をさがすか。」

大輝はそう呟いて歩きだす。




「うん?あれは」

大輝がしばらく歩いて行くと、小さな物体-幼稚園生ぐらい-が動いているのが目に入った。

「コドラ?」

大輝が言ったように、それはドラクエのモンスター“コドラ”だった。


*コドラ・・・発達した後ろ足で二足歩行をするドラゴン系の下級モンスター


(かわいいな~なごむわ~)

コドラが二本足で走る姿をみて大輝がなごんでると・・・

(なんだ?)

大輝が大きな気配を感じた。

なんだろう・・・と思い周りを見回すが岩しかない。

しかし・・・

--バクッ--

(バクッ?)

突然そんな音が聞こえた。

しかもその後、何かを咀嚼する音が聞こえてきた。

大輝は恐る恐る振り向くと。

「ドッ、ドラゴン!!」

そこには“ドラゴン”がいた。


*ドラゴン・・・ドラゴン系を代表するモンスター、その巨大な姿は他の種族を圧倒させる。中級モンスター。


ドラゴンは何かを食べていた。

どうやら、さっきみたコドラのようだ。

「あ・・ああ・・」

大輝はかなり混乱していた。

それは、ドラゴンのその巨大さゆえにだ。

むろん、威圧感はバーンなどの方が上だ。

しかし、いきなり目の前に数メートルの巨大な生物が現れたのだから無理もないだろう。



「って、呆けてる場合じゃない。」

大輝は一瞬呆けていたが、次の標的にされないよう逃げようとするが・・・

「ガアアァァ」

どうやら、もう標的にされていたようだ。

「クッ!」

ドラゴンが口を大きく開けて大輝を一飲みにしようとする。

大輝はジャンプして回避したが・・・

「て、なんだこの高さ!!」

大輝が飛んだ高さは数十メートルだった、それこそ、ドラゴンを見下ろせるほどの

「げっ!」

しかし、当然重力に従い、落ちてきた。

ドラゴンは落ちてきたとこを食べようとするが・・・

「く、くるな!!」

大輝はそう言って、ドラゴン顔を蹴り飛ばした。

--ズウゥゥン--

それだけで、ドラゴンの巨大な体を倒した。


普通ドラゴン系のモンスターはほとんどが全種族の中で強力な力を持っている。

それは、その巨体から発せられる力と、鉄のような鱗をもっているからだ。

並の戦士ではとうてい倒せない。

しかし、大輝はアンナとの修行により並の戦士のレベルをはるかに超えていた

それこそ、ドラゴンのような中級モンスターを倒せるほどのレベルに

もっとも・・・

「今の内に退避ィィイイーーーー!!」

この男に立ち向かっていく勇気はなかった。

やはり比べる対象がいなかったので-アンナなどを除く-自身がもてなかったらしい・・・




「と、ここは?」

大輝がしばらく走っていくと、森があった。

「・・・・・」

大輝は迷ったが、荒野より安全だと考え森に入って行った。














--パチッパチッ--

「え~と、これが薬草でこっちが毒消し草っと。」

俺は森で収穫したものをまとめていた。

あの後、しばらく森を探索していくつか収穫があった。

モンスターも対して強くなかったし、多くいたとこには近寄らないようにしたから楽だった。

・・・どうやら、気のコントロールの修行をしているときに、気の探索も身につけていたみたいだ。

まあ、そのおかげで安全だったんだけどね・・・

ちなみに、あったモンスターは以下の通り。


スライム・・青くぷるっぷるっな体がキュート、国民的なモンスター。ちなみにランクは下級モンスター

ぶちスライム・・・黄色い体に映える、黒いぶちが特徴。下級モンスター

アルミラージ・・・魔力を秘めた角を持つ一角うさぎ。下級モンスター

おおきづち・・・小柄な体で大きな小づちを振り回す。下級モンスター

ナスビナーラ・・・ナスのような体からツタのような手足がはいている。踊りが得意。下級モンスター

マタンゴ・・・頭のカサから催眠性の胞子を撒き散らすお化けキノコ。下級モンスター

キリキリバッタ・・・飛びまわるバッタのモンスター。下級モンスター

ぐんたいアリ・・・小さな体に似合わず、ここ一番で怪力を発する頑張り屋さん。下級モンスター


どうやら、この森にはスライム系、獣系、植物系、虫系が生息してるみたいだ。


「それにしても、俺強くなったな。」

そう、こいつらは仮にもモンスターだ、人間を倒せるぐらいの強さを持っている。

同じスライムでも攻撃力が高かったやつもいれば、ギラを使うやつもいた。

どうやらゲームのように一定の強さではなく、レベルに差があるらしい。

まあ、当然だよな・・・人間が強くなるんだから、モンスターも強くなってもおかしくないよな。

しかし、そんなモンスターでも軽く勝てた。

それに--

「お!焼けた、焼けた。」

俺はたき火で焼いていた魚を食べる。

この魚は手づかみで捕ったものだ。

普通手づかみで、それも野性の魚を捕るのは難しい。

しかし、俺はできた。

まるで、魚のスピードがスローに感じた。

どうやら動体視力もかなり高くなったらしい。

おまけに荒野からずっと走って、そのまま森を探索していたのに、全然疲れなかった。

どうやら修行の成果はちゃんとでてるらしい。





「ふ~食った食った」

シンプルな塩焼きだったけどなかなかうまかった。

その後は森で採った果物を食べながらこの後のことを考える。

(半年間生き抜かなきゃいけないんだよなぁ~)

そうだ半年間生き抜いて、アンナさんの迎えを待たなくてはいけない。

まあ、食料に関しては大丈夫だろ。

危険も荒野に行かなければほとんどない。

(やっぱり、闘気のコントロールがメインになるかな)

俺の今の肉体闘気量はそれなりに増えている。

しかし、まだかめはめ波を使うと余計な闘気を使ってしまい、すぐガス欠になってしまう。

その問題さえ解決できればなんとかなるだけどなぁ・・・・

「ま、それは明日考えよう。」

いくら疲ないといっても、やはり眠気は襲ってくる。

俺はそのまま寝転がろうとしたけど・・・

「あ、そのまえに・・ライト!」

俺がそう唱えた瞬間、目の前にサッカーボールぐらいの光の球が出た。

これは“ライト”という最下級呪文だ。

効果は・・・まあその名の通り周りを照らすだけどな。

いくら俺でも最下級呪文ぐらいなら使える。

それで、やっぱ暗いより明るい方が安心すると思って使ったんだけど・・・・

「まぶし!」

そう、まぶしすぎるんだよ・・・俺のライト。

どうやら、魔法力のコントロールがうまくできなくて、余計な明るさを出してしまったらしい。

「・・・・・」

俺はライトを消しながら、寝転ぶ。

この半年で魔法力のコントロールもうまくできるよう誓いながら。










--ごそっごそっ--

「ぐごーぐごーっ」

--ごそっごそっ--

「むにゃむにゃすぴーっ」

--ごそっ・・・くぅーん--

「むにゃ・・ん・・なんだ?」

俺は妙な気配を感じて起きた。

(モンスターか・・・それにしては殺気をかんじないけど)

不思議に思いながら、目をこすりながら見ると・・・

「わんっ」

子犬?がいた。

・・・・いや正確には犬と違う。

体が茶色で、背中とかに赤い毛が生えている。

ぴょんっと生えた特徴的な耳に、これまた特徴的な角が生えている。

(犬・・・じゃないよな・・モンスターか?)

俺がそう思っていると、その子犬?が俺のカバンを開けようとしていた。

しかし、まだ牙も生えてなく、カバンも頑丈なので食い破ろうにもできないらしい。

(かわいいな~)

うん、なんか子犬が一生懸命な姿ってなごむよね~

「なんだ、お前。なんかほしいのか?」

俺は子犬があまりにも一生懸命なので気になった

腹でもへっているのか?

そう思ってカバンを開けて昨日の果物の残りをあげたんだけど・・・・

「ガウッ」

と言って、首を横に振った。

どうやら違うらしい。

「わんっ!」

「わっ!」

その子犬が飛びかかっきて、カバンの中を物色しだした。

「おい!やめろ!」

さすがに、これは黙ってみてるわけにもいかなく、子犬を引っ張り出した。

「ぐうっ」

その子犬は俺が採った薬草を咥えていた。

「なんだ?お前薬草がほしかったのか。」

なんで薬草なんか・・・別に怪我してるようじゃないし・・・

--パッ--

「あっ」

俺が不思議に思っていると、子犬が俺の手から離れて駈け出した。

(なんだぁ)

俺は気になって子犬の後を追った。










さて、みなさん、唐突ですが言いたいことがあります。

みなさんは小さいころ、知らない人についていっちゃダメと言われたことがあると思います。

たぶん、親や学校の先生には言われたことがあるでしょう。

そして、今日から知らない犬にはついていっちゃダメと言っておきます。

・・・・えっ・・なんでこんなこと言うかって。

それは、俺の目の前の存在が原因です。



大輝の目の前には、一匹の大きなモンスターがいた。

それは、ほとんどが子犬と同じ特徴だったが・・・・

体は無駄な脂肪がないほど鍛えこまれていて、鋭い爪や牙がある。

その雰囲気はまるで王者のようだった。

“ヘルゴラゴ”それがこのモンスターの名だ。


ヘルゴラゴ・・・獣系最強の最上級モンスター。鋭い眼光は、ひと睨みで相手の戦意を奪う。攻撃力は全モンスターの中で五本の指に入るほどだ。

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

「はっ!!」

い、いかんあまりにも衝撃だったんで意識が少し飛んでしまった。

まあ、こんな場合すぐにげるんだけど・・・

「く~ん、く~ん」

できねぇんだよなぁ・・・

そのヘルゴラゴはかなりの傷を負っていた。

どうやら、このチビ(子犬)はこいつを助けるために薬草をさがしていたらしい。

(ほうっておけないよな)

俺はカバンから包帯を取り出し、近づいていく。

--ギロッ--

「わっ!・・・そんな睨むなよ、治療するだけけだから。」

さすが最上級モンスター・・・傷を負って弱っているとはいえ、その眼光はおとろいていない。

「く~ん」

チビが悲しそうな声を出す。

俺は安心させようと、頭をなでる。

「大丈夫だ、お前のお母さん?は助けるから。」


「・・・・・」






「よし、これで大丈夫だ。」

うん、さすが俺だ傷の治療にかんしては、プロ並みだな。


*アンナとの修行で傷だらけになったから


「グルルルッ」

「あ!動くなって、まだ治ってないんだから。」

俺が傷の治療を終えたら、ヘルゴラゴは動こうとした。

けが人はおとなしくしろ、チビも「く~ん」って心配してるぞ!

俺はなんとかヘルゴラゴを抑えた。

「まったく・・・・とりあえず怪我が治るまでおとなしくてろ。」

さてと、やっぱし怪我してるんだから、栄養のあるものを食わせた方がいいんだけど・・・・

(そこまでする義理はないし、俺にも自分の生活があるしなぁ)

そうなんだよ、こいつらにそんな義理も無いし、正直いってこのまま見捨てた方が俺の安全のためなんだけど・・・

「くぅ~ん、くぅ~ん」

うう、頼むからチビそんな悲しそうな声でそんな目しないで!

チビが俺の方を見つめていた。

ヘルゴラゴの子供っぽいけど、まだ子犬ほどの大きさだし、ものすごい愛嬌がある。

「くぅ~ん、くぅ~ん」←しっぽをふりながら、目を輝かしている

「・・・・・」

「くぅーん」←少し残念そうにしっぽを下げる

「・・・・うぅ」

「くぅん」←しっぽが垂れ下がり、目が悲しみに満ち溢れている

「・・・ううぅわかった!お前のお母さんが治るまで面倒みるよ!!だから、その悲しそうな目はやめろ!ものすごい罪悪感があるから!!」

「くぅ~ん♪」←今ままでで一番うれしそうにする、当然しっぽもブンッブンッとはちきれんばかりだ

(調子いいやつ)



さーて、先ずは食料を探しに行くか。











--シュ--

森を駆けていく一つの影がある。

--シュン--

という音とともに果物をもぎとり

--パシャッ--

川では魚をとった。

「ふ~こんなものかな?」

影の正体は大輝だ。

大輝はあのまま見捨てるわけにはいかず、とりあえず怪我の治療が終わるまで面倒を見ることになった。

そのため、先ずは食料探しに来ていた。

「まあ、こんだけあれば大丈夫だろ?な、チビ?」

「わんっ!」

大輝の言葉にヘルゴラゴ(子供)が嬉しそうに返事した。

ちなみにチビというのは、大輝が勝手に呼んでるだけで、本当の名前ではない。

(ほんとは肉を食わしたいんだけど・・・)

そう思う大輝だが、そのためには荒野まで行かなくてはならない。

むろん今の大輝のレベルならドラゴンぐらい簡単に倒せる。

しかし、一匹一匹ならまだしも、へたしたら何十匹もいる巣に向かうかもしれない

そこまで考えると、向かう勇気が湧かなかった。

「さて、そんじゃ帰るか!」

「わんっ!」

チビがしっぽを振りながら答える。

どうやら、かなり大輝になついたようだ。




「あん?」

帰り道を歩いていると、いきなり上から気配を感じた。

(なんだ?)

大輝はそう思い。上を向くと・・・・


「ひっ、火!」


大輝の頭上から火が迫ってきた。

大輝は難なくそれをかわすが。

「なんなんだよ~!」

連続で火が降り注いできた。



「ガウッ!」

しばらくかわしていると、チビがカバンから飛び出した。

「な!あぶないぞ、チビ!」

大輝は急いでチビのもとに駆けよるが・・・・

「あれ?」

炎の猛攻がピタッと止まった。

大輝が不思議に思っていると・・・

『王の子!』

そんな声とともに大輝の前に一匹のモンスターが降りてきた。

(あれって・・・“ドラゴスライム”だよな)


ドラゴスライム・・・体にしっぽと羽が生えた、ドラゴンの血をひくスライム。中級モンスター


『王の子!なぜじゃまをする!』

(しゃ、しゃべってる)

大輝は軽く困惑したが、すぐ納得いった。

それは、モンスターにも賢さがあるのだから、ある程度高いモンスターなら、人語をしゃべってもおかしくないと思ったからだ。

(ゲームでも何匹かしゃべてるのを見たことがあるし、別にへんじゃないよな)

大輝が一人で納得してると、

「ガウウッ、ガウ!」

『な!王の命の恩人だと、本当か!』

その側でチビとドラゴスライムが話していた。

(なんか、傍から見るとシュールだな)

犬のような生き物と、人語をはなす羽が生えた生き物がしゃべってる光景を見ながら、大輝はそんな感想をいだいた。

『しかし、そいつは幾多の仲間を殺した極悪人なんだぞ!』

「ちょっと待てーーーー、俺は殺しちゃいないぞ!」

いきなり、ドラゴスライムがそんなことを言ってきた。

大輝はその言葉に急いで否定した。

仲間というのは森のモンスター達のことだろう。

大輝はモンスターと戦ったりはしたが、さすがに殺していなかった。

せいぜい、軽く追い払う程度だった。

自分はあくまで生きていくことが目的で、危害を加えるつもりはない

そのことを、伝えるが・・・

『じーー・・・・』

かなり疑いの眼差しで見つめてきた。




「ガウッ」

しばらく見つめていた(睨んでいた?)が、チビがそう声を上げると、途端にやめた。

『まあいい・・・・その姿、王が言っていた“人間”という生き物か』

(人間?)

大輝はドラゴスライムの言葉の中に違和感を感じた。

『人間、王を助けてくれたことには感謝する・・・しかし、早くここから去れ』

死にたくなければな---ドラゴスライムはそう言い残し、飛んで行った。







(なんだったんだ?あのドラゴスライム)

大輝はドラゴスライムと別れたあと、食事の準備をしていた。

献立は魚の塩焼き、果物各種、とった野草を入れた味噌汁。

どうやら、アンナが日本人である大輝のことを考え、カバンに入れていたようだ。

(味噌汁って飲んでも大丈夫かな?・・・・でも体も温まるし、モンスターだから大丈夫だろ)

大輝はそう結論して食事を運んでいく。

その間、考えるのは昼間出会ったドラゴスライムのこと。

(あいつ俺のこと人間って言っていたよな・・・といことは人間がこの世界にいるのか?)

(けれど・・・なんかへんな言い回しだったよな)

そう、昼間会ったドラゴスライムは大輝のことを人間だといった。

しかし、その言葉は、始めてみたような言い回しだった。

そこで、大輝が考えたのは王という言葉だ。

チビのことを王の子と言っていたから、当然その親であるヘルゴラゴが王と言うことになる。

ドラゴスライムは王が言っていた・・・と言った。

これは、つまりヘルゴラゴが人間を知っているということになる。

(考えてても仕方がないし・・・聞いてみるか)



「お~い、チビ、ヘルゴラゴ、飯できたぞ。」

大輝はそう言い、ヘルゴラゴが眠っている洞窟に入って行った。

その瞬間、チビが飛びついてきた。

「わんっわんっ!」

「わっ!・・・そんなひっつくなって、ほらよ。」

大輝はチビの食事を与えて、次にヘルゴラゴに食事を運ぶ。

「大丈夫か?・・・飯食えるか?」

大輝はそう言い、ヘルゴラゴの様子をうかがう。

どうやら、朝見た時より良くなったようだ。

大輝は食べやすいように、果物を小さく切り分けて口に持っていく。

「・・・・・・」

ヘルゴラゴはしばらく見つめていたが、なんとか食べてくれた。


しばらくして---


「ごっそうさん。」

食事が終わり、大輝は後かたずけをしていた。

といっても、ほとんどすることがなく、すぐ終わった。

「・・・・・」

「・・・・・」

今、大輝はヘルゴラゴの隣に座っている。

今日ドラゴスライムに聴いたことを確かめるためだ。

「なあ、お前・・・人間の言葉をしゃべれるか?」

「・・・・・」

大輝はそう語りかけたが、返事は無言だった。

ダメか・・・そう思った瞬間。

『問題ない』

という声が聞こえた。

「今の・・・お前がしゃべったんだよな。」

『ああ』

大輝は確認したが、間違っていなかったようだ。

そこで、大輝はドラゴスライムから聞いた人間について聞いてみた。

内容は以下の通り---


自分(ヘルゴラゴ)はもともと、違う世界に住んでいた。

そこで、二体の仲間とともに、人間の主に仕えていた。

ある日、主が旅の扉を使いこの世界に来た。

しかし、この世界はドラゴン系の種族が暴れまわっていた。

主は襲われていた他の種族を助けた。

だが、ある時、主が事故にあい亡くなった。

自分達は主の命に従い、そのままこの世界で他の種族を守っていた。

しかし、数百年の時間はさすがに寿命がきて、二体の仲間は死んでしまい、今は自分しかいない。



「数百年も守っていたって。」

大輝は純粋に驚いた。

数百年も主の命に従い、守り続けるなんて・・・

大輝はヘルゴラゴの忠誠心に尊敬の念をいだいた。

『人間よお前はなぜここに来た。』

ヘルゴラゴが問いかけてきたので、大輝は自分の目的を答えた。

自分は他の世界の出身で、この世界には修行のためにきたこと

モンスター達には必要以上の危害を加えないこと・・・などを話した。

さすがに、自分が死んだとか、神については言わなかった。



『なるほどな』

大輝の話を聞いてヘルゴラゴは納得したようだった。

それはかつて、自分の主も他の世界にいき修行していたからだ。

『人間「あ~ちょっとまて」 ?』

ヘルゴラゴの言葉を大輝が遮る。

「できれば斎藤もしくは大輝って呼んでくれないか・・・人間って言い方されるとどうも・・・・」

どうやら、ヘルゴラゴの堅苦しい言い方が苦手なようだ。

『そうか・・・ではダイキよ私のことはマーシャと呼べ。』

「マーシャ・・・いい名前だな。」

『ああ、私が主から頂いた名前だ。』

ヘルゴラゴはそう言い、どこか誇らしそう顔をした、しかし、すぐ引き締め。

『ダイキよ、この森の者たちに危害を加えないのはほんとだな。』

大輝はその問いに

「ああ、向こうから手を出してこない限り、危害は加えない。」

と答えた。

「・・・・・・」

『・・・・・・』

しばらく見つめていたが、

『ふっ・・・わかった、お前に手を出さないよう森の者たちに言っておこう』

マーシャがそう言ってきたので、大輝は安心したが・・・・

『ただし・・・もし危害を加えたら、私はお前を許さない。』

牙をアピールしながら、マーシャは大輝に警告する。

大輝は首をなんども縦に振った。



『そういえば、この傷の治療の礼を言ってなかったな・・・感謝する。』

「あ~いやそれほどでも・・・それに、チビが頑張ったおかげだし」

マーシャのお礼に大輝は恥ずかしそうにする

いくらモンスターとはいえ、お礼を言われるのには慣れてなかったようだ。

「なぁ、マーシャはなんでそんな傷を負っていたんだ。」

大輝は不思議に思い聞いてみた。

目の前の存在はヘルゴラゴ・・・すなわち獣系最強の最上級モンスターだ

そんなやつが、なんであんな大怪我をしてたのか気になった。

『老衰でドラゴンどもに後れをとった。』

「ろ、老衰?」

大輝は?を浮かべたが、さっきの話の中に数百年という話があったので、納得した。










あとがき

長くなりそうなので、分けて投稿します。

なんとか今日中にあげたいと思います。

感想返しは後半で。


追記

すいません。作者の都合&力量不足のため、後半は時間がかかるかもしれません。

とりあえず、追加投稿しておきました。

本当に申し訳ありません。

























[15911] 第六話(中)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 13:54
第六話(中)
















--二ヵ月後--

「・・・・・」

俺は今ある呪文を使おうとしている。

「・・・・・メラ!」

そう、メラだ。

この二カ月で魔法力も増えたみたいで、出来るようになった。

「はあっ!」

俺は目標(お手製のかかし)に向かって、放つ。

--ボオォ--

命中して、かかしが燃えだした。

「できた?」

俺は唖然としながら、手を見つめていた。

なぜなら、ここ二カ月で炎自身は出せたけど、命中させるのはできなかったからだ。

「・・・!!やったーーー!!」

「やったぞ!!みたか、チビども!」

「わんっ!」

「「「ぴきー!!!」」」

やっぱり、努力が実るのってうれしいよな、つい子供みたいにはしゃいでしまった。

ちなみに、最後の鳴き声はスライムだ。

この二カ月でかなり森のモンスターとも仲良くなった。

「よっしゃーーこの勢いで頑張るか!!」

と言って、俺は修行を続けた。

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

『で、この結果か』

「・・・・ううぅ」

あの後、調子こいで使いまくっていたら、急に力が抜けた。

どうやら、魔法力を危険ラインまで使ってしまったらしい。

「っていうか、俺10発も使ってないのに・・・・」

そう、メラはいえば下級呪文だ。

それを俺は10発も使わないうちガス欠を起こしてしまった。

(なんでだ?)

俺が疑問に思っていると、

『お前は無駄な力を使いすぎなのだ』

マーシャがそう言ってきた。

ちなみに、魔法はマーシャに教えてもらっている。

さすがに、数百年生きてきただけのことはあり、魔法力のコントロールもうまかった。

で、マーシャが言うには、俺はメラを使う時本来“1”の力ですむのを“10”の力を使ってしまっているらしい。

だから、すぐ魔法が使えなくなるらしい。

(ううぅぅ、この二カ月で魔法力のコントロールうまくなったと思ったけど、まだまだってことか)

・・・・・・・とりあえず、ライトあたりで練習するか。


--しばらくして--


「ふう~なんとか回復したな」

けっこう早く回復して動けるようになった。

そのとき、俺って回復にかけてはすごいんじゃね!って思った。

しかし、マーシャが言うには俺の魔法力量が少なすぎる

だから、回復にかかる時間は極めて短いそうだ。

・・・・・・やめよ、なんか悲しくなるから。


「さ~て、いつも通り見回りに行きますか。」

この見回りっていうのは、ドラゴン系がこの森を荒らしに来ないか見張るためのものだ。

どうやら、この森のモンスターはそれぞれの班に分かれてこの仕事をしているらしい。

で俺も、働かざる者食うべからずって、いうことでこの仕事をもらった。

まあ、本来関係ないけど、俺もこの森の食料がなくなると困るし、なんだかんだ言ってモンスター達と仲良くなったから、手伝っているんだけどな。



この世界のドラゴン系のモンスターは昔、一度マーシャ達にやられてからはおとなしかったらしい。

そして、数十年前まで、他の種族と暮らしても問題なかったらしい。

だが、マーシャの仲間の死とマーシャ自身の老衰・・・そして、ドラゴン達のリーダーが代わったなど。

さまざまな要因でまた暴れだしたらしい。



ま、俺もあんまり相手が強すぎたら手伝わなかったけど、今の俺の実力なら大丈夫だった。

修行にもちょうどいいし、自分ができる範囲でなら助けたいと思ったからな。



『人間・・・どこに行く』

「あん?」

俺が見回りに行こうとすると、ドラム(ドラゴスライム)が話しかけてきた。

こいつは、まだ俺のことを警戒しているのか、態度が硬い。

まあ、よそ者をそんな簡単に受け入れないのが普通だけど・・・

「なにって見回りだよ」

俺がそう言うと、ドラムはフッて笑って。

『一度倒れた体でか?やめておけまた倒れるぞ。今回は貴様は休んでいろ・・・足手まといだ。』

ドラムはそう言って、俺の返事を聞かず、飛んで行った。

まあ、言動にはむかついたけど、休んでいいならそれにこしたことがない。

「そんじゃまあ、お言葉に甘えて。」

俺はそう言って寝転がる。

大丈夫かな?って思ったけど、あいつは何気に強いし大丈夫だろ。



そう、あいつはこの森の中では強かった。

おまけに仕事に対しても責任感が強く、みんなにも慕われている。

まあ、リーダーって感じだ。

ドラムにそのことを言ったら『王はマーシャ様だ!』っていって怒られた。

どうやら、かなりマーシャのことを慕っているようだ。

・・・・その半分でもいいから、俺への態度を軟化してほしい。

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・


「う、ふああ~ん」

どうやら、あの後眠ってしまったようだ。

けっこう時間がたちもう夕暮れだった。

「さて、そんじゃ食料探しにでも行きますか。」

そう思って歩き出すと・・・


--ドォォォン--



「な、なんだ!?」

俺は音が聞こえた方へ意識を集中させる。

(でかい気が一つ、二つ、三つ・・・合計三つの気が固まっている)

(いや、それだけじゃない・・・・こいつは!)

俺は急いで向かった。






『くっ!、この私が』

「ドラム!!」

向かった先にはドラゴン三匹とぼろぼろのドラムや他のモンスターがいた。

さっきも言ったがこのドラムは一対一ならドラゴンに勝てる。

けれど、さすがに三匹相手はきつかったようだ。

「ドラム!!あとは俺がやる、お前は他のやつらを避難させてやれ!」

『くっ!』

ドラムは悔しそうな表情をしたけど、すぐこちらの指示に従ってくれた。

さすがに、みんなのリーダーをやってるだけあって、今一番の最善が解るようだ。

「さ~て、いっちょ頑張りますか」

俺は気合を入れてドラゴン三匹と対峙する。















「「「ガアアアァァァ!!」」」

ドラゴンは雄たけびをあげながら大輝に突進してくる。

(昔ならこれだけでビビったけど・・・・)

--ヒュン--

その音と共に大輝の姿が消えた。

ドラゴンは目標を失い佇んだ。

すると・・・

「今なら、なんも問題ねぇぇ!!」

大輝は上空から一匹に襲いかかった。

--ドォォン--

鉄並に硬い皮膚に大輝の腕が深々と刺さり、ドラゴンの意識を刈り取った。

(一匹目)

大輝は次の標的に向っていった。

「はあああっっ!!」

大輝は真っ直ぐドラゴンに向かっていく。

ドラゴンはそのまま飲み込もうとしたが。

--ヒュン--

また、大輝の姿が消えた。

上か・・・と思いドラゴンは頭上に意識を向けるがそこに大輝の姿はなかった。

どこだ?・・・大輝の姿を探していると

「ここだあぁぁ!!」

ドラゴンの下から声が聞こえた。

--ダンッ--

ドラゴンはそのまま上空に打ち上げられ・・・

「はああぁぁぁ!!」

その先に先回りしていた、大輝に地面に叩き落とされた。

--ズウゥン--

(二匹目)

大輝はドラゴンが倒れたことを確認すると、最後の一匹に意識を向けた。

(さ~て続いて、三匹って!)

大輝の目の前に炎が迫っていた。


*ひのいき・・・ドラゴンの特技の一つ。息系の攻撃の中で初歩的な技。


--ボオォ--

大輝はそのまま炎に飲み込まれていった。

やったか・・・ドラゴンはそう思っていると

--ガシッ--

自分のしっぽを何かがつかんだ。

なんだ?・・・と思い目を向けると。

「・・・・ニイィ」

大輝がいた。

「うりゃああああぁぁぁぁ!!!」

大輝はドラゴンのしっぽをつかんだまま振り回した。

--ヒュンヒュン--

巨大なドラゴンの体はまるでおもちゃのように回っていた。

「おりゃああああぁぁぁ!!!」

そのまましばらく振り回していると・・・

--ブチッ--

「ブチッ?」

どうやら、ドラゴンのしっぽが耐えきれなくて切れたらしい。

「グガガガガァァァァ!!」

ドラゴンが苦痛のためか悲鳴をあげる。

そして、そのまま逃走していった。

「あ、待て!」

大輝は追撃しようとするが・・・

『まて人間、それより仲間の治療を!』

という、ドラムの声を聞き、追撃をやめ、治療に専念した。

















「さ~て焼けたかな♪」

あの後、俺は傷ついたモンスター達の治療をした。

幸い、死んだやつは一匹もいなかった。

よかった♪よかった♪

で、今俺が何をやっているかというと

(いや~一度でいいから漫画みたいな肉食いたかったんだ)

そう、あの千切れたドラゴンのしっぽを焼いていた。

・・・・ていうかアンナさん、鉄並に固いドラゴンの皮膚を切れるって、

どんな包丁使っているんですか。

「・・・・まあそれは置いといて、いたたぎま~す♪」

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

「うん、けっこういけたな。」

味的には問題なかった、それなりにおいしかった。

けれど、鱗が邪魔だった。

・・・・さすがに、鉄並の硬さじゃね~

「さて、残ったやつはチビ達に持っていってやるか。」

俺は残りの肉を持ちチビ達の洞窟に向かった。




「うん?あいつ・・・・なにやってるんだ?」

チビ達の洞窟に向かう途中、見慣れた後姿があった。

あの、羽を生やした後姿は一匹しかいない。

「よ、ドラム何やってるんだ?」

そう言って、俺はドラムに話しかけたんだけど・・・

『人間か・・・・』

(なっ、なんなんだ)

なんていうか、こう~ものすご~く落ち込んでんだよ。

「・・・・・・・」

『・・・・・・・』

「えっと・・・・肉食うか?」

『・・・・・・・』

う、なんだこの気まずい雰囲気。



『不様だな・・・私は。』

俺が気まずい雰囲気をなんとかしようと考えていたら、ドラムがそう言ってきた。

(不様?)

ドラムはみんなに慕われているし、仕事にも真面目なんだから、そんなことないと思うけど・・・・

『貴様にここを去れなど、足手まといと言っときながら、今日のざまだ。』

・・・・・あーそれを気にしていたのね。

でもさ・・・・

「そんな気にしなくていいと思うぞ。」

俺はそう言う。

あのドラゴンを三匹相手にするのはきついと思う。

俺だって、かなり修行したからこそ、相手できたんだし・・・・

そのことをドラムに告げるけど、

『・・・・・・』

返事は返ってこなかった・・・




『人間、なぜお前はそこまで強くなろうとする?』

しばらくして、ドラムがそう言ってきた。

「う~ん、詳しいことは言えないけど、俺はある目的があるんだ。」

『目的?』

「そうそう、でその目的を叶えるには力が必要だから修行してるって感じだ。」

まあ、これぐらいなら言っても大丈夫だろ。

『・・・・・・・』

ドラムは俺の答えを聞いてなにか考えているようだった・・・



「なあ、ドラムは何をそんな悩んでいるんだ?」

俺は気になって聞いてみた。

まあ、悩みを聞くぐらいなら俺にもできると思ったからだ。

「俺でよかったら、相談にのるけど・・・・」

『・・・・私は』

ドラムは話してくれた。



ドラムはドラゴン達の中で育ったらしい。

しかし、自分はドラゴンの血を引いていると同時に、スライムの血も引いている。

そのことで、他のドラゴン達にバカにされていて、それが悔しくて、何とか見返そうとしたそうだ。

そして、勝負を挑んだが返り討ちにあった。

そこを、マーシャに助けられて、それ以来森に住むようになった。

森のやつはみんな自分がドラゴンの血をひいてるのなんか気にせず接してくれた。

それ以来、この森は自分の居場所となったそうだ・・・





なるほどねぇ~、だからあんなに頑張っていたわけだ。

こいつは俺がここに来てから一度も仕事をさぼってなかった。

いや、むしろ自分から積極的にやっていた。

俺のことを警戒していたのも、せっかくできた自分の居場所を壊されたくなかったからか・・・

『私もお前ほど強かったらこんな、悩むことなどなかったのに・・・』

「あ~大丈夫だと思うぞ。」

『・・・・気休めはよせ』

「気休めじゃないんだけど・・・」

そう、俺は決して気休めで言ってるんじゃない。

俺が知っている通りかどうか解んないけど、もし俺が知っている通りなら、

一つだけ、ドラゴン達とやりあえる呪文がある・・・・

それは・・・・ドラゴラムだ。


ドラゴラム・・・自らの体を巨大なドラゴンに変化させる、上級呪文。


こいつ本来の強さにそれが加われば、間違いなく、ドラゴン達とやりあえるはずだ・・・

なんだけど・・・

(どう、伝えよう・・・)

まさか、ゲームで見た・・・なんて言っても信じてもらえないだろうし。

それ以前にこの世界にゲームなんてないか・・・

(それとなく諭してみるか)

「なあ、ドラム・・・さっき俺が強いって言ったけど、俺だって最初からこんな強かったわけじゃないぞ。それこそ、かなり修行したわけだし・・・具体的には・・・・」


*以降アンナとの修行でボロボロになったことを話す。


「・・・・・ってことをして、ようやく今の強さを手に入れたんだ。」

『そ、そうか・・・お前の師は過激だな』

うわ~モンスターにも引かれているよ。

・・・でも、さっきよりは悩むことがなくなったかな?

あと、もう少しか・・・

「だから、お前も一歩一歩でいいから、強くなっていけよ」

『・・・・・』

これだけじゃ、まだ無理か・・・

なにかないかな・・・・・あ!

「なあ、ドラム見ろよ。」

『?』

ドラムが俺が指さした方に目を向ける。

そこには、森のモンスター達がいた。

『・・・あいつらがどうかしたか?』

ドラムが?を浮かべる。

「あのな・・・今日俺がドラゴンと戦った時、追撃より、仲間の治療を優先させたろ?」

『あたりまえだ・・・大切な仲間なんだから』

「そう・・・だけどもしあの時俺が追撃していたら、助けられなかったかもしれないだろ?」

あの時、俺は治療よりもドラゴン達を倒すことで頭がいっぱいだった。

もし、こいつが止めてくれなかったら、死者が出ていたかもしれないんだ。

「それだけじゃない・・・お前はこれまでもみんなを守ってきたんだろ。みんなを守るために強くなっていくのはいいけど、誰だって、すぐ強くなれるわけじゃないんだ。俺だって、一人で強くなったわけじゃなくて、他の人の助けがあって強くなっていったんだから・・・」

俺はそこで一度言葉を区切り・・・

「お前もみんなと一緒にゆっくりでいいから強くなっていけよ。」

『!』

目的のために強くなるのはいいことだと思う。

けれど、一人だと限界があるわけだし、誰かの力を借りるのは別に悪いことじゃないと思う。

「それに、自分の苦手なとこを補ってくれるのが仲間だろ。」

『・・・・・』

あと一歩ってとこか・・・・

う~んどうすっかな・・・こいつは何気に自尊心が高いし・・・

「それともぉ~俺でさえできたことなのに、まさかできないのかぁ?」

俺は態と相手がむかつくような喋り方をする。

「まあ、しかたないか・・・お前はそうやって、いつまでもウジウジ悩んでるのがお似合いだ。」

『・・・・・・フンッ、挑発か?』

あれれ?・・・やっぱし、こいつ自尊心が高いわりには冷静だな。

それとも、俺ってこんなこと向いていないのかな?

『・・・いいだろう、貴様よりはるかに強くなってやるさ・・・今度はみんなと一緒にな』

でも、元気がでたみたいだから、よしとするか。

「そうか・・・楽しみにしてるよ」

俺はそこまで言って、チビ達のところに向かう。

肉・・・冷めちゃたかな?

『ありがとう・・・ダイキ』

最後にそんな言葉が聞こえた。







『なるほど、ドラムがな』

俺は今マーシャたちの洞窟にいる。

「うん・・・それでさ、マーシャからも言ってくれないかな?」

あいつはマーシャのこと慕っていたし、俺が言うより効果があると思うんだけど・・・

『それはできない・・・これはあいつ自身が解決する問題だ』

とのことらしい

「・・・それって、厳しくね?」

『・・・ダイキ、私もいつ死ぬか解らぬ体、だからこそ私が死んだ時のためにみんなを導く存在が必要なんだ。』

「って、ことは・・・今回のはそのための試練ってとこか。」

マーシャは俺の言葉に同意をしめした。

ふ~ん・・・まあ、確かにあいつならお似合いだな。

俺が納得していると・・・

『もっとも、お前がここに残ってくれたなら話は別だがな。』

なんてことを言ってきた。

「あのなぁ、それはいつも断ってるだろ。」

こいつは、時々俺のことを勧誘してくる。

まあ、俺もこの森のことは好きだけど・・・それとこれは別だ。

もっとも、

『それは残念』

なんて言ってくるから、それほど本気じゃないっぽいけど・・・








『ダイキ・・・折り入って頼みたいことがある。』

あの後、しばらく談笑していたら、急にマーシャが真剣な顔をしてきた。

「なんだ?」

こいつが俺のこんな真剣な顔、最初に会った時以来だな。

『もし、私になにかあったら、こいつや森の者たちのことを頼む。』

「ちょッ、そんな物騒なこと言うなよ!」

ちょっと、声を荒げてしまった。

だって、こいつ、自分が死ぬみたいなこと言うんだぜ。

『落ち着け・・・私とていつまでも一緒にいたい・・・・しかし』

そう言って、マーシャはポツリポツリと俺に話してくれた。

















あとがき

重ね重ねすみません。

本当はこの話で終わりにするつもりでしたが、作者が思ったより長くなってしまったので、また分けることにしました。

さて、今回の話でついに大輝の実力が発揮されました。

まあ、今の大輝の強さならこんぐらいのことできると思い書きましたが、いかがでしたか?

モンスターについてはドラゴンクエストモンスターズを主に参考にしています。

そこに、作者のオリジナルを入れている感じです。

アンケートについてはご協力ありがとうございます。

アンケートの結果、②ということになりました。

なので、かめはめ波は使いますが・・・それは後々のお楽しみっていうことで。

では、次回。





感想返し


第五話

<プチ魔王さん>

感想ありがとうございます。

そんなイメージです。
漫画などでもMPが尽きると体力が減る描写があったので、その設定をとりいれました。
MPダメージについては、今は何とも言えません。


<nanoさん>

感想ありがとうございます。

かめはめ波については後々のお楽しみということで・・・
後、かめはめ波は男の浪漫は全世界共通。


<九尾さん>

感想ありがとうございます。

クリリンは力よりも技で戦うタイプですね。
初期のベジータも動きだけは褒めていましたしね。

確かに言われれば、けっこう同じタイプの技の別バージョンてありますよね。


<マルサさん>

感想ありがとうございます。

闘気の色については、作者の自論でしたけど、納得してくれてよかったです。


<realさん>

感想ありがとうございます。

確かにドラゴンボールって同じような技、ありますね。


<とんじんさん>

いつも誤字報告、本当にありがとうございます。

かめはめ波の結果はこのようになりました。


<トッポさん>

感想ありがとうございます。

一応ドラクエを解らない人にも、解るよう説明文を入れたりしたんですが、どうでしたか?

最初に行く世界の前に、かなり修行に時間がかかりますけどんね・・・


第六話(上)


<九尾さん>

いつも感想ありがとうございます。

ジャンプと焼き肉については最初からネタとして入れる予定でた。
もっとも、この作品では剣ではなく、自分の腕力でとりましたけど。


<とんじんさん>

本当に、いつもいつもありがとうございます。

これからも、指摘してくださるとありがたいです。




















[15911] 第六話(下)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 14:10
第六話(下)



















--四か月後、大輝がこの世界に来て約半年--


「・・・・・」

--ザアァァ--

大輝は滝の前にいた。

「ハッ!!」

--ズバッ--

大輝は掛け声とともに拳を振るう

それだけで、滝は割れた。

--シュッシュッシュッ--

それだけでなく、舞い上がった滝の水滴を残さず打ち抜いた。

「ふっー」

大輝はこの半年で確実に強くなっていた。

それこそ、並のモンスターなら数百匹を敵に回しても勝てるぐらい。

しかし---

(どうすっかな)

強くなっているのに関わらず大輝の顔は曇っていた。

それは、あの夜、マーシャに聞かされたことが原因だった。



あの夜、マーシャはチビについて大輝に話した。

チビは自分の本当の子ではない。

ある日、旅の扉が現れて、そこからチビが現れた。

それ以来、自分が育ててきたことを話した。

大輝はそれを聞いて、だからどうした?って思った。

それは血のつながりよりも、親子としての絆のつながりの方が大事だと思ったからだ。

むろん、マーシャもチビのことを大切に思っているが・・・

『私の体はそんなに長くない』

そう、マーシャの体はすでに数百年生きてきた。

魔物にとってもその時間は長かった・・・それこそ、いつ死んでもおかしくないぐらい。

では、なぜマーシャは生きてるか。

それは、チビを含めた森のモンスター達にあった。

マーシャは長い時間を生きてきた、そんな彼女にとって、森のモンスターはみな自分の子供のようだ。

親が子を守るのは当然・・・そのためマーシャは力を最小限に留め、延命してきた。

しかし、それももはや限界だった。

そう思っていた時に現れたのが大輝だった。

初めは警戒したが、大輝の行動をみてこいつなら任せても大丈夫だと思ったらしい。

実際大輝はドラゴン達を撃退するなどして、森のモンスターを守ってきた。

しかし、自分にも目的があるため、そんなに手助けができないことを言ったが

『かまわん・・・それに、最初からお前が手助けしてしまったら、みなの成長につながらない。』

どうやら、マーシャは自分が甘やかしすぎたことを悔いていたらしい。

子を守るのは当然・・・しかし、そのために自分が死んだあとのダメージは計り知れない。

だから、全体のレベルアップを図ったらしい。

ドラムなどがドラゴンの撃退に向かったのはそのためだった。

しかし、いくら強くなろうとしても、そんなすぐにはなれない。

そこで、大輝に本当に助けが必要な時に助けてくれるよう頼んだ。



(うんなこといってもなぁ)

大輝はロストセレスティを見つけるという目的がある。

そのために強くなろうとしてるが、今のままのペースでいったら、いつになるか解らない。

だから、必要な時とはいえ助けることができるのか解らなかった。

むろん、これは大輝に関係ない話だ。

しかし、半年間も一緒にすごしたため、なんとか叶えたいと思った。








「ぴきー!」

「お!どうしたお前」

大輝が歩いていると、一匹のスライムがこっちに来た。

「お前・・・いいのか?」

「ぴ?」

大輝の言葉にスライムは不思議そうな表情をするが・・・

「いや、ドラムの訓練。さぼると・・・・大変だぞ。」

「ぴぎー!!」

大輝がそう言うと、あっという間に走って見えなくなった。

(たく、ドラムのやつ、いったいどんなことしてるんだ?)



ドラムはこの四カ月、自分自身を鍛えるだけでなく、他のモンスター達も鍛えるようになった。

まあ、大輝の修行内容を聞いて、さすがにそこまで・・・と思って、少しづづでいいから、強くなっていくようだ。

ちなみに、ドラム以外のモンスターも四カ月前とは比べられないほど強くなった。






「ふ~よし!今日の修行はここまで」

夕暮れ時、大輝は修行を終えた。

結局マーシャの願いは

(とりあえず、アンナさんに相談しよう)

という結論になった。










「そいえば、そろそろ半年たつな」

大輝はカバンに採った果物を入れながら、そんなことを呟いた。

「なんか、いろんなことがあったな・・・・」

大輝が思い出すのは、この世界に来てからの思い出。

(最初ドラゴンに会って、その後、マーシャに会って、チビや森のモンスターと遊んで・・・・)

大輝が今までの出来事を思い出していると・・・

--ゾクッ--

「ッ!!」

急に大きな気を感じた。

(な、なんだこの気・・・ドラゴン!?いや違う・・・・ドラゴンよりもはるかにでかい!)

(しかも、この方向はチビ達の!!)

大輝は急いで、気の方向に向かった。

不安を覚えながら・・・・







『ひるむな!我らが王をお守りするのだ』

向かった先には、いつぞやのドラゴン襲撃のようにドラムたちがいた。

むろん、今のドラムたちは並のドラゴンなら倒せるレベルがある。

しかし、対峙しているのは、並のドラゴンではなかった。

(バトルレックス!!)

大輝は敵の名前を胸の中で呟いた。


*バトルレックス・・・巨大な顎と大きな斧で戦うドラゴンの戦士。上級モンスター


(なんだ、こいつ!?)

大輝は困惑した。

それは、この世界のモンスターたちはほとんどが、そんなに強くなかった。

しかし、目の前の存在は自分よりもはるかに強い気を感じた。

『ダイキ!』

大輝が困惑してると、ドラムが話しかけてきた。

「ドラムか!なんなんだこいつは!」

大輝は声を荒げながら聴く。

『こいつは、数十年前に代わったドラゴン達のリーダーだ』

「リーダーって・・・なんでそんなやつが」

『知らん!私が教えてほしいくらいだ!』


--ブンッ--


「チッ!」

『クッ!』

大輝がドラムと話していると、いきなりバトルレックスが斧で攻撃してきた。

その攻撃をなんとかかわしたが・・・

(ツゥ・・・なんちゅう攻撃力だ)

そう、かわしたにもかかわらず、大輝たちは数十メートルぐらい吹っ飛んだ。

『クッ・・・おのれ!』

ドラムは向かっていこうとするが、

「待て!お前が向かって勝てる相手じゃない!」

大輝が止めた。

目の前のバトルレックスは今まで戦ってきたやつよりも強い。

少なくても、今の大輝達じゃ勝てないほど・・・

「ここは、一旦退くぞ!」

大輝はそう提案するが、

『それはできん!』

ドラムは拒否した。

『ここで、退けばこいつは王たちのもとに行ってしまう。だから、ここで食い止める必要がある!』

その声は切羽詰まった声だった。

(やっぱりか)

ドラムの言う通り、バトルレックスはこのまま進むと、マーシャ達の洞窟に行ってしまう。

こいつの狙いがマーシャかどうかわからないが、無事じゃすまない。

「じゃあ、マーシャ達を避難させて・・・」

『こいつを食い止めながら、安全な場所にか?』

そう言って、ドラムは前に目を向ける。

大輝も同様に目を向ける

そこには、森のモンスター達が戦っていた。

しかし、それもバトルレックスの力の前には意味がなかった。

(うそだろ・・・あいつらもここ四カ月で強くなったはずなのに)


--ブンッ--


また、バトルレックスが斧で攻撃してきた。

今度はいきなりでななく、ちゃんと攻撃に備えていたため吹き飛ばされなかった。

『それに、こいつを放っておけば、この地に安全な場所などない!』

ドラムがそう言う。

確かに、ここで逃げてもいつかは追い詰められてしまう。

なら、ここで戦って勝つしかない。

けれど---

(いったい、どうやって)

大輝が考えていると、

『ダイキ・・・・お前は逃げろ』

ドラムがそんなことを言ってきた。

「なに・・・」

『お前は関係ない身でよく森の仲間のために尽くしてくれた。』

大輝が反論する前に、ドラムが大輝の言葉を遮った。

『お前には目的があるのだろう・・・ならこんなところで死ぬな!・・それじゃ・・・・・・お前と過ごした半年間、決して悪いものでなかったぞ!』

そこまで言ってドラムはバトルレックスに向かって行った。






「・・・・・・・」

大輝はその場に佇んでしまった。

--どうする?--

ふと、大輝の頭の中に声が響いた。

--お前の勝てる相手じゃない・・・ならば逃げればいい--

--モンスター達はこのままほうっておけばいい--

--所詮高々半年過ごしただけの存在--

--貴様が望むは家族や友と会うため蘇ること--

--どちらを優先するか解ってるはずだ--

そんなことが、頭の中に浮かぶ。

・・・・・このままでは自分も殺される。

この森の者たちは、所詮一時の付き合いでしかない。

ならば、このまま逃げた方が賢明だ。

(俺は・・・・・)







その時、ドラムたちは追い詰められていた。

『クッ、ここまでか』

ドラムの口からあきらめの言葉が漏れだす。

無理もない・・・・・いくら森のモンスターが強くなったとはいえ、目の前のバトルレックスにとってはアリが挑むようなものだった。

それほど、力の差は歴然だった。

「ガアアアァァァ!!!」

バトルレックスがドラムにとどめを刺そうとする。

(王よ・・・申し訳ございません)

ドラムは心の中で王に謝罪の言葉をかける。そして、

(ダイキ・・・なんとしても生き延びろ)

ドラムは目をつぶり、最後胸の中でそう呟く・・・


--ドオォォン--


--ズウゥゥン--


しかし、何かが当たる音が聞こえたと思ったら、次に何かが倒れる音が聞こえた。

ドラムは目を開けると・・・・

「はあぁ、はあぁ、はあぁ」

そこには大輝が立っていた。

さっきの音は大輝がバトルレックスに体当たりして、倒した音だった。






「はあぁ、はあぁ、はあぁ」

大輝はバトルレックスを倒したが、それはあくまで不意を突いただけであった。

むろん、このままでは大輝も殺されるだろう。

『お前・・・・!なにをやってる!こいつはお前が戦って勝てる相手じゃない』

『早く逃げろ!』

ドラムは一瞬唖然とするが、すぐ持ち直し、大輝に忠告するが・・・

「やっっっかましいぃぃぃいいーーーーーーー!!!!」

大輝から返ってきたのは大声による、そんな言葉だった。

「俺だって、ほんとは逃げたいわ!!!!だけど、なんか知んねえけど体が動いちまったんだ!バカヤローーーーー!!たく、なんで俺がこんな熱血バトル漫画の主人公みたいなことをやんなくちゃいけないんだ!こんちくしょーーーーーー!!!!!」

『ダイキ・・・・』

ドラムはまたもや唖然とする。

いくら大輝でもこのバトルレックスには勝てない・・・そのことはドラム自身も解っていた。

なのに、大輝は立ち向かっていった。

足は震え、目から恐怖のせいか涙まで出ている。

そんな、なさけない姿でも立ち向かっていった。





(ちくしょー、どうすれば)

大輝はこの世界にきて初めて恐怖した。

むろん、今までの恐怖してなかったといえば嘘になる。

だが、今回は今までと違う殺気があった。

それも、自分という存在を超えるほどの・・・・

(やつの力には俺じゃ勝てない・・・・なら)

大輝は自分の作戦をドラムに伝える。

「ドラム!いまから俺があいつの注意をひく!その間に、なんとしても体制を立て直せ。そして、他のやつらと協力して戦うぞ!!」

大輝が考えた作戦はそれだった。

バトルレックスはその巨体故小回りが利かない、なら自分はスピードをいかし、相手を翻弄させる。

そして、他のモンスター達と協力する・・・すなわち、パワーでなくチームワークで戦う。

『・・・・大丈夫なのか?』

ドラムも、もはや大輝に賭けるしか道がないことが解った。

しかし、この作戦は大輝が一番危険な役目だ。

ドラムはそのことを心配して聴いたが・・・

「やるっきゃねぇーだろ。」

大輝の答えを聞いて、ドラムはすぐ行動に移した。





『いいか!お前たちでは、やつの攻撃に耐えられないだから、攻撃が届かないとこまで後退!その後、スライム隊はギラによる遠距離攻撃!アルミラージ隊はラリホーでやつに少しでも隙を作れ!マタンゴ隊も同じようにしろ、ただしお前らの甘い息は風向きを考えて使え!ナスビナーラ隊も誘う踊りなどで同様に隙を作れ!ぐんたいアリ・おおきづち隊は戦闘の余波で飛んでくる岩などから味方を守れ!ぶちスライム・キリキリバッタ隊は森に行き薬草をありったけ集めて来い、傷ついた者の手当てにあたれ!』

ドラムが次々と命令を出してる時、

「おりゃああぁぁ!」

大輝も行動に移っていた。




「これでもくらいな!」


--ダンッ--


「グワワァァァ!!」

大輝の攻撃を受けて、バトルレックスは苦しむ。

むろん、大輝のレベルではバトルレックスにはかなわない。

では、なぜ苦しんでるのかと言うと・・・・

「へっ!どうだ、さすがに足の指を本気で叩かれるのはいてーだろ!」

これが原因だった。

・・・・・・そんなんで、ダメージを与えられるのか

「はん!一撃一撃が小さくても、ダメージは重ねられる。だから、このままチクチク攻撃していきゃいいんだよ!・・・チクチクっとな!」

・・・・・・セコイ。

しかし、この考え自体は悪くない。

なぜなら、バトルレックスはその数十メートル以上の巨体なため懐のスペースが広い。

そのため、小回りをいかす大輝の攻撃はある意味安全だった。

「うりゃあああぁぁ!!」

大輝の攻撃をは続く。

バトルレックスも反撃しようとするが・・・

『撃てーーーーー!!!』

その号令とともに、何十発のギラが飛んできた。


--ドオオォン--


むろん、これしきの技じゃバトルレックスは倒れない。

しかし、隙ならできる。

『ダイキ!その場から退け!』

その間にドラムが次の命令を出す。

大輝がその場から退くと・・・

『今だ!マタンゴ隊・アルミラージ隊、やれ!!』

今度は、ラリホーと甘い息が向かってきた。

むろん、さっきのギラもそうだが、距離が開いているため、それほど効果がない。

しかし、バトルレックスにしてみれば鬱陶しいことこのうえない。

さきに、潰そうとするが・・・・

「隙ありぃぃーーー!!!」

大輝が攻撃してきた。



それからはこの繰り返しだった。

大輝がセコイ攻撃をし、時々ギラによる援護

次にラリホーや甘い息による援護、ナスビナーラ達も誘う踊りで隙を作り

バトルレックスが向かおうとすると、大輝が再び気を引く。

いけるか---そう思ったが・・・・



(あれは・・・)

大輝は気づいた、バトルレックスの口に高エネルギーがたまっていくのを。

『まずい!全員退けーーーー!!』

ドラムも気づき号令を出し後退させようとするが・・・・


--ゴオオォォッ--


その前に、バトルレックスから“はげしい炎”が吐き出された。


*はげしい炎・・・燃えさかる炎で相手を焼き尽くす。息系の上位技


『クッ!・・・みんなは』

バトルレックスの炎は凄まじいものだった。

それこそ、周りの木を焼き尽くし、岩を溶かすほどの・・・・・

その中でドラムはなんとか意識を保っていた。

ドラムはドラゴンの血をひいてるため、ある程度火にたいして耐性がついていたからだ。

しかし、その他のモンスター達はみな重症だった。



(くそー、なんちゅう威力だ)

そんな中、大輝も無事だった。

大輝はみんなより、近くで炎をくらったが、当たる寸前、気を放出してある程度やらわげた。

むろんこれだけでは、とてもじゃないが無事じゃすまない。

では、なぜ大輝は無事だったのか?

それは、大輝の呪文の相性にあった。

大輝が相性がいいのはメラ系・・・すなわち炎だった。

そのため、大輝もドラム同様、火に対して耐性があった。

・・・・・もっとも、それでもダメージはかなりくらったが



「くそーーー熱い、痛い、熱い、痛い。」

情けない声でわめくが無理もない。

大輝の体はいたるところに火傷があった。

「ガアアアァァ!!」

バトルレックスは近くにいた、大輝にとどめを刺そうとする。












しかし---





--ズウゥン--

「グルルルッ!!!」

バトルレックスは大輝にとどめを刺す前に吹き飛ばされた。

そこには、この森の王--マーシャ--がいた。









『お、王』

ドラムの目の前では、自分達の王が戦っていた。

バトルレックスが斧で攻撃しても、その俊敏さで避け、ダメージを与え

炎を吐こうとすると、その前に攻撃し無効化する。

こうしてみると、マーシャの方が有利に見えるが・・・・

(まずい!王のお体は)

そう、マーシャの体は数百年生きたため、ひどく老衰していた。

いま、こうして戦えるのが奇跡に近かった。

--ガサッ--

『!!!』

ドラムがマーシャ達の戦いを見守っていると、近くの茂みから仲間のモンスターが飛び出してきた。

こいつらは、ドラムが薬草を探しに行かせていたメンバーだ。

『助かったぞ!お前ら私に薬草を・・・・』

そこまで言い、ドラムは言葉を飲んだ。

『・・・・いや、私よりも他のやつの治療を優先してくれ』

ドラムはなんとかして、マーシャの助けになりたかった。

しかし、マーシャが望んだのは、この森の者を守ること・・・それをできるのはこの場で自分しかいない。

だからこそ、自分に使うより仲間の方を優先させた。

それに---

(それに、私が行ったとこでもはや・・・・)

ドラムの言う通り、もはや、この戦いは自分が行ったところで助けにならない

そのことを理解して、ただ見守ることしかできなかった。



(まずい・・・まずいぞ!!!)

一方の大輝も気づいていた。

マーシャの気がどんどん小さくなっていくのを・・・

(このままじゃ・・・)

大輝の言う通り、このままだとマーシャはやられるだろう。

実際、さっきまでマーシャが優勢だったのが、だんだん押され始めた。


もし、マーシャが全盛期で戦ったなら、目の前の存在ごとき、数千、数万こようと勝てただろう。

だが---


--ダンッ--

「マーシャ!」

ついにマーシャが攻撃を受けてしまった。


だが---老衰し弱り切った体ではこれが限界だった。


「ガアアァァ!!」

バトルレックスは弱った自らの宿敵にとどめを刺そうとすると・・・・

--ガブッ--

なにかが自分の腕を噛んだ。

(な!チ、チビ)

バトルレックスの腕を噛んでいたのは、まだ幼いチビだった。

「ガウッーガウッー」

母を守るため、必死の抵抗をするチビ・・・しかし

--ブンッ--

「キャンッ!」

その抵抗むなしく、腕の一振りで地面に叩きつけられた。


(ちくしょー、何かないか、何か)

大輝は、必死で打開策を探していた。

このままではマーシャは殺される・・・いくら寿命が近いとはいえ、それを黙って見ているわけにはいかなかった。

(あれは・・・・)

大輝の目にあるものが留まった。

(・・・・ええい!考えるより行動だ!)

大輝はすぐ、行動に移した。


「・・・・・」

一方、バトルレックスもマーシャにとどめを刺そうと、斧を振り上げていた。

そして、その斧を振り降ろそうとすると・・・

--ザンッ--

「ギャアアアアァァァ!!!」

自分の右腕が切り落とされ、斧を落としてしまう。

「はあぁはあぁ・・・・どうだ!アンナさん特製の包丁の切れ味は!」


大輝の目に留まったのは、いつも自分が持ち歩いていたカバンだった。

自分が攻撃しても今の体では、ほとんど攻撃力はでない・・・・・

そう悟った大輝は、カバンの中に入っている、包丁を取り出し、バトルレックスめがけて投げたのだ。


(ほんとは、目や喉を狙いたかったけど・・・この体じゃ、しゃあないか)

大輝はこの包丁の切れ味をよく知っていた、そのため致命傷となる箇所に当てようとしたが、ダメージを負った体ではできなかった。

(まあいい・・・これでやつの注意は俺に引けた)

しかし、目的は達成された。



「ガアアアアアア!!!!」

バトルレックスは怒りにまかせ、目標を大輝に変えた。

--ヒョイッ--

しかし、大輝は難なく避ける。

--ブンッ--

「はっ!」

--ヒュッ--

「ほっ!」

--ヒュン--

「はいっ!」

なんとも危なげない回避をする。

しかし、大輝はバトルレックスの攻撃を全てかわしていた。

森のモンスターが体制を立て直すまでの時間を稼ぐ・・・その時間を稼ぐため回避に専念したからだ。

実際、この時ドラムたちはマーシャを助けるため、動いていた。

このまま大輝が時間を稼いでいたら、戦況が動いたかもしれない。

だが---



--ゴオオオォォ--

「チッ!」

バトルレックスの口から炎が噴き出される。

大輝はそれをジャンプして避けるが・・・

(し、しっぽ!)

空中で無防備の所をしっぽで攻撃された。


--ダシャアッ--

「ガハッ!」

大輝は地面に叩きつけらた・・・しかし、なんとか意識だけは保っていた。

もっとも、もうボロボロであったが・・・・・

(くそっ!)

なんとか立ち上がろうとするが、できるのは上半身を動かすことぐらいだった。

森のモンスターもこちらに気づき助けようとするが、間に合わないだろう。

(俺・・・死ぬのか)

心の中で大輝は呟く。

「ガウッ!ガウッ!」

しかし、そんな大輝の前に小さな影が現れた。

チビだ・・・しかし、体はボロボロで今にも倒れそうだった。

だが、その小さな体で目一杯威嚇をする。

「チビ!逃げろ!!」

大輝はそう言うが、チビはそのままバトルレックスを睨んでいた。




一方、バトルレックスは敵を確実に排除しようとしていた。

自分より弱い力なのに何をするか解らない・・・本能で危険と感じたバトルレックスは斧を振りかざし、確実にとどめを刺す技を繰り出そうとしていた。


まじんぎり・・・闘気を集中させ、相手に大ダメージを与える。しかし、その分隙が多くミスしやすい。


・・・・・しかし、今の大輝には避ける力はなかった。



--スウゥ--

バトルレックスは斧を構える・・・いくら、片腕だけとはいえ、その破壊力は脅威なものになる。

そして・・・

--ザシュッ--

斧が振り落とされた。





























マーシャの首と胴体を切り離しながら・・・・




















「えっ」

最初なにが起こったか大輝は理解できなかった。

しかし、その光景を見ている内に理解した。

マーシャが自分を庇い首を切られたことが・・・

「あ・・・ああ」



『・・・・・メラ!』

--ボォ--

『・・・・・小さい』

『・・・・・・・』

『・・・・・・まあ、元気を出せ』



ドクンッ










マーシャの首と胴体が血を噴き出しながら、地面に落ちていく。

森のモンスターも悲痛な声をあげるが、大輝の耳には入ってこなかった。


『わんっ!』

『ってチビ、それ俺の魚!』

『ガブッ』

『てめーーーーこらっ!』

『ほら、私のをやるからそう怒るな・・・後で私から言い聞かせるから』



ドクンッドクンッ










--どさっ--

マーシャの首と胴体が落ち、地面に血の池を作った。


『もし、私になにかあったら、こいつや森の者たちのことを頼む。』



ドクンッドクンッドクンッ












そして---

























     プッツン




















「きっっっっさまああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



大輝の中でなにかが切れた・・・・・











「はあああぁぁぁ!!!」

--ドガォッ--

大輝は雄叫びをあげながらバトルレックスに左腕でパンチをする。

ただ、力任せの攻撃・・・しかし、それだけでバトルレックスの巨体はよろけた。

「ぬおおおおぉぉぉ!!!」

--ドガッ--

すかさず、右腕でパンチをする。


--ガッガッガッ--


そのまま、大輝は追撃をする。

本来バトルレックスよりもはるかに小さい体・・・しかし、そんな小さい体にも関わらずバトルレックスの巨体が後退していった。

--ブンッ--

バトルレックスも、斧で反撃するが・・・・

「うおおおおぉぉ!!!」

--バキィン--

大輝の放った強烈な蹴りが斧を破壊しバトルレックスを吹っ飛ばした。

--ズウウゥン--

バトルレックスの巨体は倒れ、大輝はさらに追撃する。


本来大輝のレベルではこのバトルレックスには勝てない。

なら、なぜこんなにも強くなっているのか?

むろん、マーシャを殺された怒りもあるだろうが他に主に二つの理由があった。

一つは、変換。

すなわち、今の大輝は魔法力を闘気に変換させることで、強靭な体になっていた。

・・・・・普通、変換させるのにはかなりの修行が必要だ。

しかし、大輝は主にコントロールに重点を置き、修行していた。

あとは、きっかけさえあればよかった・・・皮肉にもマーシャのことがきっかけになった。

二つ目は、今の大輝の状況。

斎藤大輝という人間は人並みに良心がある。

少なくても、生き物を殺して罪悪感を感じるほどの

しかし、今の大輝にはそれがなかった。

今の大輝の感情を占めるのは、純粋な殺意。

その殺意が、大輝から良心や容赦という思いを取り除いていた。



--ドガォッ--

大輝は強烈な攻撃を加えると、一度距離をとり、両手合わせ腰付近に持っていき、左足を前に右足を後ろに引くという独特なポーズをした。

「か~~~め~~~」

大輝の手に紫色の闘気が集中していく。

「は~~~め~~~」

集中した闘気がより一層輝き

「波ーーーーーーー!!!!」

放たれた。



--ドオオォォン--




「はあぁはあぁはあぁ」

その威力は、今まで使ってきたものとは比べられないほどの威力だった。

木々はなぎ倒され、地面は削られ、山も削られるほどの威力だった・・・

だが---




「ガアアアアアアァァァァァァ!!!!」

それでも、バトルレックスは倒れなかった。

むろん、体にはかなりのダメージを負っている。

しかし、それでも行動不能にするには届かなかった。

もし、大輝のかめはめ波が完璧だったなら今ので勝負がついていただろう・・・・“完璧”だったなら。

大輝のかめはめ波は確かに今までの中で一番強力だった、しかし、放った時、僅かだが闘気が拡散してしまった。

これが拡散することなく、凝縮したかめはめ波だったら今の一撃で決まっていただろう。



「ガアアアアアァァァ!!!!!」

--ドガッ--

「ガッ」

--ガッ、ドゴッ、ガンッ--

バトルレックスは怒り、大輝に容赦のない攻撃をする。

さっきまでと違い、大輝の体は木の葉のように空に舞った。

『ダッ、ダイキ!』

ドラムたちは助けようとするが・・・・・・


--ボオオオォォ--


『ぐううっ』

バトルレックスの炎に邪魔され、近づけなかった。





--ドシャ--

「ガッ・・・ガハッゴホッゲホッ・・・」

大輝は地面に叩きつけられた衝撃で、血を吐く。

もはや、大輝の体はボロボロであった。

(くそっ!・・・・・ここまでか)

大輝は心の中であきらめの言葉を呟く。

バトルレックスはそんな大輝に再びとどめを刺そうとする。

いくら、ダメージを負って弱っているとはいえ、その巨体から繰り出される攻撃は脅威なものになる。

(ちくしょう)

大輝は悔しさのあまり、顔を歪ませていた。

そして----






--ブシュッ--











血が舞った・・・・・バトルレックスの首から・・・・



















「グガアアアアアァァァ!!!!!」

バトルレックスはそのまま血を流し絶叫をあげながら倒れていった。

大輝はその光景を唖然とした表情でみていた。

しかし、それはバトルレックスが倒れたことにではなく・・・・

「マー・・・・シャ?」

そう、バトルレックスを倒したのがマーシャだったからだ・・・・・いや、正確にはマーシャの“首”だけが動き、バトルレックスの首を食いちぎったのだ。















『王よ・・・・・』

今、俺の前にドラムたちが集まり悲しみの声をあげている。

俺はその傍らでさっきのことを考えてた。

マーシャは確かに首を切り離されていた。

普通、首を切られたら生き物であれば無事じゃすまない・・・たとえそれが魔物であっても。

なのに。マーシャは動いた・・・・

“奇跡”・・・・・そんな曖昧な表現で表していいのか解らないけど、そんな表現でしか表すことができなかった。

(奇跡かどうか解らないけど・・・・)

俺はその場で姿勢をただし、深く頭を下げながら

「ありがとう」

と言った。

あの現象はなんなのか解らなかったけど、マーシャが助けてくれたのは解った。

だから、悲しむのは後にして、今は目一杯感謝しよう。



「ぴきー!!!」

それに気づいたのはスライムのその声からだった。

「どうした?お前」

俺は急に大声で泣いたスライムが気になって聞いてみた。

「ぴっぴっぴきーぴきー」

・・・・・何を言ってるのか全然わからん。

けれど、何かを伝えようとしてるのは解った。

俺がスライムの目線をたどって行くと・・・・・・

「や、山が崩れている!!」

そこには、山が崩れ、岩や土などがこちらに崩れてきていた。

どうやら、さっきの戦闘が原因らしい。

「まずい!!ドラムみんなを避難させろ!!!」

俺はすぐ命令した。

ドラムも最初呆けたが、俺の後ろの光景を見て、すぐ行動に移した。




「あれ?」

森のやつらは、全員なんとか避難できた・・・・・さすがにマーシャの遺体は運べなかったけど。

けれど、俺は気づいた・・・

(チビがいない)

そう、避難した中にチビがいなかった。

「ドラム!チビは!!」

『王の子?・・・・そういえば見当たらない!!』

俺たちは急いで探してみたけど、どこにもいなかった。

(・・・・・まさか!!)

俺は目を凝らしながら見る・・・・頭の中に最悪の考えを浮かべながら。

(・・・・・・いた!)

そして、その最悪の考えは現実になった。

チビはマーシャの遺体の所にいた。

まるで、守るように寄り添って。




「チッ!」

大輝が駆けだそうとすると・・・

--放っておけばいい--

また、頭の中に声が響いた。

--今行けば、確実に死ぬ--

その声の言う通り、今の大輝の体はボロボロで動けるのが不思議だった。

--お前は、森のモンスターへの義理は果たしただろう--

確かに、大輝はもう十分すぎるほど、義理を果たしていた。

たとえここでチビを見捨てても、攻められないほどに・・・・

--それに所詮モンスターの命だろ--

プッツン

「やっっっかましいぃぃぃぃーーーーー!!!!命に色なんかあるか!!!!」

しかし大輝は、その声を振り払いチビのもとに駆けだした。







「チビ!」

俺はチビのもとに来て、チビを抱きかかえようとするが・・・・・

「くぅーん、くぅーん」

チビはマーシャにつかまって離れなかった。

「チビ・・・・ごめん!」

チビの気持ちは解らないでもないけど・・・・今は一刻を争う。

俺はチビを無理やり抱きかかえ、走ろうとするが・・・・

(ツゥ!)

今さらになって体に限界が来た。

とてもじゃないが、ここに土砂が来るまでに脱出は不可能だ。

チビだけでも・・・・・いや、チビのスピードじゃ逃げ切れない。

どうする!?

--闘気を放出させて防御する

無理だ、今の俺には、闘気を放出するだけの力はない。

--魔法を放ち土砂を押し返す

魔法力は僅かに残っているけど、どっちにしても俺のメラじゃ、なんも役に立たない。

万事休す。

「くそったれーーーーー!!!!」

俺は叫び声をあげながら、土砂にのまれていった。

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・




「まさか、こんな方法で生き残るとは・・・・」

「どりあえず・・・・・だずげで~」

今、俺の前にアンナさんがいる。

それで、何で俺が助かった&発音がおかしいかって言うと・・・・・

「はい・・・・それにしても“アストロン”を使えるようになったなんて、すごいじゃないですか大輝さん。」

そう、俺はあの瞬間アストロンをかけ助かった。


*アストロン・・・全身を鋼鉄に変化させ、全ての攻撃を無効化する上級呪文。


しかし、力任せにかけたせいか、喉の機関がおかしくなって、発音がうまくできなかった。







「・・・・・・・・」

『王よ・・・・どうか安らかにお眠りください』

今、俺たちは小高い丘の上にいる。

あいつの・・・マーシャの墓はここに建てた。

ここなら、森のみんなをいつまでも見守っていられると思ったからだ。



あの後、助かった俺はそのままぶっ倒れた。

まあ、しかたない・・・闘気も魔法力も限界以上に使ったのだから。

特に、魔法力は闘気に変換させてたり、本来俺のレベルでは使えないアストロンをっ使ったのだからな。

ちなみに、使えた理由は・・・まあ、あれだ火事場の馬鹿力ならぬ火事場の魔法力ってやつか。

もともと俺は、補助呪文の中で防御系と相性がよかった。

それに、あの時俺はとりあえず助かることを望んだ、魔法ってのはイメ-ジが大事らしいからな。

だから、あんな土壇場で使えたとのことだ。

それで、その後、しばらく寝込んで、今にいたるってことだ。

ちなみに、森のやつらはみんな無事だった。

アンナさんが回復魔法をかけてくれたらしい。

マーシャの体もそれで綺麗にしてくれた。

俺は最初見た時、もしかして・・・と思ったけど、どうやら無理らしい。

アンナさん曰く、蘇生呪文は肉体に魂のエネルギーが残っている状態じゃないと意味がないそうだ。

残念だけど、マーシャの肉体にはもうなかった、だからせめて体だけでも・・・・・と思い、ベホマで首と胴体をくっつけた。

・・・・・・・ていうかアンナさんどんだけチートなんですか。

俺の体はバトルレックスとの戦闘で骨な体の内部もボロボロだったのに一瞬で治したり、切り離された首と胴体をくっつけるなんて・・・・・・

・・・・・・帰ったら、回復魔法も練習しよう。

・・・それにしても、アンナさん随分タイミング良く来たな。




「それじゃ、またな・・・・お前ら」

『ああ、またな』

今日、俺は神界に帰る。

そのため、見送ろうと森のモンスター達が集まってきてくれた。

「それにしても・・・ほんとに大丈夫か?」

『そのことなら、大丈夫だと言っただろう』

俺が聴いたのはこれからの森のことだった。

マーシャが死んだため、他のドラゴンが暴れることを危険視していたが、ドラムが言うには、向こうもリーダーを失ったのだから、しばらく大丈夫とのことだ。

それに、ドラゴン達だってバカじゃない・・・うまくいけば、数十年前のようにまた共存していけるかもしれないとのことだ。

いつになるか、解らないけど、きっと成し遂げて見せるとは“新リーダー”の言葉だ。

ちなみに、新リーダーは案の定ドラムになった・・・・頑張れよ。

「さて、後は・・・・・」

そう言って、俺は周りを探すけど・・・

「やっぱりいないか・・・・」

俺が探していたのは、チビだ。

あの後、チビはマーシャの遺体に寄り添って離れなかった。

・・・・・それこそ、埋葬するときも最後まで縋りついていた。

その後、チビの姿は見ていない。

まあ、無理もない・・・・母親が死んだのだから、幼いチビにとっては辛いだろう。

これは、時間が解決してくれるのを待つしかないけど・・・・・

(これから、時間を見つけたら、様子を見にこよう)

俺はそう心に決めた・・・・・俺にできるのはこれぐらいしかない。







「わんっわんっ」

「うん?」

俺がいざ帰ろうとしたら、何かが俺に向かってきた。

「チビ?」

「わんっ」

それはチビだった。

チビはそのまま俺の足もとに来て、寄り添ってきた。

「じゃ~なチビ・・・・・森のみんなと仲良くな。」

少し元気になったようで、俺は安心しながら、別れの言葉を頭をなでながら言い、帰ろうとすると・・・・

「くぅーん、くぅーん」

チビが俺の服を噛んで離さなかった。

「チビ?」

「くぅーん」

「いや、離してくれないと、帰れないんだけど・・・」

「くぅーん、くぅーん」

チビはイヤイヤと首を振って、俺の服を噛んでいた。

『ダイキ・・・・王の子を連れてってくれないか?』

俺が困っていると、ドラムがそう言ってきた。

「えっ・・・でも」

『ダイキ、王の子は王を・・・マーシャ様を失って、深く悲しんでいる』

『ならば、父であるお前が一緒にいるのが一番悲しみを和らげる』

んなこといっても・・・・・うん?

「父?」

俺は?を浮かべる。

父ってあの父だよな。

誰が?--俺が

誰の?--チビの

「・・・・・・」

『・・・・・・』

「・・・・・・」

『・・・・・・』

「えええええぇぇぇぇーーーーー!!!!」

『そんなに驚くことか?』

ドラムは何でも無いように言ってるけど、そりゃ驚くは!

仲良くなったつもりでいたけど・・・そこまで

『・・・・・少なくても、王の子はそう思ってるぞ』

ドラムはそう言って、チビに顔を向ける。

俺もつられて、目を向けると・・・・・

「くぅ~ん」

チビが期待するような眼差しで見ていた。

「・・・・・・」

俺はアンナさんの方に、顔を向ける。

「・・・・・はあ~、解りました、お父様達にはわたしから言っておきます。」

どうやら、俺の考えを察してくれたらしい。

「来るか?」

俺はチビに確認の思いで聞くと・・・・・

「わんっ!」

嬉しそうに、飛びついてきた。














「・・・・・・・」

ミストバーンはある空間にいた。

目の前には地上世界などの町や自然が映ったモニターが浮かんでいる。

その他にも、様々な世界の様子が映っていることから察するに、世界全体を監視するためのようだ。

「お父様・・・・どうですか?」

そこに、アンナが訪れミストバーンに問う。

「・・・・・反応はない。」

「それじゃ・・・・・やはり」

「・・・・・恐らく。」

アンナはミストバーンの答えを聞いて、顔を歪ませる。



「それにしても、甘いことをしたな、アンナ」

唐突にミストバーンが問う。

「あら?なんのことですか?」

それに対して、アンナはそんな答えを返した。

「とぼけるな・・・・やつに発信機をつけたことだ。」

そう、アンナは大輝に発信器をつけていた。

そこから出された救難信号をもとに大輝の危険を察し急いで向かったのだ。

「その言葉、そのままお父様にお返します。」

「・・・・・お前が何を言ってるのか理解できない。」

アンナがそう言うと、ミストバーンはそう言葉を返し、消えていった。

アンナはその姿をニコニコと笑顔で見送った。

(それにしても、よく人間たちの中で憎しみや恨みはなにも生まないといいますけど・・・・)

(少なくても、他人を傷つけられその思いを抱くということは、それだけその人のことを大切に思ってるということ・・・)

(そこから発せられる力は時として私たちの想像を超える)

アンナはそう思い、目の前の画面に目を向けた。



--斎藤大樹(サバイバル終了時)--

肉体闘気量--417--

魔法力量--307--

総合戦闘力--596--



(バトルレックス戦)

肉体闘気量--1307--

魔法力量--53--

総合戦闘力--1307--












おまけ

バトルレックスは意識を取り戻した。

さすがに、ドラゴンのリーダだけあって、その生命力は尋常なものじゃなかった。

それに、その巨体故か土砂には埋もれずただ流されるだけですんだ。

しかし、その体はもはや助からないだろう。

そう、悟ったバトルレックスは最後の力を振り絞り炎を吐こうとしていた。

むろん、マーシャに喉をやられてのだから、うまくいかないだろう。

だが、どうせ死ぬなら、残ったエネルギーを爆発させ、この森を道連れに焼き尽くすのみ!!

そう思い、炎を吐こうとすると・・・・

--ビュンツ--

「!!!!!」

空から、黒い気功弾が飛んできた。

バトルレックスはそのまま絶命していった。

・・・・朦朧とする意識の中、空に佇む“白いなにか”を目にとめながら。


















あとがき

・・・・・長い、長すぎる。

どうも作者の天魔です、まさかここまで長くなるとは思いませんでした。

やはり、分けて投稿した方がいいですかね?

さて、今回の話は大輝の覚醒でした。

まあ、きっかけはDBの定番の“怒り”でしたがいかかがでしたか?

チビについてはモンスターズの要素を入れたいために仲間になってもらいました。

これからは、大輝もより一層成長していきます。

そして、ついに次回DBのキャラが参戦!!!

誰になるかは次回で・・・


さて、感想で質問を受けたので、この場を借りてお答えします。

1、大輝が強くなって、世界に影響出さないのかという質問ですが・・・これはネタばれ要素を含むので詳しくお答えすることができませんが。

とりあえず、“存在そのもの”が違うと思ってください。

例えば、バーンたちは太陽で地上は雪。

まあ、これはちょっと大袈裟ですがこんなのものと思ってください。

大輝の場合はあくまでも人間なので、バーンたちほど影響は出ません(それでも強くなると、ある程度物理的な被害は出ると思いますが・・・)

2、生き返るために人を殺すことを覚悟してるとのことですが・・・・これは主人公の心境の違いです。

第二話(下)の時点では、力だけもらって探しに行かされると思っていました。

いうならば、拳銃を渡されて、いってこい!!って言われたものです。

さすがに、いきなり知らない力を渡されたら、戸惑ってうまく使えなく、人を殺すかもしれい・・・・というのが第二話(下)でした。

しかし、第三話で力を渡されるのではなく、自分で修行して身につけることを知りました。

なので、アンナなどから力の使い方を教えてもらっています。

まあ、それでも人を殺すかもしれませんけど・・・・それは本当に最悪の場合だけです。

転生については、基本的に生き物を蘇らせるのは禁止されています(この場合、記憶をもったまま転生させるのも)なので、転生はできません。

それに、大輝も転生して生まれてくるはずだった命を殺すと聞いたので、しなかったです。

魂はあくまでも作者のオリジナルです、他の作品を見ても魂についてはまばらなので、この作品では“強力なエネルギー”を秘めているということで、こう定義しています。

長々と失礼しました。

では、次回。


最後に一言

ミストバーンがピッコロと被って見えた不思議・・・・・・








感想返し

<nanoさん>

包丁は今回のような活躍をしました。

はい、nanoさんもお体に気を付けてください。


<九尾さん>

ドラクエのドラゴンは基本的に四足歩行なのでなんとかバランスはとれました。

ドラゴンのボスは今回の通りでした。


<Anti Pさん>

質問についたはあとがきの通りということで。

これからも、頑張っていきますので応援お願いします。


<良さん>

大輝は才能がない一般人なので、魔法も覚えるのに時間がかかります。
実際ポップは才能があったと思います。
初めて出てきたときにはもうメラゾーマを使ってましたからね。










[15911] 第七話(VS栽培マン)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/06/06 06:46
第七話(VS栽培マン)













--20年目--

大輝は今荒野にいた。
今日の修行の成果を試すためだ。

「・・・はあぁぁぁ」

大輝の両手に気功弾が作り出される。

「はあぁ!」

掛け声とともに、片方の気功弾を放った。

--ドオォォン--

放った気功弾は岩に当り、“その岩と周囲の岩を巻き込み破壊し大きなクレータを作った”。

「今度は・・・こっちだ!」

--ドオォン--

もう片方の気功弾を放った。
その気功弾は“岩をいくつか貫通し最終的に爆発し、地面に深いクレーターを作った”。

「ふ~、もう完璧に使いこなせるようになったな。」



大輝がおこなっていたのは気功の使い方だ。
マーシャの世界で使ったかめはめ波がまだ完璧じゃなかった大輝は、修行の中でより一層コントロールに重点を置いた。
いくら、闘気や魔法力が多くてもコントロールが未熟だと、たとえ敵を倒せても、動けなくなるほど使ってしまっては、意味がないからだ。



そこで、大輝は四年間修行してきたわけだが、修行している内に気付いたことがあった。
それは、気功には主に二種類あった。
一つは“拡散型”もう一つは“集中型”だ。



拡散型は最初、大輝が放った気功弾で、こちらは、一点に集中させるのではなく、爆発地点から広範囲にわたって威力を拡散させる。
しかし、広範囲にわたって拡散させるため、攻撃力が低くなってしまう。



もう一つは、大輝が後に放った気功弾で、こちらが集中型。
威力は高くなり、岩などを貫通させるが、その代り、広範囲にわたって攻撃できない。



すなわち、“広く浅く攻撃するのが”拡散型。
       “狭く深く攻撃するのが”集中型。
大輝はこの二種類を意識しないで使えるよう修行した。
それは、闘気をマスターする理由もあるが、大きな理由は周りに余計な被害を出さないためだ。
実際、今の大輝のレベルで、街中で拡散型を使ったら、それだけでかなりの被害がでる。

ちなみに、魔法で試しても、同じ結果だった。










「さ~て、今日の修行はここまで。」

俺は、この四年間、コントロールに重点を置いた。
おそらく、今ならかめはめ波を使っても、大丈夫だろう。

「そういえば、今日アンナさんが次の段階に入るって言ってたよな・・・・なんだろう?」

アンナさんはどうやら、俺を次のステップに進まそうとしているようだ。
けれど、正直言って、今のままでもかなりきつい。

「ここにいてもしゃないし、行くか。」

まあ、ここで愚痴を言ってもしゃあないので、アンナさんの所に行くか。

「え~と、いつもの海岸に集合っていってたよな・・・」

イメージしろ、海岸、海岸、海岸・・・・・

「ルーラ--瞬間移動呪文--」

--ビュウン--

俺の体を魔法力が包み、その後目的地まで、飛んで行った。





このルーラは、一度いった場所をイメージし移動する呪文だ。
俺は最初、瞬間移動だと思ったけど、正確には空を飛んで高速移動する呪文のようだ。
まあ、本当に瞬間移動だと、ゲームなんかで建物の中で使っても、天井に頭をぶつけるわけないよな・・・・
しかし、これを会得するのは辛かった。


--回想--

「ガボッ・・・・ゴボッ・・・」

「大輝さん、急いで脱出しないと溺れますよ。」

「ぼんばぼどびっだっで~(そんなこと言ったて~)」

「・・・・大輝さん、呪文ではなく魔法力そのものを体全体から放出するんですよ。」

「・・・・ガボ・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

--バシャン--

「・・げほっげほっ」

「・・・フフ。」





「では、大輝さん、ここから海岸まで来てください。」

「ここって・・・・・・」

「島の裏側ですよ。」

「いや、できるわけないじゃないですか。」

「大丈夫です。
 さっき水中から魔法力で飛んだじゃないですか。
 あれに目的地の明確なイメージを加えればいいのですよ。」

「それ以前に、ここから海岸と水中から海岸じゃ全然距離が違いますよ。」

「じゃあ、頑張ってください・・・・ルーラ。」

「ちょっとーーーーーー!!!!」

--回想終了--





 

(なんか、アンナさん、だんだん遠慮がなくなってきたな・・・と)

--ドーン--

ぺっぺっ、う~口の中に砂が~
・・・・もうちょっと、綺麗に着地できないもんかな~




『父~』

「お、マージか」

俺が海岸を歩いていると、向こうから中型犬ぐらいの大きさに育ったマージが来た。
一応紹介しておくけど、このマージってのはマーシャの子供だったチビのことだ。
あの世界から帰ってきた後、まだ名前をつけていなかったことに気付き、いつまでもチビじゃかわいそうだから、名前を考えることになった。
アンナさんもいくつか案を出してくれたけど、やっぱり母親の名前からとった方がいいと思ったから、この名前をつけた。



『父、アンナが来たら案内しろだって。』

「そうか・・・それじゃ頼むぞ、マージ。」

『OK・・・こっちだよ。』

マージが歩きだしたので、俺はその後についていく。



この四年間、マージも前と比べられないほど強くなった。
本来なら、この空間に他の世界・・・この場合、神界と繋がりがない世界から生き物を連れ込むのは原則的に禁止されているけど。
アンナさんが、事情を話して、バーンさん達を説得してくれたらしい。
・・・・やっぱし、いつの時代も女が強いってのは本当だな。

けれど---

『どうした?父?』

「・・・・なんでもないよ、マージ。」

不思議そうにな顔でこちらを見ていたマージの頭をなでながら言う。
う~嬉しそうに、頭をなでられているけど、こいつ、下手したら俺よりも強くなっているかもしれないんだよな。


そんなんだよ、こいつ、俺が修行してるのを見て、自分もやってみたくなったらしい。
いや、それが悪いわけじゃないよ。
子供ってのは、なにかマネしたがるし、俺も早くマージと喋りたかったから、勉強や、修行をつけたんだけよ
アンナさんも比べる対象がいた方がモチベーションも上がるからってつけたんだけど・・・・・


先ず、数か月で、言葉を覚えた。
で、最初に言った言葉が『父』だった。
いや~あんときは感動したね。
正直、天才じゃね!って思ったよ。
でも、本当に天才だったのは、知識面じゃなくて、戦闘だったんだよ。



初めに言っておくぞ。
あの世界から帰ってきてから、四年がたっている。
で、俺が魔法を使えたのは、基礎体力の修行を含めて16年間かかった。
だが、こいつ・・・・たった四年間で攻撃系の呪文、全種類覚えたんだよ!
しかも、相性がよかった、イオ系なんかすでにイオナズンも覚えてるし。

*イオナズン・・・大爆発で相手を攻撃する。その威力は想像を絶する破壊力だ。上級呪文。


どんだけだよっ!ってアンナさんに聴いてみたけど

「マージの両親はよほど優秀だったようですね。」だって。
どうやら、マージのほんとの両親から受け継いだ遺伝の関係でこんなに早く力をつけたみたいだ。
しかも、まだ幼いから、知識もどんどん吸い込んでいくし・・・・


*ちなみにこの空間では管理者が自由に凍れる時間の秘法を操れます。
  なので、マージだけが成長してもおかしくありません。


いやさ、俺もうすうす解っていたよ・・・・
俺、普通の人間
マージ、獣系最強と言われたヘルゴラゴ
どっちが優秀なんか一目でわかるだろうけど
16年修行したのを、たった、四年間て・・・・・


『父~』


う~マージ、心配するなら、せめてその半分でいいから、才能を分けて

アンナさん正直言ってモチベーション、上がるどころか、下がっているような気がします・・・・

















「来ましたか、大輝さん。」

マージに案内されたのは、いつもの島ではなく、広い部屋だった。
周りに何にもない、ドーム状になっている部屋・・・・その一部のガラス越しにアンナさんがいた。

「アンナさん・・・・ここで何をするんですか?」

「大輝さんにはここで模擬戦をしてもらいます。」

模擬戦?・・・・それって

「アンナさんとですか?」

「いえ、違います。」

違ったようだ・・・・よかった~

「大輝さんに戦ってもらうのは大輝さんの頭の中にある想像と戦ってもらいます。」

「?????」

アンナさんが言いたいことが今一解らず、俺は頭に?を浮かべる。
すると、アンナさんは詳しい説明をし始めた。

「そうですね・・・大輝さん。あなたが一番強いと思う方を思い描いてください。現実だけでなく、物語の登場人物でもいいですから。」

そう言われたので、俺は自分が一番強いと思う人を思い浮かべる。
ちなみに、思い浮かべたのは、俺が大好きなDBの主人公孫悟空である。
実際、俺の中での最強はあの人だと思うから。

「思い浮かべたようですね。では、大輝さん。その方と勝負して勝てますか?」

アンナさんの問いかけに俺は急いで首を横に振った。
あんな人と本当に勝負して、勝てるはずなんかないからな。

「大輝さんと戦ってもらうのは、その想像とです。」

俺がそんなことを考えていたら、アンナさんが話しかけてきた。

「詳しいご説明をしますね・・・・先ずこの機械で、バトルフィールドを出現させます。その後、大輝さんの記憶の中にある想像を出現させ、この場で模擬戦をしてもらいます。想像というのは、自分より強い者を思い浮かべやすですからね。この機械を使う皆様は、大抵昔憧れていたヒーローなどと戦いますね。どうやら皆さん、そう言った願望を持っていらっしゃるようですから。」

ふ~ん、まあ確かに想像上ならどんだけ強くしても問題ないからな。
そうすると、実際にいる人物より、想像上のアニメやゲームの人物の方が圧倒的に強いわな。
つーか、どこの世界でもそう言った願望ってあるんだな。ちょっと親近感が湧いた。

けれど--

「あの~どうやって、具現化させるんですか?」

アニメやゲームはあくまでも想像上で決して現実ではない。
そんな、人物をどう具現化させるか聞いてみたんだけど・・・・

「先ずこの機械でその人物の戦闘スタイル・思考パターンを分析、その後、魔法力で体を作り上げ、現実に出現させます。つまり、大輝さん記憶を基にして、その人物が“現実にいたら”という形で出現させます。」

とのことだ。
・・・・ここの科学力って俺らの世界の何世紀先を行ってるんだろう?





「では、大輝さん準備はいいですか?」

「はい。」

アンナさんが俺の返事を聞いて目の前の機械を操作する。
どんやつがでてくるのかな?

「先ず、バトルフィールドを出現させます。」

そう言って、目の前が光ったと思うと、さっきまで何もない空間だったのが別の空間になっていた。
周りには岩があり、緑が少しあるような空間だ。
実際、体験するとすげーな。

「続いて、模擬戦の相手を具現化します。」

そう言って、また目の前に光が現れた。
そこには---




身長が子供くらいで、体全体は緑色。
目は赤く、耳は尖り、足や手は三本の爪がはいている。
化け物と言ってもおかしくない不気味な姿だった。

「ギィエエエエェェェェー!!」

“栽培マン”それがこいつの名前だ。










(栽培マンって、まあ、基がバトル漫画だから、妥当って言えば妥当か。)

「では、始め!」

アンナの合図で模擬戦が開始された。

「ギイエェーーー!!」

合図とともに、栽培マンは奇声をあげながら、大輝に攻撃を仕掛けた。

「はああぁぁ!!」

大輝も気合がこもった声を出しながらこれを向えうつ。

--ダンッ--

「はあああぁぁぁ!!!」

「ギィエエェェ!!」

--シュン--

              --ダッ--

--シュン、シュン--

              --ダンッ--


     --シュッダンッ--

「ギィヤン!!」

「!!!!」

しばらく攻防が続いていたら、栽培マンの頭部から溶解液を発射された。
  
「ちっ!」

--バシュン--

大輝はそれをかわすが、当たった地面はかなり深くまで解けていた。

(ふ~あぶねぇ~)

「ギエエエェェェ!!」

大輝が安直しているところに、再び攻撃を仕掛けるが・・・

「でやあぁ!」

--ダンッ--

大輝の掛け声とともに繰り出された蹴りで吹き飛ばされた。

「ギイィ」

しかし、栽培マンは空中で体制を立て直し、地面を蹴り、大輝に向かっていた。

「でやあああぁぁぁ!!!」

「ギイエエエェェェ!!!」

--ガシッ--

大輝は栽培マンと組み合った。







(なんだ、こいつ?)

一方の大輝は驚いた。
それは、栽培マンのスピードとパワーにだ。
むろん、これは強いからではなく、弱すぎだったからだ。


栽培マンの戦闘力は1200、パワーだけならサイヤ人の下級戦士であるラディッツに匹敵する。
下級戦士と侮るなかれ、そのパワーは地球人をはるかに超える。
いうならば、生まれたての赤ん坊が世界トップクラスの格闘家に勝負を挑むようなものだ。
それと同じパワーを持っているのだ、栽培マンは。


しかし、大輝は今組み合っても、それほど強く感じなかった。
よくて、小学生と力比べをしているようなものだった。


それ以前に、さっきの攻防の時のスピードもそれほど速くなかった。
試しに放った蹴りも面白いほど当たった。


もはや、大輝のレベルは栽培マン一体ごときでは相手にならないほど強くなっていた。




(勝てる!)

そう判断した大輝は、様子見をやめて一気に勝負をつけようとした。

「はあぁぁ!」

--ドゴォン--

「ギィ」

大輝は強烈な膝蹴りを放ち、その衝撃ではなれた栽培マンを上空に放り投げた。

(イメージしろ・・・相手を焼き尽くす炎を!!)

--ボオオォ--

大輝の手の平に1メートルぐらいの炎の塊が作り出された。

「メラミ!」

大輝はその呪文を唱え、栽培マンに向かって放った。


*メラミ・・・大きな火の塊で相手を攻撃する。メラ系の中級呪文。


「ギィヤヤヤャャ!」

--ドオオォォン--

栽培マンは大輝の放ったメラミをまともにくらい、消えていった。





















(・・・すごい)

正直言って驚いた、栽培マンに後れをとらないとは思っていたけど・・・まさかここまで

「おめでとうございます。大輝さん。」

俺が驚いていると、アンナさんが話しかけてきた。

「あーいやー」

う~ん、やっぱしどうも褒められるのはなれないなー

「では、続いて一気に十匹ぐらい、いっちゃいましょー♪」

「はい?」

アンナさんはそう言って、こちらの了承もとらず勝手に機械を操作しだした。
そして、さっきのように光が現れ、それがおさまると・・・・


「ギィエエエエェェ!!!」×10


栽培マンが十匹いた。

「ちょっ」

「では、始め!」

「始めじゃなーーーーーい!!」




*以下音声でお楽しみください

「ギエエエェェェ」

「ええい、貴様ら一度にそんな大勢で来るな!鬱陶しいは!」


「ギイィ」

「てめーら仲間がいるのに溶解液を吐くな!仲間意識ってのはねえのか!お前らは」


--ガシッ--

「し、しまった。」

「ギィ」

「く、アストロン!」

--ドオォン--

「ふ~なんとか自爆は防げたか。さ~て、今ので最後・・・」

「ギイィ」

「まだ、残ってるーーーーー!!!しかも、アストロンで動けねえぇぇーーーー!!!」

「ギイエエェェェ!!」

「ぎゃあああああぁぁぁ!!!」









「大丈夫ですか?大輝さん。」

アンナはそう言いい、目の前の物体に話しかける。
そこには、黒こげになった大輝がいた。

「あ・・・アンナさん・・・・これからは事前に知らせてください・・・・ガクッ」

なんとも、器用な気絶をし、今回の模擬戦は終了した。


・結果 
  
   大輝VS栽培マン

    大輝の楽々勝利。


   大輝VS栽培マン×10
    
    大輝奮闘するも、アストロンが解けた瞬間に自爆をくらい気絶。



















あとがき

最初にでたDBのキャラが栽培マン・・・・・

まあ、あれです、アニメなんかでもベジータが子供のころ栽培マン相手に訓練していた描写があったので、今の大輝のレベルにはちょうどいいと思いこれにしました。

今回、行間を詰めた方が長くならないというアドバイスをもらい今回のような形にしましたが、どうでしたか?

もし、今回の書き方より、前の方がいいというなら、戻します。

なので、感想お願いします。

最初にでた、気については作者の自論です。

DBでベジータが魔人ブウを倒すため命がけで自爆したのに、地球が壊れずあれだけのダメージですんだのが不思議に思い、このような設定を考えたのですがいかかでしたか?

ちなみに、作者の考えとしては、あれは集中型で威力を空に逃がしたから無事ですんだんだと思います。


では、次回。









感想返し

<uwwwwwさん>

今回、やってみましたがどうでしたか?

よろしかったら、感想をお聞かせください。


<nanoさん>

このバトルレックスは並のモンスターではありませんので・・・・

まじんぎりって、けっこう使えましたよね、特に攻撃力が低い時メタル系のモンスターに対して

フリーザについては後々のお楽しみってことで

後、センリではなくアンナです。


<とんじんさん>

いつも誤字報告ありがとうございます。

バトルレックスについては上記に書いてあるということで・・・・


<九尾さん>

確かに言われてみれば、かめはめ波で決まったのって、映画を除けばセルぐらいなもんですかね

主人公がつかうのは悪の技だけなので、そんな黒くはなりませんよ・・・たぶん


<トッポさん>

今回の通りってことで・・・
実際、今の大輝のレベルだと、孫悟空やベジータなんかに勝てませんよ。
ヤムチャですら、最終的にはフリーザに勝てるって聞いたことがありますし
今の大輝にはこれが精一杯です。














[15911] 第八話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 23:27
第八話











--40年目--

「ぐっ・・い・・ぎぎぃ」

「ヒャド。」

「うわ!」

「大輝さん・・・常に一定の高さを保ってないと氷漬けになりますよ。」

「ぐ・・ぐっ・・ぎ」




今、俺が何をやってるかて言うと・・・まあ、あれだ、DBの重力修行だ。
あの後(栽培マンとの模擬戦が終了した後)、アンナさんが始めたのがこの修行だ。
・・・・どうやら、この重力修行も次のステップに含まれていたみたいだ。





そして、今はアンナさんと海の上に立って、俺がトベルーラ--飛翔呪文--で一定の高さを飛ぶ修行をしている。
・・・・ちなみに、一定の高さより低くなると、ヒャドで氷漬けにされる。

*トベルーラ・・・ルーラの応用。ルーラがイメージした場所に半自動的に飛んでいくのに対して、こちらは自由自在に空を飛べる。DBでいう舞空術のようなもの。



あ?・・・そんなの簡単じゃねえかって?



簡単じゃねえよ!!


今の俺にかかっているいる重力は10倍!
単純計算で、俺の体重が65キロでその十倍の650

650-65=585

そして!

俺がつけている重りが100キロ!
つまり

1000-100=900

合計して、585+900=1485キロ

の重さの荷物を背負っている状態と同じということだ!
すげーーーーきつい!
なんだよ!1000って、普通に考えたら一t超してるってことだぞ!
というより、原作の悟空って今の俺より戦闘力低くてもいきなり動けたよね!
こっちは、始めてやった時、おもいっきり地面に倒れたのに!
ええい!惑星ベジータの連中は化け物か!!

・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・・・まあ、それは置いといて。
何で俺が、今の修行をしてるかっていうと、20年前アンナさんに言われたためだ。





--20年前(模擬戦終了後)--

模擬戦で栽培マンの自爆にやられた後、アンナさんに言われたのが重力による修行だ。
アンナさんが言うには、これからは魔法の修行も本格的にするそうだ。
今までおこなってきたきた修行により、基礎体力も魔法力も十分になったからだそうだ。
で、魔法の修行を始めるわけだが、ここでちょっと問題がある。


魔法の修行は、魔法力を増やしたり、魔法のイメージを攫みそれを実現させたりするのが、主になる。
つまり、精神エネルギーを鍛えるって言ったほうが解りやすいかな。
だけど、そうすると肉体エネルギー・・・つまり闘気の修行が疎かになる。
魔法力の修行をしても、闘気は鍛えられることは、鍛えられるけど・・・やっぱり、効率が悪くなる。
まあ、俺が魔法と闘気の修行を同時進行できればいいんだけど・・・・・正直言って無理!
そこで、登場するのが重力で体に負荷を加えることだ。



普通に考えれば、2倍の重力でも、自分と同じ体重の人を担いでいる状態なんだから、日常生活していても体は鍛えられるわな。
それに、重力修行は今までより、より一層パワーアップできる。
魔法力が鍛えられて、肉体も今までよりパワーアップできる・・・まさに、一石二鳥!!
・・・・・まあ、世の中甘くなかったんだけどな。



先ず、最初は二倍から始めた。
やはり、だんだん慣れていった方がいいからな。
それで、二倍はよかったよ、三倍も楽な方だった。
ちょっと、五倍あたりからきつくなったかな。
けれど、重力を増やすのはよかった、最初は動くのも辛かったけど、一か月もすると、日常生活をするのには困らないほど動けるようになった・・・・
“日常生活”にはな!!



「し、死ぬ~」

今、俺は地面に寝そべっている。
日常生活には問題なかったけど、その状態で修行するのが本気できつかった。



先ず、常に魔法力を放出させる、ちなみにこの時、常に動き続ける。
しかも、この時、闘気を使うことは禁止されている。
当然重力もかかっている。
つまり、常にエネルギーを消費させて、なおかつ負荷が掛った状態で動き続ける。
・・・・正直言って、筋肉や骨がきしんでめちゃくちゃきつい。
そのせいで、集中できなかったり、闘気を使ってしまうと・・・・

「大輝さん」

・・・・・まあ、解ると思うけど、強制的に魔法力を放出させられる。
おかげで、常に筋肉痛になったみたいな地獄を味わった。


その後に待っていたのが、魔法の会得だ。
まあ、こっちの方は常に動き続けるわけではないから、まだ楽だったかな・・・
ただ、魔法のイメージしている時も、やっぱり集中できなくて会得が大変だった。





--現在--


「今日の修行はここまでにしましょう。」

「は・・・はい・・・」

よ、ようやく終わった。





ある程度慣れてくると、今度はアンナさんが参加してきた。
その方法が、一段と修行を厳しくした。



最初行ったのは、魔法力を一定に放出し海の上・・・つまり、水の上に立つことだった。
これ自体は別に問題なかったけど、やはり、問題は十倍の重力だった。
一tを超す重さが俺にかかってるんだ、しかも、下は地面じゃなくて、不安定な水の上。
なんか、水の中から見えない手に引きずり込まれるような感覚だった。
まあ、それでも時間が経つと普通に歩けたり、走れるようになった。
もともと、俺はコントロールはほぼ完璧だったから、けっこう楽だったと言えば楽だった。



けれど、あの修行はここまでで一番きつかった(冒頭の修行)。



トベルーラは魔法力を使い飛ぶ呪文。
しつこいようだが、俺には十倍の重力が掛かっている。
その状態で空に飛んでるんだ、しかも、トベルーラで魔法力を放出続ける。
水の上に立つ時は足だけで済んだけど、これは全身から放出する。
当然、エネルギーの消費もその分高い。
エネルギーを消費し続け、なおかつ空に飛ぶ・・・・感じとしては、水の中に重りを付けて飛び込み、もがいている状態だ。



しかも、一定の高さを常にキープしていないと、氷漬けにされるおまけつき。

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

え?・・・・氷漬けにされなかったのかって?










されたよ・・・・・三回ぐらい。







うん、凍死てあんな感じなんだね!
すっごい、貴重な体験できたよ!!
はははははは・・・・・・はあ~~~





まあ、修行は辛かったけど、魔法は結構覚えられた。
特に回復呪文なんか、一気にべホイミまで覚えられたし。
あ!ちなみに覚えられたのは以下の通り

・ギラ・・・高エネルギーの熱閃で焼き尽くす。下級呪文。

・ラリホー・・・相手を眠らせる。下級呪文。

・マヌーサ・・・相手に幻を見せる。中級呪文。

・メダパニ・・・相手を混乱させる。中級呪文。

・スカラ・・・自分の防御力をあげる。中級呪文。

・スクルト・・・スカラの上位呪文。複数に一気に掛けることができる、上級呪文。

・ピオラ・・・自分の素早さを上げる。中級呪文。

・ピオリム・・・ピオラの上位呪文。複数に一気に掛けることができる、上級呪文。

・フバーハ・・・炎や冷気から、身を守るバリアをはる呪文。上級呪文。

・マジックバリア・・・魔法を防ぐバリアをはる。上級呪文。

・ホイミ・・・体力を回復させる回復呪文。下級呪文

・べホイミ・・・ホイミの上位回復呪文。中級呪文。

・キアリー・・・毒を消しさる。中級呪文。

・キアラル・・・混乱や眠りを覚ます呪文。中級呪文。

・キアリク・・・麻痺を治す呪文。中級呪文。

・レミラーマ・・・自分が探したいものをみつける、捜索系呪文。下級呪文。

・インパス・・・物を見とおし、中身を判断することができる呪文。下級呪文。


以上を覚えられた!!




はい、そこ!!
攻撃呪文を一つしか覚えてないとか言わない!!!
生き残るためには、攻撃より、回復や補助のほうが大切なんだよ!!!!!!
特に、フバーハやマジックバリア!
これに、何度助けられたことか・・・・・ううっ(涙)








・・・・・とりあず、寝よ









--次の日--


「ぐが~~ご~~」

大輝は深い眠りについていた。
連日十倍の重力という過酷な環境で過ごしてきたのだから無理もないだろう。
・・・・・もっとも、そんな過酷な環境に慣れているのだから、人間の適応力というのは恐ろしい。

--スウゥ--

ふと、大輝の側に大きな影が現れた。

--ぺロぺロッ--

その影は大輝の頬を舐めだした。
どうやら大輝を起こそうとしてるようだ。

--ぺロぺロッ--

「う~ん・・・・ぐー」

しかし、大輝は深い眠りについたまま起きなかった。

--ぺロぺロッ--

「・・・・むにゃむにゃ」

『・・・・・・』

「が~ぐ~~」

『・・・・・・』

「ごが~~ぐ~」

『・・・・・・』

--ガブッ--

「うぎゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

『おはよう、父』

大輝が飛び起きたのを見て、マージは朝の挨拶をした。










「う~朝から酷い目にあった。」

朝、マージに噛みつかれて起こされた。
マージよ頼むから、噛みつくのはやめてくれ。
昔と違い、今のお前は俺よりはるかに強いんだから。

*マージの現在の強さ
 
  重力・・・200倍を楽々クリアして今は300倍に挑戦中。

  魔法・・・一通りの魔法(回復や補助を含む)は覚えた。
       攻撃系に関しては全部、上級呪文まで極めた。

  闘気・・・大輝より、はるかに高くなり、惑星の一つや二つ、簡単に木端微塵にできるレベル。



なに!この規定外の強さ!
ていうか、レベルアップ早!!



・・・・・ううっ、父と慕ってくれるのはうれしいけど、ものすごい絶望感を感じる。




マージの強さと自分の強さを比べて、憂鬱になるが、大輝よ成長して、五メートルぐらいになったマージの噛みつきを
くらって生きている、お前も十分規定外な存在だぞ。











「あれ?」

いつもの海岸に来たんだけど、今日いたのはアンナさんじゃなかった。

「ミストバーンさん?」

なぜか知らんが、そこにはミストバーンさんがいた。
めずらしいな、普段そんなに姿を見せないのに・・・・

「来たか。」

ミストバーンさんから話しかけてきた。

(おいおい、俺なにかしたか)

ちょっと失礼かもしれないが、ミストバーンさんはめったに自分から話しかけてこない。
いつも、俺やアンナさんが話しかけて、それに答えるという形だった。
それが、急に話しかけてくるなんて・・・・


「あれ?」

俺が不思議に思っていると、急に浮遊感を感じた。

(これは、ルーラか)

どうやら、ミストバーンさんのルーラでどこかに連れて行かれるようだ。







「おっと!」

綺麗に着地して、周りを見回すと、そこはなにもない荒野だった。

「あの、ミストバ・・・・」

「今から、お前にある相手と戦ってもらう。」

俺が質問する前に、ミストバーンさんがそう言ってきた。
そして、上空に手を上げると・・・

--ブワアッ--

空の空間が割れて、中から鎧の塊みたいのが出てきた。








「あの・・・・あれなんですか?」

大輝は目の前に現れた、鎧にみながら、ミストバーンに聞く。

--カッ--

しかし、ミストバーンは大輝の質問に答えず、鎧に闘気を送った。

--ジャキッ--

そうすると、鎧に変化が現れた。
今まで鎧の塊だったのが、手足が生え、巨大な人型になった。

(どこのロボットアニメ)

大輝はその光景を見てそんな感想を抱いた。





「今日の修行はこいつとの模擬戦だ。」

「えっと・・・・拒否権は?」

「ない。」

「ですよね~」

大輝は軽く落胆しながら、目の前の敵を観察する。


推定身長4~5メートル。
体は強固な鎧に包まれて、生半可な攻撃ではびくともしなさそうだ・・・・


(スピードで攪乱して、隙を突くのが、ベストな戦いかな・・・・でもなぁ)

大輝は作戦を考えるが、すぐそれを却下した。
それは、今自分には十倍の重力が掛かっていて、とてもじゃないが、そんなにスピードが出せる状態じゃない。

(あれ?)

ふと、大輝の体から重さが消えた。

「お前に掛っていた重力を消した・・・・全力でやれ!」

どうやら、ミストバーンが大輝の重力を消したようだ。



(すげ~軽い)

一方の大輝も、その軽さに驚いていた。
まるで、自分が羽根になったような感覚だった。

(これなら、いける!)

大輝は確信して、再び敵に目をむけると・・・・

「うわ!」

すでに、目の前に迫っていた。

--ドガッ--

「つぅ!」

回避が不可能と感じた大輝は両手をクロスさせて防御した。
その攻撃力はその巨体に反することなくすさまじいものだった。

--ドオッ--

吹き飛んだ大輝に対して、追撃をする。

「ちょ・・まてよ。」

--ブンッ--

なんとかその攻撃を避けて、一度距離をとる。

「いきなり攻撃するなんて反則だぞ!!」

大輝は抗議の声を上げるが・・・

「・・・・戦闘で自分から攻撃を宣言せるものが、どこにいる。」

ミストバーンから、もっともな答えを聞いて黙った。




(くそー、なんなんだよ、こいつ!)

この鎧の巨人、思ったよりスピードが早い。
おまけに、パワーも俺より高い。

--ブンッ--

(ちっ!)

今は回避に専念しているから、何とか避けられるけど・・・・
このままじゃ、いつか当たっちまう。
なんとか、反撃しないと。

(やってみるか)

「ピオラ!」

俺は、自分にピオラをかけ、突っ込んでいった。

(すげ~スピードだ)

重力から解放された、俺の体。
そして、ピオラをかけたスピードは想像以上だった。

「はあああぁぁ!!!」

俺は、雄たけびを上げながら、前方から攻撃した。
当然、向こうも反撃してくるが・・・・

--ピュンッ--

「残像拳だああぁぁぁぁ!!!」

俺はその場に残像を残し、敵の後ろに回った。
そして、思いっきり攻撃するが・・・・・

--ガンッ--

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・いっってえええぇぇぇ!!!」

硬い!硬すぎるんだよこいつの装甲!!

--ガッ--

「ぐがっ」

しかも、反撃されて吹き飛ばされるし。

「くっ、メラミ!」

俺は吹き飛ばされながら、自分の得意魔法を放ったんだけど・・・・

「きいてねえぇーー!!?」

その巨人にはきかなかった。

「がっ」

また吹き飛ばされた。

「・・・・忠告しておくが、そいつに魔法の類はきかないものと思え。」

「そういう重要なことは先に言ってくださいよーーーーーー!!!!」












「はあぁはあぁはあぁ」

「・・・・・・」

あれから数時間経ったが、勝負はついていなかった。
いや、もう、ほとんど勝負はついたものだった。



大輝は、いたるところから、血を流し
満身創痍の状況だった。


それに、対して、相手のほうは傷という傷はついていなかった。


(くそ、どんだけ頑丈なんだよ!!?)

大輝は相手に対して悪態をつく。
大輝は、自分にピオラ、スカラをかけた状態で戦っていた。
なのに、自分はダメージを負い、相手にはほとんどダメージがなかった。

(とりあえず)

「べホイミ」

大輝は回復呪文のべホイミを唱えて、自らの傷ついた体を癒す。
もし、この魔法がなかったらこんなにも長く戦えなかっただろう。
それだけ、目の前の存在は強いのだ。



(さ~て、この次はどうすかなあ)

大輝は考え込む。
魔法は効果がない、闘気で作った気功弾や気功波も効き目がなかった。
おまけに、肉弾戦も向こうのほうが上。

(いっそのこと逃げるか)

そんな、考えが浮かんだが、それだと後が怖いのでやめた。









--ブンッ--

「くっ!考える時間ぐらいくれよ!!」

俺は相手の攻撃を避けながら言う。
今はまだ呪文の効果が効いているから問題ないけど、いつかは解ける。
正直言って、べホイミなども使っているから、魔法力の消費が激しい。
もし、魔法が唱えられなくなったら、100%負ける。




絶望的な状況なのにも関わらず、敵に向かっていく姿は戦士としての心構えができ・・・・


(負けたら、アンナさんになにされるか解らない!!)


・・・・・・訂正、こいつに戦士としての心構えはなかった。





落ち着け!状況を整理しろ。
俺は何とか頭を冷静にする。

(先ず、こういうタイプは体のどこかに核を持っている・・・・それに当たりさえすれば勝機はある。)

タイプというのは、目の前の鎧などのように、本来無機物に闘気や魔法力が宿った・・・つまり、物質系のモンスターのことだ。
こいつらは、体に核を持っている、それさえ打ち抜ければ勝てる。
そして、その核の位置はあらかた攫めている。
胸の左部分・・・人間で言う心臓の位置、そこにエネルギーの塊を感じる。

(まさか、散々やっていた気のコントロールがこんなとこで役に立つとな)

もっとも、そっちの方に集中しすぎて、今は威力不足が悩みなんだけどな・・・・・



だが、こっちの攻撃が全く効かないわけじゃない。
俺が、気を込めて攻撃したとき、僅かだが・・・・本当に僅かだが、鎧が欠けた。
もっとも、それはダメージにならなかったけどな。
だが!欠けたということは、俺の攻撃力が全く劣ってるわけじゃない!!
魔法も気もきかないんじゃ、残されたのは、この物理攻撃のみ!



(となると、やっぱり、あれしかないか・・・・・)

俺が、思いついたのは、一点集中による攻撃。
単純だが、単純である故にその攻撃力は高くなる。
だが、これには、ある程度リスクがある。





先ず、これは一回しか使えない。
当然だ、文字通り、全エネルギーを一点に込めて攻撃するのだからな。
だが、当然、その他の部分は無防備になる。
その時にやつの攻撃をくらったら、いくらスカラを掛けているとはいえ、耐えられないだろう。



次に、必ず当てることが前提条件だ。
これはも当然だ、全エネルギーを使うわけだから、外したりしたら、エネルギー切れで動けなくなり、負ける。
まあ、これは大丈夫だと思う。
唯一スピードだけは俺の方が少しだが早い。
やつの懐に、入り込めさえすれば、必ず当てる自信はある。
・・・・もっとも、危険な賭けであることは変わりないけどな。

けれど--


(これしかねぇなら、やるしかないか)











「はああああああぁぁぁ!!!」

大輝の気合のこもった声とともに、体の周りに気が渦巻く。
そして、その気は大輝の右手に集中していった。

「だあぁ!!!」

大輝は地面を蹴り、今までよりも早く駆ける。

--ブンッ--

だが、相手も当然反撃してくる。

(まだだ、まだ、まだ・・・・・ここだ!!)

大輝は繰り出された強烈なパンチをギリギリまで引き寄せて避ける。
しかし、この時、その風圧で、右目側面が切れ、血が目に入った。

(うんにゃろおおおぉぉぉ!!!)

大輝は、一瞬よろけるが、すぐ体制を立て直した。

「うおりゃあああああぁぁぁぁ!!!!」

--ドオォォン--

大輝は、雄たけびあげながら、全エネルギーを込めた攻撃を繰り出す。

「くう・・・・に・・いぃ」

しかし、相手の装甲は想像以上に硬かった。

(くそ!・・・一瞬でいい、一瞬でいいから!!!)

「ぶちぬけええええええええぇぇぇぇ!!!!!」

それでも、諦めず、相手の鎧を貫くため、より一層力を込める。

--ピシッ--

そして、相手の鎧に僅かだがヒビが入った。

(いける!!)

そう思ったが・・・・



--ガンッ--

「ガッ」

--ドシァッ--

しかし、貫く前に巨人の膝けりが大輝の無防備な体を攻撃した。
そして、大輝はそのまま吹き飛び気絶した。













「大輝さん、大丈夫ですか?」

『父~』

心配そうに、アンナとマージが大輝に声をかける。
あの後。ミストバーンから模擬戦が終了した連絡を聞いて、迎えに来たのだ。

「う~ん、これは早く休ませた方がいいですね」

アンナの言う通り、大輝は、ほぼ全闘気・魔法力を使い、陸にあげられた魚のような状態だった。

「それでは、お父様、失礼します。」

アンナは大輝を抱えた状態で、ミストバーンに一礼をし、この空間を去って行った。
・・・・ちなみに、お姫様抱っこで





「・・・・・・」

一方、ミストバーンは活動を停止した鎧を見つめていた。

--スウゥ--

ミストバーンがその鎧に触れると・・・

--ガラガラッ--

鎧は、大輝の攻撃受けたところから崩れ去った。



あの時、大輝は反撃を受けて気絶したが攻撃が全く通ってなかったわけではなかった。
僅かだが大輝の攻撃が核に傷つけ時間が経過すると共に核を砕いたのだ。


ミストバーンは驚いていた。
この鎧は自らの暗黒闘気を込めて作り出した戦士。
込めた闘気の量を考えると今の大輝の強さを超えていた。
すさまじい攻撃力と防御力を兼ね備えたパワーフャイターの戦士。
それを、まさか時間差とはいえ破壊されるとは思ってもなかった。


それに--


(あの時、やつが使った闘気は・・・・・)


ミストバーンは大輝の最後の攻撃の時、その闘気が一瞬だが“炎”のようになったのを見逃さなかった。

「・・・・・・」

ミストバーンは、しばらくなにか考えていたが、やがて、この空間から消えていった。














       


おまけ

「・・・・ううっ」

大輝は、修行をする気がわかなかった。
それは、模擬戦に負けたわけではなく・・・・

『父、元気を出せ』

マージは大輝を励ます・・・しかし、次に放った言葉が大輝をさらに落ち込ませた。

『お姫様抱っこくらいで落ち込むな』

そう、大輝はマージにアンナが運んできた方法を聞いて恥ずかしさのあまり、ずっと、布団の中に潜り込んでいた。
・・・・やはり、女の人、それもアンナのような美人にされるのはきつかったらしい。



ちなみに、この後、アンナに強制的に連れて行かれて厳しい修行をしたのは言うまでもない・・・・・















あとがき

どうも、作者の天魔です。

今回は、重力修行と魔法の会得・模擬戦を書きました。

少し、時間を飛ばしすぎましたかね?実際、普通の人間、しかも地球人が普段の何倍の重力になれるのって、どのくらいの時間がかかるんですかね?
しかも、100キロの重りをつけた状態で。

といようり、悟空って、よく動けましたよね、やっぱりサイヤ人のスペックってそのぐらいすごいのでしょうか?

魔法については、少ないと思いましてけど、フバーハなどは賢者クラスの魔法だし、重力になれるのを考慮に入れたら、このぐらいだと思うんですけど・・・・

後、魔法については現実的に考えて、少しオリジナルの設定です。

さて、次回は再びDBのキャラと模擬戦!!
相手は某戦闘民族の一人・・・・・

では、次回!











感想返し

<nanoさん>

そうですね、大体サイヤ人編のピッコロぐらいの強さです。

技に関しては、一応使えます。
まあ、あれは敵側でも拡散弾など似たようなものを使っていましたしね。


<九尾さん>

ドラゴンボールはしかたないですよ・・・・
一年過ぎただけで、比べられないほど強くなっていきますから。
ある意味、強さのインフレの代名詞のような作品ですからね。

星を破壊できるレベルってどれくらいなのでしょう?
亀仙人ですら、フルパワーのかめはめ波で月を壊せますから、下手したらラディッツレベルでも、星の中枢に放てば、壊せるかもしれませんね。
木端微塵は無理でも、星の核させ壊せれば、自然に消滅しますからね。



















[15911] 第九話(VSバーダック ①)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 23:29
第九話(VSバーダック ①)














--50年目--


荒野の中を駆け抜けていく、一つの光があった。

--ヒュン--

その光は、人間の目では到底捉えきれないほどのスピードで駆け抜け。
その光が通った後は、地面が削れ、岩山が破壊されていった。

--ドオォン--

そして、一際大きい岩山を破壊して、その光は止まった。

「ふ~、こんなものか」

ガラガラと崩れる岩山から出てきたのは、大輝だった。







『父、そろそろ時間だぞ』

「うん?ああ、そうだな」

マージの言う時間とは、今日行う模擬戦のことだ。
まあ、そのために今、ある技の練習をしてたんだけどな。

(しっかし、まさか十年もかかるなんて)

この技を思いついたのが、十年前、そっから、ここまで使えるようになってから、かなり時間がかかったなあ。

(ま!戦闘に使えるようになったんだから、俺にしては上出来だろ!)

うんうんっと俺は一人で頷いた。


「よし!それじゃ、いつものをやるか・・・こい!マージ!」

いつものってのは、この技の修行が終わった後、行うものだ。
その内容は、マージの攻撃を避けるという、比較的単純なものだ。
はい!そこ!簡単だろって思ったやつ、出て来い!!
体験させてやるから!!
実際の話、これだけでも、けっこう辛いんだからな!!!
戦闘力、数十億ぐらい離れているやつの攻撃を避けるってのは
・・・・・まあ、かなり手加減してもらっているけど




『解った、いっくよ~』

かわいらしい声で言うけど、こいつの攻撃、けっこう凶悪なんだよなあぁ~~





うん?






(なんか、いつもより、魔法力が高くないか?)

いつもは、結構弱めの魔法や気で攻撃してくるんだけど、なんか今日のは・・・・・

「おい、マー『イオナズン!』 てめーーーーーー!!!」

マージからイオナズンが放たれ、周りを強烈な光が包んだ。

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・


--ゴンッ--


『痛いぞ~父~』

「やっかまし!!なにやってんだ、お前は!!!!」

ええ!怒りますよ!!なにしろこの子、イオナズンなんかぶっ放したんですから!

「なんで、イオナズンなんか使うんだ!」

『だって、今日模擬戦だから、仕上げには強力な方がいいと思って・・・それに、ちゃんと威力は抑えたぞ』

「いくら威力は抑えたと言っても、イオナズンは広範囲にわたって爆発させる呪文だ!こんなとこで使えば、ああなるだろ!・・・さすがに、やりすぎだ!」

ビシッっと、俺は指をさす。
そこには、大きなキノコ雲が出来上がっていて、島が跡形もなく吹き飛んでいた。

(あ、あぶなかったあ~、咄嗟にルーラで逃げなければ、模擬戦の前にダウンしていたぞ)





『ごめんなさい、父』

マージが、耳を垂れ下げながら、悲しそうな声であやまる。
うう、なんか罪悪感が・・・頼んだのは俺だし、こいつも悪気がないんだけど・・・・

「あのな、マージ・・・手伝ってくれるのはうれしいけど、もうちょっと周りの被害も考えてくれ。」

俺はマージの頭をなでながら、なるべく優しい声で言う。


こいつに父と慕われて、約34年間。
そして、いまだに俺を父と慕ってくれる。
むろん、それは嬉しいけど、俺はいつまでも、この空間にいるわけじゃない。
いつかは去る、その時、ついてくるにしても、森に帰るにしても、今のうちに力の危険性を教えないとな。
正直言って、今のマージが本気でやったら、地球なんか粉々に吹きとぶからな。
・・・まあ、感情的にならなければ大丈夫だろ、アンナさんも教えていることだしな。


「・・・・・解ったか、マージ」

『・・・・うん』

「よし、いい子だ。」

そう言いながら、頭をなでると、マージは嬉しそうに尻尾を振った。

「さて、それじゃ、島を直すか。」

そう言って、俺が手をかざすと目の前にパネルが現れた。

「ピッ、ピッっとな。」

そして、そのパネルをいじると、島がなんともなかったように、元通りに戻った。


この空間は、管理者が自由に設定することができる。
重力を変えたり、環境を変えたりなど・・・・
そして、俺は、重力などの修行に関する内容は変えることができないけど、こういった、修復ならできる。
これによって、いくら暴れても、すぐ元通りになるんだから、ほんと便利だな♪


「さて、島も直ったし、いくか。」

『うん♪』

俺はマージと共にアンナさんが待つ空間に移動した。





それにしても、あの島を粉々に吹き飛ばすなんて、しかも、魔法力を最小限で・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

うん、さすが、俺の娘だ!(マージは女の子です)
父として、鼻が高いぞ!
だからこれは、気のせいだ。
目から、水が出るなんて・・・・・













「ど、どうしたんですか、大輝さん?」

アンナは心配そうに、大輝に聞いた。
今日の模擬戦の準備をしていたら、大輝が来たので、出迎えたら、大輝が落胆していたからだ。

「いえ、なんでもないです・・・・」

「そ、そうですか・・・」

大輝の声が涙声になっていたのは、気になったけど、それ以上、聞いてはいけないと思ったアンナは、作業に戻った。










「それでは、準備はいいですか?大輝さん。」

「はい!」

俺の返事を聞いて、アンナさんは機械を操作しだした。
そして、周りが光に包まれると、今回のバトルフィールドに変わっていた。
今回のは岩だらけで、他には何もない、殺風景な風景だ。

「では、続いて、相手を出現させます。」

アンナさんが、そう言ってきたので、俺は周りの観察をやめて、目の前に意識を向ける。

(この間は、栽培マンだったから、今度は、ナッパあたりかな・・・)

俺が、今回の相手を考えていると、目の前に光が現れて、今回の相手が出現した。










(うん、サイヤ人ってのは合っていたけど、まさか、この人とは・・・・)

大輝の目の前に立っていたのは、サイヤ人の特徴である尻尾を生やし、緑を基調とした特徴的なバトルジャケットを身にまとい、
血のように赤いバンダナを頭に巻いた一人の男だった。
その顔や髪型は、DBの主人公、孫悟空に似ている。
しかし、左頬に傷が付いているのと、鋭い目が、悟空とは違うことを物語っていた。

「なんだ?貴様は。」

“バーダック”、カカロット(孫悟空の本名)の父にして、惑星べジータが滅ぶ際、たった一人でフリーザに戦いを挑んだ戦士だ。






(バーダック・・・か)

本当に悟空に似ているな。
俺が、初めて抱いた感想はそれだった。
正直言って、傷と目つきの鋭さがなければ、外見上、見分けつかないぞ。
それにしても・・・・

(マジ、こえ~)

怖いよこの人の目!
あんた、一体どこの裏稼業の人って感じだよ!!

(こんなやつと戦うのか・・・)

俺が、一人落胆していると

--ピッピッ--

バーダックの方から、電子音が聞こえてきた。
なんだ?・・・・と思い、バーダックの方を見ると

(あれは・・・スカウターか?)

どうやら、俺の戦闘力を測っているようだ。

--ピッピッ・・・ピピッ--

「戦闘力たったの5か・・・クズが!!」

うわ~、初対面なのに、この口調だよ・・・
アニメで見て解っていたけど・・・こいつ、絶対父親には向かないな。




いや、でもトーマとか仲間はけっこう大事にしていたから、意外といい父親になるのかな?






父親になったバーダック・・・・







*以下、バーダックが一般家庭の父親になっていたら



「なんで、俺がガキのために・・・・」

口では、文句を言いながら、息子の誕生日プレゼントを買いに行くバーダック。




「ちっ!こんなのもできないのか!」

そう言いながら、息子が寝静まった後、宿題の間違っているところを直す、バーダック。




「はんっ!話にならねぇ・・・もっと鍛えろ!」

息子に格闘技を教えた後、こっそり、傷薬を用意するバーダック。



・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・




「あ、あの大輝さん、始めてもよろしいですか・・・」

はっ!!!

いっいかん!!つい変な妄想をしてしまった。

「は、はい・・・大丈夫です?」

「なぜ疑問形なのかは聞きませんけど、本当に始めてよろしいですね?」

「お願いします。」

あぶない、あぶない・・・今は模擬戦に集中しなくちゃ。
変なジャンルが浮かんだけど、急いで忘れなくては・・・・





















“ツンデレ親父”













ええい!!思い出すな!!!!
そんなジャンル!いらんわ!!!!!














「では、始め!」

アンナによって、模擬戦の開始が告げられた。
大輝は構えをとるが、バーダックは腕を組んだまま立っていた。

「おい、本当にそんな戦闘力で、俺と戦(や)りあうってのか。」

バーダックは機嫌が悪いのを隠そうとせずに大輝に聞いた。
むりもないだろう・・・彼、バーダックの戦闘力は約1万近く。
そんな自分に戦闘力たったの5が戦いを挑むのだ。
強者との戦闘を望む彼にとっては、この戦いはほとんど意味がないだろう。
・・・・大輝の戦闘力がスカウターの数値通りなら。

(なめてるな・・・・よーし)

「はああああああぁぁぁぁ!!!!!」

大輝は周りに、自らの闘気の色と同じ紫色の気をまとった。

--ピピッ--

「!!!!」

それに伴い、バーダックのスカウターにも変化が現れた。

(な、なんだ!!戦闘力が上がっていく!!)

「でやああああぁぁぁ!!!」

バーダックが、スカウターの変化に驚いていると、大輝が攻撃してきた。

--ドガッ--

「くっ!」

スカウターに気をとられていた、バーダックは大輝の攻撃をまともに受けてしまう。
すかさず、大輝は追撃をしようとするが・・・

「はあぁ!」

バーダックから強烈な蹴りが放たれた。

「のわ!!」

大輝は、それを避ける。
さすがに、歴戦の戦士あるバーダックである。
一度スカウターに気をとられたが、すぐ持ち直したようだ。

(なるほど、自由に戦闘力をコントロールできるタイプか)

バーダックはそう認識すると、自らのスカウターを捨てた。
自由に戦闘力を変えられるなら、もはやこの数値に意味はないし、邪魔になると思ったからだ。

「おもしれぇ!かかってきやがれ!!」

そこには、さっきまでの戦(や)る気のない姿はなく
強者と戦える喜びに満ちた笑みを浮かべる、サイヤ人の戦士が立っていた。












「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

大輝とバーダックは互いに睨みあいながら、その場に佇んでいた。

--ピュッン--

--ダアァンッ--

突然、姿が消えたと思ったら、両者は拳を互いに打ち合った形でいた。

「「はあああああああぁぁぁぁぁ!!!!」」

互いに、雄たけびを上げながら、激しい攻防が続く。


--ダンッ--

      
            --ガッ--


--シュンッ--


            --ダダッ--


--ドォン--


            --ドガァン--




紫と青白い気がぶつかり合い。
拳と拳・蹴りと蹴りがぶつかる音だけが周りに響いた。


「でやああああぁぁ!!!」

--ダンッ--

「でりゃああああぁぁ!!!」

--ダンッ--


互いの実力はほぼ互角。
永遠に続くと思われた、攻防戦だったが・・・・・



--ガンッ--

「つぅ!」

徐々にだが大輝が押され始め、今は完璧に防御にまわっていた。

--ダッ、ダッ、ダッ--

(まずい、このままじゃ!!)

自分が不利と悟った大輝は一度距離をとった。

「逃がすかあああぁぁぁ!!!」

当然、バーダックも逃がさないと、追撃を仕掛けるが・・・・

「メダパニ!」

「!!!な、なんだ!!」

大輝はメダパニを唱え、バーダックを混乱させることに成功した。

(よし!今のうちに)

「はああぁぁ!!」

--ドオォン--

「ぐわっ!」

すかさず、大輝はバータックのがら空きになったボディにひざ蹴りをくらわす。

--ダンッダンッダンッ--

そして、そのまま追撃の攻撃をしていった。

・・・・・せこいぞ

(やっかましいーー!!戦いに、卑怯もクソもあるか!!)

・・・・・まあ、正論だが





「でやあああぁぁ!!!」

そのまま、大輝の攻撃は続いた。
このまま、いけば勝てるだろう。
しかし---

--パシッ--

「あ、あれ?」

大輝の攻撃を、バータックが受け止めた。

「ッなめるなーーーー!!」

--ドゴオォン--

「ぐがっ」

そして、そのまま強烈な蹴りをくらわせ、大輝を上空へと打ちあげる。

(くっ!いそいで体s・・・)

--ダアンッ--

「ガッ」

大輝が体制を立ち直す前に、後ろに廻り込んだバーダックに攻撃を受けた。

「はああああああぁぁぁ!!!!!」

--ドオォン--

そして、そのまま地面に向かって叩き落された。

「はああああぁぁ!!」

バーダックの右手に、気が集まって行き・・・

「でやあぁ!」

強力なエネルギー波が放たれた。




--ドオオオォォン--




「ちっ!奇妙な技を使いやがって、まだ頭がクラクラするぜ。」

そう嘆いたバーダックは、下の方に目を向けた。
そこには、地面に大きなクレータが出来上がっていた。












「はあっはあっはあっ」

(し、死ぬかと思った。)

バーダックの目の届かない岩山の影に大輝はいた。
大輝は、あの瞬間、ルーラで咄嗟に逃げたのだ。

「くっ・・・ぎ・・・ぐっ・・・」

しかし、完璧に回避するのは不可能だったようで、体の至る所から血を流していた。

(な、なんとか回復を)

そう思い、回復呪文を唱えようとすると・・・・

--ボキッ--

「ッ!!!」

大輝は悲鳴を上げそうになるが、なんとか押しとどめた。

(まずい・・・骨が・・・)

バーダックの強烈な攻撃をまともにくらった大輝の体はすでにボロボロだった。

「ッ・・・べ、べホイミ」

大輝は何とか、呪文を唱え、傷ついた体を癒そうとする。





大輝とバーダックは戦闘力の数値で見れば、ほぼ互角。
では、なぜ大輝はこんなにも追い詰められたのか。
それには、主に三つの理由があった。




一つ目は、サイヤ人と地球人のスペックの違い。

これは、DBの主人公、孫悟空を例に出すと解りやすいだろう。
悟空(本名カカロット)は本来、地球を征服するために、送り込まれたサイヤ人だった。
しかし、ある日、谷から落ちて頭を強打し、サイヤ人本来の凶暴性が抑え込まれ、心優しい青年へと成長した。
注目してほしいのは、谷から落ちたということである。
普通、地球人が谷から、しかも、頭を強打したら、生きている可能性はどれぐらいなものか。
しかも、この時の悟空はまだ、幼年期であった。
幼年期でも、これほどの強靭な体をもっているのだ、サイヤ人というのは。




二つ目は、バーダックの経験。

サイヤ人だけではなく、地球人にも言えることだが、血統というのは強力な力がある。
最下級戦士の生まれである孫悟空は地球を攻めに来た、超エリートサイヤ人であるべジータと互角に戦った。
しかし、悟空は孫悟飯、亀仙人、仙猫カリン、地球の神、北の界王等といった、幾多の師をもつ。
それに比べて、べジータは、ほとんど、独学で格闘術を身につけたようなものだ。
むろん、育った環境や、べジータ自身が天才だったのもあるが、悟空はこれほどの師に師事を受け、ようやく互角に戦えたのだ。
それほど、サイヤ人の間の血というのは強力なのだ。

そして、悟空の父であるバーダックも最下級戦士の生まれである。
普通に考えたら、エリート戦士たちには敵わないだろう。
しかし、幾多の激戦や死線を潜り抜けてきた、バーダックはエリート戦士の生まれであるナッパの戦闘力4000を遥かに上回る戦闘力を身につけた。
しかも、今回、幾多の死線を潜り抜けてきた、強靭な精神力が大輝のメダパニを解くなどの役目をはたした。
バーダックの経験は全てにおいて、大輝を上回っていた。
それこそ、本来、大輝にあった魔法というアドバンテージを上回るほどに・・・・




三つ目は、大輝自身の経験の少なさ。

大輝は、この修行の中で、ほとんど強敵といえるほどの敵を相手にしたことがなかった。
アンナやマージなどといった、強者はいたが、それは、あくまでも修行であり、本物の命の取り合いではなかった。
唯一の強敵はマーシャの世界で会った、バトルレックスぐらいなものだ。
しかし、それだけでは、バーダックにに対抗できるほどの経験にはならなかった。








(勝てないか・・・このままじゃ)

大輝は悟った。
今の体は文字通りボロボロだ。
べホイミで回復しているけど、とてもじゃないが、自分のレベルでは骨まで治せない。
そして、このままでは勝てない。
しかし、その顔には、あきらめの表情は浮かんでいなかった。

(よーし、修行の成果をみせてやる!)

気合を入れ直し。
再び、立ちあがった。




この、十年間で身に付けた、ある技を試すため。



















あとがき

マージに関しての感想が多いですね。

まあ、マージは地球人をはるかに上回るスペックを持つ、ヘルゴラゴという種族ですからね。

そんなやつが幼少から、しかも超一流クラスの使い手に鍛えられていますから、かなり強くなっていますよ。

それこそ、フリーザを超すぐらい。

そして、今回登場したDBのキャラはバーダック。

ある意味、大輝にとっては、壁とも言える存在。(経験てきな意味で)

大輝の、ある技に関しては、次回ということで。

では、次回。










感想返し


<トッポさん>

マージのレベルに関しては、あとがきの通りということで。

今回でたのは、バーダックでした。
今の大輝のレベルはこれが妥当だと思います。


<九尾さん>

まあ、成長スピードは大輝より、はるかに高いですからね。
後、潜在能力も。

フリーザでもビビるっということは、それだけ危険なのでしょうか?
星の爆発と言うのは・・・・

大輝はあくまでも、一般人です。
それでも、すでに一般人のレベルは遥かに超えていますけどね。


<nanoさん>

まあ、それに関しては次回のお楽しみということで。

デットアーマー・・・考えたら、ゲームなんかでも相手にしたくないですね。
単純に考えたら、メタルスライムなどの唯一の弱点であるHPの少なさがなくなったようなものですからね。


<とんじんさん>

報告、ありがとうございます。

マージは今の生活で幸せなので、探しに行きません。
まあ、大輝が探しに行く時は、解りませんけど・・・・

後、マーシャは母親で、本当の親ではありません。


<realさん>

DB関連の小説などでは、必ずって言ってもいいほど、やってますからね。

大輝の年齢は、今回で、60を超えてますね。
もっとも、本体は保存されているから、何も問題ないんですけどね。


























[15911] 第九話(VSバーダック ②)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 05:45
第九話(VSバーダック ②)
















--10年前(模擬戦終了後)--


「魔炎気・・・・ですか?」

「そうだ。」

あの後、ミストバーンさんに呼び出されて、聞かされた内容がそれだった。

「あ~確かに、炎みたいになっていますね。」

そして、今は、あの鎧の巨人と模擬戦の映像を見せられている。
そこには、俺の最後の攻撃の時、一瞬だが、拳が炎みたいなものに包まれている映像が映っていた。

「で、この魔炎気って、なんなんですか?」


*説明中・・・・


ふむふむ、なるほどー。
ミストバーンさんが言うには、魔炎気ってのは暗黒闘気の一種らしい。
違いは、名前に炎とあるように、炎や熱の性質をもつらしい。
で、それを武器や拳にのせて攻撃すると、爆発的な攻撃力を得られるそうだ。


「爆発的な攻撃力・・・・」

「そうだ・・・お前は、あの時一瞬だが魔炎気を使った。」

「そこから得られた爆発的な力が、本来お前の攻撃ではびくともしないデッド・アーマーに傷をつけたのだ。」

ふ~ん・・・・っていうか、ミストバーンさん。あんた、そんなやつを俺と戦わしたんですか。
本来、俺が傷つけられないようなやつと

(ジーーー)

ちょっと、批判的な目線を送る。

「・・・・これを、自由自在に使いこなせれば今よりさらに強くなれる。」

覚えておいて損はないぞ・・・・・そこまで言って、ミストバーンさんは消えた。
・・・・無視ですか。







「う~ん、こんな感じかな・・・・」

ミストバーンさんに言われた後、俺は早速修行をした。
実際、あれほど頑丈だった鎧に傷をつけたのだ。覚えておいて損はないだろう。
それに、ある技を思いついたしな。

(・・・これが、魔法力・・・そして、こっちが、闘気)

俺は瞑想しながら自分の中にあるエネルギーをみつける。
そして、そのなかの闘気を全身に張り巡らる。

(こっからが、難しいんだよな。)

以前、アンナさんに言われた通り、闘気に関しては自分自身で覚えるしかない。
だから、魔炎気に関しても自分で覚えるしかない。
アンナさんのアドバイスだと、魔炎気は暗黒闘気を文字通り、炎のように爆発させる感じだそうだ。

(・・・炎、爆発、炎、爆発・・・・)

僅かだが体が熱くなってきた感じがする。
これが、魔炎気なのだろう。

(よし、後はこれを、爆発させる!)

「はああああぁぁ!!」


--チュドーーーン--


「けほっ」

た、確かに爆発だけど、これは・・・・・・



大輝の周りの木々は吹き飛び、中心には、黒こげになった、大輝が佇んでいた。





爆発した原因をアンナさんに聞いたところ、魔炎気は炎や熱の性質を持つ。
つまり、コントロールを誤ると、さっきみたいに爆発するそうだ。
で、俺が考えた・・・というより、参考にした技の概要を話したら
理論上は、魔炎気で再現できるみたいだ。
けれど、これには注意点がある。
使用時体にかかる負担もあるが、一番気を付けないといけないのは、さっきの爆発だ。
さすがに自分の技で自爆するなんて冗談じゃないからな、気を付けないと。



(今度は、気を付けないとな)

俺はさっきより、一段と注意して、魔炎気の修行を始める。
そして、この魔炎気を使えるようになったらある技を試すつもりだ。






その技とは----












--現在--


「魔炎拳ッ!!」


--ズウゥ--

その技を発動させ、紫色の炎のようなオーラが大輝を包んだ。





“魔炎拳”

大輝が、DBの主人公、孫悟空が使う、界王拳を参考にして、編み出した技。
界王拳が全身の気をコントロールし、一時的に、パワー・スピード・防御力を高めるのに対して、魔炎拳は少し違う。
全身の気をコントロールするのは一緒だが、魔炎拳は、もともとある、暗黒闘気を魔炎気に変換させて、使う技だ。



*界王拳使用時、体を赤いオーラが包むのは、暗黒闘気とは関係ありません。



しかし、当然、リスクもある。
界王拳同様、倍率が高くなるほど戦闘力を高めることができるが、当然、体にかかる負担もそれだけ高くなる。
ここまでは、界王拳と同じだが、魔炎拳の場合は、これにもう一つ、リスクがある。
それは、自爆の危険だ。
魔炎気は、その名の通り、炎や熱の性質を持っている。
そのため、コントロールを誤ると、魔炎気そのものが爆発し最悪大輝もろとも自爆してしまうのだ。
だが、これを自由自在に使いこなせれば、大きな戦力になる。
本来、爆発的に力を高めることができる魔炎気。
それを体全体に張り巡らせているのだ・・・そこから得られるパワーは界王拳以上だ。









(くっ!・・・熱い、おまけに、戦闘で体力を消費したせいか、いつもより重く感じる・・・けれど)

「く・・・ぎっ・・ぎぎ」

大輝は苦痛の表情を浮かべながらも、なんとか耐えようとする。
歯を食いしばり、気のコントロールを試みる。

--ピキッ--

やがて、拡散していたオーラが大輝の周りに固まってきた。
それに伴い、地面にひびが入って、砕けた岩が宙に舞う。






そして、岩山が崩れ・・・





「はあああぁぁ!!!」

紫色のオーラに身を包んだ、大輝が飛び出した。







「!!!ッ・・・あの野郎、生きてたのか!」

バーダックも大輝に気付き、とどめを刺そうと攻撃しようとするが・・・・

--ビュン--

「がっ!!!」

しかし、さっきとは比べられないほどのスピードで、大輝がバーダックの顔に肘鉄をくらわせた。

「でやあああぁぁ!!」

すかさず大輝は追撃の攻撃をしていく。

--ダンッ、ガッ、ダッ--

顔や腹などにパンチや蹴りを入れていく。

「ぐっ!!」

(な、なんだ!こいつ!)

一方のバーダックは驚いていた。
さっきのスピードもそうだが、パワーもさっきまでと比べられない。
今の状況はさっきとは違い完璧に自分が防御に回っていた。

「がっ!」

大輝の強烈な攻撃を受けて、バーダックは吹っ飛んで行った。
大輝も追撃しようと追いかける。

「ちっ!」

しかし、バーダックは宙で体を回転させ、その勢いのまま岩山を蹴り大輝に向かって行った。

「でりゃああああぁぁ!!!」

「はああああああぁぁ!!!」

--ガシッ--

そして、お互いに手を組み合わせた形になった。

「「ぎ・・・ぐう・・・・ぐぎ・・・・」」

互いに歯を食いしばりながらの力比べをする。
しかし--

--ぐっ--

「ぐがあああぁぁ!!!」

大輝の力が勝ち、バーダックの顔が苦痛に歪む。

「でやあああぁぁ!!」

--ドオンッ--

大輝は、強烈な蹴りでバーダックを上空へと打ち上げた。

--ドオォン--

「がっ」

そして、バーダックに追いつき後、パンチでバーダックに追撃を掛ける。
バーダックはその衝撃で、さらに吹き飛んだ。

--ピュン--

「ぐがっ」

大輝は、吹き飛んだバーダックの背に廻り込み強烈な膝けりを加え、
その後、バーダックを地面に向かって叩き落した。

--ヒューーードガァン--

バーダックはそのまま吹き飛んでいき、岩山に激突した。








「はあぁはあぁ」

(くそっ!・・・思ったより、消費が激しい。)

大輝は、エネルギーの消費の激しさに思わず悪態をついた。

(こんことなら、最初から、全力でいけばよかったかな)

そう思う大輝だったが、それはどちらともいえないだろう。



魔炎拳は、魔炎気を全身に張り巡らせることによって爆発的な力を得る技。
普通、魔炎気を全身に張り巡らせたりしたら並の人間では到底耐えきれない。
しかし、大輝は炎の耐性があった。
人間でありながら暗黒闘気を持ち、尚且つ炎の耐性がある大輝だからこそ使える技。
正しく、大輝専用の技と言ってもいいだろう。
しかし、そんな大輝でもやはりエネルギーの消費が激しい。
なにしろ、この技は下手したら自爆の危険もあるのだ。
むろん、大輝もこの十年で使えるようになったが、やはり界王拳よりもリスクが高いため、消費が激しいようだ。




仮に、最初から魔炎拳を使い、全力で行ったとしよう。
その場合、確実に相手をエネルギー切れまでに倒す必要がある。
なにしろ、常に気を爆発させた状態なのだ。
その分エネルギーの消費は激しい。
相手を倒す前に魔炎拳が解けてしまった場合、ガクッっとパワーやスピードが落ち、一気に形勢が不利になってしまう。



逆に、今の大輝のようにある程度相手と戦った場合・・・こちらも、正しいとは言えない。
今の大輝は、体にダメージが蓄積しているため体力が落ちている。
そんな状態で魔炎拳を発動させたら体にかかる負担は想像以上だ。



魔炎拳は、力を得られる分使いどころが難しい技といえよう。










(このまま、長びさせたら、こちらが不利になる)

そう悟った大輝は次の技で決めようとする。

(今ある、魔法力を、闘気に変換)

「か~め~」

大輝は、今自分の中ある魔法力を闘気にまわし、腰付近に両手を合わせて持っていく。

「は~め~」

そして、今までより強い気が凝縮していく。

「波あああああぁぁぁ!!!!」

そこから放たれたかめはめ波は今まで使ったかめはめ波の中で、最も強力なものだった。







--ガラガラッ--


「はあぁはあぁ・・・ちっ!どうなってるんだ」

バーダックは瓦礫の山から這い出た後、口を歪め悪態をつく。
無理もないだろう。
先ほどまで自分の方が優勢だったのに、いきなり相手が強くなり、自分をここまで追い詰めたのだから。

「うん?な、なんだ!!」

ふと、相手(大輝)の方に目を向けると・・・・

「か~め~」

大輝がかめはめ波を放とうとする姿が目に映った。

「は~め~」

「くっ!」

バーダックは本能的に気付いた。
あれをまともにくらったらやばい!
急いで回避をしようとするが・・・・

「波あああああぁぁぁ!!!!」

しかし、その前に大輝から極大のかめはめ波が放たれた。





「ッち!!!!」

バーダックは思わず舌打ちをするが、すぐ、打開策を考えようとする。



回避--あのスピードとダメージが溜まった体では不可能だ。




防御--無理だ。いくら防御の体勢をとっても、あれをくらえばかなりのダメージをくらい、動けなくなるだろう。

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・


いや、そもそもなぜ自分はこんな弱気になっている?


自分は全宇宙最強の戦闘民族サイヤ人だ!!!
ならば----



「はああああああああぁぁぁ!!!!」

バーダックは、自分のエネルギーを左手に集めて行った。

「でりゃああああぁぁ!!!」

そして、フルパワーエネルギー波を放った。




ならば、攻撃で打ち破るのみ!!!










--ズウウゥゥン--

強烈なエネルギーの塊が互いに押し合っている。

「く・が・・ぐぐ・・・」

「ぎ・・・が・・・ぐ」

エネルギーを放った両者は歯を食いしばりながら、互いに相手の攻撃を飲み込もうとする。

「ぐぐぐ・・・・・く・・」

やがて、その均衡は崩れていき、バーダックが押され始めた。

「ちっ!なめるなぁぁぁーーーー」

だが、バーダックは残った右手からエネルギー波を放った。


--ズウウゥゥン--


それにより、目前まで迫っていた大輝のかめはめ波を少し続だが押し返し始めた。

「「はああああぁぁ!!!」」

互いに後がない。両者はさらに力を込める。







そして----
















--ドガアアアアアァァァァンン--










周りが一瞬強烈な光に包まれた後、凄まじい爆発が起こった。

























「つぅ・・・あ、あいつは・・・・」

大輝の体はさっきより血を流し、動けるのもままならないほどの大けがを負っていた。

「はあぁはあぁ・・・く・・つ・・」

しかし、それでも何とか意識を留めて、バーダックがどうなったか確かめようとする。





「はあぁはあぁはあぁ」

大輝は何とか歩いて、爆発地点まで来ていた。

(すげーな・・・・これ)

大輝は思わず感心してしまった。
そこには、今まで見たことがない大きなクレーターが出来上がっていた。
これを自分がやった・・・大輝は自分の力の強さを再び思い知った。

(これなら、いくらなんでも・・・・)

そう思った大輝だが、ふと動く気を感じた。

(ま、まさか!!)

大輝は、目を凝らしながら気を感じた方向に目を向ける。

「はあぁはあぁはあぁはあぁ」

そこには、体に傷こそ負ってるもののバーダックが立っていた。






(じょ、冗談だろう)

大輝は悪い夢を見てる気分に陥った。
あのかめはめ波は、数値に直せば、軽く見積もっても戦闘力2万以上の破壊力があった。
しかも、バーダックは自分より爆発地点に近かった。
それで生きてるなんて・・・・


(うん?)

一瞬、困惑した大輝だったが、すぐおかしいことに気付いた。

(気がほとんど感じない)

大輝が思った通り、バーダックからは、ほとんど気が感じなかった。
そこで、バーダックをよく観察してみる。
先ず、体全体からは血を流し、特徴的なバトルジャケットは吹き飛んでいた。
正しく満身創痍の状態だった。



バーダックは何も無事で済んだのでは無い。
傷のこともそうだが、それ以上にエネルギーの消費が激しかった。
さきほどの打ち合いでバーダックは、文字通り全エネルギーを使い果たしたのだ。




「・・・・・・・」


ふと、バーダックは右手を腰の高さまで上げた。


--パアァン--


すると、青白い球型のエネルギー弾が作り出された。




「なっ!!!」

これには、大輝も驚いた。
バーダックから感じる気はほとんど無い。
それなのに、エネルギー弾を作り出すなんて・・・・・

(くそっ!)

大輝は何か方法がないかと考える。

(避けて、接近戦に持ち込むか・・・・いや、もうそんな、体力も残ってない)

(なにかないか・・・・なにか・・・・・・)

(うん?・・・・・なんだ・・・このエネルギー)

ふと大輝は自分の中に魔法力でも闘気でもないエネルギーを感じた。

(・・・・このまま、引っ張り出せば・・・いけるか?)

大輝は、そのエネルギーを放出させようと試みる。
なにかいやな感じがしたが、もはや、このエネルギーを使うことでしか自分が勝てないと思ったからだ。
そして、バーダックと同様、腰付近に右手を上げた。


--パアァン--


すると、バーダックと同様、球型の紫と白が混じった色のエネルギー弾が作り出された。













(あれは・・・・まさか!)

この戦いを見守っていた、アンナは驚いた。
それは、大輝が魔炎拳を使ったことも含まれていたが、それ以上に、驚くことをやっているのだ。




“魂のエネルギー”



普通、生き物の肉体で魔法力と闘気が0ということは、その生き物は、死んでいる状態だ。
むろん、そこに回復呪文をかけても意味がない。
なぜなら、すでに死んでいるのだから。
しかし、ザオラルやザオリクなどの蘇生呪文では生き返られる。
それは、なぜか?
答えは、魂が命をつなぎとめているからだ。



この魂のエネルギーがある限り、肉体が腐敗などしない限り、蘇らせる可能性がある。
つまり、魂とは、命の最後の砦なのだ。
ある意味、自分の存在そのもといってもいいだろう。



そして、この魂のエネルギーを使う技もある。
昔の人間達も使えた技だ。



その名は、“生命の剣”。




自分自身の命を・・・・この場合、魔法力と闘気の生命力と魂のエネルギー、
を剣などを媒介にして使う技だ。
その威力は、例え使用者が瀕死の重傷でも、使用者のレベルを超える攻撃力を生む。
それだけ、魂とは強力なエネルギーを秘めているのだ。
・・・・・もっとも、それ故に聖魔八武具がてっとり早く、力を得るためのエサになるのだがな。



しかし、これは技の中では一番危険な技ともいえる。
なにしろ、魂・・・命そのものを使うのだ。
当然、魂のエネルギーを使うと生命力も衰弱していってしまう。
そして、それが尽きると例えザオリク級の回復力でも生き返れない。




この魂のエネルギーを使うのは、それほど難しいものではない。
概念を知っていて、闘気や魔法力のコントロールの熟練者ならば使えるだろう。
しかし--
大輝もバーダックも闘気の扱いは十分だが、この概念を知っているわけではない。
ではなぜ使えるのか?
それは、今の二人の状況にあった。



今の二人は、魔法力・闘気。すなわち生命力をほとんど使い切った状況なのだ。
普通魂のエネルギーというのは、めったに表に出てくるものではない。
例え、出てきたとしてもほとんどの生き物がそれを使うことはない。
なぜなら、命そのものに関わるため、本能的に使うことを拒むからだ。
そして、普段は魔法力と闘気という生命力の殻に覆われいるため概念を知らない人間にはそこから引き出す術を知らない。
しかし、今の二人にはその殻がない。そのため、魂のエネルギーが表に出やすくなっているのだ。
そして、二人の勝利に対する執念が使用を可能としていた。





(まさか・・・・魂のエネルギーを使うなんて)

アンナの驚きも無理もないだろう。
概念を知らない人間は、いくら気の扱いがうまくても、ほとんど使うことはない。
それなのに、大輝は使っているのだから。

(これは後で、この技の危険性をみっちりと教え込まないといけませんね)

フフフッと、アンナは笑った。



・・・・・大輝。一生模擬戦をしていた方が気が楽かもしれないぞ。












(な、なんだ!・・・これ)

一方の大輝は自分の存在が消えていくような感じがした。
当然だ・・・・文字通り、命そのもを放出しているような状況なのだから。

「く・・・ぐぐっ・・・かく」

大輝は、何とか意識を留め、この正体不明のエネルギーを手のひらに凝縮し留めようとする。

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

(はあぁはあぁ・・・・何とか、安定したな)

大輝は、魂のエネルギーを命の危険ラインを超えることなく、コントロールすることに成功した。
もし、これが危険ラインを越えていたら、大輝は今頃意識を失い、負けていただろう。






「これで・・・この戦いの全てが決まる。」

唐突にバーダックが言った。

「この、俺の運命・・・・・」

「そして、貴様の運命もな!!」

--パアアァン--

バーダックが作り出した、エネルギー弾がより一層輝きだす。

「これで、最後だあああああぁぁ!!!!」

バーダックは、勢いよく振りかぶって、エネルギー弾を放った。





「!!!・・・それは、こっちのセリフだあああああぁぁ!!!」

大輝もエネルギー弾をより一層輝かせ、勢いよく放った。







「「はああああああああぁぁ!!!!」」



--ズウウウウゥゥン--



互いの魂から作り出したエネルギーの塊が押し合う。
両者とも、本当の意味でこの攻撃が最後なので、避けることを考えず互いの攻撃を飲み合おうとする。


「く・・・ぐが・・・があが」




なぜ、大輝はこんなにも必死になっているのだろうか?

大輝は、確かに負けず嫌いな所があるが、さすがに命掛けで勝とうとは思はない。
では、なぜこんなにも意地になっているのか?




バーダックは最下級戦士の生まれでありながら、エリート戦士に負けない戦闘力を身に付けた。
血も優秀でなく、ただ自分の力のみでそこまで強くなった。


大輝も、血統という意味では優秀とは言えない。
むろん、地球人とサイヤ人という違いはあるが、大輝もバーダックと同等の戦闘力を身に付けた。
しかし、それは優秀な師がいてようやく身につけたのだ。


同じように血統が優秀ではない者同士・・・・しかし、強くなる過程はあまりにも違いすぎた。
自分とは違い、師に師事されるのではなく、自力でそこまでの強さを身に付けたバーダック・・・・


大輝はそんなバーダックに一種の憧れに似た感情を持っていたのかもしれない。






だからこそ-----






(負けたくない!負けたくねえええぇぇ!!!」



「うおおおおおおおぉぉ!!!」















そして、互いの魂のエネルギーがぶつかり合い・・・・・・・












--パアアアアァァァン--











周りが強烈な光に包まれた。

























「う・・・く・・・ここは」

大輝の目に入ってきたのは、いつもの医務室の天井だった。

「気が付きましたか・・・大輝さん。」

そして、隣からアンナの心配するような声が聞こえた。

「心配しましたよ・・・本当に。」

しかし、大輝にはアンナの声が聞こえていなかった。
そして、だんだん意識がハッキリしてくると自分が気になっていることを聞いた。

「あの・・・・アンナさん、結果は?」

結果というのは、あの後どうなったのか・・・・大輝は、今それが一番聞きたかった。

「・・・・結果だけ見ればほとんど引き分けです。」

「ほとんど?」

大輝はアンナの答えに違和感を覚えた。

「はい・・・・正確に言うには、大輝さんが先に気を失って、その後、相手が気を失いました。」

「・・・・・そうですか。」

大輝はアンナの答えを聞いて、僅かだが落胆した。
やはり、自分とほぼ同程度の相手に僅かの差とはいえ先に気絶したのが悔しかったようだ。





「アンナさん・・・・俺、強くなっていますか?」

大輝は、アンナに質問してみた。
その声は、若干だが不安そうな声だった。

「大丈夫ですよ・・・・確実に強くなっています。」

しかし、アンナはそんな不安など吹き飛ばすような明るい声で答えた。

















「大輝さん!!」

魂のエネルギー同士のぶつかり合いが終わった後、アンナは急いで大輝のもとに駆け寄った。
それは、魂のエネルギーを使ったのだから大輝の体が衰弱していて、最悪命の危険があるかと思ったからだ。
それこそ、機械のスイッチを切ることなく急いで駆け付けたのだ。
それだけ、今の大輝は危険な状況にあるかもしれないのだ。




(心臓は動いている。体も衰弱しているが、命の危険はない。血や骨が折れているけど、これぐらいなら、特に危険はありませんね)

しかし、アンナが思ったような危険はなかったので、ホッと一息ついた。





--ガラッ--

ふと、近くから、にか物音が聞こえた。
アンナはその方向に目を向けると・・・・

「!!!!!」

アンナは驚いた。

「があ・・・く・・・が・・」

なぜなら、バーダックが意識を失わず立とうとしていたからだ。
これにはアンナは驚いた。
目の前の存在のレベルの戦士なら、神界などを探せばいくらでもいる。
しかし、魂のエネルギーを使い、尚且つそのぶつかり合いの余波を受けて、立とうとしているのだ。

(なんという不屈の闘志!!)

アンナが驚いたのは、それだった。




「く・・・が・・・はあぁ」

やがて、バーダックは少し続だが立とうとする。

「あく・・・・うあああああああああぁぁぁぁ!!!!」

そして、一際大きい叫び声をあげて立ちあがった。

「!!!!!」

アンナは思わず身構えてしまった。
普通に考えれば、目の前の存在ごとき自分の相手にはならない。
しかし、その闘志が思わず戦闘態勢にさせたのだ。

「・・・・・・・」

「・・・・うん?」

しかし、いつまでたっても動こうとしない。
アンナは不思議に思い相手の様子を窺うと・・・・・

「気絶している。」

バーダックは、立ったまま気絶していた。
やがて、機械のスイッチが自動的に切れて、バーダックは消えていった。











(あれほどの戦士と互角に戦えたんです・・・・)

(大輝さん・・・あなたの思っている以上に強くなっていますよ)

アンナは、頬笑みながら、大輝を絶賛していた。






もっとも・・・

(あれ?そういえば、バーダックってラディッツの父親でもあるんだよな・・・・)

(ラディッツ・・・・父があれほどの戦士で弟が本編の主人公なのに、あんな扱いされるなんて・・・・)

(ものすごい、不憫なキャラだな・・・・)


この男は、そんなどうでもいいことを考えていた。









結果

大輝VSバーダック

僅かの差で大輝が先に気絶。

バーダックの“ファイナルスピリッツキャノン”を会得














おまけ

*以下は本当の意味でのネタです。



●設定

父に憧れ、激しい修行に明け暮れるラディッツ。

しかし、徐々にエリート戦士達との壁を思い知り、挫折してしまう。

だが、地球で会った弟カカロットの強者に立ち向かっていく姿を見て、かつての父の姿を思い出した。

●注意

・ラディッツは生きています。

・悟空は本編通り、界王に修行をつけてもらっています。

・そして、ラディッツは少し、弟思いになっています。









「はっはっはっ、グシャグシャに潰された息子を見る時のカカロットの顔が楽しみだぜ!」

そう笑いながら、巨体の男・・・ナッパが孫悟空の息子、孫悟飯を踏みつぶそうとする。
サイヤ人の猛攻により仲間のほとんどが死に、
そして、幼い命までもが散ろうとしていた。

--ダンッ--

「があっ」

しかし、そうはならなかった。
なぜなら、ナッパが悟飯を踏み潰す前に何者かによって吹き飛ばされたからだ。



「お、お前は!!」

クリリンは驚いた。なぜなら、そこに立っていた人物に見覚えがあったからだ。

「ふんっ、誰かと思えば・・・・・生きていたのか、ラディッツ。」

べジータが言ったように、そこには、かつて自分たちの敵だったサイヤ人・・・ラディッツが立っていた。



「ラディッツ・・・一体なんのつもりだ?」

べジータが不敵な笑みを浮かべながら、ラディッツに問う。
むろん、ラディッツなどを許すつもりはない。
ただ、殺す前に理由を聞きたかっただけだ。

「なんのつもりだと・・・・ふんっ!」

ラディッツは挑発的な笑みを浮かべながら答えた。

「兄が弟の手助けをするのに、わざわざ理由が必要か?」

「・・・くっくっ・・くはははははっ」

ラディッツの答えを聞いたべジータは馬鹿にしたような笑い声をあげた。

「はははっ・・・随分、お優しくなったもんだなぁ、弱虫ラディッツよぉ」

ナッパも馬鹿にしたように言う。

「・・・・・・」

「えっ!・・・うわっ!」

「ご、悟飯!」

しかし、ラディッツはそんなことを気にせず悟飯をクリリンのもとに投げた。
そして、戦闘態勢に入った。

「おいおい、本当に俺と戦(や)りあうつもりか?」

ナッパが挑発的に言う。

「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとかかってこい!!」

「それとも・・・俺が怖いのか?」

しかし、ラディッツも挑発的に返した。
その笑みは、かつて強敵に立ち向かっていった父・・・バーダックの笑みに似ていた。

「!!!!このぉ弱虫ラディッツがあああぁぁ!!」

ナッパはその答えを聞いて怒りの形相を浮かべながらラディッツに向かっていった。






「お、おめぇ・・・」

戦場に着いた悟空は驚いた。
ここに来る前、強い気が現れたのは感じたが、それが誰かは解らなかった。
そして、いざ、戦場に着いてみると・・・・

「カ・・・カカ・・ロッ・・・ト・・か」

そこには、血まみれになった、かつて自分の兄と名乗った男が倒れていた。

「随分・・・・遅かったな・・・」

強気な声をあげるラディッツ。しかし、その傷はもはや助からないほどの重症だった。

「カカロット・・・あいつらに見せてやれ・・・・サイヤ人の意地って・・・やつ・・・を・・・」

ラディッツは、そこまで言って静かに目を閉じた。







それは、弟カカロットに対してできた、兄としての唯一の優しさだったのかもしれない。

























あとがき

どうも、作者の天魔です。

魔炎拳・・・まあ、作中にある通り、界王拳を参考にした技です。
実際、界王拳なら地球人でも使えそうなので、それを大輝風にアレンジしました。

そして、バーダックからファイナルスピリッツキャノンを会得。

まあ、この作品を書く前に、この技は覚えさそうとしました。
そして、今回、魂のエネルギーについて書きました。
実際、バーダックが瀕死の重傷を負っていて、アニメのように奮闘した理由を作者なりに考えて、オリジナル設定で書いたのですが・・・・いかがでしたか?

後、基本的に魂のエネルギーを使うと、自分の闘気と白色が混じったような色になります。
魂は純粋という意味で・・・

最後のおまけについては、実際、こんな終わり方があってよかったと思い、書いてみました。



さて、ハタルさんより、疑問をいただきましたので、この場を借りてお答えします。


主人公の精神年齢についてですが、はっきし言うと、そんな成長しません。

第四話において、何百年間もいても問題ないと表記しましたが、これは肉体だけでなく、精神的にも大丈夫ということです。
50年などは、あくまでも、この空間に来てからの時間を書いただけで、大輝の中ではそれほど時間が経ったという感覚はほとんどありません。
まあ、心情としては・・・いつものように、朝起きて今日も一日頑張るかー、みたいな心情です。
これからの経験で少し変化はあるかもしれませんけど、基本的には変わりはないと思ってください。


すいません。ご都合主義で。
しかし、こうでもしないと、普通に無理が来ると思います。
大輝は、普通の人間という設定なので、普通の人間が、50年など長い時間を修行していて、尚且つ時間が進んでると感じていたら、発狂すると思いますから。


では、次回。
















感想返し


<realさん>

はい、まだまだ先は長いです。

武器については、後々のお楽しみということで。


<nanoさん>

ある意味、恐ろしいですね。
大猿化しても、唯一仲間は認識できたみたいですから、
それがなくなると・・・・・

界王拳については、今回の通りということで。


<九尾さん>

おまけに、父と慕われていますからね。
けっこう、ダメージはでかいと思います。

まあ、バーダックは、幾多の激戦を潜り抜けた、経験がありますからね。


<ハタルさん>

あとがきの通りということで。

バーダックに会ったのも、それほど、懐かしいという感情はありません。
せいぜい、昨日見かけなかった、知人に今日会ったという感じです。


<とんじんさん>

誤字報告ありがとうございます。

まあ、強くなりましたけど、先は長いですけどね。






















[15911] 第十話(休日編 ①)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 23:48
*キャラ崩壊が起こります。ご注意ください。






第十話(休日編 ①)

















「アンナさん!欲しいです!!」

「・・・・・とりあえず、主語を言ってください。」

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

「はあ、スカウター?・・・・ですか。」

あの、バーダック戦が終わってから半年がたった。
え?その間、何をしていたかって?
まあ、あれだ、怪我の回復に時間を当てていたんだ。
いつもは、アンナさんがベホマをかけてくれて、全快するんだけど・・・・
今回に関しては、なぜか、かけてくれなかった。
アンナさんが言うには「この機会に、体の大切さを知ってください。」ってことで、怪我を直してくれなかった。
・・・・おかげで、かなりの時間、ベットの上で過ごすことになった。
しかも、その間・・・・・・・・・




まあ、それは置いといて。
今、俺はアンナさんにあるお願いをしている。
解ると思うけど、バーダックがスカウターを使うのを見て、俺も欲しくなったんだ。
だって、スカウターだよ!!
DBの中で、使いたいアイテム、べスト3に入るぐらいのアイテムだよ!!!
普通、一回ぐらい使いたいもんじゃないか!!!!



・・・・・まあ、わがままだと思ったけど、俺も考えがなくてこんなお願いをしているわけじゃない。
スカウターは、相手の強さだけではなく、場所を探すこともできる。
むろん、俺も気や魔力の察知なんかできるけど、それより、より詳しく探すことができるんだ。
ロストセレスティを探しに行くときは、きっと役に立つと思うんだ。
それに、この世界には個人の総合戦闘力を測る機械がある。
だから、それの小型版で似たような物があっておかしくないと思ってお願いしてみたんだけど・・・・・・






「そうですね・・・・・」

アンナさんは、俺の考えを聞いた後、なにか、考え込んだ。

「・・・・・時間は・・・・・・・それに・・・・」

「しかし・・・・・には・・・・・」

なんか、ブツブツと言っている。
しばらくして、考えがまとまったのか俺の方に顔を向けてきた。

「大輝さん、少し待っていてください。」

そう言った後、アンナさんは消えた。
なんだろう?



しばらくして・・・・




「お待たせしました。」

暇だったから、マージと遊んでいたら、アンナさんが帰ってきた。

「アンナさん、どうしたんですか?」

俺は気になって聞いてみたけど、次のアンナさんの言葉に驚いてしまった。

「今日は休みにして、買い物に行きましょう♪」

「・・・・・・はい?」


















「入国手続きは、こちらで行ってください。」

なんか、あれよこれよと内に、転送装置でどこかに来てしまった。
見た目的には、空港に似ているかな。
そこの、係員みたいな人とアンナさんが話している。

「身分証明を提出してください。」

「はい。」

「チェックします・・・・・・・チェック完了。」

「バーンパレス親衛隊長アンナ様・・・・確認しました。」

係員の人は笑顔で言う。

「ようこそ、ライクベールへ。」





「あの~アンナさんここは?」

今、空港みたいなとこを歩いているけど・・・・
結局ここどこ?

「ここは、神々の一人・・・デスタムーア様が治める世界です。」

デスタムーア?
それって・・・

「大輝さん、こちらに乗ってください。」

「あ、はい」

アンナさんが、なにか円になっている機械の上に立って、俺にそう言ってきた。
う~ん、なんかいろいろ気になったけど、とりあえずここから出よう。
ここ、人が多すぎて落ち着かないし・・・・

「ギャアオォ」

「こら!落ち着け・・・まったく、お前はほんと手が焼けるな・・・・」

なんか、魔物とかがいるし。

--ピッピッ--

アンナさんが、その機械を操作しだしたら周りが光に包まれた。














「ぽかーん・・・・・」

うん、思わず、こう言ってしまうほど、今俺は驚いている。

『おお!!父、見ろ見ろ!!なにか、飛んでるぞ!!!おお!!あれは、なんだ!!!!!』

うん、マージ興奮するのはわかるけど、少し落ち着こうな。
ぶっちゃけ言うと、俺も驚いているから。



ついた場所は空港?みたいな場所の入り口近くだった。
で、外に出てみたんだけど・・・・そこは、まるで別世界のようだった。
いや、確かにこの世界は自体が別世界だけど・・・・なんというか、すごすぎるんだ!


先ず、マージが驚いたように、車みたいのが飛んでるし。
周りには、高層ビルが立ち並んでるし・・・・
というか、なんでビルの中から、飛行機みたいのが出てくるわけ!!?
おまけに、人とかも飛んでるし・・・・いや、これはおかしくないのか?
実際、俺も飛べるし。
・・・・・・・いやいや、思考が少し普通じゃなくなってるぞ。




う~ん、見た目としてはなんか昔思い描いていた、未来都市って感じだな。






「さて、本来なら、転送装置を使うとこですが・・・今回は観光を重ねて歩いていきましょう。」

そう言って、アンナさんが歩きだしたので、俺もその後について行った。






ガヤガヤと街中は、大都会のように人があふれていた。
ここまでを見る限り、日本の東京みたいだけど、明らかに違うとこがある。
先ず、ファッションについては問題ない。
なんか、現代風な人もいれば民族衣装みたいなものを来ている人もいる、近未来的な服を着ている人や昔の武士とか西洋貴族みたいな服装の人もいる。
それは、別にいいんだけど・・・・・

--キョロ--

俺は左に顔を向ける。
そこには、楽しそうにしている家族をみつけた。
ただし、顔や体はワニみたいな姿をしている。

--キョロ--

続いて、右に顔を向ける。
そこには幸せそうにしているカップルがいた。
こっちは、全体を見れば人間だ・・・・尻尾とネコ耳みたいのが生えているのを除けばな。





「あの~アンナさん・・・結局ここって?」

俺は、困惑しながら聞いた。
だって普通に獣耳みたいなものを生やした人とかいるし魔物を連れている人もいる。
中には、あきらかに人間と違う姿をしている人?とかいるし・・・・
いくら、マージとかで慣れているとはいえいきなりみたらビックリするわ。

「先ほどターミナルでもおっしゃいましたが、ここは神の一人、デスタムーア様が治める、ライクベールという世界です。」

「いや、だから、その神様って・・・・」

バーンさんじゃないの?って俺は聞いてみた。
で、アンナさんの説明を聞いてみたけど、俺は少し勘違いしていたみたいだ。



先ずこの世界は、俺が住んでいる地球・・・つまり、地上世界、そして、魔界、天界、の三つを主とする。
そして、そこにその他の世界を含んで、一つの世界とする。
で、それを治めているのが神様なんだけど・・・俺はてっきり、神様ってのはバーンさん一人だと思ったんだ。


けれど、アンナさんが言うには、神様ってのは複数いて、そのなかの最高責任者みたいなのがバーンさんらしい。
そして、神様にも住む場所ってのは必要だ。
まあ、それは、それぞれの自由らしい。
自分で作った亜空間に住んでいる神様もいれば、この世界のように、どこかの世界を治める神様もいるらしい。
あ!ちなみに、バーンさんはバーンパレスって言う、神界の建物に普段はいるらしい。
つまり、神界そのものを治めているのが最高責任者であるバーンさんてことだ。
で、アンナさんはそこのメイド長兼親衛隊長をしているそうだ。
まあ、普通に考えれば、まったく関係ない役職っぽいけど、実際は違うそうだ。
先ず、メイドは主の身の回りの世話をする。
そして、親衛隊ってのは、王様とか重要人物を守るみたいなものだろう。
つまり、アンナさんは身の回りの世話をしながら、主の護衛ができる。
だから、今の役職はアンナさんにとって、ピッタリの役職だそうだ。




話を戻すぞ・・・・なんで、神様が複数いるかというと、この世界の管理体制を強固なものにするためだそうだ。
先ず、この世界ってのは、以下の通りになっている。


神界

                     天国                        

あの世とこの世の入り口



地上などの世界


                     地獄




て、なってるそうだ。



順を追って説明するぞ。




先ず、地上世界とかで死んだ人は魂だけの状態になる。
そして、次に行くのが、あの世とこの世の入り口だ。
そこで、裁判官・・・閻魔大王に天国行きか、地獄生きに分かれる。
天国と地獄ってのは、特殊な空間で、直接つながってるのは、あの世とこの世の入り口だけだそうだ。



そして、その中の天国行きの人の中で英雄って呼ばれる人には、肉体が与えられる。
そういう人達が神界に行って、修行して、神様になるそうだ。
ようするに、強く優秀な人には、神になるチャンスが与えられるというわけだ。


ここまでだと、変なことに気付く。
それは、バーンさんのことだ。
バーンさんは昔地上世界を滅ぼそうとしたわけだから、普通に考えたら地獄行きになる。
実際、アンナさんが言うには、バーンさんは最初地獄にいたそうだ。
けれど、そこから這い上がって、神になったそうだ。



このケースはそれほど、珍しい物ではないらしい。
昔は、罪人に神の座などまかせられるものか・・・て、考えがほとんどだったそうだ。
けれど、今はそれがないらしい。
あったとしても、それはごく少数の人達だそうだ。




なんで、こなうなったかというと・・・・そうだな、バーンさんを例に説明するぞ。



バーンさんは昔、地上世界に戦争を仕掛けたけど、それには理由があった。
その理由ってのは、魔界に太陽の光を降り注がせることだった。
まあ、俺は太陽がない生活ってのがどれほどヤバイのかは想像できない。
けれど、かなりヤバイということは解る。
それが、昔の魔界には続いていたんだ。




で、その原因を間接的とはいえ作ったのは、昔の神様たちだ。
まあ、人間が魔族より遥かに弱い生き物だから、優遇して太陽を地上世界に与えてくれたのは感謝するよ・・・・
けれど、今みたいに、魔界を切り離して、そこに太陽並のエネルギーの塊を作れたんじゃないかって、言った人がいたそうだ。
ちなみに、昔の魔界と地上世界の関係はこうなっている。


太陽


地上世界



魔界



つまり、魔界は同じ次元の地上世界の下にあったというわけだ。
で、今は----



太陽             太陽



地上世界           魔界


ていう風に、それぞれ、別の次元に存在している形になっている。


ちなみに、昔の神様たちにもこれはできたことだ。
なのに、しなかった。
まあ・・・・いやな話し、昔は差別みたいのがあったわけだ。


あ!けれど、今はそんな差別はなくなったぞ。
さっきも言ったけど、昔のバーンさんたちの戦争は神様たちにも原因があったわけだし、なにより、その時代からかなりの年月が流れているんだ。
そういった、種族間での差別問題はほとんどないそうだ。
・・・・・まあ、中にはまだ、ある所もあるらしいけど。



それに、この世界は良くも、悪くも実力主義なとこがある。
まあ、力がない奴に本当に世界を守れるのかって?っていうことだ。
それが助けになったり、神の差別の問題などがあったりして、今は地獄行きになった人でも、チャンスはあるそうだ。
ちなみに、天国行きになった人で、肉体を与えられなかった人にも、同様にチャンスがある。
けれど、天国も地獄も関係なく、本当の意味で邪な思いを持っているやつは、神になれないらしい。
それは、いくら生前、英雄って言われた人たちもだ。




けど、そうすると、問題が出てくる。
仮に地獄行きになったってことは、それだけのことをしているということだ。
本当にそんなやつに神を任せていいのか?って問題が出てくる。
その問題を解決するために、複数の神様達がいるのだ。
例えば、最高責任者がいくら推薦したとしても、他の神様が反対すれば、その推薦した人は神になれない。
こういう風に、多数決の形をとっているそうだ。
まあ、これは当然だよな。
もし、最高責任者一人に権限が集まっていたら、今頃差別の問題も残っていただろうし、
なにより、権力が一人に集まる・・・・所謂独裁状態だと、今頃世界は、滅茶苦茶になっていたかもしれないしな。




それに、例え、独裁者の神様が出てきても、複数の神がいるわけだから、その問題も迅速に解決できる。
まあ、俺たちの世界で言うと、世界全体の各国である程度の共通の法律を守っていて、その法律を守り、
役目を果たす限りは各国の好きな方法で国を治める・・・て言えば、いいのかな?
まあ、考えとしてはこんな感じだと思うぞ。




とりあえず、これが神様が複数いる理由だけど、もう一つ、重要な理由がある。



それは、世界を効率よく管理し守ることだ。




この世界は、複数に世界を一つの世界としている。
複数って言うけど、その数は尋常じゃない数だ。
そのため、神界のみで見守っていると、どうしても効率が悪くなる。
だから、神界には最高責任者が残って、他の神様たちは、それぞれの世界・・・この場合、複数の世界を合わせて管理しているみたいだ。



まあ、日本で例えると、神界=首都を治めているのが、最高責任者で、
他の神様たちは、他の世界=それぞれの県を治めて、その周りの県を管理している形だ。




今俺たちがいる、このライクベールっていう世界を治めている神様・・・・デスタムーアさんっていう名前らしい。
その神様は、このライクベールを拠点として、他の世界の管理をしているらしい。






ちなみに、神様が直接管理し治めている世界の人達は、その人が神様って知っているらしい。
まあ、中には、その世界の重要人物にしか知られていなくて、公的には隠している神様もいるみたいだけどな。
そういった、人は王とかの立場で、その世界を治めているそうだ。





このライクベールなどの世界のように、神様が直接治めている世界は神様が直接干渉しても問題ないらしい。
だけど、力を使いすぎると、影響は出るけどな。
これは、俺にも言えることだ。
実際、今の俺は地球で暮らすのには問題ないけど、それは、あくまでも力を抑えている状態でだ。
正直言って、今の俺なら、その気になれば、地球を一週間もあれば全滅させる自信はある。
それより、遥かに強い神様が力を使うんだ・・・・・そりゃ、被害は出るわな。




ちなみに、ライクベールみたいな世界のように、他の世界から観光などに来たり、
そのまま、その世界に住む人も多いらしい。
そのため、ライクベールは他種族が住んでいるそうだ。
俺がさっき見た、人達もこれに当たる。
その中には、死んで、肉体をもらった人とかもいる。
ある意味、このような世界は死んだあとの娯楽施設のようなものも兼ね備えている。
後、ライクベールは科学文明が世界の中では三本の指に入るぐらい発達していて、ものすごい、豊かな世界だそうだ。
まあ、だからこそ、各世界から観光に来るんだけどな。










「着きましたよ、大輝さん。」

俺がアンナさんに聞かされたことを頭の中でまとめていたら、どうやら、目的地に着いたようだ。

「そうですーーーーか?」

ちょっと、マヌケな声を出してしまった。
いや、だってねぇ・・・・・・

「なに・・・・・・これ?」

思わず、疑問形で言ってしまった。




先ず、目の前に目を向ける。
すると、なにか建物がある。
それは、おかしくないよ・・・・それは。


俺は、目線を上に向ける。

--グッ--

--グッ--

--ググッ--

っと、限界まで、上に向けたけど・・・・・・・

(み、見えない。)

そうなんだよ。
修行して、視力が普通の人間より遥かによくなった俺でさえ、てっぺんが見えないんだよ。
しかも--

(なぜに、ロボット?)

その建物から、なにかロボットが出てくるし。
飛行機・・・・というより、戦艦?
SFアニメなんかにでてくるようなやつがその建物から、出てきたり、入っていったり、してるんだよ。






「ここは、この世界の神・・・・デスタムーア様の居城にして研究施設などを兼ね備えている、この世界の中心。“クラウドタワー”です。」

俺は放心していたけど、アンナさんの言葉で、正気に戻った。

(タワーって、絶対そんなレベルじゃないぞ)

俺の世界では、雲よりも高い建物はあるけど・・・・目の前のタワーはそれより遥かに高かった。

「大輝さん・・・行きますよ。」

「あ・・・・はい。」

俺は返事を返し、そのまま後について行った。




うん、なかも外見にそぐわないほど、中もものすごいSFチックだった。
制服なんかは、別に気にはならなかった。
俺の世界の会社員が着ている、スーツみたいな感じだったからな。
まあ、中には、どこかの連邦軍みたいな服を着ている人もいたけど、
とりあえず、服に関してはそんな感じだった。
後は・・・まあ、あれだ、
よくSFアニメなんかで見かける、空中にモニターが浮かんでいるやつ、
あれが、そこかしこに浮かんでいることぐらいかな?
それ以外は、俺の世界とそんな変わらなかったかな?
・・・・・もっとも、ここまでで、かなり俺の世界と違っているがな!!





「バーンパレス親衛隊所属、アンナです。デスタムーア様はいらっしゃいますか?」

「!!こっこれはアンナ様、はっはい、すこしお待ちください。」

アンナさんは、自分の名前を受付の人に告げた後、自分の目的を言った。
・・・・というか、アンナさん、あなたどれだけ有名人なんですか?
受付の人、ものすごい慌ててるし、俺の気のせいじゃなければ、他の受付の人の顔が赤いぞ。
しかも、女の人(むろん、十分美人の部類に入る)




「え、えと・・・この時間ですと、地下の研究室にいらっしゃいます。・・・お取り次ぎしますか?」

「はい、お願いします。」

そう言った後、受付の人は目の前に浮かぶ、パネルを操作しだした。
・・・・・というより、大丈夫か?あれ?
なんか、ものすごい、震えて見えるんだけど。





「あ、あの・・・デスタムーア様。ただいま、バーンパレス親衛隊長アンナ様がお尋ねに来ているのですが・・・」

「なんじゃと!!!バカもん!!!」

あ~そりゃ、怒るわな、こっちがいきなり来たn

「すぐ通さんか!!」

--ズルッ--



「は、はい!!」

「ふふ、相変わらずですね・・・・さて、大輝さん?どうかなさいました?」

「い、いえ・・・・なんでもないです。」

俺の返事を聞いて、アンナさんは「そうですか」と言い、また受付のお姉さんと話しだした。

俺はというと・・・

(ま、まさか、こんな漫画みたいな、こけかたをするとは)

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・


「失礼します。」

そう言って、アンナさんは、扉を開けた。


今、俺たちは、そのデスタムーアさんがいる研究室ってとこの前にいる。
来る途中、なんか警備の人とかがいたけど、そのたびに、さっきの受付みたいに、
「早く通さんか!!」と言う、せかす声が聞こえてきて、普通に通れた。
・・・・・大丈夫か?この建物の警備。








「やっほ~~~アンナちゃん久しぶり☆」

「お久しぶりです、デスタムーア様。」


・・・・・・・・うん、俺は今日、何回驚けばいいんだ。



迎えてくれた人は老人だった。
これは別におかしくない、さっきの通信の声から察することができたからだ。
容姿も別におかしいとこはなかった。
白ひげを生やし、気のよさそうな爺さんだった。
けれど、その格好がすごかった。



先ず、上半身は派手な赤色の半袖のシャツに身を包んでいる。
そして、下半身はこれまた、元気そうに半ズボンと来ているし、サングラスをかけている。
まあ、あれだ・・・・DBの亀仙人を想像してくれ。





「アンナちゃん、どうしたんじゃ急に?」

「はい、実は・・・」

「まま、詳しい、話はこちらに来て、茶でも飲みながら話そう。」

そう言って、その爺さんはアンナさんに手を伸ばし・・・・


「うぎゃああああああぁぁぁ!!!」


絶叫を上げながら、床を転げ回った。


「あら、どかなさいましたか?デスタムーア様?」


アンナさんはニコニコと笑いながら、心配したように声をかける。



しかし、俺は見た。



あの爺さん・・・・デスタムーアさんがアンナさんの尻を触ろうとしたのを・・・・
うらやま・・・・・じゃなくて、なんてけしからんと思ったけど、そんな気持ちは吹っ飛んだ。
だって、アンナさん・・・デスタムーアさんの手が触れる前に、氷雪系魔法でその手を凍傷させたんだぜ。
うんうん、痛いよな、アンナさんの氷雪系魔法の威力は俺もよく知っている。

だが、あえて言うぞ!!











自業自得だ!!!

















「いや~相変わらず、容赦がないのお~」

「フフ・・・なんのことですか?」

アンナさん、顔は笑っていますけど、目が笑っていませんよ。



今俺たちは、研究室の中の休憩室みたいなとこにいる。



「デスタムーア様・・・・またですか・・・」


そ言ったのは、ムドーという男の人だ。
年齢は40代前半ぐらいかな。
少し、小太りで髪の毛が緑色になっている
気の優しそうな人だ。
デスタムーアさんの側近の人らしい。



けれど---



(この人、本当に神様か・・・・)



こう思った俺は、悪くないと思う。
だって、いきなりアンナさんにセクハラするし、ぶっちゃけて言うと、見た感じそんな過ごそうには見えない。
・・・・・・格好には驚いたけど。






「ふむ、なるほど・・・わしが作った、ムーアレーダをなあ・・・・」

「はい、部品だけ頂ければ、こちらでカスタマイズしますから、なんとかお願いできませんか。」

そう言って、アンナさんはデスタムーアさんにお願いする。
ちなみに、ムーアレーダってのは、俺の総合戦闘力を測るときの機械の名前だ。
驚いたことに、俺が栽培マンやバーダックと戦った、あの機械も目の前のデスタムーアさんが作ったそうだ。
というより、世界全体で使われている科学物資はこの世界のがほとんどだそうだ。
・・・・・ただのスケベ爺さんじゃなかったんだな。





「まあ、アンナちゃんの頼みだから引き受けてもいいけど・・・・・」

そう言って、デスタムーアさんは俺の方に目を向けてきた。
なんだろう?

「小僧、名前は。」

「えっと、斎藤大輝です。」

「所属は?」

所属?・・・俺って何になるんだ?
一応、バーンさん達の弟子ってことになるのかな?

「えっと、「バーンパレス親衛隊の新人です。」 ぶっ!」

思わず咳き込んでしまった。
ちょっと、アンナさん、なんですか!その大層な肩書は!!
俺はアンナさんに抗議の声を上げようとすると・・・・

《大輝さん》

突然、頭の中にアンナさんの声が聞こえた。

(これは・・・念話か)

念話ってのは、テレパシーのことだ。
簡単な通信呪文だ。
ちなみに、俺も使える。

《どういうことですか?アンナさん》

《申し訳ありません、後で必ず理由を話しますので、今は話を合わせてください》

俺の質問にアンナさんはそう返してきた。
・・・・まあ、そう言うなら、この場は話を合わせたほうがいいのかな?
実際、俺も自分の所属なんか解らないし。

「え~と、はい・・・・アンナさんが言ったとおりです。」

「・・・・・・・」

うわ~めっちゃ見てるよ・・・・やっぱ、無理があったかな。

「・・・・・まあよかろう。」

そう言って、デスタムーアさんは席を立って、どこかに行った。
うーなんか、変な汗かいたー






「ほれ、お前が欲しがっていた、ムーアレーダの小型版だ。」

戻ってきた、デスタムーアさんはそう言って、机に手に持っていたものを置いた。

(うん、ぶっちゃけ言うと、スカウターだろ・・・・これ)

俺が思った通り、それはスカウターに似ていた。

「まあ、一応これの説明をしておくぞ・・・・」


*説明中


うん、間違いなくスカウターだ。
デスタムーアさんに説明を受けたけど・・・・なにからなにまでスカウターだった。
違うのは、相手の闘気と魔法力を測れて、総合戦闘力を導く出すぐらいかな。




「これ・・・・もらえるんですか?」

「ああ・・・・じゃが、一つだけ条件がある!」

俺が聞いたら、デスタムーアさんからそんな言葉が帰ってきた。

「じょ、条件って・・・いいではないですか、デスタムーア様、ただであげても。」

「えーい、お主はだまっとれ!ムドー!!」

「しかし、これぐらいの物なら、ほとんど、ただであげていたではないですか。」

「あん時はあん時、今は今じゃ。」

ムドーさん頑張れ~
デスタムーアさんの言葉にムドーさんが反論してくれた。
うん、ものすごいいい人だ。

「アンナさん、市販の物ではダメなんですか?」(ボソッ)

「市販の物より、こちらの方が品としての品質がいいんですよ」 (ボソッ)

ムドーさんが擁護してくれているけど、旗色が悪いようなのでアンナさんに聞いてみたけど、
市販に売っている物より、デスタムーアさんが直接作った物の方が丈夫で品質もいいらしい。








「とりあえず、これを譲る条件を言うぞ。」

結局、ムドーさんは言い負けた。

「あの、条件次第によっては、俺、断わりますよ?」

これは言っとかないとな。
スカウターは欲しいけど、なにか、とんでもない条件を飲んでまで欲しくないもの。

「な~に大丈夫じゃよ・・・・それに、お主にしか頼めないことじゃ。」

俺にしか頼めないって、なんだろ?

「あ~その前に、アンナちゃん、ちょっと席を外してくれぬか?」

「・・・なぜですか?」

「と、取りあえず、ふか~いわけがあるのじゃ、ふか~いわけがな。」

「はあ・・・・」




(なにか、碌でもないことを考えていそうですね)

アンナはそう思いながら、しぶしぶと席を外した。








「あ~こほん、では小僧、条件を言うぞ。」

アンナさんが席を外した後、デスタムーアさんは真剣な表情で言ってきた。

「なんですか。」

その真剣な表情に思わず姿勢を正しながら、俺は聞いた。

「その条件とは・・・・」

「・・・・・ゴクッ」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「アンナちゃんのぱ・・」

ぱ?

「パンティをもらってきてほしい・・・・それが条件だ。」

「・・・・・・・はい?」

今、この爺さんなんて言った。

アンナさんのパンティ・・・つまり、アンナさんの下着。

アンナさんの下着。

下着・・・・・・


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・えええええぇーーーがぐ!!!!!」

「しーー・・・・大声を出すな。」

デスタムーアさんが俺の口を押さえながら言うけど、
大声も出したくなるは!!!
だって、アンナさんだよ!!!!
あのとんでもないスーパーチート人間・・・じゃなくて魔族の人からもらってこいって言ってるんだよ!!!!!!




「デ、デスタムーア様!!なにを言ってるんですか!!!」

ムドーさんも、驚きながらも抗議の声を上げる。

「仮にも神ともあろう人が、そのようなことを」

「えーい!うるさい!!いいではないか!!!パンティぐらい。」

「・・・・・デスタムーア様・・・・私、なんか頭痛くなってきました。」

ムドーさん・・・・ご愁傷様です。







「で、どうなんじゃ、小僧。」

「どうって、普通に無理でしょう。」

ぜってー殺されるぞ・・・・俺。
そんなこと頼んだら。

「かーーーー!なんと情けない。お主も男なら肝っ玉があるとこ見せてみろ!!」

そんな問題じゃないっての!!

「とりあえず、俺はヤです!」

うん、いくらスカウターのためでも、これはヤだは。

「・・・・小僧、よく考えてみろ」

「な、なにをですか・・・・」

急にまじめな顔をしてきた。

「アンナちゃんほどの美人はそんないるものじゃないぞ。」

うん、それには賛成だな。
あんな、きれいな人、今まで見たことなかったし。

「おまけに性格もよく、清楚で可憐・・・・正にパーフェクト美女じゃ。そんな子のパンティを想像してみろ。」

アンナさんの下着姿・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

いい・・・すごくいい!!

「どうじゃ・・・見たくなったじゃろ。」

はっ!!!

「だ、ダメです、とりあえず、俺はその条件は飲めません。」

あぶない・・・・一瞬でもいいと思ってしまった、自分が恥ずかしい。
だ、だってしかたないじゃい、男の子だもん!!
・・・・・誰に言ってるんだ・・俺は・・・・

「かあーー情けない、いいか「デスタムーア様」 うん?」

デスタムーアさんが、何か言おうとしたら、モニターが現れた。
そこには、受付のお姉さんが映ってた。

「なんじゃ、今取り組み中なのじゃが・・・」

取り組んでないです。
というか、そんなにパンツが欲しいなら、部下の人に頼め・・・セクハラで訴えられるから。

「それが、デュラン様がただいま戻りました。」

受付のお姉さんがデスタムーアさんに告げる。

「デュランが・・・・随分、早かったな・・・・それで、今どこにいるのじゃ?」

デスタムーアさんが、そう言うと・・・

「ここにいますよ、デスタムーア様。」

俺の後ろから、声が聞こえた。

「!!!!」

俺がその方向に目を向けると一人の男が立っていた。
年はだいたい20代後半ぐらい。
肌は赤黒く筋骨隆々とした体。
そして、なにより、その目。
この目・・・俺は見たことがある。

(この人の目・・・・バーダックに似ている。)

俺が半年前戦った、サイヤ人・・・バーダックの目に似ていた。






「随分早かったのぉ」

「あの程度の者・・・・私の敵になると思いますか?」

「まったく、メキメキと力をつけよって。」

デスタムーアさんがデュランさんと話している。
ていうか、よく話せるな・・・・
ぶっちゃけ言うと、デュランさんから感じる気配ってバーダックに似ているんだよ。
つまり、ものすごく怖い。
おまけに感じる力も俺より上っぽいし。





「ところで、デスタムーア様・・・なにをしていたんですか?」

「うん?あーまあーお前には関係ないことだ。」

「・・・・なにやら、密談を交わしてるように見えましたけど。」

密談って、その時から、いたんですか・・・・全然気配を感じなかったぞ。

「後、アンナ殿を放っておいていいのですか?なにやら、怒っているように見えますけど。」

・・・・・・・うん?

アンナさん・・・・・


「・・・・・・・・」

ギギッと俺は、壊れたおもちゃのように後ろを振り向いた。

「・・・・・・・・」

デスタムーアさんも俺と同じように振り向いた。


その先には・・・・・・






「ア、アンナちゃん・・・・いつからそこに」

「デュランさんが来た時、ご丁寧にこちらに通してくれたんです。」

笑顔だ・・・これでもないぐらいって言うほどの笑顔だ。

「あまりにも、遅かったもので、私も気になり、勝手ながら入らせてもらいました♪」

アンナさんが明るい声で言う。

「ち、ちなみにさっきの話・・・・」

「はい♪バッチリ聞いていましたよ。」

その言葉を聞いて、デスタムーアさんの顔は絶望に染まった。
そして、一歩、一歩アンナさんが近づいてきた。
前髪で顔を隠した姿は、今の俺には悪魔・・・・いや大魔王に見えた。

(やばいやばいやばいやばいやばいやばい・・・)

俺の本能が警告している。
あれはとてつもなくヤバイものだ。












--ピタッ--















そして、立ち止まり。
驚くほど、冷たい声で言った。
























「少し・・・・お話しましょうか・・・・」






















あとがき

デスタムーアとうじょおおおおおおおぉぉぉ!!!!

ただし、デスタムーア(笑)だがな!!

・・・・・すいません、こんなキャラにしたのには理由があります。
先ず、ドラクエなどのゲームなどでは大体、魔王として描かれているのですが、魔王として書くと、キャラがバーンとかと被るのでこういう性格になってもらいました。

それに、ゲームなどでは少ししか話さないので、キャラの把握が難しいです。
なので、ほぼオリキャラのようになりました。
・・・・ただし、基になったキャラはいますけどね。

今回の話は、ほとんど神界についての説明でした。
まあ、ぶっちゃけ、DBの世界のあの世と似ていますね。
違うのは、地獄に行った人たちにも、チャンスがあるということですかね。

では、次回。










感想返し

<トッポさん>

作者もそういうイメージで書きました。

大輝の場合、長い時間、十分な設備、優秀な師がいてようやく互角ですからね。
まだまだ、先は長いです。


<nanoさん>

気に入っていただいてうれしいです。

ファイナルスピリッツキャノンも名前の中に最後の魂とあるので、そこからヒントを得ました。

修行については、後々のお楽しみで。


<九尾さん>

うまい、言い方ですね。

IFのラディッツも気に入っていただき、うれしいです。

実際、ああいう終わり方も個人的にはありだと思います。

























[15911] 第十話(休日編 ②)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/22 23:52
第十話(休日編 ②)













「大輝さん、行きますよ。」

「・・・・・・はぃ・・・・・」

語尾が小さくなってしまった。


今俺たちは、クラウドタワーの入り口付近にいる。
目的の物は手に入れたから、次の目的地に向かうためだ。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

え?あの後、どうなったかって?


・・・・・・言いたくない・・・・・・


とりあえず・・・・・

『ぢ、ぢぢ~(涙)』

マージが涙声でいたので、俺はマージを抱きかかえて、頭をなでてやる。
ちなみに、マージは、今子犬ぐらいの大きさになっている。
街中であの大きさは迷惑だろうと、魔法で体を小さくしているためだ。

「ははは・・・・大丈夫だぞ~マージ。」

はは!マージは怖がりだな・・・・こんなに、震えて。


*注意・・・マージ自身が震えているのもあるが、それ以上に、大輝の手が震えているため、余計震えているように感じている。



「なにが起こったんだ!!」

そう言ったのは、警備員の人だ。
まだ若く見える・・・新人だろうか?

「それが、デスタムーア様の研究室が氷漬けになっていまして・・・」

「なっ!!」

その警備員の人は一瞬驚いた表情をしたけど、すぐ顔を引き締めて、どこかに行こうとする。

「おーい、ちょっと待て。」

しかし、その警備員の人を他の警備員の人が止めた。
こっちの人は、年配者に見える。

「なぜ止めるのです!!デスタムーア様の身に何か起こっているのかもしれないんですよ!!」

「あーどーどー落ち着け。」

年配の人は慌てることなく、状況を聞いた。

「なあ、デスタムーア様のもとに、ムドー様とディラン様がいたんだよな?」

「はい・・・・・それは間違いありません。」

「あ~じゃあ大丈夫だろ・・・どうせいつものことだ。」

「い、いつものことって・・・」

若い人が困惑しているとこに、年配の人は安心させるように肩を叩きながら。

「お前も早く慣れろ・・・慣れないと、この先もたんぞ。」

「は、はあ?」

そう言って、警備に戻って行った。




・・・・・とりあえず、これで想像してほしい。
あの時、なにが起こったのかを・・・・・













「あのーアンナさん・・・・次はどこに・・・行くのでしょうか?」

ちょっと声が震えてしまった。

「こっからが本日の目的ですよ。」

目的?


・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


「あの~アンナさん・・・」

「なんですか?大輝さん・・・・・あ!ついでにオリハルコン制の包丁を下さい。」

「はい。いつもありがとう。」

そう言って、気の優しそうな爺さんはアンナさんに包丁を渡した。




今、俺たちがいるのは・・・なんて言ったらいいのだろう。
家具の専門店?っというより、包丁専門店?みたいな場所?
なんか包丁が抜き身で飾ってある。
・・・・うん、なんつうか、そこから感じるオーラ?みたいなのが、明らかに俺が見てきた包丁と違っている。
なんか、すっげー高そう。




「さてと・・・後は食材と・・・バーン様に頼まれたワインも取りに行かないといけませんね。」

アンナさんは確認するように言った。

「あの~結局、俺たち何しに来たんですか?」

俺は気になって聞いてみた。
だって、今のアンナさん普通に買い物している主婦みたいな感じなんだもの。

「何って?買い物ですよ?」

「・・・・マジですか。」

「はい。」



どうやら今日は本当に修行を休みにして、買い物に来たようだ。
・・・まあ、俺も疑っていたわけじゃないけど、本当に休みになるとは思っていなかった。
だって、ずっと修行修行の毎日だったんだもん。




「あの、アンナさん、なんでそんなに包丁を買ったんですか?」

うん、自分で言うのもなんだけど、つまらない話を振ったと思うよ。
だって、仕方ないじゃない・・・女の人と話した経験なんかまったくじゃないけど、そんなにないもの。
それに、気になったのは確かだし。

(なにしろ、包丁十本ぐらい買ってたしな)

だからこそ気になったんだけどな。


「バーンパレスのメイドの皆さんのためです・・・手入れはしているのですが、さすがに毎日使っていると傷んできます。なら、この機会に古くなったものは全部変えようと思いまして。」

ふ~ん・・・そう言えば、アンナさんメイド長もしてるんだっけ?

(なるほどねぇ~)

俺は一人でウンウンっと納得していた。
しかし---

「それに、あの時大輝さんに渡した包丁がダメになってしまいましたからね。その代わりを買おうと思いまして。」

その言葉を聞いて、その場に立ち止まってしまった。




(そういや、そんなこともあったなぁ~)(汗)

俺が思い出すのは、マーシャの世界でのことだ。
あの時、バトルレックスに投げた包丁が、見事腕を切り落としたんだけど・・・
俺からみれば洗えばいいそうな気がしたけど、アンナさんから見れば、とてもじゃないが使える状態ではないらしい。
まあ、当然っていえば当然かな?
なにしろ神様に出す食事なわけだから、あんな血がべっとり付いた包丁じゃ、衛生上よくないだろうしな。




「えっと・・・・ちなみにあの包丁・・・・おいくらぐらいなんでしょうか?」

かなり変な言葉遣いになってしまった。

「そうですね・・・あの包丁はオリハルコン制なので・・・・」

今、なんかすっげーヤバイ単語が入っていたぞ。
オリハルコンって、下手したら伝説級の武具になるぞ。
・・・・ていうか、そんな貴重な金属、包丁に使うって・・・どんだけだよ!!!

「約一万G―ゴールド―ぐらいですかね。」

「ちなみに、それって日本の円に直すと、どれぐらいになるのでしょうか?」

1万Gね・・・・頑張れば弁償できる値段かな?
アンナさんは「気にしないで下さい」って言ってくれたけど、やっぱしねぇ~

「そうですね・・・・だいたい1Gが一万円です。」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・大輝さん?」


--スゥ--


俺は何も言わず、二、三歩下がった。
そして、地面に正座し・・・・・・







「すいませんでした!!!!」







地面に埋まるぐらい頭を下げた。


そう!!!これこそ日本人特有の謝り方!!!!
謝罪の中で最上級の意味を持つ謝り方!!!
その名は・・DO☆GE☆ZA!!!!











「まったく・・・・もう、あんなことしないで下さいね!!」

アンナさんは恥ずかしそうに顔を赤くしながら言った。



今思ったけど、周りを確認しなかった俺も悪かったな。
街中で・・・・しかも、美人さんに土下座をしている男・・・・
絵図で見ると、ものすごい変なふうに見えただろうな・・・・





恥?




なにそれ?おいしいの?






だって一万Gだよ!!!!



1Gが日本円で一万だよ!!!!!



つまり、俺がダメにした包丁は


一万×一万で一億円!!!!




これが許されるなら、土下座の一つや二つ!!!
恥なんか捨ててやるわ!!!!!





つーかどんだけ、インフレ価格だよ!!!
Gって各世界の共通硬貨らしいけど、世界全体でインフレしすぎだろ!!
ていうかゲームの薬草って確か8Gぐらいだったよね!
薬草一つ八万円・・・・・





うん・・・・・
これから、ゲームでもっと大切にしよう。


















「ううぅ・・・」

「・・・大輝さん、私は気にしてませんから元気出して下さい。」

アンナさん・・・今はその優しさが辛いです。





あの後、アンナさんに慰めながら、買い物を続けた。
だけど、俺の心はものすごい罪悪感でいっぱいだった。

(一億円・・・・・)

普通に考えれば、俺の一生かかるかどうかで弁償できるかどうかの額だよな。
アンナさんは別にいいって言ってくれてるけど・・・・・ねえぇ・・・


おまけに・・・・・



「ふ~さて、次に行きますか。」

そう言ってアンナさんは宙に手をかざしたかと思うと・・・


--ズウゥン--

空間が割れて、アンナさんはその中に買った荷物を入れた。



俺、なんの役にもたってないし・・・・・








今、アンナさんが使ったのは、次元魔法--ディメンション・マジック--の一種だ。
簡単に説明すると、空間を自由に作れる魔法だ。
さっきアンナさんが使ったように、荷物などをしまったりするなど、俺が修行している空間もこれを使って作られたそうだ。
まあ、これはレベルに作用されるそうだけどな。
例えば、レベルの高い人は国一つが入れるぐらいの空間を作れるけど、低い人はせいぜいポーチぐらいの小さな空間しか作れない。
それでも、この空間の中は外の空間より物の保存に優れている。
だから、この魔法を使える人は貴重品とかはこの空間に入れているそうだ。
要するに、保存に便利な持ち運びできる金庫って言ったとこか。





うん、ものすごい便利な魔法だよな。
けれど、今の俺にはその便利さが憎く思った。
だって、一億円なんて品物ダメにしたのに笑顔で許してくれたんだぜ、アンナさん。
そこまでいったら、男として・・・いや!
人としてなにかしたいと思うじゃないか!!
・・・・けれど、ぶっちゃけ言うよ俺が荷物持ちをやるより、アンナさんの亜空間に入れは方が安全だそうだ。
ううっ・・・ねえ、俺っていらない子(涙)











「はあああぁぁ~~」

買い物が終わって、今は街中を歩いている。
結局俺は何もすることがなかった。
まあ、相手がいいって言ってくれているんだから、いつもなら、こんなに気にしないんだけど・・・・今回のレベルだとねぇ~
さすがに罪悪感が沸くわ!
で、アンナさんに「何か手伝えることないですか?」って聞いてみたけど、
「それでは、修行を頑張ってください」っていつもの柔らかい笑みを浮かべながら言われた。
うん、たぶんアンナさんは俺に気を使って言ってくれたんだと思うけど・・・これじゃ胸の中の罪悪感は晴れなかった。
だって、修行は俺が生き返りたいためにしていることだし・・・まあ、アンナさん達も聖魔八武具を集めるって目的があるだろうけど、
それって、結局アンナさん個人に対してのお詫びにならないし。
で、「それ以外に何かないですか?」って聞いたよ。
それでもアンナさんは、「大丈夫ですよ」って言うだけだった。
でも、俺も引き下がらず聞いたよ。
やっぱり、人としてこれ以上引き下がれないもの。
で、結果、アンナさんが折れてくれて「では、仕事を紹介しますので、そこから少しづつでいいから返して下さい。」って、少し困った顔で言われた。
まあ、ちょっとしつこいように思ったけど、やっぱし人として最低限の礼儀は返さないとね!!
・・・・仕事ってのは気になるけど









(にしても・・・平和だな~)

俺は街の風景を見ながらそんな感想を抱いた。




なんつうか、いつも修行の毎日だったから、こんな気持ちになったのは久しぶりだな~
・・・・まあ、体感時間としてはそんな久しぶりのように感じないけど。






なにしろ、あの空間は時間の流れが違いすぎるからな。
具体的に言うと、あの修行用の空間での10年が俺たち地上世界の1日に当たるそうだ。
つまり、俺は50年間修業したけど、地上では五日間しか時間が経ってないということだ。
で、俺が体感する時間の流れは地上世界が基準になる。
要するに、今の俺は死んでから五日間しか経ってない状況と同じということだ。




だからこそ、そんなに久しぶりって感じじゃないんだよな。
今の俺の感じとしては、家に引きこもっていて、五日ぶりに街に出た感じだからな。
まあ、一回マーシャの世界に行ったことがあるけど、あの世界に人はいなかったからな。
だから、こうして人と触れ合うのもなんか、久しぶりって言うより、変な感じだな。








--ぐうぅ~--

「・・・・・・あ」

今鳴ったのは、俺の腹の虫だ。
なんか随分久しぶりに鳴ったから気付くのが遅れてしまった。
なにしろ、あの空間では物を食べる必要がないからな。

「ふふっ・・・大輝さん、そろそろ昼食にしましょうか?」

「えっと・・・・はい。」

どうやら、アンナさんにも聞こえていたようだ。
うん、今度は自覚がある分さっきの土下座よりめっちゃ恥ずかしい~

「何を食べたいですか?」

「え~と・・・アンナさんにお任せします。」

俺はこの世界のこと知らないから、任せて大丈夫だろ・・・料金もアンナさん持ち出しな。
・・・・・おい!今、俺のことヒモって思ったやつ出て来い。
仕方ねえだろ!!俺、文字通りの一文なしなんだから!!
ううぅ・・・このなんとも言えない、不甲斐なさというか、なんともいえないこの気持ち・・・・おまえらに解ってたまるか!!(涙)











「あれ?」

「どうしました?大輝さん?」

いきなり立ち止まった俺に対して、アンナさんは気遣うように声をかけてきた。

「いや・・・その・・マージが。」

「マージ?」

俺の言葉を聞いて、アンナさんも気づいたようだ。
さっきまで、俺の隣を歩いていたマージがいつの間にかいなくなっていた。
迷子か?・・・・そう思ったが、周りを見渡すとすぐ見つかった。

「・・・・・」

マージは俺たちの後ろの方にいた。
どうやらはぐれたわけではなく、ただ立ち止まっていたようだ。

「おーい、マージどうした?」

俺は気になって聞いてみたけど、返事は帰ってこなかった。
そこで、俺は近くによってみたんだけど・・・そこでおかしなことに気付いた。

『う~』

なんか、クンクンッとなんかあっちこっち匂いをかいで、頭をひねってる。

「マージ?」

俺は再び声をかけようとしたんだけど・・・・その前にマージが走り出した。

「ちょ!!」

急に走り出したのと、走るスピードが尋常じゃないのに驚いてしまった。

「アンナさん!!ちょっと待っていて下さい!!」

俺はアンナさんにひとこと言って、マージを追った。















「たく、マージのやろぉどうしたんだ?」

俺はマージの行動に疑問を覚えながら追っていた。
マージの体は今は子犬ほどの大きさだ。
そのため、何回か見失った。
けれど、だてにずっと一緒にいたわけじゃない。
マージの気は完璧に覚えている。
それを辿っていけば、見失ってもなんとか追いかけることができる。










「マージ!!」

人ごみの中を走ったためか、何回かぶつかりそうになった。
で、その人ごみを避けて、ようやく見つけたんだけど・・・・

(何やってんだ?あいつ?)

マージは女の人に抱きついていた。
マージは人懐っこいとこがあるけど、さすがに初対面に人に抱きついたりしない。
・・・・まあ、あの空間では人が俺やアンナさんぐらいしかいないせいかもしれないけど。







「こら!!お前何やってるんだ!!!」

俺は少し怒りながらマージに声をかけた。
さすがに、いきなり人に飛びつくようじゃ注意しないといけないしな。

「その、すいません・・・うちの奴が迷惑をかけまして。」

俺はマージが抱きついていた、女の人に頭を下げながら謝った。

「お前は・・・・大輝・・・か?」

俺は女の人の言葉を聞いて、驚いた。




この世界で俺の名前を知ってるのは、アンナさんぐらいなものだ。
まあ、名前だけならさっき会った、デスタムーアさんとかも知ってるだろうけど・・・多く見積もってもこれぐらいなものだ。
どういうことだ?俺は疑問に思いながら頭を上げた。




「!!!!」


俺の目に入った女の人は全然記憶にない人だった。
それこそ、地上世界であったこともない人だ。
けれど、その人から感じる気は俺が感じたことがある気だった。
忘れもしない・・・この気は!!!









「マー・・・・・シャ・・・・?」

『ははーーー』(涙)

言葉は違うけど、俺とマージはその人を指す言葉を同時に言った。





























あとがき

どうも、作者の天魔です。

今回は続けて休日編をお送りしました。

今回出た大輝が修行している空間の説明を書きましたが、まあ、あれです・・・DBの精神と時の部屋の強化版だと思ってください。
違うのは、時間の流れや、その感じ方ですかね。

さて、次回はマーシャがなぜいるのか?なぜ人になっているのか?・・・その理由の話です。

次回の更新ですが、なんとか早く投稿しようと思いますが、作者の都合で遅くなるかもしれません。

楽しみにしてくださってる皆様には申し訳ありません。

では、次回。











感想返し


<トッポさん>

そのイメージで合っています。

白い魔王?・・フフッ甘いですよ!!
こっちの魔王はあれよりも恐ろしく強大ですよ。

デスタムーアの活躍は・・・たぶん、かなり後になると思います。
それまで、楽しみに待っていてください。


<nanoさん>

気に入っていただき嬉しいです。

大輝はさすがにできませんね。
基本的に命は大事にしますから。


<九尾さん>

ある意味、最高ランクの任務!

ムドーの場合、戦う以前の問題ですね。


<エロ紳士さん>

まさか、こんなミスをしていたなんて・・・・
教えていただき、ありがとうございました。



























[15911] 第十話(休日編 ③)
Name: 天魔◆b849f691 ID:f457d478
Date: 2010/05/23 00:25
第十話(休日編 ③)
















ワイワイとたくさんの人達が楽しそうに食事をしている。
学生・家族・カップル・・・・様々な人達が、食事を楽しみ、談笑をしている。
そんなどこにでもある風景の中に一つだけ、やけに目立つ風景があった。

「ふーむ・・・こんなとこに入ったのは初めてだが、かなり種類があるのだな。」

『母ー私はこれが食べたいぞ!』

「ふふっ・・・マージ、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。」

一人の女性がメニューと睨めっこをしている。
誰が見ても美人と評するぐらい美しい人だ。
そして、その美女の膝に座っている子犬を窘めている女の人がいる。
こちらも、容姿端麗だ。



そんな光景を周りの人たちは恍惚とした表情で見ていた。
無理もないだろう・・・・・その人達は誰が見ても美女と評する容姿なのだ。
そんな人が二人もいるのだ・・・・男だったら思わず見惚れてしまうだろう。
しかし、その視線の中には好意的なものではない物も含まれている。
主に女性が向ける視線には嫉妬という感情があった。
これは仕方ないだろう・・・同じ女性なのだから、そんな綺麗な人に対して、思わず妬みの感情を抱いてしまうこともあるだろう。
そして、男性からは恨みや妬み・・・・中には殺気も含まれていた。
言っておくが、この感情は女性たちに向けられているものではない。
では、誰に向けられているのだろうか?


それは―――――




(なに?この空気・・・・・)(汗)





それは、女性たちの対面に座る男性・・・大輝にのみに注がれていた。


















マーシャとの再会を果たした後、俺達はファミレスに入って昼食をとることにした。
アンナさんが落ち着いたとこで話した方がいいと提案したからだ。
これには正直言って助かった。
なにしろ、マージは抱きついたまま泣きじゃくっていたし、俺も俺で混乱していたからな。
そこで、昼食も重ねてファミレスに入ったわけだ。
ちなみに、この世界は魔物なんかを連れている人がいるため、小型の魔物なら店に入っても大丈夫だそうだ。
で、フャミレスでメニューを見て、何を頼もうか選んでるんだけど・・・・・


(ううっ・・・あたり一帯から殺気が・・・・)

そんなんだよ!
なんか、周りの客(男)から殺気を向けられているんだよ!!
・・・・いや、原因は解ってるよ。
十中八九、アンナさんとマーシャだろうな。
ぶっちゃけ、この二人が揃っているだけで、ものすごい絵になる。
つーか、マーシャ・・・こんなに美人だったんだな・・・・・・
というより、こんな美人二人と向かい合わなければいけない俺の気持ちを察しろ!!周りの男ども!!

「♪♪♪」

マージよ・・・・母と会えて嬉しいのは解るが、できれば父のもとに来てほしい。
ううっ・・・癒しが・・・癒しがほしい・・・・






「大輝さんはお決まりになりましたか?」

「ふぁい!!」

俺がこのいたたまれない空気の中に悩んでいたら、アンナさんが聞いてきた。

「えーと・・・・まだです・・・」

いかんいかん!周りのことに気を取られすぎた。
どうやら、アンナさん達はもう決まったようだ。
俺も早く決めないとな。

(さーて、どれにするかな?)

俺はメニューに目を落したんだけど・・・・

「・・・・・あのーアンナさん・・・なんか、普通に4Gとか5Gって書いてあるんですけど・・・」

「はい・・・だいたいそれぐらいが普通ですよ・・・」

いや、普通って値段じゃねえだろ。
だって、この価格地上世界に直したら、4万とか5万だぜ!
どうみてもぼったくりだろ!!

「大輝さん、ここではそれが普通ですよ。」

俺がそんなことを思ってると、アンナさんが話しかけてきた。

「そもそも、この世界と大輝さんの世界とでは価値観が違いすぎます。なので、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ・・・・・そうですね、大輝さんの世界の価値観で言えば、この世界の1Gはだいたい百円だと思って下さい。」

百円て・・・なんか一気に下がったな。
でも、それなら納得かな。
このハンバーグとかもだいたい地上世界だと400~500円出せば食えるしな。
そんな感じなんだろうな、この世界では。

「え~と・・・それじゃ・・・」

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

『ハグッハグッ』

「ふふっ、マージ・・・そんなに慌てなくても誰もとらないから、ちゃんと噛んで飲み込め。」

肉の塊に食らいついてるマージにマーシャが注意した。
俺は無難にハンバーグセットを頼んで、アンナさんはパスタを頼んだ。
で、この親子は揃って肉の塊のような物を頼んだ。
やっぱし獣系だったから、肉が好物なのかな?
マージも良く肉を食ってたしな。
というより、マーシャ・・・その姿ではちゃんとナイフやフォークを使おうな。
いきなり齧り付いたのにはビビったぞ・・・・







(ふー食った食った♪)

うん、やっぱし飯を食べるってのはいいな。
あの空間だと、飯を食べてもいいんだけど、正直言って俺にそんな余裕なかったしな。
主に修行でぶっ倒れるため。





「うむっ・・・」

「どうかしましたか?マーシャさん?」

マーシャが顔を歪めたのを見てアンナさんが心配そうに聞いた。

「いや・・・この、こーふぃ・・・というものが苦くてな・・・」

そう言いながら、舌を出しながら顔を歪める。
・・・ちょっとかわいい

「ブラックなんか飲んでいるからだろ、ミルクや砂糖を入れればマシになるぞ。」

こいつ、頼んだコーヒーをなにも入れないで飲んだんだ。
ブラックは慣れていない人じゃないと、キツイだろうな。

「う・・む・・・」

しかし、ミルクと砂糖を入れても、どうやらお気に召さなかったらしい。
というより、お前絶対初めてだろ!コーヒー飲んだの。

「お前なんでコーヒーなんか頼んだんだ?」

俺は気になって聞いてみた。

「いや・・・皆が飲んでいるのを見て、興味が沸いてな。」

帰ってきた返事がそれだった。
・・・・・こいつ、周りに左右されやすい性格なのかな?







「♪♪♪」

マーシャはご機嫌そうに目の前の物を食べている。
ちなみに、今口の中に含んでいるのはコーヒーではなく、パフェだ。
苦いのを口にしたから口直しに頼んだんだけど・・・・

「かわいい・・・」

思わず口に出してしまった。

「かわいい・・・だと。」

案の定マーシャに聞こえていたようだ。

「あ!・・・うん、なんかマーシャが食べている姿って、子供が食べている姿みたいで・・・・」

ちなみにこれは本当だぞ。
なんか、マーシャが食べている姿ってものすごく微笑ましいんだよな。
まあ、女性としてでなく、子供が食べている時の微笑ましさって言った方がいいのかな?
所謂色気ではなく、保護欲みたいなものだな。

「・・・・馬鹿にするな。」

そう言って、マーシャはそっぽを向いてしまった。
昔あった時に感じた厳格のイメージと全然違うな。
・・・なんだろ?このマーシャをみていたら、こう・・・ムクムクと悪戯心が浮かんできた。

「いや、マーシャはかわいいぞ」

我慢できず、つい言ってしまった。

「・・・・・・」

「それにものすごい和むぞ~」

「・・・・ふんっ!!」

「がっ!!」

スプーンを投げられて、見事に額にクリーンヒットした。
・・・・・ちょっと調子に乗りすぎた・・・



それにしても―――



(幸せそうに食うな・・・こいつ)

パフェを食べているマーシャは俺より年下に見えた。
外見的には俺より年上だよ・・・ただ、食べている姿が俺にはそう見えただけだ。

(本当に幸せそうに食うな・・・やっぱし人間になっ・・・て!!)

「そうだ!!!」

――ガタ――

俺は思わず大声を出しながら立ってしまった。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・えっと・・・・すいません。」

周りの人の視線を一斉に受けた。
・・・・うん、恥ずかしいは。




「どうしたのだ?大輝?」

マーシャは不思議そうに俺を見てきたけど・・・・ぶっちゃけ、お前が原因だ!!

「お前!なんでここにいるの!!?というより、なんで人間になってるわけ!!?」

俺は声を荒げながら聞いた。
当然だ・・・死んだと思ったやつが生きてるし、しかも人間になってるんだから。

「うーん・・・・そんなこと言われてもな・・・・」

マーシャは困った顔をしながら考える素振りを見せる。
そして、考えが纏まったのか、口を開いた。

「先ず、ここにいる訳だが・・・簡単に言うと神には興味がなかったからだ。」

「神?」

「ああ・・・・あの後、気付いたら周りに雲が浮かんでいる奇妙な場所にいてな。そこにいた、体が青く角が生えた人間に宮殿のような建物に案内されたのだ。」

えーと・・・それって?

「恐らく閻魔大王様の宮殿ですね。」

俺が?を浮かべているのに気付いたのか、アンナさんが説明してくれた。

「うむ・・それだ。」

アンナさんの説明を聞いたマーシャは相槌を打って、再び説明しだした。

「その閻魔大王という者に私が死んだことを聞いてな・・・」

「・・・・・あ」

マーシャの言葉を聞いて俺は気持ちが沈んでしまった。
さっきからこいつ、普通にすごしてると思ったけど・・・・一回死んだんだよな。

「気にするな、大輝。」

少し気まずい雰囲気になっていたら、マーシャが気遣うように言葉をかけてきた。

「もともと私の寿命は近かったのだ・・・そんな体でお前達を守れたのだ。それに私は誇りに思うぞ・・・最後まで主との誓いを守れ、尚且つ子供達を守れたのだから。だから、お前もそんなに気にするな。」

そう言って、マーシャは太陽のように眩しい笑顔を浮かべた。
・・・・ちょっとドキッとしてしまった。







「さて・・・話を戻すぞ。」

マーシャはそう言って、姿勢を正した。
俺も姿勢を正し、聞く姿勢になる。

「その閻魔大王の宮殿でこの世界のことを説明されてな・・・それによると私の生前の行為は十分肉体が与えられるほどの善意だったので、肉体を与えられたわけだ。」

・・・そういえば、生前英雄って言われていた人には肉体が与えられるんだっけ?
そうすると、マーシャは文句なしの英雄だな。
なにしろ、文字通り森のモンスターのために頑張っていたからな。

「で肉体をもらった後、神界に行かないか?と聞かれたけど、私は別に神になるなど興味がなかったのでな・・・その誘いを断って今はこの世界に住んでいるということだ。」

ふーん・・・けれど・・・

「それって、いいのか?」

だって、肉体をもらっているってことは、神界で修行しなくちゃいけないんじゃないの?
生き物を蘇らせるのは基本的に禁止されてるって、バーンさんも言ってたしな・・・・

「問題ないですよ・・・」

俺の疑問にアンナさんが答えてくれた。






肉体を与えられる=必ず神になるって、決まりはないらしい。
無論できるだけ神になるよう修行してもらえるのが望みだけど・・・基本的には本人の意思に任せるそうだ。
まあ、中には現在の神様とかが直接推薦するような人もいるらしいけどな。
で、肉体を与えられた人にも様々なタイプがいる。
神界にとどまり神を目指すもの、神界以外の世界にいながら神を目指す者、マーシャのように神に興味がなく平和に暮らそうとする者・・・・
等と言った様々なタイプの人がいる。
これは当然て言えば当然だ・・・なにしろ、幾多の世界の人達が集まるわけだから、考え方に違いが出てきても不思議ではないだろう。
そして、こう言った人達は基本的には死なない。
これも当然だ・・・なにしろ、すでに死んでいるのだからな。
けれど、肉体をもらった人が永遠に生き続けるかと言えばそうではないらしい。
なにしろ、その気になれば億単位で存在できる訳だからな・・・しかし、そこまで行く人はほとんどいないそうだ。
早い人だと、十年ぐらいで輪廻の輪に入る人もいるそうだ。




そして、バーンさんが言ってた、蘇らせることについてだけど・・・これは本当の意味で蘇らせるのを禁止しているようだ。
例えば、今のマーシャには天使のようなリングが頭に付いている。
これは、死んだ人の証しだそうだ。
そして、こう言った人が行き来できる世界は、神界の他には極一部の世界だけと限られている。
つまり、神と言う存在が認識されている世界に限るため混乱は起きないようだ。
けれど、中には例外で神が認識されてない世界にいける人とかもいるみたいだ。




要するに、死んだあと肉体を与えるというのはある意味ご褒美みたいなものだな。
・・・もっとも、暮らしている内に神を目指さないか、という思惑も入ってるよいるようだ。










アンナさんの話が終わった。
俺は一息つくため目の前の飲み物に手を伸ばした。

「♪♪♪」

うん、やっぱし、久しぶりに飲む炭酸飲料はおいしい。

「で、人間になってる訳は?」

一息ついた後、俺は再び質問する。
ぶっちゃけ、こっちの方が気になっていた。

「別に大したことではない・・・この世界に来る前に人間になれる術があると聞いたのでな。その術を使って人間になったわけだ。」

「?????」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・アンナさん、お願いします。」

「はあー・・・解りました。」

アンナさんはため息をつきながらも説明してくれた。
なんか、すっかし説明役が板についたな。




アンナさん曰く、強大な力を持った魔物ほど「人間」の形に近い。
強大な力を持った魔物は魔族となんら変わりはない。
そして、魔族というのはほとんど俺達人間と見た目はそんなに変わらない。
すなわち、どちらも「人」の形というわけだ。


この「人」の形は生き物の中では「究極の形」とされているようだ。
そのため、どんな魔物でも本能的にそれに憧れる者だそうだ。


その中の一定のレベルに達した魔物はその「人」の形になれる。
そういった魔物は並の魔物なんかでは相手にならないほど強大な力を得られるそうだ。







「アンナが言った通りだ・・・それに、あの姿(ヘルゴラゴ)よりこの姿(人間)の方がなにかと都合がいいのでな。」

マーシャはアンナさんの説明に頷きながら俺に言った。

(ふーん・・・人の形ねぇ)

俺はと言うとアンナさんの説明を自分なりに考えていた。







自分が人間だったから気が付かなかったけど・・・言われてみればそうなのかな?
単純な話、人間とライオンが戦ったらどっちが勝つ?っと聞かれれば、ライオンだ。
これは当然だ、なにしろスペックに差がありすぎるのだからな。
しかし、これが同程度のスペックだった場合はどうなる?


例えば、二足歩行の人間と四足歩行の人間が戦った場合と聞かれれば解りやすいだろう。
この戦いはどちらが勝つ?と聞かれれば、間違いなく前者だろう。
先ず、両手が自由に使えるというのは大きなアドバンテージになる。
両手を使い相手に技をかけることもできるし、何よりも道具を使えるというのが大きい。
そう考えた場合、同じスペックでは「人」の形の方が優れているというのも頷ける。







「そう言えば、まだ礼を言ってなかったな・・・感謝するぞ、大輝。」

唐突にマーシャがお礼を言ってきた。

「・・・なにが?」

心当たりがなかったので、疑問形になってしまった。

「森の奴らを守ってくれたことだ・・・正直言って驚いたぞ!!」

「よく、あのバトルレックスに勝てたな。」

マーシャはそう言ってきたけど・・・それって、

「・・・なんで」

「うん?・・ああ、この世界に来る前に私がいた世界の様子を見せてもらったのだ。そこで皆の生存を知ったのだ・・・皆を守ってくれたのはお前ではないのか?」

いや、確かにそうだけど・・・

「バトルレックスを倒したの・・・お前だぞ・・・」

「なに?そんなはずないだろ?」

「いや、でも本当なんだって・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「アn「ご説明します」・・・よろしくお願いします。」





アンナさん説明コ~ナ~☆



・・・・・まあ、これは冗談として、マーシャが首だけで動いたのは恐らく魂のエネルギーを使ったからだそうだ。
この魂のエネルギーは例え使用者が瀕死の重傷を負っていても強力な力を引き出せるからな。
そして、マーシャが覚えてない理由だが、恐らく無意識のうちにこの力を引き出したからだそうだ。
・・・あの状態であれだけの力を出せるって・・・・・
昔何かで見たけど、女は男より強い・・・そして、母は女より強いって言ってたけど・・・・・本当なんだな。







「ふーむ・・・そんなことが・・・」

アンナさんと俺の話を聞いたマーシャの反応は本当に覚えていないようだった。

「そ・・・だから、俺の方がお礼を言う立場なわけ・・だから、ありがとう・・・・マーシャ。」

俺は頭を下げながらお礼を言った。
これはちゃんと言っとかないとな・・・なにしろ、あの戦いはマーシュが助けてくれなかったら本当に危なかったしな。

「うーん・・・」

しかし、マーシャは少し困った顔をした。

「しかし、お前が助けてくれたのは事実だろ・・・なら礼を言うのは私の方だ。」

「いやいや、この場合俺の方から言うのが正しいだろ。」

「いや、しかしな・・・・」

「だから・・・・」

互いに譲らない俺達。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「「ククッ・・・クハハハハハハッ!!!」」

そして、その子供みたいなやり取りに、つい笑い出してしまった。

「・・・まったく、お前って結構頑固だったんだな。」

「その言葉、そのまま返そう。」

俺の言葉にマーシャは笑みを浮かべながらそう返した。

「そんじゃま!互いにお礼を言うということで。」

「そうだな。」

そう言って、俺達は互いに姿勢を正し。

「「ありがとう、マーシャ(大輝)」」

と、互いにお礼を言いあった。








「ありがとうございました。」

食事も済んだので、俺達は会計を済ませ店を出た。

「お前達はどうするんだ?」

マーシャが聞いてきたので、俺は次の予定をアンナさんに聞いてみたけど・・・・

「そうですね・・・買い物はすでに済ませましたから、この後の予定は特に決まっていませんね。」

とのことだ。
それならってことでマーシャと一緒に観光に行くことに決めた。

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

楽しい時間はあっという間に流れる。
どこかの誰かが言ったか知らないけど、俺はその言葉を現在進行形で体験していた。

「そろそろ時間ですね・・・」

アンナさんは時計を見ながらそう呟く。




あの後、俺達は観光でいろいろな場所を回った。
ゲームセンターみたいな場所や今評判の甘味屋など、それほど特別な場所ではなく、学生とかが行くような場所だ。
初めはこれでいいのかな?って思ったけど、マーシャもアンナさんもこういった場所はあまり来た事がないらしく、それなりに楽しめた。
まあ、唯一特別?みたいな場所はマーシャの仕事場を見学したことかな?
いくら肉体を与えられるほどの行いをしたとはいえ、それほど特別扱いはされないようだ。
物を買うにはお金が必要だ。そして、お金を稼ぐには仕事が必要だ。
そのため、この世界では肉体が与えられた人のために仕事を紹介する機関が存在するそうだ。
ちなみにマーシャは宅配業をしているようだ。
本人曰く、体を動かしているほうが性に合っているとのことだ。






『うっ・・・ぐ・・ひっぐ・・・うう・・ははー』(涙)

「泣くなマージ・・・また会いに来ればいいだろう。」

マーシャはマージの頭を撫でながら優しく言う。
夕日に照らされたその顔は慈愛に満ちていて、正しく母の顔だった。

「なあ、本当にマージと別々に暮らすのか?」

その様子を見て、思わず聞いてしまった。
だって、誰が見ても幸せな光景に見えたからだ。

「ああ・・・それに先ほども言っただろ。お前にこれほどの恩を受けたのだ・・・ならばその恩を返すのが通り。それにマージはお前と“名付け”の儀式をしたのだからな。」

しかし、マーシャから返ってきた返事は否定の言葉だった。





M・M(モンスター・マスター)という職業をご存知だろうか?
簡単に言うとモンスターを仲間にし互いに助け合いながら冒険をしていく職業だ。
そして、そのM・Mには“名付け”という神聖かつ大切な儀式が存在する。
これは、M・Mがモンスターに名前をつける儀式のことだ。
行為自身は簡単だが、これは大切な儀式なのだ。
なぜなら、“名”というのはM・Mとモンスターの絆を繋ぐ物なのだからな。
絆そのものと言ってもいいだろう・・・この儀式があって初めてM・Mという職業が成立するのだ。




大輝とマージもこの儀式を済ませている。
しかし、大輝はだからどうした?っと言う気持ちだった。
いくら自分がその儀式をいているとはいえ、もう会えなくなるわけではない。
なら、別に一緒に暮らしても問題ないのでなはいか?っというのが大輝の気持ちだ。


しかし、マーシャにはある思惑があった。
恩を返すというのも含まれているが、それ以上にマージに一人前になってほしかった。
大樹に受けた恩は母である自分が返せばいい・・・しかし、それをするとマージ自身の成長につながらない。
それでは、かつて自分がいたあの森の魔物たちの二の舞になる。
マージに肉体的にも精神的にも成長してほしい・・・それが、マーシャの心情だった。








『う~~~』

マージは唸りながら俺とマーシャを交互に見ている。
やっぱり、一緒に暮らすのが諦め切れないらしい。

「アンナさん・・・なんとかならないんですか?」

俺はアンナさんに期待をこめながら聞いてみた。

「無理ですね。」

しかし、帰ってきた返事はそれだった。

「マージの場合は大輝さん個人のモンスターという形をとれば問題ないですが・・・マーシャさんの場合はさすがに無理がありますね・・・・それに・・・・」

「それに?」

「・・・・・いえ、これは私が言うことではありませんね。」

そう言って、アンナさんはマーシャを見たまま黙ってしまった。






アンナは気付いていた。
マーシャが自分の名前にどれだけの想いが込められているのかを。
そして、その想いをどれだけ大切にしているのかを。
だからこそ、アンナはマーシャの想いを優先させたのだ。
それに―――


(やはりマーシャさんはお母さんなんですね)


どうやら、同じ女性同士、何か通じるものがあったようだ。








「ほら、そろそろ帰る時間だぞマージ。」

『う~~~~~~』

マーシャに言われて、マージは渋々と俺たちのほうに向かってきた。
どうやら、いまだに諦め切れなかったらしい。

『・・・・あ!!』

しかし、途中で何かを思いついたような声を上げた。

(なんだ?)

俺はマージが向いていた方向に目を向けてみた。
マージがその方向に目を向けた瞬間に声を上げたからだ。

(あれは・・・家族・・・か?)

そこには、楽しそうにしている家族がいた。
父親と母親・・・そして、女の子がいるどこにでもいるような家族だ。

『父ー!!父と母と一緒に暮らせる方法があったぞ!!!』

マージは名案が思いついたとばかりに声を上げた。
そして、次の瞬間ある意味で爆弾を落とした。




























『父と母が結婚して夫婦になればいいんだ!!』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

さーて、この子犬さんは何を言ったのでしょうね。



夫婦・・・・つまり結婚した男女



つまり人生のパートナー


「・・・・・・・」

『・・・・・・・』

「・・・・ニコ」

『・・・・ニコ』

俺が微笑みかけたのを見てマージも微笑む。
うんうん、かわいいいよな~

--スウゥ--

『??????』

マージに向かって俺は手を伸ばす。
マージは不思議そうに???を浮かべていた。





--ギュウー☆--

『いひゃい・・・いひゃいぞふぃふぃー』(痛い・・・痛いぞ父ー)

そして、俺はマージの人間で言う頬の部分引っ張った。
おー♪おー♪よくのびるなー♪

「お前・・・なに考えてるんだ?」

『ひゃ、ひゃってふゃふうはひっひょにひふもんひゃって』(だ、だって夫婦は一緒にいるもんだって)

いや、そうだけどさ・・・・

「普通に無理だろ・・・・それ」

うん、無理だな・・・・俺にそんな甲斐性ないし









「ふむ・・・結婚か・・・・」

マーシャはそう呟いた後、悪戯を思い浮かべたような表情を浮かべ・・・・さっきよりも、強力な核兵器を落としてきた。

























「なら・・結婚するか・・・・大輝。」












































お~この世界の夕日も綺麗だな~

『父・・・現実逃避はよくないぞ』

マージ・・・少し黙ってような~

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

OK☆OK☆

落ち着こうな~



先ずマージは結婚しようといったな





うん、これはおかしくないな



だってマーシャは男で俺は女だから・・・結婚はできるよな





うん?




なんかおかしいか?・・・・・・・ま!いいか











「ふふふっ・・・どうしたんだ?大輝?」

マーシャは笑みを浮かべながら近づいてきた。

(くっ!!)

スカウターの数値が上がっているだと!!!!

(戦闘力・・3000・・・4600・・・6200・・・・まだ上がるだと!!)

(8400・・・12000・・・・23000・・・「ピピッ」 ッ!!)

ば!馬鹿な・・・スカウターでは測りきれないというのか!!!

(これが噂のニコポの力だというのか!!!)

ニコポ・・・・なんて恐ろしい!!!!!

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

よーしよーし・・・落ち着こうな
俺はブンブンと頭を振って冷静になろうとする。

「ふふふっ・・・」

マーシャはそんな俺をおかしそうに見つめていた。







(ううっ・・・///////)

恐らく今の俺の顔は夕日に照らされているときよりさらに赤いだろう。
だって、女性にこんなこと言われたの初めてだし。
そんなこと言われると、嫌でも意識してしまうわ!!




マーシャの見た目の年齢は20代前半ぐらい。
キリっとした目に整った顔・・・“かわいい”ではなく“きれい”という言葉がよく似合う。
髪は赤に近い茶色で腰付近まで延びている。
肌は白い・・・しかし、病気的な白ではなく健康そうな白だ。
身長も女性にしては高くスタイルも抜群。
特に胸なんかアンナさんクラスの巨乳。
マーシャが来ている服は、なんの変哲もないシャツにズボンといったラフな格好。
しかし、だからこそ、そのモデル顔負けのプロモーションが目立つ。
全体的に見てかっこいい女性といった感じだ。





「うっ・・・」

ま、まずい!
こいつ・・・改めてみると女性として、めっちゃくっちゃ魅力的だ。





「ぷっ・・くくっ・・・ははははははは!!!!!」

いきなりマーシャが笑い出した。

「な・・・なに?」

俺は困惑しながら聞いた。
さっきまでの態度と明らかに違かったからだ。

「ふふふっ・・・いや、お前の百面相がおかしくてな。」

マーシャは目に涙を浮かべながらそんなことを言ってきた。

「くくっ・・・・冗談だ。」

「・・・・・・へ?」

「だから、結婚しようというのは冗談だ。」

冗談・・・・・・・・・・・・・・はは、そうだよなー
冗談だよな~
・・・・・・・言っておくが、残念だと思っていないからな!!!
そこんとこ勘違いするなよ!!!





「・・・・(ジー)」

俺はマーシャを批判的な目で見つめる。
こいつ、男の純情弄遊びやがって!

「そう怒るな・・・仕返しだ。」

「仕返し?」

「ああ・・・・あのファミレスでのな。私もやられっぱなしってのは性に合わないのでな。」

・・・・・・こいつ、イイ性格してるぜ・・・ほんと






「だがな大輝・・・」

マーシャが真剣な顔で見つめてきた。

「なんだよ?」

ちょっと不機嫌な声が出てしまった。
さすがに、多少ダメージがあったからな。
というか、マジでさっきまで、ちょっといいかって思っていた俺自身が恥ずかしいは!!

「私はお前を夫のようには思えないけど、息子のようには思っているからな。ちなみにこれは本当だぞ・・・なんなら、マージのように“母”と呼んでもいいのだぞ。」

マーシャは笑みを浮かべながら俺の頭を撫でてきた。
その顔はさっきまでからかった時の表情ではなく、マージに向けるような慈愛に満ちていた。

--ナデナデ♪--

・・・・うん、よく小説なんかでナデポってあるけど・・・ちょっと気持ちがわかったかも。
男の俺でも安心感というか、心が安らぐからな~






その後は、別に問題なかった。
唯一マージが泣きじゃくっていたけど、なんとか慰めて、俺たちはライクベールを後にした。
こうして、俺の休日は終わりを告げた。
・・・・・・なんか、得た物の半分以上が恥だったのは気のせいか?











--次の日--

「ふああああ~~~」

俺は背伸びをしながら肩をコキコキっと鳴らす。

(なんか久々のように感じるな・・・こんな目覚め。)

遊びつかれた目覚めってのはこんな感じだったのかな?

「さて・・・今日もがんばりますか。」

俺はパンっと顔を叩き気合を入れて起きようとすると・・・・

--むにゅ☆--

・・・・なにか柔らかい物に触れた。


なんだ?・・・そう思い、布団を剥ぎ取ると・・・・


「すーすー」

「・・・・・・・・・」

「すー・・・う~ん・・・」

「・・・・・・・・・」

--スウゥ--

俺は静かに布団を掛け直した。





落ち着け・・・そんなはずはない・・・・



俺はまだ夢を見ているに違いない・・・・



俺はそう結論付けて、再び布団を剥ぎ取った。


「すーすー・・うんっ・・・うう」

うん・・・とりあえずこう言おう・・・・・



「なんじゃこりゃあああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

久々に大声で叫んでしまった。






「うーん・・・・」

俺が叫んだせいか、そいつは起き上がった。
俺はというと―――


「ああヴぉえぼあぺ@qwwbt@b@bんqvm@おjぴqmtんb@おえ@おあhwkgんbmmc」

うん、わかると思うけど、このくらい混乱していた。


「うーん・・・どうした父?」

そいつは、まだ眠いのか目を擦りながら俺に話かけてきた。
・・・・・うん?

「父?」

俺はそいつの言葉に違和感を感じた。
そして、そいつの気に俺は覚えがあった

「・・・・・もしかして・・・・マージ・・・か?」

デジャビュを感じながら俺は聞いた。

「そうだぞ・・何を言ってるんだ?父?」

返ってきた言葉は肯定の返事だった。

「・・・・・本当か?」

「本当だぞ・・・ほら、ちゃんと耳や尻尾もあるだろう。」

そう言って。頭に耳を生やし尻尾を見せて俺にアピールしてきた。
・・・・いや、そうじゃなくて・・・・

「なんで“人間”になってるわけ?」

そうなんだよ!!
こいつ人間の女の子になってるんだよ!!!

「なんでって?・・・アンナに聞いたからだぞ。」

「アンナさんに?」

「ああ・・・母がなっていたのを見て私にもできないかと思ったわけだそして、人間になる術を聞いて試した見たら、一発で成功だったぞ!!!」

誇るように声を上げる。

「どうだ!?父!!!?」

そして、マージはエッヘンとばかりに胸を張って俺に聞いてきた。

--ポヨン☆--

(・・・・うっ)

しかし、俺はマージの問いの答えられず、前かがみになってしまった。




一応言っておくがマージの今の姿は人間の女性の姿だ。
しかも、十代後半ぐらいのかわいい女の子。
肌はアンナさん見たいに健康そうな小麦色で髪は茶色のショートヘアー。
胸はアンナさんみたいに巨乳ではないけど、十分大きいほうに入る
・・・・そして、なにより・・・・

(は、はだか~)

そう!!こいつ裸なんだよ!!!!
その姿のまま俺の布団の中にもぐりこんでいたんだよ!!!!
しかも、上記のような女性が・・・・
そして、俺は年頃の男・・・後は分かるな!!?

(ま、まずい~)

俺はさらに前かがみになってしまう。
いつもは修行修行だったから、気にする余裕がなかったけど・・・それは言い換えればそれだけ溜まっているという事だ。
正直言ってものすごい辛い。

「どうしたんだ?父?」

「い・・・・いや・・・・」

マージが心配そうに聞いてきたけど、俺は返事を返すので精一杯だった。
それだけ今の俺はヤバイ状況なのだ・・・主に下半身が

(と、とりあえずマージに出て行ってもらおう)

俺はそう判断し、マージに声を掛けようとすると・・・・

「・・・もしかして、病気か!!?」

マージがものすごい勢いで俺に迫ってきた。

「いや!!病気じゃないから!!!大丈夫だから!!」

「そんなこと言っても、ものすごく苦しそうだぞ父!!!」

--むにゅ☆--

「いやーーーーーーーーー!!!!大丈夫だから、そんなにくっつかないで!!!!感触が!!!!やわらかい二つの物の中になにか別の感触がーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!






・・・・・その後、騒ぎを聞きつけたアンナさんによってその場は収まった。
ちなみに、なぜか俺が怒られた。
・・・・俺被害者なのに・・・くすんっ













マージ(魔物)はマージ(人間)にパワーアップしました♪










おまけ

青い作業服を着て、マーシャはビルの上に立っていた。

「さてと・・・お届け先は・・・」

マーシャはお届け先の伝票を見た・・・そして、確認が終わると。

「ふんっ!!」

・・・・空を一つの風が駆けていった。




--コンコンッ--

「○○さん・・お届け物です。」

「・・・・ああ、ご苦労様です。」

マーシャは荷物を渡し、受け取りのサインをもらった。

「しっかし、あんた“空”を飛んで疲れないのか?」

「私の場合、体を動かしているほうが好きなんですよ・・・それでは!!」

マーシャは再び空を駆けていった。
・・・・ちなみにマーシャが先ほどいたのは高層マンションの10階の外だった。
どうやら、この世界では個人が空を飛んで宅配するのは珍しい光景ではないようだ。


























あとがき

今回で休日編は終了です。

次回からは再び修行です。



さて、nanoさんからの質問のオリハルコンについてですが・・・・
この世界は幾つ物の世界で成り立っています。
なので、オリハルコンがとれる世界もあるということで・・・
原作でもオリハルコンが少なかったと表記されていたのは地上世界だけでしたしね・・・・



では、次回。







感想返し


<九尾さん>

まあ、ドラクエのアイテムはほとんどが奇跡のアイテムみたいなものですしね。

マーシャの強さに関しては・・・正直言ってそれほど考えてません。
今のところ、その強さに触れる予定はありません


<nanoさん>

作中通り価値観が違うということで。
馬の糞は・・・肥料などに活用しているのではないのでしょうか?

質問についてはあとがきの通りということで。

さすがにダイの剣ほどの攻撃力はありませんね。
あくまでも料理用の包丁なので、武器としてはダイの剣より攻撃力は低いですね
まあ、それでも十分過ぎるほどの切れ味ですけどね・・・・

nanoさんもお体にお気をつけて。


<とんじんさん>

誤字報告ありがとうございます。

まあ、作中に述べたとおり価値観の違いということで・・・

ひのき棒も安い木刀のような感じですね。
ステテコパンツは・・・・ファッション?ですかね















[15911] 第十一話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:05
第十一話












美しい・・・・・その言葉でしか表現できない場所だった。
青い空、白い砂浜、そして濁りなどなく透き通った海。
砂浜にはゴミ一つ落ちてなく、海原の海面は上空から注がれる太陽の光でキラキラと輝いている。
ここから夕日を見ればさぞかし幻想的な光景を見れるだろう。
家族で来たら、さぞかし楽しい思い出になるであろう。
恋人と来たら、さぞかし素敵な思い出になるであろう。




















「いーーーーーーーやーーーーーーーだああああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」

「「「「「きしゃあああああああぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」」」」」






・・・・・ただし、サメのような生き物に追われている人間などといった光景がなかったらの話だが・・・













「ぜえぇぜえぇぜえぇぜえぇ・・ぐふっげほっ・・へえぇへえぇ・・・」

砂浜に漂着した物体から、なにか息遣いが聞こえる。
しかも、その隣にはサメのような生き物が積み重なってるといった奇妙な光景だ。

「はあぁはあぁ・・・し・・死ぬかと・・・思った・・・・うぐっ・・・」

やがてその物体はモゾモゾと動きうつ伏せからorz状態になった。
大輝だ・・・しかしその姿は異様なものになっていた。
先ず顔が青い・・・比喩ではなく本当に青いのだ。
目は血走り、口からだらしなく唾液が吐き出されている。
髪の毛は濡れていてべっとりとして、しかもワカメが頭に巻きついていて、カニがちょこんと乗っている。
おまけに水着のような格好・・・つまり、ほとんど裸に近い姿だ。
正直、肝試しなどをしたら間違いなく子供たちが泣くわめくといった姿だ。

「お!生きてたのか!」

そんな大輝に声をかける人がいた。



年は10代後半~20前後といった男性。
髪は赤く、頭には死んだ人の証しである天使のようなリングが付いている。
顔は・・・ちゃんとすればそこそこ見栄えるといったとこか。
ここまでだと、対して特徴がない男性のように見えるが、その顔にはものすごく特徴的なものがあった。
傷だ・・・その男性の左目には大きな傷があった。





「はあぁ・・・いき・・はあぁはあぁ・・・て・・・いたのか・・ああぁ・・じゃないですよ・・・・」

俺は息を整えながら目の前の人・・・アクセルさんに話しかける。

「で、ちゃんと取ってきたのか?」

しかし、アクセルさんはそんな俺を無視してそんなことを言ってきた。

「・・・・・・・・」

俺はその言葉にムッとしながら右手に持っていたものを差し出す。
今回の目的のもので間違いないと思うけど、俺じゃ判断できないからだ。

「え~とっと・・・・うん!捜索依頼で出されていた人魚の月のネックレスで間違いないな!!」

俺が差し出したものを見て、アクセルさんはウンウンっと首を縦に振った。






今俺が何をしているのかと言うと・・・・仕事だ。
まあ、これだけじゃ分からないと思うから順を追って説明をするぞ。



神様たちは基本的に自分が収めている世界以外には不干渉の形をとっている。
しかし、なかには例外もある。
それは聖魔八武具クラスの事件が起こったら干渉するといったものだ・・・なにしろ世界そのものを滅ぼすかもしれない力を持ってるんだ、干渉がどうこう言ってる問題じゃないだろうな。
で、こう言ったレベルが神様たちが直接干渉しても問題ないレベル。
DBの界王神みたいなものだな、あいつらもフリーザの時は介入してこなかったけど、魔人ブウの時は介入してきたしな。
けれど、世の中こんなレベルの事件が頻繁に起こるわけじゃない・・・というより、こんなレベルの事件が日常茶飯事で起きていたら世界が滅ぶわ!!


で、当然世の中にはこういった大事件だけではなく、落し物をしたなどの小さな事件もある。
そういった事件には神様(バーンさん)やその側近の人(ミストバーンさんやアンナさん)とかは、わざわざ干渉しようとしない。
まあ、これは当然だな・・・普通に考えれば、その世界のトップの人にやらせているものだしな。


で、こういった事件を解決するのは主にその世界の治安組織・・・まあ、警察のようなものだ。
こういった組織がほとんどの事件を解決する、けれど、中には神界で修行している人とかが解決する事件とかもある。
そういった事件は地獄などで暴れていた人がいたら鎮圧するなどと言った、討伐関係の仕事がほとんどだそうだ。
これは主に戦闘経験を積ませると言った目的もあるし、ちゃんと報酬もでるから、その人にとっては一石二鳥だそうだ。



アンナさんが俺に紹介(第十話(休日編 ②))しようとしたのは、こういった仕事だ。
戦闘経験も積ませることもできるし、Gも稼ぐことができるからとのことだけど・・・・・ぶっちゃけイヤだった。
だってさ・・・普通に考えて、俺・・・・日本人だし。平和が好きだし。そんな戦うことに生きがいを感じる人じゃないし。
正直言って戦うのは模擬戦だけで十分なんだよ!!そりゃ俺も昔はサバイバルなんかやったよ!!
けどさ・・・俺も強くなったせいか・・・・・感じるんだよ・・相手との力量の差って言うか、そんなやつを・・・・・
ほら・・経験ないか?昔はただがむしゃらになるんだけど・・・後になって、自分が無謀な行動していたって解るってやつを
今の俺が正にそれなんだよ・・・で、ダメもとでアンナさんに頼んでみたんだよ・・討伐系以外の仕事を紹介して下さいって。
そしたら、なんとOKだったんだよ!!しかも、落し物の捜索って言ういかにも簡単そうな仕事!!
いやーこの時は感謝したね、落し物探してお金をもらえる。
しかも、俺の体力も昔に比べてかなりあがっている・・・だから、楽勝♪って思っていたんだよ・・・・
ただ、それは甘い考えだったんだ。










「すーーーーーーはあぁぁーーーーーー」

俺は大きく深呼吸して新鮮な空気を胸一杯に吸い込む。

「♪♪♪」

ふと、隣を見るとアクセルさんが、ご機嫌な感じで鼻歌を歌っていた。



この人の名前は“アクセル・ヴァイスハイト”さん。
頭にリングがあるから死んだ人間ってことになる。
自称“世界最強のなんでも屋”って二つ名を名乗っている。
うん、あんたどこの中二病患者って思ったよ・・・けど、この世界では俺の方の考えがおかしいらしい。
ぶっちゃけ、この世界普通に魔法とかがあるから本人の知らない内に二つ名が勝手に付いてるケースもあるようだ。
傷に関しても、ある程度の激戦を潜り抜けてきたら一つや二つあっても別に不思議ではないようだ。
・・・・つーか、今の俺もそんな人たちと同じなんだよな~~・・・・・・はあああぁぁ~~~~



まあ、これは置いといて、なんで俺がこんな人と一緒にいるかというと・・・さっき言った依頼のせいだ。


落し物とかは警察とかに届け出ると捜索してくれるけど、一人にいつまでもかまっているわけにはいかない。
そのため、中にはアクセルさんみたいな人に個人的に捜索依頼を頼む人もいるそうだ。
そして、俺はその依頼に一緒に連れて行ってもらってるんだ。
そもそも、なんで俺がこの依頼を受けたかと言うと・・・・






「あの・・・少しは手伝ってくれてもいいじゃないですか?」

俺は少し不機嫌な声を出してアクセルさんに言う。
この人、俺を海の中に放り込んだ後、自分は適当にブラブラしてくるからって言って、そのまま、いなくなったんだぜ!!

「あのな~おめーが金が欲しいっていうから、わざわざ連れてきてやったんだぞ。だったら言い出しっぺのお前が探すのがあたりまえだろ。」

何を言ってるんだ?って顔で返された。
俺の目的はアンナさんの包丁を弁償するためお金を稼ぐことだったんだ。
だからこそ、この仕事を受けたんだけど・・・

「第一俺はお前を鍛えるよう、アンナから言われているんだぞ・・・それなのに、俺がお前の手伝いをしたんじゃ意味がないだろ?」

だからそんな物をつけてるんだろ?って言って、俺の腕に付いている物を指さしてきた。






今、俺の両腕にはリング状の機械が付いている。
この機械は対象の闘気や魔法力を抑える、リミッターのようなものだ。
こいつのせいで、今の俺の身体能力はかなり低くなっている。
そのため、普段の俺なら何も問題がないことでも今は命の危険がある。
要するに、俺の目的はお金を稼ぐため。
アンナさん達の目的は俺を鍛えるためだったんだ。
・・・アンナさん・・・・あなた、どこまで厳しんですか・・・・・
まあ、もう一つある理由があるんだけどな・・・・・









「それに・・・お前、聖魔八武具を探すんだろ?だったら、これぐらいできないでどうするんだよ?」

アクセルさんは、めんどくさそうに頭をかきながら言ってきた。


これがこの人と一緒にいる一番の理由。



聖魔八武具の情報は、一般の人とかには知らされていないようだ。
まあ、神様の力を超えるかもしれない物が流失したなんて知れたら、世の中がパニックになるから、その防止のためなんだけどな。
けれど、中にはアクセルさんみたいに知っている人もいる・・・まあ、そう言った人にはちゃんと情報規制しているみたいだけどな。
そして、アクセルさんは自分で何でも屋をやってるぐらいだから、戦闘以外の技術もあるし、アンナさんが言うには「性格に少し問題があるけど、実力は本物ですし、信頼が置ける相手です」っとのことだ
それに、今の俺の立場にも問題がある。


今の俺の立場は、バーンパレス親衛隊の新人ってことになっている。
これは、聖魔八武具の情報を外部に漏らさないためだ。
普通、生き物が死んだら先ずは閻魔大王様のとこに行く。
けれど、俺は直接バーンさんのとこ・・・すなわち、神界に来た。
だけど、そうするとおかしいことになる。
閻魔大王様のとこにいってないのに、神界にいる・・・・むろん、バーンさん達もこう言った矛盾を隠ぺいしようとしているけど、情報ってのはどこから漏れるか解らない。
だからこそ、俺を親衛隊って立場に置いているわけだ。
人間ってのは不思議なもんでな、普通に考えればおかしいと思う物でも、その中に公式と言った、世の中に認められている物が少しでも混ざっていると、嘘でも本当のように思ってしまう。


つまり、信頼が置けて、実力があり戦闘以外の技術を教えられる、俺の事情を知っていて尚且つ情報が漏れにないような人物がこの人ってわけだ。
親衛隊の人とかもこういった依頼で戦闘技術だけでなく、その他の技術を学ぶ人とかもいるみたいだしな。






けれど―――






「アクセルさん・・・初めはお手本とか見せてくれても良かったんじゃないですか?」

海に入って濡れた体をメラで乾かしながら俺は言う。
あんた、プロなんだからお手本ぐらい見せてくれても良くね?

「あほう、さっきも言ったがこれはお前の修行なんだからお前自身がやんねぇと意味がないだろう?それに・・・・・」

アクセルさんは一度言葉を区切って、俺のことを指さして・・・・

「なんで俺が男のためにわざわざ働かないといけないんだよ!!今回のことだって、アンナに頼まれたから仕方がなくこの依頼を受けたんだぞ!!!」

・・・・・・うわー言いきっちゃったよ・・・この人・・・・・






ぶっちゃけ言うとこの人もそれなりに厳しかった。
しかも、厳しいってのが、アンナさんとかが修行つけてくれるのとは違くて・・・・なんて言ったらいいんだろう?
・・・男に厳しいって言った方がいいのかな?
ハッキリ言ってこの人、デスタムーアさんみたいなんだよな・・・・
まあ、それはアンナさんに紹介された時になんとなく解っていたけど。




――回想――


「この方が主に大輝さんの面倒を見ます。」

そう言って、アンナは大輝に資料を渡した。

「・・・・・・・」

大輝はしばらく資料と睨めっこをしていて、

「あの・・・・この人・・・本当に大丈夫なんですか?」

やがて、顔を上げ不安そうな声でアンナに問う。

「・・・まあ、ちょっとあれですけど、一応信頼はできます。」
アンナも若干不安そうに大輝に返答した。





「おー!アンナ久しぶり!。」

アクセルは片手を上げながらアンナに挨拶をする。

(・・・・この人がねぇ)

大輝のアクセルの第一印象はそんな変哲な物ではなく、普通だった。
いや、むしろ好意的なものだったかもしれない。
見た目的には自分とそんな変わらず、明るそうな性格で、アンナ達のように威圧感という物がなく、友達のような雰囲気だったからだ。
・・・・もっとも、その印象はすぐ崩れることになったがな・・・



「アーク(アクセルの愛称)お願いしますね。」

「おう!どーんと任せておけ!!」

アクセルはアンナの言葉に胸を叩きながら答えた。

「それでは報酬の件ですが・・・」

アンナは報酬の件を伝えようとしたが、その前にアクセルがアンナの手を攫み・・・

「お金なんかいらないさ・・・・」

首を小さく振りながらアクセルは言う。
そして、ふっと流し目をしながら・・・・

「報酬なら!ぜひ、その体で!!!二人であつーい夜を過ごそう!!!」

「・・・・・・」


*しばらくお待ちください


ドガスッズガドスッズシャグスメタガンッガゴドングスバンッドドーンッガーンドンガスゴスドガーンッ「マヒャド」ヒューサンサーンズシャ・・・・・






「よろしくお願いしますね。」

アンナは天使のような笑顔を浮かべながら言う。
もし、第三者が見たらアンナが誰に話しかけているのか解らないだろう。
・・・・なぜなら、アンナの目の前にはモザイクがかかった、訳の解らない物体しかないからだ。

「大輝さんも頑張ってくださいね。」

(ガクガクガクブルブルブル)

大輝の方を向いてアンナは応援のメッセージを送るが、大輝はただそれに返事を返すことなく、ただ震えているだけだった・・・


――回想終了――



・・・・・・うん・・・今思うと、めっちゃ濃い出会いだったな・・・・・・









「そんじゃま!・・・そろそろ飯にするか!?」

「・・・・・まさか、俺に用意しろって言うんじゃないんですよね?」

あんたもなにかしろ!!って意味を込めて言う。

「大丈夫だって・・・ま!みてろって!」

しかし、アクセルさんはそんな俺の言葉に気にした様子はなく、俺が倒したサメの方に歩いて行く。
・・・というか、それ食うわけ!
それ以前にそれって俺がとったものだからかあんた結局何もやってないだろ!!

「よっと!!」

アクセルさんは空間からブ―メランのようなものを取り出し、サメに向かって投げた。

――シュン、シュン――

そのブーメランはサメをまるで紙を切るかのように簡単に切り裂いた。
・・・・ていうか、それ・・・

「あの・・・アクセルさんそれって・・・・・」

俺は気になって聞いてみた。

「うん?・・・ああこれか・・」

アクセルさんは戻ってきたブーメランをしまいながら説明した。

「こいつはギラ系の魔法の応用で表面上を高熱エネルギーで覆い、俺の魔法力で自由に操って敵を攻撃できる“万能ブーメラン”だぞ。」

「その威力はオリハルコンだって切り裂けるんだ!!すげーだろ!」

アクセルさんは自慢げに言うけど・・・・

「あの・・それで、その名前は?」

うん・・・能力といい、形状が俺が知っている物と似ているんだよ。

「一応万能ブーメランってことになっているけど、名前を付けるとしたら、アイ・スr「アウトォォーーーーー!!!!」

ちょ!何言っちゃんてんのこの人!!

「まあ、そう言うなよ・・・こんなのもあるぞ。」

アクセルさんは今度、自分の腕に付いていたブレスレットに手をかけた。

――シュン――

そして、そのブレスレットはぐにゃりと変形し光の刃になって海面を切り裂いていった。
しかも、アクセルさんの手元に戻った後、槍になったり剣やムチに変形したりした。

「・・・・・ちなみにそれは・・・」

「マネマネ銀って言う特殊な金属を使って俺が作った“万能ブレスレット”だ。しかも、武器だけでなく使い方によってはいろんな能力を発揮できるぞ・・・名前を付けるとしたら、ウルトr「だからダメだって!!!!」

苦情来るぞ!!

「大丈夫だ、このssの注意事項その7に“その他の作品とも”って書いてあるぞ。」

「だから!!!そう言ったメタ発言禁止ィィィーーーーーーーーー!!!!」























「・・・・・・」

俺は今、唖然としながら目の前の光景を見ていた。

「・・・・あのーアクセルさん?こっから飛び降りるんですか?」

そう言った俺の目の前には100メートル近くの崖がある。

「そうだ・・・正確にはこっから飛び降りて、向こうの岩山までルーラで飛んで行け。」

そう言って、アクセルさんは200メートルぐらい離れた岩山を指さした。

「じゃ!頑張れよ」

アクセルさんは俺の肩を叩きながら言う。

「・・・・・・て!ちょっと待てや!!」

俺は少し声を荒げながら攻め寄った。

「なんでこんなとこから飛び降りる訳!!?と言うより、せめてこれを外してからにしてくださいよ!!」

俺は腕に付けられた機械を指さしながら言う。
いつもならこのぐらいの高さなんか気にならないけど、この機械のせいで今の俺はかなり身体能力が落ちている。
ぶっちゃけ、この高さから落ちたら死ぬわ!

「はあああぁぁぁ~~~」

アクセルさんはため息を吐き、頭をかきながら説明してきた。

「あのなー今のお前の闘気や魔法力を考えたら、そうでもしないと修行になんないだろ。」

いや、だから・・・・

「そんなことをする理由を教えて下さいよ。」

理由が見えてこないんだよな・・・・この修行。
もし、闘気や魔法力を鍛えるのが目的なら、ハッキリ言ってリミッターなんか付けない方がいい。
なぜなら、その方がより厳しい修行ができるからだ。
・・・まあ、できることなら、やりたくないけど




「理由ねぇ~」

アクセルさんは短く言葉を漏らした後、俺に近づいてきた。

「それは・・・・・」

そして、俺の瞳を覗き込んだ後、

「お前の甘ったれた性格を直すためだ!」

俺を突き落とした・・・・・って!!!

「ちょっとおおおおおおおぉぉぉ!!!!!!」







「うあああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!」

大輝は崖から真っ逆さまに落ちていく。
このままだと、地面に激突し命の危険もでてくるだろう。

「おーい!早くルーラを使わないと地面に激突するぞー!!」

アクセルの言葉を聞いて大輝は無茶苦茶だと思ったが、事実なので、急いで呪文を発動させた。

「くっ・・・ルーラ!!!」

大輝の体を魔法力が包み激突を免れた。
助かった!・・・そう思う大輝だが・・・・

――パンッ――

「あ・・あれ?」

しかし、途中でルーラが途切れた。

「そんなあああああああぁぁぁぁ!!!!!」

叫び声をあげながら、再び地面に落下していく。
このままだとおそらく助からないだろう。


――ガシッ――


「ぐえっ!」

「・・・・たく~~」

しかし、アクセルが助けたことによって激突は免れた。
もっとも、この時、大輝の服の襟をつかんだため、苦しそうな声を上げたがな。








「うぎゃ!」

大輝を助けた後、アクセルは元の崖の上に来て、大輝を地面にポイっと投げた。

「う~~~~」

「やめれ・・・男の涙目なんか萌えないから・・・」

顔面から地面に打ったせいか、大輝は涙目になっていた。
しかし、アクセルはそんな大輝に鬱陶しいそうに声をかけた。
・・・・どこまでも、男に関してはどうでもいいようだ。









「たくよ~お前は、本当にどこまでも甘ちゃんだな。」

アクセルさんが声をかけてきたので、俺はそっちの方に顔を向けた。

「命掛けの時は力を出す癖に、誰かが助けてくれる状況だと今一歩で力を出し切れない。典型的なタイプだな・・・お前は。」

俺はアクセルさんの言葉に少しムッとしながら反論する。

「俺だって、その気になれば、そこそこ頑張れるんですよ!」

一番新しい記憶はあのバーダック戦だ、あの時の俺は自分で言うのもなんだけど、かなり頑張った方だと思う。

「そこそこねぇー」

俺がそのことを告げると、アクセルさんは空間を割って(恐らく次元魔法の一種)なにか資料みたいなものを取り出した。

「まあ、確かにこのバーダックと戦った時はかなりの成長だったみたいだけど・・・」

どうやら、俺の模擬戦のデーターのようだ。

「これの場合、どっちかって言うと、お前がただ単に負けたくなかっただけだろ?」

・・・・いや、そうだけどさ、それって・・・・

「それって、何が違うんですか?」

俺は気になって聞いてみた。
だって、それは結局力を引き出すという意味では同じだと思ったからだ。

「そうだな・・・・先ずこのバーダックの時だけど、これの前提条件としては、お前が対抗心を燃やすほどの相手ってことが条件だ。じゃあ聞くけど、常に相手がそんな条件に一致する相手だと思うか?」

「・・・・・・・」

アクセルさんの言葉を聞いて、俺は何も言えなくなってしまう。
確かに、常に相手がその条件に一致するという確証はないからだ。

「今回だって、俺がいなかったら地面とキスして、そのままお陀仏だったんだぞ。」

「・・・・それは、力が抑えられているからで・・・」

「常に自分が万全な状況だと思うか?・・・・聖魔八武具を本気で探そうってんなら、そんな甘い考えは早く捨てたほうがいいぞ。」

俺が反論しようとしたら、アクセルさんに逆に諭されてしまった。












「・・・・・・・」

大輝は俯いたまま、これまでの自分を思い出していた。
確かに自分はいままで誰かが助けてくれる状況で戦ってきたからだ。
バーダックの時だって、やはり近くにアンナがいたからこそ、無茶な行為ができた。
唯一したことがあるのはマーシャの世界であったバトルレックス戦だけだろうと思う大輝だが・・・
大輝自身は知らないが、あの時もアンナが発信器を付けるなどの処置をしていた。
そのことを考えれば、アクセルの言う通り、甘い状況で戦ってきたといえよう。




「アンナの奴・・・そうとう甘やかして育てたみたいだな。」

ポツリとアクセルは言葉を漏らす。


甘い・・・これが大輝に対しての感想だった。







(こいつ・・・このまま聖魔八武具なんか探しにいったら、間違いなく死ぬぞ。)

俺は目の前で俯いたままの男にそんな思いを抱いていた。
ハッキリ言って、こいつは、まだどこかで甘い思いを抱いてる。
ま!しかたないか・・・こいつの出身世界は魔法文明すらない地上世界、しかもその中で比較的安全な日本で育ったのだからな。
それに、こいつの場合は戦士ではなく兵士としての育て方を受けてきたのであろう・・・

前者は目的に信念を・・・自らの命をかける者

後者は自分の目的と言うより他者の信念に従う、半ば義務ずけられた様な者


恐らく聖魔八武具を探すだけなら後者の者でも大丈夫だろう・・・探す“だけ”ならな。
だけど・・・・

(そんな都合よく行くものかな?)

恐らくそんな都合よくはいかないだろうな。
聖魔八武具は契約者以外が使おうとすると、そいつの体を乗っ取りただ暴れまわるだけの殺戮戦闘兵器になる。
そんな奴を相手にするには兵士のままでは役不足だな。
まあ、聖魔八武具・・・こいつの場合、聖剣ロストセレスティが誰もいない・・文字通り生き物が全くいない世界にあるなら問題ないだろうけど、そんなうまい話が世の中にあるわけないだろうな。
それに・・・

(魔剣ネビリムの事もあるしな・・・)

そうだ・・・こいつが死んだ原因になった、魔剣ネビリム・・・・・
こいつが何を考えてるか解らない、少なくてもこいつはすでに契約者を見つけたことになる。
だが、この契約者の意図が見えてこない・・・ただ力に溺れた人間なら、まだマシな方だけど・・・・・・

(ただの人間が神界の追跡を逃れるものなのか?)

仮にも今現在の神たちが本気で捜索してるのだ・・・・
果たして力に溺れた人間ごときにそんな神業ができるものか?

(・・・・まったく・・・・・いろいろ厄介なことになってるな・・・・・)

チラッと俺は目の前の男に顔を向ける。
日本人特有の黒髪黒目、顔も平凡で体から出るオーラはお世辞にも一般人を逸脱しているとは言い難い。
潜在能力も普通の人間並み・・・魔法・闘気のこともアンナが鍛えていることと時間を考えれば普通の人間が得ることができる範囲。
・・・・・・・どっからどこを見ても普通だな・・・まあ、アンナの扱きに耐えられた根性だけはたいしたものだけど・・・・

(はああぁ~・・・こんな奴を巻き込むなよな・・バーンさん・・・・)

まあ、あの人にも立場ってのがあるし、こいつは本当の意味で“第三者”だから頼んだんだろうけど・・・・











(甘いって・・・・)

一方の大輝はアクセルの発言に驚いていた。
それは、今まで自分が受けた修行が甘いと言っていたからだ。
正直言って、あれより厳しい修行は大輝には思いつかなかった。

「あのー・・・甘いって・・アンナさんがですか?」

思わず疑問形で聞いてしまった。
仕方ないだろう・・それだけ、アクセルの発言が信じられなかったのだ。

「あん?・・・ああ、アンナの奴は正直言って甘い。兵士を育てることに関しては世界全体で見ても最高クラスだろう・・・・けど、戦士を育てるとしたら、恐らく一ランクぐらい下がるだろうな。」

「??????」

大輝はアクセルの言葉がいまいち理解できず頭に???を浮かべる。

「ま!教えるより、実際に体験した方が早い。」

そう言って、アクセルはニヤッと笑みを浮かべた。















「それじゃ・・・・始めるぞ!」

アクセルさんは合図を出した後、森の中に消えていった。




あの後、なぜか知らんが、アクセルさんが提案したのは鬼ごっこだった。
無論ただの鬼ごっこではない。

1、闘気による攻撃も魔法による攻撃もあり

2、アクセルさん“自身”による攻撃はなし

3、レーダーを使うなど、科学物資を使ってもいい

4、俺のリミッターは外す

5、細かいルールはなし、とりあえず捕まえればOK

・・・という、要はなんでもありの鬼ごっこってわけだ。



(何の意味があるんだ?・・・・これ)

俺は疑問に思って考えたが、結局答えが見つからなかった。

(とりあえず・・・・・追いかけるか・・・・・)

そう決意し、俺は森の中に入って行った。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・




「お~い・・・大丈夫か?」

「・・・・・・・・・・・」

「お~い・・・(ツンツン)」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・返事がない・・・ただのしかb「生きてるわ!!!」

なにか物騒なことを言いそうだったので、俺はガバッと起きた。




結果は俺の惨敗だった。
・・・・というか、何この人!!?
俺は闘気や魔法で攻撃したのに、アクセルさん簡単に避けるし。
しかも、「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃwww」とか「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃwww」なんて奇声を上げながら逃げ続けるるんだぜ、この人。
まあ、これだけだったらこちらバカにしてるようだけだったから、特に気にしなかったんだけど・・・これだけじゃなかったんだよな・・・・
先ず地上を走って追いかけたんだけど、いきなり落とし穴にはまった。
それから、なにかに触れたと思ったらいきなり木が倒れたり、タライが落ちてきたり、草の輪っかがそこらにあったり(転ばせる罠)、変な粘々の糸があったり、落とし穴(なにか獣の糞が入っている)などなど・・・
そして、空に逃げたら逃げたらで・・・・・・はっきし言って、ものすごい腹が立つ!!
・・・・ていうか!?この人本当に人間!!?
俺に全然気を感じさせないし!!スカウターにも反応なしだったよね!!
その他にも、俺の攻撃避ける時明らかに間接的に考えて無茶な動きしていたよね!!?しかも、なんかデフォルメ化されていたのは俺の気のせい!!?
・・・うん・・・アンナさん・・・ちょっとどころじゃないですよ・・・この人・・・・・


というか―――



「ルール違反じゃないですか!!」

俺はアクセルさんに抗議するけど・・・

「ばーか・・・俺は“罠”は作ったけど、“自分”からは攻撃してないぜ。」

などと返された・・・・いや確かにルール違反ではないけど・・・・・

「・・・・・ジトーー」

俺は目を細めて睨む。
正直言ってなんか納得ができなかったからだ。

「まーそう睨むなって・・・」

アクセルさん肩を竦めながら言うけど・・・なんかその態度もムカツクわ!!

「・・・・それじゃ・・・」

しばらく睨みつけていたら、しょうがないな~という感じでアクセルさんが提案してきた。










「本当にいいんですね!」

「ああーはいはい早く始めろ・・・」

アクセルは心底めんどくさそうに言う。





今、大輝とアクセルは森の中で対峙している。
あの後、アクセルが提案したのは模擬戦だった。
無論、罠などなしの正々堂々の模擬戦だ。

「ほら・・・先手は打たせてやるぜ。」

アクセルは挑発的な笑みを浮かべ大輝に向かって指をクイクイッとする。

「・・・・・・」

一方の大輝はそんな挑発に乗らないよう冷静になろうとしていた。
なぜなら、目の前の存在・・・アクセルは今まで戦ってきた相手とは違いすぎるのだ。
今までの相手は、どっちかと言えば真正面から戦ってきたタイプだ。
しかし、アクセルはその真逆のような存在なのだ・・・・それに

(なんなんだ・・・この人?)

大輝はアクセルの強さがいまいち理解できなかった。
今、こうして対峙しているけど・・・
アクセルから感じるオーラと言うか威圧感のような物はハッキリ言って自分より小さい。
だが、森で見せた動きは、自分の理解を遥かに超すものだった(違う意味でも)
初めはスピードに特化したタイプだと思ったが、何かが違う。

(考えても仕方ないか・・・・・)

大輝はしばらく考えていたが、結局答えが見つからなかったので、一度考えるのをやめ、アクセルに意識を向ける。





(ピオラッ!!)

大輝は自分にピオラをかけてアクセルに向かって行った。

「ふ~ん☆ふふ~ん☆」

しかし、アクセルはそんな大輝を見ても、ただ鼻歌を歌っていた。
・・・・正直ふざけているとしか思えない。

「魔炎拳!!」

大輝は途中で魔炎拳を発動させ、さらにスピードを速めて行った。

「はあああああああぁぁぁ!!!!」

(左目が見えないなら、僅かに反応が遅れるはず・・・・)

そして、アクセルの顔の左側面を蹴り飛ばした。

――ドオオオオォォーン――

アクセルはその攻撃を避ける素振りも見せず、吹き飛ばされていった。






「あ・・・あれ?」

大輝はハトが豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
それは、あまりにもあっけなさすぎたからだ。


いくら大輝でも、真正面から向かっていくなどの愚策は取ろうと思わない。
しかし、アクセルを出しぬけるほどの策は思いつかなかった。
だからこそ、今回のような方法をとったのだ。
相手が油断しているとこにピオラと魔炎拳のスピードでの時間差による奇襲。
むろん、こんな方法で勝負が付くとは思ってない。
だが、予想に反して綺麗に自分の攻撃が決まってしまったため、一瞬だが呆けてしまったのだ。



「あの~アクセルさ~ん・・・」

声をかけるが返事が帰ってこない。
気になりアクセルが吹き飛んで行った方を探そうとすると・・・

「アーークーー」

どこかで声が聞こえた。

(なんだ!!?)

大輝は急いで周囲に気を張り巡らせる。

「セーールーー」

しかし、周りに気を感じなかった。

(チッ!)

大輝は右、左、後ろ、上といったように周囲に目を向けるがアクセルの姿は見えなかった。
やがて、大輝の上空の空間が割れて・・・

「キッッッーーーークウウウゥゥゥーーーー!!!」

そこから、アクセルが飛び出してきた。


「くっ!」

大輝もいち早くそれに気付いた。
・・・・というより、あんな叫び声を上げていたのだから気付かない方がおかしい。

「・・・ふんっ!」

大輝はアクセルの姿を捉えると、すぐ自分の手の平に気功弾を作り出し放った。

――ヒュウウウウゥゥ――

気功弾は寸分の狂いもなくアクセルに向かっていき・・・

――ズボッ――

貫いた・・・そう“貫いた”のだ

「なっ!!」

しかし、アクセルの体は貫いたと思ったら、霧のように消え失せた。
そして・・・

「こっちだ、ぼけ。」

「がっ!」

大輝が驚いていると、いきなり頭に強い衝撃を感じ、大輝は気を失った。











――バシャ――

「があっ!」

「よ!・・起きたか。」

大輝が目を覚ました時に目に入ってきたのはバケツを持ったアクセルだった。
どうやら、水をかけられて意識が浮上したようだ。

(あれ?・・・俺ってっう!)

大輝は後頭部に痛み感じ思わず手で押さえてしまった。






「アクセルさん・・・さっきのは・・・」

しばらくして、頭の痛みが静まったので自分が疑問に思ってみたことを聞いてみた。
少なくても、あの時自分は周囲の警戒し、尚且つあの上空から襲ってきたアクセルからは本物の気配を感じた。
なのに、そのアクセルが霧のように消えたかと思ったら、気付かない内に自分が気絶していたという、訳が解らない状況だったからだ。

「う~ん・・・さっきのねえぇ~(男なんかに教えたくないんだけど、アンナのことがあるしなぁ~・・それに特別難しい技でもないから問題ないか)」

そう思い、アクセルは大輝に種明かしをした。


アクセルがとった方法は以下の通りだ。


先ず、自分は次元魔法で作った空間に逃げ込み、もといた場所には物質出現魔法で作った自分そっくりの人形を作り出す。
そして、その人形に自らの闘気を込めて動かす、そうするとこの人形は自分の魔法力と闘気が宿った状態になり気配を察知できる者でも見分けが難しくなる。(少なくても大輝のレベルでは不可能)
その人形に攻撃を受けさせ、自分はさらに次元魔法で空間に穴をあけてもう一度さっきの工程を行う。
後は、相手が唖然としている時に後ろから不意打ちする。



「・・・・・・・というわけだ。」

「・・・・・・」

アクセルの説明を受けて大輝は

「卑怯くせー」

なんて感想を抱いた。(もっとも自分も過去に卑怯な行為をしたことを棚にあげての感想だが)
もっとも、大輝の感想を聞いてアクセルは・・・

「卑怯?・・・上等だあぁ!!」

なんて胸を張りながら答えた。






「戦いに卑怯もくそもねえんだよ!!要は勝てばいいのさ、勝てば!卑怯なんてのは負け犬のいいわけだよ!つ・ま・り、お前のなぁ~」

アクセルは大輝の額をつつきながら言う。

「・・・・・もう一度戦えば・・・」

さすがにその態度にむかついたのか、少し声を硬くして言う。
種が解ったなら、もう一度戦えば油断しないと思ったからだ。

「阿呆か、お前は・・・」

しかし、アクセルは大輝に呆れたように声をかけた。






「戦いに二度目なんかないんだよ!!一度失敗したらそこで終わりだ!!」

アクセルは声を硬くして大輝に忠告する。

「第一さっきの模擬戦だって俺があくまで提案しただけで、それをお前が守る理由はない。そうやってルールの中で闘うやり方をしていたら、お前、いつか死ぬぞ。」

アクセルは、さらに声を硬くして忠告する。

「ハッキリ言ってやる、ルールの中で“闘う”のでなはく、文字通りなんでもありの“戦い”の中で生き残れる戦士になれないようじゃあ、お前の目的を達成することなんかできないぜ。」

「・・・・・・」

大輝は俯いたまま何も言えなくなってしまう。
それは、アクセルが言ってるのが正論であることと、その雰囲気が言葉を発せなくさせていたのだ。
今のアクセルの雰囲気はさっきまでのおちゃらけた感じではなく、アンナとかと対峙した時・・・歴戦の戦士の雰囲気を出しているのだ。




「さてと・・・そろそろ時間だし・・・帰るか。」

一通り大輝に忠告して満足したのか、アクセルは帰り支度をする。

「・・・あの、俺どうすれば・・・・」

大輝はアクセルに問う。
今日一日でこのままだと、自分の目的をなすことが難しいと思ったからだ。

「知らん・・・自分で考えろ。」

しかし、アクセルは大輝の問いに対して、冷たく切り離した。

「そんな~せめてヒントぐらい・・・」

と懇願する大輝だったが、

「甘えるんじゃね・・・いつまでも誰かが助けてくれる状況だと思ったら大間違いだ。今の状況に無理を感じたら、さっさと、あの世にでも行け。」

アクセルはそれもキッパリ切り離した。
やがて、帰り支度が整ったのかアクセルの前に旅の扉が出現し、アクセルはその中に向かって歩き出す。

「ちょ!待って下さいよ!」

大輝も慌ててお追うとしたが・・・・

「ぎゃん!!」

前のめりに倒れ、地面に顔から倒れてしまった。

「ああ・・言い忘れたが、あの時お前がやった、あの魔炎拳とかいう技とピオラの重ね掛けは、あまりオススメしないぞ。闘気と魔法の同時使用なんて、それなりの熟練者じゃないと体に余計な負担をかけるからな。」

アクセルはそう言って、旅の扉に消えて行った。

(そう言うことは早くいえよ!)

残された大輝はアクセルに対して悪態をついていた。










大輝はいつもの島に帰ってきた後は浜辺で考え事をしていた。

(どうすっかなあぁ~・・・俺)

考えるのはアクセルに言われたこと。

(闘うでなく、戦える戦士になれないようじゃ・・・か)

正直言って大輝には、“あて”がある・・・・・・けれど、

(俺・・・生きていられるかな?)

この方法を使うと、ハッキリ言って今よりもさらに厳しくなる。
その厳しさに、大輝は耐えられるかどうか不安だった。

「・・・・・・・」

『ルールの中で“闘う”のでなはく、文字通りなんでもありの“戦い”の中で生き残れる戦士になれないようじゃあ、お前の目的を達成することなんかできないぜ。』

「!!・・・えーい!!やってやる、やってやるぞーー!!」

そう叫び、自らに気合を入れた後、大輝はその“あて”の所に向かった。













――キュイイィン――

俺はアンナさんに頼んである人の所に来た。

「・・・・何の用だ・・・」

その人と言うのはこの人・・・ミストバーンさんだ。



「ミストバーンさん!!・・・・俺を鍛えてください!!」

俺はガバッとその場で土下座をした。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

なに?この沈黙?


いまだにこの雰囲気には慣れない。
ハッキリ言って、この空気に慣れることなんかできないわ!!






「・・・・・なぜだ?・・・お前の修行はアンナに任せたはずだ。」

ミストバーンさんが聞いてきたので、俺は表を上げて言った。

「アンナさんの修行も受けます・・・けど、俺はミストバーンさんにも鍛えてほしいんです!!」

これが俺の気持ちだ・・・アクセルさんは言っていた、「アンナは甘すぎる」っと、
むろん、俺はアンナさんが甘いとは思ってないけど・・・・

(このままじゃダメなんだ・・・)

そうだ・・・俺はアンナさんどこか甘えていたのかもしれない。
いや、恐らく甘えていたのだろう・・・・だから!!

「お願いします!!俺に“戦い”を教えてください!!」

俺は再び深く頭を下げた。




「・・・・・・」

ミストバーンさんは、そんな俺をただ見つめていただけだった。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

そして、しばらすると・・・・


――ズウウゥゥン――


威圧感が襲ってきた。


「!!!!ッッツ!」

・・・・っ・・・この威圧感・・・・・・バーンさんクラス・・・・話には聞いていたけど・・・・こ・・れは。


「・・・・・ぐ・・・つっ・・・ううっ・・・・」

俺は歯を食いしばって、何とか耐えようとする・・・・・
ギリッと強く食いしばったせいか唇から血が漏れ出した。



「・・・・・・・」

「・・・あっ・・・」

「・・・・・・・」

「・・う・・あっく・・・」


時間にして、十秒だったのか、一分だったのか解らない・・・
けど、俺にはものすごく長く感じた。

「・・・・・ふうぅ」

やがて、威圧感が消えていった。

「・・・・・あの・・・・ミストバーンさん?」

俺は恐る恐るミストバーンさんに問いかける。

「・・・いいだろう。」

帰ってきた返事は肯定の言葉だった。

「・・・・あ・・・ありがとうございます。」

「勘違いするな・・・私はバーン様の目的のために貴様を強くするだけだ。」

・・・うん・・・なんつうか、この人・・・・もう少し態度を軟化させてほしいって思うのは俺の我儘なのかな?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

「そうですか・・・・お父様に・・・」

俺はミストバーンさんの了解が得られた後、島に帰ってきてアンナさんに報告した。

「しかし、そうすると大輝さんは、私とお父様・・・さらに、アークの修行を受けるということになりますね。」

「あはははは・・・・」

アンナさん・・・・それについては、もはや笑うしかないですよ・・・・・はあぁ~~





「所で、アークの修行はいかがでしたか?」

アンナさんが聞いてきたので、俺はあの人に抱いた感想を言った。

「・・・・いろんな意味ですごかったです・・・・・」

うん、これは本当にそう思った。

「はあああ・・・そうですか・・・・」

アンナさんは苦笑いを浮かべるだけだった。
でも―――

(これからはこの人とも付き合っていかなくちゃいけないんだよな~)

俺はアンナさんにもらった資料に目を落とした。






アクセル・ヴァイスハイト



種族は人間。


性格は一言で言うと、女好き・・・・いや、煩悩の塊と言ったところか。

一番初めにアクセルが起こした事件は、下界への無許可による滞在。
しかも、その理由が「世界中の美少女!美女!美熟女を俺の物にするんだーーーーー!!」という、要はただナンパしに行ったという下らん理由だった。
その後、神界などでも覗きなどのセクハラ行為をし、一度刑務所に入れられたが「おねいさーーん!!二人で愛の巣という牢獄に入りませんか!!!」と、そこに勤めていた女性に片っ端からナンパし、アクセルがいた刑務所は女性の就職率が落ちるなどの苦情が殺到した。
あまりにも、苦情が来るので当時の神が反省の意味で地獄に落とすと、「俺がなにをしたんだーーーーー!!」と反省したかのように思えたが・・・
「はっ!!待てよ・・・地獄に落とされるほどの悪いことをした美女・・・これはお仕置きをしなくては☆!!」などと言い、“ドキ☆第一回美女めぐりツアー☆~in地獄~、等という、ふざけたツアーを計画し、地獄を回りつくした。
ちなみに、この後、地獄に落とされた女性(主に美女)から「罪を償うから、早くここから出してーーー!!」などと言う問い合わせが殺到し、一時期閻魔大王の宮殿がパンクしそうになったことがある。
近年一番の事件だったのが、現神の最高神バーン様の居城バーンパレスに侵入したことだった。
その理由を問いただしたところ「ふっ・・愚問だな、美女がいると聞けば例へ火の中!水の中!神様のお膝元でも会いに行く!!それが、この俺・・アクセル・ヴァイスハイトだ!!」という、要はいつも通りの理由だった。


ここまでだと、ただの変態のように見えるが・・・実際のとこはそうではない。


アクセルの実力は正直言って、世界全体で見てもトップクラスに入る。
本人自身の魔法力や闘気は決して低くはないけど、他のトップクラスの連中と比べるとやや劣る。
だが、それをうまくカバーできているのだ。


アクセル自身は魔法は使えない・・・そのため、魔科学や科学・罠を用いた戦闘を得意とする。
それらを扱う技術は世界全体でもずば抜けている。
さらに、神の監視を潜り抜けるその隠密性や世界最高クラスの技術力を持つデスタムーア様並の技術力・・・自らが世界最強のなんでも屋と名乗れるだけの実力を持っている。
また、面倒見も女性限定でよいが、男性にも依頼ならそれほど冷たい態度は取らない。
アクセルが育てた者は、かなりの好成績を収めた者に育っている。
活用性で言えば、世界全体でみてもトップ3に入るぐらいだろう。



これほどの優秀なら神に推薦されてもおかしくないが・・・それは、永遠に来ないだろう。
それ以前に、こいつが神になったら違う意味で世界が崩壊しそうで怖いというのが今の神々の心境だ。


しかし、これほどの戦士をただ遊ばせておくには勿体ないというのも事実だ。
そのため、神々はアクセルと半ば同盟のような形をとっている。
というより、何をするか解らないので、監視の意味を込めてこういった形をとった方がいろいろと都合がいい。


ちなみに、一番仲がいい神様はデスタムーア様。
やはりどことなく科学者気質な所や「ムーアレーダ-」・「アクセルキック」などと言った、自分の名前を付けたがる所も気が合うようだ。
・・・・もっとも、一番気が合うのは別なものであろうがな・・・・・
ちなみに、この二人が研究していた時、近くにいたムドー様は一か月ほど入院したようだ。












・・・・・・・・・・・うん・・・改めてみるとスゲー人だな・・・いろんな意味で



(こんな人とこれからも付き合って、尚且つミストバーンさんの修行も受けるんだよな~)




はははっ・・・・俺・・・選択間違ったかな・・・・・






















ピコーン☆大輝に死亡フラグが立ちました☆























(ちょ!!待てええええええぇぇーーーーー!!何!!?そのフラグ!!!??)

















●物体出現魔法・・・イメージした物体を作り出す魔法。
          DBのピッコロや界王神が使っていた魔法。



















あとがき

三人目の師匠登場の回でした。
一応師匠はこれ以上増やす予定はありません。
一時的には他の人も加わることがあるかもしれませんが、基本的にはこの三人です。

中―アンナ・ミストバーン

外―アクセル

と言った形をとっていきます。

アクセルの性格に関してですが、主人公にこう言った助言をする人って大体こう言った感じなんですよね(これはやりすぎかもしれませんが・・・)

亀仙人とかもそうですしね・・・・・

“兵士”と“戦士”、“闘い”と“戦い”の違いは、作者の頭ではこれが精一杯でした。

さて、今回立った大輝の死亡フラグ・・・一体どうなることやら・・・・・

では次回。








感想返し


<九尾さん>

大輝も大学生ですからね~まだまだ無理ですよ。

マージに関しては今のところ特には決まっていません。


<nanoさん>

マージ「私のニコポ力は53万以上だ!」

まあ、すぐにはなれないでしょうね、それはこれからの展開ってことで。

うらやましいどころか大輝にとっては地獄かも知れませんね。
なにしろ、向こうは純粋に父と慕ってきているわけだし・・・・







[15911] 第十二話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:09
第十二話














――60年目――




「はあぁはあぁはあぁはあぁ・・・」

「・・・・・・・・・」

どこまでも荒野が広がる空間で二人の男が対峙していた。


一人は大輝・・・・だが、その姿は凄惨なものだった。
頭、顔、胸、腕、足など体の至る所からは血を流し。
その顔は苦痛に満ちている・・・・正しく、満身創痍の状態だ。


もう一人の男はミストバーン。
しかし、こちらは大輝と違い、傷という傷が見えなかった。
ローブのところどころに赤いシミが付いているが、恐らく大輝の返り血だろう。


二人の状況は文字通り、まったくの真逆だった。








「・・・・・・・」

――スウゥ――

ミストバーンは静かに、しかし、迅速に大輝に襲いかかる。
大輝は、その姿を捉へ回避しようとするが・・・・

「ぐがっ!」

しかし、その場から動けず、ミストバーンの攻撃をまともに受けて、吹き飛んでしまう。

「がっく・・・がああっつ・・・」

地面をゴロゴロと転がっていき、ようやく止まった。
大輝は立とうとするが・・・・

「くっつ・・っつ・・・うっ・・」

顔に苦痛の表情を浮かべながら、立とうとする。
しかし、そのスピードはあまりにも遅すぎた。
まるで、見えないなにかに押さえつけられているように・・・・

「っつ・・・ああぁ・・・ああぁ・・・」

やがて、歯を食いしばりながら、ようたく立ったが・・・・

――ダンッ――

「ぐわっ!」

立った瞬間に、待ってましたとばかりに、ミストバーンが攻撃を加えた。

――ガンッ、ガッ、ドンッ・・・・――

さっきのように、大輝の体は吹き飛んでいき、地面を削った。
大輝もなるべく早く立とうして、立ったが・・・

――ダンッ――

またもや、ミストバーンに立った瞬間に攻撃され、吹き飛んでしまう。


それからは、この繰り返しだった。
大輝が苦労して、やっと立ったところに、ミストバーンが攻撃する。
その攻撃を避けられず、地面をサッカーボールのように転げまわる・・・
第三者が見たら、虐待か?と疑われる光景だ。







なぜ大輝はこうまで一方的ににやられているのだろう?



確かに今の大輝とミストバーンとでは天と地・・・いや、遥か銀河のかなたまでの差がある。
だが、ミストバーンとて、さすがに全力を出していない。
では、何が理由なのか?
それは、今の大輝にあった。




今の大輝には100倍の重力が掛かっている。
それだけでも負担になるのに、そこにミストバーンの容赦という言葉がない攻撃を受けているのだ。。
そのため、ミストバーンの攻撃を避けられず、今のようにただ攻撃を受け続けるサンドバックのようになっていたのだ。













「ああ・・・あっく・・が・・・」

大輝は崖まで追い詰められ、落ちないよう左手だけで自身を支えていた。
しかし、それも長くは続かないだろう・・・なぜなら、大輝には100倍の重力が掛かっている。
はたして、それだけの重さを、しかも片手だけで支えるのはどれほどの苦痛だろうか。

「・・・・・・・」

ミストバーンはそんな大輝をただ見つめていた。
普通なら、大輝を助けて、修行の続きをするのだろう・・・“普通”ならな。


――グシャ――


「ぐあああああああああぁぁぁぁ!!!」

ミストバーンは大輝の左手を潰した・・・そう“潰した”のだ。
支えを失った大輝は苦痛の声を上げながら落ちて行く。
当然だ・・・支えが無くなったのだから。

「ぐ・・・がっく・・・」

大輝は崖に落ちながらも全身に力を回し、飛ぼうとするが・・・・

「ビュートデストリンガー。」

少なくても、目の前の男・・・ミストバーンには待つ優しさもなければ義理もない。


*ビュートデストリンガー・・・ミストバーンの特技の一つ。鋭い爪を高速で伸ばし、相手を貫いたり、捕獲する技。


「うわっ!・・・っ!!」

ミストバーンから五本の鞭のように撓る爪が伸びてくる。
大輝はそれを回避することができず、首、両腕、両足を拘束された。

「・・・・フンッ!」

そして、そのまま引っ張り上げられ・・・・

「がっ!」

地面に叩きつけられた。

「ぐはっごほ・・・」

大輝は地面に叩きつけられた衝撃に思わず血を吐き出してしまった。
果たして、100倍の重力が掛った状態で叩きつけられる時に味わう衝撃はどれほ凶悪なものなのだろうか・・・

――ヒュルン――

「ぐわっ!」

しかし、ミストバーンはそんな大輝を気にも留めず、再び叩きつける。

――ダンッ――

「がっ!」

――ダシャッ――

「ぐわっ!」

――ガンッ――

「があっ!」

それから、しばらく荒野に大輝の苦痛に満ちた叫び声が響いた。





















「ああ・・・っあああ・・・」

「・・・・・・」

一体、どれほどの時間が経っただろうか?
叩きつけられては引っ張り上げ、再び叩きつけられる・・・そんな地獄のようなループがようやく終わった。
だが、今の大輝の姿は悲惨という言葉が似合う姿になっていた。
顔は腫れ上がり、腕は折れ曲がり、ポタポタと流れ出た血が池を作る・・・目を背けたくなる、と言う言葉が良く似合う光景だ。

「・・・・・ふんっ!」

だが、ミストバーンはそんな大輝を遠くの岩山に向かって投げ飛ばした。

――ヒュウゥゥーーーードオォンッ――

大輝は何も抵抗することなく、岩山に激突した。
本来ならこれで修行は終了しただろう・・・なぜなら、大輝には最早抗う術がないのだから。
だが―――

「・・・・・」

ミストバーンは自らの手のひらに暗黒闘気で作ったエネルギー弾を作り出し・・・

「・・・・・・はっ!」

大輝の向かって放った。

――ヒュウウゥゥーー――

エネルギー弾は真っ直ぐ大輝に向かっていき・・・・


――ドオオオオオオォォォン――


周りを強烈な光と爆発音が包んだ・・・・・・





















ピコンピコンっと特徴的な電子音が鳴り響く。
その音の発信現である半球型の機械の中・・・メディカルマシーンの中に特殊溶液につかり大輝は眠っていた。

「・・・・・・」

「父・・・・」

そんな大輝を心配そうに見つめている二人がいた。
一人はアンナ、もう一人はマージだ。

「・・・・アンナ、回復にかかる時間は?」

そこにミストバーンが来て、淡々とした口調でアンナに問う。

「・・・・三日後には・・・」

アンナは近くにあった機械の画面を見ながらミストバーンに告げる。
ミストバーンは、そうか・・・と言葉短く漏らし、その場から消えた。





「・・・・どうかしましたか?マージ?」

アンナはマージに少し困惑しながら聞いた。
マージはキッとミストバーンがここに来てから、ずっと忌々しそうに睨みつけていた。
少なくても、アンナは今までマージのこんな顔をみたことがなかったからだ。

「あいつ・・・・嫌い・・」

マージはアンナの問いに、静かに、しかし、怒気を含んだ声で答えた。

「いつも父を虐めるだけ虐めて、手当てもしない・・・・確かに父はそのおかげで、信じられないほど強くなった・・・・・けど、やっぱり私はあの影男は嫌いだ。」

「・・・・そんなにですか?」

「うん・・・アンナには悪いけど、父に止められていなかったら、かみ殺したいほど・・・・」

そう乱暴に言葉を漏らした後、再び心配そうに大輝を見つめた。



ハッキリ言って、マージはミストバーンに、良い感情を抱いていない。
いくら修行のためとはいえ、父と慕う人を毎回毎回死ぬ寸前まで追い詰められるほどボロボロにされたら、良い感情など沸かないだろう。
それこそ、先ほどマージが言ったようにかみ殺したいほどに・・・・・
しかし、マージはそうしない。
それは、大輝に止められていることと、相手との強さの違いを本能的に解っているからだ。
それに、そんなことをすれば大輝に迷惑をかけるから・・・だから、マージはミストバーンと戦おうとはしない。








(はああぁぁ~)

一方のアンナは少し落胆した表情だった。

(甘い・・・・ですか・・・・)

その原因は、アクセルやミストバーンに言われたこと。



確かに、アンナは甘いとこがあるのかもしれない。
実際、今の大輝は100倍の重力に耐えられるほどに成長している。
しかも、僅か10年でだ・・・・・・
10年とはいえ、自分が鍛えていた時は10倍の重力で動けるのに、約20年掛った。
そう考えると、自分の鍛え方は甘かったのだろうか?




それに――――


「・・・・・・・」

アンナはチラッとメディカルマシーンの中にいる大輝に目を向ける。



今の大輝の傷の具合は、死ぬ寸前のレベルだ。
本来なら、ベホマなどで回復するのだが、それはミストバーンから止められていた。
それは大輝の体をてっとり早く強靭な物にするためだ。


正直言ってアンナクラスの魔法は、一般の人間から見たら神秘そのものだ。
それこそ、神と言われて納得するぐらいの・・・
しかし、それは逆に考えると、一瞬で死ぬ寸前の怪我まで回復してしまう。
これは、“鍛える”という意味では、あまり適さない。


ベホマなどで回復された体は、“今”の体の全快状態にすることができる。
ミストバーンの狙いは、あくまで回復は促進に留めるだけで、“今”より強靭な体を作ることだった。
そのおかげとミストバーンによる、実戦式の修行をすることにより、今の大輝は信じられないほど強くなっていた。



無論、アンナとてミストバーンのやり方は理解できている。
では、なぜ?アンナは今まで基礎を繰り返していたのか?
それは大輝にあった。


アンナの役職はバーンパレス親衛隊長、そのため、新人を鍛えることもあったが、親衛隊に入隊する人達はある程度基礎ができあがっていた人達だった。
それに比べ、大輝は文字通り“0”の状況だった。
だからこそ、基礎訓練を繰り返したのだ。



正直言って、今の大輝がミストバーンの修行に耐えられている要因は、アンナの修行による所が大きい。
基礎がしっかりしているからこそ、耐えられる・・・・そう考えると、アンナの判断は決して間違っていなかった。














――70年目――



「すーーーーはっ!!」

シュっと突き出した拳が風切り音を鳴らす。

「はっ!」

続いて繰り出した蹴りも鋭い風切り音を鳴らした。

「はあああぁぁーーー!!!」

気合を込めながら、拳や蹴りを繰り出す。
そのたびにシュシュッと鋭い風切り音が響いた。




「ふ~ウォーミングアップはここまでにするか・・・」

俺は息を吐いて、呼吸を整えた。











「大輝さん・・・よろしいですか?」

「お願いします。」

ウォーミングアップが終わったころに、アンナさんが聞いてきたので俺は肯定の返事を返した。







今いるのはいつもの模擬戦用の空間だ。


それにしても――――

(つらかった~~~・・・本当に辛かった~~~)

今日まで、ミストバーンさんによる地獄・・・比喩表現ではなく文字通り地獄の訓練だった。
ううっ~マジ辛かったよ~
つーか!何あの人!!
鬼や悪魔って言われても、俺信じるぞ!!絶対!!
それに、文句を言おうとしても・・・・・怖くて言えない。
仕方ないじゃん!!あの人に言おうとすると本能が止めるんだよ!!!
厳しいってレベルじゃないぞ!!あれは!!
・・・・まあ、そのおかげで信じられないほど強くなったけど・・・・・・


けどさ―――

(いくら、100倍に慣れたからって・・・あれはないだろ・・ミストバーンさん・・・・・)

100倍の重力に慣れなた慣れたで、次に待っていたのが・・・・・


――パアアァァン――


周りを光が包んで、今回のバトルフィールドに変わった。


とっと・・・今は目の前の模擬戦に集中するか・・・・










今回のバトルフィールドは、緑があり、海のようなものがる、他にも地球で見かけない変わった形の木があった。
・・・あれだ、どっからどう見てもナメック星だ。

(ナメック星ねぇ~)

つーことは・・・今回の相手はザーボンかドドリアあたりかな?


――パアアァァン――


俺が今回の相手のことを考えてると、目の前に光が現れて今回の相手が姿を現した。


































「うおおおおおおおぉぉーーーー!!!リクーーーム!!」 

地球人に近い外見で、髪型がパイナップルのような筋骨隆々とした大男が名乗りを上げる。



「はああぁぁーーっけっけ-ー!!!バータ!!」

体が青く、一番の高身長の男が名乗りを上げる。


「ふんっ!はあああぁぁーーー!!ジース!!」

美形で地球人に近い姿をしているが、体が赤く、長い白髪の男が名乗りを上げる。



「ほおおおおぉぉーーー!!グルド!!」

一番背が小さく、体が緑色で全体的に丸く、目が四つある不気味な男が名乗りを上げる。



「こおおおおおぉぉーーーっあ!!ギニュー!!」

体は薄い紫色をしており、頭には血管が浮き出ていて黒い角が2本ある男が名乗りを上げる。






リクーム「み」

バータ「んな」

ジース「そ」

グルド「ろ」

ギニュー「って」






「「「「「ギニュー特戦隊!!!」」」」」


*背景にバラを思い描いて下さい






















――ヒュウウウウウーーー――

と、一陣の風が吹いた。



「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」



大輝はどう反応していいか解らず、しばらく沈黙していた。



「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」



俺の名はリk「歌うな!!苦情来るぞ!!!」

だって、みんな喋らないんだもの・・・・

「仕方ねぇ―だろ!!生で見ると、正直どう反応していいか解らねぇ―んだよ!!!」















「へっへっへ、なんだなんだぁ~どうな奴が相手かと思えば・・ず~いぶん冴えない奴だなぁ~」

巨体の男・・・リクームが顔に笑みを浮かべながら言う。

「ふふふっ・・・まあいい・・たっぷりとかわいがってやるさ・・・」

ギニューが不敵な笑みを浮かべながら言う。

「かわいがると言っても、よしよしのことじゃないぞ。」

ジースがギニューの言葉に補足を入れた。

「バカ!・・いちいち言わなくていいんだよ!」

それに対し、ギニューはそう窘めた。










「さてと・・・敵は一人・・・か・・」

ギニューは大輝を見据えた後、そう言葉を漏らす。
そして、他の隊員達に目を向け、

「よし、先ずは俺からやらせてもらおう。」

そう言い放った。
しかし、他の隊員達も黙っていられず・・・

「そりゃないですよ、ギニュー体長~」

「そうですよ、この間だってギニュー体長がおいしいとこもっていっちゃたじゃないですか~」

などど、ギニューにクレームを付ける。
ギニューも、さすがに気まずくなったのか、

「解った解った・・・ならお前らに譲ってやる。」

と言った。
その言葉を受けて、他の隊員達も「さっすがギニュー体長!」っと褒めたたえる。

「どうだ!俺は優しいだろ!」

「「「「おーー!」」」」

ギニューの言葉を聞いて、隊員たちは大きく手を空に上げて賛同の意を示す。
・・・・お前ら戦う気あるのか?





一方の大輝は・・・

(解らん・・・実際に会ってみても、こいつらの攫みどころが見えてこない・・・・)

と、頭を思わず抱えていた。

「・・・・・・」

チラッと大輝はギニュー特戦隊の方を見る。

「「「「じゃん~けん~ポン!」」」」

そこには、戦う順番をじゃんけんで決めている、ギニューを除く他の隊員達がいた。

「・・・・はああああぁぁ~~~~」

大輝は思わず、ため息を漏らしてしまった。






しばらくして――――






「・・・・・」

「へっへっへっへ・・・」

大輝と対峙しているのは、ギニュー特戦隊の一人・・・グルドだ。
あの、じゃんけんの結果から、グルドが一番初めに戦うことになった。
ちなみに、他の隊員たちは消えて、今はいない。

「へっへっへ・・・どうした?ビビって声も出ないのか!?」

グルドは大輝に向かって、挑発的に言う。

《アンナさ~ん・・始めていいっすか?》

《かまいませんよ・・・》

しかし、大輝はそんなグルドを無視して、念話でアンナに確認をとった。
帰ってきた言葉が肯定の返事だったので、大輝は戦闘態勢に入った。







(さ~て・・・・頑張りますか・・・)

大輝は自らに気合を入れて、一気に気を解放した。

「はあああああぁぁぁぁ!!!」

大輝の体を紫色の気が包みこみ、地面が砕けて塵が舞う。

「な・・・なんだ?」

グルドも大輝の変化に気付いたのか、困惑した表情になった。

「はあぁ!」

やがて、大輝は空に飛び・・・・

「でやあぁぁ!!」

気功波を放った。





























あとがき

ミストバーンの修行ってこんなもんですかね?
原作でもヒュンケルが「俺に物を教える時ですらほとんど口をきかなかったくせに・・・」と言っていたので、実戦式で教えると思うのですが・・・

さて、今回出ました!!ギニュー特戦隊!!
相手は厄介な能力を持つグルド・・・大輝がどう戦うかは次回で・・・・

ところで、ギニュー特戦隊の雰囲気ってこんなんでしたかね?
自分なりに出せたと思うのですが・・・・・

では次回。














感想返し


<九尾さん>

一般人にプライドがどうこう言われてもピンっとこないでしょうからね。
バーダックにメダパニを使ったとはいえ、ほとんど真正面から戦いを挑んだようなものでしたしね・・・

大輝の戦い方は、たぶん、それほど奇策を用いることはないと思います。
やっぱし、DBよりの戦い方になると思います。

根性に関しては、一応アンナの修行に耐えられていることを考えれば、一般人より少し高いといったところでしょうか。


<nano>

今回さっそく死にかけましたwww

アンナは恋愛感情は湧いてませんね。
どっちかと言えば、弟・・・下手したら息子のように感じています。



















[15911] 第十三話(VSギニュー特戦隊 ①)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:12
第十三話(VSギニュー特戦隊 ①)











「でやあぁぁ!!」

大輝から強大なエネルギー波が放たれる。
その威力を考えれば、敵を容易く飲み込み、周囲一体を破壊するだろう。
しかし、そんなエネルギーの塊が迫っているのにもかかわらず、標的・・・グルドは迎撃体制にも避ける素振りも見せない。
やがて、エネルギー波が目前に迫ってくると―――

「止まれーーーー!!」

と、叫んだ。
するとどうであろうか?グルドが叫んだ瞬間、周囲は文字通り“止まった”のだ。
目前に迫っていたエネルギー波だけでなく、風で揺れていた草木も動物も・・・全てが“止まった”のだ。


グルドは止まったのを確認すると、タッタッとその場を急いで離れた。
そして、大輝のエネルギー波の範囲外に逃れると、

(よ~し・・・ここまで来れば・・・・)

そう思って、クルッと大輝の方に目を向けるが・・・・

(あ?あれ!?・・・いない!!?)

エネルギー波の発射元・・・すなわち大輝の姿はそこになかった。
どこだ!!?っと、焦った表情で周囲を探すが、大輝の姿は見つからなかった。
やがて、グルドは苦そうな表情になってきた。
顔は赤く、全体に脂汗が噴き出して来て、とてつもなく苦しそうだ。

(も・・・もうだめだ~~~)

ブハ―――っとグルドはその場で大きく息を吐いた。
すると、さっきまで止まっていた周囲の光景が再び動き出した。


――ドオオオオオォォォン――


当然、大輝が放ったエネルギー波も動き出したわけだから、地面に当たり大きな爆発を起こした。

「ううっ・・・っく・・・」

そのエネルギー波の威力が予想以上に大きかったのか、グルドのとこまで砕けた岩が飛んできて、グルドは思わず両手で顔を覆った。





ギニュー特戦隊はフリーザが全宇宙から集めた精鋭部隊である。
文字通りのエリート戦士と言うわけだ。
スペシャルファイティングポーズ呼ばれる、どこかの戦隊物のようなポージングをとるなど、少々ふざけた態度をとったりするが、その実力は本物である。
フリーザからも評価が高く、かつ信頼されている所を見れば、その実力は窺えるだろう。
そんな、強大な力を持つギニュー特戦隊だが・・・グルドだけはその中で他の隊員に比べて、大きく戦闘力は落ちる。
それこそ、純粋な戦闘数値だけを見れば当時のべジータにも劣る。
では、なぜグルドはギニュー特戦隊に入れたのであろうか?
それは、グルド自身の能力にあった。


グルドには先ほど見せた“時間を止める”などの規定外な超能力が使える。
その他にも、他の隊員にはない特殊能力を持っている。
すなわち、純粋な戦闘力ではなく、その特殊能力が認められて、ギニュー特戦隊に入れたのだ。
全宇宙から集められたフリーザ軍の戦士達を抑えたことから、その力の強大さが解るであろう。


さて、時間を止めるなどは一見反則な能力だと思うが、この能力を使うにはある条件がある。
その条件とは“時間を止めている間は息を止める”というのが条件である。
一見簡単そうに見えるが、実のところはそうではない。
なにしろ、止めている間は常に息を止めなければならない。
しかも、その間もエネルギーを消費し続ける。
息を止めているだけでも辛いのに、エネルギーの消費・・・そんな状態で相手に攻撃をすると考えれば、相当辛い物になるだろう。
・・・・・もっとも、それを差し引いても、厄介な能力には変わりないだろうがな。







(さ~て・・・・どうすっかな?)

一方、大輝はエネルギー波を放った後、グルドの死角になる岩陰にルーラで移動していた。










俺は岩陰に隠れながら、グルドの動向を探っていた。
岩陰に隠れたのは、グルドはスカウターを持ってないし、フリーザ軍の奴らは気の探知もできない。
そのため、必然的に目で探すことになる・・・それは、姿さへ見せなければ、こちらが一方的に相手の情報を知ることができるということだ。

(さ~て・・・・どうすっかな?)

俺はその岩陰で、グルドとどう戦うかを考えていた。





(一番とってり早いのが、力で押すことなんだけど・・・・・)

一番手っとり早くかつ確実なのがこの方法だ。
なぜなら、グルドの力はハッキリ言ってこの俺より低い。
そんな相手には力押しの正攻法が一番早くすむんだけど・・・・

(ち~とばっかし危険だな・・・・)

そう・・・・この方法はグルドには少し危険だ。
奴自身の力はそれほど脅威な物にはならないけど・・・問題は奴の能力だ。



あいつの時間を止める能力は俺には打ち破る方法はない。
遠距離から攻撃しても、時間を止められちゃ意味がない。
むろん、やつのエネルギーが切れるまで攻撃し続ければいいんだけど・・・この後には、後四人が控えているんだ。
無駄なエネルギーは使いたくない。


かといって、近距離戦闘で攻めるにしても、こっちの方が危険だ。
なにしろ、奴には“金縛りの術”があるからな。


「・・・・・・・」

俺は神経を研ぎ澄ませて、グルドの様子を窺う。




グルドから感じる闘気はそれほど多くない・・・・その代わり、感じる魔法力はかなり高い・・・しかも俺以上の魔法力だ。
恐らく、あいつは闘気を使って戦う戦士タイプではなく、魔法を使って戦う魔法使いタイプなのだろう。
・・・・だとすると、ますます厄介だな。



魔法ってのは闘気と違い、攻撃でも補助・回復でもない、メダパニやマヌーサなどと言った厄介な能力を持つものが多い。
つまり、さまざまな応用に使えるのが魔法だ。
グルドの時を止める能力や金縛りの術もこっち側に入ると思う。
こういった能力を破るには、それ以上の力で打ち破れば問題ないけど・・・・

(・・・・恐らく、無理だな。)

原作においても、パワーアップしたクリリンと悟飯の二人を金縛りの術で物理的に動きを封じたこと。
そして、今こうして感じる魔法力のことを考えると、今の俺には無理だな。


むろん、全力で行けば恐らく打ち破れるだろうけど、後々のことを考えると、得策ではない。



(チッ・・・本当に厄介だ・・・・)

そもそも魔法ってのは、使い方次第では格上の敵と互角以上に戦える力を持っている。
それは、グルドが他の隊員達に戦闘力が大きく劣るのに、ギニュー特戦隊に入れていることからも解る。
つまり、それはグルドの能力がそれほど強力と言うことだ。



(考えれば考えるほど、グルドと言う存在が厄介に思えるよ・・・・本当に)

とは言っても、いつまでもこうしているわけにはいかないしな~



「・・・う~ん・・」

俺は周囲に目を向ける。

(平野が広がっているけど・・・ところどころに、人が隠れられそうな岩があるな・・・・)

エネルギーの消費を最小限にとどめることを考えると、やっぱりこれが一番の最善かな?

(そうと決まれば、さっそく行動開始としますか・・・っと)












「く、くそ~どこに行きやがった!!?」

グルドは周囲を見渡し、大輝の姿を探していた。
しかし、どこを探しても見つからない。
当然だ、この時、大輝はすでに死角になる岩陰に隠れていたのだからな。
気の探知もスカウターもない彼には、それを知る術がなかった。

――ヒュウウウゥゥーーー――

そうして、しばらく周囲の捜索をしていると、ふとどこから何かが飛んでくる音が聞こえてきた。
グルドは、なんだ?と思い音の方向に目を向けようとすると・・・・

――ドオオオォォン――

と、自分のすぐ近くが爆発した。

「なっ!!」

その爆発の衝撃でゴロゴロと転がり、急いで立ち上がって目を向けると、幾つものエネルギー弾が飛んできた。

「うわああああぁぁーーーーー!!!」

ドオォーンドオォーンっと幾つものエネルギー弾の嵐が飛んできて、大きな爆発音と共に周囲を破壊する。
グルドはその中を走って逃げるが・・・・


――ドオオオォォン――


「うわっぷっ!」

一つのエネルギー弾の爆発に巻き込まて吹き飛んでしまう。
そこに、追撃をかけるようにエネルギー弾が迫ってきた。

「!!ッ止まれーーーーー!!!!」

ピタッと再び周囲の時間が止まった。

(へぇへぇへぇへぇ)

その間に、グルドはエネルギー弾から逃げる。
そして、ある程度距離をとると・・・・

「・・・・んんっ!ぶはあぁーーー!!」

と大きく息を吐き、時間が動きだした。






「はあぁはあぁはあぁ・・・くそーーーー!どこにいる!!?」

グルドは大きく深呼吸をして息を整える。
そして、大輝の姿を探そうと、エネルギー弾が飛んできた方向を探すが、そこに大輝の姿はなかった。

(ちくしょーー!!なめやがって!!)

グルドは大輝に悪態をついた。
正直、自分がバカにされているようにしか思えなかったからだ。

「グルドオオォォーーー!!」

そうしていると、上空から自分を呼び声が聞こえた。
グルドはその方向に目を向けると・・・・


「はああああぁぁ!!」

大輝と・・・・


――ヒュウウウウウウゥゥウウウ――


大きなエネルギー波が迫ってきた。


「!!!くわああぁぁーーー!!止まれええぇぇーーー!!は~んっ」

グルドは危険と感じたのか、急いで時間を止めた。
いきなりのことでビックリしたのか、目をつぶってしまった。
そして、恐る恐る目をあけると・・・・

(・・・ぎょえええぇぇ!!)

と思わず、目が飛び出してしまうほど驚いてしまった。
なにしろ、エネルギー波が後少しで自分に当たるほど間近に迫っていたのだから、無理もない。

(くっ!)

グルドはその場を急いで離れた。
しかし、ある程度離れると・・・

(落ち着け・・・わざわざ、逃げることはないんだ。)

せっかく、相手の姿を捉えたのだからこのチャンスを逃すわけにはいかない。
そう思い、上空のエネルギー波を放った状態で止まっている、大輝に目を向ける。
そして、攻撃しようとするが・・・・

(ふーん!ふーん!・・・まずい・・・エネルギーが・・・)

大輝に向かって、エネルギー波を放とうとするが、エネルギーを消費しすぎて、攻撃できなかった。


――ガラッ――


しかも、不幸なことに、彼が立っていた平野より少し高い岩が砕けて、グルドはその場で倒れてしまった。

「!!ぶううううぅぅーーーー」

当然倒れた衝撃で、息を吐き出してしまった。


――ドオオオオォォン――

そして、動きだしたエネルギー波が爆発した。

「うわあああぁぁーーー!!」

グルドは丸い体のせいか、その爆発の衝撃でゴロゴロとサッカーボールのように転がってしまった。







「っとと・・・あいつ・・・あんなとこまで逃げたのか?」

時間が動きだして、大輝は遠くにグルドが移動しているのに気づいた。

(たく・・・本当に時間を止める能力ってのは厄介だな・・・・)

大輝はグルドの能力に悪態をついた後、その場から姿を消した。









「はあぁはあぁはあぁ・・・・」

一方、吹き飛んだグルドは地面に手を付きながら息を整えていた。

(まずい・・・エネルギーが)

グルドはエネルギーの消費を悟った。
そのため、どこかに隠れて休もうとする。
大輝の姿も、見えず、このままでは負けると思ったからだ。






「ふ~~~~」

ちょうど良い岩陰に隠れながらグルドは一息ついていたが・・・


――ドオオオオオォォン――


「ぎゃあああぁぁ!!」

と、隠れていた岩が吹き飛んでしまった。








「ぅぅつつぅ!・・・くっそーーー!」

グルドは顔を抑えながら立ちあがる。
そして―――

「!!!!!」

こちらに向かってくる、大輝の姿を捉えた。

(よ~し・・・こうなったら・・・・)

スっとグルドは両手首をクイっと少し曲げ、空に上げると言った奇妙なポーズをとった。

「キエエエエエエエエェェェェェーーーー!!!!」

と、奇怪な声を上げた。


――ギイイィン――


すると、大輝の動きがピタっと止まった。
これこそがグルドの奥の手・・・“金縛りの術”だ。

「はあぁはあぁはあぁ・・へっ・・へっへっへっへ!!どうだ!!ざまーみろ!!!」

ははははっと勝ち誇った顔で笑い声を上げる。
この術を自身が使う能力の中では強力で、打ち破るのは不可能だと思ったからだ。

「・・・・・・・」

一方の大輝は自らが危険視していた金縛りの術にかかったのにもかかわらず、無表情のまま声を上げなかった。



もし、グルドが気を探る能力かスカウターを持っていたのなら気付いたであろう・・・・
目の前の大輝がおかしいことに・・・・・・











「へっへっへ・・・さーーーて・・・たっぷりとお礼をしてやるとするか!!」

グルドは笑みを浮かべながら言う。
その笑みは、とてつもなく不気味にみえた。

「ふんっ!」

グルドは手を地面に翳し、勢いよく手を上げると、地面が砕けて、石つぶてが舞う。
グルドが持つ念動力だ。

「くらえっ!」

それを勢いよく大輝の向かって放ったが・・・・

 
――スウゥ――
  

「なっ!!!」

グルドは目を見開いて、驚いた。
自分が放った石つぶてが、大輝の体を通り抜けたからだ。

「な・・・なんなn!」

グルドは最後まで言葉を言えなかった。
それは―――

(あ・・・・・れ・・・・)

グルドは混乱した。
それは、自分の目線がいきなり下がったからだ。



それは―――グルドの首と胴体が切り離されたからだ。












「ふーーーーうまくいったな・・・」

首と胴体が切り離されたグルドの近くに大輝が現れた。

「て・・・てっめーー・・・ど・・う・・やって・・・・」

グルドは酷く掠れた声で大輝に問いかける。

(うわーアニメとかで見たから解っていたけど・・・こんな状態でも喋れるんだな・・・)

大輝は、グルドを見てそんな感想を抱いた。








「どうやって・・・ねえぇ~・・・そんな難しい方法じゃないぞ。」

そう言って、大輝は金縛りの術をくらった“もう一人の大輝”に近づいていった。
そして、大輝が触れると・・・・

――スウゥ――

まるで、煙のように消えていった。

「お前が金縛りの術をかけたの・・・俺が作った分身なんだ・・・・」






大輝がとった方法は以下の通りだ。



先ず、岩陰に隠れながら幾つかのエネルギー弾を作り出す。
それを遠隔操作で操り、グルドに向かって放つ。
グルドの居場所は気を探れば手に取るように解ったし、エネルギー弾の遠隔操作も、それほど今の大輝には苦労にならなかった。
ちなみにこの時使ったのは拡散型で、周囲を広く破壊するようにする。(第七話参照)
これを使うことによって、より一層グルドを焦らす。
わざわざ、グルドの目の前に現れたのもグルドを追い詰めるのが目的だった。


大輝の狙いはグルドを追い詰め奥の手である金縛りの術を使わせることだった。
どんな達人でも、大技を放った後は一瞬の隙ができる・・・大輝の狙いはその隙にあった。
そして、最後の一手に大輝はグルドに向かって自分の魔法力で作った分身を向かわせた。
これは、アクセルが使っていた物質出現魔法をまねした物だ。
しかし、大輝にはアクセルほどの人形を作り出す能力はない。
けれど、表面だけを似せるだけの分身なら、コントロールがしっかりしていれば作れる。
普通の人間のように驚いたりする感情を作らず、ただグルドに向かっていくと言う簡単命令をするだけの分身だから、それほど多くの魔法力を使わなくて済む。
後は、その分身が金縛りの術にかかって油断している所に、一点に集中してカッター状にしたベギラマで攻撃したのだ。


*べギラマ・・・ギラ系の中級呪文。高エネルギーの熱閃で相手を攻撃する。












「ひ・・・・ひきょう・・・・だぞ・・・・」

大輝が分身を消したのを見て、グルドは大輝を非難する。

(卑怯・・・・・か・・・・)

しかし、大輝はそれほど気にした様子もなく、首だけになったグルドに、かつて自分が言われたことを言った。




『「戦いに卑怯もくそもねえんだよ!!要は勝てばいいのさ、勝てば!」』



そう言って、グルドに手のひらを向ける。


「それに、時間を止めたりできる、お前の方がよっぽど卑怯だと思うぜ・・・俺は。」


そして、大輝はグルドに向かってエネルギー波を放ち、とどめを刺した。















(俺・・・・ちょっとヤバイ思考になっていないか?)

大輝はグルドにとどめを刺した後、自分に疑問を抱いていた。
いくら、本物ではないとはいえ、生き物の首を切断しても、特に何もなかった。
しいて言えば、ちょっと悪いことしたと言う思いと、気持ち悪いという思いだった。

(やっぱり、仮想の戦いって解っているからかな?・・・それとも、ミストバーンさんの修行のせいかな?)

う~んう~んっと悩む大輝だったが、目の前に光が現れて一度考えを中断した。

(・・・・と・・・今は次の相手に集中するか・・・・・)

もう一度、自分に気合を入れ直し、目の前の光を睨みつけた。







「へっへっへっへ・・・・」


その光がおさまると、そこにはギニュー特戦隊の一人・・・・リクームが笑みを浮かべながら立っていた。





























あとがき

今回はグルド戦をお送りしました。

グルドが魔法力を持っていることに関してですが・・・DBのキャラでこういった能力を持つ人は魔法力が高いとします。(ピッコロとか)

グルドって改めて考えるとすごい能力を持ってるんですよねぇ~
時間を止めたりするなど、ドラクエで言えば、魔王クラスの力を持ってるってことになるんですよね。

次の相手は、リクーム!!グルドのような厄介な能力を持たないが、そのパワーはとてつもなく強大な相手・・・・どうなることやら・・

では次回。


















感想返し


<九尾さん>

まあ、ミストバーンに関しては作者の考えですから・・・・

大輝の場合、普通の人間ですからね・・・サイヤ人の恩恵なんかありませんからね。

いつも九尾さんの考察はためになります。


<nanoさん>

今の大輝では真・ミストバーンと戦ったら、瞬殺されるでしょうね・・・冗談抜きで・・・・・

サイヤ人だった場合 死にかける→パワーアップ と行くんですけど、
大輝の場合 死にかける→修行→死にかける なんですよね

要は鍛冶屋で剣を作るようなものなんですよね。




























[15911] 第十三話(VSギニュー特戦隊 ②)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:14
第十三話(VSギニュー特戦隊 ②)










「へっへっへっへっへ・・・・」

一歩、また一歩と巨体の男・・・リクームが笑みを浮かべながら大輝に近づいて行く。
その顔に浮かべる笑みは、これから戦うと言うのに、一切の恐怖を見せず、心底楽しそうな笑みだった。

「へっへっへ・・なんだぁ?グルドはやられちまいやがったのかぁ?」

ある程度の距離まで来ると、その場で止まり、独り言のように呟く。
やはり、仲間がやられたことに対して怒りを覚えたのだろうか?

「弱ったなぁ~ギニュー特戦隊のスペシャルファイティングポーズは五人じゃないと、いまいち決まらないんだよな~しかたない・・・ギニュー体長にまた新しいポーズでも考えてもらうか。」

・・・・・どうやら、仲間を倒された怒りより、スペシャルファイティングポーズの様式美を気にしているようだ。

(・・・少しは気にしてやれよ・・・・・・)

大輝は思わず、敵とはいえグルドに同情してしまった。










「すううううううぅぅーーーーーーギニューーーー!!特戦隊!!リク――――ムぅぅ!!トオォォーーーー!!!!」

大きく息を吸って、リクームは名乗りを上げる。
ちなみに、この時、自身のファイティングポーズと言う独特のポーズをした。

「だあぁ!!」

当然、大輝はこの隙を見逃すはずもない。
ダンッと地面を勢いよく蹴り、自身に気を纏いリクームに向かっていく。

「お・・・おおお!!」

そのスピードにリクームは驚いたような声を漏らした。

――ガンッ――

大輝はそのまま突っ込んいき、ヘッドバットをくらわす。
リクームはその衝撃で仰向けに吹き飛んでいく。

「はあぁ!」

そして、大輝は一度上空に飛び立ち・・・・

「でやああぁぁぁ!!!」

スピードを乗せた蹴りをリクームの喉元めがけて打ち込んだ。

「がああぁぁ!!」

上空からスピードを乗せた蹴りをくらい、リクームは苦しそうなうめき声を上げた。
その威力はリクームの巨体が地面にめり込んだことから、どれほど強力だったのか窺えるであろう。

「はあああああああぁぁ!!!」

しかし、大輝はそんなことを気にした様子もなく、さらに追撃の攻撃を加えていった。

――ダンッダンッダンッ――

大輝の拳が叩きこまれるたびにリクームの巨体が地面に沈んでいく。
それに伴い、地面に罅が割れ、細かく砕けた塵が宙に舞う。

「ごっがっぐごごぐううう」

リクームも攻撃を受けるたびにうめき声を漏らす。

「はあぁ!」

やがて、大輝は右手を空に上げ、そして勢いよく振りおろし、今までで一番力を込めた一撃を放った。


――ダアアァン――


「ぐわああああぁぁ!!」

その威力のせいか、さらに深くリクームの巨体が沈み、地面が大きく削れた。
目は大きく見開き、口を大きく開けたその姿は、とてつもなく苦しそうだ。

「でやあぁ!!」

さらに、大輝はリクームの両足を攫み、ジャイアントスイングの要領で投げ飛ばした。


――ヒュウウウゥゥーー――


リクームは吹き飛んでいき・・・・


――ドオオォォン――


岩山に激突した。





「はあああああぁぁぁ!!」

大輝は右手を空高く上げ魔法力を込めていく。

――ボオオオオォォオオオ――

やがて、リクームの巨体をやすやす飲み込むと言ったほどの、巨大な炎の塊が作り出されて・・・・

「メラゾーーーーマッ!!」

それを放った。


*メラゾーマ・・・メラ系の上級呪文。巨大な炎で相手を焼き尽くす。




――ドオオォォーーン――

放たれたメラゾーマは大きな爆発音をたてて、ゴオオォと空高く火柱を立てる。

「はああああああああああぁぁ!!!」

さらに、大輝は呪文のレベルをワンランク下げたメラミを幾つも放った。

――ドオォン、ダアァン、ゴオオォ――

幾つもの炎の塊が飛んでいき、爆発音が絶え間なく鳴り響く。
それに伴い、火柱もより一層高くなっていった。










「はあぁーはあぁーはあぁー」

肩を揺らしながら俺は息を吐き、呼吸を整えようとする。
むろん、この時も、リクームが吹き飛んで行った方を警戒し睨みつけながらだ。


――ゴオオオオオオオォォォオオオオ――


俺の目線の先には、テレビでしか見てことがないような大きな火柱が空高く舞い上がっていて、黒煙がモクモクと立ち上がっている。

「・・・・・・・・・」

しばらくして、煙が晴れていくと・・・・・


「はあぁ~い☆」


そこには、特徴的にバトルジャケットのプロテクターやアンダースーツが破損こそしているものの、ほぼ無傷のリクームが立っていた。



(くそっ!メラ系で攻めても、それほどのダメージはないか・・・・・)

俺はリクームの姿を見て思わず悪態をついてしまった。



俺がわざわざメラ系の呪文で攻めたのは、奴によりダメージを与えるためだ。
リクームはほとんど俺達地球人と変わらない姿をしている。
だから、炎をそのもので攻撃するメラ系を選んだ。
俺も強くなったけど、炎を熱いと思う感覚に変わりないし、火傷もする。
リクームも、俺達地球人と変わらないなら、てっきり火傷ぐらいはすると思ったんだけど・・・・

(予想は外れ・・か・・・・・)

結果は見事に外れた。
体の所々に黒い煤みたいなのがあるけど、これじゃダメージにならない。


リクームはさっき戦ったグルドと違い、特殊能力は持たない。
その代わり、高い攻撃力と耐久力で戦う正統派の戦士だ。
けれど、まさかここまでとはなぁ~











「へっへっへっへ!」

リクームは何事もなかったかのように笑いながら体に付いている煤を払い落とす。
そして、大輝を見据えて―――

「さ~て・・・準備運動はここまでだ、さ~てそろそろへっへっ始めようぜー」

何事もなかったかのように笑いながら告げる。

「お命頂戴ッッッ!!トオオオオォォーーーー!!」

そして、中腰になりながら大輝に尻を向けると言った妙なポーズをしながらリクームは宣言する。
ちなみに、アンダースーツが破損して、尻が丸出し状態になっているので、傍から見たらふざけているようにしか見えない。
だが、リクームはそんなことを特に気にせず、その場で屈み・・・・

「リクームキィィィック!!」

膝を前に出した状態で、勢いよく大輝に突進していった。

(は、早い!!)

――ダンッ――

「があぁ」

大輝は回避しようとするが、リクームのあまりの早さにまともに膝けりを受けてしまう。
二メートルは有るかと言う、筋骨隆々とした大男の膝けりとは、どれほど凶悪なものになるのだろうか?

「くっ!」

しかし、大輝はそんな一撃を貰ったにも関わらず、クルッと一回転し、耐性を立て直し、地面を蹴り空に逃げる。
リクーム同じように自身に気を纏い空を飛び、追っていく。

(ちっ!ピオラ!)

リクームのスピードに対抗するため、大輝は自身にピオラをかけ素早さを高めて空を駆けていく。
それを見て、リクームは一瞬驚いた表情になったが、すぐ笑みを浮かべ・・・

「スピーードッアップゥゥゥーーーーー!!!」

そう叫んだ瞬間、さらにスピードを速めて大輝に迫って行った。
そして、大輝の目線から姿が消えたかと思うと・・・・

「リクームエルボォォォーーー!!!」

「があぁ!」

凄まじい衝撃を頭に受け、大輝はその衝撃に耐えられず、真っ直ぐ下に落ちていった。



 





「おいおいおいッまっさかこれでおねんねじゃないだろうなぁ~」

大輝は海の中に撃ち落とされた。
リクームは大輝が落ちた海面を見つめながら言う。
その口調は大輝の心配などせず、ただ子供がおもちゃを壊れたのを残念がるような声音だった。


――ザパァン――


やがて、水しぶきを上げながら勢いよく大輝が飛び出してきた。
リクームは大輝の姿を目に留めると笑みを浮かべながら攻撃するが・・・

「あん?」

自分の拳が敵に触れたと思ったら、当然ふっと消えた。
そのため、リクームは思わずマヌケな声を出してしまった。

――ガンッ――

「ぬおおぉ!」

そんなリクームに大輝は背後から襲いかかった。

「はああああぁぁぁ!!」

大輝はさらに追撃を仕掛けようとするが・・・・

「へっへっへっへ!」

「ッ!!!」

放った拳はリクームにいとも簡単に防がれてしまった。

「ちっ!」

――ダンッガッドガッ――

大輝はさらに拳を叩きこんでいくが・・・・・

「いいね~まだまだ元気じゃないの。」

リクームはそんな大輝の攻撃をまるで赤ん坊扱いするように受け止めた。
顔、胸、腹などに常人ではとても見切れないほどの拳を叩きこんでいくが、リクームにその全てが塞がれてしまった。
そして、しばらくその攻防が続いていたが・・・

――パシッ――

「ぐっくっ!」

「へっへっへっへ!」

リクームに両腕を攫まれてしまう。

「ぬんっ!」

「ぐうがっ!」

そして、そのままリクームのヘッドバットをくらってしまう。
さらに、ダアンッダアンッと続けて、大輝はヘッドバットを受け続けた。

「がっぐっごあ・・うが・・ぐ・・・」

ヘッドバットをくらうたびに大輝の額などから血が宙に舞った。
その血がリクームの顔に飛び散ったりしたが、リクームに特に気にした様子は見れなかった。
やがて、リクームは大輝を空中でパイルドライバーと同じような体制に固めて、

「ちょああああぁぁ!!」

そのままの姿勢で地面に近くまで勢いよく落下していき・・・・


――ダアアアアァァン――


大輝を落下寸前で離し、叩きつけた。





















「ああぁはあぁ・・ぐふっげふっ・・・」

ガラガラと俺は叩きつけられた地面から這い出る。
ちくしょ~リクームの奴思いっきりやりやがって・・・・顔がめっちゃくっちゃいて~ぞ!!
それに―――

(くそっ!思ったよりダメージがでかい!)

所々怪我して血が出ているけど、骨などには影響がない。
ミストバーンさんの修行の成果が出ているな。
・・・・・まあ、あれに比べたらまだマシな方だけどな
けれど、それをもってしてもやはりダメージが思ったよりでかい。

「へっへっへっへ。」

リクームは余裕の笑みを浮かべながら降りてきた。
そして、そのまま俺に突進を仕掛けてきた。

「!!!ッが」

俺は回避不可能と判断して腕をクロスして防御したが、リクームの巨体の前には意味がなかった。

「ほれほれぇ!」

――ダンッガッドガッ――

そして、そのまま追撃の攻撃をしてくる。
その大木のような腕や脚が体に容赦なく突き刺ささるたびに、木の葉のように宙に舞う。

「うぐっだっぐっが!!」

先ほどのダメージが残った体のせいで、避けられることも防御することもできず、ただ受け続けるだけの状態が続いた。

「ちょああああぁぁ!!」


――ダアアアアアァァン――


「があああぁ!」


やがて、リクームは今までで一番力を込めた拳を腹に叩きこんできた。
俺はそれをまともにくらい、「く」の字の形で吹き飛んでしまった。






「ぐうううぅげあっふ・・あ~あ~あ~」

俺はその場に蹲り、新鮮な空気を吸う。
そのたびにだらしなく開いた口から唾液が地面にポタポタと落ちて染みを作った。

「へっへっへ・・・どうしたぁ~もう終わりかぁ~?」

そんな俺にリクームはとてつもなく軽い声で問いかけてきた。
正直言ってものすごっくむかつく。

「ちっ!」

その態度にむかつきながらも俺は立ってリクームの方を睨みつける。
リクームはそんな俺を楽しそうな笑みを浮かべながら見ていた。

(本当は回復魔法をかけたいけど・・・・)

たぶん無理だな。
こいつのスピードから考えて、回復魔法をかける時間を作れそうになれない。

「ほらっ!避けないと、あっという間にあの世行きだぜ!」

リクームはそんな俺のことを気にせず、手にエネルギーを溜めていった。

「リク―ムゥボンバァァーーー!!」

そして、大きく振りかぶってエネルギー弾を放ってきた。

(!!ッまずい)

俺はすぐさまその場から逃げだした。
しかし―――

「そらそらそらそらそらっ!!!」

リク―ムは掛け声とともに幾つものエネルギー弾を放ってくる。
その威力は一発一発が硬い地面を深く抉り大きなクレーターを作り出した。
さすがにまともにくらってはヤバいので、それを何とか避け続けたが・・・・

――ドオオォォン――

「!!ッう」

さすがに衝撃までは避けきれず、地面をゴロゴロと転がってしまった。







「でっへっへっへ・・・・いいねぇ~いいねぇ~頑張るねぇ~」

リクームは笑みを浮かべながら言う。
その笑みは戦いという名のゲームを楽しんでいるようだった。
けれど、尻を丸出しにしている格好で、笑っている姿は正直言って変態にしか見えない。
まあ、だからこそ余計恐ろしく見えるんだけどな・・・・

「はあぁはあぁはあぁはあぁ・・・」

(・・いやな性格してるぜ・・・ほんと・・・)

俺は息を整えながらも心の中で愚痴る。

「けど・・・そろそろ限界かな?ならフィニッシュといこうか?」

リクームは俺を見据えてフィニッシュ宣言をする。
そして、自らの口にエネルギーをためていき・・・

「リクームゥイレイザ-ガンッッ!!」

エネルギー波を放ってきた。

――ズウウゥゥン――

エネルギー波が俺に迫ってくる。
込められているエネルギーを考えるとまともにくらったら一溜まりもないだろう。

「・・・・・」

俺はその場で胸の前に両手の平を合わせた。

――パアアァン――

手の平にエネルギーを込めていき、やがてドーナッツ型のエネルギーの塊ができた。

「ギルドライバァァー!!」

そして、俺はそれをリクームめがけて放ち、急いでその場を離脱した。

――ズウウウゥゥン――

「!!!!!」

リクームが放ったエネルギー波は俺のギルドライバーの真ん中をすり抜けていき・・・・

――ドオオオォォン――

大きな爆発音をあたりに轟かせ、島を丸ごと一つ吹き飛ばした。
そして、俺のギルドライバーは・・・・

――ドオオオォォン――

「ぬわああああぁぁ!!」

リクームに命中し、爆発した。
















「はあぁはあぁはあぁはあぁ・・・どうだ?」

大輝はリクームが立っていた場所を警戒しながら見ていた。
そこはモクモクと煙が立っているため、リクームの姿は見えない。

「・・・・・・」

やがて、その煙が晴れていき人影が見えてきた。

「いやぁ~ビクッリした~」

リクームはギルドライバーを受けた影響か歯が何本か抜けてとってもマヌケナ顔になっていた。
しかし、その体に特にダメージを負っていないようだ。

(はああぁ~・・気の探知で解っていたけど・・・・少しはこたえろ!!てめぇー!!)

大輝はリクームの頑丈さに、心の中で悪態をついてしまった。
しかし、いつまでも文句を言ってる訳にはいかないので、次の行動を考える。

(リクームの奴・・・どんだけ頑丈なんだよ・・あれだけの攻撃を受けて、ほとんどケロッとしているって・・・・)

(おまけに気がほとんど減っていないな・・・・うん?)

大輝はリクームの気の察知を改めてして、あることに気付いた。

(リクームの奴・・・それほど魔法力が多くない)

大輝の言う通り、リクームはどっちかと言えば闘気型の戦士である。
しかも、闘気に偏った戦士のため闘気の量は多いが、魔法力はほとんど一般人と変わらない量だった。
そして、そのことに気付いた大輝にある考えが浮かんできた・・・

(もしかして・・・・)

「おいおい・・・いきなり黙っちゃってどうしたんだ~?こないなら・・こっちからいくぜぇー!」

大輝が考え事をしていると、リクームが声をかけてきたので、相手の方に意識を向ける。
そこには、大輝に突進してくるリクームの姿があった。

(・・・・・試してみるか・・・)

大輝はリクームの姿を目に留めると、自分が思いついたことを試すため、行動を起こす。






「はあああぁぁ!!」

リクームは雄たけびを上げながら大輝に向かっていく。
その巨体から発せられるパワーはとてつもない破壊力を生むだろう。

「・・・・・」

しかし、大輝はそんあリクームをただ見つめていた。
そして、一定の距離まで来ると・・・

「マヌーサッ!!」

幻惑呪文であるマヌーサを唱えた。



「おおっ!!」

リクームは驚いて、思わず動きを止めてしまった。
自分の周りを霧が包み、前が見えなくなってしまったためだ。

「な!なんだっ!!」

リクームは驚きながらも、霧を払おうとブンブンッと腕を振り回すが、霧は晴れなかった。
やがて、霧が自然に晴れていくと―――

「んなあっ!!」

目を見開き驚いてしまった。
なぜなら、リクームの周りには大輝が“十人”立っていたためだ。
そして、その大輝達が一斉に襲ってきた。

「っ!」

リクームは驚きながらも、すぐ迎撃態勢に入った
そして、ブンッとその大木のような腕を振り、近くにいた大輝に攻撃したが・・・

――スウゥ――

「!!!!!!」

大輝が霧のように消えてしまった。
これにはリクームも驚いたが、すぐ他の大輝に狙いを定める。
だが、他の大輝達も同じように霧のように消えていってしまった。
しかも、大輝が霧のように消えていくたびに、次々に大輝が現れて来るのだから、きりがない。

「ちっ!・・・どうなってんだ・・・」

リクームはこの戦いで初めて鬱陶しそうに顔を歪めた。








(どうやら・・成功したようだな・・つ~かもっと早く気付けよ!!俺!!!・・・)

一方の大輝は、何も無い空間に向かってブンブンッと腕を振り回しているリクームを見て、自らの予想があっていたことに安直した。
それと同時に自分に向かって悪態をついていた。


大輝はマヌーサを使って、リクームに幻を見せていた。
そして、なぜ大輝が今更このような魔法を使ったのかと言うと、それはリクームの魔法力が理由だった。


魔法と言うのは、相手の抵抗力が低ければ低いほど、その効果が高くなる。
何の変哲もない紙に火を付けたらどうなる?っと聞かれれば、先ず間違いなく燃え尽きると答えるだろう。
当然だ・・・なにしろ紙には火に対しての抵抗力などないのだからな。
それと同じことなのだ・・・抵抗力と言うのは。


そして、魔法に対しての抵抗力は単純に魔法力が高いほど高くなる。
ただし、高ければ必ずその魔法に対して抗力を持っているとは言えない、その逆も同じである。
例えば大輝のように火の耐性があれば、抵抗力が少なくてもメラ系や火に限定して、レベルの高い魔法などに耐えられたりする。
それは、攻撃系だけでなく、大輝が使ったマヌーサなどにも言えることである。



大輝はそれをすっかり失念していた。
それは、ミストバーンの修行(主に生き残るためそっちまで頭が回らなかった)が原因でもあるが、それ以上に原因なのがバーダック戦だった。
あの戦いで大輝はバーダックにメダパニをかけたが、すぐ破られた。
そして、バーダックはリクームと同様の戦士タイプ・・・すなわち魔法に対しての抵抗力が低い戦士だった。
バーダックが魔法抵抗が低いにも関わらず大輝も魔法を打ち破れたのは、その強靭な精神力にあったが・・・魔法抵抗が低いのに魔法を打つ破ったという事実が大輝に先入観を与えてしまった。
普通に考えれば、あれから自分もかなりのレベルアップをしているわけだから、魔法もより強力な物になっていると解るはずだが、その先入観があったため、大輝はマヌーサなどの魔法を失念していたのだ。


闘気型の戦士でもある程度のレベルになれば魔法抵抗など関係なくなるのだが、今の大輝のレベルとリクームを比べると大輝に軍配があがるのだ。
それに気付かなかったのは、まだまだ大輝は未熟としか言えない。




(まあ・・・成功したからよしとするか・・・今のうちに回復を・・・・)

大輝はリクームが幻にかかっている最中に自分にべホイミをかけ、ダメージを回復しようとする。
しかし、ダメージが思ったより溜まっていたため、すぐには直らなかった。

「えーーーい!めんどくさい!!!」

リクームが痺れを切らし、声を上げる。

「こうなったら・・・このとっておきの技でみんなぶっ飛ばしてやる!!」

そう言って、幻への攻撃をやめ、地面に降り立つ。

「リクームッ!!」

自らの名前を言い、とっておきの技の準備に入る。

「ウルトラッ!!」

バッと地面に屈む。

「ファイティングッ!!」

自身の気を高めていく。

「ミラクルッ!!」

気の高まりの影響で、地面が揺れ削れた塵が空に舞う。

(ま!まずいっ!!)

大輝も危険を察知して、急いでその場から離れようとするが・・・・

「ボンバアアアアァァーーーーー!!!」

その前にリクームから凄まじいエネルギーの衝撃が放たれた。



・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・


「でっへっへっへ・・・ど~んなもんよ~!」

リクームは手を腰に添えながら満足したように笑う。




リクームが放った技は、自らがとっておきと豪語するだけに凄まじい威力だった。
周りの草木は全て吹き飛び、地面は削られ草一本も生えてない更地になっていた。
一番被害が大きかったのが、衝撃の発生地点であるリクームの回りである、そこは地面が深く抉られていた。
リクーム立っていた場所が小高い岩山のようになっていとことから、その威力の凄まじさが解るだろう。

「う~ん・・・ちっと本気をだしすぎちまったかな?」

リクームはポリポリと頭を掻きながらポツリと言葉を漏らす。
その口調は若干残念そうな声音だった。

………ぁぁぁ

「あん?」

そんなリクームの耳に小さな声が聞こえてきた。
なんだ?と思い、リクームは耳を澄ませる。

…………ぁぁぁあああ

声はだんだんと大きくなっていき・・・・・


「だあああああああぁぁぁぁ!!!!」


大輝が爆発波で周りの瓦礫を吹き飛ばしながら、現れた。

*爆発波・・・周囲にエネルギーを拡散させる。先ほどリクームが使った技も規模こそ違うが、この一種である。







「ぜえぇぜえぇぜえぇぜえぇ・・・」

大輝はなんとかリクームの攻撃を耐えた。
あれだけの技をくらって無事だったのは、ミストバーンの命掛けの(比喩ではなく)修行により身に付けた強靭な体のおかげだろう。
しかし、それでも先ほどのリクームの技は大輝に大きなダメージを与えた。
実際、今の大輝の姿は全身がボロボロで血を絶え間なく流し、頭からの出血のせいで片目が見えなく、今もフラフラして、立っているのがやっとといった状態だ。

「ちぇ・・・あきれた頑丈さだな・・・」

リクームは大輝の姿を目に留めると、心底驚いたそうに言う。
自分のとっておきの技に耐えたのはさすがに驚いたようだ。

「はあぁはあぁはあぁぁああ・・・」

「けど・・・・もう終わりだなぁ~」

リクームの言うように、どう考えても大輝か勝つ確率は最早0だろう。
しかし、大輝はそんな状況にも関わらず、冷静な声で言う。

「そうだな・・・・・」

大輝から発せられた言葉は肯定の返事だったが、その表情に焦りは見られない。

「それじゃ・・・・こっからは“本気”でやらせてもらう。」

そう宣言し、大輝は自らの両腕に付いていたブレスレットを外した。






「本気だあぁ~・・・だっはっはっは!!おいおい此処に来てつまらいジョークを言ってるんじゃねえよ。」

リクームは笑い声を上げ、バカにしたような声で言う。

「・・・・・・・」

しかし、大輝はそんなリクームの言葉に反応せず、ただ見据えていただけだった。

「・・・・っち!・・・もうこれ以上大ふら吹きに付き合ってられないぜ!!」

さすがのリクームも鬱陶しくなってきたのか、唾を吐き、乱暴な口調で言う。

「一瞬で決めてやるぜ!!」

そして、再び自らのとっておきの技の準備をしだした。



「リクームッ!!ウルトラッ!!ファイティングッ!!ミラクルッ!!」

先ほどと同じように、屈みながら気を高めていく。
もう一度この技が決まったら、確実に周囲は吹き飛ぶであろう。

「・・・・・・」

しかし、それにも関わらず、大輝はただリクームを見据えていた。

「へっへっへこいつで終わりだぁー!」

そして、リクームの気が高まっていき、一気に放とうとした。

「ボンがっああぁっあぁ」

だが、その技が決まることはなかった。

「・・・・・・」

なぜなら、大輝の腕がリクームの腹に深く突き刺さっていたからだ。




「があっああっああぁ・・・・」

大輝の攻撃を受けたリクーム苦しそうなうめき声を上げた。
腹を押さえながら前かがみになり、口は大きく開き、そこから唾液が絶え間なく流れ出ている・・・・先ほどと違い、本当に苦しそうだった。

「こ・・・こっん・・や・・・ろぉう・・・」

リクームはその言葉を最後に、倒れて動かなくなってしまった。







(ふ~・・・さすがにリミッターありじゃ、無理だったか・・・・)

俺は倒れたリクームを見ながら、自分の無謀さを思った。




俺がさっき外したブレスレットは闘気・魔法力を抑える効果がある・・・・所謂リミッターって奴だ。
なんでそんな物付けていたのかと言うと、ミストバーンさんのせいだ。
ようやく俺が100倍の重力に慣れ、まともに動けるようになったと思ったら、いきなりリミッターを付けられた。
おかげで、再び100倍の重力に押しつぶされる感覚を味わい、さらにミストバーンさんの修行が加わって・・・・・
ううっ・・・マジで辛かった~辛かったよ~~(涙)
つーかあの人!!もはや鬼とか悪魔ってレベルじゃねえぞ!!
・・・・・まあ、そのおかげでリクームの猛攻に耐えられたんだけどな・・・・・・


けれど、耐久力はあっても、リミッターつきではリクームにほとんどダメージを与えられなかったようだ。
だけど、あそこまで辛く厳しい修行に耐えたんだから、その状態でも結構いい勝負ができると思ったんだけど・・・・結果は惨敗だったな。
それにしても―――

(すげ~な・・・本当に・・・・)

俺は自分の体を見まわしながら思う。
リクームの攻撃に耐えられるほどの耐久力・・・しかも、リミッター付きでだ。
そして、びくともしなかったリクームを一撃で倒せるほどの攻撃力・・・・・うん、マジで凄い。
ミストバーンさんって戦士を育てることに関しても超一流なんじゃね?

(・・・・・ふ~~~~とりあえず、驚くのはここまでにして、軽い準備運動でもするか)

次の戦いに備えて、俺は体を慣らすため、その場で軽い準備運動をした。






*ギルドライバー・・・DBのターレスが使う技。ドーナツ型のエネルギー波を放つ。
           大輝はそのドーナツの輪に、エネルギーの膜を状況に応じて張るかどうかを使い分けることができる。












おまけ

「だいきぃーキックーーーー!!!」

大輝は自分の名前を言いながら、近くにあった岩山に向かって膝けりを放つ。

――ドオオオォォン――

当然、今の大輝のパワーに岩山が勝てるはずもなく、あっけなく崩れ落ちた。
しかし、大輝は何か浮かない顔をしていた。

「う~ん・・・解らん・・・」

腕を組みながら、何か悩んでいるようだ。

「なんでリクームの奴、これであれだけのパワーを出せたんだ?」

リクームは「リクームキック」などと言った、自分に名前を言いながら攻撃していた。
しかも、かなりのパワーでだ。
大輝も、自分の名前を言いながら攻撃すれば少しはパワーがあがるかもと思い、練習していたのだが、結果はいつも通りのパワーしか出なかった。

「う~ん・・・悩んでても仕方ないか・・・・」

そう呟いて、大輝は再び練習しだした。


しばらくして――――


「だああぁぁ~~ダメだ・・・・」

あの後、しばらく練習したが、大輝が望むような結果は得られなかった。
大輝もさすがに疲れたのか地面に大の字で寝そべった。

「ふふふっ・・・」

そんな大輝の耳に小さな笑い声が聞こえた。
大輝は声が聞こえてきた方向に目を向けると・・・・

「ふふふっ」

まるで子供を見守る慈悲に満ちた優しい目と柔らかい笑みを浮かべているアンナと

「父っ!」

キラキラとまるでヒ―ロショーにでも連れて行ってもらった子供のように目を輝かしているマージがいた。

「・・・・・・・・」

そして、大輝はピキーンと固まってしまった。
その後、ようやく再起動して恐る恐る問いかける。

「ア・・・アンナさん・・・・見ていました?」

「はい。あまりにも真剣に練習していたので、声をかけては悪いと思い、しばらく見学させてもらいました。」

「かっこよかったぞ!!父!!」

帰ってきた返事は肯定の言葉だった。
ちなみに、この二人にはまったっくって言っていいほど悪意がない。
純粋にそう思っただけだ。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・き・・」

「き?」

しばらく沈黙が続き、ポツリと大輝の口から言葉が漏れ出す。
そして、次の瞬間―――



「きゃあああああああああああああぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!」



まるで、絹を裂くような女性のような叫び声を上げながら、地平線の彼方に消えていった。



斎藤大輝・・・・人並みに羞恥心を持っている男である。

















あとがき

どうも作者の天魔です。

今回はリクーム戦をお送りしました。
この話を読んで、「最初っから全力で行けよ」って思った方をいらっしゃると思いますが、リクームの恐ろしさを出すためにリミッター付きで戦ってもらいました。

リクームってすごいですよね・・・普通の漫画とかだとギャグみたいな雰囲気になのに、あの強さ・・・
そのミスマッチが余計恐ろしく感じました。
それを再現してみたのですがいかかでしたか?

スペシャルファイティングポーズに関しては描写が薄くて申し訳ありません。
正直言って、あのポーズを明確に描写できる力量は作者にはありませんでした。

さて、nanoさんからのご質問のバーンなどの強さに関してですが・・・とりあえずヒントだけは出しておきます。

「君がこの僕に勝てると思ってるの?」

アンナ「まあ!なかなか自身が御有りなのですね。」

ミストバーン「・・・・・」(無視)

バーン「・・・・ふむっ」


「ぶらああああああああぁぁ!!」

アンナ「ご近所迷惑ですよ」

ミストバーン「・・・・ふんっ!」

バーン「思ったよりは楽しめるか?」


「しゃああああああああぁぁ!!」

アンナ(これは・・・・本気で行かなければ厳しいですね)

ミストバーン(あの力を使うことも想定内に入れるか・・・・)

バーン「ほおぉ」(この姿では少々厳しいか・・・・)



まあ、こんなものです。
一応後々、ちゃんとした描写を書く予定です。

では次回。













感想返し

<九尾さん>

作者もそう思います。
ビビディなんかも条件付きですがダーブラなんかを自由に操れたりしましたしね・・・

兎人参化・・・・とてつもなく懐かしいです。
確かに、身体能力はあれですけど、能力は反則ですよね。


<nanoさん>

時間を止める能力と言うのは、普通にすごいと思います。
ただ、作品が作品ですからね・・・・

バーンなどの強さはあとがきの通りで。
いずれ、この三人の強さは明らかになると思います。























[15911] 第十三話(VSギニュー特戦隊 ③)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:18
第十三話(VSギニュー特戦隊 ③)














「そ・・・・そんなぁ・・・・」

ギニュー特戦隊の一人、ジースは目の前の光景が信じられず、呆然としていた。

「あっああがあっああ」

「・・・・・・・・」

彼の目の前には同じギニュー特戦隊の一人、バータが大輝の前に倒れていた。








バータは「ギニュー特戦隊の青いハリケーン」と呼ばれている。
そのスピードは宇宙一と言われ、自分を含めた他のギニュー特戦隊も認めていた。
そして、自分は「ギニュー特戦隊の赤いマグマ」と呼ばれ、その実力はリクーム・バータと同程度の実力がある。
だが、そんな自分達二人で戦いを挑んでも目の前の存在には勝てなかった。




最初見た時は、こんな戦闘力の奴にグルド・リクームがやられたのが信じられなかった。
それは、その戦闘力がグルドより下だったためだ。
実際、スカウターで測った戦闘力はとてつもなく低かった。
だから、倒せたのは偶々だと思った。


だからこそ、自分とバータは最初お遊びのつもりだった。
圧倒的力を見せ、恐怖に戦(おのの)いたとこを倒す・・・・そのつもりだった。
しかし、そんな自分達が予想していた結果とは、真逆の結果になった。


戦闘が始まって、最初は相手の周りを飛び回るだけだった。
圧倒的スピードで攪乱して、相手が困惑し・恐怖に染まった表情を見たかったからだ・・・
しかし、そんな状況にも関わらず、相手は自然体で立っていただけだった。
それが気に食わず、そこそこの力で攻撃を仕掛けた。
普通に考えればこれだけで、相手を倒せるはずだった。
目の前の存在など、自分達がその気になれば、赤子の手を捻るようなものだからだ。
しかし、その攻撃が通ることはなかった。


初めは、偶然だと思った。
お遊びが過ぎたため、攻撃が避けられていると思い、今度は本気で攻撃を仕掛けていったが・・・・その攻撃すらも避けられた。
訳が解らなかった・・・自分達より圧倒的に戦闘力が低いのにも関わらず、自分とバータの攻撃を避け続けるなんて・・・・
さらに、信じられなかったのが、バータとの合体攻撃である「パープルコメットクラッシュ」がいとも簡単に打ち破られたことだ。


*パープルコメットクラッシュ・・・ジースとバータの合体技。紫色のエネルギー弾を連続で飛ばす。


無論、これも信じられなかったが、次の瞬間さらに信じられないことが起こった。


バータは全速力で相手に向かって行った。
相手はパープルコメットクラッシュを打ち破ったとはいえ、宇宙一のスピードを持つバータの本気には敵わないと思った。
それは、同じギニュー特戦隊である自分も良く知ってる、スピードと言う点においては自分より上であるということを・・・・・
だからこそ、これで勝負が決まったと思った。
だが―――



「・・・・・・・・」

大輝はバータからジースに目線を移す。

「くっ!」

ジースは歯を食いしばりながら、大輝を睨みつけていた。



だが―――影が重なったと思ったら、倒れていたのはバータだった。









(なぜだ!!なぜ・・あの程度の戦闘力の奴にッ!!・・・・・)

ジースは心の中で、自問自答する。
目をギュっと閉じ、拳を強く握り締めた様子から、目の前の存在を認めたくないと言う思いがありありと見えた。

「認めんッ!認めんぞッ!!」

カッと目を見開き、大輝を睨みつけながら叫ぶ。

「俺達は天下のギニュー特選隊だ!!・・・あんな奴に負けるはずなどないッ!!」

自分に言い聞かせるように叫ぶ。
その様子から彼のエリート戦士としてのプライドが見えた。
そして、左手を空に掲げて、バレーボールのスパイクを打つ時のような格好になった。

――パアアアァァン――

そして、赤を基調としたエネルギーの球が出来上がった。
ジースは大輝に狙いを定めて・・・・

「クラッシャーボーーーールッ!!!」

バレーボールのスパイクの用に、大輝めがけていきよい良く放った。









――ズウウウゥゥン――

俺に向かって、ジースのクラッシャーボールが迫ってくる。
球型のエネルギーの塊で、その大きさは一メートルあるかどうかと言った大きさしかない。
けれど、これでも軽く俺が立っている島を跡形もなく吹き飛ばすほどの威力がある。
無論、まともにくらえば、かなりのダメージを負うだろう。

「・・・・・・・」

しかし、俺はただそれを見据えていただけだった。

「ふんっ!」

そして、俺の目の前に迫ってきたそれを片手で弾き飛ばした。

「なっ!!」

ジースはそれを見て、口を大きく開いて驚いていた。

――ヒュウウウゥゥ――

弾いたクラッシャーボールは空高く飛んでいき・・・・・

――ドオオオオオォォン――

爆発音とともに、あたりを明るく照らし、消えていった。






「あ・・・ああぁ・・あ」

ジースは冷や汗を掻き、唖然としていた。
まあ、無理もないか・・・さっき放ったクラッシャーボールはこいつの必殺技と言ってもいい技だった。
それを簡単に弾き返されたんだ、結構ダメージはでかいだろうな。
唖然としているとこ悪いけど、決めさせてもらうぞ。

――ピュン――

「ッ!!」

俺は一気にジースとの距離を詰めた。
ジースは唖然としながら、後ろに二、三歩下がった。

――ダンッ――

「があぁ!!」

当然、それは大きな隙となる。
その隙を見逃さず、ジースの腹に膝けりを叩きこむ。
ジースは腹を両手で押さえながら、苦しそうなうめき声を漏らす。

――ドッ――

俺はそこに左拳でアッパーを顎に叩きこみ、空に打ち上げる。
そして、俺はその左手の平をジースに向けて・・・・

――ドオォン――

エネルギー波を放った。

――ズウウウウゥゥン――

エネルギー波ジースに迫って行き・・・・

――ドオオオオォォン――

ジースを飲み込みながら、爆発した。









「ふ~終了~」

俺はその場でゆっくり息を吐きながら、肩をコキコキっと鳴らした。
それにしても・・・・・

(ホント・・・・すげ~なぁ!)

うん、心底そう思う。
バータのスピードだって簡単に見切れたし、ジースのクラッシャーボールだってそれほど脅威ではなかった。
つまり・・・・こいつらには悪いけど、そんなに強くなかった。


つーか、俺だんだん人間やめてないか?
グルド・・・は解らないけど、リクーム・バータ・ジースはその気になれば地球ぐらいの惑星なら破壊できるほどの力を持ってるんだ。
そんな力を持った奴らを倒せたなんて・・・・・

――パアァン――

俺がそんなことを考えていたら、再び目の前に光が現れた。

(さ~て・・・ラスト一人・・か・・・)







「よくも俺様のかわいい部下をやってくれたな。」

光が収まると、ある意味この戦いの一番の障害・・・

「ギニュー特戦隊体長!!ギニュー様自らが相手をしてやる!!」

ギニューが自身のファイティングポーズをしながら立っていた。
・・・・お前・・態々こんな時までするのか?













(まさか、我々ギニュー特戦隊より強い者が、あのお方以外にいるとは・・・・)

ギニューは大輝を見据えながら思う。
彼の心情は信じられない気持でいっぱいだ。
ギニュー特戦隊は文字通り、全宇宙から集まったエリート戦士の部隊である。
そんな部隊・・・しかも、自分が体長である部隊がやられるなんて、考えもしなかっただろう。


「・・・・・・・」

――ピッ――

ギニューは大輝を見据えながら、自らのスカウターのスイッチを押す。
ピッピッと言う電子音が辺りに鳴り響いた。

――ピッピッ・・・・ピピッ――

やがて、スカウターによる計測が終わった。

(戦闘力・・5000・・・)

スカウターに表示された数値は5000だった。
これはおかしいだろう・・・普通に考えれば、この程度の戦闘力ではギニュー特戦隊の隊員は絶対倒すことなどできない。
しかし、これでは大輝が倒せたと言う矛盾が発生する・・・そこから推測されることは・・・・・

(戦闘力を状況に応じて臨機応変に変化させることができる・・と言うことか・・・・)

ギニューはすぐ答えに辿りついた。
そして、大輝の本当の戦闘力を考察する。

(奴がジースやバータ達を倒せたことを考えると・・・・少なくても六万以上は見積もっておくか・・・・)

スカウターの数値に執着せず、すぐ大輝が戦闘力を変化できるタイプと見抜いたのは、さすがと言ったとこか。










「フッフッフッフ・・・・」

ギニューは不敵な笑みを浮かべながら、大輝を見据えていた。
その表情は、他の隊員がやられたにも関わらず、特に焦った様子はない。

「・・・・・・・」

それに対し、大輝は戦闘態勢に入らず、ただ自然体で立っていた。



ヒュウウゥっと風が吹く。
その風で揺らされた、草木のざわめきが聞こえるほど、両者は静かに相手を見ていた。

――ヒュン――

唐突にギニューの姿が消えた。
いや、消えたわけではない・・・ただ、早く動いただけだ・・・常人では捉えきれないほど早く。
そして、大輝の前に現れて、強烈な右拳を叩きこむ。

――ガッ――

しかし、大輝はその拳をいとも簡単に受け止めた。

「ほうっ」

ギニューは小さく驚いたような声を漏らす。
しかし、表情を見る限り、自身の一撃が防がられたことに関して焦ったのでなく、ただ純粋に驚嘆しただけのようだ。

「・・・ふんっ!」

「・・・ぐっ!」

ギニューはさらに拳に力を込めて、押し通そうとする。
大輝もさらに力を込めて、押し返そうとする。
グッと踏ん張った互いの脚が地面に沈みこみ、均衡状態が続いた。
その状態がしばらく続き―――

「はあああああぁぁ!!」

先に動いたのはギニューだった。
残った左拳で大輝に攻撃する。

――トンッ――

大輝は軽く地面を蹴り、後ろに飛んで攻撃をかわした。

「甘いぞおぉぉ!!」

しかし、ギニューは初めから解っていたようで、ダンッ地面を蹴り、勢いよく大輝に襲いかかる。


――ダンッガッドンッ――


時には拳で、時には蹴りで、時には手刀で大輝に嵐のような猛攻を仕掛ける。
それに対し、大輝は後退しながら、腕で防御し、時には受け流すなどの方法で防いでいた。

「でええええいいぃぃ!!!」

ギニューから強烈な蹴りが繰り出される。

――ヒュン――

「むっ!」

しかし、それは空を切るだけに終わった。
大輝が上空に飛んで避けたためだ。

「逃がすかぁ!」

ギニューも自身に気を纏い、大輝を追いかけていく。

――ビュウウウゥゥ――

大きな風切り音をたてて、かなりのスピードで追っていくが・・・・

(チッ!・・・・・スピードは奴の方が上か・・・)

大輝の方が一枚上手の用で、徐々に引き離されてしまう。
やがて、一定の距離を離すと、大輝はピタリと止まった。

(ほおぉ~・・・やっと戦う気になったか・・・)

大輝が止まったのを見て、ギニューは自分と戦う気になったと判断した。
確かに、これが昔の大輝だったら、何も考えず真正面から闘いを挑んできたかもしれないが・・・・

「マヌーサッ!」

今の大輝は、そんなバカ正直な戦法など取りはしない。





「ッ!!!!」

案の定、ギニューは霧に包まれ動きを止めてしまう。

(なんだ・・・・むっ!)

暫く、怪訝な表情で見回していたギニューだが、ふと奇妙な感覚に襲われた。
頭の中が霞んでいき、ぼんやりするような・・・そんな、何とも言えない奇妙な感覚に。

「くっ!」

頭を横にブンブンッと振りながら、ギニューはその奇妙な感覚を消そうとする。
しかし、消えなかった・・・むしろ、だんだん奇妙な感覚が、まるで自分の中に入り込んでくるように感じた。

「えーーーーい!!面倒だあぁぁーーー!!!」

ギニューは大きく叫び、体を抱きこむようにして屈む。
そして、目を瞑りながら精神を高めていき・・・・・

「はああああああぁぁ!!!」

カッと目を見開いて、気合で大輝のマヌーサを取り払った。











(わーーー・・・ギニューの奴・・気合で吹き飛ばしたよ・・・俺のマヌーサ)

・・・一応、俺も気づいてたんだけどな。
ギニューの奴、それなりに魔法力があった。
つまり、それは魔法に対しての抵抗力があると言うことになる。
マヌーサを破ったってことは・・・少なく見ても、精神系の魔法はきかないと見た方がいいな。


ギニューはどっちかと言えば、闘気の方が多いんだけど・・・今の俺のレベルでは、リクームには勝つけど、ギニューには及ばないってことか。

(はあぁ~・・・結構自身があったんだけどなぁ~)

仮にも、あれだけの修行したんだから・・・ねえぇ~・・・
まあ、あの修行はどっちかと言えば肉体をメインに鍛えていたから、しょうがないか。



「おのれぇ~!!」

ギニューは少し怒ったような声を漏らした。
そして、俺の方をキッと目を鋭くして睨みつけてきた。
なんだ?

「貴様に一つ言いたいことがあるッ!!」

そう言って、俺をビシッと指さしてきた。
だからなんだよ?

「いいかッ!!戦士とは常にフェアでなくてはならない!!!」

「故に!!あのような技を使うなど言語道断!!」

・・・・・あ~~そう言えば、こいつ・・・フェアな精神を持っている戦士だったけ。
けどさ、マヌーサってそんなに卑怯なかな?
あくまでも俺の魔法なわけだし・・・一応、一対一の戦いだし・・・
少なくても、アクセルさんほど卑怯ではない、と豪語できるぞ。

「・・・・ふ~」

息を吐きながら、ギニューの方を見る。
そこには、いまだに「戦士とは~」「フェアとは~」なんて語っているギニューがいた。
うーん・・・ここまで言ってるなら、正攻法で攻めた行った方がいいかな?
マヌーサとかはきかないみたいだし、少し・・・試したい事があるしな・・・・

「あ~解った解った!・・・お前のい言う通り、これからはフェアに行くよ。」

俺はいまだに何かを語っているギニューにそう言う。
すると、ギニューは語るのをやめて、俺を見据えてきた。
さ~て・・・頑張りますか!













「ふっふっふっふ・・・やっと戦う気になったか・・・さあぁー来い!!」

ギニューは大輝に向かって、笑みを浮かべながら自分に掛ってくるよう挑発する。

「へいへーい」

大輝はそれに対して、なんとも気の抜けた返事を返した。
しかし、さっきまでと違いギニューを睨みつけ、纏っている空気も鋭い物になっている。
どうやら、本当に本気で戦うようだ。




「でやあああぁぁ!!」

大輝は雄たけびを上げながら、ギニューに向かっていく。
当然、ギニューも迎撃態勢に入る。

――ピュン――

「むっ!」

しかし、大輝がギニューの目前まで迫ってくると、その場に残像を残し消えてしまった。
そして、次の瞬間ギニューの後ろに現れ、襲いかかった。

――ガッ――

「ちっ!」

だが、ギニューは大輝の攻撃を背を向けたまま腕だけで防いだ。
残像拳で後ろに回ったのにも関わらず、簡単に防がれてしまったので、大輝は思わず舌打ちをした。
さすがに全宇宙から集められたエリート戦士部隊・・・ギニュー特戦隊の体長と言ったところだろうか。

「あああああぁぁ!!」

ギニューは大輝の腕を攫み、一本背負いの要領で投げ飛ばす。
そして、自身に気を纏いそのまま追撃をする。

――ダアァン――

しかし、大輝はギニューが攻撃を仕掛ける前に体制を立て直し防いだ。

「ふんっ!」

大輝は、ギニューの顔めがけて拳を放つ。

――ヒュン――

ギニューは最小限の動きだけでかわし、大輝の拳は空を切るだけに終わった。

「はあぁ!」

ギニューはお返しとばかりに、強烈な上段蹴りを放つ。

――ダッ――

大輝はギニューの蹴りを両手を合わせて防いだ。



「でやあああぁぁ!!!」

――ダアアァン――

大輝が拳を放てば、ギニューは腕をクロスして防御し、

「でええええぇぇい!!!」

――ドオオォン――

ギニューが蹴りを放てば、大輝は膝で防御した。

――ダンッガッドンッガアァンッダァン――

拳と拳、蹴りと蹴り・・・その全てが大地を砕くほどの威力を持っている。
しかし、そんな威力を持つ攻防を続けているのにも関わらず、両者は一歩も引かなかった。



――ダアアアァァン――

大輝は強烈な右拳を叩きこむ。
ギニューはうまく防いだが、今までで一番強烈な攻撃だったのか、その衝撃のせいで一瞬動きが止まってしまった。
その隙に大輝は右脚をガードの下から上段に向かって蹴りを放ち、ガードを弾き飛ばし、ギニューに左拳を叩きこみ吹き飛ばした。

「むっ!!」

しかし、ギニューは体をを丸めてクルクルッと体操の選手のように華麗に回り体制を立て直した。
そして、大輝を見据え・・・

「はあああぁ!!」

エネルギー弾を放ってきた。

「!!!!ッ」

大輝も危険と感じたのか、エネルギー弾で応戦する。

――ズウウウウゥゥン――

二人のエネルギー弾は互いに押し合い、やがて、弾かれるように見当違いの方向に飛んで行った。

――ヒュウウウゥゥ――

大輝が放ったエネルギー弾は海の方へと飛んでいき・・・・

――ドオオオオオォォン――

天まで届くような水しぶきを上げ、海底に大きなクレーターを作った。

――ヒュウウウゥゥーー

そして、ギニューが放ったエネルギー弾は山の方へと飛んでいき・・・・

――ドオオオオオォォン――

大きなキノコ雲を上げ、山を跡形もなく吹き飛ばし、地面に大きなクレーターを作った。







「驚いたぞ・・・まさか、ここまでの強さだとはな。」

ギニューは大輝を称賛する。
その声音から、お世辞ではなく、本当にそう思っているようだ。

「そりゃどうも。」

それに対して、大輝は何とも軽いノリで答えた。


二人の声は全く疲れた様子はない。
いや、それ以前に肉体にも特に疲れた様子はない。
その証拠に汗一つも掻いていないのだ・・・あれだけの攻防を繰り広げたのにも関わらず。








「所で・・・貴様は状況に応じて戦闘力を変化できるようだな?」

ギニューは大輝に問いかける。
その顔はほぼ確信を得ているようだ。

「ああ・・・そうだけど・・」

大輝は特に隠す必要性がないので、素直に答えた。
答えを聞いたギニューはフフッと含み笑いをした。

「実はな・・・私も同じように戦闘力を変化させることができるのだよ。」

そう言って、両手をグッと握る。

「はああああああああぁぁ!!」

そして、気合が籠った声を上げながら自らの気を高めていった。


ゴゴゴッと、ギニューが気を高めていくのに伴い、地面が揺れ、海面には波紋が広がり、砕けた塵や草が舞う。

「はあっ!!!」

やがて、ギニューは限界まで気を高めた。
その気は、正に体長の名に恥ずかしくないほど強大だった。

「・・・・・・」

大輝は目つきを鋭くして、それを睨みつけていた。



「ふっふっふ・・・どうだ?これが俺の本気だ。」

ギニューは笑みを浮かべながら大輝に問う。
その笑みには、自分の強さに対しての自信が見えた。

「確かにあんたはすげーよ・・・」

大輝はギニューの気を感じて、素直に称賛した。
ギニューは今まで戦った相手・・・グルド・リクーム・バータ・ジースを遥かに凌ぐ力を肌に感じたからだ。

「さあ、次は貴様の番だ・・・・その力!全て見せるがいい!!」

そう提案した後、ギニューは腕を組んで、余裕ある態度を見せた。

「・・・・いいのか?」

大輝はギニューに問いかける。
ギニューがやろうとしてるのは、自分に本気を出させるということ。
ハッキリ言って、これは戦略的には愚策だ。
気を高める隙を与えない方が、より確実に勝利できるからだ。
ギニューは自分からそのチャンスを捨てようと言うのだ。

「ああ・・・それに、本気を出していない貴様を倒してはフェアではないからな。」

ギニューの目的は、あくまでも本気を出した大輝と戦士として戦うこと。
正々堂々、一対一の戦いで勝利を収めること・・・だからこその提案だった。
大輝もそれに気付き、自らの気を高めていった。



「はあああああああぁぁ!!!」

大輝もギニューと同様、拳をギュッと強く握って、気を高めていく。

「ふっふっふ・・・」

ギニューはそれを余裕の笑みを浮かべながら見据えていた。

「ああああああぁぁ!!」

大輝はさらに気を高めていく。
やがて、体を紫色の炎のオーラが包んでいった。

「・・・ぬっ!」

ギニューの顔に変化が見られた。
先ほど浮かべていた笑みが消え、その代わり、冷や汗を掻き口を開いて驚嘆の表情になった。
その理由は、ギニューが付けているスカウターの変化にあった。

(戦闘力・・・11万・・・11万3000・・・・・11万7000)

大輝の戦闘力が、これだけ高まってるのにも関わらず、未だにスカウターの数値が上昇し続けているのだ。

「ああああああぁぁ!!!」

大輝の気の高まりに伴い、地面が大きく揺れ、海は荒れ、塵や草が宙に舞う。

(12万1000・・・・12万6000・・・・13万2000)

ギニューはより目を見開き、驚嘆した表情になる。
彼の最大戦闘力は12万・・・それを超えたのにも関わらず、さらに戦闘力が上がって行くからだ。

「あああああああぁぁぁ!!!」

大輝の気の高まりは未だに勢いが衰えない。

「だあぁぁ!!!」

やがて、大輝も自らの気の高まりを終えて、体の周りに紫色の炎のオーラを纏った。







「せ・・・戦闘力・・・・・17万2700」

ギニューは唖然としながら、大輝の戦闘力を告げる。
そこには、もはやさっきまでの余裕などはなかった。
だが、彼は知らない・・・自分が使っているスカウターは、あくまでも気、即ち闘気のみを測る物であることを。
もし、これが魔法力を測れて、総合戦闘力を測定できるレーダーだったら、さらに驚嘆することになっただろう。

「で!・・・・どうするんだ?」

大輝は驚嘆しているギニューに問いかける。

「ハッキリ言って、これでもまだ全力を出していないぜ・・・負けを認めるか?」

ギニューに降伏を呼び掛ける。
大輝の言う通り、自分はまだ全力を出していない。
それにも関わらず、ギニューの戦闘力12万を遥かに超える戦闘力を引き出しているのだ。
無論、戦闘数値=強さとは限らない、しかし、二人の戦闘技術は先ほどの攻防で解る通り、ほぼ五分と五分。
そうなった場合、勝敗を決める大きな要因となるのは単純な力・速さ・耐久力等が大きく占める。
大輝はその点に置いて、もはやギニューを上回っていた。

「くっ!!・・・・でやあああぁぁ!!!」

ギニューは唖然としながらも、幾つものエネルギー弾を放つ。

――ギュウイィン――

しかし、その全てが大輝が作り出した気のバリアーに阻まれてしまう。

「はあぁ!」

そして、大輝は気合と共に跳ね返した。





ドオォーンドオォーンっと大輝が跳ね返したエネルギー弾の爆音が鳴り響く。
その威力は山・岩・草木を跡形もなく吹き飛ばしていることから、決して弱くなかったと言えよう。
そんな威力を持つエネルギー弾をいとも簡単に跳ね返したのだ・・・このことから、大輝とギニューのレベルの差が窺えるだろう。

「ふっふっふ・・・」

唐突にギニューから小さな笑い声が漏れる。

「ふっふっふははははははははははっ!!!」

そして、それは大きな笑い声に変化した。


常人から見れば、ギニューの気が狂ったとしか見えないだろう。
大輝とギニューの力の差は、最早歴然となっている。
それにも関わらず、ギニューは嬉しそうに笑っているのだ。

「・・・何が、そんなに嬉しんだよ?」

案の定、大輝は怪訝な表情をしてギニューに問いかける。

「貴様が強いからだッ!!このギニュー様より遥かに強い力を持っているからだッ!!」

大輝の問いに対して、ギニューは本当に嬉そうに答える。
敵が自分より強いことを喜んでいるのだ・・・
普通にだったらおかしいとしか言えない・・・・“普通”だったらな!

「このギニュー様より強い体・・・しかも、まだ全力ではないと言う!!」

だが、このギニューと言う人物は普通と言うカテゴリーに入らない。

「気にいったぞ!!その体!!!」

――パアアァン――

ギニューは手にエネルギーを込める。
それに伴い、ギニューの手が妖しく光り出した。

「はあぁ!」

そして、大きく振りかぶり、

――ザシュッ――

「があぁ!!」

自らの胸に突き刺した。






「がっぐ・・・っぐふぁ・・」

ギニューの口から血が流れ、胸からもドクドクと流れている。
本当に気が狂ったとしか言えない行動だ・・・なぜなら、自分で自分に止めを刺したのだから。
気が狂ってないとしたら、自害を選んだと捉えるのが正しいだろう。
他者にやられるぐらいなら、自らの手で止めを刺す・・・正しく、戦士としての誇りを持った行動と捉えても過言ではない。

「ふっふっふ・・・」

だが、先ほども言ったが、このギニューと言う人物は普通ではない。

「その体・・・頂くぞッ!!」

そう言って、ギニューはバッと腕を広げ「大」の字の形になった


「チェーーーーーーーーンジッ!!!!」


――ズウウウゥゥン――

ギニューが叫んだ瞬間、光が放たれ、大輝を包みこんだ。
 












本来、生き物と言うのは全てが“精神”と“肉体”で構成されている。
その二つがあるからこそ、生き物と言うのはその世界に存在できるのだ。
そして、この精神と肉体は人それぞれが違う。


AとBと言う人間がいたとしよう。
Aを構成する精神と肉体は同じくAと言う物になる。
これは当然と言えよう・・・なぜなら、Aと言う精神はAと言う肉体に合うように構成されているのだから。


Aと言う肉体にBと言う精神が入ったらどうなる?と聞かれれば、合わないとしか言えない。
なぜなら、Bと精神はBと言う肉体にしか合うように構成されているからだ。
簡単に言えば、器が合わないのだ。



もし、他の精神が自分の体の中に入ってきたら、それは異物が混入しているようなものだ。
当然だ、なにしろ“自分”と言う存在以外の物が入り込んでいるのだからな。


「ふっふっふっふ・・・」


そして、今・・大輝の体にこの異物が入り込んでいた。






「ふっふっふはははははははっ!!!」

「それ」は笑う。

「素晴らしい・・・素晴らしいぞっ!!」

「それ」の心を占めるのは純粋な歓喜。
あの“肉体”より、強い“肉体”を手に入れられることに関しての喜び。

「むっ!」

「それ」は見つけた。
斎藤大輝と言う存在を構成するのに必要不可欠な物を。

「ふっはっはっはっは・・・見つけたぞ!!」

「それ」は歓喜の笑い声を上げながら近づく。

「悪いが頂くぞ!!貴様の体!!」

そして、「それ」は肉体から追い出そうとする。
大輝の精神・・・・魂を。









「そいつは困るな・・・」








唐突に声が聞こえた。

「な、なんだっ!」

「それ」は困惑した。
そして、次の瞬間・・・・

――パアアアアァァン――

「うぎゃああああぁぁ!!」

大輝の魂から強烈は光が漏れ出した。

「悪いが俺はこの体の方が好きなんでっね!!!」

――パアアアアアアァァン――

より強烈な光が魂から漏れ出し、「それ」は体外へと追い出された。






「な・・ぜ・・・だぁ」

ギニューは唖然としながらも大輝に問いかける。
しかし、その声は自らが付けた傷のせいで、蚊が嘆くほど小さいものだった。

「な・・・ぜ・・・ぐふっ」

やがて、血反吐を吐き・・・絶命した。









「ふ~~~~うまくいったな・・・」

俺は安著のため息を吐きながら、汗を拭った。
それにしても、結構エネルギーを使ったな。
まさか、こんなに使うとは思わなかった。



さっきギニューが使ったのは“ボディチェンジ”と技だ。
効果はその名の通り、自分と相手の中身を・・・つまり、体を取り換える技だ。
つーか、お前散々フェアとか言ってたんだから、こんな卑怯クセ―技使うなよ!!
・・・・・・まあ、ギニューに対しての愚痴は置いといて、当然、俺はギニューがこの技を使うのは知っていた。
と言うより、俺の記憶をもとにして作られた仮想の敵なんだから知らない方がおかしい。
それで、なんで俺が知っていたのにも関わらず、ギニューのボディチェンジをくらったかと言うと、あの日、アンナさんに言われて、思いついたことを試したかったからだ。






――バータック戦終了後――

「・・・・・・と言うわけで、以上が魂のエネルギーの説明になります。」

アンナさんの説明が終わったけど・・・

「アンナさん・・・もう勘弁して下さい。」

俺は結構本気で懇願した。


あの後、バータックとの模擬戦が終了した後、ベットに縛りつけられる生活が続いた。
その間、アンナさんによる魂のエネルギーの危険性の説明が続いた。
しかも、毎日毎日何時間も・・・・まあ、それだけ危険だってことだよな。
あの時も、まるで体が解けていくような、力が抜けていくような・・・・そんな、やな感じがしたしな。







「あの~アンナさん・・・質問していいですか?」

「はい・・・なんでしょう。」

俺はアンナさんの説明を聞いて、疑問に思ったことを質問した。

「その魂が命の最後の砦ってことは解りましたけど・・・ザキやザラキとかの場合はどうなるんですか?」

生命エネルギーを使い果たしても、その魂が命を繋ぎ止めている間は蘇生できるってことは解った。
けど、ザキ系の魔法は相手を即死させる死の呪文だ。
即死ってことは、魂のエネルギーも0にするのか気になって聞いてみた。

「そうですね・・・・」

アンナさんは空間にモニターを出して、説明してくれた。

「ザキ系の魔法はあくまでも、肉体を死に追いやる呪文であって、魂そのものを消滅させる呪文ではなりませんね。」

そう言って、物指し棒みたいなもので人間の体が描かれた絵図と変な丸っこい(たぶん魂)絵図を指しながら説明する。

「ですから、たとえザキ系の魔法で死んでも、ザオラルなどの蘇生呪文で蘇れます・・・イメージとしては心臓麻痺みたいなものですね。」

ふーん・・・つまり、肉体の生命エネルギーは0にできるけど、魂のエネルギーまでは0にできないってことか。

(なるほでどね~~・・・・うん?)

俺は納得していたけど、再びある疑問が浮かんできた。

「あの・・それじゃ、ナイトウイプスみたいなモンスターはどうなるんですか?」

*ナイトウイプス・・・実体のないモンスターで、障害物を自由に通り抜けられる。ゾンビ系の中級モンスター

こう言ったモンスターは実体がない・・・所謂幽霊のような存在だ。
幽霊ってのは、その人の魂だけが肉体の外に出された状態のことを言うらしい、俺がマンションの近くをさ迷っていたみたいにな。(プロローグ参照)
けど、それって結構厄介じゃね?
何しろ、魂だけの存在なら、最初から魂のエネルギーを使ってくるようなものだよな。
・・・・うん、かなり危険だな。



「そのようなモンスターは魂の存在とは少し違いますね。」

アンナさんは目の前のモニターにナイトウイプスを映して、説明しだした。

「こう言ったモンスターにも魂は有ります・・・しかし、魂が剥き出しの状態で存在しているわけではなりません。」

モニターにナイトウイプスの内面の画像が映し出される。
そこには、魂の周りに何かが渦巻いている映像が映し出されていた。

「このように魂の周りにエネルギーが覆っている状態で存在しています。」

「言うならば、エネルギー生命体・・・幽霊とガス生命体の中間と言ったところでしょう。」

「そして、こう言ってモンスターには基本的に物理攻撃は効きません。」

物理攻撃が効かないって、それってほぼ無敵じゃね。

「それじゃ、どうするんですか?」

これは聞いておかないとな、いつそんな奴と敵対するか解らないものな。
まあ、戦わないのが一番なんだけどな。

「物理攻撃が効かないと言っても、なんの変哲もない剣などで攻撃した場合です。」

アンナさんはモニターを指しながら説明してくれた。

「相手はエネルギー生命体なのですから、自分も闘気・魔法力などと言ったエネルギーで攻撃すれば問題ないです。」

うーん・・・思ったより、簡単な方法で倒せるけど、やっぱし厄介なことには変わりないな。
なにしろ、闘気も魔法力もなかったら、倒せないわけだからな。

「しかし・・・・」

アンナさんは少し表情を暗くして言う。

「こう言ったモンスターで一番厄介なのは自身の体に入り込まれる・・・つまり、憑依されることです。」

「憑依?」

憑依って、よく小説なんかで見かけるあの憑依?

「ええ・・・本来魂とは生命エネルギーの強固な殻に守られています。」

「ですが、このような存在はその殻を無視して、直接魂に干渉してきます。」

「そして、その体の持ち主の魂を消滅、あるいは支配して、その体を乗っ取ることもできるのです。」

アンナさんは少し俯きながら説明する。
どうしたんだろ?
なんか今のアンナさん、ちょっと悲しいような憂いような・・・そんな雰囲気だ。

「あのーそれでその対処方は・・・・」

ちょと気まずかったけど、俺は話しかけた。
それに、これは気になったことだしな。
なにしろ、魂に直接干渉してくるわけだから、防ぎようがないと思ったからだ。

「・・・・一番良い方法は、体の中に入り込まれる前に倒すのが一番よいのですが・・・」

アンナさんは顔を上げて説明しだした。
その様子は先ほどの雰囲気を感じさせなかった。
なんだったんだ?・・・・まあ、いいか。

「万が一、入り込まれてしまった場合は・・・・・・」

















(自分の魂にエネルギーを込めること・・・か)



アンナさんに言われた方法がそれだった。
自分の中に入ってきた相手はエネルギーの塊みたいなものだし、狙ってくるのは魂なわけだから、その魂にエネルギーを込めて消滅させるか追い出すのが対抗方法だそうだ。
要するに、同じエネルギーで対処するのが一番確実な方法ということだ。


魂にエネルギーを込めるのはそれほど難しいことではない。
肉体の外に出すのは難しいけど、もともと中にあるわけだから、その存在さへ感じることができたら、エネルギーを込めることはそんな難しくなはい。


俺がギニューのボディチェンジを受けたのはこの方法を確認するためだった。
態々確かめる必要があったのかと聞かれれば、そんな必要はなかった。
けれど、いつそんな能力を持つ奴と敵対するか解らない。
だったら、早いうちから確かめていた方が得策だ。
アクセルさんも依頼を受けた後、「備えあれば患えなし」って言って装備を整えていたしな。





(それにしても・・・・)

ふと、俺の中にある疑問が浮かんできた。

(ギニューってなんだったんだ?)

それはギニューに対しての疑問だった。


仮にも魂に直接干渉できる能力を持っていた。
それってギニュー自身の技だったのかな?
それとも・・・・・

(・・・・考えてもしょうがないか)

そうだ、結局答えを知る方法なんかないしな。
さっき戦ったギニューだって俺の記憶を元にして作られたんだから、俺が知らない情報を知る由もないしな。
それよりも――――

(勝ったんだよな・・・・俺・・・・)

そう・・・俺は勝ったんだ・・・・あのギニュー特選隊・・しかも五人全員にだ。

「はっはっは・・・」

徐々にだが心の中に嬉しいって言う気持ちが広がってきた。
そして―――



「よっっっっっしゃああああああああああぁぁぁ!!!!」



年甲斐もなく叫んで、喜んでしまった。
うん・・・あれだけ頑張ったんだから、成果が出るのは嬉しかった。
そのため、しばらく子供みたいにはしゃいでしまった。







ちなみにその後、アンナさんが慈愛に満ちていた目で見ていたのに気付いた。
・・・・・・・すっげ~恥ずかしかった・・・























あとがき

今回は残りの特戦隊のメンバーをお送りしました。

前半のジース・バータに関しては・・・まあ、大輝がリミッターを外していたので、楽に勝てたってことで・・・

後半はギニュー戦でした。
ギニューってある意味、グルドより厄介ですよね・・・何しろ、体を入れ替えるんですから。
ところで、ギニューの最初の姿ってなんだったんでしょう?
作中の姿はボディチェンジ後の姿で、結局最初の姿って出てきませんでしたよね?

・・・・強い体を求め、強大な力を持つ主を尊敬し忠誠を誓っている

うん、ダイ大のあるキャラと、ものすっごく被っていますね・・・もしかしたらギニューも・・・・・・

さて、ギニュー特戦隊を倒して喜ぶ大輝・・・だが、あまり喜んでいる暇はないぞ。

なにしろ、次の相手は順番からいって、あのお方の・・・・・・

では次回。














感想返し

<nanoさん>

そうですね、大体そのぐらいのレベルです。
解除状態は今回の通りということで。

リクームの場合、ほとんど魔法に対しての抵抗を持たないでしょうからね、特に精神系に関しては。

ライ●ーキック・・・・恐らく、大輝が使うことはありませんね。
なにしろ、正義の味方ということではないので。


<九尾さん>

リクームは本当においしいです。
ネタもすらすらと思いつきますからね。

リミッターは・・・あれです、所謂お約束ってやつですね。

ギニュー特戦隊の選考基準・・・・マジでありそうですね。


<トッポさん>

楽しんでいただき作者も嬉しいです。

グレートサイヤマン・・・・あれを本気でやったら、大輝は悶え死ぬと思います。
ギニュー特戦隊とほとんど変わりないですしね。




















[15911] 第十四話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:22
第十四話










この世界には地上世界の他にも数多の世界がある。
科学文明が発達した世界、魔法文明が発達した世界など様々な世界。
その数は、もはや人間の一生では回りきれないほどの数がある。


そんな世界の無人世界の一つに奇妙な光景があった。
無人世界とは、読んで字のごとく、「人」がいない世界である。
その世界には、数種の魔物と動物、水や緑が多く、草原が広がっている自然豊かな世界であった。
此処までだと、別に何でもないように見える。
では、なにが奇妙なのかtドドドドッ・・・・どうやら来たようだ。



ドドドドッと地響きをあげ、空まで届くかといったほどの土煙を上げながら近付いてきたものがある。
その速さは、もはや音速・・・いや、光速の域までに至っていた。
そして、それが近付いてくると・・・・

「きゃはははははははははははははははは!!!!」

楽しそうな女の子の声と

「のわああああああああああああああああ!!!!」

悲鳴を上げる青年の声が、ドップラー効果を出しながら駆け抜けていった。












「へえっへえっ・・うっ・・あーあー・・・」

地面に大の字で寝そべり、呼吸を整えようとする。
これって、マジで辛い・・・・

「父~大丈夫?」

そんな俺に話しかけてくる人がいた。


健康そうな小麦色の肌に、茶色のショートヘアー。
目はクリっとしていて、犬のような耳と尻尾があり、「元気」というオーラを体中からまき散らす、小学校低学年ぐらいの女の子。


「ま、マージ~・・・」

この女の子の正体は、ヘルゴラゴのマージだ。
今、マージは魔法で、体を小学生ぐらいの女の子に姿を変えてもらっている。
その理由は、主に俺の“体”のためだ。




――回想――

その日、俺はいつもの修行を終えて、風呂に入っていた。
この空間だと、特に入る必要はないんだけど、やっぱり日本人だから風呂には入りたかった。

「お~い!マージ早くこーい!」

そして、俺はいつもマージも風呂に入れていた。
その日も、いつものように風呂に入れようとしていたんだ。

「はーい!」

元気な声を出しながら、こちらに向かってきた。
俺は先に体を洗おうとしていたんだけど・・・・

(あれ?・・・そう言えばマージって)

そう、この時俺はマージが人間になったばかりで、そのことを忘れて、いつものように風呂に入れようとしていたのだ。
マズイ・・・そう思って、声を掛けようとしたのだけど・・・・・

「マー「父~♪」ぶわぁ!」

その前に、マージが風呂場に入ってきた。
十代後半ぐらいの女の子がタオルなど巻かないで、素っ裸で・・・・



その他にも・・・



「うううっ・・・・」

俺はベットに入って、眠ろうとしていた。
いつもなら、修行で疲れて、すぐ眠れるんだけど・・・

「父は・・あったかいな・・・」

うん。解ると思うけど、目の前にいる犬っ娘のせいで、寝付けなかった。
いや、俺も解ってるよ。
マージは体は成長しているけど、精神的にはまだまだ子供だってことは。
そのせいか、獣形態の時も頻繁に俺のベットに潜り込んできたし、幼い子供が親と一緒に寝るのはおかしくないよ。
けどさ、

(これは辛いだろ・・・・)

同じベットで、女の子がピッタリとくっついている。
こんな状況で寝れるか!!
しかも、マージが寝付いてから抜け出そうとしても・・・

「そ~と」

「う~んっ」

――ガシッ――

「ぐえっ!」

抜け出せないんだよ。
仕方ないじゃない・・・俺、マージより力ないもん。
しかも、この後、さらに体を押し付けてくるから・・・まあ、あれだ。
やけに柔らかいものと苦しみが交互に襲ってきて、寝むれなかった。
苦しみってのは、マージにギュッと抱きつかれたから。
柔らかいものってのは・・・・解るな?

――回想終了――




そう言うことがあったから、マージには小さくなってもらった。
そのおかげで、そっち方面での体の危険性はなくなった。
なくなったんだけど・・・・

「うっ・・うええぇ~」

違う意味で、危険が出てきた。



俺達が無人世界に来たのは、マージの散歩のためだ。
マージはかなりの散歩好きだった。
そのためか、よく俺も誘われた。
けれど、俺は修行だけで精一杯でそっちまで余裕がなかった。
だから、断わっていたんだけど、断わるたびに、マージの寂しそうな顔がやけに頭に残った。


その後、暫く経って、俺も余裕が出るようになってきた。
ギニュー特選隊を倒せたのがいい例だ。
だから、マージの散歩について行くことにした。
そのことを伝えた時のマージの喜びようは半端なかっな~。
尻尾をブンブン振り回しながら飛びついてきて、ぺろぺろって頬を舐められて、
まあ、それだけ嬉しかったってことだよな。
それを見れただけで、こっちも嬉しい気持ちになった。態々時間を作ったかいが有ったってもんだ。
けれど、やっぱり時間がどれくらい取れるか解らなかったから、アンナさんとかに許可を取りに行ったんだけど・・・・

「構わん。」

なんと!許可を出してくれたのは、ミストバーンさんだった。
いや~これにはビックリしたは!
まさか、あのミストバーンさんが許可をくれるなんて、
しかも!散歩に行った時は午前の修行なしにしてくれるんだぜ!!
うんうん♪やっぱし、同じ娘を持つ者同士、俺の気持ちを解ってくれたんだ~~って思っていた。
けど、甘かった・・・あの人が、ただでこんな事してくれるはずがなかった!!





「父、早く早く!」

マージは急かすように、自分の首に巻きついているリードを引っ張る。

「・・・・・・」

そのリードの先は俺の手首に巻きついていて、クイクイっと引っ張られた。





このリードは特殊制でちょっとやそっとじゃ壊れない。
しかも、パスワードを入れない限り、絶対に外れない。
例え音速を超えようが、光速を超えようともな・・・
ミストバーンさんの狙いがようやくわかったよ。
あの人、マージの散歩そのものを修行にしたんだよ。
正直言って、マージの散歩につきあうだけで、ある意味命掛けの修行になる。
午前の修行が休みになったの、よく解ったよ。




「なあぁマージ、そろそろ帰らないか?」

俺は弱弱しくも、結構本気で言った。
正直、そろそろ帰って休まないと、体がもたなくなる。

「え・・・で、でも・・・」

俺の言葉を聞いたマージは、残念そうに言葉を漏らす。
つーかお前、まだたりないのか?

「あのなーもう十分だろ?いったい何周したと思ってるんだ?」

俺の言葉を聞いて、マージは「うーん」っと顎に人差し指を当てながら考え出した。

「えーと・・・これぐらい・・・」

そして、考えが纏ったのか、俺の方に指を三本立てた。

「あのな~・・・少なくても、その十倍ぐらい回っているぞ!!」

そう。マージとの散歩は既にこの無人世界は三十週ぐらいしている。
つまり、それだけ、俺の体に負担が掛っているということだ。
正直、もう限界が近い。
それに、そろそろ時間だしな。
だから、帰ることをマージに伝えたんだけど・・・・

「・・・・うん。」

ものすっごく落ち込んだ。
ピョコンっと立っていた耳は垂れ下がり、ブンブンッと元気に振っていた尻尾もシュンと垂れ下がっている。

「えーと、マージ・・・・」

俺は心配になり、問いかける。

「せっかく、父ときたのに・・・・」

ポツリとマージの口から言葉が漏れ出した。

(・・・ああ、そうだよな)

こいつは、本当に俺と一緒に散歩したかっただけなんだよな。

(たく!娘を悲しませて、何が父だ!)

俺はマージに近付き、そっと頭を撫でた。

「あのな、マージ・・・」

なるべく優しい声で言う。
マージは顔を上げて俺の方を見てきた。
その顔は、本当に残念そうだった。

「これが最後じゃないんだから・・・また来よう・・な?」

「・・・ほんと?」

「ああ・・・ほんと。」

「ほんとにほんと?」

「ほんとにほんと・・・約束だ。」

「!!父~~♪」

マージが抱きついて来て、俺の頬を舐めだした。
そうだよ・・・俺の体なんかいっつもボロボロになってるんだから、これぐらい、今さらだよな。
それに、やっぱしマージには元気でいてほしいしな。
元気な姿を見るためだったら、これぐらい・・・

「さてと、帰るぞ。」

「うん♪」

俺がマージに問いかけると、元気に返事を返してきた。
そのまま、俺達は帰路についた。



ところで―――



(俺って、世間的に見たら、どんな風に見えているんだろ?)

・・・・小学校低学年ぐらいの女の子の首にリードを巻きつけている大の男・・・・・

「どうしたの?父?」

マージが心配そうに聞いてきた。

「・・・なんでもない。」

俺はちょっと疲れた声で答えた。
大丈夫だよな?俺、大丈夫だよな?
セーフセーフ・・・だよな?

(・・・これからはちゃんと考えよう)

うん・・・本気でこれからは気をつけよう。














「あ~疲れた~~」

大輝はいつもの島に戻ってきた。
そして、ため息を吐きながら、そう言葉を漏らした。
やはり、いくら娘のためとはいえ、疲労は取り除けないようだ。

「大輝さん。」

そんな大輝に、アンナが話しかけた。

「アンナさん?・・・あ、あのもうちょっと休憩を・・・」

修行を付けに来たと思い、もう少し、休めるよう懇願した大輝だったが・・・

「いえ・・・そうではなくて・・・」

どうやら違ったようだ。


その後、何か資料みたいなものを大輝に手渡し、アンナはボソボソと何かを伝えた。
それを聞いた大輝は、さっきよりも疲れた表情になった。











「♪♪♪」

ライクベールのターミナルで、マージはご機嫌だった。
どのくらいご機嫌かと言うと、思わず鼻歌を歌ってしまうほどである。

「はあ~」

その後ろで、少し疲れた感じの大輝がいた。

「でも、父?なんで、ライクベールに来たの?」

マージは不思議そうに大輝に尋ねる。

「あ・・・いや・・まあ・・」

大輝は言葉を濁した。

「・・・もしかして、母に会いに来たの!?」

マージは、そんな大輝を気にすることなく、自分で答えを出し、満面の笑顔を浮かべた。

「あー・・ま、まあ・・・それもあるのかな?」

しかし、やはり大輝は言葉が濁ったままだった。
マージは早く早く♪っと急かすように、大輝を引っ張った。

(・・・この笑顔がいつまで続くやら・・・・)

大輝は心の中で、そんな心配をしたのだった。












そこは地獄だった。
あたり一帯からは、獣の唸り声や叫び声が絶え間なく聞こえ、その全てが悲痛に満ちている。
おまけに、なにか異臭も漂ってくる。
その地獄の名は――――

「すいません。お願いします。」

「はい。」



“動物病院”





「こ・・・ここは・・・」

マージは唖然としながら、周りを見渡した。
そこには、獣系の魔物や様々な種類の犬が叫び声を上げていた。

「大丈夫!大丈夫!・・・すぐ終わるから。」

大輝は冷や汗を掻きながら笑みを浮かべて、マージに声をかける。
しかし、マージはそんな声など聞こえず、ある一点を見つめたまま、動けなかった。
その一点とは・・・


「よ・・・よぼおちうしゃ・・・」









「よし、次!!」

白衣を纏った先生が、犬の注射を終えて、次の患者を呼ぶ。
そして、入ってきた患者は―――

「いやばあヴぁあいいいいいいぃぃぃーーーー!!!!」

「痛くないって、少しチクッとするだけだから!なっ!!」

泣きながら、意味不明な叫び声を上げるマージと、
そんなマージを羽交い絞めにする大輝だった。

「いやだ!!絶対にいやだぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」

きゃいんきゃいんっとマージは泣き叫ぶ。

「なに言ってんだ、お前のためなんだから!!ただでさへ厄介な病気が有るんだから、今のうちにしておかないと、後で苦しむことになるかもしれないんだぞ!!」

大輝は忠告するも、マージはいやだいやっと首を振り叫び声を上げ続けていた。

「君達、こまるなあ。ここは、犬や獣系の魔物の予防注射をしてるんだ。人間は専門外だよ。」

医者の先生は大輝達に注意をする。
確かに、今のマージはとてもじゃないが、魔物や犬には見えないだろう。

「あ!大丈夫です、こいつ犬ですから。」

大輝は医者の注意を受けて、マージが犬である事を告げた。

「犬じゃないもん!!魔物だもん!!」

マージは大輝の間違いを自分で訂正した。
・・・案外余裕あるのか?

「先生。」

そこにナースの人が来て、先生に資料を渡す。
資料には、マージの本来の姿であるヘルゴラゴが映っていた。

「よし、注射だ!」

それを見た先生はすぐさま決断した。



ギラッと鋭利な切っ先を向けて、自分に迫ってくる。
その名は注射器・・・人間の子供達から最も恐れられる、恐ろしい兵器の名だ。

「ひっ・・・」

それを見たマージは、小さく悲鳴の声を出した。
哀れマージ!このまま注射器の餌食になってしまうのか!!?

「ぎゃん!!」

しかし、そこはさすが最上級モンスター!!
僅かな隙をつき、大輝の拘束から逃れた。

「あっ・・・!マージっ!」

大輝は声を上げるが、その時マージの姿は病院内から消えていた。
さすがは、いn・・・ではなく、獣系最強と謳われたヘルゴラゴである。

「ふーむ・・・人間になれる最上級モンスター・・・とても珍しい犬種・・もとい、魔物だな。」

先生はマージを見て、そんな感想を抱いた。

「貴重な犬・・・もとい、魔物が狂犬病などに冒されるのを見逃すわけにはいかん!!注射だッ!!!」

ガタっと席を立ち、注射を掲げながら、誓いの言葉を叫んだ。

「美しい犬!愛らしい犬!利口で賢く忠実な人間の友!!それを守れなくて何の獣医か!?にーーーがーーーさーーーんーーー!!!」

ふははははっと笑い声を上げる。
ゴゴゴッと先生の背中に炎が見えた。
その顔は、最早正気でなく、狂気に染まっていた。
・・・・いいのか?それで?








「はっはっはっは」

一方、病院から逃げ出したマージは街の中を凄まじいスピードで駆け抜けていった。

「わっ!!」

「きゃ!!?」

「な、なんだ!!?」

街の人達も何かが通ったのは解ったが、何かまでは解んなかった。
それだけ、マージは必死に逃げていたのだ。



さて、なぜマージはこんなにも必死になっているのだろうか?
それは、昔見たテレビにあった。



大輝が修行している空間には、居住スペースである家が立っている。
そこには、食料は勿論、ベットや風呂、テレビ・ゲーム機などの娯楽品などが揃っている。
マージがある日、何気なくテレビを見ていた時、動物病院の特集がやっていた。
そして、注射をされて、泣き叫んだ犬を見て、マージは注射が嫌いになってしまったのだ。
無論、いくら嫌いでも、予防注射は打たなくてはならない。
そのため、大輝やアンナは一度マージをライクベールの病院に連れて行こうとしていたが、
マージが逃げ出したため、連れていけなかった。
アンナの追跡を逃れ、いち早く勘付いた察知能力・・・恐るべし、野生の力とでもいえるだろう。


そのため、次の予防注射には必ず連れて行こうと、こっそりアンナは大輝に伝えたのだ。
マージに勘付かれないよう、こっそりとな・・・
しかも、アンナはマージの力を抑えるリミッターをこっそり付けていた・・・さすが、バーンパレス親衛隊長。
だが、それでもマージの注射嫌いの思いが勝ったようだ。







「はあぁはあぁはあぁ・・・こ、ここまで来れば・・・」

汗を掻きながら、マージは呼吸を整えようとする。
そして、後ろを確かめて、大輝や先生がいないのを見て、安著のため息を吐いた。
しかし、相手には自分の父である大輝がいる。
そのため、いつ追いつかれるか解らない。

「・・・早く、どこかに逃げよう。」

マージはそう判断して、歩き出した。

「わっぷ!」

しかし、歩き出した瞬間、何かにぶつかった。
なんだ?・・・そう思って、確かめようと、顔を上げた。

「グルルルルッッ!!」

そこには、豹のような体に、巨大な牙と赤茶色のたてがみが生えているモンスタ―。
自身を飲み込むと言ったほどの“キラーパンサー”がいた。


*キラーパンサー・・・「地獄の殺し屋」の異名を持つ、獣系上級モンスター



「ふーふー」

軽く、5・6メートルはあると言ったほどのキラーパンサーが自分の目の前にいる。
普通の人間なら気を失ってしまう光景だ。

「なんだ・・・キラーパンサーか・・・」

しかし、マージはそんな事は特に気にした様子はなく、無視して歩き出した。
当然だ、マージにとっては目の前の存在など、特に危険はないのだから。

「君!危ないぞッ!!」

しかし、そこに第三者が現れた。

「やつの毛皮には麻酔銃はきかん!!やむをえんっ!射殺する!!」

「待てっ!今撃てば、あの子に危害が及ぶかもしれんぞっ!!」

銃のような物を持った男が数人。
どうやら、このキラーパンサーを追ってきた、治安組織のようなものらしい。


*以下、キラーパンサーの訳語をお楽しみください。



『クックックッ、なるほど、こいつはいい!!どーやら、このチビがいれば人間は俺を撃てんらしい。』

ニヤリと笑みを浮かべながら、キラーパンサーは言葉を漏らす。
最も、現実にはただ唸っているようにしか聞こえないがな。

『うははははははははっ!!俺って頭いいぜっ!!この最強キラーパンサー“ゲレゲレ”様の知能とパワーさへあれば、この場から抜け出せる!!最終目標は全国制覇だ!!』

随分大層な事を言ってるが、少なくても人語を話せない時点で、賢さは低いと思われる。

『おいチビ!!てめーは人質に・・・』

マージを人質にしようと、キラーパンサーは手を伸ばすが・・・

――ガッ――

あっけなく、払われてしまった。



このキラーパンサーの不幸を述べるとしたら、今日マージと出会ってしまったことだろう。
いや、恐らく出会っただけなら、まだよかっただろう。
だが、手を出したのはまずかった。
なぜなら―――


「あーーーチビってのは私のことか?ネコ!?」


なぜなら、目の前にいるのは自分(上級モンスター)如きでは到底かなわない、最上級モンスター・・・その中でも、獣系最強と恐れられたヘルゴラゴなのだから。




キッと、マージはキラーパンサーを睨みつける。
その目は鋭利の用に鋭く、とてもじゃないが、幼い子供には似つかわしくない迫力があった。

『グッ・・・グガーー!!』

その鋭い眼光に一瞬怯んだキラーパンサーだったが、すぐ持ち直し、マージに襲いかかった。

「気易く触るなッ!!」

『グウっ』

しかし、キラーパンサーの一撃が当たる前に、マージの一撃が入った。
キラーパンサーは、そのまま気絶してしまった。

「き、キラーパンサーを素手で・・・」

治安組織の人達は唖然としていた。
まあ、小学生ぐらいの、しかも女の子が、地獄の殺し屋の異名を取るキラーパンサーを素手で倒したのだから、無理もないか。

「ふんっ!!私にちょっかいを出すなら、もっと牙を鍛えてからにしろ。」

吐き捨てるように、マージは言う。
その雰囲気は、幼い子供ではなく、獣系最強モンスター、ヘルゴラゴとしての覇気が満ちていた。
しかし、ここは街中。
こんな騒ぎを起こせば人が集まってくる。
実際、周辺には人が集まっていた。
そんな所の中心にいれば、いやでも目立つ。
そして、マージは逃走途中だった。
これがどういうことか?


「此処にいたのかね?」

――プスッ――

「あうっ!」


・・・こういうことである。







「マージっ!!」

そこに大輝が来て、マージに言葉を掛ける。

「~~~~!!!」

マージは、大輝をキッと涙目で睨みつけて

「ひどいひどいッーー!!注射はいやだって言ってるのにーーー!!」

「わかった!わかった!遊んでやるから、な!?な!?」

勢いよく飛びつき、大輝の頬を舐めだした。
涙目で、大輝の頬を舐めている姿は、さっきのような覇気はかけらも残っていなく、
普通の女の子のような雰囲気だった。













おまけ

「・・・・で?これはどう言う事だ?」

マーシャは目の前の光景を見て、問いかける。


マージと大輝は、予防注射を無事?において、ライクベールに住んでいるマーシャの元を訪れた。
マーシャも喜んで、迎えたのだが・・・

「ひっぐ・・えっぐ・・ずー」

自分の娘である、マージが鼻を啜りながら泣いていた。
確かに、親としては気になることだろう。




「あーいやー・・なんだ・・」

大輝はマーシャの質問に答えようとしたが、

「すん・・父がぁ・・・」

その前に、マージが説明し始めた。

「(病院に)連れて行って・・ひっ・あぁ・・(注射を)無理やり・・入れて・・いやだって言ったのに・・えっぐ・・・すん・・・(注射が)初めてだから・・・痛くて・・ぅん・・血が出て・・・(注射が)とっても痛くて・・・あっぐ・・・」

時々詰まりながらも、何とか説明した。
説明したのだが、何かがおかしい。
大輝も、マージの説明が言葉足らずだったので、自分が説明しようとしたのだが・・・

――ゾクリッ――

「!!!ッ」

なにか、とてつもない寒気に襲われた。
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ・・・そう、本能が警告するが、大輝は動けなかった。
そして、その寒気の発信点を確かめようと、恐る恐る顔を向けた。

「無理やり・・初めて・・・痛い・・・血が出る・・・」

そこには、マーシャが俯いて、ポツリポツリと言葉を漏らしていた。

「あ、あの~マーシャさん?」

大輝は恐る恐るマーシャに問いかける。

「・・・・」

「ひッ!!」

マーシャがガバッと顔を上げた。
大輝はそれを見た瞬間、小さな悲鳴を上げた。

「よし!大輝・・・少し、向こうでOHANASHIしようか?」

「いや!ちょっと待て!何か勘違いしてる、絶対勘違いしてる!!」

「はっはっは大丈夫さ・・・それじゃ、逝こうか・・・・」

「字が違う!!おまけに、目が笑っていない!ってちょっとまってなっわっぬわああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

その日、ライクベールの空に一人の青年の声が響いた。














あとがき

どうも、作者の天魔です。

今回は日常編をお送りしました。
やっぱり、戦闘ばっか書いていたので、たまには、こういったほのぼのした内容を書きたかったのですが、どうでしたか?
と言うより、マージがこんなに出るのは初めてでしたね・・・

では次回。
















[15911] 第十五話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:24
第十五話




*今回の話を御覧になる前に第六話(上)~第六話(下)をお読みください。







『はっはっは大丈夫さ・・・それじゃ、逝こうか・・・・』

『字が違う!!おまけに、目が笑っていない!ってちょっとまってなっわっぬわああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!』

ライクベールで大輝に危機が迫っていた時、ある世界では、二つの小さな命に危機が迫っていた。










ある世界の絶壁に二つの小さな影があった。

「ぴ・・ぴぎ~」

「・・がうっ~」

一つはスライム・一つはコドラだ。
しかし、彼らは今、絶体絶命のピンチに陥っていた。


先ず、コドラがスライムを抱えている。
これだけだと、特におかしいとこはないが、問題はその状態だ。
逆さなのだ・・・コドラがスライムを抱えて、絶壁の途中に生えている木に尻尾を巻きつけ、真っ逆さまの状態で支えているのだ。

「が・・あああぁ・・・」

コドラの口から苦しそうなうめき声が漏れ出す。
本来、コドラは脚こそ発達しているが、その他は特に秀でたものはない。
力も、魔物の中ではそれほど高くない。
そんな力で、自身とスライムの両体重を支えているのだ。
しかも、逆さまで尻尾のみで・・・それは、相当辛いものだろう。

「ぴきーー!!ぴっぴっぴきー!」

スライムが、何か訴えるようにコドラに話しかける。

「が・・がうっー!」

それに対し、コドラは首を横に振って、否定の意を示した。
結局、状況は変わらず、そのままの状態がしばらく続いた。

――ミシッ――

やがて、二人の命綱である木の根もとが、いやな音をたてた。
どうやら、二匹の重さに耐えられなくなってきたようだ。

――ボキッ――

そして、無慈悲にも折れてしまった。

「ぴぃーーーー!!!」

「があぁーーー!!!」

当然、支えを失った二匹は真っ逆さまに落ちていく。
数十メートルはあるかと言う、絶壁から真っ逆さまに落ちていく・・・いくら魔物でも無事では済まないだろう。
グングンと地面が近付いてくる。
二匹は恐ろしさの余り、ギュッと目を瞑った。

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

「?????」

しかし、いつまで経っても、衝撃がやってこない。
どうして?・・・そう思い、二匹は恐る恐る目をあけると、

「ぴ?」

「がう?」

思わず、マヌケな声を出してしまった。
本来、硬い地面に衝突するはずだったのに、それとは逆にドンドン地面から離れていってるのだ。
どうやら、空を飛んで衝突は免れたようだ。
でもなんで?・・・そう疑問に思った二匹の頭上から声が聞こえた。

『まったく・・・お前らは・・・』

その声音は、こちらを叱る様な硬い声だったが、どこか優しさを浴びた声だった。
二匹は、その声の主を確かめようと、顔を上に向けた。

『・・・しっかり捕まっていろ』

そこには、かつて大輝がサバイバルを行った森の住人の一人。
ドラゴスライムのドラムが、二匹を抱えて飛んでいた。









『なにをやっていたんだ!!もう少しで死ぬとこだったんだぞ!!』

ドラムは怒りの表情を浮かべながら、スライムとコドラを叱り飛ばす。
下手したら死ぬとこだったので、当然と言えば当然である。

「ぴっ・・ぴっきーーー」

「ぐうぅーー」

スライムとコドラは目に涙を浮かべながらも、事情を説明し始めた。

『なに?』

事情を聞いたドラムは、絶壁を覗き込んだ。

『あれか・・・』

絶壁には人一人が立てるぐらいの突起している部分があり、そこに一輪の花が咲いていた。
この辺ではあまり見かけない、珍しく綺麗な花だ。
どうやら、スライムとコドラはこの花を取ろうとして、誤って落ちてしまったようだ。

『・・・なぜ、こんな危険を犯してまで取ろうとしたのだ?』

花は少し身を乗り出せば取れる位置にあった。
しかし、危険であることには変わらない。
ドラムは怯えているスライムとコドラの事を配慮して、なるべく怒気を抑えて理由を聞いた。

「ぴっぴ・・ぴきぴきっ・・」

「がう・・があぁ・・がぅ・・・」

涙声が混じっていたが、二匹は理由を話し始めた。

『・・・そうか・・・そう言えば、もうそんな時期だったな・・』

理由を聞いたドラムは、憂えを帯びたような表情をし、空を仰いだ。
そして、スッと飛び、二匹が取ろとしていた花を取った。

『・・お前達の気持はよく解った・・・きっと王も喜ぶだろう』

そして、取った花を二匹に渡した。
その時の表情や声音はとても穏やかで、まるで親が子に向けるような慈愛に満ちていた。
二匹もそれを見て、パアァと笑顔になるが・・・

『た・だ・し!・・それはそれ、これはこれだ!』

「ぴぎーーー!!」

「があぁーーー!!」

再び怒りの表情になったドラムを見て、二匹は絶叫を上げた。




その後、ドラムの説教が終わり、二匹は泣きべそを掻きながらも何処かに向かった。

『・・・・・』

ドラムは、そんな二匹を見送った後、遠くの一点を見つめていた。
その表情は、楽しい事・嬉しい事を思い出すのと同時に、悲しいことも思い出すような・・・そんな、何とも言えない表情だった。

『・・・私もいくか』

やがて、ポツリと呟き、何処かに飛び立った。










森全体を見渡せる小高い丘の上にその墓は立っていた。
所々凹んだりしていて、お世辞にも綺麗とは言えない墓石。
しかし、毎日磨いているのだろうか、汚れと言う汚れは見当たらなかった。
さらに、周囲には果物や色とりどりの花が供えられている。
そのことから、この墓に眠る人物が生前どれほど慕われていたから解るだろう。
そこに、ドラムが花束を持って現れた。

『王よ・・・お久しぶりです。』

ドラムは、その墓に眠る人物・・・かつての自分たちの王、マーシャに向かって恭しく礼をした。




墓石の側により、持っていた花束を供える。
ふと気が付くと、そこには先ほどのスライムとコドラが持っていった花が供えてあった。
それを見たドラムは、フフっと優しい笑みを浮かべた。

『王よ・・・御覧下さい、この光景を』

小高い丘からは、森全体が見渡せる。
森には、スライムなどの森のモンスターと、コドラなどのドラゴン系のモンスターが楽しそうに笑い合っていた。
本来なら、これは珍しい光景だ。
他種族同士の魔物が同じ場所に集まると、どうしても、生態系の違いから争いが起きてしまう。
しかし、どうやら、この森ではうまい具合に共存できているようだ。
ドラムは、その光景を優しい笑みを浮かべながら見つめていた。

『あなたがお亡くなりになり、五年の歳月が流れました。
その五年間本当に様々な事がありました・・・しかし、私はやり遂げました。』

マーシャの墓石に向き直り語りかけるドラムは、どこか誇らしかった。






五年前のあの日、ドラム達は、自らの王を失った。
その悲報に森のモンスター達は嘆き悲しんだ・・・その中には、当然ドラムも含まれていた。
しかし、いつまでも嘆いている訳にはいかない。
王(マーシャ)無き今、皆を導くことができるのは、自分しかいない。
ドラムは自分を鼓舞し、予てからのプランである、ドラゴン達との共存を図った。
しかし、その道のりは困難な物だった。


さっきまで争っていた連中といきなり仲良くできるはずなどない。
それは人間だけでなく、魔物とて当然である。
だが、元々は森のモンスターとドラゴン達は互いに共存してきた。
その秩序が崩れたのは、マーシャ自身の老衰もあったが、それ以上にマーシャの力を見たことがない、若いドラゴン達の中に好戦派の連中が生まれたのが原因だった。
そう言った連中はマーシャの力を直接見たわけでもないため、歯止めが効かなくなり、暴走するようになった。
大輝がいた時に襲ってきた、ドラゴン達のリーダーであるバトルレックスもこう言った連中の一匹である。
しかし、それは逆に言えば、マーシャの力を見たことがあり、尚且つ共存してきたドラゴン達・・・年配の連中がいると言うことである。


年配のドラゴン達は、それほど好戦派の連中はいなかった。
むしろ、できれば再び共存していきたいと思うドラゴンがほとんどだった。
ドラムは、そこに目を付け、年配のドラゴン達から共存できるよう説得していった。
説得は向こうも共存を望んでいたたため、思ったよりうまくいったが、やはり、好戦派の特に若いドラゴン達の説得は難航した。
しかし、それより若いドラゴン、つまり、次世代のドラゴン達は子供特有の純粋さのせいか、森のモンスターともすぐ仲良くなれた。
さきほどのスライムとコドラが良い例である。


年配のドラゴンと子供のドラゴンが共存に回ることで、徐々にだが好戦派のドラゴン達も軟化していった。
森のモンスターの中にも共存に反対する者もいたが、ほとんどの連中は平和を望む、穏健派だった。
そのため、徐々にだが、共存できるようになっていった。
無論、まだまだ蟠りは残っているが、このままいけば、そう遠くない未来に良い相互関係を作れるだろう。








『まったく・・・あいつらにも困った物です。
元気なのは良いことなのですが、やはり、もう少し控えてほしいものです。』

ドラムは、マーシャの墓石に先ほどのスライムとコドラの事を話した。
その声は、やはり、どこか優しさを含んでいる声音だった。

『そうそう、確かスラべーの所に、子供が生まれました。元気のいい男の子ですよ。』

『覚えていますか?あの、ダースと言うドラゴンを。
あいつ・・「はん、ざまーみろ」っと口では悪態をついていましたが、頻繁にここを訪れるようです。
案外、ドラゴン達の中で悲しんでいたのは、あいつかもしれませんね。』

『ザックとリックがこの間、兄弟喧嘩をしましてね。
喧嘩はいいのですが、せめて、周りの事を考えてしてほしいです。』

その後、ドラムは、ここ最近あった出来事をマーシャの墓石に話しかけた。
その話は、どうでもいいような物ばかりだった。
しかし、ドラムはそれを楽しそうに語りかけた。

『・・・王よ・・』

ふと、ドラムは空を仰ぐ。

『人間も魔物も関係なく、死んだら、死後の世界に行くようですね。あなたは、そこでどんな風に過ごしているのですか?』

ドラムは問いかけるように話しかける。
しかし、当然その答えは返ってくるはずもなく、ドラムの言葉は空に吸い込まれていった。










一方、ライクベールでは



家族連れや友達同士が楽しそうに談笑をし、肉などを焼き食事をしている。
俗に言う、焼肉屋である。
その店に、大輝・マージ・マーシャの三人はいた。

「はぐっはぐっ・・むしゃむしゃうぐ・・はぐはぐむぐぅ!」

「あ~、マージ大丈夫か?ほれ、水。」

「マージ、そんなに慌てなくても大丈夫だから、ちゃんと噛んで飲み込め。」

ガツガツと肉を掻きこんでいたマージ。
どうやら、肉が喉に詰まったようだ。
それに対し、大輝は水を渡し、マーシャは苦笑しながら注意した。
その姿は、正に一つの家族の姿であった。
・・・最も、夫婦と子供と言う関係ではなく、若い母親と年の離れた兄妹と言った感じだがな。



「でも、よかったのか?」

食事をしている最中に、大輝がすまなさそうにマージに問いかける。

「侘びと言ってるだろ・・・お前が気にするな。」

マーシャが言っている侘びと言うのは、数時間前の誤解が生んだ事件?である。
それでマーシャは大輝を×××してしまい、そのお詫びに食事に誘ったのだ。
侘びの食事で、焼肉が思いついたのは、いかにも大輝らしいと言えばらしい。

「いや・・・そうじゃなくて・・・」

しかし、大輝はマーシャの侘び発言に納得する様子はなかった。
マーシャはそれを不思議そうに見つめていたが、心当たりがあったのか、未だにすまなそうにしている大輝に話しかけた。

「ああ・・・包丁の事か?そっちの方も気にするな。
一万Gぐらい、私の稼ぎならそんなに苦しくはならないからな。」

包丁と言うのは、以前大輝がダメにしてしまった、オリハルコン制の包丁の事である。
マーシャは侘びの意味で、食事を奢っただけでなく、この包丁の代金も肩代わりしてくれたのだ。
被害をくったのは自分だが、誤解が解けて、ちゃんと謝ってくれたし、食事に加え包丁の代金も肩代わりしてくれたのだ。
ここまで来ると、さすがに怒るきになれなかった。むしろ、なんか済まない気持ちに大輝はなってしまった。
しかし、これはマーシャからしたら当然の事である。
今回の事はあきらかに自分が悪いことだし、包丁の事も自分を助けてくようとして、ダメにしてしまったのだ。
そのことを考えると、マーシャのお詫びは変なことではない。

「あ~そーか・・・それじゃ、お言葉に甘えて・・・」

大輝も、いつまでも済まなさそうにしてるのは、相手に失礼だと思い、甘えることにした。
そして、食事を再開しようとして、ふと気になったことを聞いてみた。

「所で・・お前ら、まだ食うのか?」

大輝は思わず聞いてしまった。
自分もまだ若く、かなりの量を食べているが、目の前の二人は軽く20人前は食べている。
明らかに自分よりも多い量だ。

「何を言ってるんだ?当たり前だろ。」

「はぐっはぐっうんむぐっ・・・はぐっはぐっ」

大輝の問いに対し、マーシャは涼しい顔で答え、マージは肉を一心不乱に掻きこむことで答えた。

「お前ら、どっかの戦闘種族か?」

その、あまりの食べっぷりに、大輝は自分が好きな漫画に出てくる種族を重ねてしまった。

「ふーむ・・・そう言えば、私達ヘルゴラゴはある世界においては、戦闘種族として恐れられているらしいぞ。」

マーシャは、笑いながら、そんな答えを返した。
大輝は、その答えを聞いて「さよかっ」と特に気にするのはやめて、肉に箸を伸ばした。





マーシャ・・・それなりに楽しく過ごしているようだ。















『・・・・そう言えば・・・』

ふとドラムは思い出した。
五年前、自分達を助けてくれた人間・・・大輝の事と、

『王の子は立派に育っただろうか?』

大輝について行った、自らの王の子供だった存在の事を。
あれから五年もたつ、むろん、時間の流れは違うので、もしかしたら五年前の姿のままかもしれない。

『・・・まあ、それはそれでいいか』

五年前のように変わりない姿を思い出し、ドラムは思わずフフッと含み笑いをした。
案外、王の子の方が立派に育ち大輝を支えているかもしれないな・・・

『ダイキ、王の子・・・お前達は、元気で過ごしているか?』

ドラムは笑いながら、空を仰ぎ問いかけた。
ヒュウウゥッと一陣の風が吹いた。
それは、自分の問いに対しての返事だったのかもしれない。













再びライクベール






「ふーむ・・・こっちの方も似合っているのではないか?」

「うーーー」

マーシャは幾つかの服を持ち、一つ一つマージに当てていた。
その全てが、ワンピースなどと言った、所謂かわいい服である。

「母ー私はもっと動きやすい方が・・・」

マージはどちらかと言えば体を動かす方が好きなので、こう言った服はお気に召さなかったようだ。

「何を言っている。せっかく女の子に生まれたんだから、こう言った服も着ないと損だぞ。」

それに対し、マーシャは尤もらしい事を言った。
その様子は、誰が見ても親子の関係だった。

「おーい、まだ決まらないのか?」

大輝は両手いっぱいに買い物袋を持ち、十メートルに届くのではないかと言うほどの荷物を持っていた。
どうやら、荷物持ちの用だ。

(まったく・・・女は買い物が長いと聞いていたが、こんなにもだったとはな・・・)

あまりの買い物の長さに思わず心の中で愚痴ってしまった大輝だった。
まあ、その気持ちは解らないものではないがな。

「うーん・・・よし!全部買おう。」

長い間悩んでいたマーシャだったが、結局決められず、全部買うようだ。
そして、会計を済ませ、袋に包んでもらうと・・・

「大輝!」

大輝の方に向かって投げた。

「のわっとっよっは!」

自分が持っていた荷物の山を崩さず、投げられた荷物を器用にもその山に積み上げた。
その技術はとても素晴らしいもので、店員を思わず拍手を送るほどだった。

「マーシャ・・・もう終わりか?」

バランスを取りながらもマーシャに聞いた。
正直、もう勘弁してほしいと言うのが、彼の心情だった。

「なに言ってるんだ。折角来たんだから、お前の分も買ってやるよ。」

お詫びはもういいから、勘弁してほしい。
そのことを伝えようとする大輝だったが、すでにマーシャは次の店に向かっていた。

「はあぁ~」

大輝はため息をつきながらも、その後について行った。







斎藤大輝・・・前途多難であるが、おおむね元気である。


マージ・・・とてつもなく、立派に育ちました。

















『・・・・もう、こんな時間か』

そう呟いたドラムの顔は、夕日に照らされて赤く染まっていた。
時間を忘れるぐらい、話しこんでいたようだ。

『それでは王・・・私はこれで・・・』

マーシャの墓石に恭しく礼をし、飛び立とうとすると・・・

――ドオオォン――

どこからか、爆発音が響いた。

『・・・はあ~』

どんなに平和になっても、必ず世を乱そうとする者はいる。
この森でも、共存してきたとはいえ、時々暴れる者が現れる。
そう言った輩を取り締まるのも、この森のリーダーである自分の仕事である。

『いくか・・・』

ドラムは爆発音がした方を睨みつけ、飛び立った。
そして、空中で魔法力を高めていき・・・

『ドラゴラム!!』

ドラゴラムを唱えた。

――パアアァァン――

ドラムの体を光が包みこむ。
体は十メートルは超すと言ったほどの巨体となり、ドラゴン特有の鱗や鋭い牙と爪。
羽ばたくだけで、木々をなぎ倒すほどの風圧を起こす、巨大な翼。

『があああああああぁぁ!!!』

黄金の龍となり、ドラムは空を駆けていった。






この森の平和はドラムがいる限り、永遠に続くであろう。








ドラムが亡くなり、あの世でマーシャと再会した時、どのような反応をするかは、まだまだ先の話・・・・


















おまけ

*もしも、DBの一般人があの世の事を知っていたら。




「はあぁはあぁ」

一人の命が尽きようとしていた。

「おじいちゃん・・・」

周りの人たちは悲しみの声を上げるが、これは仕方ないことである。
寿命・・・どんな、生き物にも必ず訪れる、言わば決まった運命なのである。

「わしは幸せ者じゃよ・・・こんなにも多く人に看取られるのだからな。」

今まで、本当にいろんな事があった。
悲しいこともあったが、それ以上に楽しいことや嬉しいことがあった。
今は、こうして息子夫婦や孫たちに囲まれて逝ける・・・これ以上の幸せはなかった。
ただ、心残りがあるとすれば、これから生まれてくる曾孫を抱けなかったことだある。

「それじゃ!閻魔様に頼めばいいんだよ。」

「・・・そうじゃの・・・閻魔様に80年ぐらい留まらせてもらうよう頼んでみるかの。」

老人はそこまで言って、静かに目を閉じた。



その後の葬式で、「父さん・・俺も30年ぐらいしたらそっち逝くから待っててね」と言う、息子や
「おじいちゃんにあった時、立派って言われるように育てましょう。」と、お腹に手を当てながら言う孫がいた。





















あとがき

前回に引き続き、日常?編をお送りしました。
ドラムと大輝達の温度差がすごいことに・・・

おまけの会話・・・実際、あの世界だと、本当にしてそうですよね。

さて、ほのぼのした話はここまでです。
次回、大輝が大変な目に会います。
まあ、あの方の登場です。
ある世界の戦闘民族から恐れられ、宇宙の帝王のあの方が登場します。
はたして、どうなることやら・・・・

では次回。












[15911] 第十六話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:31
第十六話














大輝とアクセルは、仕事の帰りに昼食を兼ねて、海辺のレストランのテラスで休憩していた。
テラスからは青い海を一望でき、吹き抜ける風は心地がよい。
その風景は、眺めているだけで疲れを癒し、汚れた心が洗い流されるようだった。

「あああーー疲れた~」

しかし、大輝はそんな風景を見る余裕がないのか、テーブルに顔を伏せていた。

「情けないぞー、あれぐらいで。」(あーあ・・・せっかく海に来たのに、水着の美女が一人もいないなんて~)

そんな大輝に、アクセルは気の抜けた声で話しかけた。
こちらも眉を歪め表情はすぐれなかった。
最も、大輝とは全然違う理由でだがな・・

「情けないって・・・あれは辛いですよ。メタルスライム20匹を捕獲なんて。」


*メタルスライム・・・特殊な金属の体を持つスライム。守備力は勿論、その素早さは魔物の中でもトップクラスに入る。おまけにほとんどの呪文が効かない。上級モンスター


本来、大輝は既にアンナの借金を返済して、仕事をする必要はない。
しかし、大輝はアンナから、仕事で積んだ経験はきっと役に立つと言われていた。
それに加え、どうせ修行するなら、お金を稼いだ方が得だと大輝は考え、仕事を受けることにしたのだ。





「それにしても・・・お前、良く捕獲できたな。」

今回の仕事の内容は、スライム保護団体から逃げ出したメタルスライムの捕獲だった。
メタルスライムなどのモンスターは、良く密漁者から狙われる。
彼らの特殊な体は高値で取引されるためだ。
だからこそ、保護をしているのだが、これは正直言って相当体力を使う。
早いのだ・・・とにかく、彼らは早すぎるのだ。体も小さいため、よく見失うこともある。
そのため、捕獲にはかなりの労力を使い、人数も必要になってくる。特に、今回の用に20匹を捕まえるなど、一人では何日かかるか解らない。
おまけに、保護団体からは、傷つけるなと言われていたため、必然的に攻撃して動きを止めるのは禁止される。
しかし、大輝はそんな厳しい条件にも関わらず、二十匹全てを捕まえた。一匹も傷つけずに。
まさか、アクセルもこんな条件で、しかもこんなに早く捕まえられるとは思ってもいなく、驚いてしまった。(アクセルは仕事を紹介しただけのため、ただ見ていた。)

「あーまあーあれぐらいなら、まだ余裕っすからね・・・」

大輝は肩をコキコキっと鳴らしながら、アクセルに答えた。
謙遜しない所を見ると、自分に対して自身が付いてきたようである。



本来なら、これは良い傾向である。
自分に自信が付けば、それだけ成長に繋がるだろう。

(マズイな~)

しかし、アクセルはその自信を危険視していた。




確かに大輝は強くなった。
アクセルとの仕事をこなしたり、アンナ・ミストバーンの修行を耐えることによって、徐々にだが自信も付いてきた。
それが完璧になったのは、あのギニュー特選隊との模擬戦である。
ギニュー特選隊との戦いで、大輝は一人で“倒せた”と言うのが、自分自身の自信に繋がっていた。
けれど―――

(少し、階段を飛ばしすぎたな・・・それに・・・)

アクセルは、少し目を鋭くして大輝を見据える。
その目は、何かを探っているようだった。

(そろそろ限界だな・・・ふ~これは荒療治が必要か・・・)

アクセルは心の中で、そんな決断をし、

「すいませーん。注文いいですか。」

「はい。ご注文は何になさいますか?」

「とりあえず君を一人・・・テイクアウトで。」

・・・ナンパをするのだった。












――100年目――

「はあぁ~」

大輝は、いつもの模擬戦用の空間でため息をついていた。

「大輝さん・・・始めますよ。」

アンナは一声かけてから、目の前のパネルを操作しだす。
それに伴い、何も無かった空間が輝きだし、前回ギニュー特選隊と戦った空間であるナメック星に変わった。



アンナから模擬戦の知らせが届いたのは突然だった。
初め、大輝はこの模擬戦に反対していた。
予想してたからだ、今度の相手はまず間違いなく、あいつだと。
しかし、アンナの説得により、渋々とだが了承した。




(まあ、一応対策もあるし大丈夫かな?俺も強くなったしな。)

大輝は、その相手に対策を立てていた。
それに、自分が強くなったと言う自信も、今回模擬戦を受ける理由の一つになっていた。
やがて、大輝の目の前の空間が光り出した。

「・・・ここまで来たんだし、そろそろ覚悟を決めるか!」

パンパンっと自分の頬を叩いて気合を入れ、大輝は目の前の光を睨みつけた。


「・・・・・・・」

大輝は唖然としながら目の前の相手を見ていた。

「・・・・・・・」

何かの間違いかと思い、目を擦って再び見たが、結果は変わらなかった。

「・・・・なんで?」

確かに自分の予想は当たっていた。
しかし、違う意味で外れていたため、大輝は思わず呟いてしまった。




大輝の目の前にそれはいた。
その体は白く、身長も対して高くなく小柄だ。
全体的に見れば、ヒューマノイドタイプに近い。しかし、尻尾が生えていることから、人間とは違うようだ。

「・・・・・」

フリーザ(最終形態)・・・DBの世界において、宇宙の帝王と恐れられていた存在が静かに佇んでいた。








「アーーーーーーンーーーーーーーナーーーーーーーさーーーーん、どう言うことっすかーーーーーーーー!!!!」

大輝は地面が揺れるほどの・・・いや、実際に大声で地面を揺らしながら制御室にいるアンナに問いかける。
その声には、かなりの焦燥感が漂っていた。

「あ~も~うっせ、そんな大音量で話しかけるな。」

しかし、大輝の問いに答えたのは、男の声だった。
大輝は一瞬不思議に思ったが、その声には聞き覚えがあった。
そして、制御室を良く見てみると、アンナの隣に見覚えのある姿があった。

「あれ?アクセルさん、なんでいるんですか?」

その声の人物・・・アクセルに大輝は問いかける。

「別に居ても、いいだろ。」

アクセルは、この空間に来ることは滅多にない。
せいぜい、自分に仕事を持って来てくれるぐらいの時である。
自分の模擬戦の時も見守るのはアンナだけだった。
なぜ、今日に限っているのか気になったが、大輝はそれ以上に気になることがあったので、特に気にするのはやめた。

「・・・まあ、別にいいですけど。それよりも、あれ!あれはどう言うことですか!!?」

大輝はビシッとフリーザを指さしながら声を荒げる。

「なにって・・・今回の相手だぞ。」

それに対し、アクセルは当たり前のように答えた。
確かに、大輝も次の相手はフリーザだとは予想していた。
しかし―――

「なんで、いきなり最終形態なんですか!!?」

フリーザと言う人物は姿を変えるたびにパワーアップできる・・・言わば、変身タイプの宇宙人なのである。
最も、本人曰く、最終形態こそが本当の姿で、第一形態などはパワーを抑えるための形態だそうだ。
大輝が次の相手と予想していたのは、この第一形態のフリーザ・・・つまり、一番弱い状態が相手だと思っていた。
まさか、大輝もいきなり最終形態で現れるとは予想しておらず、軽い混乱状態になってしまったのだ。

「いや~だってさ・・・」

アクセルはゴソゴソっと懐を漁って、

「お前、今まで原作知識を武器にしてたでしょ。知識が通じない戦いに慣れておくのも必要だぞ。」

そう言いながら、アクセルが取りだしたのは「ドラゴンボール」の単行本だった。
どうやら、これを読んで大輝の次の相手を決めたようである。


アクセルが言ってることは正しい。
自分の思い通りにならない事など、頻繁に起こる可能性だってあるのだ。
そのような事態に陥った時、取り乱さないよう慣れておくのは、決して間違った考えではなかった。


「それに、お前、今回もその知識を活用しようとしただろ。」

「うっ」

アクセルが言ってることは図星である。
実際、大輝も原作知識と言う武器を使って、今まで有利に戦ってきた。(グルドが時間を止められるやギニューがボディチャンジを使えるなど)
今回も、その知識を使って、フリーザへの対策を立てていた。
その対策とは、フリーザに変身させる暇を与えず、一気に勝負を決める事である。
しかし、第一形態ではなく、いきなり最終形態で現れたので、この策は通じなくなった。

「ま!そう言うわけだから、ドーンとぶつかっていけ!」

「いや、うんな事言っても・・・」

やはり、どこか納得できないのか、大輝は未だに渋っていた。

「つーわけだから・・・・始め!」

「ちょ!」

アクセルは、そんな大輝を無視して模擬戦開始の合図をした。
大輝は文句を言おうとしたが、制御室はすでに消え、念話も閉じられていたので言えなかった。
それと同時に、今まで動かなかったフリーザも行動を始めた。






「・・・・・・・」

フリーザはゆっくりと顔を上げ、大輝を見据える。

(えーいクソ!やってやる!ええ、やってやりますとも!やってやるぞこんちくしょーーー!!!)

大輝は心の中で自分を鼓舞し、フリーザを睨みつける。
・・・半場、自棄になっているようである。

(闘気は・・・・チッ!やっぱり俺よりも高いか・・魔法力もそこそこあるな。)

しかし、そんな状態にも関わらず、フリーザを冷静に分析し始めた。
この辺は、成長しているようだ。

「・・・・・」

フリーザは、そんな大輝をただ見据えていた。
白く、特になんの感情も浮かんでいない顔は、傍から見たら不気味である。
そして、次の瞬間。

「ばん。」

「ッ!!!!」


――ドオオォン――


刹那・・・・本当に刹那の間だった。
フリーザが何か呟いたと思ったら、大輝が立っていた場所がいきなり爆発したのだ。

「・・・・・」

フリーザは、爆発地点の上空に目を向ける。

「あ・・・あぶなかった~」

そこには、冷や汗こそ掻いているものの、無傷の大輝がいた。









フリーザは別に特別な事をしたわけではない。
ただ、早く撃っただけなのだ。エネルギー光線をただ早く。
並の人間から見たら、フリーザが呟いた瞬間爆発したと勘違いされるほど早くな・・・
しかし、大輝の目はそれを捉えていた。
体も、決して反応出来ないほどの速さではなかったので、回避行動が取れたのだ。

「人が考え事している最中に攻撃か。宇宙の帝王が、随分せこい真似をするじゃねいか。」

大輝はフリーザに向かって文句を言う。
普通だったら、何を言ってるんだ?と言われてもおかしくない。
勝負の最中に考え事をして、隙を作ったのが悪いのだから。

「それはすまなかったね・・・」

しかし、フリーザはそんな大輝に対して、謝罪の言葉を言い放った。
その声は、どこまでも穏やかで、とてもじゃないが、宇宙の帝王と恐れられる人物とは思えなかった。

「けれどね・・・見ておきたかったんだよ。君がこれから始まるショーについてこれるか・・・・」

フリーザは、両手をどこかの舞台役者の用に広げ、

「地獄と言う名のショーにね・・・」

どこまでも穏やかで、どこまでも冷たい声で、死の宣告をした。






「チッ!」

大輝は思わず舌打ちをしてしまった。
悟ったからだ・・・自分では、どう考えても目の前の存在に勝てないことを。
しかし、自分とて長い間修行して強くなったのだ。

(倒すのは無理でも、せめて一撃くらい入れてやる!)

そう自分に言い聞かせ、フリーザを睨みつける。

「・・・・・」

フリーザも、そんな大輝を見据えていた。







「・・・・・・」

「・・・・・・」

大輝とフリーザ、片方は空中で、片方は地上で互いを睨みつけてた。

「マヌーサ!」

先に動いたのは大輝だった。
幻惑呪文である、マヌーサを唱える。
それに伴い、フリーザの周りに霧が出現した。

「・・・・何かしたのかい?頭が少し、ぼやけたけれど・・・」

しかし、フリーザは何でもないように問いかける。
どうやら、マヌーサは、それほど効き目がないようだ。

(・・・やっぱりか・・・なら!)

「はああああああぁぁ!!!」

大輝は、フリーザの魔法力から、自分のマヌーサが効かない事を想定していた。
そのため、霧が晴れた瞬間を狙って、フリーザの前に現れ、上段蹴りを放った。

――シュン――

不意を突いたにも関わらず、フリーザは上体を後ろに反ることで、大輝の蹴りを交わした。

「(まだだ)ピオラッ!」

蹴りを避けられた大輝は、ピオラを唱えてスピードを上げた。
そして、避けられた蹴りを、そのまま振り下ろす・・・所謂かかと落としを放った。

――ドォン――

しかし、フリーザはそれすらも、軽く後ろに飛ぶことで避けた。
大輝のかかと落としは、地面を陥没させるだけに終わった。

「でりゃああああぁぁ!!!」

大輝は、地面をダンっと勢いよく蹴り、フリーザに襲いかかる。

――シュッシュッシュッ――

拳や蹴りの凄まじいラッシュ攻撃を叩きこんでいく。
普通の人間なら、その風圧だけで、数百・・・いや、数千メートルは吹き飛ぶであろう威力がある。

「・・・・・」

しかし、フリーザはそんな攻撃を涼しい顔で、
受け止める訳でもなく、受け流すわけでもなく、最小限の動きで、全ての攻撃をかわしていた。

「チッ!・・・はあぁ!」

大輝は埒が明かないと判断したのか、右手に気を溜めていき、ほぼ零距離からエネルギー波を放った。

――スウゥ――

しかし、フリーザはほぼ零距離から放たれのにも関わらず、大輝のエネルギー波をかわした。
ルーラなどの呪文を使わず、ただ早く動いただけで・・・

「見えてるぞッ!」

だが、大輝にはフリーザの動きが見えてた。
ビュンと自身に気を纏い、フリーザを追って行く。

「おりゃあぁ!」

追いついた大輝は、フリーザに拳を放つが・・・・

――ピュン――

「ッ!!!!」

後、数センチで届くと言った時に、フリーザは消えてしまった。
これには大輝も驚嘆したが、すぐ冷静になった。

(甘いぞッ!)

「魔炎拳十倍ッッ!!!

大輝はフリーザの動きは目では見えていた。
しかし、体が動きに追いつけなかった。
そこで、大輝は身体強化をする魔炎拳、しかも十倍を発動させた。

「あああああああああぁぁぁぁ!!!!」

大輝は凄まじい炎の気を纏い、筋肉が膨張していく。
人を簡単に吹き飛ばすほどの突風を発生しながら、フリーザを追って行く。

――ビュン――

そして、フリーザとの距離をあっという間に詰めてしまった。

「!!!」

これには、さすがのフリーザも驚いたのか、僅かに目を見開いた。

「はあぁ!」

大輝はフリーザの腹部めがけて拳を放つ。

――ドオオォン――

「があぁ!」

魔炎拳十倍で強化された拳は凄まじく、鈍い音をたてながらフリーザの腹部にふかふかと突き刺さった。

「はあああああああぁぁ!!!」

大輝はすかさず、気合の籠った声で吼えながら、連続で叩きこんでいく。

――ダンッドンッガンッ――

その一撃一撃は凄まじく、フリーザに反撃させる暇を与えなかった。

「ふんっ!」

やがて、大輝はフリーザを地面に向かって叩き落した。

「ふあああああぁぁぁ!!!」

そして、魔法力を闘気に変換させ、闘気を高めていき・・・・

「くたばれッ!フリーザーーーーーーーッッ!!!!」

フルパワーエネルギー波を放った。






――ズウウウゥゥン――

凄まじいエネルギーの塊がフリーザに迫っていく。
今の大輝がフルパワーで、しかも魔炎拳十倍を発動させて放ったエネルギー波は、少なくても地球クラスの惑星を木端微塵に破壊するほどの威力があった。

――ヒュウウゥ――

そんなエネルギー波が迫っているのにも関わらず、フリーザは未だに地面に落下中だった。
空中で避けようしても、このスピードで落下しているなら、飛ぼうとする時に僅かだが動きが止まるはず。
地面に落下したなら、回避行動をとる前に、自分が放ったエネルギー波が命中するはず。
大輝は、そのことを計算して放ったのだ。
やがて、フリーザの目前に地面が迫ってきた。

「・・・・・・」

フリーザは、地面が迫ってくると、クルクルと自分の体を回り始めた。
そして、体勢を立て直し、地面を蹴り、大輝が放ったエネルギー波に向かって行った。
自殺行為としか思いない。体勢を立て直して時に避ければ、完璧に回避するのは無理でも、ダメージは軽減できたはずなのに・・・
そして、フリーザとエネルギー波の距離が零になり・・・

「キエエエエエエェェ!!」

フリーザは、“脚一本”で大輝のフルパワーエネルギー波を蹴り返した。




フリーザは回避行動をとらなかったのではない。とる必要がなかったのだ。
あの程度のエネルギー波は、自分にしてみれば対して脅威にならないからだ。





「なっ!!!」

一方、跳ね返された大輝は目を大きく見開き驚嘆していた。
自分のフルパワーで放った攻撃を脚一本で跳ね返されたのだ・・・無理もない。

――ズウウウゥゥン――

跳ね返されたエネルギー波は大輝の側を通り過ぎ・・・

――ドオオオオオオオオオオオォォォォン――

星を揺らすほどの爆音を轟かせ、空に消えていった。












「あ・・ああぁぁ・・」

大輝は口から小さな嗚呼を漏らしながら、その場で小刻みに震えていた。








経験はないだろか?
勉強でもスポーツでも、何でもいいから、自分より高位にいた者に勝った時に感じる優越感と言う物を
大輝は今まで、栽培マン、バーダック、ギニュー特選隊と戦ってきた。
こいつらは、大輝から見てみれば自分より遥かに高位の位置にいた者である。
だからなのかもしれない・・・
大輝は何処かで、自信を持っていた。
自分なら大丈夫、自分ならできると言う自信が。
自分より遥かに高位の者に勝つことによって、その自信は確実な者になっていった。
今回の戦いだって、もしかしたら・・・・と、どこか心の中で思っていた。
しかし、その自信はあっけなく砕けてしまった。



“うぬぼれ”・・・今の大輝を表わすのに、最も適した言葉である。










「さっきのには驚いたよ。まさか、この僕の体に傷を付けるなんて・・・」

そう呟いたフリーザはさっき蹴り返した方の足に目を向ける。
そこには、僅かだが・・・・本当に僅かだが、焼け焦げた跡があった。
これにはフリーザも驚いた。まさか、自分の体に傷を付けられるとは思ってもいなかったからだ。
・・・大輝が“フルパワー”で放ったが故に付けられた傷ではあるがな。








「・・・・・・・」

「ひッ」

フリーザは空にいる大輝に目を向ける。
特に殺気を込めたわけでもない、ただ見つめただけであった。
それだけにも関わらず、大輝は顔を歪め小さな悲鳴を上げた。


特に感情が籠っていないフリーザの目。
しかし、大輝はその目に見られただけで、心臓を握られた様な、首筋に鋭利な刃物を突き付けられたような・・・そんな、恐怖を感じた。
体からはベトつくような汗が吹き出し、「ヒューヒュー」と呼吸音も乱れてきた。
最早大輝の目には、フリーザは生き物に映っていなかった。
“化け物”・・・自分の理解を遥かに超える、化け物。
そんな化け物を目の前にした大輝がとった行動は・・・

「う・・・うわああああああああああああぁぁぁ!!!!」

逃げる事だった。













大輝はナメック星の空を全力で逃げていた。
木はなぎ倒され、岩山は崩れ、海が割れてるほどのスピードで逃げていた。

「ふあーふあーふあーー」

意味不明な呼吸音をしながら、大輝は逃げていく。
特にあてがあるわけでもない。ただ、その場にいたくなかっただけである。

「どこにいくのかな?」

「!!!!!」

しかし、そんな大輝の目の前に立ちふさがる人物がいた。
フリーザだ。フリーザは大輝が全力で逃げていたのにも関わらず、先回りをしたのだ。

「くう!あああぁぁぁ!!」

大輝はフリーザを目に留めると、急いで方向転換して逃げていく。

「・・・・・ふう・・」

しかし、またもやフリーザに回り込まれてしまう。
それから大輝は逃げた、逃げ続けた。
無駄なのかもしれない、そう頭の中隅では理解していた。
それでも、大輝は逃げ続けた。
この恐怖から逃れたいために・・・・
しかし――

「・・・もう、鬼ごっこは終わりにしようか。」

「あああぁ・・・ああぁぁ」

それも、終わりを告げた。







――バシンッ――

フリーザは尻尾で大輝の頬を叩く。
その気になれば、避けられたほどのスピードではあるが、最早大輝に避ける気力も残されていなかった。

――バシンッ――

今度は逆の頬を叩かれた。
その後、バシンバシンっと何回も叩かれ、大輝はサンドバック状態になっていた。
そんな状態にも関わらず、大輝は動けなかった。

「むんっ!」

「があぁ!」

フリーザは頬を叩くのをやめ、体を回転させ、尻尾で大輝を地面に叩き落した。








「ごああぁ!」

地面に叩きつかれた衝撃からか、肺から一気に空気が漏れ出す。
その場で口を大きく開き、新しい空気を吸い込む。


――トン――


そんな大輝の耳が物音を捉えた。

「ぁぁあああ」

恐る恐る振り向いた大輝の目にそれは映った。
自分に向かって一歩一歩近づいてくる、白い悪魔を。
トントンっと言う音が鳴るたびに、大輝は自分の寿命が削られるような感覚に陥った。

「ぁぁぁあああああああああ!!!」

恐怖に逆上したのか、自棄になったのか、あるいはその両方か、大輝はフリーザの顔に右拳を叩きこんだ。


――ドオオオォォン――


その拳は一寸の狂いもなく、フリーザの顔に吸い込まれた。
しかし―――

「・・・・まだ、こんな元気があったんだね。」

それだけであった。
魔炎拳十倍が既に解けた大輝の攻撃など、フリーザにとってはハエのような物だった。

「はあぁーはあぁーはあぁー」

大輝は肩を大きく上下しながら、目の前の光景をただ呆然と見詰めていた。

「鬱陶しいよ。早く、どけてくれないか。」

いつまでも腕をどかさない大輝に鬱陶しく思ったのか、フリーザは大輝の右腕を“取り除いた”




















(・・・・・な・・・んで・・・・)

大輝は信じられない。

(どうして・・・・・)

信じたくないのだ。

(なんで・・・・無くなっている・・・・)

大輝は唖然としながら、――に目を向ける。
それを見た時、脳がフリーズしてしまった。

(なんで・・・フリーザが――を持っている。)

フリーザが持っている物に目を向ける。
それを見た時、ますます大輝の脳はフリーズしてしまった。
理解したくなかったからだ・・・目の前の現実を。
だが、徐々にだが、大輝はそれを理解し始めた。

(・・・・・ああ・・・・そうか・・・・)

そして、遂に大輝は理解した、理解してしまった・・・・・・

(腕・・・・千切られたんだ・・・・・)





















「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」













それを理解した瞬間、かつて大輝の右腕があった所から鮮血が舞い、地面に赤い染みを作った。
膝をつき、口からはだらしなく唾液が溢れ、目は血走っている。
口から漏れる声は、痛いとか苦しい等ではなく、ただ狂ったような声が漏れるだけであった。

























(まずいっ!!)

アンナは、腕を引き千切られ苦しんでいる大輝を見て、この勝負は決まったと判断した。
本来なら、自分が手を出さないのがルールであるが、最早勝負は決まったような物。
急いで、勝負を止めようとしたが・・・・

「スト―――プ!!」

アンナをアクセルが止めた。

――むにゅ☆――

止めたのだが・・・・

「おお!・・・こ、これは・・・」

「・・・・・・・」

アクセルは驚嘆の声を漏らす。
メイド服の上からでも解る、その圧倒的な存在感がある物に・・・

「92・・・3・・いや、もっとおおっが!」

「・・・・・・」

「つぅ~・・・あ!あ、アンナちょっと待て!これには理由があああああああぁぁ!!!」






*え~アンナさんのお仕置きタイムが終わるまで、しばらくお待ちください。









「まったく・・・・」

果たして、一体何が起こったのだろうか?
アンナが着ているメイド服には赤い染みがべットリ染み付き、あたり一帯には夥しい赤・赤・赤と一色に染まっている。
そして、何より奇妙なのはアンナの目の前にある物体である。

「き、ぎょあがあ・・うぐああ」

奇妙な音を発する物体・・これは何なのだろうか?
例えようが無い物である・・・唯一例えるとしたら、挽肉と言ったところだろうか。

「!!こんなことをしている場合ではありません。」

アンナは、本来の目的を思い出したのか、急いで機械のスイッチを切ろうとしたが・・・

――ガシッ――

何かが自分の足首を攫み、動きを止めた。

「・・・・・・」

アンナは自分の足元に目を向ける。

「・・・・じゃから・・ばてって・・・」

舌足らずの声で話しかける何かがいた。
・・・・見目麗しいメイドの足首を攫む「なにか」、傍から見たらホラーにしか見えない。
やがて、その「なにか」は空間に穴をあけ、一本の瓶を取り出した。
そして、その中に入っていた液体を、恐らく口から飲みだした。

「ふ~さすが世界樹のしずく、すごい回復力だな。」

「なにか」が液体を全て飲み干した後、一瞬で人の形・・・アクセルになった。

「アーク・・・なぜ、止めるのですか?」

アンナは足元のアクセルに問いかける。
無視すればいいのではないかと思うかもしれないが、アンナはアクセルと言う男をよく知っている。
普段はどうあれ、こう言う時はふざけた言動はとらないと言う事を。

「・・・・・」

「・・・・・」

アンナは探るように、アクセルの目をジッと見つめる。
アクセルの目は真剣そのもであった。
その事に気付いたのか、アンナはその場から下がり・・・

「あ!・・白」

「・・・・・・」

――ガンッ――

「ぐげッ!」

アクセルの顔面を踏みつぶした。











「はあぁーはあぁーはあぁー」

一方、大輝は肩を上下させながら、息を整えていた。
生存本能とでも言うのか、無意識の内にべホイミを唱えて、出血と痛みを消していた。
しかし、消えたのはそれだけで、ダメージは回復しなかった。

「おや?これは失礼しました。返しますよ。」

フリーザは、そんな大輝に謝罪の言葉をかけた。
最も、その口調には全く感情は込められていなかったがな。
そして、持っていた大輝の右腕を大輝の方に放り投げた。

「はあぁはあぁはあぁ」

大輝は投げられた、自分の右手を唖然としながら見つめていた。
その様子から、未だに心のどこかで認めたくないようだ。

――ドンッ――

次の瞬間、いきなり右腕が燃えだした。

「あああぁぁ・・・」

大輝はどうする事もできなく、ただ燃えて灰になっていく右手を見つめるだけだった。
そして、何か危険を感じ、大輝の体は反射的にその場から動いた。

――ドンッ――

今度は、大輝がさっきまでいた場所が爆発した。
その先には、フリーザが指先を向けて立っていた。
どうやら、指先からエネルギー光線を放ったようである。

「ふんッ!」

再びフリーザから光線が放たれる。

「があああああぁぁ!!!」

フリーザの光線は大輝の右脚を撃ち抜いた。
苦しみの声を上げる大輝だが、フリーザは特に気にした様子はなく、攻撃を続ける。

――ドンッ――

「ぐあああぁ!!」

大輝は地面を転がるようにして避けた、そうでもしなければ避けられなかったからだ。
しかし、完璧に避けるのは無理なようで背中が焼け焦げた。

――ドンッ――

「ぐわぁ!」

再び放たれたフリーザの光線を避けられず、大輝は後ろに吹き飛んだ。
急所こそ撃ち抜かれなかったが、ダメージは相当な物である。



その後、ナメック星の空に、爆音と大輝の悲鳴が響いていた・・・・















「あ・・・・ああぁ・・・」

「・・・・・・・」

大輝はフリーザに首元の服を攫まれ、宙釣りの状態になっていた。



これは戦いなのだろうか?

片や、ほぼ無傷の状態。


片や、血を全身から流し、右腕が根元から無く、脚には穴があいている。


これでは、一方的な虐殺と捉えた方が的確である。





「もう、終わりかな?」

フリーザは淡々と大輝に問いかける。
しかし、大輝には最早答える力すらも残されていなかった。
こんな状態になっても、気を失わない・・・大輝は、初めて自分の頑丈さを憎く思った。
フリーザも大輝からの返答がないので、最早抵抗できる力もないと判断したようだ。

「そう・・・けれど、君は良く頑張ったからね。僕も、こんなにも運動したのは久しぶりだったよ。何かご褒美をあげなくちゃね。」

そう言って、フリーザは片方の手を唇に持っていって、考えるポーズをした。
そして、なにか思いついたのか、不気味な笑みを浮かべた。

「そうだ・・君に花火を見せてあげるよ。とっても綺麗な花火をね。」

フリーザは、あくまでも穏やかな声で告げ、大輝をポイっと地面に放り投げた。
まるで、子供がいらなくなったおもちゃを捨てるように・・・
そして、大輝が地面についたのを見届けると、右手を空に掲げ、人差し指を立てた。

――ジジッ――

すると、フリーザの指先にスパークを纏った黒い球状の気の塊が作り出された。


*デスボール・・・フリーザが使用する技の中では、破壊力はトップクラスの技。



「それじゃ・・・綺麗な花火になりなさい!」

フリーザはそう言いながら、大輝に向かってデスボールを放った。

「・・・・・・」

大輝は特に抵抗しなかた。抵抗はおろか、もう動く力もないからだ。
唯一できたたのは、自分に迫ってくるデスボールを眺めることと・・・


「ふっふっふっははははははははははははははははははははっ!!!!!」


フリーザの高笑いを聞くことだけだった・・・・・・・























「アーク・・・説明してくれますか。」

アンナは表情を険しくながら、アクセルに問いかける。
その顔にはいつもの温和な笑みは浮かんでいなかった。



今回の模擬戦は、アンナではなく、アクセルが仕込んだ物だった。
しかし、結果は見ての通り。勝負にすらなっていなかった。
アンナは、そのことをアクセルに問いただしていた。




「う~ん・・・理由ね~」

アクセルは、机の上に足をのせながら、比較的マイペースに答えた。

「理由その一。あいつの自惚れた自信を徹底的に壊す事。
根拠があり、絶対の自信ならまだしも、自惚れなんか、あったとこで余計に危険になるだけだからな。」

指一本を立てながら説明する。

「理由その二。今後のためのテスト。
お前だって気付いていははずだ、奴の肉体はこれ以上、正攻法で鍛えてもほとんど意味が為さない事を。」

指二本を立てて説明した。





理由一の方は、大輝の自信が危険だと判断したから。
無論、自信を持つことは良いことである。
しかし、階段を飛ばして付けた自信・・・即ち、自惚れなど、あったとこで邪魔になるだけだ。
特に、今回のような戦にはな。


それなら、アンナやアクセルがその自信を砕けばいいのではないか、と思うかもしれ無いが、これは意味をなさない。
なせなら、既に大輝の中ではアンナなどは、自分より強い存在だと認識してしまったためだ。
蟻と像が戦って、どちらが勝つ?と聞かれているようなものだ。
そう考えると、フリーザはちょうど良かった。
大輝が知っていたのは、フリーザの『知識』だけで『強さ』ではなかったのだから。


理由二の方は、今度のためである。
今回の模擬戦で、大輝は自分の力の無さに気付いたはずだ。
すると、当然さらに強くなろうとする。けれど、正直大輝の体は限界が来ていた。
これ以上鍛えるには、正攻法以外の方法を使わなければならなくなる。
しかし、その方法は今ままで以上に厳しくなる。
アクセルは、大輝が逃げるのか、この方法を取るのかを確かめようとしたのだ。






「まあ、これが主だった理由かな。」

アクセルの理由は、アンナも想定していた事であった。

「・・・もっと良い方法が・・・」

アンナは、思わず呟いてしまった。
別段、他に方法が思いついた訳ではないが、本来彼女が持っている優しさが、やはり納得できなかったようである。

「言える資格があるのか?お前に・・」

アクセルは、目を鋭く声を硬くしてアンナに問いかける。





「・・・・・・・」

アンナは俯いたまま何も言えない。
その表情は暗く、何かを悔やんでいるようだった。
自分は、今まで大輝に対して善意で付き添ってきた。
そこに、嘘偽りはない。しかし、自分達がやろうとしている事は、決して善意から来ている物でない。
本来、守るべき立場にいる大輝を×××にしようとしているなど・・・・・

「・・・・ま!その辺は俺に任せておけ!」

アクセルは、先ほどとは違い、比較的明るい声でアンナに話しかける。

「一度受けた依頼は100%遂行する!美人の依頼なら120%やり遂げる!それが、この俺!世界最強の何でも屋!アクセル・ヴァイスハイトだッ!」

アクセルは笑みを浮かべながら宣言する。
その声は、力強さと共に逞しさを帯びた声であった。

「・・・アーク・・」

アンナは顔を上げて、アクセル見つめる。
先ほどまで沈んでい表情は、少し明るくなっていた。

「先ほどはすいません。そして、ありがとうございます。」

アンナは頭を下げながら、謝罪と感謝をした。
前者は、先ほどの問いに関して。後者は、大輝の事を考えてくれていることに関して。

「気にするなって!」

アクセルは、笑みを浮かべて比較的明るい声で言う。
アンナも顔を上げて、笑みを浮かべながらアクセルを見つめた。


ここで終われば、綺麗な終わり方なのだが・・・



「お礼なら、是非!モッコリ一発で!」


そうはならなかった・・・・





「アンナ~~♪♪♪」

某怪盗三世が使うような、ダイブをかましながらアンナに襲いかかる。
まだ、服を着ているだけマシと言ったところだろうか。

「・・・・・」(にっこり)

アンナは、上空から襲いかかってくるアクセルをにっこりと笑みを浮かべながら見つめていた。

――ガシッ――

「はえ?」

そして、近付いてくると顔を両手で挟むように攫み。

「ふんっ!」

そのまま思いっきり捻り、吹き飛ばした。

「NOOOOOOOOOOOOOOoooooo!!!」

一回、二回、三回・・・最早、数えられないほど、凄まじい回転をしながら吹き飛んでいく。

――ドンッ――

「あべしッ!」

そのまま、壁際まで吹き飛んでいき、顔から壁にめり込んだ。





「大輝さん・・・」

アンナは、心配そうに大輝の名を呟く。
その様子は、子を心配するような親のようであり、立っているだけで絵になる様な神秘さがあった。

「きゅう~~」

・・・・壁に顔がめり込んでいる人間と言うオブジェが無かったらの話だがな。


















あとがき

フリーザ様の虐殺ターイム☆

・・・・・・・笑えないですね、これ

大輝は、今回初めて恐怖を知りましたね。
今まで、なかったといえば嘘になりますが、それを遥かに超える恐怖を・・・

フリーザって怖いですよね。
GTや映画などだと、ほとんど、かませ犬状態なのに・・・
最初見た時の怖さは半端なかったです。

さて、大輝はこれからどうなるのか・・・・・

では次回。























[15911] 第十七話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:38
第十七話







『ふっふっふっははははははははははははははははははははっ!!!!!』








「ぬわああああああぁぁ!!!」

地の底から響くような声を出し、布団を跳ね除けながら、大輝は飛び起きた。

「はあぁはあぁはあぁ」

体中からは汗を流し、呼吸も荒い。
大輝は、ゆっくりと周りを見渡す。
いつもの天井、いつものベット・・・ここが自分の寝室と解ると、幾分か落ち着いた。
そして、恐る恐る自分の右腕に目を向ける。

「・・・・・・・・」

そこには、ちゃんと右腕が存在した。
触れてみたり、開いたり閉じたり、回したりして、それが自分の右腕だと解った。

「ふ~~~~~」

右腕がちゃんとあることが解ると、大輝は長い溜息を吐きながら、再びベットに横たわった。
そして、天井を睨みつけながら一言呟いた。


「・・・・ちくしょう・・・・」


本当に小さく、大輝は呟いた。

















大輝は、海が見える小高い丘に座っていた。
その表情は俯いていて窺うことはできない。
無理もない・・・・あの、フリーザとの戦いで、大輝は自信も何もかも撃ち砕かれたのだ。
それに加え、今まで味わったことがない恐怖を感じたんだ。
一般人である大輝にとってみれば、絶望してもおかしく・・・・・・










































「ぬわああああぁぁ!!!フリーザのバカヤローーーーー!!!白塗りお化けーーーーー!!!禿げ頭ーーーーーーーー!!!ナルシストやろぉーーーーーー!!!」

「お前のとーちゃん皺くちゃぁぁーーーーー!!!!お前のかーちゃんデベソぉぉーーーーーー!!!!・・・・・あ、俺あいつの母親知らねぇ。」














・・・・・なんて事はなかった。
ガバッと立ち上がり、まるで子供のような低レベルの悪口を海に向かって吠え続けた。




斎藤大輝と言う人間は一般人である。
その事実が、今まではマイナス面でしか効果を出さなかった。
しかし、今回に限り、それがプラスの方向に効果を出した。





確かに、大輝はどこか自惚れていた。だが、フリーザの強さに気付いていなかったわけではない。
さすがに、100年間も修行してきたんだ。相手との力量の差ぐらいは解る。
しかし、100年間うまくいきすぎた、と言う自惚れが今回のような結果に繋がったのだ。
フリーザとの戦いで、その自惚れを砕かれた大輝だったが、絶望には至らなかった。


大輝は負けず嫌いな所はあるが、それは自分と均衡している相手に限る。
バーダックが良い例である。
フリーザと大輝だと、戦闘力は離れすぎているため、それほど悔しいと言う思いにはならなかった。
無論、全くないわけではないが、それでも立ち直れないほどではなかった。
解りやすい例を出すとするなら、学校を思い描いてくれればいい。
学校のクラスで、自分とほぼ同じ成績の奴に、勉強でもスポーツでも良いから負けるのは悔しい。
しかし、それが全国クラス、それも自分が勝てない相手と解ってて負けた時、それと同じ悔しさを感じるかと言われれば、そうではない。
大輝は、そう言ったタイプの人間である。


もう一度言うが、大輝は一般人である。
いくら修行しようと、その感覚は心の中に残っている。
では、一般人の中に、「自分が常に一番ではなくては気が済まない」と言うほどの自尊心を持っている者がどれぐらいいるだろうか?
勉強でも常に一番、スポーツでも常に一番、そんな自尊心は、少なくても大輝にはなかった。
強さに関しても、どこぞの王子の用に「俺がNo.1」でなければ気がすまないと言うわけではない。
それに、大輝には心の余裕もあった。


フリーザに負ける=自分が蘇れないわけではない。
聖魔八武具の捜索だって、切りつめて言ってしまえば、他の誰のためではない、自分自身のためである。
これが、誰かのためなら多少の罪悪感のような物は感じたかもしれない。
しかし、大輝にはそれがない。アンナ達のことだって、できれば・・・本当に自分の実力でできれば手伝おうとしか考えてない。
さらに、アンナ達による修行で、心身共に鍛えられたのも大きかった。
一般人の感覚と心身共に鍛えられたのが、うまい具合に混ざりあい、大輝は立ち直れないほどの絶望はしなかった。



結論を言えば、大輝は『恐怖』こそしたが、『絶望』はしなかったのだ。













「ぜえぇぜえぇぜえぇ」

一通りの悪口が言い終わり、大輝は呼吸を整えていた。
その目には、僅かに涙が浮かんでいる。

「・・・・ちくしょう・・・・」

そして、表情を暗くして、一言呟いた。


大輝は絶望はしなかった。しかし、恐怖は残った。
時間が立つことによって、徐々に直ってきているが、それでも深く体に刻み込まれている。
その証拠に、今の大輝の戦闘力は実際の実力の半分すらも出せていない。
だからこそ、このように幼稚な行為をしてでも、気を紛らわそうとしているのだ。
・・・・ある意味、負け犬の遠吠えとも言える。



普通の訓練なら、問題なくこなせる。
しかし、実戦式の模擬戦だと、どうしても体が震えてしまい、戦えなくなってしまうのだ。
恐らく、今の大輝は体こそ並の人間を逸脱してるが、地上世界の人間達とほぼ変わらないだろう。
何しろ、戦えなくなってしまったのだからな。







「・・・・・・・・」

そんな大輝を見つめる、一つの影がいた。









翌日・・・・・






「はあぁ~」

大輝は再び小高い丘に来てため息をついていた。
今日も体を鍛えるだけの修行ならこなせた。
しかし、アンナやマージとの組み手をすると、どうしてもフリーザの事が頭に浮かんでしまい、修行にならなかった。

「・・・・おい・・・・」

ふと、自分に話しかける声が聞こえた。
大輝は顔を上げて、その声の方に目を向けると・・・

「・・・・なんのようっすか?ミストバーンさん。」

そこには、いつもと変わらず、白いローブを纏うミストバーンが立っていた。

「・・・お前に、仕事を頼みたい。」

そう言って、大輝に魔法の筒と紙を渡した。


*魔法の筒・・・中が亜空間になっていて、どんな大きな物でも入れることができる。(生き物も可)







――キュイイィン――

旅の扉を通って、始めて目に入ってきたのは緑だった。
どうやら、森の中に繋がっていたらしい。

「・・・・・・」

俺は空に飛んで、周囲一帯を見渡した。
木々の緑が広がっていて、遠くには海が見える。
空気もきれいで、人工物が見えない自然豊かな世界だ。

「・・・いくか・・」

ミストバーンさんに渡された地図を見ながら、俺は移動を始めた。



それにしてもビックリしたな~
まさか、あのミストバーンさんが俺に仕事を依頼するなんて。
・・・まあ、気分転換にはいいかな?
今日のノルマもこなしたし、荷物を届けるだけだしな。

(・・・けれど・・・)

ふと、周りを見渡してみる。

(ここに住んでるのって、どんな人なんだ?)

この世界は、どうやら人がいない無人世界のようだ。
こうして空から見てみたけど、人工物もなく、人が手を加えた形跡すら見えない。
言っては悪いけど、ものすごく不便な世界みたいだ。

(・・・・ま、会えばわかるか。え~と・・・向こうか・・・・)

地図を確認しながら、俺は飛んで行った。









「ッ!!!!!」

しばらく飛んでいくと、大輝は危険を察知し、急いでその場から離れた。

――ヒュン――

直後、大輝の側を何かが通り過ぎていった。
その正体を確かめようと、目を凝らしてみると・・・

「グエエエェェ!!」

炎のように真っ赤な体毛に包まれた鳥系モンスター“ひくいどり”がいた。


*ひくいどり・・・激しい炎で敵を燃やし跡形もなく消しさる、伝説の火の鳥。上級モンスター


「グエエエェ!!」

ひくいどりから、はげしい炎が吐き出される。

――ゴオオオォォ――

大輝はその炎に飲み込まれていった。
人間など、跡形もなく消し去ることができるその炎は、正に伝説の火の鳥と言われているだけの威力はあった。
しかし―――

「ふ~~~」

魔炎気を使いこなせる大輝にとっては、ほとんど意味は為さなかった。

(・・・チッ!)

本来なら、今の攻撃など避けられた。
いや、それ以前に目に留めた時点で、すぐ倒せたはずだった。
いくら上級モンスターでも、その強さは平均的な強さしかない。
今の自分にとってみれば、赤子の手を捻る様な物。
しかし、大輝はできなかった。

(・・・・なんで、震えが止まんねぇんだよ!)

大輝の体は小刻みに震えていた。
フリーザに刻み込まれた恐怖は確実に影響を出していた。
自分より弱いって解っているのに、一発でも攻撃が当たれば倒せるのに、頭では理解していても、体は動かなかった。
戦いになると、どうしても体が震えて攻撃できなくなってしまう。戦士として、致命的な欠陥だ。

「くっそぉぉーーーーーー!!!」

大輝は、自分の不甲斐なさに乱暴に言葉を漏らすと、その場から離脱した。
ひくいどりも追って行こうとするが・・・

「グエェ!」(早ッ!)

今の大輝のスピードに追いつけるはずもなく、断念した。







「・・・・ここ?」

ひくいどりを振り払い、目的地について大輝は思わず呟いてしまった。
渡された地図を交互に見るが、間違いなく此処だ。

「木・・・だよな・・・」

目の前には、巨大な木が立っていた。
その木の根元に、扉が付いている。
どうやら、この木がお届け先みたいだ。

「すいませ~ん。」

コンコンと扉を叩いて、声をかけてみるが返答はなかった。

「すいませーん!」

少し声を高くして問いかけてみたが、やはり返事はなかった。

(・・・留守?)

そう思って、何気なく扉に手をかけてみると・・・

――ガチャリ――

扉が開いた。

「・・・・お邪魔しま~す。」

一瞬迷ったが、人がいるか確認するだけなら問題ないかと思い、大輝は中に入っていった。







普通、木の家と聞けばどのような物を想像する?
日本に古くからある屋敷?山奥の別荘?それは人それぞれだろう。
しかし、やはり木の外見だと、内装もそれに相応しいと思ってしまう人がほとんどではないだろうか。
実際、大輝もそうだった。

「うわぁ~」

思わず、呟いてしまった大輝を誰が迫られようか。
木の中は、床にはゲームや漫画などが散乱し、机などにはお菓子の袋が置いてあり、その他にもテレビやパソコン等と言った、
とてもじゃないが、外見にそぐわない物が散乱していた。
ドラマなどで見る、男の一人暮らしのような惨状だ。
大輝も一人暮らしをしていたが、此処まで酷くはなかった。

「が~ご~が~ご~」

部屋の惨状に驚いていた大輝の耳にいびきの様な声が聞こえてきた。
ふと、その方向に目を向けてみると・・・

「ぐが~ごが~」

部屋のソファの上に、ジャ○プで顔を覆ったまま寝ている一人の人間がいた。

「あのー、もしもし。」

荷物の郵送などは、その人のサインを貰わないと、成功した証しにならない。
大輝は悪いと思ったけど、サインを貰うため、その人を起こそうとした。

「もしも~し。」

「があ~ご~」

しかし、よほど深い眠りに陥ってるのか、なかなか起きなかった。
あまりにも起きないので、体を強く揺すって、何とか起こした。

「ふわぁ~ん」

大きな欠伸をしながら、背伸びをし目を擦りながら起きた。
二十代前後の男で顔も整っているが、その反応から、少々幼く見えてしまう。

「あのー」

大輝は、起きたのを確認し、サインを貰おうと問いかける。

「だれお前?」

そんな大輝に対して、素っ気ない反応を返した。
・・・まあ、いきなり人の家にいたのだから、当然と言えば当然の反応である。













「ふ~ん、ミストバーンがね~」

頭をポリポリと掻きながら、俺が持ってきた紙と魔法の筒を見ながら呟く。

「え~と・・・それでサインを・・・・」

サインを誘くすると、その人は空中に手を翳した
すると、ペンが出てきてサインを書いてくれた。
・・・ものすごい達筆しすぎて、なんて書いてあるか読めない。

「・・・それでは、失礼します。」

一言言葉をかけてから、俺は帰ろうとするけど・・・

――ガシッ――

肩を捕まれた。

「・・・なにかようですか?」

振り向き際に聞くと、その人は、

「お前、暇?」

なんてことを聞いてきた。
いや、確かに今日の修行も終わったから、暇って言えば暇ですけど、

「あの~ミストバーンさんに報告しなくちゃいけないんですけど・・・」

「ああ、大丈夫。ミストバーンには俺から言っておくから、つーことでお前暇だな、ならちょっと付き合え。」

そう言って、その人は何かを探し始めた。
と言うか、何なんだろう?この人?
ミストバーンさんを呼び捨てにするってことは、それだけ親しい人なのかな?
でも、こんな人、今まで見たことないしな。

「お!あったあった!ほれ」

俺が考え事をしていたら、目の前に何か投げられて、反射的に受け取ってしまった。

「え~と・・・これって?」

「PS○のコントローラーに決まってんじゃねいか。暇だったら、少し相手していけ。」

PS○の電源を入れて、準備をし始めた。
ちなみに入れたゲームは、俺も好きなドラゴンボールの格闘ゲーム。

「・・・・・あn「ほら、始まったからさっさとキャラを選べ。」・・・・」

あれよこれよと言う内に、すっかり準備が整ってしまった。
すげ~強引な人だ。

(・・・・まあ、いいか。俺も久しぶりにやりたいしな。)

ちょっとぐらい・・・いいよな?
気晴らしも必要だし。修行が終わった後は、基本的に自由にしていていいしな。
ミストバーンさんからも、特に期限は言われていないしな。
心の中で言い聞かせながら、俺もキャラを選んで、ゲームをやり始めた。


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・


「うそ・・・・」

「いえ~い♪また、俺の勝ち~♪」

俺が唖然としている隣で、その人は喜びながら、勝鬨を上げていた。
つーか!この人強ッ!
俺もそこそこ自信があったのに、一回も勝てなかった。
しかも――

「・・・スーパーサイヤ人4のゴジータでも負けた・・・・」

俺が使っていたキャラはスーパーサイヤ人4のゴジータ、言わばDB界最強の戦士である。
それに対し、相手はクリリン、決して弱くないが、性能で言えば遥かに劣るキャラである。
初めは、俺も違うキャラで戦っていた。
スーパーサイヤ人4のゴジータって、ほとんどチートキャラみたいなもので、つまんなくなると思ったからだ。
けれど、その他のキャラでも全敗してしまった。しかも、その時の相手キャラは、天津飯やヤムチャ等と言った、あまり性能は高くに相手ばかり。
あまりにも強かったから、スーパーサイヤ人4のゴジータを使ったんだけれど、結果は惨敗だった。

「もう一回!もう一回勝負ッ!」

俺はもう一回勝負してくれるよう頼んだ。
その人も、「いいぜ」って了承してくれた。
今度こそは!と、俺も気合を入れてゲームに臨んだ。






「クリリンてさ・・・」

唐突に、その人が俺に尋ねてきた。

「地球人最強って言われているけど、俺の目から見たら、天津飯が最強に見えるんだけど・・・どう思う?」

まあ、確かに傍から見たら、絶対天津飯の方が強く見えるよな。

「え~と・・・たぶん、純粋な地球人って意味で最強だと思うんすけど。」

天津飯って、確か三つ目人て言う宇宙人の末裔だったから、悟飯とかみたいに、地球人と宇宙人の血が入っている事になるな。
だから、純粋な地球人ではクリリンが最強って言われていると思うんだ。
そのことを伝えると、「マジか!」と言って、その人は驚いていた。
なんかこの人に勝てたみたいで、ちょっと嬉しかった。

「ふーん・・・・そういやさぁ・・」

その人は、何か思いついたのか、再び俺に問いかけてきた。

「クリリンって、天下一武道会が終わった後、また、亀仙人に元に修行を積みに行ったよな。・・・あれってなんで?」

「なんでって・・・どう言う意味すっか?」

質問の意味が解らず、俺は聞き返した。
それにしても、この人随分フランクな人だな。今気付いたけど、俺も砕けて話しているし。

「いや~だってさ、天下一武道会って、現実的に言えば格闘技の世界大会みたいなものだろう。そんな大会の本戦にまで勝ち上がったんだぜ。それほどの腕だったら、もう師匠の元にいく必要ねくね?べジータみたいに自分自身で修行すると思うんだけど?

まあ、確かに現実的に考えれば、そうかもしれないけど、
それって―――

「それって、やっぱし自分が弱いって感じたからじゃないんですか。」

本戦に残れた=それが強さとは限らない。
さらに強くなろうとするなら、いくら才能があっても、一人で強くなるのには限界がある。
べジータは例外かもしれないけど・・・

「だから、亀仙人の元に行ったんだと思いますよ。」

自分が未熟だと感じたら、誰かに師事してもらうのが一番だし・・・

(・・・・あれ?)

なんだ?・・・・今・・・・

「ふ~ん・・・つまり、“初心”に帰るのも、強くなるための道ってことか。」

・・・・・初心に帰る・・・・・












ふと大輝は思い出す。


自分はどうだった?


今の強さを自分だけで身に付けた?

――違う!今の強さはアンナ達による修行で身に付けたものだ。

戦い方も、闘気の使い方も、魔法も全て自分の“師匠”・・アンナ・ミストバーン・アクセルがいて、初めて身につけられたものだ




「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

大輝は、暫くなにかを考えながら、テレビ画面を見つめていた。




それから・・・・




「それじゃ、俺そろそろ帰りますんで。失礼します。」

久しぶりにゲームをやったせいか、大輝はかなり嵌まり込んでいた。
しかし、さすがにそろそろ帰らないと不味いと思い、帰ることにした。
ちなみに、ゲームの対戦の結果は、32戦0勝32敗と言う、要は全敗であった。
さすがに悔しかったが、此処まで来ると、寧ろ清々しい感じがした。

「お~う、またこいや。今度は、もう少し腕を上げとけ。」

男は、大輝を手を振りながら見送った。
傍から見たら、年の離れた友達のようだ。

「・・・・・」

大輝は家を出た後、家の方に体を向けて・・・

「ありがとうございました。」

と、一礼をしながらお礼をの言葉をいった。
その後、旅の扉を目指して飛び立った。















「あれで、よかったのか?」

俺はあいつ・・・確か、大輝だったな。
そいつを見送った後、壁に向かって話しかけた。
常人から見たら、頭がおかしいか?と疑われる行動だろうな。

「・・・ええ、ありがとうございました。」

しかし、傍から見たら、壁しかないのに返事は返ってきた。
俺はそれに特に驚きもせず、返答した。

「まったく、お前んとこの奴なんだから、お前がすればいいだろう。」

「・・・こう言う事は、あなたの方が適任かと思いまして。」

「俺は人生相談室か!」

まあ、確かに。数十億歳を超えているから、人生経験は多いけど・・・・
ま!いいっか。ゲームもそれなりに楽しめたし、収穫もあったしな。

「ふんふ~ん♪」

思わず鼻歌を歌ってしまった。
そして、あいつが持ってきた魔法の筒の中身を取り出す。

――BON☆――

と、軽い音を立てながら、中身が現れた。
液体が入っている“1本”の瓶。
その名は、“人生のオマケ”と言う、とてもうまく、入手困難な酒だ!

「どうだ?お前も?」

酒の相手に誘っただけど、「遠慮しておきます。」って断れちまった。
いつもなら、こんな美酒一人占めしたいんだけど・・・

(さすがに、“3本”も手に入るとね~)

まさか、今回3本も手に入るとは思っていなかった。

「それでは、私はこれで・・・」

「はいよ~ちゃんと面倒見てやれ、お師匠さん♪」

「・・・・・・」

気配が消えて、家の中には俺一人になった。
そして、瓶の蓋を外して、人生のオマケをラッパ飲みで飲む。

「んぐんぐんぐ・・・ぷっは~♪」

うーーーん♪やっぱしうまいな~♪
いつもなら、ちょっと続飲むんだけど、ストックがあるしな。
このぐらいの贅沢はいいよな。

(それにしても、あいつがこんなことをするなんてな~)

自分達の目的が八・・・いや、九割・心配一割か。
あいつの場合、心配が一割もあれば珍しい事だけどな。

(え~と・・・なんつうんだっけ?あいつみたい奴・・・)

・・・・ああ!思い出した。
ツンデレだ!ツンデレ!
地上世界とかだと、結構人気のジャンルっぽいけど・・・

(そんなに、いいのか?)

うーんと俺は腕を組みながら考えてみるけど・・・・・・本当にいいのか?あれ?
最近、地上世界の人間達の考えが解らなくなってきたな。
俺も年をくったか?

「・・・・ま、いいか・・さ~て、なにか面白い情報はないかな?」

床に散らばっていたチラシを集めて、何か面白い事でもないか探しだす。

「ふむふむ・・・おおぉ!」

ドラゴンクエストモンスターズ○ーカー2の発売だと!!
・・・この世界の時間を、地上世界の時間に直すと・・・

「もう発売しているじゃねいか!!」

くッ!大聖天魔王である俺が、なんたる失態だ。

「はっ!!」

今は過去を悔やんでいる場合ではない!!急がなくては!!

「ルーラッ!」

――ドンッ――

家が壊れたっぽいけど、後で直せばいいか。
今はそれよりも・・・

「急げーー!」

俺は次元の彼方へと消えていった。
自分の野望を果たすために。

















あとがき

大輝のことに関してですけど、こんな結果になりました。

最初、作者も重い話にしようとしたんですけど、「あれ?大輝ってなにか絶望する理由ってあったっけ?」と、事になりました。

どこかの王子のようにプライドもそれほど高くありませんし。
精神面でも、アンナ達による修行で鍛えられていますから、
そう考えると、恐怖はしても絶望する理由はないと思ったんです。

要はあれです。本編で述べたように、一般人の感覚とアンナ達によって鍛えられてのが、うまい具合に混ざり合ったと思ってください。

さて、しばらくは、大輝の修行が続きます。
なにしろ、相手はフリーザですからね。

では次回。











[15911] 第十八話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:38
第十八話










アンナは、いつもの島でティータイムを楽しんでいた。
白を基調とした、椅子とテーブル。美しい細工が施された銀のティーセット。
お茶を飲むと言う一つ一つの動作にも、何処となく優雅さを感じる。
その優雅さから、メイド服さへ着てなければ、何処かの貴族や王族と言われてもおかしくないくらいだ。

「・・・・・・・」

ふと、アンナは空を見上げる。
その後、ティーセットなどを片付け始めた。
カップの中に中身が残っている所を見ると、ティータイムの終わりではないようだ。
そして、先ほど自分がいた場所から数歩ほど下がると・・・


――ドンッ――


突然、アンナがいた場所に鈍い音と共に砂煙が舞った。
そして、砂煙が晴れると、そこには―――

「うむー!むううぅーー!うんむぅぅーーー!!」

そこには、地面に上半身が突き刺さっている人間と言う、漫画でしか見たことがない光景があった。




「大輝さん・・・・大丈夫ですか?」

アンナは、その突き刺さった人間・・・大輝に話しかける。

「うう~ぺっぺ・・・砂が~」

大輝は、自力で地面から抜け出した。
そして、口や頭の砂を振り払った後、アンナに詰め寄りこう言い放った。

「アンナさん!やりましょう!!」

「・・・とりあえず、主語を言いましょう。後、顔にまだ埃が付いていますよ。ジッとしていてくださいね。」

苦笑と共に、ハンカチで顔を拭かれる大輝だった。



*説明中



「・・・・つーわけだから、お願いします!」

確かに、自分は強くなった。しかし、それはアンナ達の助けがあってからこそである。
どんなに強くなっても、自分の才能が上がるわけではない。
現にフリーザにはいいようにやられ、その恐怖が体に残ったせいで、戦闘では思うように動けない。
フリーザにリベンジを挑むにしても、これ以上強くなる方法は自分では思いつかない。
だったら、自分が信頼できる相手に相談した方が一番であると判断したのだ。
自分を今より強くしてほしい、そう大輝は頭を下げながらお願いした。


大輝が言ってることは、正論である。
どんなに才ある物でも、一人では必ず限界と言う物はある。
それを解決するためには、誰かに師事してもらうのが最も適した方法である。
勉強なら、自分より知がある者に教えを請えばいい。
スポーツなら、それを経験した者に教えを請えばいい。
中には、自分一人で限界を超えられる者はいるが、それはほんの一握りの存在しかいない。
少なくても、大輝はその中には入らない。それ以前に、入るほどの才能などない。


今思えば、フリーザにやられたのは良かったのかもしれない。
恐怖こそ残ったが、自惚れは無くなった。
自分が限界だと解ったら、誰かに師事してもらう事を覚えた。
そう考えると、早い内に完璧な敗北と言う物を体感したのは、決して悪い事ばかりではなかった。

「・・・・・・」

しかし、アンナはそんな大輝を複雑そうに見つめていた。




(あの方に任せたのは正解でしたね。しかし、まさかあのお二人も同じ事を考えてるとは・・・なんだかんだ言って、大輝さんの事をちゃんと考えてるのですね。)

フフッとアンナは、柔らかい笑みを浮かべる。しかし、それは直ぐ消えた。
ここから先は、自分が為す事だ。
アンナは、自分に言い聞かせ、大輝に問いかける。

「大輝さん・・・良く聞いて下さい。」

それは、いつものような柔らかい物ではなく、硬さを帯びた声音だった。

「正直申しまして、大輝さんは今のままの鍛え方では、これ以上強くすることはできません。」

ただ淡々と、その事実を告げた。



アンナが言ってるのは、紛れもない真実である。
これは、別に大輝だからではない。地上世界の並の人間なら誰にでも当てはまることなのである。
1は1であって、決して2ではない。
それと同じように、変えようのない物なのである。
地上世界の人間なら、今のままだとこれが限界なのである。

「・・え~と・・・・今のままってことは、方法はあるってことですよね?」

一瞬落胆した大輝だったが、アンナの言葉の中に、微妙なニュアンスの違いがあったことに気付き問いかける。
そして、それは的を得ていた。



大輝の肉体は、確かに限界が来ている。だが、それは今のままの修行で鍛えた場合である。
それ以上の事をすれば、その限界を超えることができる。
しかし、その方法は今までより格段に苦しい物になる。
大輝に修行をやめさせれば、その苦しみを味わう事はないが、それは大輝に死ねと言ってるのと同義である。
その二つの事実がアンナの心境を複雑にしていた。










「大輝さん・・・私達神や神に近い存在が、なぜ地上世界等に介入できないのか・・・その理由を覚えていますか?」

唐突にアンナは大輝に問いかける。
その顔は真剣そのもであった。

「え~と・・・力が強すぎるためではないでしょうか・・・」

なぜ、今そのような事を聞くのか不思議に思ったが、とりあえず返答した。
その真剣さに、思わず竦んでしまったがな。
しかし、大輝はこの時、思い違いをしていた。
力と言うのは、単純な物理的な力だと思っていた。
その考えは、間違っていたとすぐ知ることになった。

「・・その理由は、これです。」

アンナは、自らの『力』を解放した。












(・・・なんだよ・・・・あれ・・・・)

大輝は震えていた。
べとつくような汗を流し、呼吸も乱れ、今すぐ逃げたいのに、その場から動けず震えていた。
口の中の水分が失われ、意識も飛びそうになった。
自分の中から込み上げてくる嘔吐感も感じる。
その理由が何かと問われれば、答えることなどできない。
恐怖が一番近いかもしれないが、そんな言葉で言い表せる物ではない。
もっとなにか・・・根源的な何かが目の前の物を否定しているのだ。

「あ・・っく・・・」

やがて、その場に力なく座りこんでしまった。
100倍?200倍?そんな重力すら生ぬるく感じた。
指先を動かすにも、まるで全エネルギーを使わなければ動けないような錯覚にも陥った。

「神や神に近い存在と呼ばれる者とは、“神格の儀”と言う儀式を受けた者を指します。この、神格の儀とは言わば、自分の魂・・・存在そのものを神と言う位に昇格する儀式の事です。自分を神と言う存在に昇格することにより、私たちは自分の存在を長く保つことができます。しかし、その代わり、私たちの力は異質な物となり、神界や一部の世界以外でこの力を無暗に使うと、その世界その物を消滅させてしまう恐れがあるのです。」

あくまでも丁寧に説明するアンナだが、大輝には聞こえてなかった。
いや、声だけなら聞こえているのだが、それを理解することができないのだ。
なぜなら、今の大輝はこうして意識を保つだけで精一杯なのだ。
頭が、体が、魂が、大輝と言う人間を構成する全ての物が叫んでいるのだ、目の前の存在がどんな物かを。
アンナ自身は、自分の事を異質と言ってるが、大輝にとってみれば、その表現は甘すぎる。
異質、異端、異常、異物・・・それら、全てが当てはまるが、その内のどの言葉にも当てはまらない。
例えるとするなら、『外』。ありとあらゆる存在の外側に位置する者。『中』である自分等手が届かない『外』。
化け物などの言葉で表す事などできない。フリーザなど、小物に見える。
今のアンナに勝負を挑むなら、フリーザクラスの敵を百人を相手にした方が遥かにマシだ。

(ああ・・・そうか・・・・)

徐々に薄れていく意識の中で、大輝はある事に気付いた。

(バーンさんやミストバーンさんも・・・)

初めてバーンにあった時はともかく、ミストバーンに試された時は自分は耐えられたと思っていた。
しかし、それは違った。あの二人は、実力などこれぽっちも出していなかったのだ。
まるで、体についた埃を払わないよう・・・そんな、決して力とは言えない物で今まで自分と付き合ってきたのだ。

(はは・・・本当に・・俺・・・自惚れてい・・たん・だな・・・)

思わず苦笑を浮かべてしまう。





その後、大輝は意識を失った。










「・・・・・あれ?」

初めに目に入ってきたのは、知らない天井・・・・ではなく、いつもの天井だった。
背中に柔らかい感触を感じることから、自分はベットに寝かされているらしい。

「気が付きましたか、大輝さん。」

目が覚めた大輝に、アンナは心配そうに言葉をかけた。

「!!!!!!」

大輝は、アンナの声を気配を感じた瞬間、後ずさった。
本人の意識とは関係なく、恐怖から逃れたいと言う本能が体が反応してしまったのだ。

(・・・どうやら、大丈夫の用ですね。)

アンナは、そんな大輝を見て安心した。
普通だったら傷つくように思うかもしれないが、アンナはそうならなかった。
神クラスの力の波動を一身に受けて、正常でいる方がおかしいのだ。
その力を受けて、無事でいる者は、ある程度力を持つ物か、どこか壊れているとしか言えない。それだけ、自分達の力は異質なのだ。
大輝の場合、力などあるはずもなく、必然的に後者に当たる。そして、恐怖したと言う事は、どこも壊れていなく正常であると言う事である。
アンナは、大輝が壊れていない事に安心したのだ。
ちなみに、もしこれで大輝がいつものように接してきたら、一年ほど集中治療室に監禁するつもりでいた。治療でなく監禁である、ここ重要。

「あの~アンナさん。」

アンナは力を抑えているため、先ほどと違い普通に話しかけられた。
その声に、先ほどの行為に対して後ろめたさは無い。
いや、罪悪感などないと言った方が正しい。
当然だ、何しろ無意識の内に自分が正しいと思う行動をしたのだから。

「大輝さん、私たちが世界に無暗に介入できない理由・・・ご理解いただけましたか?」

アンナの言葉を聞いて、大輝はいやというほど理解した。
今の自分でさへ、一歩も動けず気を失ったのだ。おまけに、アンナの様子をから察するにまだ全力ではないようだ。
こんな力、地上世界で出されたら、一瞬で人類など絶滅してしまうだろう。

「大輝さん、あの力を踏まえて答えてください。」

アンナは、大輝の目を見て問いかける。

「聖魔八武具は下手したら、あれ以上の力を持っているかもしれません。そして、これ以上強くなるためには、今まで以上の苦しみを味わいます。それでも、あなたは続けますか?」

アンナが言ってる事は、紛れもない事実である。
無論、聖魔八武具=確実に自分達の力を上回っているとは限らない。けれど、聖魔八武具自身は自部達の力の範囲を超えている。
そうでなれば、大輝など、とうの昔に蘇っている。
問題は、聖魔八武具が契約者を見つけていると言う事である。
そうなった場合、最低でもアンナとある程度戦える力が最低条件なのである。
しかし、大輝にはそれがない。その力を得ようとするなら、今までより辛い目にあう。
だから、アンナは試したのだ。大輝がこれ以上続けるのかどうかを。

(もし、これで力を得ようとするなら、私は全力でサポートするだけです。)

アンナは自分にそう言い聞かせ、大輝の答えを待った。




「・・・・・・」

一方、大輝はアンナに言われたことを考えていた。

(あれ以上の力・・・・)

確実にそうだとは言えないが、その可能性は高い。
正直、勝てる気がしない。
けれど、蘇るためには、それは必要な事である。

「・・・・・・」

大輝は、暫く考えていた。




アンナは大輝が悩んでいるのを見て、まだ頭が混乱していると思った。
そして、暫く一人にした方が良いと判断し、部屋を出ていこうとしたが・・・

「俺初めてバーンさんと会った時、少し浮かれていたんです・・・」

大輝が話しかけた。

「テレビや漫画でしか見た事がないような事が次々に起こって、なんて言ったらいいのかな。うまく言えないんですけど、とりあえず凄いって思ったんです。」

これは別におかしい考えではない。
テレビや漫画などは、言いかえれば、現実では決して起こらない事・・・言わば、奇跡のような物が起こる物である。
そんな物をまじかで見れば、どんな人間でもそのような思いを抱くだろう。

「その時は、いきなりすぎて現実感が湧きませんでした。でも、段々現実だって解ってきて、怖くなったんです。もう二度と両親や友達と会えなくなるって解ると。」

これも別におかしい考えではない。
大輝は、別に暗い過去があるとか、家が極端に貧しいや、親との仲が悪いと言うわけではなかった。良くも悪くも、突出した物がない普通の人生だった。
そんな人生で突然訪れた死。両親や友達、常日頃慣れ親しんだもの達との永遠の分かれ。それは、とてつもなく恐ろしい物であろう。

「正直、苦しいのも痛いのも嫌です。でも、これはそれ以前の問題ですからね。」

人間だれだって、苦しいより楽な方が良いに決まっている。
しかし、大輝の場合はそれ以前の、死ぬか生きるかの問題なのである。
死んでしまっては、苦しい事も辛いことも楽しい事も嬉しいことも、二度と体験することはできないのである。
だからこそ、大輝は生きたいと思った。それは、欲でもあり、本能でもある・・・生き物であれば誰でも持っている物である。

「それに、やっぱり親より先に死ぬなんて、親不幸者にはなりたくありませんからね。」

はははっと、大輝は笑いながらアンナの方を見つめる。
そして、姿勢を正し・・・

「アンナさん。俺が生き返るために強くなる必要があるなら、俺を強くしてください。お願いします。」

誠心誠意を込めて、頭を下げた。











「・・・で?俺のとこに来た理由は?」

アクセルは、ビアガーデンの会場にいた。
そこに、大輝が訪ねて来たので、その理由を聞いた。

「えっと・・・確か此処に・・・あっ!あったあった!アンナさんがアクセルさんに渡せって。」

そう言って、大輝はアクセルに封筒を渡した。


アンナは大輝の答えを聞いた後、なにか封筒を渡して、アクセルのもとを訪ねるよう言ったのだ。
どうやら、この封筒に大輝のこれからの修行の事が書かれているらしい。


(ふーん、結構元気そうだな。・・・ま、そうでなきゃ俺も困るってもんだしな。)

アクセルは、大輝が落ち込んでいない事に安心した。
なんだかんだ言って、面倒見はいい方である。

(さーて、アンナの奴はどんな判断をしたんだ。)

アクセルは、ビールを飲みながら封筒の中身を読んで・・・

「ぶうううううううぅぅーーーーー!!」

思いっきり吐いた。

「汚なッ!」

当然、吐き出されたしぶきは大輝の方へと向かっていく。
その時間は一秒もない僅かな時間だった。しかし、大輝にはその僅かな時間の間に回避した。

「お客様!!大丈夫ですか。」

それに気付いた店員が布巾を持ちながら、アクセル達の席に向かってくる。
ちなみに、若く、美人な女性。
そんな、女性が神達も認める女好きに近付くと・・・・

「大丈夫ですか?」

――さわさわ――

「きゃーーー!!」

――バチンッ!!――

「ぐふっ!!」

・・・・こうなる。








(アンナの奴・・・・本気か・・)

アクセルは、アンナに渡された封筒の中身(手紙)を真剣表情で見つめていた。
・・・頬についた紅葉マークがなければ、さぞかし見栄える表情だった。

(・・・そういや・・・)

ふと、アクセルは思い出した。


“氷姫”


アンナが呼ばれている、二つ名である。
姫の部分は、その見た目の美しさや優雅さなどを指すが、氷の部分には二重の意味がある。


一つ目は、アンナ自身が得意とする氷雪系魔法。その魔法の完成度は、一種の芸術品までも言われているほどの美しさを持っている。


二つ目は、氷を連想させる言葉。冷たい・・・つまり、冷酷や冷淡等の言葉である。


バーンパレスの親衛隊の中にも、二つ目の意味の部分で鍛えられたら、耐えられない者もいると言う。


(・・・アンナの奴・・・本気だな・・・)

アクセルは、そう判断した。
ふと目の前に意識を向けると、大輝が立っていた。特に変哲もない様子で。
それを見たアクセルは、思わず大輝に同情してしまった。

(まあ、確かに・・解らないでもないけどな・・・・)

はあぁ~とアクセルはため息をついた。
そして、数ゴールドをテーブルに置き、大輝に「付いて来い」と言葉をかけ、何処かに向かおうとする。

「あの~どこに行くんすか?」

大輝は気になり、何処に向かうか聞いた。
アクセルは、大輝の方に顔を向け、ニヤリと笑みを浮かべながら伝えた。
















「な~に、ちょっくら“地獄”にな・・・・」
























あとがき

ど~も、最近暑いせいで執筆意欲が湧かない作者です。
今回の話も、もっと早くに投稿できたのに、ズルズルと延びてしまいました。
作品のクオリティが落ちてないか心配です。(それ以前にクオリティがあるか心配です。)

さ~て、今回はアンナ達が地上世界などに介入できない理由を書きました。
要はあれです、存在そのものが違いすぎて、世界に影響を出します。
何話か前のあとがきで書いたと思いますが、雪の中に太陽をブチ込むものだと思ってください。

大輝の答えに関してですけど、正直こんなものだと思うんですけど。
何しろ、苦しいや痛いの前に、死ぬか生きるかの問題ですからね。

え~次回大輝は地獄に行きます。比喩ではなく、本当に地獄に行きます。
そして、そこである人が出てきます。誰かは、次回をお楽しみに。

では次回。










[15911] 第十九話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/19 21:17
第十九話








『あの世』と『この世』の入り口に佇む、一つの宮殿。その宮殿に住む主の名は、閻魔大王。
この世に住む者は、その魂を閻魔大王によって天国か地獄に行くかを決められる。
正に、あの世とこの世の秩序を守る、法の番人である裁判官なのである。
そんな大層な場所に、大輝とアクセルは訪れ・・・

「え~こちらが、閻魔大王が住む宮殿。通称、閻魔宮殿とも閻魔の館とも言われております。」

観光案内をしていた。




「続いて、右手をご覧ください。」

アクセルは、何処かのガイドの様に右手を上げて、右方向を指した。
そこには、青白い火の玉・・・魂が列を作っていた。

「あちらが、めでたく天国行きに選ばれた皆様の魂でございます。続いて、左手をご覧ください。」

次は、左手を上げて、左方向を指す。
そこにも、先ほどのような魂が列を作っていた。

「あちらが、残念ながら地獄行きになってしまった皆様の魂です。地獄に行き、魂が浄化され、再生の準備に入ります。次は、前方をご覧ください。」

今度は、前方を指した。
そこには、魂ではなく、まだ肉体を持っている人間や魔族などの種族・老若男女関係なく列を作っていた。

「あちらにいる皆様は、これから閻魔大王によって天国か地獄に分かれるかを待つ皆さまです。え~と・・ほかには・・・」

「あの、アクセルさん・・・もういいっすから・・・」

観光案内をしていたアクセルに向かって、大輝は少し疲れた声で言った。
アクセルは、「なんだよ?人がせっかく案内してやってるのに。」と少し怒った口調で反論する。
大輝はそれに対し、ある意味正論をぶつけた。

「いや、俺オカルト趣味じゃないですから、死んだ人の魂を見せられても・・・」

此処に魂があると言う事は、それだけ、何処かの世界で人が亡くなったと言う事である。
そんな人の魂、そっち系の趣味の人なら狂喜乱舞するかもしれんが、ない人にとっては少々辛いかもしれん。







「それで?何の用だ、アクセル。」

「久しぶりに会ったってぇのに、随分な挨拶じゃねか、閻魔の爺さん。」

「・・・(呆然)」

アクセルと大輝は、閻魔大王と対面していた。
閻魔大王は、アクセルに向かって少し疲れた表情で話しかける。
それに対し、アクセルは特に変わらず、いつものような口調で答えた。
あの世とこの世の法の番人である閻魔大王でも、この男にとっては近所付合いのようなものだ。
そんな光景を大輝は呆然としながら見つめていた。
その理由は―――

(でかッ!!)

赤を基調とした体に、ボサボサの黒髪や黒髭に二本の角、その風貌に合わないスーツの様な服。
そして、何よりその大きさ。
でかい・・・とりあえず、でかすぎるのだ。
閻魔大王は机に座って話しているのだが、それでも家一個分より高いため、大輝達は見上げたなければ顔が見えない。
立ちあがったら、恐らく10メートルは超すと言う巨大なのだ。

(それにしても・・・・なんかイメージと違う)

閻魔大王と言えば、誰でも一度は聞いた事がある名だろう。
それに対してのイメージは人それぞれだが、根本的な部分は、やはり怖い・恐ろしいなどのイメージがあるだろう。
大輝もそんなイメージだったが、どうもここは違う。
閻魔大王自身は体が巨体で初めてみたら恐ろしく感じるかもしれんが、やはりイメージと違う。
どこぞの親父の様に雷を落とすなどをせず、イメージしていた鬼のような形相でもない。
なにより、周りの雰囲気も思っていたものと違う。
恐らく、此処で働いている職員なのだろうが、全員が鬼のような姿をしている。
しかし、やはりそれもイメージしていた鬼と違う。服も半そでのYシャツに夏用のスーツと言った現代風な格好をしている。
鬼や閻魔大王などの姿が人間ならば、何処かの市役所の用だ。

(ここって、給料いくらなんだろう?)

自分が大学生であると言う事と、最近の不況による就職難のため、思わずそんな事を考えてしまう大輝だった。




大輝がそんな事を考えている傍らで、アクセルは閻魔大王と話していた。




「閻魔の爺さん、地獄への通行許可をくれないか?」

アクセルは、閻魔大王に自らの目的を告げる。

「・・・・なにをしに行くつもりだ。」

それに対し、懐疑な表情で問いかける。
さすがに依頼の細かい内容を言うわけにもいかず、とりあえず神界のアンナの名前を出しながら大まかな説明をした。

「誰か、神界に確認をとってくれ。」

アクセルの説明を聞いた閻魔大王だったが、まだ信じられないのか、近くにいた鬼に確認をとるよう命じた。

「おーい、態々確認をとらなくてもいいだろう・・・こっちだって忙しんだから。」

アンナのサイン入り手紙(本物)があるのにも関わらず、態々確認をとる閻魔大王に文句を言うアクセルだったが・・・

「地獄で、美女めぐりツアーなどと言う、前代未聞の事をした奴の言葉を信じられると思うか?」

御尤もな事を言われて、「うッ」っと黙ってしまった。












「おーい、通行許可貰ったから行くぞ。」

宮殿を見ていた俺にアクセルさんが話しかけてきた。
どうやら、話が終わったみたいだ。

「えーと、行くってやっぱり・・・地獄にですか・・」

「そうだぞ~そうでなかったら、何のために来たと思ってるんだ。」

アクセルさんはなんでないように言うけど・・・・やっぱり、地獄って聞くとあんまし行きたくないって気持ちになる。
それとも、此処みたいに俺のイメージと違うのかな?
・・・あれ?そう言えば・・・

(俺って何しに地獄に行くんだ?)

アクセルさんには、ただ地獄に行くってことしか聞いてないからな。
・・・うん、やっぱし聞いておいた方がいいよな、主に俺の身の安全のために。

「あの、アクセルさん・・・」

俺はアクセルさんに地獄に行く理由を聞こうとしたんだけど・・・・

「うんじゃ、頼むわ閻魔の爺さん。」

「ああ、解った。」

アクセルさんの言葉に閻魔さんは了承の返事を返す。
そして―――

「あれ?」

初めに感じたのは、浮遊感だった。
床の上に立っていたのに感じる、おかしいと思いながら俺は床に目を向けた。

「穴?」

そこには、ポッカリと穴が開いていた。
そして、俺はその穴の上にいる。
うん、解ると思うけど、ここから導き出される答えは・・・

「て!のわああああああああぁぁぁぁ!!!」

案の定、重力に逆らえず、俺は真っ逆さまに落ちていった。

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

「のわっ!」

暫く落ちていくと地面の様な物が見えてきた。
普通ならそのまま衝突してアウトなんだけど、今の俺なら特に問題なく体勢を立て直して無事着地した。

「よっと!」

「ぐげっ」

んだけど、アクセルさんも上から落ちてきて、うまい具合に俺の頭の着地した。
かなりの高さから成人の男の人が落ちてきたんだ、衝突時の威力はかなりの物になる。
俺も、特に気を付けていなかったので、支えきれず潰れてしまった。

「あ!悪い。」

「ア~ク~セ~ル~さ~ん~~!!」

いきなり落とされたのと、特に悪気がない声で謝まれたため、如何にも怒っていますと言う感じで睨みつけた。
それに対して、「だから悪かったって」と謝ってくれたけど、どうもこの人だと真剣さが感じられない。

「とりあえず、無事に地獄についたようだな。」

(無事じゃないだろう!)

心の中で愚痴りながらも、地獄がどんな場所か気になったので、俺は周りを見渡した。




空は暗い雲が立ち込めていて、太陽の光など一切見えない。
一応、明るいって言えば明るいんだけど、こう・・なんだろう、暖かさを感じない明るさだ。
あたり一帯は荒野みたいで、所々に岩山があるだけだ。自然はおろか、草一本も生えてない、不毛の大地。
遠くにマグマみたいな物も見える。
そこら辺に人間や動物の骨が散乱していない事が、唯一の救いと言ったとこだろう。

「・・・・・」

閻魔大王と言う人物が想像していたのと違うため、地獄もてっきり俺がイメージしていたのと違うと思った。
しかし、それは違った。ここは、本当に地獄と言う表現がピッタリだった。

「さ~て・・・行くとしますか。」

アクセルさんが歩き出したので、俺もその後について行った。











「アクセルさん、地獄に来て何するんすか?」

大輝はアクセルに問いかける。
強くなるのになぜ地獄に来たのか、その理由を聞いていなかったためだ。

「・・・・・・・」

それに対し、アクセルは冷や汗を掻きながら沈黙した。

(なに!!?なにがあるの!!?)

仮にもアクセルは神界でもトップクラスの実力を持つ。それは、大輝も良く知っている。
そんなアクセルが、冷や汗を掻き沈黙した。
本能的に大輝は悟った、この先に何かがあるのを。
大輝はアクセルに攻め寄り、この先に何があるのか強く問いただした。主に自分の身の安全のため。

「・・・・お前、今の強さがほぼ限界なのは、アンナに聞いたな?」

問いただしていた大輝に、アクセルは逆に問いかけてきた。

「ええぇ、まあ・・それで?それが今回の事とどう関係するんですか?」

なぜ、今それを聞くのか解らなかったが、アクセルの声が真剣だったので大輝は素直に答えた。
アクセルは言うかどうか、一瞬迷ったが、

(どうせすぐばれるんだ)

そう判断して理由を話し始めた。

「お前の今の状態は、謂わば閉じた門なんだよ。並大抵のことでは、決して開かない硬く閉ざされた門。
それを開けるためには、正攻法以外の荒療治で開ける必要があるんだ。」

アクセルは、そこまで言って一度言葉を詰まらせたが、すぐさま続きを言う。

「その荒療治をしてくれる奴に会うために、地獄に来たんだ。」

「あの・・・・それで、その荒療治をしてくれる人って・・・・」

大輝は、恐る恐るアクセルに聞く。その顔色はあまり乏しくない。
今までの修行でも辛かったのに、それ以上の荒療治と聞いて、やはり少々怖くなったようだ。

「・・・・・肉体を貰っているのにも関わらず、神界などの世界に行かず、地獄に留まり荒くれどもと戦う修行の日々。
その圧倒的強さと、地獄の荒くれどもを一掃したことから、“地獄の覇王”と恐れられた人物。」

アクセルの口から、その荒療治を行う人物の情報が漏れ出す。

「え~と・・・ち、ちなみに荒療治って・・どれほどのものなのでしょうか・・・・・・」

大輝は、そんな人物が行う荒療治がどれほどの物か気になり、アクセルに問う。
それ以前に、そんな人に会って、自分が無事で済むのだろうか本気で考え始めた。
しかし、その考えは次のアクセルの言葉を聞いて、一気に吹き飛んだ。

「・・・・・・・ある意味、ミストバーンの修行よりも辛いかもしれん。」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」




コマンド選択


どうしますか?


たたかう   いれかえ

さくせん  →にげる


大輝は逃げ出した。


「待てやぁ!こらぁ!」


しかし、回り込まれてしまった。


「いやーーーーー!!!離して、離してください!!!あれ以上に辛いだなんて、俺死んじゃいます!!!」

「安心しろ、もう死んでる。」

「それでも、いやだーーーー!!!」

「えーーーい!!叫ぶな!!第十八話で見せた主人公らしい覚悟は何処に行った!!?」

「メタ発言禁止ィィーーー!!!それに、あの時の俺は大輝でなく、DAIKIだったんです!!飛べない大輝は、ただの大輝なんです!!!」

「お前も十分メタな発言してるぞ。・・・・此処まで来たんだから、いい加減覚悟決めろ!!」

何とも危険な会話をしながら、逃げる大輝を押さえつけるアクセル。
臆病というなかれ、人間とは本来臆病な生き物なのだ。
それに加え、大輝は実際に体験してるからこそ、その恐ろしさを良く知っている。
このような行動をするのは、寧ろ自然の流れなのだ。


ギャーギャーと殺風景な地獄に二人の男の声が響き渡る。
その会話の内容は、ある意味カオスと表現した方が的確だ。
果たして、このままこのカオスは永遠に続くのだろうか!!?



「なんだぁ?」



しかし、それは第三者の介入で呆気なく終わった。

「!!!!!」

大輝は驚きながらも、その声の元に目を向ける。
そこには―――




「強いエネルギーを感じたと思ったら、アクセルじゃねいか。」

全身が金属で出来ている、限りなくヒューマノイドに近い姿をした者が一人。




「どうやら一人だけではないようだね、するとそっちが・・・・」

同じく金属で出来ている、馬の顔をした者が一人。




「クククククッ!!」

体の所々が鋭利に尖っている者が一人。やはり金属で出来ている。




「ブローム!!」

この中では一番の巨体で、金属ゴーレムのような者が一人。




「珍しいですね。あなたが、男性のためにこのような場所に来るなんて。」

王冠のような物をかぶり、唯一の女性体が一人。例の如く、体全体が金属で出来ている。



そして―――




「アクセルか、久しぶりだな。」

奇妙な兜をかぶり、体をマントのような物でを覆っている者が一人。




「おっ久~ハドラー&ハドラー親衛騎団の皆さん。」

アクセルは、その者たち・・・ハドラーとハドラー親衛騎団に向かって、手を振りながら挨拶をした。









アクセルがハドラー達と話している傍らで、大輝は驚嘆した表情でそれを見つめていた。

(嘘だろ・・・・全然気付かなかった・・・)

自分は気の探知には、そこそこ自身はあった。
いくらとり乱していたとしても体が反応するはずだ。実際、今まででがそうだった。
だが、今回は違った。
頭では愚か、体すらも反応せず、ここまでの接近に気付かなかったのだ。
それに驚嘆したのもそうだが、それ以上に驚嘆することがあった。

(なに?・・・あの人・・・)

大輝の目線の先には、奇妙な兜をかぶった人物・・・ハドラーがいた。
他の金属人間達、即ちハドラー親衛騎団の人達も自分より圧倒的に強いエネルギーを感じる。
だが、ハドラーはその中でも逸脱している。
それが単純な力なのか、それとも別の何かなのかは、大輝には解らない。
ただ解ったのは、自分如きでは目の前の存在にとってみれば、ゴミ同然だと言う事だけだった。

「はあぁーはあぁーはあぁー」

ただ見ているだけで、直接対峙しているわけでもないのに、大輝は体から冷たい汗を流し、呼吸も乱れてきた。
どうやら、ハドラーの気・・・いや、気と言うには生ぬるすぎる表現だ。
覇気とでも言う方が的確だろう。それに当てられたようだ。





大輝が驚嘆している傍らで、アクセルはハドラーと交渉していた。




「あ~アンナとかから聞いていると思うけど、あいつに修行を付けるつもりは~」

既に気付いていると思うが、アクセルが大輝に合わせようとしていたのは、このハドラーである。
アクセルは確認の意味を込めてハドラーに聞くが・・・

「断る」

有無を言わさず、ハドラーは切り捨ていた。

(はあ~やっぱり、一筋縄ではいかないか・・・)

アクセルは一瞬落胆するが、すぐ持ち直した。
こうなる事を事前に予測していたからだ。




ここで、このハドラーと言う人物について説明しよう。



ハドラーは昔、魔王と呼ばれ地上世界に君臨していたが、人間の勇者アバンの手によって一度は倒された。
しかし、その時かつて魔界の神と謳われた、大魔王バーンの手によって復活を遂げた。
それ以来ハドラーは、魔王軍の司令官の地位に付き、バーンの部下として働いていた。
その後は、竜の騎士を始めとする、アバンの弟子たちとの激闘を繰り広げるが、度々敗北することになる。
ハドラーはバーンと言う絶対的存在を上に置く事で、自分の地位に執着するようになってしまった。
「己の地位に執着しているような者が勝ちを掴めるはずがない」・・・ハドラーはそう悟ると自らの体に肉体改造を行い、さらなる強さを手に入れた。
全ては自らの宿敵である竜の騎士に勝つために、勝利のために強くなったのだ。
その思いは死んでからも変わっていない。
地位や名誉などに拘らない、あるのはただ純粋に強くなると言う思いのみ。

(なにしろ、肉体を貰う代わりに、態々地獄に留まり罪人たちの管理を行うほどだからな~)

地獄と言うのは、この世界では最も過酷な環境の一つと言える。
そんな所で修行を続ければ、その強さは相当な者になる。おまけに、罪人たちとの命掛けの戦いも繰り広げられる。
さらなる向上を目指すハドラーにとって地獄と言うのは、正に都合のいい環境だった。





(たく!アンナの奴、面倒な仕事ばっかり俺に押しつけやがって~)

強さの向上を目指すハドラーにとって、大輝を鍛える理由などない。時間の無駄になるだけだ。
大輝がハドラーが興味を引くほどの強さを身につけているなら別だが、そんな強さ今の大輝にない。それ以前に、それを身につけるために地獄に来ているのだ。

(・・・とりあえず、こいつの興味をひかないとな・・・)

ここでひいては、世界最強の何でも屋の名に傷が付く。
アクセルは自分に言い聞かせ、ハドラーとの交渉を開始した。

「まあ、落ち着いて聞けや、ハドラー。あいつ、確かに才能もそれほどなく、お世辞にも強いとは言えないけど、根性だけはたいしたものだぞ。
なにしろ、ミストバーンの修行に耐えられたほどだからな。」

「なに?」

(よし!食いついた!!)

先ほどまで、大輝を見向きもしなかったハドラーが僅かに興味を示した。
アクセルは心の中でガッツポーズをした。


ハドラーはかつての主だったバーンと既に袂を分けているが、完璧に交流を断っている訳ではない。当然、その強さも良く知っている。
昔のミストバーンならいざ知らず、今のミストバーンの扱きに、しかも、ただの人間が耐えられるなど、信じられなかった。

「本当か?」

思わず、アクセルに問いかける。

「俺がこう言う時に嘘は言わないのは、お前も良く知ってるだろう。」

ハドラーはアクセルの目をジッと見つめる。いや、睨みつけると言った方が正しい。

「・・・・・」

「・・・・・」

「本当のようだな。」

やがて、目をそらした。アクセルが言ってる事が真実だと判断したようだ。
それに、ハドラーも知っていた。
アクセルと言う男は、普段はどうあれ、仕事の時はこれ以上信頼できる者はいない事を。
こう言う所は、この男の人脈の広さのおかげと言えよう。

「それに、あいつ魔炎気も使いこなせてるぞ~・・まだまだ、荒いけどな。その辺は、お前が教えてやればさらに完璧になるんじゃね。」

アクセルは、ここぞとばかりに攻め立てる。

「・・・ほう」

ハドラー自身も魔炎気を使えるため、その威力は良く知っている。
その魔炎気を、しかも人間が使えるなど、本当に希である。
ハドラーは再び大輝に興味を示した。

「これからの修行次第では、案外化けるかも知れんぞ、人間の強さってのはお前も良く知ってるだろう。」

アクセルの言ってる事は最もである。
実際、ハドラーも地上世界にいた時は、人間の強さと言う物をいやというほど知った。

「とりあえず、あいつがどれほどか、テストぐらいはしてやっても良いだろう?」

アクセルは、そう提案する。

「・・・・・・」

ハドラーは何かを考える素振りをした後、大輝の元に向かった。








ハドラーは大輝に近付いて行き、その様子をジッと見つめていた。

「あーあーあー」

大輝は相変わらず汗を流し、呼吸が乱れていた。
本能が逃げろと叫んでいるのに、逃げ出せずにいた。
まるで、その場に張り付けられたように動けないのだ。
それに―――

(震えている?)

大輝の体は震えていた。
最初は恐怖にでも駆られたのかと思ったが、顔には恐怖ではなく驚嘆の感情が浮かんでいたことから、違うと判断した。
恐怖で震えているのではないとすると・・・

(・・・体が拒否してるのか・・・)

大輝はフリーザ戦で刻み込まれた戦いに対しての恐怖心が体に残っていた。
そのため、どうしても本当の戦いや、今のように気に当てられると体が震えてしまうのだ。
ハドラーはこんな奴が強くなれるのか?と思ったが、ふとある人物が頭の中を過った。

(そう言えば、あいつも始めはこんな奴だったな・・・)

ハドラーが思い出すのは、かつて竜の騎士と共に自分に立ち向かってきた魔法使いの少年。
始めは強敵と対峙すると、有無を言わさず逃げ出す臆病ものだったのが、最終的には自分の最強の部下ハドラー騎士団を撃ち破るほどに成長したのだ。

「フッフッフッ・・・」

その事を思い出したハドラーは思わず小さな含み笑いを漏らした。そして、再び大輝を観察する。
確かにハドラーの気に当てられ、体は震えて、呼吸音なども乱れているが、決して気を失っていない。ただの人間にしてみれば、それだけでも大したものなのだ。
なるほど、アクセルの言ってる事もあながち間違いではない、ハドラーはそう判断して、大輝に問いかける。

「小僧、強くなりたいか?」

「あえぁ・・ううっぅ・・え~っと」

しかし、ハドラーの問い大輝は曖昧な返事しかできなかった。
口の中が渇き、なによりハドラーの気に当てられたせいで、うまく口が開けないのだ。

「強くなりたいのかッ!!?どうなのかハッキリしろッ!!?」

その態度に、痺れを切らしたように声を荒げる。それでけで大気が震え、大輝に襲いかかった。

「!!!!ッなりたいです!!!強くなりたいですッ!!!」

そのおかげか、それとも本能が答えないと不味いと判断したのか、大輝は叫んだ。
人間は咄嗟のことには本当の思いを漏らすものである。
思いの強さとは、様々な種類がある。正義感や愛などの正の思いもあれば、憎しみや恨みなど負の思いもある。
どんな思いであれ、その思いが強ければ強いほど、人間は強くなっていく。
大輝の場合、ある意味その中で一番強い思い・・・生への執着心とでも言えば良いだろう。

「小僧、強くなりたかったら・・・」

大輝の答えを聞いたハドラーは、手の平を大輝の方に向けて・・・・

「這い上がってこいっ!!」

グッと握り拳を作った。



――ピシッ――



「はい?」

大輝は違和感を感じ、地面に目を向ける。
そこには、地面が割れてポッカリ黒い穴が開いていた。
その上に立っていると言う事は・・・

「二度目ェェェーーーーーー!!!!!」

本日二度目の落下を体験する大輝だった。







「ぬわ!」

落下した大輝だったが、うまく地面に着地できた。
その後、すぐさま上に顔を向ける。また、アクセルが落ちてくると思ったからだ。
しかし、その予想とは違い、落とされたのは自分だけのようだ。それが解ると、大輝は状況を確認するため周りに目を向ける。

「ここは?」

落とされた場所はかなり深く、落ちてきた穴が小さく見える。
周りには何もなく、ただ黒い壁が続いているだけだった。

「這い上がれって事は、ここから出ればいいんだよな?」

ハドラーが言っていたのは這い上がれと言う事、しかし、それをする意味が解らない。
確かに、この穴はかなりの深さだが、今の大輝にとってみればこの程度なら上るのに苦労しない。
それ以前に、無空術かトベルーラで飛んでしまえば、すぐ上る事が出来る。

「・・・・・・・」

大輝はなぜこんな事をするのか解らなかったが、とりあえず上ろうとすると・・・・


――ゴオォ――


それは起こった。

「なっ!!」

それは一瞬にして、黒い壁を赤色に染め、天高く昇っていき唯一の出口を防いだ
そして―――


――ゴオオオオォォォ――


大輝に襲いかかった。












(うわ~ハドラーの奴、テストの段階で“炎熱地獄”に落としやがったよ)

アクセルの目線の先には、最早火と表現するのには生ぬるすぎる獄炎が渦巻いていた。

(・・・・ま、あいつの事を考えると、これは正しいのかもしれないな・・・かなり、荒療治ではあるがな・・・・)

大輝が抱えている問題は二つ。



一つは肉体の限界。
これは、このテストに合格するかどうかで解決するのだから、今はそれほど心配する必要はない。
厄介なのは二つ目である。


二つ目の問題は、大輝の体に残っている恐怖と言うトラウマ。
いくら強くなっても、こんなトラウマがあるようじゃほとんど意味がない物になる。
それを解決するためには、人道的かどうかは別にして、今回の事は最も的確である。
大輝は一度死んでいる。死んでいるからこそ、死への恐怖を知っている。
だからこそ、生への執着心は人一倍凄まじい物である。
今回のように追い詰めれば、その生への執着心でトラウマがどうとか言えないだろう。
何しろ、下手したらもう一度死の恐怖を味わうのかもしれないのだからな。




(とりあえず・・・これで、今後のことが決まるな。)

「死ぬんじゃねいぞ・・・大輝。」

アクセルは、渦巻いている獄炎に向かって呟き、その場から歩き出した。

「アクセル、一つ聞かせろ。」

何処かに行こうとしたアクセルに、ハドラーが問いかける。

「・・あいつの情報はなにかあったか?」

名前は言わなかったが、アクセルはハドラーが言ったあいつが誰なのか解った。

「・・・それが全然。ここまで情報がないと、何処かの亜空間にでも落ちたか・・・もしくは・・・」

「いや、いい・・・情報が入ったら、教えてくれ。」

「はいよ~」

ハドラーとの会話が終わり、今度こそアクセルは何処かに向かおうと歩き出すと・・・

「アクセル・・・待ってはあげないのか?」

ハドラー親衛騎団の一人、馬の顔をしたシグマがアクセルに非難するように問いかける。
彼らは騎士と名乗るだけに、騎士道精神と言う物に溢れている。
そんな彼らにしてみれば、今回のアクセルの行動はあまり好まないようだ。

「俺がいても、出来ることなんかないだろ。これは、あいつの問題なんだから」

アクセルは、特に焦りもせずいつものような口調で答える。
そして、シグマの方に顔を半分だけ向けて・・・

「それに、このぐらいの困難、突破できないようじゃ、あいつはそこまでの奴だったと言うとだ。それなら、さっさとあの世に行った方が幸せってもんだろう?」

あくまでも、穏やかな口調でシグマに答える。しかし、シグマは僅かに後ずさりしてしまった。
アクセルの目や纏っている雰囲気がさっきまで違い、真剣そのものだったからだ。

「そんじゃ、後は頼んだぞ~」

アクセルはそこまで言って、歩き出した。




















神界にあるバーンの居城、バーンパレスの王座の間に二人の人物がいた。
一人は此処の主であるバーン。もう一人は、大輝の師であるミストバーン。

「ふっふっふっ・・・ハドラーの奴め、相変わらず変わりはせぬか・・・」

彼らの目の前には、炎が渦巻いている、今まさに地獄の映像が映し出されていた。
協力を申し込んだバーンは、その映像を見ても特に焦った感じは見られなかった。

「・・・よろしいのですか?バーン様。」

ミストバーンは自らの主に問いかける。

「構わぬ。それに・・・」

バーンは目の前の映像に目を向けて・・・

「この程度でめげるようなら、奴はそこまでの存在であったと言う事。―――にすらもなれぬ。」

不敵な笑みを浮かべながら呟いた。



















あとがき

ハドラー&ハドラー親衛騎団登場!!!!
と、思ったらいきなり大輝が地獄に落ちたぁぁぁーーーーーーー!!!

ぶっちゃけ、大輝に魔炎気を使わせたのは、このためのフラグでした。

ハドラーのイメージとしては、やはり、死んだ後も地位や名誉に拘らず、ただ強くなることを目指すと思うのですが、皆さんはどう思いますか?

さて、いきなり地獄に落とされた大輝・・どうなる事やら・・・

では次回。











[15911] 第二十話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/17 15:18
第二十話










“獄炎”・・・そのまま直訳すれば地獄の炎。



そんな言葉が、本当にあるか解らない。
そもそも、言葉と言うのは、物の名を呼ぶために人間が付けたものだ。
水・土・木・空・太陽・月、そんな自然の事を現す物もあれば、テレビ・パソコン・椅子・ベット・机・本など、人間が作り出し物にも名前がある。
新しく誕生した物にも名前をつける。それは、昔から続けられてきた事だ。
では、獄炎とは?
そんな名称は所詮想像でしかない。
なぜなら、生きた人間にそれを確かめる術はないからだ。

「ぐっぐぎっぎぎぎぎ・・」

しかし、今俺はそう呼んでも過言ではない物を味わっていた。
うん、冗談抜きで・・・・・




あの時、ハドラーさんに落とされた直後にそれは起こった。
最初目に入ったのは赤一式の物だった。それが一緒にして黒い壁を染め、落ちてきた穴を塞ぎ、俺に向かってきた。
突然の事で頭がついていけなかったけど、さすがと言うかアンナさん達の修行のおかげで体は反応出来た。


咄嗟に気を放出して、円形状のバリアーを体全体に張ることができた。
そのおかげで、何とか無事だったけど、勢いに押され地面に戻されてしまった。けど、特にひどい傷も負わなかったので、冷静に自分に襲いかかってきたものを観察することができた。
俺に襲いかかってきたのは火だった。いや、火なんて表現は生ぬるすぎる!!
実際、今の俺に火の塊ごときが襲いかかってきても、大した障害にはならない。例え核爆弾をまともにくらっても、無傷ですむ自信はある。それは、慢心でもなければ過信でもない。本当にそうなのだ。
そんな今の俺でも、目の前の炎は危険と感じた。現に気を全開にして張ったバリアーでもすぐ突破された。核爆弾だろうと、小さい隕石ぐらいの衝突なら防げるぐらいのバリアーにも関わらず・・・
今は何とか、ヒャダルコで押し返して、均衡状態を保っている。


*ヒャダルコ・・・ヒャド系呪文の中級呪文。冷気や氷の塊などで相手を攻撃する。


「はあぁはあぁはあぁ・・・」

不味い・・・・熱さのせいで、こうしてるだけで体力が奪われちまう。
ヒャダルコでを放っているのにも関わらず、体全体が熱い。まるで高温のサウナに詰められたようだ。
火には水をって、単純な考えでヒャド系の呪文を選んだんだけど、これには意味が無かったみたいだな。
幸いなのは、炎が上からだけで俺に襲いかかってくる事だな。これで横からも来られたら、さすがに防ぎようが無かったからな。

(はははっ・・・これでヒャダルコを解いたら、俺・・・どうなっちまうんだろうな・・・)

俺は体全体をヒャダルコの冷気で覆うように放っていた。
そうでもしないと、熱を防げないからだ。最も完璧に防ぐ事は出来なかったみたいだけどな・・・




俺はメラ系の呪文が得意であるが、決して他の攻撃呪文が使えないわけではない。
けれど、やっぱり得意呪文であるメラ系と比べて、他の攻撃呪文の質は落ちる。
おまけの、今使っているのはヒャド系呪文。謂わば、炎と全く逆の氷だ。
別にそれに問題があるわけじゃない。
実際、ヒャド系を得意としているアンナさんだって、ちゃんとメラ系に呪文を使えている。でも、なんつったいいのかな?イメージの違いとでも言えばいいのか、そう言ったものはある。
例として出すのは微妙だけど、俺の場合、今までストーブだったものが、いきなり冷蔵庫に変わるって言えばいいのかな?とりあえず、そんな感じだ。
それを差し引いたとしても、今の俺なら、そんじょそこらの炎なんか目じゃない。一瞬で氷漬けにすることができる。
昔、サバイバルで戦ったバトルレックスのはげしい炎でも、楽々氷漬けにする自信はある。
だけど、目の前の炎には意味をなさなかった。


全力で向かってくる炎に放っているのにも関わらず、氷漬けにすることは愚か、ただその場に押さえる事しか出来なかった。体に張った冷気のバリアーも完璧に熱気を防ぐ事は出来なかった。
“獄炎”・・・胡散臭い言葉だけど、この炎を表現するのにはピッタリな言葉だ。
火や炎、業火・灼熱なんて言葉では甘すぎる!!地獄の炎って言われても絶対納得するぞ!!

「このままじゃ埒があかないな・・・」

唯一の出口は炎が塞いでいる。
出るためには、その炎を突破するか、吹き飛ばすしかないな。
けど―――

(この炎の中を突破すると言ってもなぁ)

正直、目の前にある炎の中を突破するのは難しい。
下から見上げた時の穴の小ささから・・・あーもう!パッと見ただけだから、正確な距離なんか解らねえぇーよ!
とりあえず、かなりの距離があることは間違いないな。
そんな距離を、この炎の中を突破するなんて自殺行為だ。

(・・・とーなると、必然的に吹き飛ばすしかないな。)

一瞬でもこの炎を吹き飛ばして、出口が見えれば後はルーラで脱出できる。
即断即決。この状態だと、悩んでいる時間もおしい。
俺は片方の手にエネルギーを込めようとしたんだけど・・・


――ゴオオオォォ――


「!!!ッ」

ダメだ・・・両手の内片方のヒャダルコを解いたら、炎の勢いに押されちまう。エネルギーを溜める余裕なんかないぞ。

「つぅー!」

俺は急に腕に痛みを感じて、その原因を確かめようと目を向けた。そこには、小さな火傷があった。
片手にエネルギーを込めようとした時、体に張っていた冷気が弱まったせいか、周りの熱気で焼かれたようだ。

(冗談じゃねいぞ・・)

威力を弱めた途端に熱気に襲われた。恐らく・・いや、確実にエネルギーを込めている最中に炎に飲み込まれるだろうな。
つまり、俺はこの状態でこの状況を打破しなくちゃならないってことか。

「うあぁっく・・・つうぅ・・・」

さらに炎の勢いが増した。その勢いに押され片膝が地面についてしまった。

(このままだと、いつか・・・)

今は何とか均衡状態を保てているけど、いずれ魔法力も闘気も尽きる。
そうなっては、何の為す術もなく炎に飲み込まれる。
思わず、その炎で焼かれて血も骨も髪の毛一本すら残らない自分を想像してしまった。

――ゾクッ――

途端に背筋に寒気が走った。
自分を蒸発させるほどの熱を持っている炎に囲まれている。そんな矛盾した環境なのに、確かに感じた。

(冗談じゃねぞ!!)

「ああああああぁぁぁーーーーーー!!!」

気合を入れ、吼えながらさらにヒャダルコの威力を高めていった。
そのおかげで、僅かだが炎を押し返すことができた。
炎を押し返している内に何とか体勢を立て直すことはできたけど、炎はそれをあざ笑うかのように相変わらず道を防いでいた。

(クソッ!!あの、ハドラーって人!こんなとこに落とすんじゃね!!)

会って間もないのに、思わず悪態をついてしまった。











大輝が炎熱地獄に飲み込まれている中、ハドラーとハドラー親衛騎団はそれを見下ろしていた。

「粘るな、あの野郎。」

ハドラー親衛騎団の一人、比較的人間に近い姿のポーン(兵士)、ヒムが目の前に渦巻く炎の塊を見ながら呟く。

「ふむ・・・そろそろ十分は経つな。人間にしては大したものだ。」

同じくハドラー親衛騎団、馬の顔をした、ナイト(騎士)のシグマが大輝の事を称賛する。

「クククッ・・・ヒム。根性だけなら、君のとこの隊長といい勝負ではないか?」

体の所々が鋭利な刃物のようになっている、ビショップ(僧正)のフェンブレンがヒムに問いかける。

「ブローム。」

ゴーレムのような巨大な体を持つ、ルック(城兵)のブロックは喋れないため訳の解らない事を呟くだけだった。




そして―――




「ハドラー様。態々あの者に手を貸す必要があったのですか?」

ハドラー親衛騎団唯一の女性型。クイーン(女王)アルビナスが自らの主に問いかける。

「アクセルには、奴の事で世話になっている。それに、バーンも俺が地獄に行く時、いろいろ手を回してくれた。今回のことでその借りを返すのも悪くない。」

それに対し、ハドラーは淡々と答えた。
どうやら大輝に興味を持ったよりも、アクセルやバーンに対しての借りの方が大きいようだ。





さて、せっかくの機会だから、この場を借りてこのハドラー親衛騎団について簡単に説明しよう。


ハドラー親衛騎団とは、昔ハドラーがバーンに授かったオリハルコン制のチェスの駒から生み出された金属生命体なのだ。
チェスの駒から生み出されたため、それぞれがチェスの駒と同じ階級を持っている。

即ち、

ポーン(兵士)のヒム。

ナイト(騎士)のシグマ。

ビショップ(僧正)のフェンブレン。

ルック(城兵)のブロック。

クイーン(女王)のアルビナス。

以上の五人がハドラー親衛騎団を構成しているメンバーだ。


彼らは皆オリハルコンを媒介にして生み出されたため、体全体がオリハルコンで出来ている。
そのため、生半可な攻撃や呪文では傷一つつかない無敵の体を持っている。
主であるハドラーのために駒として戦う。正に、最強の戦闘集団と言えよう。






(それにしても、本当に粘るなあの野郎)

そう思ったのは、ポーンのヒムだ。
彼は、他の親衛騎団よりも長い時間人間と共に過ごした。そのせいかどうかは解らないが、この中では一番大輝を気にしている。
そんな彼は、少し驚いた表情で目の前の炎の渦を見つめていた。
その理由は―――

(一番弱い炎熱地獄とは言え、十分間も持つなんて・・・)

大輝が落とされた炎熱地獄は、炎に関する地獄の中では一番弱いと言える。
しかも、目の前の炎はその中でもさらに弱い炎である。しかし、それでも地獄の炎である事には変わらない。
そんな炎の中に人間が落とされたのだ。普通に考えたら、一瞬で燃え尽きてもおかしくない。
それにも関わらず、大輝は十分間も耐えている。
これにはヒムも驚いた。それだけ、目の前の炎は強力なのだ。

「・・・へッ!確かに、フェンブレンの言う通り。根性だけなら、うちの隊長さんといい勝負だな。」

ヒムが言っている隊長と言うのはハドラーの事ではない。
地上世界で出会った、あるモンスターの事である。
力自身は自分達より圧倒的に劣るが、その根性だけは大したものだった。
それこそ、自分と同じ親衛騎団のフェンブレンも認めるほどの。



「・・フッフッフ」

ヒムの口から笑みが漏れ出す。

「どうかしたのかね?ヒム。」

シグマは、そんなヒムが気になり問いかける。
その問いにヒムは笑みを浮かべながら答えた。

「いや・・・少し昔の事を思い出しちまってな。」

まだ地上世界にいた時の事を思い出して、感傷に浸っていたようだ。





――ゴオオオォォ――



炎は相変わらず渦巻いていた。











ハドラー達が見下ろしていた炎の中で、大輝はさらなるピンチに陥っていた。

「ああっぐううぅ」(不味い、そろそろエネルギーが・・・)

確かに大輝は地獄の炎の中で十分間耐えた。しかし、それは耐えただけで、決して事態が発展したわけではない。
魔法力も徐々につきかけ、魔法力に変換していた闘気も残り少なくなってきた。

「うっく!」

それに伴い、ヒャダルコの威力も弱まってきた。
大輝は炎の勢いに押され、両膝をついてしまう。炎自身も後数メートルまで迫ってきた。
ヒャダルコの威力が弱まったせいか、体に張っていた冷気も弱まってきた。
そのせいで、大輝の体にも変化が現れた。


上から押し寄せる炎を押さえておくため、体に張る冷気はそれほど強めることは出来なかった。そうでもしないと、炎の勢いに押されてしまうからだ。
しかし、それでも先ほどまでは、何とか熱気は防げてた。
だが、今は違う。
先ほどまで顔全体が汗まみれだったが、今は汗など掻いていない。汗など最早熱気だけで蒸発してしまうからだ。
こうして普通に息をするだけでも、その時に吸い込む熱気のせいで、肺が焼けるような感じがした。


――ジュウ――


肉が焼ける音が聞こえた。

「うっ」

生理的に嫌な匂いが大輝の鼻をかすめ、思わず顔を歪めてしまう。
体を覆う冷気が弱まったせいで、熱気を浴びて体が焼けてしまったようだ。
今はまだいいが、これ以上冷気が弱まったら、炎を直接浴びなくても焼け死んでしまうだろう。
かといって、体を冷気で覆ってしまうと、今度は上から炎が押し寄せる。
炎を抑えて、尚且つ熱気から守るほどの冷気を作り出す。その両方を行うほどの魔法力も闘気も最早大輝にはなかった。


万事休す


(チッ!このままじゃ・・)

魔法力も闘気をつきかけ、未だに炎の中にいる。
このままでは、大輝に訪れる運命は一つしかない。




“死”と言う一つの運命しか・・・・




(死ぬ?・・・俺が・・・また・・死ぬ・・・)

その考えが頭に過った瞬間、大輝の周りから音が消えた。
今なお炎が迫っているのにも関わらず、周りを高熱に包まれているのにも関わらず、大輝はそれを感じる事が出来なかった。
まるで、自分がその場に存在しないように感じた。







死と言うのは、ある意味一種の救いとも言える。
苦しみから悲しみから、あらゆる辛さか逃れる事が出来る。もう何も味わう必要はない。
安楽死などと言った方法もあるほどである。それが倫理的かどうかは別として、苦しみから逃れることには違いない。
では、逆に苦しくも辛くもない人に死が訪れた場合はどうなる?
苦しみも悲しも味わない代わりに、楽しみや喜びと言った物も感じなくなる。そこにあるのは、ただの虚無だけ。
何も感じない、感じる事が出来ない。それは、一種の拷問・・・いや、この表現はおかしいか。
なにしろ、それすらも感じることが出来ないのだからな・・・・









「・・・いやだ・・」

唐突に大輝が呟く。
蚊の鳴くような声だったが、その声は静かに、でも確かに聞こえた。

「いやだ・・いやだいやだいやだいやだいやだ」

まるで呪いの言葉を吐くように繰り返す大輝。炎が轟く中心に静かに響き渡った。
そこに込められている思いはただ一つ。


    “生きたい”


それは生き物の原初の願いである。
大輝の場合、その思いが人一倍強いと言えよう。
やがて―――


「ああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」


地の底から響き渡る様な唸り声を上げ、大輝の体が白い光に包まれた。







「これは?」

行き成り発せられた白い光を懐疑な目線で見つめる大輝だったが、その光の正体に心当たりがあった。

「これって、確か魂のエネルギー?」

それは、バーダックと戦った時に感じた闘気でも魔法力でもないエネルギー。魂のエネルギーだった。
大輝は、なぜそれが使えるのか解らなかった。少なくても、まだ自分は自由自在にこのエネルギーを使えなかったはず。
疑問に思う大輝だったが、今の状況を見てすぐさま納得がいった。

(ああ・・・そう言えば、俺魔法力も闘気も・・・)

魂のエネルギーとは本来、魔法力・闘気の生命エネルギーの強固な殻に守られている。
そのため、使い方を知らない物は、そこから引き出すことは出来ない。
しかし、今の大輝は魔法力も闘気もほとんど尽きかけていた。それは、言いかえれば生命エネルギーの殻が薄くなっていると言う事である。
そのため、魂のエネルギーが普段より外に出やすくなっているのだ。

「はっはっは、俺って結構しぶといな・・・・」

そう思う大輝だったが、その考えはある意味で的を得ていた。
魂のエネルギー事態を使うのは、それほど難しい事ではない。その概念と生命エネルギーのコントロールがしっかりしていれば使う事は出来る。
しかし、大輝の場合そう簡単にはいかなかった。理由としては、魂のエネルギーの概念を知る前に体を強くしすぎたのが原因だった。
先ほど述べた通り、魂のエネルギーは強固な殻に守られている。
大輝は、その殻をより強固な物にしてから魂のエネルギーを知ったため、簡単に引き出すことは出来なかった。
それに、魂のエネルギーの使用は、自らの命をかける文字通り捨て身の技なのだ。そんな技、無暗やたらに使うわけにはいかなかった。

「でも・・・何とか余裕はできたな。」

大輝の言う通り、先ほどまで目前に迫っていた炎が押し返されていた。
体に感じる熱気も和らいだ。

「今の内になんとかしないとな。」

魂のエネルギーを使うと言うことは、それだけ自分の命を縮めると言う事。
これでエネルギーを使い果たしてしまったら、本末転倒だ。
大輝は何とか打開策を考える。








魂のエネルギーのおかげで、何とか炎を押し返せた。でも、ピンチなのには変わらない。
実際、魂のエネルギーを使ったせいか、体から何かが抜けていくような感覚に陥った。
この感覚は未だに慣れない。と言うより、こんなのに慣れたくもない。
けど、そのおかげで余裕が出来た。そのため、何とか冷静に周りを観察することができた。


唯一の脱出口は俺が落ちてきた穴。
どこか、別の所に穴を開けようとしても、周りに炎に包まれているためその先は見えない。
それ以前に、あれほどの高さの穴を新しく作ると言っても無理だ。
今だって、両手から魂のエネルギーを使ったヒャダルコを発動させてなんとか炎を押し返せているんだ。
この状態で壁際まで言って、さらにその壁を掘り進んで新しい出口を作るのは無理だな。


ここからエネルギー波を放って炎を吹き飛ばすとは言っても、この炎を吹き飛ばすほどのエネルギーを溜めている内に飲み込まれちまう。
そうなったら、そのままお陀仏。
かと言って、残った方法は、この炎を突破する事だけど・・・

(突破できるか?これ?)

突破する事はあらかじめ考えていた事だけど、目の前の炎を見ると、どうしても腰が引けてしまう。
この炎のに突っ込んで、果たして無事ですむだろうか?

(とは言っても、これぐらいしか思いつかないしな・・・うん?まてよ・・・)

この状況、どこかで・・・・
そうだ!昔アクセルさんと組み手をした時に!

(え~と、あの時はアクセルさんは・・・クソッ!思い出せ!!)

あの時、アクセルさんは確か・・・




・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・




「メラゾーマッ!」

俺はアクセルさんに向かって、メラゾーマを放った。
無論、これが決まるとは思わない。恐らく、弾くか、避けるかのどちらかの方法をとるだろう。
そう予想付けて、俺はアクセルさんの動きに注意した。

「ふんっ!」

しかし、アクセルさんはそんな俺の予想とは逆にメラゾーマに突っ込んでいった。
これには驚いた。今のアクセルさんは俺のレベルに合わせるため、リミッターを付けている。
つまり、俺と同程度のレベルで模擬戦をしていると言う事になる。
そんな状態であのメラゾーマに突っ込んでいったら、相当なダメージをくらうはずだぞ。

(何を考えているんだ?)

アクセルさんの意図が読めず、困惑してると・・・

「よっとッ!」

アクセルさんがメラゾーマの中から飛び出してきた。

「うそッ!」

いきなりの事で反応できず、俺はそのまま意識を刈り取られた。








その後、意識を取り戻し、俺はあの時のアクセルさんの行動が気になって聞いてみた。
少なくても、あのメラゾーマはそこそこの威力があったはずだ。
俺と同じぐらいのレベルであの中に突っ込んで言ったら、先ず間違いなくダメージは受けるはず。
しかし、アクセルさんは無傷で俺のメラゾーマを突破してきた。

「う~ん・・・解りやすくいえば、そうだな、波を想像してくれ。言っておくが、海の波だぞ。」

そう言ってきたので、俺は波を想像する。

「その波の中に、炎の弾丸を撃ち込んだらどうなる?あ、ちなみに炎は一般的な炎で考えろ。」

「消えるでしょ。波なんかに炎の塊なんか撃ちこんだら。」

高熱のメラゾーマとかならまだしも、普通の炎だったら間違いなく消えるだろうしな。

「そう。火は水で消える。これは子供でも知っている事だ。じゃあ、ヒャド系の魔法とメラ系の魔法で考えた場合、氷や冷気の性質を持つヒャド系の方が有利と言えるか?」

アクセルさんが質問してきたので、俺はそれに答える。

「言えないと思います。」

「その理由は?」

「え~と、普通の水や火なら確実に水の方が有利ですけど、魔法の場合、同じ魔法力って言うエネルギーを使っている訳だから、どちらかが確実に有利とは決められないと思うんすけど。」

そう答えを返す。
アクセルさんは俺の答えを聞いて、満足そうに頷いていた。

「結構物解りが良くなったじゃねいか。お前が言った通り、一概にどちらかが有利とは言えない。なぜなら、メラ系もヒャド系も同じ熱エネルギーを操る、魔法力を使うってことじゃ同じだからさ。ただ、そのエネルギーが正か負かの差だ。」

そう言って、アクセルさんは両手を前に突き出してきた。

「プラス方向に魔法力をグングン上げると物質の構成分子の運動が高まりメラ系呪文になる。」

アクセルさんは左手にメラ系呪文を発動させながら説明する。

「逆に魔法力をマイナス方向に下げたものが物質の分子運動をにぶらせるヒャド系呪文になる。」

今度は右手にヒャド系に呪文を発動させながら説明する。

「要は、この二つは力の根本は同じだけど、力のベクトルの向きはまったくの逆と言うわけだ。俺はそれを利用しただけだ。」

そう言って、さらに詳しい説明をしだした。

「さっきお前が放ったメラゾーマはプラス方向のエネルギーの塊。これをマイナス方向のヒャド系で打ち消すか防御するには、必然的に同じ力の量が必要になってくる。
けれど、同じプラス方向のエネルギーの場合そうとは限らない。炎の中に炎をぶち込んでも決して喧嘩せず、ただ混ざり合うだけだからな。
それと同じように、俺はお前のメラゾーマの中に突っ込む瞬間、体全体を同じメラ系のプラスエネルギーで包み、素早く突破しただけだ。」

「・・・つまり、態々反発させるのではなく、うまい具合に同調させたってことですか?」

たぶん、この考え方で合っていると思うんだけど・・・

「まあ、簡単に言えばそう言う事だ。」

どうやら合っていたようだ。




・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・




(力のベクトル・・・プラスエネルギー・・・同調・・・・)

俺はアクセルさんに言われた事を思い出しながら、心の中で呟く。
そして、上を見上げて炎を見る。

(この炎はどう見てもプラス方向のエネルギーだ・・・と言う事は・・・)

頭の中に先ほどまで危険視していた方法が浮かぶ。
この考えが間違っていたら、その時点でアウト。

(でも、これしかねぇんだよな)

このままこうしていても、魂のエネルギーが尽きてしまえば、そこで終わりだ。
なら、まだ成功する確率がある方にかけた方がましだ。

(やるか・・・)

俺は一回深呼吸をして、心を落ち着かせた。
はあーっと肺に目一杯空気を吸い込む。
そして―――

「魔炎拳ッ!」

魔炎拳を発動させ炎をの中に突っ込んでいった。












大輝は魔炎拳を発動させながら、炎の中を進んでいく。
反発させるのではなく、同じ方向に力を同調させたため、なんとか炎に耐えられたようだ。
しかし、その顔は苦痛に満ちている。


  “痛い”


いくら力の方向を同じにしようと、自分が炎の中を進んでいるのには違いない。
案の定、大輝の体は高熱に焼かれてきた。
それは、最早熱いでなく、痛いのだ。
しかし、それでも声を上げる訳にはいかない、と言うより息を吸い込む訳にはいかない。
こんなとこで息を吸い込めば、内部が高熱で焼かれてしまうからだ。
いくら体を鍛えようと、自分が人間であることには変わらない。体の中が焼けてしまえば、死んでしまう。

(不味い・・・意識が・・・・)

最初こそうまくいったいた大輝だったが、魂のエネルギーを使いすぎたのか、意識が朦朧としてきた。
大輝は奥歯を噛みしめ、何とか意識を留める。
こんなとこで意識を失ってしまえば、もう助からない。そう判断したからこそ、耐えて見せた。
凄まじいまでの生への執着心である。

(早く早く早く・・・もっと早く!!)

心の中に焦りが生まれる。未だに光は見えてこず、ただ赤い波が続いている。
炎に遮られているため、出口が見えない。
命と言うタイムリミットがある中、終わりが見えない場所をひたすら進んでいく・・・それは、凄まじいまでの恐怖だろう。

「ぷはっ!」

しかし、その恐怖は唐突に終わりを告げた。
大輝が、炎熱地獄の炎を突破したためだ。

「はあーはあーはあー」

口を大きく開け、新鮮な空気を肺一杯に吸い込む。
ただの空気。豊かな森の中でもなけば、山の綺麗な空気でもない、ただの空気。しかし、大輝にはそれが滅多に食べれない御馳走のように思えた。

(やったのか・・・俺?)

魂のエネルギーを使い、闘気も魔法力もほぼ0の大輝は最早風前の灯だった。
しかし、それでも生きて這い上がってきたのは事実だ。
大輝はエネルギーの使いすぎの成果、未だに状況が飲み込めず、実感が沸いていないようだ。

「・・・・・・」

やがて、徐々にだが意識が闇の中に沈んでいった。



本来なら、そのまま意識を失っても問題ないのだが、今回の場合そうはならなかった。
なぜなら、今大輝は落ちた穴の縁に上半身を乗り上げているだけで、完璧に地面に体を乗り上げていなかったからだ。

――ズルッ――

やがて、大輝の体は徐々に徐々に穴に吸い込まれる。
まるで、穴が大輝を捕食するように、ゆっくり・・ゆっくりと穴の中に吸い込む。

――ガラッ――

やがて、大輝は穴の中に落ちた。

「・・・・」

大輝は意識を失いかけていて、その事に気付かない。
例え気付いたとしても、もう這い上がる力など残されていなかった。

――ゴオオオォォ――

炎は先ほど変わりなく、その真っ赤な体を唸らせていた。

「・・・・・」

そして、その炎に再び飲み込まれようとした時、


――ガシッ――


何かが自分の腕をつかんだ。
その後、浮遊感を感じ、熱がドンドン遠ざかっていく。

(・・な・・ん・・・・だ・・・)

大輝はその正体を確かめようとしたが、もう意識を留めるだけの力も残されておらず、そのまま闇の中に沈んでいった。

「ようッ!なかなか根性あるじゃねいか!お前。」

薄れゆく意識の中で、最後にそんな言葉を聞いた。













あとがき

主人公補正すぎましたかね?

この場合、よくあるパターンだと、

ピンチ→眠っていた力が目覚める→危険を突破

みたいな感じですが、大輝の場合そううまくはいかないので、自分なりに納得のいく理由を書いたのですが、いかがでしたか?

さて、なんとか地獄から這い上がった大輝。
これで一応ハドラーの“テスト”は合格したことになりますね・・・
問題はその後ですけどね。

ちなみに、ハドラー親衛騎団は作者の中では全員心を持った生命体と捉えています。

実際、マキシマムが従えていた駒達は文字通りの人形だったので。

では次回。







[15911] 第二十一話
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/21 00:14
第二十一話












地獄・・・そこは、生前罪を犯した者が落とされる、正に世界最高の監獄。
罪人はそこで魂を浄化され、再生の準備に入る。
そして、今日も罪人たちの悲鳴が地獄に響いていた。









「お嬢さぁーーーーん♪」


「きゃああぁーーーー!!」









・・・・・悲鳴が・・響いて・・いた?








「おぉいって~、でも結構かわいい子だったな。地獄も相変わらず美人が多いな♪」

地獄の道中、そんな事を呟きながらアクセルは歩いていた。
ちなみに、頬に真っ赤な紅葉マークがついていることから、何があったか察してほしい。

「アクセルさん、いい加減にして下さいオニ。また閻魔大王様に怒られますよオニ。」

そんなアクセルに一人の地獄の鬼が呆れながら注意した。
口ぶりからするに、閻魔大王の元で働いている鬼のようだ。

「何を言ってる!例え閻魔大王の怒りを買おうと!例え地獄だろうと!そこに美女が入れば、迷わず突撃する!!」

「それがこの俺!世界最強の何でも屋!!アクセル・ヴァイスハイトだぁーーーー!!!」

ドーンっとアクセルのバックが爆発した。まるで、何処かのヒーロー戦隊のように名乗りを上げるアクセル。
その心意気は正に男・・いや、漢である。
・・・言ってる事は、どうでもいい事だがな・・・
と言うより、果たしてこの世界に態々地獄まで美女を探しにくる者が他にいるのか甚だ疑問である。




「うん?」

ふとアクセルは遠くに目を向ける。
その方向からは、小さいが何かと何かがぶつかり合うような音が絶え間なく響いていた。

(あいつら、頑張っているな~)

察知できる気は二つ。
片方は圧倒的に大きな気。もう片方はそれに比べると限りなく小さいが、格段に強くなった見知った気。

「さ~て、どうすっかな?」

アクセルは見知った気を確認すると、これからどうするか考え始めた。

「・・・どうしよう?ナンパするにも、これ以上やると本当に出入り禁止になるからな~。いや、でも・・・」

ブツブツと独り言を言いながら考えるアクセル。
しかし、何も考えつかないのか暫くう~んう~んっと唸っていた。
ちなみに、そこには大輝の事を心配する言葉は一つもなかった事を此処に明記しておこう。

「おい。知ってるかオニ?」

そんなアクセルの耳にふと話し声が聞こえてきた。

「最近、レティシアで奇妙なモンスターが暴れているらしいオニ。」

「ああ、あの噂のオニ。」

どうやら二人の鬼が世間話をしているようだ。
アクセルは、その話に聞き耳を立てる。

「それにしても、随分命知らずがいたものだなオニ。よりにもよって、神々の一人レティス様が治める世界で暴れるなんてオニ。」

「いや、そうとも言えないぞオニ。なんでも、軍が討伐に向かったさい、煙のように消えてしまったと言う事だオニ。」

(ふ~ん、レティシアね~・・・なら、ちょうどいいか・・)

アクセルはその鬼の話を聞いた後、頭にある考えが浮かんだ。

「なぁ?ちょっといいか?その話もう少し詳しく聞かせてくれ。」

そして、鬼達に近寄り、より詳しい話を聞き出した。






アクセルが鬼達と話している一方、大輝はと言うと・・・・






「ぜぇーぜぇーぜぇー」

「おらッ!どうした!もうばてたのか!!?」

大輝は、ハドラー親衛騎団の一人。ポーンのヒムと模擬戦をしていた。
しかし、二人の力の差は歴然だった。
大輝は体の至る所に傷があり、もう息が上がっている。いつ倒れてもおかしくない状態だ。
それに対し、相手のヒムは傷と言う傷は見えない。息も上がっておらず、まだまだ余裕だ。
さすがに、大輝のレベルではオリハルコンで出来たヒムの体に傷は愚か、埃も付けられないようである。

「こないなら、こっちから行くぜ!!」

ヒムはダンっと地面を蹴り、大輝に襲いかかる。

「ちょっと待っ・・・」

大輝は待ってくれるよう頼もうとしたが、ヒムがもう目前まで迫っていたので言えなかった。

「うッ!」

上体を反らし、ヒムから放たれた拳を避ける。しかしその風圧だけで、服が切り裂かれた。
オリハルコンで出来た腕は、それだけでかなりの破壊力をもつ謂わば兵器に等しいのだ。
大輝は危険と感じ一度距離を取ろうと後方に下がったが・・・

「遅いッ!!」

「があぁ!!」

その前にヒムから鋭い蹴りが放たれた。
大輝は避けられず、腹部にまともに受けた。
ドンッと鈍い音を上げながら、十メートルぐらい後ろに吹き飛んでしまう。
当然の如く、足もオリハルコンで出来ているため、その破壊力は相当なものだ。

「はあぁーはあぁーはあぁー」

蹴りを受けた時、肺から一気に空気が漏れてしまったため、大輝は新しい新鮮な空気を吸い込む。骨が折れなかったのは不幸中の幸いと言ったとこか。
しかし――

「休んでいる暇なんかねぇぞ!!」

それは大きな隙となる。
歴戦の戦士である、ハドラー親衛騎団のヒムがそれを見逃すはずがない。そして、ヒムにとって十メートルの距離を一瞬で縮めるなど造作のない事だ。
ヒムの拳が真っ赤に燃えあがる。
体がオリハルコンで出来ていることから、まるで熱しられた鉄棒のようだ。
やがて、大輝はヒムの拳の射程距離に入った。

「ヒート・・・」

拳を引き撃つ態勢に入り、

「ナックルッーーー!!!」

大輝に向かって、ヒートナックルを放った。




*ヒートナックル(超熱拳)・・・火炎呪文であるメラ系を拳に乗せて相手を攻撃する格闘術。




「ッ!!!」(ダメだ・・・避けきれない・・・)

目前に迫るヒムの熱しられた赤い拳。そのスピードから避けるのは不可能と悟った。
伝説の金属と言われたオリハルコンで出来た拳だけでもかなりの威力があるのだ。それに、高熱を乗せてさらに攻撃力をアップさせた攻撃。
その破壊力は計り知れない。

「チッ!」

避けるのも、受け流すのも、ましてや相殺するのも不可能と判断した大輝は、全闘気を腕に集中させ、胸の前にクロスさせて防御の体勢に入った。

「はあああああぁぁ!!!」

ヒムはそれを気にせず、大輝の防御の上からヒートナックルを叩きこむ。


――ドオオオオォォン――


「ああっくぅぅ」

それは最早攻撃と呼べるものではなかった。
受け止めた時の衝撃だけで、周りの岩は粉々に吹き飛び、地面は広範囲に渡って削られた。
まるで隕石の衝突を受け止めたようだ。
闘気を集中にいたのにも関わらず、その威力は殺しきれるものではなかった。
ピシッと鈍い音と共に骨にひびが入り、熱しられて拳のせいで肌が焼け焦げる。
腕の感覚など、とうの昔に忘れた。
それでも大輝は歯を食いしばり、足をグッと踏ん張ってヒムの攻撃を耐えようとする。
気絶しようにも、痛みのせいで気絶できないと言う悪循環に陥っていた。

「ううぅっぐっかっく!」

「はあぁ!!」

「があぁ」

抵抗は一瞬だった。一瞬でヒムの拳は振り抜かれた。
大輝は、ゴキッと言う生理的に嫌な音と共に吹き飛ばされた。








「・・・・・」

ヒムは大輝が吹き飛んで行った方向をジッと見つめていた。
無機質な地面は削られ、その後が果てしなく遠くまで続いて砂煙が舞っていた。

(気絶したか?・・・いや・・)

いつまでも姿を現さない大輝に、そんな考えが頭に浮かんだがすぐ消した。

(あの時、あいつは俺のヒートナックルに耐えられないと判断して、咄嗟に後ろに飛んで直撃の逃れた。
腕そのものはダメージを負ったようだが、体はほとんど無傷なはずだ。)

フッとヒムは小さな笑みを浮かべる。
そして――

「さあぁ!さっさと来やがれ!」

大輝が吹き飛んで行った方向に向かって挑発的に大声で叫んだ!


・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・


あれから数分たったが未だに大輝は姿は現さない。
次第にヒムもイライラしてきた。

「何してんだ?あの野郎ッ!」

吐き捨てるように言う。
彼は少々荒削りな性格のため、こういう待つと言う行為が苦手なようだ。

「ふむ、ヒムよ。」

「なんだ?シグマ。」

そんなヒムに模擬戦を見守っていた同じハドラー親衛騎団の一人。ナイトのシグマが話しかける。
こちらはヒムとは逆に、紳士的な落ち着いた声だ。

「あの大輝と言う人間は、先ほどの君の攻撃でほとんどの力を使い果たしてように見えたぞ。」

「ああ、俺のヒートナックルを防御するのに、闘気を全開にして防御したからな。」

「闘気も魔法力もほぼ尽きかけように見える。それに加え、君の攻撃に耐えきれず、両腕の骨が砕けたようだった。」

「たぶんそうだろうな。あの時、奴の両腕から骨が砕ける音が聞こえたからな。」

シグマは模擬戦で気付いた事をヒムに報告する。直接戦った訳ではないが、それぐらいの事を見抜くなら彼にしてみれば簡単な事だ。
無論、直接戦ったヒムもその事を知っていたのでシグマの報告に肯定の返事を返す。

「見たまえ。」

シグマは、大輝が吹き飛んで行った方向を見るようヒムに諭した。
ヒムもシグマに諭され、大輝が吹き飛んで行った方向に目を向けた。

「あの勢いで、しかもエネルギーが尽きかけているとすると、相当な距離を吹き飛ぶ事になる。」

「お前、何が言いてぇんだよ?」

今一シグマの言おうとしている事が解らず、ヒムは問いかける。
しかし、次のシグマの言葉で納得した。

「あの方向は、確か血の池がある方向だ。あの勢いのままだとすると、確実にそこに落ちるだろう。」

「・・・・・・あっ」

シグマの言葉を聞いて、ヒムはしまったと言う顔と共に小さく声を漏らした。



さて、突然だがここは地獄。
文字通りの罪人たちが落とされる、監獄のような物である。
そこには、大輝が落とされた炎熱地獄の他にも様々な地獄がある。
その中の一つに血の池と言う地獄がある。
どのような地獄かと言えば、その名の通り血で出来た池の中に罪人を落とすと言う物である。


当然だが、血と言うのは液体である。これは、皆さんも解るだろう。
では、今の大輝の状況はどうか?
ヒムのヒートナックルを防御するため、ほぼ全闘気・魔法力を使い果たし、おまけに両腕が折れている。
そんな状態で、血の池などに落ちるとどうなるか?




「がっぼごぼぼぉっがっぼ」(たぢげて~)




・・・当然こうなる。




で、結局。




「はあぁーはあぁーはあぁー・・・し・・死ぬかと思った・・・」

血の池の中でもがいていた大輝だったが、駆け付けたヒムに引き上げられて、何とか一命を取り留めた。
この短い期間の間に炎熱地獄に血の池地獄と言う二つの地獄を体験した大輝。ある意味、奇跡的な体験をしたと言えよう。

「・・・うえぇ~体に血がべっとり付いて気持ち悪い~・・うッ!・・ぺっぺ・・やば、結構飲んじまったぞ、俺・・・」

・・・最も、この体験を羨ましがる人がいるかは解らないがな。



「うッ・・ッぅ・・・ベ・・・ベホマ・・・」

ヒムとの戦いで傷ついた体を癒すため、大輝はベホマを唱えた。
パアァンっと体全体を光が包む。
それに伴い、体の傷は塞がれ、折られた両腕の骨も直ってきた。


*ベホマ・・・上級回復呪文。ホイミやべホイミなどより魔法力を使用するが、その分効果は大きい。


「へえぇ、もうベホマは完璧に使いこなせるようになったじゃねいか。」

体を癒している大輝を見てヒムは感心したように言う。
ベホマは確かに怪我を完璧に治せる。しかし、やはり個人差と言う物がある。
体がバラバラにされようと一瞬で直す者もいれば、数分かけて漸く傷を癒す者もいる。
大輝のように骨まで直せるのは、そこそこの熟練者なのだ。

「・・・そりゃ、毎回毎回あんな目にあってれば、こんぐらいの事は出来ますよ。」

ヒムに褒められたのにも関わらず、大輝はご機嫌斜めだ。
そして、愚痴を漏らし始めた。

「ヒムさんのヒートナックルにシグマさんのライトニングバスター、ブロームさんの怪力には骨を粉々に砕かれ。
フェンブレンさんのツインソードピニングには体を刻まれ。
アルビナスさんのニードルサウザンドでは全身を焼かれ。
ハドラーさんの超魔爆炎覇では体が木端微塵になって・・・・」

後半に行くにしたがって大輝の声が重く低くなっていく。
その声には、悲しみより、怒りの感情が込められていた。

「うッ!」

当然、大輝はバタンッと倒れてしまう。
ベホマで腕を直していたのが完治したと同時に、残っていた魔法力を限界ラインまで使ってしまったようだ。

「なっさけねぇな~これぐらいで倒れちまうなんて。」

そんな大輝にヒムはそんな言葉をかける。
貶しているように聞こえるかもしれないが、これは彼なりの激励の言葉である。
その証拠に、その声にはこちらを気遣うような優しさが込められていた。
生粋の戦士である彼にとってはこれが限界であった。
しかし―――

「・・・・情けない・・・」

何気なく言ったヒムの言葉。
その言葉自体は自分を気遣う言葉だったが、その事に大輝は気付かなかった。と言うより、気付く余裕が無かった。
ふつふつとここ数日間に感じた理不尽さに対しての怒りが込み上げてくる。
そして、ここ数日、大輝は心の中に溜まっていたものを一気に爆発させた!!






え~此処からは、大輝の素直な思いをダイジェストでお聞きください。






「うがぁーーーー!!!なんすか!情けないって、こちだって真剣にやってるんすよ!!
つーかあんたら、どんだけチートボディを持ってるんですか!!?
なに!!?全身オリハルコンって!!なに、え、なにそれ!!どんだけ反則なんすかーーーー!!!」




「ヒムさん!!あんた全身オリハルコンって理解してます!!
ただの格闘戦でも、俺にとってみれば紙の盾で大砲の砲撃を防ぐような物なんですよ!!」

「お!まだまだ、元気があるじゃねいか。」




「シグマさん!!あんたは速すぎ!!何あの理不尽な速さ!!?全然追いつけなかったですよ!!
それに、それ!そのシャハルの鏡!!受けた呪文をそのまま相手に跳ね返す!!おまけに近接戦闘時には究極の盾にもなるって!どんだけチートアイテムなんすか!!?」

「シャハルの鏡は私の能力ではなく、ただのアイテムなのだが。」

「それでも俺にとっては脅威なんです!!」




「ブロックさん!!あなたも何気に理不尽の塊ですよ!!ただでさへオリハルコンで体が出来ているだけでも厄介なのに!!
その巨体・超重量を活かした圧倒的パワー!!俺!全エネルギーを回して防御したのに簡単に骨折れましたよね!!
しかも、技とか使わないで!ただ殴っただけで!!!」

「ブローム。」




「フェンブレンさん!!あんたはこの中で一番危険すぎ!!なに!!?全身の8割以上が刃物って!!?
オリハルコンで出来た刃物って、それだけでそこらの岩なんかスパスパ切れちゃいますよ!!実際俺の体も真っ二つにしましたよね!!
後で地獄の監視カメラで見た時、見えちゃいけない物が見えましたよ!!後、あんたジワジワ俺を追い詰めて楽しんすかぁーーー!!」

「ワシは楽しかったが。」

(このサディスト!!)




「次!アルビナスさん!!!」

「・・・なにか?」

「涼しい顔してますけど、あなたも相当なもんですよ!!あのニードルサウザンド!!ベギラゴンを針状にして放つって!!
あれのおかげで、俺が何回黒焦げになったと思ってるんすかぁーーー!!」

「・・・確か、18回と記憶していますが。」

「数えてたんすか!!?」




「ハドラーさん!!あなたはオリハルコンじゃないですけど、一番理不尽ですよ!!
模擬戦なんか、あんなの戦いですらなかったですよ!!いきなりの超魔爆炎覇で肉体そのものが吹き飛びましたよ!!
つーか、よくあの状態で再生できしたね!!監視カメラで見た時、暫く飯食えませんでしたよ!!記憶がなかったのが唯一の救いでしたよぉーー!!」

「貴様が望んだ事だろう。」

「そうですけど、やっぱり納得できませーーーーん!!」






魔法力を危険ラインまで使ったのにも関わらず、大輝は立ち上がり咆えた。
それは目の前の理不尽さに、現実に出来る唯一の反抗!
例え神が来ようと、例えどんな絶望を味わおうとも決して砕けない!!
肉体が滅びようとも、魂は最後の最後まで抗い続ける!!
この魂!!砕ける物なら砕いてみよ!!
そう思いを込めて、大輝は叫び続けた。
最後の最後まで、目の前の理不尽さに抗い続けた。


・・・・・要は、ただの愚痴である。









「ぜえぇーぜえぇーぜえぇー」

一通り言いたい事は終わったのか、大輝は肩を揺らしながら息を整えていた。
その目には、うっすらと涙が浮かんでいる。

「あ~大丈夫か?ほれ、水。」

そんな大輝を気遣い、ヒムが水を渡す。
一方的に愚痴を聞かされ鬱陶しく思ったが、さすがに此処まで来ると同情してしまう。
大輝は水を受け取り、一気に飲み干す。

「うぐうぐうぐ・・ぷは~・・・は~」

水を飲み、幾分か落ち着いたようだ。呼吸も落ち着いてきている。
そして、ポツリと一言呟いた。

「ヒムさん・・・地獄にも格差ってあるんですね。」

その声には哀愁が漂っていた。とてもじゃないが、二十歳を迎える前の青年の声音とは思えない。
まるで悟りでも開いた仙人のようである。








「お!いたいた!お~い、生きてるか?」

アクセルは大輝を迎えに来た。
遠くからでも確実に気が大きくなったのを感じた。どうやら荒療治は成功したようである。
そう判断したからこそ迎えに来たのだが・・・

「・・・アクセルさん・・・久しぶりっす・・」

(暗ッ!!!)

アクセルに返事した大輝。しかし、その状態は明らかに異常過ぎた。
暗い・・・暗すぎるのだ。まるで死期を悟った病人のようである。
影を背負い、キノコが今にも生えてきそうである。
一瞬本気で死んだと思ったアクセルだったが、頭にリングが無いことからその考えを振り払った。

(・・・まぁ、あんな思いをしてれば無理もないか・・)

アクセルの頭に大輝が暗くなった原因が浮かんだ。






大輝がここ数日間何をしていかと言うと、ハドラーとハドラー親衛騎団との模擬戦である。
これだけ聞けば、今までと変わらないと思うかもしれないが、そのやり方は普通ではなかった。
例えるなら、今までは幼稚園生が小学生と喧嘩するような物だった。無論、幼稚園生とは大輝の事である。
随分微笑ましいと思うかもしれないが、実際の問題はそうではない。
幼稚園生と小学生と言うだけで、かなり身体能力に差があるのだ。
そんなのが本気で喧嘩したら、どうなるかは言うまでもない。
では、今回の場合はどうだったか?
先ほどの例のように例えるとするなら、幼稚園生と世界チャンピオンが本気で戦うような物である。手加減なしで。
無茶な方法かと思うかもしれないが、正直これぐらいの事をしないと限界を超えるのを無理と判断したからである。
実際、今の大輝は地上世界の人間の限界を超える強さを身につけていた。
アクセルもその事を肌で感じていた。
しかし、当然だが幼稚園生と世界チャンピオンを戦わせるなど理不尽以外の何物でもない。
大輝もその事を感じて、少々鬱になってしまったようである。










(・・・・とりあえず、成功したから良しとするか・・)

鬱になろうとも荒療治が成功した事には変わりない。
アクセルは、この問題をとりあえず良しとした。一種の逃げとも言える。

「お~い。そろそろ帰るぞ~」

アクセルは帰る事を大輝に告げる。

「えッ!!」

するとバッと大輝は勢いよく顔を上げた。
その顔は、これでもかと言うほど笑みだった。ベタな表現であるが、周りに花が咲きそうな笑顔だった。
目の錯覚だろうか、背後に後光が見えた。

(そんなに帰りたかったんかいッ!!)

その後光を受けて、アクセルは思わず涙しそうだった。




「ほれ、これを付けろ。」

そう言って、アクセルは大輝に腕輪型のリミッターを渡す。
渡された大輝は、それを特に怪しむことなく付けた。
最早彼の心の中には疑う心などない。心ウキウキ、我が春来た!とばかりなのである。

「うッ」

しかし、そんな状態でもリミッターを付けたら体に変化は現れる。
体は重くなり、思わず倒れそうになるが、何とかその場で踏ん張った。

(ほ~そのリミッターを付けても倒れないか。どうやら、予想以上にうまくいったようだな。)

アクセルが渡したリミッターは今までより強力な物である。
当然、闘気も魔法力も今まで以上に抑えられる。
行き成り付けたのだから、てっきり倒れるかと思っていたアクセル。
しかし、その予想とは逆に大輝は踏ん張って倒れなかった。
やり方はどうあれ、ハドラー達に任せたのは正解だったようである。
アクセルは心の中でそう思った。

「ほんじゃまぁ、帰るとするか。」

大輝を伴い帰ろうとするアクセル、

「あ!ちょっと待って下さい。」

しかし、大輝が待ったをかけた。
大輝はハドラー達の方に体を向け、姿勢を正し。

「ハドラーさん、ヒムさん、シグマさん、ブロックさん、フェンブレンさん、アルビナスさん。ありがとうございました!!」

全員の名前を言いながら、大輝は頭を下げてお礼を言った。
どんなリ帰りたくなるような思いになろうとも、目の前の人達が自分を強くしてくれたのは事実である。
何気に全員の名前を言うのが律儀なとこである。
アンナ等の教育の賜物だろう。(戦闘以外での)



お礼を済ませた後、大輝はアクセルと共に地獄から帰っていった。













「・・・帰ったか・・・」

大輝が帰った方向を見つめてヒムは呟く。
その表情は何処となく残念そうである。

「残念かね?ヒム。」

そんなヒムにシグマが問いかける。
ヒムは、それに対し「別に」っとぶっきら棒に答えた。
シグマはさらに言葉を続ける。

「そう言うな。君の指導は、なかなか良かったよ。いっその事、何処かの軍隊の教官にでもなってみてはどうだ?」

大輝と一番模擬戦をしたのはヒムだった。同じ格闘戦を使う者同士であったためである。
そのやり方は、少々荒かったが、確実に大輝を強くした。さすが、己の肉体一つで激戦を潜り抜けただけの事はある。
シグマは、そんなヒムを見て何処かの世界の軍隊の教官になってみないかと提案する。

「・・勘弁してくれ」

しかし、ヒムはあまり乗り気ではないようで、微妙な表情をした。







ヒム達がそんな会話をしている傍らで、ハドラーは純粋に驚いていた。

(・・・あの小僧。耐え抜いたな)

大輝は確かに強くなった。しかし、それでも自分達からしてみれば、そこら辺の蟻同然である。
正直、あれだけ鍛えてこの程度の力しか身につけられないなら、さほど才能と言う物はないだろう。
しかし、耐えきった。これもまた事実である。
炎熱地獄からは這い上がり、自分達の扱きにも食らいついてきた。
それは、赤ん坊が世界トップクラスの格闘家の修行についてくるような物である。


人間の強さと言うのは、嫌と言うほど理解していたが、あれはまた別種の強さである。
今まで戦ってきたのは、大抵が誰かのためと言う、所謂正義の考え方の奴が多かった。
しかし、大輝の場合そのカテゴリーに入らない。
大輝の場合、正義だとか悪とかの考えの前に、生きると言うある意味純粋な思いである。

「・・・フッ」

純粋な思いと言うのは、時として人を信じられないほど強くする。
その思いで強くなった大輝と戦うのもまた一興。
ハドラーは、思わず小さな笑みを浮かべた。













あとがき

・・・あれ?なんかヒムが兄貴的な性格に・・

まぁ、作者のイメージの中ではヒムは誰かに教えるとしたら、こんな感じだと思うのですが・・・
ヒムって今思えば、大輝にとっては一番相性がいいですよね。
同じメラ系を使えて、格闘戦を得意とする。おまけに、人間と一番長く過ごした。
うん、ものすごい相性がいいですね。

ハドラー達との修行に関してですが、あまり細かく書きすぎるとかなり話数をとってしまうので、ある程度割合してもらいました。
それ以前に修行と言うより、命をかけたワンサイドゲームみたいな感じですけどね・・・

では次回。










[15911] 第二十二話(上)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/26 20:55
第二十二話(上)








“レティシア”


神々の一人。神鳥レティス様が治める世界。
豊かな自然が色濃く残り、四季それぞれに合った楽しみ方があります。
街からもその景色は一望でき、あなたの心を癒します。
さらに、長い歴史色褪せる事がない伝統工芸品。
昔から今に伝わってきた職人の技は正に巧み!
その職人の手から生み出される品々は素晴らしいの一言です。




「もぐもぐ・・なんか、観光地みたいですね。もぐもぐ・・・」

片手に肉や野菜を挟んだサンドウィッチのような物を食べ、片手にパンフレットのような物を持ち、大輝は呟く。

「・・・まぁ、レティシアの自然自身が観光地みたいなもんだしな。もぐもぐ・・・」

アクセルも、大輝と同じような食べ物を食べながら答える。







地獄から帰ってきた後、俺はアクセルさんの提案でこのレティシアって世界に来た。
今はパンフレット見ながら、肉とか野菜がパンに挟んであるサンドウィッチみたいな食べ物を食べながら街中を歩いている。
このレティシアってのは、パンフレット通りに自然が豊かな世界だった。


青々とした木々が立ち並び、鳥の鳴き声や野生の動物なんかが普通に見れる。
高い所から見た山の景色も綺麗で思わず見惚れてしまった。ここから夕陽を見たら絶対綺麗だろうな~
街中もそれほどごちゃごちゃしておらず空気も澄んでいる。建物なんかも木造建築が多い。
一見すると不便そうな世界で、活気とかはないように思ったけど、そんな事はなかった。
良くある過疎化した村みたいに荒んでおらず、若い人も結構多い。皆活き活きとしている。


どうやら自然とうまく付き合っている世界のようだ。なるほど、こう言った世界なら観光地みたくなってもおかしくないな。
正直言って、地上世界。少なくても、日本だと絶対にない場所だろうからな。
ライクベールみたいな科学技術が高い世界もいいけど、こう言った世界も俺は結構好きだな。





「で?アクセルさん、何しに来たんすか?まさか、観光に来た、ってことはないでしょう。」

俺はほぼ確信を込めて聞いた。この人が俺を連れていくのは絶対なにかある時だからな。
まぁ、そのおかげで色々助かったりするんだけどな。

「もぐもぐ・・・ゴックン・・うぐうぐっ・・・ふ~」

アクセルさんは手に持っていた食べ物を水で流しこんで、一息ついた後説明しだした。

「最近レティシアで奇妙なモンスターが暴れているって話を聞いてな。」

「奇妙なモンスター?」

「そうそう。それで、そいつに討伐依頼が出されていてな。なら、ちょうど良いからお前も参加させてみようと思ってな。お前だって今の自分の力を把握しきっていないだろ?自分の実力を把握できて、おまけに金を貰える。正に一石二鳥って奴だ!」

・・・アクセルさんってやっぱ結構洞察眼あるんだな。
アクセルさんの言う通り俺は自分では強くなったと感じているんだけど、今一その強さってのが良く把握できなかった。
と言うより、周りにいる連中が強すぎて比べるのすら馬鹿馬鹿しい。
けれど―――

「討伐ね~」

正直あまり乗り気がしない。
実力を把握するのが大事ってのは解るけど・・・

「大丈夫だって」

討伐の参加するかどうか迷っていた俺にアクセルさんが話しかけてきた。
俺はアクセルさんの方に顔を向けて、耳を澄ます。

「そのモンスターは今のお前のレベルで十分対応できるし、いざという時は、この世界の軍がサポートしてくれるから。・・・ほれ、行くぞ。」

アクセルさんが歩き出す。

「・・・う~ん・・」

ちょっと迷ったけど、このままだと、もっと厄介な事に巻き込まれそうなので後について行った。









「あら、アクセルさん。お久しぶりですね。」

大輝とアクセルを出迎えた人物は女性だった。
パープル色の美しく艶がある長髪で、見た目は二十代後半ぐらい。
優しいと言うより、慈愛と言う言葉が似合う女性だ。

「お久ぶりですぅ!レティスすぅぁぁーーーんっ!!」

アクセルはその女性レティス・・・即ち、この世界を治める神に向かって伝説の怪盗のダイブをかました。
さすが世界最強の何でも屋である。この男にとっては、神云々など関係ないのだろう。
ある意味、神をも恐れない豪胆な人物とも言える。


伝説の怪盗のダイブをかましながらレティスに向かっていくアクセル。
30メートルはあったかと言う距離を一瞬で詰めてしまった。
そして、後数センチと言う距離まで近づいた時、

「何をしてるんだ!!貴様は!!」

「ぐぉえっ!」

何者かに弾き飛ばされてしまう。アクセルはそのまま壁に激突した。

「まったく!お前は・・・」

アクセルを弾き飛ばしたのも女性だった。
槍を持ち、レティスと同様腰まで伸ばした美しく艶がある金色の髪。
見た目は二十前後、目は強い意志を宿した凛々しいと言う言葉が似合う女性だ。

「エアリス、乱暴なのはあまり感心しませんよ。」

レティスは、その女性。エアリスに向かって注意する。

「はh・・・レティス様はもっと危機感を持って下さい!!」

それに対し、エアリスはレティスに向かって少々声を荒げて言う。
あのままではアクセルはレティスに抱きついていたので、当然と言えば当然である。

「いって~・・・エアリス!!人の恋路を邪魔するとは何事か!!?これはもう体で償ってもらうしない!!っと言うわけで、エアリス~♪」

そう言って、証拠にもなくエアリスに同じダイブをかましながら向かっていくアクセル。

「ふんっ!」

「ごげっ!」

しかし、当然の如く再びエアリスに弾き飛ばされるアクセル。

「貴様は~先ほどからやっている事が滅茶苦茶だぞ!!いい加減その性格を直せ!!」

弾き飛ばしたアクセルに正論をぶつけるエアリス。
しかし、アクセルも立ち上がって反論する。

「ないを言うか!!美人に向かってくのは男として・・・いや、雄としての本能!!即ち、こうして俺が美人に向かってくのはこの世の真理なのだ!!」

胸を張りながら答えるアクセル。確かに正しいと言えば正しい。
しかし、それを納得するかどうかは人それぞれ。
エアリスは納得できなかったようで反論する。

「ならせめて、もっと誠実さを持って接しろ!!見境なく女性にナンパするな!!」

「ふっふっふ・・・甘い。甘すぎるぞ!!エアリス!!この世には、ハーレム、姉妹丼、母娘丼などと言う言葉があるのだ!!即ち、それは男は皆複数の女性を愛したがっていると言う事!!つまり、俺が複数の女性に向かっていくのは何ら不思議ではないのだ!!」

エアリスが自論をぶつければ、アクセルも自論をぶつける。
二人の意見はある意味でどちらも正しい。結局、暫くの間二人は自論をぶつけあっていた。




「・・・・それで、要件は何ですか?アクセルさん。」

暫く互いに自論をぶつけていたアクセルとエアリスだったが、レティスの仲介により場が静まった。
場が静まったのを見て、レティスはアクセルに要件を問う。

「ここ最近、レティシアで暴れているモンスターがいるって聞いたんで、そいつの討伐に参加させたい奴を連れてきたんですよ。」

アクセルは大輝を指さしながら答える。

「そうですか・・・しかし、こちらとしては助かるのですが、危険を伴いますよ?」

レティスは眉を曲げ、一度大輝に目を向けた後忠告する。

「大丈夫ですって!こいつも、自分の身のほどは弁えているし、そこそこ出来ますから。な?」

アクセルは、大輝に確認の意味で大輝の方に顔を向ける。

「まぁ、そこそこぐらいなら。」

大輝は頬を掻きながら答える。
アクセルは、その答えを聞いて満足したようにレティスに顔を向ける。

「まぁ、そう言うわけだからt「待て。」・・・なんだよ?エアリス?」

大輝の参加をお願いしようとしたら、エアリスが横やりを入れた。
横やりを入れられて、自分の言葉が遮られたせいかアクセルは少々不機嫌そうにエアリスに顔を向ける。
エアリスはそれを気にせず、厳格な態度で話す。

「これは私たちレティシアの問題だ。部外者が口を出さないでもらおう。それに、そちらの青年はあまり乗り気でないように見える。そんな気持ちで来られたら、こちらが迷惑だ。」

厳格の態度を崩さず、淡々と告げるエアリス。
その言葉にレティスは失笑をし、アクセルは小さなため息をついた。

(・・・たく、相変わらずプライドが高い奴だな。まぁ、それだけ責任感が強いんだろうけど。それに・・・)

チラッとアクセルは大輝の方を見る。
そこには、相変わらずただつっ立っているだけの大輝がいた。
その様子は、とてもじゃないが討伐と言う言葉とは似つかわしくない、何処にでもいる青年だった。

(口では厳しい事言ってるけど、エアリスはエアリスなりにこいつの事気にかけてくれてるんだよな~・・・でも・・・)

そう思うアクセルだったが、こちらもハイそうですかっと退く訳にはいかない。
アクセルは再び口を開こうとすると、

「別にいいんじゃない。エアリス。」

後ろから自分を肯定する返事が返ってきた。




「!!!」

「・・・・・」

声に反応して、大輝は驚きながら、アクセルは極めて冷静に後ろを振り返った。

「は~い。こんにちわ♪」

そこには、一人の人物が立っていた。
エメラルド色の髪で、パッとみ男か女か解らない中世的な顔立ちに声。
外見年齢は十代後半に見える。

(嘘だろ・・・すぐ後ろにいたのに気付かなかった・・・)

自分は強くなった。それは間違いない。
しかし、そんな今の自分でもすぐ後ろにいたのにも関わらず全く気付かなかった。
その事実に軽くショックを受ける大輝だったが、今更なので特に気にするのはやめた。

「シンク・・・気配を消して近付くのはやめろ。ビックリするから。」

「あはははっ・・・ごめんね♪」

アクセルは、その人物。シンクに向かって注意をする。
それに対し、シンクは見る者全てが見惚れるような笑顔を浮かべて謝罪の言葉をする。

「別にいいとは、どういう意味だ。シンク。」

エアリスは、未だにニコニコと笑顔なシンクに向かって先ほどの言葉の意味を尋ねた。
尋ねられたシンクは、エアリスの方に顔を向けて答える。

「どう言う意味って、そのまんまの意味だよ、エアリス。その世界の軍で解決できない、もしくは人手が足りない時は、他世界から援軍を送ってもらうのなんか別に珍しい事ではないと思うけど?」

「しかしッ!」

シンクの言葉に反論しようとするエアリス。
しかし、シンクはそんなエアリスを無視して大輝に近付いて行った。

「ふ~ん・・・」

大輝に近付いたシンクは、まるで品定めでもするかのよう見つめた。

「な・・・なんすか・・・」

その目線に耐えきれなくなったのか、大輝は少しばつが悪そうな表情をする。
しかし、やはりシンクに気にした様子はなく大輝を見つめていた。
頭から足のつま先まで体全体を見た後、大輝の手首についている腕輪に目がいった。

(リミッター付きでここまでだとすると・・・肉体闘気量は約500万前後・・魔法力量は380万~400万・・総合戦闘力は720万ってところかな・・・・)

冷静に大輝の総合戦闘力を分析するシンク。
その目は、とてもじゃないが人間を見つめる目ではなかった。
例えるとするなら、獲物を狙う鷹と言ったところだろうか。

「うん♪」

一通り大輝を見つめ終わったシンクは再び笑顔となった。とてつもなく友好そうな笑顔だ。
そして、ポツリと一言呟いた。



「君・・・おいしそうだね・・・・」









――ゾクリ――

「!!!!!!ッ」


“おいしそう”

そうシンクに言われた瞬間、大輝は何かとんでもない悪寒に襲われた。
鳥肌が立ち、体に何かが入ってくるような気持ち悪い感覚。
別に気に当てられたわけではない。まして、殺気をぶつけられたわけでもない。寧ろシンクの表情は穏やかで、とても友好そうな態度だ。
だが、何かが警告している。それが、本能なのかそれとも別の何かなのかは解らない。
しかし、確かに何かが目の前の存在を危険と警告している。

(なになになになになに!!この人!!)

その言いようのない何かに襲われた大輝は、すぐさま後ずさりアクセルの後ろに隠れた。
そうしなければ、自分がどうなっていたのか解らなかったからだ。

「お~い。脅かしてどうするんだよ。」

自分の後ろに隠れた大輝を呆れた目で見つめながら、アクセルはシンクに注意する。

「あははははっ・・・ごめんね♪人間君♪」

注意されたシンクは、笑みを浮かべながら大輝に謝罪をした。しかし、その声音は何が楽しいのか明るく、とてもじゃないが罪悪感を感じているようではなかった。
その後、シンクはエアリスに近付き話しかけた。

「エアリス。せっかく向こうが協力を申し込んでくれているんだから、協力してもらおうよ。」

「しかし、あの青年はどう見ても軍人には見えない。いくら力が強いて言っても、それだけでは・・・」

エアリスは何も大輝の力に気付かなかったわけではない。
彼女とて、ある程度の力の把握ぐらいはできる。
しかし、大輝が纏っている雰囲気と言うのはどう見ても軍人ではない。どちらかと言えば、民間人に近いのだ。
民間人を自分達が抱えている事件に巻き込む訳にはいかない。自分達の不手際は自分達が解決する。
そう思ったからこそ大輝が討伐に参加するのを渋っていたのだ。
どうやら、かなり責任感は強い性格のようである。

「大丈夫だよ・・僕の情報によると、あの子バーンパレス親衛隊員みたいだから。」

「なにッ!!?」

「と言っても、まだまだ新米みたいだけどね。」

シンクから聞かされた情報にエアリスは目を見開き驚く。
バーンパレス親衛隊。それは即ちこ神々の最高神であるバーンを守る最強の部隊と言う事。
新人とはいえ、その強さはかなりの物になるだろう。
しかし―――

「・・・本当か?お前の情報を信じないわけではないが、どうも・・・」

エアリスは、信じられないのか首を傾げた。どう見ても大輝がそんな大層な役柄に就いているように見えないからだ。
これは当然と言えば当然である。なぜなら、バーンパレス親衛隊と言うのは大輝の身分を証明する偽造である。
実際に大輝が親衛隊に入った訳ではないのだ。




シンクがエアリスを説得している一方で・・・





「アクセルさん!!なんすか!!?あの人!!?」

大輝は、シンクについてアクセルに聞いていた。
よほど危険と感じたようである。

「とりあえず、順番に説明すると。あの、紫色の髪の人が、この世界を治めるレティスさん。見ての通り美人で優しく神様たちの中では人気があるぞ。ちなみに、上から9g「いや、それはいいっすから」・・・」

余計な事を言いそうになったアクセルの言葉を大輝が遮った。
大輝の方に批判的な目線を向けるアクセルだったが、それほど気にした様子はなく、説明の続きを話す。

「まぁ、別にいいけどよ・・・んで、向こうに金髪の奴がエアリス。レティスさんの子供な。」

そう言われて、大輝はエアリスとレティスを見比べる。
片方は優しそうで、片方は厳しそうだったが、顔の細部などは似ていた。

(なんか、ものすっごい美人な親子だな。モデルって言われても納得するぞ。)

二人を見比べて大輝はそう思った。
アクセルの言う通り、なんだかんだ言って男が美人に弱いのは自然の法則らしい。
レティスとエアリスを見比べている大輝に、アクセルは大輝が一番気にしている人物の説明をする。

「で、お前においしそうって言ったのが、シンク・ランティス。・・・一応言っておくが、あいつは男だからな。」

「・・・・あ!なるほど。」

アクセルの説明を受けた大輝はポンっと手を叩いて納得がいった表情になった。

「なんだよ?なるほどって?」

「いや、だからアクセルさん、飛びかからなかったでしょ。男だから。」

シンクの見た目はどちらかと言えばボーイッシュな女性に見える。
それも、そこら辺にいる女性より遥かに顔が整っている。そっち系の趣味の人なら、涎を垂らしそうなぐらいだ。
これほど整った顔立ちなら、普段のアクセルなら先ず間違いなくナンパする。
しかし、ナンパをするかは愚か、声すら掛けなかったアクセルに疑問を抱いた大輝だったが男だと聞いて納得した。

「お前な~」

そんな理由で納得するのもどうかと思い、アクセルは大輝に批判的な目線を送る。
しかし、大輝はそれほど気にした様子はなく、アクセルに質問する。
それ程気を使わなくて済むアクセルは、大輝にとってはこの世界で一番フレンドリーの関係みたいだ。

「それで・・・その、シンクさん。・・こう、なんて言ったらいいか・・・その」

言いずらいのか、所々言葉が切れている。
アクセルは、大輝が何を言いたいのか気付いたのか、逆にこちらから問いかけた。

「・・・危険。って言いたいんだろ。」

「・・・・・・・」

アクセルの言葉に大輝は黙ってしまう。
初めて会った人にそんな思いを抱いたのはどうかと思ったけど、実際にそう感じたのは事実だ。

「別に、お前が思った事はおかしいことじゃない。初対面であいつにおいしそうって言われたら大概の人間はそう思うもんだ。」

黙ってしまった大輝にアクセルは話しかける。

「あいつの“おいしそう”ってのは比喩表現でなく、そのまんまの意味なんだよ。鷹が鳥獣を襲って捕食するように、シンクの場合自分が捕食したい相手に向かって、おいしそうって言う癖があるんだよ。
つまり、お前はシンクにとっては、そこら辺にいる獣と同じように捕食する獲物ってことだ。獲物が捕食者を前にして怯えるのは自然なことだからあまり気にするな。」

「き・・気にするなって、十分危険じゃないですか!」

アクセルの言葉を聞いて、大輝はますます不安になってしまう。
直接的な強さは解らないが、少なくても声をかけるまでその存在に気付かなかった。
本当に捕食されてしまうのでは。大輝は本気で我が身を心配し始めた。

「大丈夫だって」

不安になった大輝にアクセルは話しかける。

「あいつがおいしそうって言うのは、あくまでも癖みたいなものだ。本当に捕食する訳じゃない。・・・こっちから、手を出さない限りはな。」

そう言うアクセルだったが、

(・・・本当かよ)

未だに大輝の心配は続いていた。






それから、暫くして・・・






「コホンッ・・・それでは、討伐対象について説明しよう。」

エアリスは咳払いをしながら説明に入った。未だ渋っていたがシンクに説得されたようだ。

「先ずは、これを見てくれ。」

空中に大型のモニターが現れる。

「これが今現在のレティシアの世界地図。そして、地図上に示されている赤い点が、ここ最近この世界で暴れ始めた奇妙なモンスターが出現した日付と場所と時間だ。」

モニター上にはレティシアの様子が描かれている地図が映し出されて、所々に赤い点が数字と主に映し出されていた。

「なんか規則性が無いな。」

アクセルは地図上に示された赤い点を見ながら呟く。
本来モンスターが暴れる要因は様々だ。
元から凶暴な性格の者もいれば、住処を失って暴れる者、他種族との間に何かしらのトラブルがあったなど様々だ。
しかし、そう言った奴らには必ず何かしらの規則性があるのだ。
だが、目の前にはその規則性と言う者が無い。バラバラなのだ。
同時刻に同じ場所に現れたと思えば、全然正反対の方向に現れる場合もある。一匹で現れることもあれば、数匹で現れることもある。
規則性と言う規則性が全くない。

「聞いた話だと、お前達の軍でも対応しきれないって聞いたけど、本当か?」

アクセルは、この事が一番腑に落ちなかった。
仮にも此処は神の一人レティスが治める世界。常備している軍もかなりの物になるはずだ。
それをもってしても対応しきれないなんて・・

「対応しきれない・・・と言うより、奇妙なのだ。」

アクセルの質問にエアリスが答える。

「始めに現れた時、我々はすぐ感知できた。何の前触れなく現れたのは気にはなったが、とりあえず近くにいた警備隊に様子を見に行かせたのだが・・・」

「・・・煙のように消えたってことか。」

アクセルは地獄で聞いた情報を言う。エアリスはそれに肯定の返事をする。

「ああ・・・お前の言う通り、警備隊が着いた瞬間まるで煙のように消えてしまったのだ。無論、その後周辺を調査したが、結局なにも出てこなかった。
それからはこの繰り返しだ。現れては消えてまた現れてと・・・これは、明らかに自然に出現したモンスターではない。」

「だろうな」

仮にそう言った能力を持つモンスターが自然に生まれたとしても、態々暴れて自らの身を危険に及ぼす理由がない。
奴らだってこの世界で最も強い力を持っている者も判別ぐらいはつく。特に自然に生きている野生のモンスターならなおさらだ。

「・・・そう考えると、誰かが裏で手を引いてるってことか・・」

アクセルは自分の頭に浮かんだ考えを言う。

「我々も何者かがか裏で手を引いていると思った。しかし、仮にそうだとしてもそいつの意図が見えてこない。見てくれ。」

エアリスと言葉と共に、モニター上の画像が変わる。

「今映し出されているのはモンスターが暴れた場所の詳細なのだが、正直こんな所で暴れさせる理由がみえてこない。全くの無駄になるだけだ。」

映し出されたいるのは、特に変哲もない森や泉だった。

「これが、街や重要な自然遺産などならまだわかる。しかし、これらは特にこれと言った物はない。」

街などの重要な拠点なら、何かしらの意図があると判断できる。
しかし、モンスターが暴れまわった所は人も滅多に寄り付かない場所だった。

「テロ行為・・・って割には幼稚すぎるな。精々、悪戯って言ったところだな。」

アクセルが言った事は的を得ていた。
街などの重要な拠点があれば、そう考えただろう。遠くでモンスターを暴れさせたのも、街から警備隊を離す目的があると思っただろう。
しかし、今回の場合そんな物など全くない。
暴れた場所は重要な拠点でもないし、警備隊を離すといっても高々数匹のモンスターでそれ程大きな効果は期待できそうにない。
全くの無駄なのだ。

「いくら悪戯だろうと、性質が悪すぎる。そのせいで、レティシアを含めた各世界に広く軍を常備させなくてはならなくなった。今のところ明確な被害が出ていいないとはいえ、放っておくわけにはいかないからな。
最も、そのせいで人手がたらなくなってしまたのだがな。全く、頭が痛くなることばかりだ。」

何処に出現するか全くのランダム。そのために軍を広く、尚且つ各世界にバランスよく配備させなくてはならない。 
エアリスはその事を考えて、頭を押さへ忌々しそうに言葉を漏らした。








「此処までが主だった説明になる。何か質問は?」

エアリスは大輝に目を向けて言う。
その整った顔つきに一瞬見惚れてしまった大輝だったが、特になにもなかったので首を横に振った。

「それで、お前はどうするんだ?アクセル?私としては、お前にも手伝ってもらえると助かるのだが・・・」

エアリスはアクセルに問う。

「あ~パスパス。俺は街にでもいた方が気が楽だからな。」

それに対し、アクセルは手をパタパタと振りながら否定の意を示した。
エアリスは、「そうか」っと少し残念そうな表情になった。

「良いではないですか、エアリス。」

レティスがそう言う。

「正直アクセルさんのような方が街にいてもらった方が安全です。」

仮にも神界トップクラスの実力者が街にいれば、それだけでかなり安全性が増すだろう。

「アクセルさん。私からもお願いできますか?」

レティスは、誰もが見惚れる笑顔でアクセルにお願いする。

「もっっっっちろんです!!レティスさん!!もしもの時は、この世界最強の何でも屋!アクセル・ヴァイスハイトにお任せ下さい!!」

当然、この男がそれを断るはずもなく、すぐさま了承した。






「本当にいかないんすか?アクセルさん?」

「ああ。俺は街にいるよ。第一お前の実力も確かめる一環でこの依頼を受けたんだ、俺が参加してどうするんだよ。」

大輝とアクセルは街の入り口でそんな会話をしていた。

「そろそろいいか?」

そこにエアリスが来て話しかける。
街の入り口にはエアリスを含めて、この世界の軍人が何人か集まっていた。

「それにしても、神格者であるお前直々が討伐するなんてな。」

アクセルは驚いたようにエアリスを見つめる。
神格者が直々に出向くなど、そうそうあるものではないのだ。

「街の守りは今いる警備隊で十分だ。いざという時は、レティス様やお前がいるからな。」

そう言ってエアリスはアクセルに目を向ける。性格はどうあれ、実力と言う意味では信頼しているようだ。

「それに、今回の事はいくらなんでも悪ふざけにしては度が過ぎる。一刻も早く、皆の不安を取り除かなければな。」

エアリスは槍を見つめながら呟く。強い意志を含んだその声は、正に弱きものを守る騎士のようだった。

「青年。君も十分に注意してくれ。危険と感じたら、無理に戦おうとせず逃げろ。」

「は、はい。」

厳格の態度で話すエアリスに思わず畏まった返事をしてしまう大輝。
エアリスは大輝の返事を聞いた後、満足そうに頷き、何かの機械を渡した。

「ここが君に捜索してもらいたいポイントだ。よろしく頼むぞ。」

機械には、レティシアの地図と大輝の捜索ポイントの詳細が映し出されてた。小型のナビのようなものらしい。
大輝にそのナビを渡した後、エアリスは他のメンバーの方に向き直り、

「いいか!これ以上奴らに我らレティシアの大地を汚さすな!!粉骨砕身の思いで事に当たれ!!」

「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」

何処までも強く、何処までも勇ましい声で号令した。
隊員達もその思いに答えるように勇ましい声で答えた。

(す・・・すげ~)

その迫力に思わず称賛してしまう大輝。

「よし・・・・散!!」

エアリスの合図と共に隊員たちはそれぞれの担当ポイントに向かって飛び立った。
エアリス自身もそれを見送った後、すぐさま飛び立っていった。





「ほれ。いつまでも呆けていないで、お前もさっさといけ。」

未だに驚いている大輝を諭すアクセル。

「・・・あ・・・えっと・・・はい・・」

アクセルに諭されて、正気に戻った大輝も自分の担当ポイントに向かって飛び立った。

(・・・・俺、場違いじゃね・・)

今まで味わった事のない空気のため、困惑する大輝だった。





「・・・・行ったか・・」

アクセルは大輝が飛び立った方向を見つめて、そんな言葉を漏らした。
そして―――

「そんじゃ・・・俺も・・・」

クルッと振り向き、アクセルは街の中に消えていった・・・









あとがき

今回は新たな神、レティス登場の回でした。
元ネタは、ドラゴンクエストVIII に出てきた神鳥レティスです。

さ~て、討伐任務に参加?した大輝。果たして何が出てくるか・・・

では次回。






[15911] 第二十二話(下)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/06/07 15:23
第二十二話(下)










え~どうも、何の因果か討伐依頼を受けた斎藤大輝です。
ただいま、青々として森の草木を掻きわけながら討伐対象のモンスターを探してます。
けれど、

「・・・見つかんね~」

思わず口から愚痴が漏れ出す。
森に着いた後、とりあえず周辺を捜索したが結果は0。何の進展もなし。
時々気配を感じるとはいえ、全部野生の動物ばっか。モンスターのモの字もない。

(つーか、こんなモンスターどうやって探せばいいんだよ。)

俺はナビを操作して今回の対象の情報を映し出し、改めて今回の討伐対象の情報を確かめる。
そこに映し出された情報は、


1、何処に現れるのか全くのランダム。

2、出現するまで、その反応を感じさせない。

3、いざ遭遇すると煙のように消え去る。

4、実際に会った者の証言によると、明らかに普通のモンスターと比べると異質すぎた。


と言う、要は見つけられるかどうかは運次第。

「・・・・どうするんだよ・・」

少しは疲れた声で呟く。
何処に現れるのか解らない、しかも、出現するまでこちらに反応を感じさせない。
おまけに、会ったら会ったで迅速に対応しなくてはならない。
・・・どんだけ厳しいんだよ、これ。


そもそも、俺がこんな仕事する事事態場違いじゃね?
自分の実力を把握するために討伐任務を受けるのはまだ解るよ。
しかし、態々この世界の軍と合同でやる必要はあったのかな?
つーかそれ以前に、実力を把握するだけなら他の方法でも良かったんじゃないか?
そんな考えが浮かんだけど、すぐ消した。
どっちにしろ自分の実力を把握するのは決定事項みたいだったし。下手したら誰かとの模擬戦をやらされるかもしれないしな。

(・・・それだったら、まだこっちの方が楽だな・・・)

結局、この仕事の方がまだ楽と言う結論になった。
あの人達と模擬戦するぐらいなら、モンスターの討伐の方が遥かに楽だ。

「・・・行きますか・・・」

一度周りの木々を見渡し、俺は再び森の中に入っていった。








鬱蒼と茂った森の中を只管進む大輝。
森の中は、まだ明るいにも関わらず太陽の光が遮られ薄暗い。
大輝が歩くたびにザッザッと草が踏みつぶされる音が辺りに響き渡る。時々枝を踏みつぶした甲高い音も響いた。
人の手が入っていない森の中を歩くのは、それだけで不気味だ。
辺りから聞こえてくるのは、野生の鳥の鳴き声や獣の唸り声だけで、相変わらず討伐対象のモンスターの姿は見えなかった。

「・・・・・・」

唐突に大輝を歩くのをやめ、その場に佇んだ。

「・・・・・・」

無言のままその場に佇む大輝。
草を踏みつぶす音が聞こえなくなり、あたり一帯が静寂に包まれる。
遠くで、鳥の鳴き声や獣唸り声のような物が聞こえるが、不思議と大輝の耳はそれを捉えなかった。
まるで此処だけ世界から切り離されたようだ。
そして―――


「ッ!!」


大輝は後ろに向かって上段蹴りを放った。


――ガンッ――


返ってきたのは、虚しく空を切る風切り音ではなく、何か硬い物とぶつかった鈍い音だった。

「つぅ!」

大輝はその衝撃に耐えきれず、後ろに弾き飛ばされてしまう。
その後、さっきまで大輝が立っていた場所に砂煙が舞う。

「な・・・なんだ!!?」

大輝は体勢を立て直し、襲撃者を確かめようと目を向けた。
注意深く舞い上がる砂煙を睨みつける大輝。やがて、徐々にだが砂煙が晴れていった。
そこには―――


プロテクターを体につけ、剣と楯を持った二足歩行のドラゴン。

「グルルルルッ!」

リザードマンがこちらを睨みつけていた。


*リザードマン・・・剣と楯を持ったドラゴン族の戦士。中級モンスター。







「グアアアアッ!!」

リザードマンは唸り声を上げ、持っている剣を上段に構えながら大輝に襲いかかる。

(は・・・速い!!)

思っていたよりも速いその動きに一瞬目を見開いた大輝だったが、地獄で出会ったハドラー達に比べれば遅かった。
幾多の強敵達と戦ってきた大輝の目はそれを捉え難なく回避した。
大輝は一度距離を取り冷静に相手を観察する。

「グルルルッ!!」

リザードマンは相変わらず此方を睨みつけていた。
その目には殺意という感情がありありと見えた。
これは別におかしいことではない。人に慣れていないモンスターならこれぐらいの事はざらにある物だ。
しかし、目の前のリザードマンはそれを差し引いたとしても異常だった。
理性と言う理性が無い。まるで、殺意と言う名の物がモンスターの殻を被っているようだった。
あまりにも異質すぎるのだ。

(なるほど・・・異質・・か・・)

大輝の頭に今回の討伐対象の情報が思い出される。
確証はないが、目の前のモンスターがそうなのだろう。
何が異質かと言葉で語れ。と言われたら、どう語っていいのか解らない。
しかし、何かが確実に違う。
真っ白な紙に黒い点がポツンとある様な、そんな違和感を目の前のモンスターから感じた。




「ガアアアアァ!!」

再び、リザードマンが大輝に剣で切りかかる。

「よっと」

大輝はそれを軽く跳んでかわす。
目標を失った剣はそのまま地面に激突し、大地に罅を入れた。

(・・・なんで消えねぇんだ?こいつ?)

討伐対象の特徴として、遭遇したら煙のように消えるとあった。
しかし、目の前のリザードマンは消えるどころか自分から襲いかかってきた。
疑問に思う大輝だったが、相手がこちらに敵意を持っているのは事実。
降りかかる火の粉は振り払うのみ。大輝は、そう結論付けて反撃に移る。


「ふんっ!」

上空からリザードマンめがけて蹴りを放つ大輝。
リザードマンは剣を振り下ろしたままの姿勢だった。
大輝は頭部めがけて勢いよく攻撃したが、

「ッ!か・・・かってぇ~」

リザードマンの盾に阻まれてしまう。
盾に阻まれたため一瞬だが、大輝は空中で静止してしまう。一瞬だがそれは確実な隙となる。
リザードマンはその隙を見逃さず、地面に振り下ろしていた剣をそのまま大輝めがけて振り上げた。

「ちッ!」

振り上げられた剣を避けようとする大輝。しかし、完璧に回避するのは不可能と感じ、闘気を集中させた腕で剣を弾いた。
大輝は盾を蹴り再び距離をとる。

「!!!」

盾を蹴って再び距離をとった大輝は、自分の腕を驚嘆した表情で見つめていた。

(切られている・・・)

大輝の腕は僅かだが切られて赤い血が滲んでいた。
普通、闘気を通した体はそれだけで刃物を寄せ付けない強靭な体となる。
例え、相手がオリハルコン等の伝説級の武器を持っていたとしても今の大輝の体には並の戦士では傷を付けられない。
おまけに、目の前のリザードマンが使っているのは、ただの鉄製の剣と盾。これでは傷を付けるは愚か、触れて瞬間折れてしまうだろう。
しかし、リザードマンが持っている剣と盾は折れるどころか、欠けてすらもいなかった。


闘気は武器に込めれば、それだけでただの銅の剣でも鋼鉄を引き裂く事が出来る武器に変わる。
無論、使いての闘気が大きければ大きいほど、より強靭に強化できる。
そこから導き出される答えは一つ。
目の前のリザードマンは自分とほぼ互角の闘気を持っていると言う事。
自分とほぼ互角の闘気で強化されたため、鉄製の剣は大輝の体に傷つけ、盾は大輝の攻撃を防げたのだ。

「・・・互角って・・・そんなのありかよ・・・」

あれだけ必死に修行したのにも関わらず、目の前のリザードマンと互角と言う事実に若干ショックを受ける大輝だった。





リザードマンが剣を疾風の如き速さで切り掛ってくるが、大輝はそれを難なくかわしていた。
いくら自分に傷つけられると言っても、致命傷に入らなければどうという事ない。
大輝は既にリザードマンの動きを見切っていた。

(さ~て・・・どうすっかな・・)

大輝は考える。傷つけられた時は驚いたが、戦って見ると目の前のリザードマンはそれほど強くなかった。
自分が落ち着いて戦えば、時間は掛るだろうけど倒せる相手だった。

(せっかくだから、あの技を試そうかな?・・・でもな~)

この機会に地獄で習った技を試そうとする大輝。(かなり余裕はあるようだ)
しかし、周りを改めて見ると、木・木・木と何処まで続く緑だった。

(こんな所であの技を使ったら、間違いなく森が大火事になるし・・・よし!)

「せい!」

大輝はリザードマンの脇腹をめがけて蹴りを放つ。

「グゥ・・」

リザードマンは顔を歪めながら吹き飛ぶ。しかし、体をクルッと回転させながら地面に着地した。
そして、大輝の方を睨みつけるが・・・

「グゥ?」

そこに大輝の姿はなかった。
その代わり、

「おりゃあああああああぁぁ!!」

と言う遠ざかって行く声と共に、地面を踏み砕く音を轟かせながら砂煙が舞っていた。

「・・・・・・ガァ!」

その光景に一瞬呆けたリザードマンだったが、すぐ正気に戻り大輝を追って行った。






森の中を駆けていく大輝。時々、後ろを気にしながらリザードマンがついてきてるか確かめる。
やがて、森から抜け広い原っぱに出た。

(・・・ここなら・)

大輝はその場で急停止をした。地面を削りながら、体を反転させてリザードマンを待ち受ける。

「ガアアアアァァ!!」

リザードマンは森の木々を吹き飛ばしながら現れた。

「グルルッ!」

大輝と距離をとり、こちらを睨みつけるリザードマン。
相変わらずその目には理性と言う物が見えなかった。

「・・・・・」

大輝は、そんなリザードマンを警戒しながら、地獄のハドラーから伝授された技を使おうとしていた。



「メ・・・」

大輝は人差し指を立てた。すると、その指先に炎が生まれた。

「ラ・・・」

同様に中指を立て、炎が灯される。

「ゾー・・・」

薬指と小指を同時に上げる。例の如く、炎が灯された。

「マ・・・!」

最後に親指を立て、片手全ての指に炎が生み出された。



「ガアァ!」

リザードマンは地面を強く蹴り、大輝に襲いかかる。
蹴った衝撃で地面を陥没させるほどのスピードから生み出される破壊力をかなりの物だ。
大輝はそれを見つめ、距離を測る。
そして、リザードマンが射程距離に入った瞬間、炎が灯された片手を引き・・・

「フィンガー・フレア・ボムズ!!」(五指爆炎弾)

リザードマン目がけて、メラゾーマを五発同時に放った。




大輝が放ったフィンガー・フレア・ボムズはリザードマンを正確に捉え、リザードマンは苦しみの声を上げるまでもなく炎に包まていった。

「・・・すっげ~威力」

フィンガー・フレア・ボムズの威力を見て感心する大輝。
五発同時のメラゾーマはただの五連弾とは違い、互いが互いの威力を高めると言った相乗効果により予想以上の破壊力があった。

「・・・・って!ボーっと見てる場合じゃない、消化消化!!」

その威力を唖然と見つめていた大輝だったが、我に返りヒャドで消化を開始した。
大火事を避けるために森から抜け出たのに火事になってしまったら本末転倒もいいところだ。



「うん?」

ヒャドで炎を消し終わった後、大輝は何か光る物を見つけた。
不思議に思い、その光る物の正体を確かめよう手に取った。

「・・・・宝石?」

赤を基調とした光輝く石。
実物は見たことないが、テレビなんかで見かけるルビーに似ていた。

(なんでこんな所に?)

リザードマンの姿が爆発地点にいなかったのは、燃え尽きてしまったと考えがつくか、なぜこんな所に宝石があるのか解らない。
そもそも、フィンガー・フレア・ボムズの炎に包まれて無事な宝石など存在するのか?
疑問に思う大輝だったが、とりあえず手元の宝石をどうするか考える始めた。

「・・貰っちゃおうかな~・・・いやいや!百円とかならまだしも、さすがに宝石は・・・」

思わずそんな考えが浮かぶ大輝だったが、妙な倫理観が働いてダメと言う結論になった。
なら百円はいいのか?と言うなかれ、小市民の考えなど所詮こんなものなのだ。

「・・・・・・今思ったけど、これからどうすりゃいいんだ?」

討伐対象のモンスターを倒したはいいが、証拠も何もない。
唯一あるのは今手元にある宝石のみ。
どうすればいいのか解らない大輝だったが、とりあえず報告しようと街に向かおうとする。
しかし―――

「ッ!!」

危険を感じ、その場から飛び退く大輝。
その後、大輝が立っていた場所に砂煙が舞った。

「つうぅっく!」

大輝は顔を腕で覆い、目に砂が入らないようにする。

「なんだってんだよ・・・」

次々に起こる厄介事に大輝は乱暴な言葉を漏らす。
そして、何が起こったか確かめようと砂煙の中心に目を向けると・・・

「うっそ~ん・・・」

「「「「ガアアアアァァ!!!」」」」

そこには、四匹のリザードマンが先ほどのリザードマンと同じように理性の灯っていない目で此方を睨みつけていた。





「ガアァ!」

リザードマンの一匹が大輝に剣で切りかかる。

「ちっ!」

大輝はそれを避けて距離をとった。

(さ~て・・・どうすっかな?)

感じる気から察するに、恐らく先ほどのリザードマンとほぼ互角。
勝てない相手ではないが、かなり厄介である事には変わりない。

(ここは基本通り、一体一体確実に片付けていくか・・・)

大輝は身構えてリザードマンを迎え撃つ。

「ガアァ!」

一匹のリザードマンが剣を振り上げながら襲いかかってきた。
そして、大輝との距離が縮まろうとすると・・・


――ドォン――


リザードマンがいた地点に爆風が舞った。
大輝はいきなりの事で反応できず、地面を転がってしまう。

「・・・・今度は何だよ・・」

急いで立ち上がり、リザードマンがいた場所に目を向ける大輝。
そこには―――


先ほど見つけた宝石のような物と、


「無事か・・・青年。」


艶やかな金色の髪を靡かせるエアリスが佇んでいた。






エアリスは、地面に刺さった槍を引き抜き残りのリザードマンを睨みつける。
どうやら、先ほどの爆風はこの槍が地面に刺さった時に起こした物のようだ。
ふとエアリスは、自分の足元に落ちていた宝石に目を向ける。

「・・・なるほど。宝石モンスターの類と言う事か・・・」

(宝石モンスター・・・・)

エアリスが呟いた言葉に、大輝はきき覚えがあった。




“宝石モンスター”

普通のモンスターと違い、宝石などを媒介にして作られる魔法生物。
術者の力が強ければ強いほどその力は強大な者になっていく。
並のモンスターより強い殺傷力を秘め、戦闘のみに作りだされることがほとんどなので感情を持つ事はあまりない。
致命傷を負うと、元の宝石に戻る。




(なるほど、だからか・・・)

大輝はあのリザードマン異常性が気になったが、宝石モンスターの類なら納得がいった。
フィンガー・フレア・ボムズの爆発地点に、リザードマンの死体が残っていなかったのも元の宝石に戻ったからだろう。




「「「グルルルッ!」」」

三体のリザードマンは、新たに現れた敵・・・エアトスを敵意の籠った目で睨みつけていた。
どうやら、大輝より此方の方が危険と判断したようである。

「・・哀れな・・」

エアリスは、そんなリザードマンを見て悲しそうに同情するような言葉を漏らした。

「ただ戦うためにだけに生み出されたモンスター・・・幾千、幾万の時を戦い続けようと、それ以外に自分の価値を見い出せない。」

「「「グガアアァァ!!」」」

リザードマン達は三体同時にエアリスに襲いかかった。

「貴様らの成り立ちには同情しよう・・・だが、」

エアリスは槍を構える。

「「「!!!!!」」」

“一閃”

何か閃光が走ったかと思えば、リザードマン達は全員切り裂かれ、宝石に戻っていた。

「レティシアに害を為そうとするなら、このエアリス!!決して許しはしない!!」





(凄い・・・)

大輝は、純粋にそう思った。
あのリザードマン達は、確かに今の自分でも対応できた。しかし、あの一瞬でそれも三匹同時に倒すなど不可能だった。
それを、目の前のエアリスは何事もなく成し遂げのだ。

(かっこいい・・)

槍を構えるその勇ましい姿。その姿は、昔誰もが憧れたヒーローのようだった。
それだけなく、太陽に照らされ幻想的に輝く金色の髪。そして、先ほど見せたその武勇。
それは一種の芸術品のような美しさを持っていた。
大輝は、思わずその美しさに目を奪われてしまった

「・・・青年。怪我はないか?」

エアリスは、大輝に近付き声をかける。

「・・・・あ・・・はい」

大輝は、エアリスの姿に見惚れていたため僅かに返事が遅れてしまう。
しかし、エアリスはそれを気にせず、

「そうか・・・良く頑張ったな。」

と、笑顔で大輝を称賛した。

「・・・ううぅ・・」

その笑顔に大輝は顔を赤くして、エアリスの顔を直接見る事が出来なくなってしまう。
正直エアリスは、アンナなどに負けず劣らずの美人なのだ。
そんな人の笑顔を間近で見た大輝を誰が責められようか。




「・・・・・・」

ふとエアリスは上空に見つめる。
いや、睨みつけると言った方が正しい。

「え~と、どうかしたんですか?エアリスさん。」

大輝は、気になり問いかける。
エアリスの顔を直接見ている訳でないため、何とか声をかける事ができた。

「いや・・・何でもない。」

険しい顔で上空を睨みつけていたエアリスだったが、大輝に声をかけられそちらの方に顔を向ける。

「・・ぅぅ・・」

再び大輝は俯いてしまう。
先ほどの笑顔も良かったが、今のような凛々しい顔つきもいいなと思う大輝だった。










一方そのころ・・・



「悪いな」

アクセルは、レティシアの街の人目がつかない裏道で一人の男と会っていた。

「へへへッ何言ってるんですか、俺と旦那の仲じゃないですか。」

アクセルに向かって、友好そな笑みを浮かべる男。
身なりはボロボロで、とてもじゃないが裕福な生活を送っているようには見えなかった。
アクセルは、その男から何かを受け取る。

「・・・うん、サンキュー」

アクセルも礼を言いながら、男に封筒のような物を手渡した。

「いやいや、お礼を言うのはこっちの方ですぜ・・・それでは・・」

男はアクセルに軽く会釈した後、奥へと消えて行った。
アクセルは裏道を出て、表通りに出た。
すると、

「やっほー♪アクセル。」

シンクが声をかけてきた。

「お!どうしたんだ、シンク。」

アクセルは、如何にも偶然出会ったようにシンクに話しかける。

「うんうん。だた、アクセルの姿を見かけたから、なにかな~と思って。」

シンクも笑顔を浮かべながら答える。
その笑顔は友好そうな笑みで、道行く女性だけでなく男性も魅了してしまうほどだった。
その後、二人はたわい無い世間話をしていた。



「・・・・・」

世間話をしている最中に、ふとアクセルは上空に目を向ける。

「どうしたの?アクセル。」

シンクはアクセルに問いかける。

「いや・・・今日はいい天気だな~と思って・・」

気だるそうな声で、そう答えた。

「そうだね~」

シンクもアクセルに釣られるように同じ方向の空を見つめながら賛同した。














「・・・以上が、今回起こった騒動の詳細になります。」

大輝と共に帰還したエアリスは、今回の報酬を手渡した。その後、大輝はアクセルと合流し帰っていった。
今エアリスは、モンスター討伐の任が終了した事を自らの主であり母でもあるレティスに報告していた。

「そうですか、御苦労さま。エアリス。」

レティスはエアリスに労いの言葉をかける。

「いえ、私だけの力だけではありません。皆の力あってこそ解決できました。」

しかし、エアリスはあくまでも厳格な態度を崩さず、そんな答えを返した。
レティスは、そんなエアリスを見て苦笑した。




「・・・レティス様は今回の事をどうお考えですか」

エアリスはレティスに問いかける。

「エアリス、こう言う時ぐらい母と呼んでくれていいのですよ」

「いえ、しかし・・・」

レティスの言葉に口籠るエアリス。
すると―――

「別にいいんじゃない。」

後ろから声が聞こえた。
エアリスが後ろを振り向くと、そこにはシンクが立っていた。

「今、この場にいるのは僕とレティス様とエアリス。この時ぐらい、素直にお母さんって呼んだ方がいいよ。」

「シンクの言う通りですよ、エアリス。部下がいない時ぐらい、母と呼んでください。そうでないと、私も寂しいですから」

シンクの言葉にレティスが賛同する。

「・・・では、母上。」

エアリスは、少しの間悩んだがレティスの事を母と呼んだ。
その言葉を受けてレティスは嬉しそうにほほ笑む。エアリスもまた、頬が緩んだ。
何だかんだ言って、やはり此方の方が気が楽らしい。

「母上は、今回の事をどうお考えですか?」

しかし、すぐさま顔を引き締めてレティスに話しの続きを諭す。
レティスも顔を引き締めて、エアリスの話に耳を傾ける。

「今回、我らレティシアに出現した奇妙なモンスター達の討伐に向かいました。しかし、いざ発見すると今までは煙りのように消え去ったモンスター達が襲いかかってくると言う事態に陥りました。
しかも、その全てが宝石モンスター。さらに各世界に300年前、即ち聖魔八武具が喪失した時期とほぼ同時期に暴れ出した正体不明の宝石モンスター達・・・」

「今回の事も、それと関係してると言いたいのですね?エアリス。」

レティスの言葉にエアリスは頷く。

「まぁ、何かしらの関連はあるんじゃない。あの世界最強の何でも屋、アクセル・ヴァイスハイトが来たぐらいだし。最も、彼は知らなかったようだけどね。」

シンクがエアリスの言葉に賛同する。
その顔は相変わらず笑顔だったが、何かを悟っているようだった。
エアリスとシンクの言葉を受けて、レティスは俯きながら何かを考える。

(・・・やはりそうですか・・・なら・・)

こんな事は出来ればしたくない。
しかし、自分はこの世界レティシアの神。自分にはこの世界の者たちを守る義務がある。
レティスは、そう自分に言い聞かる。
そして、表を上げてシンクにある任を下した。

「シンク・ランティス・・・お願いします。」

何がとは言わなかった。
しかし、シンクはレティスが何を言いたいのか解った。

「レティシア隠密機動部隊隊長シンク・ランティス。その任必ず果たしましょう。」

シンクは、レティスの前に跪き、任務了承の意を示した。





(それにしても・・・)

ふとレティスは、窓の外に目を向ける。

(あの時感じた、あの気配は・・・)

エアリス達が討伐に向かった際、レティスは奇妙な気配を感じた。
存在しないのに存在する、存在するのに存在しない。そんな、何とも言えない奇妙な気配だった。
仮にも神である自分ですら把握しきれなかった気配にレティスは一抹の不安を感じた。

(・・・・・何事も起こらなければいいのですが・・・)

空を見ながら、そんな事を思うレティス。
しかし、そんな思いとは逆に心の中の不安は広がる一方だった。




レティスが見上げ方向は、アクセル、エアリス、シンクが空を見上げた方向と全くの同じだった・・・・











時は、少し遡る・・・・




「ウッフッフッフッフ・・・」

レティシアの遥か上空に『それ』はいた。

「なるほどなるほど・・・あれが神鳥レティスの娘、エアリスの力か・・・」

『それ』は眼下を見下ろしながら呟く。

「う~ん、それにしても・・・あの子、どこかで・・・」

『それ』は考える。そして、何か心当たりがあったのか笑みを浮かべた。

「そうだ!確かあの時の・・・そうすると・・・フッフッフッフ、なるほど。あの方も相変わらずだね~」

何が楽しいのか、『それ』の声音は楽しそうだった。まるで、子供のようだ。

「フッフッフッフッ・・・」

『それ』は笑いながら消えていった。その場に、最初からいなかったように静かに・・・











あとがき

大輝の新技!フィンガー・フレア・ボムズ登場の回でした。

と言うか、宝石モンスターの元ネタを知ってる人っているのかな?

さて、次回から大輝の修行が再び開始されます。お楽しみに。

どうでもいいけど、こんなにもニコポされる主人公って珍しいと思うのは作者だけでしょうか・・・

では次回。











[15911] 第二十三話(破邪の洞窟 ①)
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/06/06 15:52
第二十三話(破邪の洞窟 ①)








「父ッ!!」

「ふっぐ!!」

音速の弾丸が命中し、大輝はその場に倒れた。



レティシアのモンスター討伐の任を終えた後、大輝達はいつもの島に戻ってきた。
地獄から直接レティシアに向かったため島に帰ってくるのは久しぶりだと感じた大輝。
そして、いざ家の扉を開けてみると、迎えてくれたのは暖かい言葉ではなく、一つの弾丸だった。



「父~会いたかった~」

尻尾を振り大輝の胸に自分の顔を押し付け、久しぶりの父との再会をこれでもかと喜ぶマージ。

「あぁ・・・ああっぐ・・ごっが・・・」

しかし、大輝は顔を青白くし、脂汗を掻きながら泡を吹き気絶していた。



さて、此処で一つ問題を出すとしよう。


マージの背丈は普通の小学校低学年ぐらい。
そして、大輝の身長は平均的な成人男性ぐらい。
この身長差でマージが大輝に突撃したらどうなるか?
もし、解らない人は成長していけば、おのずとあの痛みは解る。
女性の方は、近くの男性にでも聞いてくれ。


自分で答えを出したい人のために一つヒントを出そう。

「・・・ううぅ・・・あ、あれは・・・」

アクセルは、顔を歪めながら自分の股間を抑えていた。






「ふふふっ、マージったらあんなに嬉しそうに・・」

アンナは、優しい笑みを浮かべながら大輝とマージを見守る。

「嬉しそうって・・・あれはどうかと思うぞ」

微笑むアンナに対して、アクセルは冷や汗を掻きながら大輝達を見つめていた。
その目線の先には、気絶から目覚めた大輝が顔を青ざめながらマージの頭を撫でていた。
マージは嬉しそうに尻尾を振っていたが、大輝はそれとは逆に脂汗を滲みさせ相当辛そうだ。
恐らく、この中で一番大輝の事を理解できているのはアクセルだろう。師匠としてではなく、一人の男として。



「それで、アーク・・・如何でしたか?」

大輝とマージが戯れて?いる傍らで、アンナは意味深な言葉でアクセルに問いかける。

「・・・とりあえず、あいつの方は一応成功した。まだまだ未熟だけど、切っ掛けは攫めたはずだ。」

「そうですか」

アクセルの言葉を受けて、アンナは安心したように言葉を漏らした。

「そして、レティシアの方だけど・・・」

その言葉を聞いた瞬間、アンナは顔を引き締めてアクセルの一句一句を聞き逃さないよう耳を研ぎ澄ます。
その後、二人は何か言葉を交わし、アクセルは帰っていった。
アンナも、大輝達に一度言葉をかけた後、何処かに向かった。




――次の日――




「い~や~だ~!!もっと一緒に遊びたい!!」

大輝は、再びマージに泣きつかれていた。










昨日俺は島に帰ってきた。最初のマージの熱烈な歓迎で、別の意味で昇天しそうになったけどなんとか無事だった。
あれは、さすがに死ぬかと思ったわ~・・・冗談抜きで。
その後は、マージと遊んで飯を食べて、一緒に風呂に入って一緒に寝た。
こう言う所を見ると、マージもまだまだ子供だと思う。
まぁ、こんなに離れたのは初めてだったからな。
そして、今再び泣きつかれていた。
理由として簡単だ。アンナさんの提案で、再びある場所に修行に向かうため会えなくなるからだ。
無論、地獄に行ったように何日も留守にする訳じゃない。
けれど、アンナさん曰く、確実に一日は帰ってこれないそうだ。

(どうすっかな~)

目の前で泣きついてくるマージを見ながなら考える。
とは言っても、正直何も言い考えが浮かばない。
これが噂に聞く、「お父さんの嘘付き」って奴か!急な仕事で来週の遊園地は行けなくなったって奴なのか!!?
・・・んな訳ないか、でも似たような状況である事は確かだな。
世の中のお父さんたちは、こう言う時はどうしてるんだろ?

(うーん・・・・あ!そうだ!)

久しぶりに帰ってきた安心感のせいか忘れていた。
俺はマージに一声かけてから、部屋に向かう。
そして、ある物を探す。

(え~と・・・あ!あったあった!)

俺はそれを見つけてマージの所に戻る。

「ほれ、マージ。お土産だぞ。」

そう言いながら、俺はマージにレティシアで作ってもらったお土産を手渡した。
翼をモチーフとした銀製のペンダントで、中心には小さな赤い宝石が付いている。
この宝石は、俺が倒した宝石モンスターの物で、鑑識の結果特に問題が見られなかったのでそのまま貰った物だ。
そして、帰りにレティシアの職人の人に頼んで特別に作ってもらった。
宝石には、俺の魔法力が込められていて、いざという時はマージを守ってくれる。まぁ、軽い御守りみたいなものだ。

「・・・・・」

マージは、俺が手渡したペンダントをジッと見つめていた。

(気にいってくれたのかな?素人の俺の目から見ても結構出来前は良いと思うんだけど?)

そんな事を思いながらマージの返事を待っていると、


――ガブッ――


「・・・かひゃい・・」

噛みつきましたよこの犬っ娘さん。

「いや、それ食べ物じゃないから。食えないから。」

思わずビシッと裏手で突っ込みを入れてしまった。

「マージ。これは、こうするんだよ。」

ペンダントを受け取り、マージの首につけてやる。

「・・・・・」

「結構似合ってるぞ。マージ。」

付けられたペンダントを見つめていたマージに、俺は褒め言葉をかける。
ちなみにこれは嘘じゃない本当の気持ちだ。
銀製や宝石が付いてるとはいえ、無駄にけばけばしくない。
レティシアの職人はすげ~な。
自己視聴することなく、付けてる人をうまい具合に引き立たせる感じだ。最も、マージの場合綺麗と言うより、微笑ましいんだけどな。

「なぁ、マージ。」

俺は膝をつきマージの頭を撫でながら言葉をかける。
こう言う時は同じ目線で話した方が良いと、アンナさんとマーシャに習ったからだ。

「その・・・ごめんな。かまってやれなくて。・・・・あ~、その・・・修行が一段落したら一緒に遊んでやるし、何処かに連れて行ってやるから。」

所々詰まりながらも何とか言い終えた。

「・・・・ほんと?」

マージ顔を上げて問いかけてくる。
それに対し真っ直ぐ目を見つめながら答える。

「ああ、ほんとだ。だから、もう少しアンナさんやマーシャとかと待っててくれ・・・な?」

「・・・ぅん」

マージが小指を差し出してきた。

「・・・約束・・」

マージが呟く。
俺も同じように小指を差し出し、マージの小指と絡ませゆびきりをした。


そして、二、三言葉を交わした後、俺はアンナさんと共にこの空間から消えた。

「父・・・頑張れー!!」

マージは、手を振りながら俺達を見送ってくれた。








大輝がアンナに案内された場所は何処かの洞窟の入り口だった。

「ここが・・・」

大輝が呟く。それに答えるようにアンナも言葉を漏らす。

「はい・・・ここが、“破邪の洞窟”の入り口です」



“破邪の洞窟”

まだ地上世界に魔法文明が残っていたころ、神々が介入し地上の人間達に与えた迷宮。
階層ごとに呪文との契約ができ、地下に行けば行くほど強力な呪文と契約できる。
中には珍しいアイテムなども眠っているが、深く潜っていくごとに迷宮は複雑になっていき、群生しているモンスターも強力になっていく。
当時の地上世界の屈強な冒険者でも生きて出るのは至難の技であった。




「はい、大輝さん。此方に粗方の食料や水、その他必要な物を入れておきました。」

そう言ってアンナは大輝にブレスレット型の機械を渡す。
これは人工的に次元魔法を発動させ亜空間を作り出す物だ。
大輝は魔法力は高くても、次元魔法で作れる空間などたかが知れている。
そこで登場するのがこの機械と言う事だ。
最初から空間を作り出すためにプログラムされているため、使用者がその魔法を使えなくても使いこなす事が出来るようになる。
こう言った深い迷宮等では、多く持ち運べ、尚且つ戦闘の邪魔にならないこう言った物の方が良いのである。
魔法が使えない旅行者などからも、荷物がかさばらなくていいと絶賛する人気商品である。ちなみに、ライクベール制。

「あの、アンナさん。此処って本当に俺の修行になるんですか?」

ブレスレット型の機械を受け取った大輝は自らの疑問をアンナに問いかける。

「そうですね・・・」

大輝の質問を受けたアンナは、目の前の何もない空間に手を翳す。
すると、空中にモニターが現れた。アンナは、そのモニターを操作しだす。

「今の大輝さんのレベルだと・・・だいたい700階辺りからが本格的な修行になりますね。そこに行くまでは準備運動だと思って下さい。」

アンナは、目の前のモニターを見ながら大輝に教える。



元々破邪の洞窟とは地上世界にあった物である。
しかし、昔の神々が地上世界をリセットする際に、魔法文明の痕跡を残さないよう破邪の洞窟を切り離しこの場に封印したのである。


大輝の疑問は本当にこの破邪の洞窟で修行になるのか?と言う物であった。
この破邪の洞窟はこの世界に封印された後、神界の手によって既に調べつくされていた。
それによると、最大999階で、何処でどのような呪文と契約できるのかも詳細に調べられていた。
つまり、此処に入って得る物はほとんどないのである。


魔法に関しては、既に調べられているためわざわざ潜る事もなく契約できる。実際、大輝も使えるかはどうかは別にして此処で手に入る魔法と契約している。
アイテムにしても、この中で手に入るほとんどのアイテムが市販で手に入る。
よほどの物好きでない限り、この破邪の洞窟に潜ろうと言う者がいないと言うのが今の現状である。
一番の障害であるモンスターにしても、当時の地上世界の戦士のレベルを遥かに超えている大輝にしてみれば、それ程障害にならないのである。
とは言っても、確実にそうだとは言えない。
アンナが言ったように700階クラスのモンスターなら大輝の修行になる。
それに、階ごとには侵入者を阻むためのトラップも仕掛けられている。油断は決して出来ないのである。



「・・・それじゃ、行ってきます。」

アンナの説明を聞いて納得した大輝。アンナに言葉をかけ、破邪の洞窟に潜っていった。






破邪の洞窟の中は思ったより暗く、地下一階に行くまでもかなりに深さがあった。
そのことから察するに一階一階がかなり深いようである。

「暗いな・・・・ライトッ!!」

大輝は、最下級呪文であるライトを唱える。
すると、大輝の周りに幾つかの光の球が出現した。

「GO!!」

大輝は、その光の球を洞窟の中に均等に散らばるように放つ。
すると、さっきまで暗かった洞窟の中が昼のように明るくなった。

「さ~て、行きますか。」

辺り一帯を見渡した後、自らに気合を入れて大輝は歩き出した。













破邪の洞窟の中、俺はマップを見ながら進んでいた。
今は地下に続く階段を下りていた。

(え~と・・・確か、これで200階ぐらいか?)

再びマップを見ながら確認した。その結果、203階であった。微妙に間違った。
最初の数十階ぐらいなら自分で数えていたけれど、正直もうめんどくさくなった。

(あ~あ~・・・暇だな~)

そんな事を思ってしまう。
無論、俺だって戦いなんかの争いより平和な方が良い。
けれど、さすがに此処まで緊張感が無いとやる気が沸いてこない。


始めに一階で出会ったモンスターはスライムだった。
まぁ、ダンジョン探索のお約束と言えばお約束だよな。
しかし、当然のことながら今の俺に並のスライムが勝てるはずもなく、呆気なく突破できた。
その後も現れるのは並の下級モンスターや中級モンスターばかり。
50階辺りから上級モンスターもちょこちょこ出てきたけど、やはり強さで言えば並程度だった。
相手するのがめんどくさかったから適当に追い払ったり、バリアーを張って突破したんだけど、いい加減鬱陶しくなってきた。
あれだ・・・ドラクエのゲームで自分のレベルが高すぎて敵を一撃で倒せるのに、敵が次か次から出てくる感じだ。
だから、途中から“トヘロス”を使ってモンスターと会わないようにした。


*トヘロス・・・自分より弱く、敵意があるモンスターと会わなくなる。旅をする冒険者などは覚えていたい呪文だ。ランクは下級呪文。


モンスターの心配がなくなって、次は罠に対しての心配も出てきたけど、そっちの方も対して脅威にならなかった。
今まで見た罠は、壁から弓や槍が飛び出してきたり、大岩が転がってきたり、天井が落ちてきたり、落とし穴などと言った定番の罠だった。
けれどそれだけだった。
弓や槍は普通に見えて叩き落とせたし、大岩は破壊できたし、天井も押し返せた、落とし穴は寧ろ手間が省けて大感謝だった。
正直、アクセルさんが作った罠の方がもっと陰険で危険な物ばかりだ。こんなの子供だましに見えるわ。
唯一ビビったのは途中で見つけた宝箱が“ミミック”だったことかな。


*ミミック・・・ダンジョンなどで宝箱のふりをして、近付いてきた旅人を襲う中級モンスター。昇天呪文であるザキ系も覚えるため、なるべく会いたくないモンスターである。


あれにはビックリした。生の宝箱なんて初めてみたから、ついふらふら~と誘われて、特に警戒せず開けちまったんだよ。
うん。ミミックがなぜ宝箱に化けるか解ったは、あれには何かとてつもない力がある。人を寄せ付ける力が。
・・・って、偉そうなこと言ってる俺も引っ掛かたんだけどな。
ミミックと出会ってからは、さすがに周りを警戒するようになった。とは言っても、ただ単にレミラーマやインパスなんかを使うだけだけどな。
しかし、それだけでかなり危険が減った。そのお陰でほとんど罠に引っ掛かる事はなくなったしな。
アイテム(良く解らないけど)なんかも手に入って順調に進めた。






「うん?」

ふとマップに目を向けてみた。
そこには、299階の文字が映っていた。いつの間にか、かなり深くまで来ていたようだ。

「此処まで緊張感が無いと、どうも修行している気分になれないな。」

思わず、そんな事を呟いてしまう。
アンナさんの言う通り、本当に深い所に潜るまで準備運動にしかならないな。
だからと言って油断も慢心もしない。フリーザの時は、それで痛い目にあったしな。
けれど、此処まで何もないとな~さすがに緊張感と言う物にかける。

(・・・・とりあえず、さっさと300階に行こう。)

そう思い、目の前にあった階段を下りていった。



「祝♪300階とうちゃ~く♪・・・・はぁ~」

区切りが良いからそんな事を言ったけど、一人でやっても虚しいだけでため息をついてしまった。

「・・・さっさと行こう。」

ライトで周りを照らし、マップで道順を確認した後、俺は歩き出した。









300階の地下を進んでいく大輝。この辺は、まだトヘロスでモンスターの出現を防げるため楽々と進める。
罠に関しても、すぐさま感知できるため特に危険はなかった。正直、ピクニックのような気分だ。


・・・・・ぅ


「・・・??」

ふと大輝の耳に小さな声が聞こえた。

(なんだ?)

そう思いながら耳を澄ませる。しかし、声は聞こえてこなかった。
気のせいか?もしくは、何かの物音だと思い大輝は再び歩き出した。
しかし―――


・・・・・ぅん・・ん


小さいけど、今度のはハッキリと聞こえた。
気のせいじゃない。

(う~ん・・・どうすっかな?)

大輝は少しの間悩んだが、気になったのでその声に向かって歩き出した。
例えこれが何かの罠だとしても、今の自分なら十分対応できると判断したからである。
そこに自惚れもなければ、過信もない。絶対の自信を持って大丈夫と胸を張って言える。
地獄での修行の成果は、こう言う所でも出ているようだ。




大輝が向かった場所には、大きな岩が幾つか積み重なり瓦礫の山を築いていた。

「・・・・」

その岩の前で耳をすませる大輝。
すると―――


・・・ん・・ぅあうん


先ほどより、大きくハッキリと聞こえた。
何かのうめき声のようだ。

「・・なに?」

大輝は耳を澄ませながら、気の捜索をする。
すると、瓦礫の山の下から僅かに気を感じた。

「お~い!・・誰かいるのか?」

洞窟に響くぐらいの大声で呼びかけるが、返事は帰ってこなかった。
どうしようか考える大輝だったが、このまま放っておくのも目覚めが悪いと思い、瓦礫の山をどかすことにした。
そして、いざどけてみると―――


ピンク色の体に天使のような羽根を生やし、頭には輪っかがあるモンスター、

『ふ・・んぅ』

“エンゼルスライム”が傷だらけで倒れていた。


*エンゼルスライム・・・天使のような姿をしたスライム系上級モンスター。








トントントン

           パタパタパタ


    ――ピタッ――



「・・・・・」

「・・・・・」



トントントン
     
           パタパタパタ


     ――ピタッ――



「・・・・・」

「・・・・・」



トン

            パタ

   
     ――ピタッ――


「・・・あのさ~お前、なんでついてくる訳?」

大輝は、振り向きざまに自分の後ろにいる者に問いかける。

『・・・う~ん?』

後ろには、先ほどのエンゼルスライムが笑顔で飛んでいた。


瓦礫の山からエンゼルスライムを引っ張り出した大輝は、とりあえずベホマで体の傷を回復させ、アンナから受け取った医療器具で体力の回復を待った。
その後、エンゼルスライムが目覚め、大輝は事情を聞いてみた。
エンゼルスライム曰く、いつものように迷宮の中を飛んでいたら空か瓦礫が降ってそのまま下敷きなったと言う、要は罠に掛ったという内容だった。


『なんで~ついてくると言われても~』

大輝の問いかけに対し、エンゼルスライムは随分間延びした声で考え始めた。

『助けてくれた恩返し♪』

そして、考えがまとまったのか、良い笑顔で大輝に告げた。

「いや、恩返しって、別にそんなの望んでいないから。」

大輝が否定すれば、

『でも~助けてくれたらちゃんと恩返しをしなくちゃいけないんだよ~。』

エンゼルスライムは、まるで母親が子供に言い聞かせるように笑顔で告げた。
300階から、今いる階まで何回このやり取りを繰り返したか・・・大輝は思わず小さなため息をついた。
すると―――

『大丈夫!心配しないで、お姉さんに任せなさい!』

胸?を張りながらエンゼルスライムは宣言した。

(お姉さんって、お前は俺より年上か!!)

何回目になるか解らないツッコミを心の中でした大輝だった。



正直大輝は、目の前のエンゼルスライムに礼など求めていなかった。
それは、自身の修行のためでもあるが、それ以上にエンゼルスライムの戦闘力に問題があった。


知っての通り、この破邪の洞窟は地下に行けば行くほど、モンスターや罠が強力な物になっていく。
そして、今大輝は900階クラスの地下を進んでいた。


アンナの言う通り、700階を過ぎたあたりからトヘロスをかけているのに関わらず、モンスターが襲ってきた。それは即ち、トヘロスで弱いモンスターを封じる効果が無くなったと言う事。
しかし、あくまで弱いモンスターを封じなくなっただけで、大輝の障害になるとは限らない。
実際、襲ってきたモンスター達は今の大輝で十分対応できた。それは、900階クラスのモンスターでも変わらなかった。
確かに、900階クラスは、他の階と比べると強力なモンスター達がいたが、大輝が危機に陥るほどのレベルのモンスターはいなかった。
しかし、それはあくまでも“大輝”に限定した場合である。


大輝についてきたエンゼルスライムは、300階にいたモンスター。
当然のことだが、300階クラスと900階クラスのモンスターなら、後者に軍配が上がる。
つまり、今恩返しでついてこられても足手まといになるだけだ。とは言っても、全くの役立たずかと言えばそうではない。
いくら大輝でも、さすがに900階クラスまで来ると、モンスターもさることながら罠にも結構厄介物が出てきた。
察知することができず罠に掛ってしまう事も幾つかあった。そして、その時に負った傷をエンゼルスライムに直してもらったりした。
他にも、多数のモンスターを相手にする際、ピオラやスカラなどの補助呪文を唱えてくれて有利に戦えるようサポートしてくれた。
どうやら、戦闘型ではなく、補助型のモンスターのようである。
正直、これには大輝も助かっていた。回復に関しては、恐らく自分より上だろう。
戦闘の際も、自分の力量は弁えているようで、巧く立ち回り決して戦闘の邪魔をしていなかった。


帰らそうとしても、先ほどのように「恩返し~」や「お姉さんに任せなさい」っと、何とも気の抜けた声で言われ押し通された。
強く言おうとしても、正直足手まといにはなっていない。寧ろ、自分を助けてくれているので強くは言えず、今の階までズルズルと連れてきてしまった。


結局、

(・・・まぁ、別にいいか・・)

と言う結論になった。
自分が何か言っても、のらりくらりとかわされてしまう。正直、口で勝てる気がしない。
トヘロスが効かないことから、自分に対して敵意を持っていないだろう。だったら、連れて行っても問題ない。
それに、この階から一人で帰らせても、逆に危険なだけだ。
それだったら、自分といた方がまだ安全である。元の階に帰すのは、自分が帰る時に送り届けてやればいい。
なんだかんだで、此処まで助けてくれたのだから、そのぐらいの事はしてやっても良いと思う大輝だった。

それ以前に―――


「あ~・・とりあえず、行くぞ。ただし、安全かつ無理をしないようにな。」

エンゼルスライムに声をかけて進んでいく大輝。

『大丈夫~私よりも、大輝ちゃんの方が無理をしないようにね~』

それに対し、エンゼルスライムは相変わらず気の抜けた返事を返した。
ちなみに、初めて大輝ちゃんと言われた時、思いっきり反論したが『でも~大輝ちゃんは大輝ちゃんでしょ?』っと結局押し切られた事を此処に記しておこう。


それ以前に―――なぜか、目の前のエンゼルスライムからはアンナやマーシャ達と似た雰囲気を感じるので強く言えない大輝だった。










「・・・扉だよな・・・」

目の前の光景を見ながら大輝が呟く。

『扉ね~』

それに答えるようにエンゼルスライムも呟く。

「・・・扉だよな・・・」

再び大輝が呟く。

『扉ね~』

エンゼルスライムも再び呟く。
此方は相変わらず間延びした声だった。


大輝達は最深部の999階に到着した。
無論、この階のモンスター達もそれほど脅威にはならなかった。
全くの無傷ではなかったが、今の大輝のレベルなら十分対応できた。
そして、その階で一番深い場所、即ち最深部にあったのが一つの扉だった。
十メートル近くの大きさで、奇妙な模様が彫ってある。

「なんか、RPGなんかにあるラスボスの部屋みたいだな。」

目の前の扉を見て、そんな感想を抱く大輝。

「・・・やっぱ、入った方が良いのかな?こう言う時は、お約束だし。」

今ままでの洞窟探索で冒険心が刺激されたのか、此処まで来たのだから完全制覇しようと思ったのか大輝は扉を開けて中に入っていった。



扉の中に入っていった大輝達、何が出てくるのか若干期待していた大輝だったが、

「普通だな~」

『普通ね~』

そんな大輝の思いとは逆に中は普通だった。
岩が所々にあるだけの殺風景な風景。
ラスボスのラの字もなく、人影一つも見えなかった。

(なんか、期待はずれだな)

大輝は、こんなに深く潜ったのにも関わらず、最後に待っていたのがただの殺風景な部屋だったと言う結果に僅かに落胆した。
別にラスボスと戦いたかったと言う訳ではない。しかし、やはり此処まで来たのだから一度ぐらい見てみたいと思ったのも事実だった。

「・・・・・帰るか・・・」

『そうね~』

暫く部屋を眺めていた大輝だったが、このまま此処にいても仕方ないと判断して帰ろう扉に向かって歩き出した。
そして―――


――バンッ――


それは起こった。

「なッ!」

何の前触れもなく、十メートル近くあった扉が閉じたしまった。
大輝は、原因を確かめようと扉の近くに行こうとすると・・・


――キュイィン――


部屋の中心に巨大な魔法陣が生まれた。

「ちッ!今度は何だよ!」

その事に気付いた大輝は、魔法陣の方を注意深くに睨みつける。

(おいおいおい!本当にラスボスでも出てくるのかよ、勘弁してくれよ~・・・)

魔法陣を見た大輝はそんな思いを抱いた。
さっきと言ってることは逆だが、大輝の場合あくまでも見たかったでけで、決して戦いたかった訳ではない。
しかし、この展開的に先ず間違いなく戦うことになるだろう。
そして、それは次の瞬間現実の物となった。


「うん?」

ふと大輝は魔法陣の中心に何かが浮かんでいるのに気がついた。
赤・黄・緑と言った色とりどりの宝石が幾つか浮かんでいた。

「・・・なんか、つい最近見たような・・・」

大輝は、その宝石を見て嫌な予感がますます増した。


魔法陣の中心に浮かぶ色とりどりの宝石達。
ただ浮かんでいただけかと思ったが、急に生き物のように回り始めた。
幾つもの宝石たちが空に渦巻く。まるで、ダンスでも踊っているようだ。
キラキラと光が反射して、その光景はとてつもなく美しく幻想的に見えた。

「・・・・・」

しかし、大輝にはそれが恐ろしく見えた。
そして、宝石達は互いに混ざり合うように一か所に集まっていき・・・


――パアアァァン――


あたり一帯を強烈な光が包んだ。







「・・・・ッ!・・眩しかった~」

光を止んだころを見はらかって、大輝は魔法陣の方に目を向ける。
そして、魔法陣の中にそれはいた。


山のような巨体に、その巨体を包みこむ鈍い光を放つ鉱石。
鋭い牙に爪、獰猛なまでの目。そして、その圧倒的なまでの威圧感。
正に、動かざるごと山の如しと言う言葉が似合っていた。



「グガアアアアアアアァァァ!!!!」


ドラゴン系最上級モンスター“オリハルゴン”が咆哮を上げながら此方を睨みつけいた。













あとがき

今回は破邪の洞窟をお送りしました。

階層については、作者が勝手に考えました。原作だと、どれくらいの階層があるのか明記されていなかったので。

かな~りダイジェストでお送りしましたけど、あの当時のアバンのレベルで150階以上まで行けたとあったので、今の大輝だとそれほど苦労しないと思うので。

こうして書いてみると、大輝ってすでにダイ大の連中のレベルを遥かに超えているんですよね~・・・原作限定にした場合は。

さ~と、最深部でラスボス?に出会った大輝。果たしてどうなることやら・・・

では次回。







[15911] 番外編 神を目指した大魔王 ①
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:49
番外編 神を目指した大魔王 ①



・注意
  
 ネタばれみたい物があります。原作バーン好きの皆さまには不快な思いをさせるかもしれません。

 原作から大きく離れるオリ設定がでます。

 それでも良いという人のみお読みください。
 








そこは奇妙な場所だった。
周りが太陽に照らされたように明るく、地面が黄色い雲で作られている。
その黄色い雲の上にコンクリートのような物で造られた道のような物がる・・・そんな奇妙な場所だった。
そんな場所に、一人の青年が横たわっていた。

「う・・・くっ・・・ここは?」

その青年は目を覚まし、ポツリと呟く。


青年の名はバーン・・・かつて地上世界を滅ぼそうとした大魔王。




「なぜ・・・余はこのようなところに・・・」

目が覚め、頭がだんだんハッキリしてきたバーンは周りを見渡し、困惑したように呟く。
そして、思い出すのは、あの最後の戦いのこと。



魔族、そして自分にあのような仕打ちをした神々に復讐するため・・・・そして、そんな神々に変わり自分が神になり、腐った世界を正し、魔界に太陽の日を照らすために地上世界に攻め入ったこと。
だが―――

(・・・・・・・・・)

バーンは思い出す。
最後の最後まで自分に抗い、そして、自分を破った存在のことを・・・・
だが、そうするとますます解らないことがある。
あの時、自分は最終手段である「鬼眼」の力を解放したはず。
なら?なぜ「魔族」の姿に戻っている?
いや、それ以前になぜ戦いの痕がない?

(・・・・・・・・・)

バーンはスッと立ち上がり、歩き出そうとする。
このまま此処にいても、自分の状況が解るわけではないと判断したためだ。

「あ!此処にいましたかオニ。」

そんなバーンに話しかける人がいた。
バーンはクルッと声が聞こえてきた方に目を向ける。

(・・・・・何者だ?こ奴?)

バーンは声の主を目に留める。
体が薄い青色で頭には小さな二本の角が生えてる・・・所謂、鬼と言う存在だ。
上半身は夏物のYシャツで下半身は夏用のスーツといった、今で言う会社員のような格好だ。
 
「ささ・・・行きましょうオニ。」

その鬼は、バーンを何処かに連れて行こうとする。
それに対してバーンは・・・・

「貴様・・・・何者だ・・・」

バッと襟を攫み持ち上げ、静かに、しかし、鋭い声で問いかける。

「まあまあ、落ち着いて下さいオニ。」

並の人間なら、気を失ってしまいそうな威圧感を受けても、その鬼は平然そうに言う。

「あなたが知りたいことは、閻魔大王様が説明しますオニ。だから、今は私に付いてきて下さいオニ。」

「・・・・・・・・・」

バーンはしばらくジッと睨みつけるように見つめていたが、やがて、その鬼を下した。

「では私の後に付いてきて下さいオニ。」

そう言い、その鬼は何処かに案内しようとする。

「・・・・・・・・」

バーンもその後に付いて行った。
少々無謀な行動だと思うが、このままいても状況が動くわけでもない。
それに、彼には自身があった・・・・・何者が来ても自分なら大丈夫だと言う絶対の自信が、今この“時”までは・・・・・・







「閻魔大王様、お連れしましたオニ。」

「うむ、御苦労。」

バーンが案内され場所は何処かの宮殿だった。
自身が持つバーンパレスより広く大きな宮殿に思わず驚いてしまうほどだった。
そして、なにより驚いたのが、今対峙している閻魔大王と言う者だ。
巨大・・・・・とにかく巨大なのだ。
鬼眼王となった自分より遥かに超す巨体に、赤い体、黒いぼさぼさの髪・・・まだ、鬼のような形相ではなかったのが救いだっただろうか。
もし、そんなことになったら、その風貌と重なってとてつもなく恐ろしいものになるだろう。

「さてと・・・・お前が、バーンで間違いないな?」

「・・いかにも・・余がバーンだ」

閻魔大王の問いにバーンは静かに答えた。

「お前は今の状況を理解できているのか?」

その態度に閻魔大王は少し困惑しながら聞いた。
少なくても、ここに来る者は最初、自分の状況に混乱する者がほとんどだったからだ。

「・・・・解らぬから、わざわざこのようなとこに出向いたのであろう?」

しかし、バーンはそんな閻魔大王のことを気にした様子はなく、当たり前のように答えた。











「・・・・・・・・と言うわけだ。」

閻魔大王から聞かされたのはこの世界の真理。
死んだ後の者のこと、その他の世界のこと・・・・そして、神々のこと・・・・・

「・・・さてと・・・そう言うわけだから・・・私はお前を地獄行きか天国行きかを決めなくてならないのだが・・・・」

閻魔大王は一度言葉を区切って、バーンの様子をうかがう。

「・・・・・」

バーンは何も言わずただ俯いていた。
しかし、次の瞬間、バッと顔を上げ。

「ふざけるなあああああああああぁぁぁぁーーーーーー!!!」

怒りを露わにした顔で叫んだ。

「・・・神が決めたことだから・・・・たった・・・・たったそれだけの理由で・・・・・」

そこにはさっきまでの冷静な姿はなく、ただ怒りを露わにするバーンがいた。

(魔族だから・・・・たったそれだけの理由で!!)

バーンの心を占めるのは純粋なる怒り。
人間だから、魔族だから、神が決めたことだから・・・・そんな理由で、あの暗い闇の世界に押し込められたことに対しての・・・
そして、自分の運命すら弄ばれたことに対しての怒り。

「悪いが裁定を下させてもらう・・・・お前は地獄行きだ。」

閻魔大王はそんなバーンを複雑そうに見つめていたが、自身の職務を全うするため、裁定を下した。
その判決を聞いて、鬼がバーンを連れていこうとするが・・・・

「余に・・・余に触れるなあああああぁぁぁ!!!」

怒り、自制心が効かなくなったバーンに弾き飛ばされた。

「はあああああぁぁぁ!!」

その後も取り押さえようとした鬼達を次々となぎ倒していくが・・・


――フッ――


「!!!!!」

唐突に床がポッカリと空いた。

「・・・・そこまでしろ、お前は地獄行きだ!!」

「くっ!」

閻魔大王の言葉を最後に、バーンはその穴に落ちていった。







「ふ~まったく・・・こんなに暴れおって・・」

閻魔大王はドシっと椅子に深く座りなおしながら、周りの惨状に目を向ける。
宮殿には所々に罅が入って、床には何人かの鬼達が倒れていた。

(それにしても・・・・・)

ふと、閻魔大王は先ほどの者のことを思いだした。

(・・・少々かわいそうだったな・・・・・)

先ほど見た怒りに染まった顔を思いだしながら、閻魔大王はそう思った。
ある意味、神の傲慢ともとれる行いの被害を受けた存在・・・さすがに同情をしていた。
しかし、同情したからと言って、バーンの罪が消える訳ではない。
奴は多くの罪なき人々を殺してきた・・・それこそ、地獄に送り込まれるほどの
なら自分は、公平な判決をしなくてはならない・・・・それが自分の仕事なのだから。

「お~お~暴れたな~」

ふと、隣から陽気な声が聞こえてきた。
閻魔大王はその方向に目を向けると、そこには一人の人間の青年がいた。

「・・・何の用だ?ロイド?」

その男に閻魔大王は問いかける。
すると、その男・・・ロイドは二カッと笑みを浮かべながら答えた。

「な~に、ここ最近地上で暴れまわった大魔王が気になってな・・っと・」

そう言って、ロイドは閻魔大王の目の前にあった巨大な資料に手をかざす。
すると、一瞬光が包み、その光が収まるとロイドの手の中に普通のサイズの資料が納められていた。

「ふむふむ・・・なるほどねぇ~」

ロイドはその資料を笑み浮かべながら目を通す。
しかし、時々表情を険しくした。

「どうかしたのか?」

「・・・・べっつに~・・ただものすごい胸糞が悪いだけだ・・・」

閻魔大王の問いに、ロイドは機嫌が悪いのを隠そうとせず乱暴に言い放った。
その顔には険悪感と言う感情が浮かんでいた。

(それにしても・・・・・随分変わった人生を体験しているな)

ロイドは再び資料に目を落としながら思う。

(“天界人”でありながら魔族として生きることを選んだ存在・・・だからこそ神が犯した愚行が許せない・・・か)

(あの腐れじじぃどもが~人間だ魔族とか言ってるから、こんなやつが出てくるんだよ)

(それに、天界に監視者なんか置きやがって、いくらなんでも甘やかしすぎだっての!)

(竜の騎士のことだって、その世代だけに留めろよな~・・・こんなめんどくさい物残すなよ)

はあ~っとロイドはため息を吐いた。
そして、空を仰いで一言ポツリと漏らした。

「気に入らねえな・・・・」

そう言って、ロイドは笑った。
その笑みは、邪悪と言う言葉がよく似合う笑みだった。



「所で・・・・閻魔・・・」

先ほどの笑みを潜め、ロイドは閻魔大王に問いかける。

「この宮殿、老朽化が進んでいるんじゃねえの?」

そう言って、ロイドは宮殿を見渡す。
そこには、ロイドの言う通り小さな罅が入った光景が広がっていた。

「少なくても・・・あの程度の戦闘力の奴にここまでの被害を受けるんだ・・そろそろリフォームとかした方がよくね?」

罅が入った宮殿を指さしながら言う。

(う~む・・・・)

ロイドの言葉を聞いた閻魔大王は、腕を組みながら考える姿勢になった。

(そう言えば・・・かれこれ3000年ぐらい立て直してなかったな・・・・そろそろするか)

ロイドの提案を受けて、閻魔大王は立て直すための予算を頭の中で組み立て始めるのだった。













その後・・・月日は流れ・・・・・







「・・・・・・・・・」

「此処にいたのかオニ。」

地獄のいたバーンの元に一人の鬼が訪ねてきた。

「・・・・何ようだ?」

バーンは鬼に問いかける。

「閻魔大王様がお呼びだオニ。」

バーンはその言葉を聞いて、「そうか」と一言漏らし、歩き出した。

(それにしてもおっかないな~オニ~)

バーン呼びに来た鬼は、冷や汗を垂らしながらその場の惨状を見てそんな感想を抱いた。





バーンが立っていた場所の周りには、人間・魔族・竜などといった他種族が血を流し、倒れて黒い山を築いていた。






バーンは閻魔大王の宮殿に訪れた。
ちなみに、前に見た時より遥かに新しくなっている。

「お~来たか。」

閻魔大王はバーンに向かって陽気に挨拶をする。

「・・・何ようだ・・・閻魔」

それに対してバーンは何とも素っ気ない返事をした。
しかし、閻魔大王は「あいかわらずだな・・・」っと特に気にした様子はなかった。
そして、ある意味この世界に来て、バーンが最も望んだ事を提案してきた。

「お前・・・神界に行ってみる気はないか?」











「ここが・・・・」

そう呟いて、バーンは周りの風景を目に留める。
バーンの目線の先には何の変哲もない荒野が広がっていた。

「・・・・・・・・」

バーンは暫くジッとその光景を眺めていたが、やがてゆっくりと歩き出した。





閻魔大王がバーンに提案したのは、神界に行ってみないかと言う物だった。
つまり、それはバーンに神を目指さないか?と言ってる物だった。
それを聞いて、バーンは一瞬困惑した。
確かに、地獄にいた時、神界の方針が変わり地獄に落とされても神界に行ける者がいると聞いたことがある。
だが、自分のことを知っているなら、神界に招く理由が見当たらない。
そんなことをすれば、どんな事になるか解るはずだからだ。
しかし、これはバーンにしてみれば、正に渡り船だった。
なぜなら、今の自分には肉体がなかった。
それでは、自分の目的を果たすことなどできない。
だからこそ、この提案を受けた・・・・神界に行くことができるし、肉体も与えられるからだ。












「よっ!大魔王さーん!!」

荒野を歩いていたバーンに話しかける人がいた。
しかも、まるで友達と会ったような気軽な声でだ。

「・・・・・・・」

しかし、バーンはその人を無視して歩き出す。

「・・・てっ!!こら待てや!!」

当然、無視された方は機嫌が悪くなる。
その証拠に、呼びとめた声は少々乱暴な声音だった。

「・・・・何ようだ・・・人間。」

バーンは少し鬱陶しそうに、その場に止まり、声の主の方に目を向ける。



この光景を地上世界の人々が見たら、なんと無謀な行為だと思うだろう。
なにしろ、その人間の前に立っているのは、かつて地上世界を滅ぼそうとした大魔王なのだから。
しかし、バーンには目の前の人間を如何こうしようと言う心算はない。
今の彼にとって、人間などどうでもいい存在なのだ。
だが、バーンにはこの世界の情報がない。
ならば、目の前の人間に聞き出すのが良い・・・そう判断したからこそ、バーンは耳を傾けた。
・・・・ちなみに、最初無視しようとしたのは本当に鬱陶しく思ったから。(それでも、周りに人がいなかったため、聞いた方が効率がいいと判断した)



「うっわ~・・・随分偉そうだな。」

バーンの前に現れた人間は眉を顰めながら言う。
まあ、話しかけて無視されただけでなく、「何ようだ」など偉そうに言われて、気分が良い人はあまりいないだろう。
しかし、その人間は「ま、いいか」っと特に気にした様子はなく、自らの名前を告げた。

「一応初めまして、大魔王さん・・・俺の名前はロイド、一応この世界で“神格の儀”を受けた神ってことに・・・・わぁお」

神・・・その言葉が目の前の人間、ロイドから漏れた途端バーンに変化が現れた。
怒り・憎しみ・怨念・憎悪・・・・そう言った、負の感情が渦巻いていた。

(ふーん・・・恨んでいるとは思ったけど・・・ここまでねぇ~)

しかし、ロイドはその感情を一身に受けているのにも関わらず、涼しい顔で見つめていた。

「まぁまぁ落ち着けや、神と言ってもただ単に神格の儀を受けただけだっつうの。」

ロイドは二カッと人懐っこい笑みを浮かべ、極めて友好そうに話す。

「俺はただあんたと話をしたいだけだ、この世界の事を知らないあんたにとっては有意義な情報のはずだ。ほら、解ったらその殺気を鎮めろ・・・目の前の小さな事にいちいち反応してたんじゃ、大局を見失っちまうぜ。」

「・・・・・・・」

バーンは暫くジッとロイドの目を睨みつけていたが、やがて、殺気を鎮め耳を傾けた。
それは、バーンが長きに渡って培った経験で、少なくても目の前の存在は嘘をついていないと判断したからだ。
それに、情報と言うのは今の彼にとっては正に一番望むものだった。
最も憎き存在かも知れない者が目の前にいるのに、極めて冷静になれたのは、さすが大魔王と名乗っていただけのことはある。

「よーし・・・それじゃ先輩の話、よーく聞いておくように。」

ロイドはバーンの行動を肯定と捉え、神界の事を語り始めた。













「かつて・・・世界には様々な種族が覇権を競っていた。人間・魔族・竜・エルフ・妖精・・・その他諸々の数多の種族がな。」

ロイドは語り出す。

「やがて全てを治める高位の存在・・・所謂神様ってのが生まれた。」

それは、まるで幼子に昔話を聞かせるような、突拍子もない話だった。

「ま!これは神界に伝わっている昔話で真実は解らないんだけどな。まあ、時間を遡れば解るかもしれないけど、んな事してめんどくさい状況にはなりたくないしな~。
あ!でも神と言う存在が生まれたのは本当だからな、覚えておくように。」

少しお茶らけた雰囲気でロイドは語った。
しかし、すぐそのような雰囲気を潜めて、再び語り出した。







「そして、神々はその他、数多の世界の事を知り、それらを治めようとした。」

ロイドの言葉に伴い、周りに幾つかの光の球が現れた。

「科学文明が進んだ世界、魔法文明が進んだ世界、その二つを合わせた魔科学が進んだ世界、原始世界、無人世界・・・その他多くの世界をな。」

ロイドが言葉を漏らすたびに、その光の球にそれらの世界が映し出された。
どうやら、小型の映像機器のような物みたいだ。

「普通に考えれば、寝言は寝てから言えって言いたくなるようなとこだろうな。」

確かに夢物語のようなことだろう。
一つの世界・・・いや、一つの国でさへ治めるのは難しいと言うのに、それ以上のことをしようとしているのだから。
普通に考えれば無謀と取られるだろう・・・・だが、

「だが、奴らにはそれを可能とする力があった。」

ロイドの言う通り、神と呼ばれる者にはそれを可能とする強大な力があった。
それに加え、進んだ科学文明や魔法文明、さらに各世界から集まる強大な力を持つ英雄・・・それらを考えれば、決して不可能なことではなかった。

「それに、治めるとは言っても基本的にはただ見守る形だけだ。だから、神々に反抗しようとする奴は現れなかった。当然だ・・・何しろ、存在そのものを知らなかったのだからな。神が力を貸すのは、本当にその世界に危機が迫って、全体のバランスが崩れるかもしれないと言う時のみ・・・簡単に言えば、その世界の事はその世界に住む人達に任せましょうってことだ。」

もし、これが自分たちの都合を押しつけるなら、反感を生んだかもしれない。
しかし、それをせず、ただ見守ると言う形を貫いてきたからこそ、今まで反感しようとする者は現れなかった。
良く言えば、本当に危機が迫った時は助けてくれる存在。
悪く言えば、助けられる力があったのに、放っておいた存在。

「まあ、これはどっちが正しく、どっちが悪いなんて誰も決められないだろうな。」

個人の感情の問題でなく、世界と言うとてつもない大きな問題。
確かに、何が悪くて、何が良いかなど、到底誰にも決められない物である。

「これが神界の方針だった・・・・・あの世界が見つかるまではな・・・・」

一つの光の球が輝き、映像が映し出された。

「お前がいた世界・・・天地魔界の世界がな。」

そこには、青い星・・・地球が映っていた。








「本来、一つの次元の中に複数の世界が存在すると言うケースはほとんどない。あったとしても、その世界の中の亜空間などに存在するぐらいだった。しかし、この世界は亜空間などでなく、同じ世界の次元の中に他の世界が存在していると言う、とてつもなく希のケースだった。これだけなら、神たちもあんなことをしなかっただろうけど、そうもいかなかった・・・なぜなら、この世界は他の世界と比べて、規模が大きく世界全体のバランスを支える重要な存在の一つ・・・要は大黒柱の一つだったからだ。」

ロイドの周りを回っていた、光の球同士が線で繋がった。


○―○―○―○
| | | |  
○―○―○―○
 Y  Y      
  ○  ○ 

 
「こんな風に世界ってのは互いに繋がり、バランスをとっている。もし、この中のどれかが消滅してしまえば、それに伴い、他の世界も消滅する恐れがある。たとえ消滅しなくても天変地異などの大災害が起こっちまう。当然、世界の規模が大きければ大きいほど、他の世界に及ぼす影響は大きく、広くなっていく。」

どんなに強固な城でも、どんなに精密な機械でも、一つのパーツが無くなるだけで、全体に影響を及ぼし、最悪その物を壊してしまう。
それと同じなのだ・・・この世界は。

「さらに、それぞれの世界には必ず、その世界の“核”になる場所・・・“基点”と言う物が存在する。この基点が消滅してしまえば、その世界のバランスが崩れてそのままアウトになっちまう。そして、お前がいた世界の基点は・・・」

光の球が輝いて、地球を拡大した画像が映し出された。

「この星・・・銀河の中の一つ、太陽系第三惑星地球だった。」








「まったく、あれだけ広い世界の中のたった一つの星に複数の世界が存在して、しかもその星が基点だなんて・・・こんなの天文学の数字なんか遥かに天元突破してるぞ。」

ロイドは肩を竦め、驚きを通り越し、呆れたような声で言う。
一つの次元の中に複数の世界が存在しているだけでも希なのに、広い銀河の中の一つの星に存在し、その星がその世界の基点となっている・・・一体どれだけの確率でこのような奇跡とも言える事が起こるのだろうか?

「まあ、これは置いといて・・・・この世界をどうするか神たちは悩んだ。普通に考えれば、その三つの世界の内、一つをその世界に残し、他二つを切り離し、別の次元に組み込めばよかったんだけど・・・そんな単純な物ではなかった。」

光の球が輝き、別の映像が映し出された。


    天界
     |    
    地上世界
     |   
    魔界


「お前の世界はこんな風に互いにバランスを取っていた世界・・・要はシーソーが釣り合っているような世界だった。神達もさすがにこれには困った・・・それは下手に介入すれば、大黒柱の根元をガリガリ削って行くようなものだからな。」

ただでさへ不安定なバランスで存在しているのに、下手に切り離せばその世界の基点に影響を及ぼすかもしれない。
さらに、そのせいで世界全体に影響が出るかもしれない・・・・・頭を悩ます問題であることには間違いないだろう。

「無論、その気になれば決してできないことではなかった。だが、神が選んだのはより確実な方法だった。」

「即ち、その世界を裏で操ること・・・歴史への介入だった。」












「この世界は人間・魔族・竜がそれぞれ覇権を争っていた。まぁ、その他にも天界に住む天界人とか妖精とかがいたんだけど、こいつらは基本的に争いには参加しなかったから、世界のバランスを崩す心配はないと判断されて、神が介入するのは最初に言った三つの種族に限定された。」

「その方法とは、互いに“敵”と言う存在を作り、繁栄と滅亡を繰り返すことだった。」

繁栄と滅亡を繰り返し、バランスを取る。
そうすることによって、一定の力を常に保ち続けて世界のバランスを取る・・・確かに、より確実な方法ではある。
その世界に住む、人間や魔族たちだけが犠牲になれば、他の世界を守ることになるのだからな。

「これは別に神たちが介入しなくても、おのずとそうなっていただろうがな・・・・」

ロイドは言葉を漏らす。
そして、それは事実だった。
同族同士でも傷つけあうと言うのに、他種族が同じ場所に存在していれば、おのずと答えは出る。
それは、バーンも良く知っていた。

「さらに、神たちにとって嬉しい誤算があった・・・それは、その世界で最も力を付けた存在、俺らで言えば神と名乗っていた存在が竜の騎士と言う存在を作ったことだった。」

竜の騎士・・・いづれかの種族が野心を抱き、世界を我が物にしようとしたら、それらを粛正する存在。
神にとっては都合がよかっただろう・・・何しろ自分達の手伝いをしてくれるようなものだからな。

「やがて、この中で竜族は力を弱めていった。そして、残った人間と魔族がそれぞれ世界の覇権を握る歴史が続いた。」

二つの球が輝き、片方には人間が、もう片方には魔族が映し出された。

「時には人間の中に勇者と呼ばれる存在を生みだし、人間の繁栄を」

人間の方の映像に栄華を極めた都が映し出され、逆に魔族の方には衰退した映像が映し出された。

「時には魔族の中に魔王と呼ばれる存在を生みだし、魔族の繁栄を」

今度は、先ほどと逆の映像が映し出された。

「これらを代々の神たちが管理し、バランスを保ってきた。」

ロイドはそこまで言って、真剣な表情でなく呆れた表情になった。

「代々管理してきたんだけど・・・ある神がその仕事に就いた時、深く介入しすぎちまったんだよ。」









「その神の時は魔族の繁栄が終わり、人間が繁栄する番になった。まあ、これだけなら、今までと大して変わらないんだけど、そいつはよほど人間を優遇したいみたいでな、そのためにいろいろ手を貸した。」

「先ず人間の繁栄のため、魔族・竜族を魔界に追いやった。これは、その当時の魔族や一部の竜族の力が強すぎたためだ、その証拠にあんな毒が充満している魔界に閉じ込められても無事だった。」

魔界はとてもじゃないが人間が住めそうな土地ではなかった。
毒の空気が充満し、太陽の日の光も届かない・・・正に死の世界と言っても良かった。
だが、魔族・竜族はそんな世界でも生き残った、それだけの生命力が彼らにはあったからだ。
しかし、魔界に充満する毒のために血は青く変色し、肌の色も変わってしまった。
けれど―――

「けれど、そのせいで魔族や竜族はより強靭な体を手に入れた。」

ロイドの言う通り、魔界に閉じ込められた魔族・竜族はより強靭な体を手に入れた。
高い生命力と再生力・魔法力・・・年月をかけてより強く進化していった。

「まあ、これだけでもやりすぎるような気がするけど、神はさらに管理を強固な物にするために天界に監視者を置いた。」

天界はそれほど地上世界の争いには参加してなかった。
しかし、天界人や妖精は最も脆弱である人間達の味方だった。
それは、ただ単に魔族が自分たちにとって、天敵のような物であると言うことも関係しているが、その他に弱い人・・・・力なき人たちを守りたいと言う、使命感を持っていたのも確かだった。
そして、これは的を射ていた。
実際、天界人達が力を貸さねば、人間達は滅んでいたかもしれない。
神たちはそれを利用して、天界の最高責任者、即ち人間・魔族から見れば神と呼ばれた者に自分達の息が掛った者を潜め、より管理を強固な物にしていった。

「そして、徐々に天界人達も地上世界に介入していくようになった。破邪の洞窟を与えたり、凍れる時間の秘法などの秘術、オリハルコンや神の涙などと言ったアイテムを授けるなどの介入をな。」

ロイドはそこまで言って、頭を掻きながら乱暴に言葉を漏らす。

「たくっ!!甘やかしすぎだっての!!」

口調から察するに、どうやらこのやり方が気に入らないだけで、人間達の心配をしているようではなかった。

「・・・とっと、話がずれたな・・あ~ゴホンッ・・まあ、言うことでもないけど、この後人間達はさらに繁栄していった。」

一度咳払いをして、再び語り出した。

「それから、時は流れ、天界にある一人の子供が生まれた。」









「その子供・・・少年は、不幸と言えば不幸だった。幼いころに両親を亡くし、施設に預けられていてな。本来バカ騒ぎをやって、思いっきり遊ぶのが普通なんだけど、そいつは少々普通でなくてな、本などを好んで読み、知識を身につけていった。・・・それこそ、その年齢にそぐわないほどの知識をな。そのため、皆から気味悪がれ、友達と呼べる者は一人もいなかった。」

本来、元気に遊ぶのが仕事とも言える子供が、大人顔負けの知識を身につけている。
確かに、少々気味が悪いかもしれない。
もし、周りに一人でも同じような境遇の者がいたなら違っていたかも知れないがな。

「ある時その少年が何気なく外に出てみると、ふと奇妙な物を見つけた。それは、自然にできた地上世界に行けるゲートだった。」

天界は三世界の中では最も守りが高い。
しかし、極たまに・・・本当に極たまに、ゲートが自然に出現する場合がある。
そう言った物はすぐ閉じられるのだが、その少年が見つけたゲートは誰にも知られていなかった。

「少年は知識として知っていたが、実際に体験したことはない。そして、こう思った・・・見てみたい、この目で肌で地上世界という物を感じてみたい。思い立ったら吉日って言うけど、そいつの行動は早くてな・・・見つけたらすぐに飛び込んで、地上世界に向かった。」

それは無謀な行動と見られるだろう。
しかし、いくら知識を付けても、まだまだ子供・・・理性より好奇心が勝ったのだ。

「初めてみる物が溢れていた地上世界は、その少年の知的好奇心を刺激するのには十分すぎた。しかし、どんなに平和でも必ず、何かしらの危険はある。案の定、少年は野生の魔物に襲われ傷ついてしまった。本来、天界人にとって、並の魔物など相手ではないが、戦闘訓練も何も受けてない幼い子供では十分すぎるほどの脅威だった。・・・そして、その少年を助けたのは、人間ではなく、天敵であるはずの魔族だった。」

「・・・・・・・」







『・・・・・うっ・・ん』

『よ!・・・気づいたか坊主』

『・・・・・・・・』

『どうした?どこか痛いとこでもあるのか?』

――く~――

『・・・おなかすいた』

『・・・・・・・・』

『・・・・・・・・』

『・・・・・・・・』

『・・・・・ぷっはっはっはっはっは・・・よーし待ってろ!今、なにか持って来てやるからな!』







「その魔族は少々変わり者でな、本来毛嫌いするはずの人間と共存していた。おまけに、孤児院を開いて人間の子供を育てるなど、その当時の魔族からは信じられない事をしていた。村の人間達もその魔族を受け入れて、共存していた・・・と言うより、共存できない方がおかしいって言うほどの関係を築いていた。」

その当時の人間は自分達より強い物を恐れる傾向があった。
それは、圧倒的力を持つ魔族も例外ではなかった。
しかし、その魔族の気さくな性格がそれを可能としていた。
それに、その村の周辺諸国では戦争が続いていて、村人たちは毎日怯えた生活をしていた。
だが、その魔族が守ってくれたおかげで、その恐怖から逃れることができた。
さすがにそこまで来ると、魔族に対しての恐怖など沸かなくなっていた。

「その少年は驚いただろうな~何しろ、天界で習った知識では、到底魔族と人間の共存など不可能だと思っていたのだからな。」

得た知識では理解できない。
しかし、それがその子供の知的好奇心をさらに刺激した。

「天界人の子供は知りたいと思った。なぜ?魔族と人間が共存しているのかを・・・それを知るため、ちょくちょく孤児院に訪れた。」

天界に帰っては孤児院に向かうといった生活が暫く続いた。
普通に考えればおかしいと思うだろうが、施設の天界人も外で遊んでいると思い、それは良い傾向だと思ってほうっておいた。
そのため、誰にも気づかれる事はなかった。

「初めはただの調査のつもりだった、しかし、孤児院に訪れるたびに、その少年はどんどん“子供”らしくなっていった。」

「・・・・・・・」







『きゃははははは!!』

『まてーーーーー!!!』

『まーたないよー!』

『ほらほら、鬼さんこちら手のなる方へー!』

『う~~~~~~~』




『おーい!おやつだぞ~~』

『はーい!』

『ほら、お前も手を洗ってこい。』

『む~~~~』

『なんだ?また、一人も捕まらなかったのか?』

『む~~~~~~~~~』

『ほらほら、いつまでも浮腫んでいないで、手を洗って来い・・・おやつ、いらないのか?』

『・・・・・ほしい。』







「友達がいて、外で泥んこになるまで遊ぶ・・・どこにでもいるようなただの子供のような生活、しかし、そいつにとってはそんな生活が楽しかった。」

さぞかし嬉しかっただろう。さぞかし楽しかっただろう。
その少年は願った、いつまでもこんな生活が続けばいいと・・・・だが、

「だが、そんな日常は長くは続かなかった。」









時は流れ、諸国で起きていた戦争も終わり、村が戦火の恐怖から逃れた。
人々は平和になったことを喜んだ。
当然だ、誰だって戦いの日々より、平和に暮らす方が良いに決まっている。

「そんなある日・・・奇妙な噂が流れ始めた。」

噂の内容は、「この戦争は、実は魔族が仕組んだものじゃないか」と言う、突拍子もないものだった。


魔族と言うのは残酷な行いをしようと、ほとんどがそれを自らの手で行う者だった。
敵と戦う時も、自らが前線に立つなど、所謂戦士としての誇りを持っていた。
けれど、中には残忍で卑怯な行いをする者もいた。
人間の信頼関係を崩して同仕打ちさせ、弱ったとこを討ち取る・・・そう言った方法を取る魔族もいた。
それを考えれば、決してあり得ない事ではなかった。


後で解ったことだが、これは国の重臣達が流した噂だった。
その目的は、魔族の排除だった。
何を勝手な・・と思うけど、これは別におかしい考えではなった。
並の人間にとっては、魔族と言うのは圧倒的力をもつ兵器のようなものなのだ。
それに、人間は本来臆病な生き物なのだ。
そんな生き物が、強力な兵器が近くにあって安心するかと聞かれれば、ほとんどの人間は安心等するはずがない。
国や民の安全を守るためと言えば、納得はできないが理解出来るものだったかもしれない。

「人の噂話ってのはバカにできないもんでなぁ~案の定、この噂は村にも広がった。」

無論、最初は村人たちも信じていなかった。
しかし、他の大多数の人間がその噂を信じている・・・集団心理のようなものにだんだん陥っていった。
なにより、戦火と言う目先の恐怖が無くなり、本来持っていた魔族の恐怖が脳裏に蘇った。
その思いは日に日に強くなっていき・・・そして―――

「そして・・・・始まったのは、迫害だった。」

「・・・・・・・」







『おい、知ってるか?あの戦争の黒幕はあの魔族だって話?』

『ああ・・・まったく!いい迷惑だぜ!!』

『俺なんか、仲間じゃないかって疑われたんだぜ!』

『子供を拾って育てたのも、自分達の手先にしようとしてたって話だぜ。』

『本当かよ!』

『やはり、魔族なんて信用するべきじゃなかったんだ!』

『まったく・・この村の最大の汚点だな。』







「少年は理解できなかった・・・この前まで仲良く暮らしていたのに、この手の平を返した状況を。」

少年の博識な頭脳を持っても、理解できないものだった。
いや、到底理解出来るものではなかった。

「唯一理解できたのは、このままでは、その魔族が危ないということだけだった。無論、少年は助けようとしたが、できなかった。なまじ頭が良い分、理解していたからだ。自分の力では助けることができないことを・・・そこで、少年が取った行動は自分より強い者に助けを求めることだった。」

「自分より強い者・・・すなわち天界の神(監視者)に助けを求めた。」

少年は信じていた。
天界で学んだ知識では、魔族は敵だ!悪しき存在だ!と教えられたが、そんな事はなかった。
自分がそのことを伝えれば、きっと・・・きっと助けてくれる!・・・・そう信じていた。
だが―――

「だが、天界人達が下した決断は、救い等ではなかった。」

「・・・・・・・」







『即刻排除するべきだ!』

『しかし、まだ子供ですからな・・・』

『子供とは言っても、これは許されるものではありません!!』

『確かに・・・魔族などと付き合ってた等、到底許されるものではなりません・・・・ですが、』

『なら・・・こうしませんか?』







「天界人達が下した決断は・・・・魔界への永久追放だった。」

それは、幼い子供などが受ける罰にしては、あまりにも過酷だった。
理由は簡単だった・・・“魔族”と付き合っていたから・・それだけだった。
天界人にとって魔族と付き合うなど、最大の罪だった。
魔族は悪!魔族は敵!・・・そう思うように、神に仕向けられたからだ。

「本来なら、魔族ほど強靭な体を持たない天界人にとっては、魔界など生きていけるような土地ではなかった。しかし、その少年が持つ天界人特有の能力が命を助けてくれた。」

天界人のと言うのは、直接的な武力はそれほど強くなかった。
その代わり、不思議な力を持っていた。
皮肉にも、少年が持つ天界人の能力が、魔界の毒からその身を守ってくれた。

「太陽の光が届かない闇の世界で、少年はずっと考えてた・・・なんで、自分がこんなめにあっているのか・・・そして、それはある思いへと変わっていった。」

人間がいかに醜く愚かな生物だと知り、そんな人間達だけに救いの手をさしのばす神々の愚行を知った少年の心は変わっていった。

「憎い!!人間も!!それ以上に神々が憎い!!」

果たして、それはどれほどれほどのものだったのだろう?
幼い身で、魔界に一人閉じ込められ、人間の愚かな部分を見、信じていた神々にも裏切られた少年はどれほどの憎悪を抱いたのかは、到底解るものではない。

「そして・・・そんな少年が出した答えは、ある意味・・・この世の真理だった。」

グッとロイドは握りこぶしを作った。

「力だ!!全てをひれ伏させることができる圧倒的な力!!・・・・少年はそれを求めた。」







「先ず少年が取った行動は、自らの体を魔族に変化させることだった。」

人間が魔族になることもあれば、その逆もある。
魔物も人間や魔族になれる事が出来る・・・少年はその術を天界で学び、知っていた。
そのため、最も強靭な体を持つ、魔族へと体を変化させた。
力を得るために・・・・

「そして、この少年が力を飛躍的に高めていったのは、ある魔族との出会いだった。」

ロイドの周りの一つの球が輝き、一人の魔族が映し出された。


年はだいたい二十代後半ぐらい。
肌は、魔界の毒により変色した青白い色。
髪の毛は炎のように燃えるような赤い色をしている、女性の魔族が映し出されていた。


「こいつの名前は、“ヴェルム”・・・当時の魔界において最強と謳われた魔族だ。」

ロイドはその魔族の名を告げた。






「本来、強者が弱者を支配するのが魔界のルールなのだが・・・こいつは少々変わっていた。」

ロイドは頭を掻きながら説明する。

「こいつは、魔界のトップなんかに興味がなかった。ただ自分が面白いと思った事だけに力を使っていた。」

“弱肉強食”“力こそ正義”を信念として掲げる徹底した実力主義の魔界にとっては珍しかっただろう。

「そして、ヴェルムはその少年が天界人であることを見抜いていた。」

当時の魔族の中にも、何人か自分達が魔界に閉じ込められた理由を知っていた魔族もいた。
ヴェルムもその中の一人だった。
普通だったら、恨みがあるように思うが・・・・

「ヴェルムにとって、目の前の存在は憎むべき対象ではなく、おもちゃだった。」

そう、ヴェルムにとっては、その少年はただの戯れの一環だった。

「けど、その少年にとってはありがたかった。戯れの一環だと解っていても、相手は魔界最強の実力者。手っ取り早く力を得るには誰かに師事してもらうのが効率がいい・・・そう考えれば、目の前の存在ほど御誂え向きな者はなかった」

そう判断した少年はヴェルムに師事してもらえるよう頼んだ。
向こうも、ほとんどお遊び感覚であったが、それを了承した。

「ヴェルムはほとんどお遊びだったが、その実力は本物だった。そのおかげで、天界人の少年はメキメキと力を付けていった。」

「・・・・・・・・」







――ボオオオオォォ――

『よーく見ておきな坊や・・・・これが、カイザーフェニックス。』

『その威力は、すでにメラゾーマなどのレベルには収まらない。』

『くっ!』

『生き残りたかったら、耐えな!!』

――ゴオオオオオォォ――

『うおおおおおおぉぉ!!!』







「・・・・少年は魔界で過ごすことによって、力こそ純粋でシンプルな法律はないと思った。」

“正義”などの理屈を言わず、純粋に強い者が上に行く・・・少年は力こそが真理だと学んだ。

「ここに、天界人でありながら、魔族として生きる道を選んだ戦士が生まれた。天界人特有の能力と知識・魔族の強靭な体と生命力を持つ超戦士がな・・・・」

ロイドはバーンを見据え、その天界人の名を告げた。








「その名はバーン・・・後の世に大魔王と恐れられた存在だ。」












あとがき

どうも、作者の天魔です。
今回は初の番外編でした。

ものすっごい、オリ設定がでましたね・・・まあ、なんでこんな設定を考えたかというと
ダイ大のバーンを見ていて、作者が思ったのは、やけに神を憎んでいるということでした。
実際、原作を見ていて、人間を見下すような時の表情と比べて、神が憎いと言っている表情は本当に憎いという顔をしていました。

それに、バーンって純粋な魔族だったのでしょうか?
バーンの肌の色は人間のような肌の色でした。
しかし、それだとダイ大の魔族の定義と違いますよね?

突然変異?魔族と別の種族のハーフ?そう考えた時、気になる文を見つけたんです。

「かつての神々が犯した愚行を余が償うのだッ!!!!」

これを見た時、以下のような考えが浮かんできました。

なぜ?償う?→自分も同じような存在だったから→同じような存在?→天界人

というような、考えが浮かんだのですが・・・どうでしたか?

次回は、後半を投稿する予定です。いつになるか解りませんが・・・

では次回。






















 



[15911] 番外編 神を目指した大魔王 ②
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/23 01:53
番外編 神を目指した大魔王 ②











神界・・・地上世界・魔界・天界・その他数多の世界から様々な強き者が集まる場所。
その数は、数千、数万、数億以上とも言われている。
そんな神界の荒野に二人の男が対峙していた。


一人はバーン。
かつて、地上世界を滅ぼそうとした大魔王の名だ。
自ら、天地魔界に恐れる者なしと豪語するだけのことはあり、その実力は、地上世界の超一流の戦士達が束になって掛っても、圧倒するほどだった。
正しく、魔界の神と言われるだけの実力者だ。


もう一人はロイド、神界において神格の儀を受けた一応神のカテゴリーに入る。
入るのだが・・・正直、信じられない。
なぜなら、ロイドから感じる威厳と言うか、オーラのような物はバーンほど感じない。
神と言われて、どっちが神と聞かれれば、百人中百人がバーンの方が神と言うだろう。
見た目は普通の好青年のような物で、とてもじゃないが神と言う大層な者には見えない。









「・・・・・・」

バーンはただ沈黙していた。
ロイドから聞かされた、自身の過去、神々の事、世界の成り立ち・・・それらを聞いても、バーンは俯き口を閉ざしていた。

「それで・・・」

唐突にバーンは顔を上げて、言葉を漏らす。

「それを余に話して・・・どうするのだ?」

ロイドに向かって、特に感情が籠っていない声で淡々と問いかける。

「べっつに~~~~」

しかし、ロイドはバーンの問いかけに対して、なんとも気の抜けた返事を返した。
これには、バーンも少々拍子抜けしてしまった。
自分にあのような事を言ってきたため、なにか目的があると思ったからだ。
けれど、ロイドの様子を見る限り、本当に何も無かったようだ。

「ただ・・・・そうだな、しいて言うならあんたの目的を聞きたかったってことかな。」

バーンの目を覗き込みうようにして、ロイドは答えた。



「あんたの最大の目的は・・・魔界に太陽の日を注がせることだったみたいだけど・・・」

魔界はマグマがたぎる、見渡す限りの不毛の大地・・・なにより、全ての生命の源である太陽がない。
バーンの力がいかに強大でも、太陽並のエネルギーを生み出すことができない。
そのために、地上世界に攻め入ったのだ。
地上世界を無くし、その地底に存在する魔界に太陽の日を注がせるために
しかし―――

「これって・・・もう、あんたの出る幕はないぞ。」

ロイドの言う通り、最早この問題はバーンの出る幕はなかった。



弱肉強食、完璧実力主義の魔界では、バーンの敗北後、覇権をめぐる争いが続いた。
その争いに勝ち残り、新たな王となったのは、魔族・竜族それぞれの血をひく者・・・“竜王”だった。
この竜王の目的も魔界に太陽の日を注がせ、魔界を繁栄させることだった。
しかし、数千年にも渡って力を蓄え続けたバーンですら敗れたのだ。
この時すでに地上には竜の騎士はいなかったが、天界の連中が何をするか解らない。
そのことを考え、竜王は長きにわたって、力を蓄えた。


バーンが敗れたのは、自らが最強と自負するその驕りにあったと竜王は判断した。
そのため、竜王は王になってからも、自らを鍛え続け、さらに軍全体の強化を図った。
けれど、当然竜王にも寿命がある。結局竜王は自らの子に魔界の事を託して、亡くなってしまった。
しかし、亡くなると言うことは、この世界の事を知ると言うこと。
案の定、竜王は魔界に太陽を与えることを神々に要求した。
普通だったら、受け入れないように思えるが、ある条件の元、魔界は他の世界に組み込まれ、太陽を得て繁栄した。
それに、この時は地上世界がリセットされた時だった。
そのため、魔界を切り離しても、地上世界に影響を与えないと判断されて実行された。





「・・・・まあ、そう言うわけだから、魔界のことを心配しなくてもいいぞ。」

すでに魔界は繁栄し、よき王が治めている。
そんなとこに、今更介入するのは余計なお節介と言うものだろう。

「それで?お前の目的はなくなったぞ・・・どうするんだ?」

ロイドは極めて明るい声でバーンに問いかける。
それは何処か楽しんでいるようだった。

「・・・・まだ、あるであろう。」

バーンは静かに答える。

「腐った神々を粛正すると言う大役が・・・」

そう言って、バーンは力を解放した。




















(お~お~結構魔法力はあるんだな。)

俺の目の前に力を解放した、大魔王さん・・・バーンがいる。
力を解放したためか、バーンの足元の地面が削れた。
うん♪確かに、これだけの力があれば、あの世界ではトップクラスだろうな。
それにしても―――

(腐ったねぇ~)

まあ、こいつの言うことももっともだけどな。
実際、当時の神でも、今のように天地魔界を別々の次元に組み込むことはできた。
それを態々、しなかった・・・
その代わり、その世界を裏で自由に操り、自分達の都合が良いようにしてきた。
傍から見れば、腐っているように見えるだろうな。

(けれどなぁ~)

それは、より安全な方法を取るためだった。
そのおかげで、他の世界の奴らは生きていけた。
最も、被害にあう世界の人達から見れば、納得いくものではないだろうな。
それに、神々が天地魔界を分けなかったのは、思念も少しは入っていただろうしな。
これは、仕方がないと言えば、仕方ないだろうな。
神々だって元は世界に住む生き物、個人の感情だってある。
だからこそ、神が傲慢って言われるんだけどな。

(とは言ってもなぁ~)

それって昔の話なんだよな。
時が流れると言うことは、それに伴い時代の考えも変わって行く。
今の神界の神々でも新しい風が入ってきて、あの爺どもが持っている古い考えもなくなってきてるしな。
魔界の竜王のことが一番良い例だ。
・・・・最も、まだまだ古臭い考えは残っているんだけど。

(う~ん・・・そう考えると、こいつって案外神に向いてるんじゃね?)



バーンは弱肉強食の魔界の王のためか、徹底した実力主義者だった。
そして、強いものに関しては種族問わず、敬意を払っていた。
軽蔑していた人間でさへも自らの軍の軍団長に任命したり、敵であるはず者でも自分の部下に誘うなどしていた。
それは言いかえれば、魔族や人間等の差別をしないと言うことである。


・・・・・うん、腐った世界を作らないと言うことでは、こいつは向いてるな。
要は、強いか弱いかって言う概念を無くせばいいわけだし、
それは、種族って言う問題よりも遥かに簡単に済む事だしな。
神界でもいい刺激になるだろう・・・それに―――


「無理だよ・・・お前じゃ」

俺はバーンの言葉を否定した後、同じように力を解放した。


それに―――こんな面白そうな事、ほおっておくのはもったいないしな♪
















(な・・ん・・だ・・・・あれは・・・・)

バーンは困惑した。

(なんなのだ・・・これは・・・・)

それは、目の前の存在が理解できなかったからだ。

「よう・・・どうしたんだ?大魔王さん。」

ロイドはそんなバーンに対して、笑みを浮かべながら尋ねた。





「!!!!!!」

バーンはバッと、左手を天に・右手を地に向けた構えを取った。


“天地魔闘の構え”・・・バーンが持つ必殺奥義の構え。天とは攻撃・地とは防御・魔とは魔法を指す。天地魔闘の構えとはこの三動作を一瞬で行う不動の構えのことなのだ。


この構えはバーンが真の強敵に出会ったときのみ使用する、文字通りの必勝の奥義なのだ。
しかし、今回に限っては違う。
バーンはこの奥義を使おうとして使ったのではない。
使わざるを得なかったのだ。


「う・・・つっ・・・っく!」

(バカな・・・震えているだと・・・・・)

バーンは信じられなかった。
自分の体が震えているのだ!
大魔王と恐れられ、地上世界の戦士達を圧倒した、あのバーンがただ相手を見ただけで、震えているのだ!!


バーンが天地魔闘の構えを取ったのは、本人が意図的に使用したからではない。
本能が魂が自分と言う存在を構成する全ての物が警告してるのだ・・・目の前の存在が危険と言うことを
それこそ、バーンの体が天地魔闘の構えをとってしまうほどに・・・・・
もし、これを第三者が見たら、口をそろえてバーンが味わってる感情の名前を言うだろう。
“恐怖”と言う名の感情を・・・・・






「・・・・あんたの疑問に答えてやろうか?」

ロイドは笑みを浮かべながら、バーンが震えている訳を話し始めた。

「俺達神・もしくは神に近い存在ってのは、神格の儀ってのを受けた奴らを指す。」

その口調は、まるで先生が生徒に教えるような物だった。

「この神格の儀ってのは、要は自分の“魂の存在”の位を上げることだ。」

ロイドはバーンを見据える。

「っ!!!」

バーンはそれだけで言いようのない物に襲われ、体が震えてしまった。

「生き物の魂ってのは、死んだ後あの世に行き、天国か地獄に行く。これは、魂ってのが特殊な空間でしか存在できないからだ。そして、その中で一部の者には肉体が与えられる。こいつらは地上世界とかには行くことができるけど、長くても一日という極めて短い時間でしか存在できない。そのために、肉体を貰った者は神界かその他の特殊な術をかけられた世界でしか存在できない。だが、俺達神格の儀を受けた者たちは違う。」

ロイドは、ニヤリとさらに笑みを深くした。

「神格・・・即ち、魂を神と言う存在に格上げすることで、様々な世界に長い間存在することができる。要は生きた人と一緒ってことだ。
その証拠に、俺の頭にはリングがないだろう?」

ほらっとロイドは自分の頭を指さす。
そこには、死んだ者の証しである、リングが付いていなかった。

「言っておくが、長く存在できるからと言って、なにも良いことじゃないぞ。」

ロイドは少し、めんどくさそうに答える。

「簡単に言えば、俺達は“毒”なんだよ。“死んだ生き物は生き返れない”と言う自然のシステムから逸脱した“異物”・・・それが、俺達神だ。そんな、異物と対峙してるんだ・・・ただの“人”の位のお前が怯えるのは、自然なことだ。」

人間はなぜ幽霊と言う物を恐れる?
科学的に証明されていない、本当にいるのかも解らない存在に、なぜ恐怖する?
それは、幽霊と言う存在が理解できないからだ。
「人」は理解できない者を恐れる・・・それは、大魔王と恐れられたバーンも例外ではない。

「あ!そうそう・・・」

ふと、ロイドは思いついたように言葉を漏らす。

「俺達神がなんで、お前達の世界に直接介入しなかったっていうと、これが原因だ。と言うより、俺達が下手に介入して力を解放しちまったら、その世界は地震雷火事親父の大惨事になって、滅んじまうからな!」

ロイドはなんでもないように話すが、それは、どれほど恐ろしいことなのだろう。
自分と言う異物が介入するだけで、その世界は滅ぶ・・・文字通り、“世界”と言う生き物を犯す“毒”と言う表現は的を得ているだろう。

「それで、どうする?大魔王さん?」

ロイドは挑発的な笑みを浮かべながら、バーンに問いかける。

「この程度でビビっているようじゃ、神々の粛正なんかできないぞぉ~尻尾巻いて逃げるかぁ~?」

その声音と口調は、どこまでも人をバカにするような物だった。

「・・・・小僧めがぁ!!」

バーンはそんなロイドを忌々しそうに睨みつけた後、フンッと気合を入れ、震えを抑えた。

(ふ~ん・・・戦意を失わないのは、さすが大魔王って名乗っていただけのことはあるか)

ロイドはバーンが持ち直したのを見て、そんな評価を下した。

(さ~て♪大魔王の力って奴を見せてもらおうかな♪)

ロイドは真っ直ぐバーンに向かって行った。
ただ真っ直ぐ、なんの警戒もしないで向かって行った。

(愚かな・・・)

バーンはそんなロイドの行動を愚かと判断した。
何の策もなく、自分の天地魔闘の構えに突っ込んできたからだ。
それだけ、バーンはこの奥義に自信を持っていた。
そして、ロイドとバーンの影が重なり・・・

天 地 魔 闘

バーンは自らの最強の奥義を発動させた。

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

(なにが起こった・・・・)

バーンは唖然としながら自問自答をしていた。
なぜ?どうして?・・・そんな疑問が彼の心の中に渦巻いていた。


天地魔闘は攻・防・魔の三大超必殺技を叩きこみ、完膚なきまでに粉砕する必勝の奥義。
ただの攻撃ではなく、超必殺技を言うのがこの技の恐ろしいとこだ。
相手が一の動作をする間に、自分は三の動作をする・・・天地魔闘の構えは必勝の奥義であると同時に破られることがない絶対防御なのだ。
無論、例外はある。
実際、バーンはこの奥義を地上世界の戦士達に破られたことだあった。
しかし、それは相手が複数いて、尚且つ策を用いてきたからであった。
今回の用に一対一、なんの策も用意してないロイドが相手なら、この天地魔闘の餌食になるはずだった。
だが―――

(なぜ・・・余が空を仰いでいる・・・・)

倒れていたのは、ロイドでなくバーンだった。




「・・・なんで、俺がお前のその技を破れたか教えてやろうか?」

唖然と空を仰いでいるバーンに向かって、ロイドは問いかける。

「別に難しいことじゃないぞ・・・俺はあんたが三の動作をする間に四以上の動作をしただけだ。」

「!!!!!!」

バーンはロイドの言葉を聞いて驚嘆した。
ロイドは「詳しく言えば~」っと、どんな風に攻撃をしたか事細かに語っているが、バーンの耳には入ってこなかった。
それだけ、信じらないことなのだ。




天地魔闘の構えは、その構えをしている間は自分から攻撃できない。
この奥義を発動させるために、莫大なエネルギーが必要だからだ。
攻・防・魔の超必殺技を瞬時に相手に叩きこむ天地魔闘・・・・しかし、その代わり、莫大なエネルギーを蓄積させて放たなければならない。
要は受けの奥義・・・カウンターなのだ。
天魔闘の構えの不動の構えは、相手に先手を打たせるだけでなく、その莫大なエネルギーを蓄えるため、余分なエネルギーを使用しない目的もあるのだ。
だが、ロイドが取った方法は違う。
受けではなく、攻めたのだ。
相手が三の動作をするなら、自分はそれ以上の動作をすればいい。
単純だが、まさしくその通りである。
しかし、それはどれほどのものか解っているのだろうか?
一瞬で三動作よりも多くの動作を行う・・・しかも、動きながら、エネルギーを溜めずに。
あのバーンですらも、受けの体勢でなければ蓄えることができないエネルギーを。
それが、一体どれほどの物かは言うまでもない。






「どうしたんだ?もう終わりか?」

バーンが驚嘆している所に、ロイドは嫌らしい笑みを浮かべながら問いかける。
その笑みと口調は「おまえなんか、いつでも倒せるんだぞ」っと言っているような物だった。

「くっ!!」

バッとバーンは立ち上がり、ロイドの方を向きながら、左手にエネルギーを込めていく。

「カラミティウォール!!」

振り向き様にそれを放った。


*カラミティウォール・・・エネルギーの衝撃波を直進する半円状の壁として前方に放つ技。


――ゴオオォォ―――

大の男の十人や二十人を容易く飲み込むと言ったほどの衝撃波が迫ってくる。
硬い地面をいとも簡単に削れることから、その威力の凄まじさが解るだろう。

「ふ~ん」

しかし、ロイドはそんなエネルギーの衝撃波が迫ってくるのにも関わらず、気の抜けた声を出しながらただ見ていた。
そして、目前まで迫ってくると・・・・

「はっ!!」

と、ただ大声を出した。
しかし、それだけでバーンのカラミティウォール吹き飛ばした。

(さ~て・・・次はどうするんだ?大魔王さん♪)

それだけの事をしたのにも関わらず、ロイドはワクワクッと楽しそうにしていた。
どうやら、さっきの行為にそれほど思うとこはないようだ。
そして、段々と衝撃で巻き上げられた土煙が晴れていき。

――ゴオオオオオォォ――

そこから、不死鳥を象った炎・・・カイザーフェニックスが飛び出してきた。

「ヒュー♪(結構洒落た技だな)」

自身を飲み込む強大な炎・・・不死鳥が迫っているのに、ロイドは口笛を吹きながら、陽気に見つめていた。
常人なら回避か防御の体勢に入るのに、ロイドはただそこに佇んでいた。

「に~~~」

そして、二ヤリと歯が見えるほどの笑みを受けべ、右手の人差し指を向けて・・・

「メラ!」

指先ほどの大きさのメラを放った。



片や不死鳥を象った強大な炎の塊。
片やフッと息を吹きかれば消えそうな小さな火の粉。
普通に考えれば、どちらに軍配が上がるか、小学生・・・いや、もっと幼い子供でも解るだろう。
だが―――


――ズボッ――


両者が激突した瞬間、小さな火の粉が不死鳥を貫いた。
一瞬の均衡すらも見せずに・・・



「なッ!!!」

バーンは目を見開き、驚嘆してしまった。
まあ、これは仕方ないだろう。
まさか、下級呪文であるメラ如きに、自分の呪文が破られるとは夢にも思わなかっただろう。
そのため、一瞬であるが我を失ってしまった。
それは、時間にすれば一秒にも満たない間だった。
しかし、その刹那の時間ですら、戦いにおいて命取りにあることもある。

――ゴオオオオォォ――

その刹那の間に、ロイドが放ったメラはバーンの体を包みこんだ。

「がああああああああぁぁ!!!!」

バーンは苦しみの声を上げながら、地面をのた打ち回った。



果たして、地上世界の人間達はこの光景を信じられるだろうか?
あのバーンが・・・大魔王と恐れられたバーンがただのメラ如きに苦しみ、地面をのた打ち回るなど・・・
恐らく、ほとんど・・・いや、全ての人間がこんな光景を想像すらもしなかっただろう。



「あぁーあぁーあぁー」

バーンは炎を消した後、息を吐きながら、呼吸を整えようとしていた。
しかし、その顔には未だに、信じられないと言う感情が浮き出ていた。

「・・・・魔法ってのはな」

そんなバーンに対して、ロイドは話しかける。

「使用者の魔法力の絶対量によって、その威力は大きく異なる。」

それは、魔法を扱う者にとっては、誰でも知っている事であった。

「つまり、俺のメラと、お前がさっき放った呪文じゃ、俺の方が威力が大きいということだ。」

ロイドはバーンに、教え聞かせるように言う。

「つっくッ!!」

バーンはそんなロイドを睨みつけながら、立ちあがった。




(戦いの結果は、第二話(下)を参照)
















「・・・・・・・・」

バーンは目を覚ました。
先ず、目に入ってきたのは空だった。
そのことから、自分が地面に横たわっていることが理解できた。

「よ!気付いたか。」

ロイドはバーンが目を覚ましたのに気付き、声をかけた。
バーンは上体を起こし、ロイドの方に目を向けようとして、あることに気付いた。

(戻っている?)

それは、自分の体が魔族の姿に戻っていることだった。

「うん?・・・ああ、体のことか。」

自分の体を見て、唖然としていたバーンの理由に気付いたロイドが説明し始めた。

「さっき、お前がやった奴・・・初めは“邪配合”か“進化の秘法”かと思ったけど、どっちかと言えば、“超獣化”に近い現象だったな。まあ、自己流であれだけの術式を組み立てられたのはスゲーけど、ちょっと、乱暴だったぞ。」

ロイドは肩をすくめながら、呆れるように言った。

「これからは気を付けた方が身のためだ・・・直すのにちょと苦労しちまったからな。」

「・・・・・・・」

バーンはロイドの説明を聞いた後、再び地面に上体を伏せた。
その顔には、最早驚きを通り過ぎて、なんの感情も浮かんでいなかった。

「余は・・・このような化け物に挑もうとしていたのか・・・・」

バーンはポツリと呟く。
その声は怒りも・悲しみも・絶望も籠っていない、ただ無気力な声だった。



今の彼を指すとしたら、“井の中の蛙大海を知らず”という言葉が似合うだろう。
天地魔界と言う狭い世界で恐れる者なしと言っても、それが他世界で通じるとは限らない。
特にこの世界・・・神界ではな。
それをバーンは体験した。
カイザーフェニックス、カラミティエンド、カラミティウォール、天地魔闘の構え・・・そして、切り札であった鬼眼王・・・
その全てがいとも簡単に破られてしまった。
正しく、彼は井の中の蛙であった。



「ま!確かに無謀って言えば無謀だったな。」

ロイドは呆然自失としているバーンに話しかける。

「あんたは自分の力に相当の自身を持っていたみたいだけど・・・そんな力じゃあ、この世界ではちっぽけなノミみたいなもんだぜ。」

人差し指と親指を小さく・・・本当に小さく向かい合わせた。
その言葉には、バーンを心配する様子は微塵も見られなかった。

「・・・・・・」

バーンはそれに反論するわけでもなく、ただ空を見つめていた。

「大魔王さんよぉ・・・あんた、力こそ全てを司る真理って言っていたそうじゃないか?」

ロイドは言っていることは確かだった。
かつて、地上世界にいた時、バーンは力こそ全てと言う信念を持っていた。
しかし、それは地上の勇者たちには受けいられない物だった。
あいつらの用に説教でもするのか?・・・そう思ったバーンだったが・・・・・

「それは、ある意味では正しいぞ。」

どうやら、違ったようだ。











あ~あ~・・・さっきまでの勢いはどこに行ったのやら、おとなしくなっちゃって。
よほど、自分の力に絶対の自信を持っていたんだろうな~~~って、その自信なくさせたのは俺か。
・・・・・・まあ、それは置いといてっと。
俺のはバーンの目を覗き込む。
うん♪まだ、目は死んではいないな。
これなら、大丈夫かな?

「力が真理ってのは、ある意味では正しいぞ。」

俺はバーンの様子をうかがう。
どうやら・・・聞いて・・るのか?
・・・いいか、聞こえてはいるようだしな。

「例えば、どこかの世界で戦争がおこっていた場合はどうする?」

俺は問いかけるように言葉を漏らす。
無論、答えてくれるのを期待したわけではない。
話のリズムを作りたかっただけだ。

「人々は血を流し・苦しみ・嘆き悲しむ・・・そんな世界を取ってり早く、平和にするためにはどうすればいい?」

話し合いで解決する?
確かにそれも一つの手だ・・・しかし、それで済むほど簡単な問題じゃない。
仮に、それで済んだとしても、話し合いをしている間に、どんどん人々の悲しみは広がって行く。
ではどうすればいい?
答えは簡単だ。

「暴“力”と言う力を使って解決すればいい。」

結局のところそうだ。
戦乱の時代、力なき者たちは悪。
例え、どんな理不尽な扱いを受けようと、それに反抗できる力がなければ弱い方が悪いとなる。
そんな理屈が通るのが戦争だ。


こんな時代に人々を救いたいと言う、所謂正義の味方みたいな奴が現れたとしよう。
しかし、こいつが自分の身すらも守れないひ弱な奴だったらどうなる?
どんなに立派な信念を掲げようとも、それを為す力がなければ、自分の信念を貫けはしない。
それに、こいつだってそうだ。
こいつを倒した勇者だって、結局最後は暴力で倒した。
そう考えれば、手段の一つとしては間違った考えではなかった。




知“力”という力があれば、それだけ人生の選択肢が増える。
良い学校、良い会社に入るには、何よりも知力と言う力が必要だ。
まあ、これが絶対と言うわけではないけど、ほとんどがそうだ。
なぜなら、知力ってのは人々に一番目につく力だからな。
人柄など、目に見えない力がどんなに凄くても、目に留められないようじゃ宝の持ち腐れになる。


知力と言う力があれば、自分がしたい事、為したいことをできるようになる。
もっとも、それをうまく使えると言うのが前提条件だけど、少なくても普通の人よりは幸せになれるチャンスは訪れる。



財“力”と言う力があれば、人より多くの財を持てる。
自分が欲しい物を手に入れられ、人の役に立ちたいならそれらを使っていろりろ支援をすることができる。
子供がいるなら、教育を受けさせることもできる・・・つまり、不自由な生活をしなくて済む。
これの場合、良く愛がどうのこうのって言う奴がいるけど、そいつらだって、結局一定以上の財力がある奴と結婚して幸せになっている。
極端な話、まったく財力がない奴と結婚して、本当に幸せになれるのか?って話だ。


要は幸せになるには、一定以上の財力って言う力が必要な訳だ。
中にも例外もいるけど、そういった奴は希だろうからな。



人ってのは、ほんと不思議な生き物だよな。
一つの欲が満たされれば、さらに高位の欲を満たそうとする。
食欲などの生理的欲求や身の回りの安全が満たされると、次は「人から愛されたい」「人から尊敬されたい」と思う。
それは、自分が持っているものを他人に与えることで満たされる。
要は、自分が幸せだから、他人も助けてあげましょうって事だな。




「・・・・・ま!そう言うわけだから、お前の力こそ真理だって考えは、決して間違ってはいなかったぞ。」

ふ~長かった。
こんな長い説明したの、いつ以来かな?

「今回だってそうだ」

俺はバーンを見据えながら話す。

「今回の場合、お前は腐った神々を粛正し、腐った世界を正すために戦った。けど、お前より強い者に敗れた。」

どんな信念を持って、戦いを挑もうと、力がなければその信念を貫けない。

「今まで小難しいこと言ってきたけど、結局のところ自分のエゴ・・・我儘を貫けたら勝ちと言うことだ。」

結局のところそうだ。
誰かを助けたいと思う気持ちも、自分のエゴでしかない。
それを貫き通すためには、何よりも力が必要なのだ。
相手の暴力も知力も財力も、全ての力を圧倒させる強大な力が。

「バーン・・・あんたが、腐った世界を正したいと言うなら、力を付けろ!全てをひれ伏せさせ、自分のエゴを貫ける力をな!!」

俺は少し声を硬くして、最後の忠告をした。
さ~て、どうする?バーン。
ここで絶望し、折れてしまったら、結局お前はその程度の存在ってことだ。
けど、もし這い上がることができたら・・・・・・












「・・・・・・・・・」

バーンはロイドの話を聞いた後、空を見つめていた。
その顔には、特になんの感情も浮かんでいなかったが、目だけは未だに強い意思を持っていた。

「・・・ふっふっ」

唐突にバーンの口から小さな笑い声が漏れ出す。

「ふっふっふっははははははははははっ!!!」

そして、それは次の瞬間大きな笑い声へと変化した。









ああ・・・確かに自分は小さな存在だった。
天地魔界と言う、狭い世界で生きてきた、本当に小さな存在だった。
神々を粛正しようと豪語したが、その神にあっけなく敗れた。
しかし!それでも心に残った物はある!
それはなにか!!?









「ふっふっふ・・・ロイド・・と言ったな。」

バーンは上体を起こし、ロイドを見据える。
その目には、強い意志が秘められたいた。









魔界に太陽の日を注がせること?

―――違う!!!

それは、すでに自分より強き王が為した。今更自分が出る幕などない!!









「より強いものが、自分の信念を貫けると言ったな・・・」

バーンはロイドに問いかける。
その声は、もはや無気力ではなく、力強く意思が籠った声だった。









神々を粛正すること?

―――違う!!!

神に対して恨みは残っているが、そんなことではない!!









「なら・・・・」

バーンは一度言葉を区切り、より意思が籠った目でロイドを見据えた。
そして、自身の心に残っていた思いを言い放った。











「余が神になろうと・・・問題ないのだな?」











自らの思いを・・・信念を貫くことだ!!!!








・・・これが、後の世に神々の最高神となるバーンと、
自らを大聖天魔王と名乗る、神界最強の戦士ロイドとの出会いであった。
















あとがき

先ず、謝罪をします。
バーンファンの皆さんほんとーーーーーに申し訳ありませんでしたーーーーーー!!!!

いや、作者もバーンは嫌いではありません。
しかし、どうしても原作の性格上、あれ以上強くなってもらうには、これしか思い浮かばなかったんです。
自分より圧倒的に強い存在に、誇りも何もかも一度折ってもらう・・・それしか、思い浮かばなかったんです!!

え~と、とりあえず一度番外編は終わりです。
もしかしたら、続きを書くかもしれませんが、今のとこ予定はないです。

では次回。





















[15911] 番外編  母のように
Name: 天魔◆b849f691 ID:99b61ddd
Date: 2010/05/09 19:17
番外編  母のように








その日、大輝はいつもように修行を終えて、家で疲れを癒していた。

「♪♪♪」

マージも同じように、家で寛いでテレビを見ていた。
テレビを見て喜んでいる様は、普通の人間となんら変わりなかった。
やがて、テレビがCMに入る。

「???」

ふと、CMに気になる文字が映った。

「父~これってどういう意味?」

自分で考えても解らなかったので、自らの父に問いかける。
大輝はマージの言葉を聞いて、う~ん?っと何気なくテレビを見て・・・

「あっ」

小さく声を漏らした。
その後、マージにその意味を教えた。教えてもらったマージは、急いで何処かに向かう。
大輝は、そんなマージを見送った後、さっきの文字の意味を考えていた。




(母の日・・か・・)









“母の日”

日頃の母の苦労を労り、母への感謝を表す日。
日本では5月の第2日曜日に祝うが、その起源は世界中で様々であり日付も異なる。
一般的には、カーネーションなどを贈るが、最近ではカーネーションに限らずバラ、ガーベラなども好んで贈られる。








「仕事を紹介してもらいたい?」

アクセルが街中を歩いていると、向こうから見知った顔・・・大輝が歩いてきた。
そして、前触れもなく、仕事を紹介てくれるよう頼まれた。

「なんでだ?」

アクセルが大輝に仕事を紹介するのは、主に仕事を通して様々な経験を積ませるためである。
大輝自身はそれに加え、お金を稼ぐためでもあるが、それは今は関係ないから割合する事にしよう。
今までは自分から仕事を持っていって、それを大輝が解決するという形だった。
言うならば、自分は仕事の斡旋所みたいな物である。
しかし、大輝から仕事を頼むのは初めてだった。アクセルは、それが気になった。

「え~と・・諸々の事情でお金が必要でして・・・・」

「だから、なんだよ?その事情って?」

「・・・ああぁ・・ええ・・」

恥ずかしいのか、それとも言いにくいのか、大輝は視線を泳がさせていた。
そして、その視線はある一点で止まった。
すぐ目をそらす大輝だったが、仮にも神界トップクラスの実力者であるアクセルにはその短い時間で十分だった。
アクセルは、大輝の目線の先を辿り、それを見つけた。

「母の日?」

「ッ!!」

そこには、母の日書かれた看板が掲げられていた。
アクセルがポツリと呟くと、大輝はビクッと小さく肩を震わせた。

(たくっ・・・そんなんじゃ、自分から正解ですって言ってるようなもんだぞ)

並の人間ならまだしも、アクセルから見ればバレバレである。

「それで?なんで母の日に金が必要なんだ?・・・いっちゃ悪いが、お前はもう死んでいるんだぞ。」

金が必要なのは、恐らく母に日の贈り物を買うためだろう。
しかし、買う理由が解らない。
既に死んだ人間が、むやみやたらに地上世界などに干渉するのは禁じられている。無用な混乱を避けるためだ。
ある程度功績のある者ならば例外的に認められるかもしれんが、大輝の場合のそんな物などあるわけもなく、贈り物を買ったとこで無駄になるだけだ。
アクセルは、その事を伝えるが・・・

「あ~いや~俺の母親じゃなくて・・・」

どうやら違ったようだ。

「じゃあ、誰に送るんだよ?」

アクセルの問いに、大輝は答える。

「え~と・・・アンナさんに・・・」

「アンナ?」

大輝の答えに、アクセルは頭に???を浮かべる。
一瞬養子にでもなったのか?と言う考えが過ったが、すぐ消した。

(おおかた、日頃の感謝の意味込めてだろうな)

アクセルはそう判断した。そして、確認のため大輝に聞いてみる。

「なんで、アンナが母の日に関係してるんだ?養子にでもなったのか?」

「いや、そうじゃなくて・・日頃お世話になってるからこの機会に、少しでも恩返ししようと思って。」

いつも世話になってるが、大輝はアンナ対して、特に何もしてなかった。
それは、修行で精一杯なのもあるが、アンナ自身がそう言った見返りを求めないのも原因だった。
しかし、やはり大輝もこんなに世話になってるのだから、せっかくだからこの機会に何か贈り物をしようと考えたのだ。

「ふ~ん」

「なんすか・・」

答えを聞いたアクセルは、ニヤニヤと大輝を見つめる。
それに対し、大輝は小っ恥ずかしくなったのか、少し声を荒げる。
大輝ぐらいの年頃だと、母親の感謝と言う気持ちはあるが、それを言葉で表すのにはやはり恥ずかしい物だ。
まあ、だからこそ贈り物で気持ちを表そうとしているのだろう。
アクセルは思わず、微笑ましい気持ちになってしまった。
普通だったら、アンナほどの美人に手取り足とり教えてもらっているのだから嫉妬でも湧くと思うが、大輝とアンナの関係を見てるとそんな物は湧かない。
なぜなら、大輝とアンナが互いに持っている感情は恋愛でなく、親愛に近い物なのだ。
正しく、親子のような関係なのだ。
さすがに、そんな関係に嫉妬など湧かない。

「・・・それで、何かいい仕事でもないんですか?」

いつまでもニヤニヤしていたアクセルに、大輝は声を荒げて問いかける。
やはり、少し恥ずかしかったようだ。それでも、このような相談をしたのは、同じ男であると同時にアクセルの事を信用していたからだ。
なんだかんだ言って、この二人はいい関係を築いていているようだ。
アクセルも大輝の気持ちを汲みとって、手助けぐらいなしてやろうとしたが・・・

「あ~悪い、今紹介できる仕事は一つもないんだは。」

この時期は、大輝の様な考えを持つ者も多いため紹介できる仕事は一つもなかった。
一応あるにはあるが、それはどれもこれも危険が及ぶ物や、何かの専門知識が必要な物である。
そんな仕事、さすがに紹介するわけにはいかない。

「・・・そうっすか・・」

大輝は少し、落胆した表情になる。
今絶対必要なことではないが、そこら辺は日本で育った大輝。
やっぱり、何か恩返しをしたい思った。
そんな大輝に対して、アクセルは一つアドバイスをすることにした。

「あ~じゃあ、自分で何か作ってみたらどうだ?」

それは、一度自分でも考えたものだったが、なにを贈っていいのか解らなかった。
一応母親には無難にカーネーション等は贈った事はあるが、そんな物を作る方法など大輝には解らなかった。
調べれば、ある程度解る事には解るが、大輝の場合、修行で精一杯でそっちまで手が回らなかった。

「いや~そんな事言ってもですね・・・なにかないですか?アクセルさん?」

「そんぐらい自分で考えろよ。」

贈り物は自分で考えるもんだぞっとアクセルはアドバイスをした。

「いや、だから何を贈っていいか解らないんですよ・・・俺、そんな女性と付き合った事ないし。」

しかし、大輝はこう言う時何を贈っていいか解らなかった。
大輝の言葉を聞いて、アクセルは仕方ないなと言う感じでアドバイスをした。

「それじゃ、アクセサリーでも作ってみたらどうだ?」

さすがに、ダイヤなどを持ってくるわけにはいかないが、天然石のような物ならそこら辺にある。
それで、アクセサリーでも作って贈れば、日頃の恩返しには十分だ。
アクセルのアドバイスを受けて、大輝は何がアンナに合うか考え始めた。

(アンナさんのイメージ・・・・)

・・・アンナ、優しくて面倒見がいい、正に母のような性格。
氷雪系魔法が得意なのと銀髪であることから、まるで雪を連想させる神秘さと美しさがある。
そこから導き出されたのは―――

「え~と・・・サファイヤ?」

「んなもん、そこら辺に落ちていると思うか。」

「ですよね~」

大輝も、まさかそんな物簡単に手に入るとは思っていらず、すぐその案を却下した。
そして、他にないかと考える。

「・・・う~ん・・・」

あれほど世話になっているのだ、変な者を贈るわけにはいかないと、真剣に考える。
しかし、やはり何も思いつかなかった。
こう言う時、自分のレパードリーの少なさを恨めしく思う。
結局、良い物が浮かばず、アクセルに頼る事にした。

「はあぁ~それじゃあ、人魚の月なんかどうだ?」

アクセルも、このままだと何も思いつかないと判断して、人魚の月を教えた。

「人魚の月って、俺が初めてやった仕事の時の・・」

大輝の頭に浮かんだのは、最初の仕事で捜索した真珠のようなネックレスだった。

「そ、あれなら比較的価値は高いから、お前が今まで受けた恩を返すには十分だ。けれど、滅多に見つかる物じゃないぞ。」

人魚の月・・・その名の通り、おとぎ話にも登場する、半場伝説と化した人魚族の宝石。
その価値はとても高く、一流企業に勤めている者でも手が届かない。
おまけに、海底に作られるため、滅多に見つかる事がない貴重な宝石。
しかし、鉱脈の用に決まった場所に造られるわけではないので、誰にでも手に入れられるチャンスがある。

「それって、何処にあるんすか?」

大輝は滅多に見つからにと聞いて、一瞬どうするか迷ったが、どうせならなるべく感謝が籠った物を贈ろうと思った。
そのため、人魚の月が何処にあるかアクセルに問う。

「え~と・・・ここら辺だと・・この海域だな。」

アクセルは紙にある程度のポイントを書いて、大輝に渡した。
大輝はその紙を受け取って、「ありがとうございました」っと礼を言い、さっそくその場所に向かった。

「がんばれや~~」(アンナの奴、結構慕われてるじゃねか)

アクセルは、笑みを浮かべながらそれを見送った。
















「・・・・・・」

俺は目の前に光景に言葉を失ってしまった。
海・海・海!何処までも広がる大海原!!
ここから、ビー玉ぐらいの大きさの物を探すのか・・・

「・・・何迷ってんだ・・・」

俺にだって男の意地ってもんはあるんだ!
絶対見つけてやる!
常日頃お世話になっているアンナさんの恩返し!やるかっ!!

「・・うしっ!」

気合を入れて、俺は海に飛び込んだ。




海の中は、さすがと言うか今まで俺が見てきた海とは違い、透き通って綺麗だった。
魚なんかも見た事がないな、って当たり前か、ここは俺がいた世界じゃないんだから。

(とっと・・・海の中の観光はこれぐらいにして・・・探すとしますか・・)

とりあえず、海底付近をくまなく探すか。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

(まいったな・・・・)

あれから結構探したけど、全然見つからない。
そもそ人魚の月ってのは、自然発生する魔法石なんだ。
魔法石ってのは、そのままの意味で魔力を封じた石。自分の身体能力を上げたり、混乱状態などの状態異常を直したりなど、大小様々な効果がある。
人魚の月もそれと同じなんだけど、違うのは自然発生、それも極たまに海底のみに出現する事だ。
これが厄介なんだ。自然に造られるため、何処でとれるかなんて特定できない。
ある程度特定できる事はできるけど、それでも、かなりの広範囲になる。
だからこそ、希少価値が高いんだけどな。

「ぷはっ!」

さすがに苦しくなってきたので、地上に出て新鮮な空気を吸う。
やっぱり、簡単にはいかないか。

「・・・・もう帰るか・・・」

地上は、もう夕暮れだった。夕日に照らされた海が幻想的で綺麗だ。
さすがに、もうそろそろ帰らないとマズイし、明日の修行に差し支えるので、今日は中断することにした。


――次の日――

効率を考え、空からインパスやレミラーマを使って捜索するが、どうも著しくない。
どうやら、俺の場合直接探に行く方が効率がいいらしい。
一瞬エネルギー波で海を吹っ飛ばそうかと考えたけど、それじゃ、間違えて人魚の月も吹っ飛ばしてしまうから却下した。
それ以前に、自然破壊なんかして、そっち関係の人のお世話になりたくないし。
結局今日も成果はなし。


――さらに次の日――

ある程度海域は絞れたけど、やはり成果なし。

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・

「はあぁはあぁはあぁ」

さすがに、きつくなってきたな・・・
三日間、修行とこんな広い海の捜索を連続でやってるからな。
正直・・・・眠い・・・
けど、ようやく海域が絞れたんだ。
後はこの海域を探すだけだ。
・・・これでなかったら、あきらめるしかないけど・・・

「とりあえず・・・いくか」

そうだ・・・結局のところ実際に見ないと解らないんだ。
なら、行動するだけだ。
俺は自分に言い聞かせ、海の中に入っていった。













海底付近をくまなく探す大輝。しかし、その表情はあまり良いとは言えない。
やはり、かなり疲れが溜まっているようだ。

『・・・・・』

そんな大輝に近づく、一つの影があった。
その影はゆっくりと大輝に迫っていき・・・

「ッ!!!」

襲いかかった。
大輝は一瞬反応が鈍るが、何とか回避した。やはり、相当疲れているようだ。

(チッ!こんな時に・・)

心の中で悪態をつきながら、襲いかかってきた相手を確かめる。


そこには、数メートルはある巨体に尾ひれが付いている、竜のような姿をしたモンスター

『キシャアアアアァァ!!』

水系モンスター、しんかいりゅうがこちらを睨みつけていた。

*しんかいりゅう・・・深海で過ごすため、生態は謎に包まれている古代の竜。水系最上級モンスター。



(よりにもよって、最上級モンスターかよ・・・・)

普段なら、特に危険な相手ではないが、今の自分はかなり体力が激減している。
おまけに、ここは相手のテリトリー。正直、簡単にはいきそうにない。

(話し合いでは・・・・無理だな・・)

平和的に解決しようとした大輝だったが、相手を見てすぐ断念した。
少なく見ても、目の前の相手はこちらに対しての敵意がバンバン感じる。
どうやら、大輝を縄張りを荒らしに来た敵と認識したようだ。

『キシャアアアアァァ!!』

そんな事を考えていた大輝に、しんかいりゅうは容赦なく襲いかかる。
大輝は体を捻るようにして回避した。しかし、その時しんかいりゅうが通った時に発生した海流に飲み込まれ流された。
なんとか、体勢を立て直し、しんかいりゅうの方に目を向けるが・・・

(あれ?)

そこに、しんかいりゅうの姿はなかった。
大輝は、急いでしんかりゅうを探す。首を前・後ろ・左右に向けて探すが、その姿はなかった。
その時、ふと上から気配を感じた。大輝は急いで上に目を向ける。

「!!!!!」

そこには、しんかいりゅうが口をあけながら、凄まじいスピードでこちらに襲いかかってきた。

――ガアッ――

(チッ!)

大輝は回避することができず、まともに受けてしまう。
なんとか、飲み込まれないように両手で口を押さえつける事には成功した。
しかし、その勢いは殺せず、そのまま海底に衝突した。

「・・・がぶ・・うっぎ・・・」(マズイ・・・空気が・・・)

海底に衝突したためと、歯を食いしばりながら耐えているため、口から空気の泡が漏れ出す。
幸いだったのは、海底が柔らかい砂だった事か。
しかし、この状況から逃げようにも、上からその巨体で押さえつけられているため抜け出す事が出来ない。
反撃しようにも、両手は口が閉じないよう押さえつけている。
おまけに、此処に来て一気に疲労が襲ってきた。

(・・こうなったら・・・)

「バリボー!」(ラリホー!)

このままでは不味いと判断し、大輝はラリホーで相手を眠らそうとする。
ラリホーを受けたしんかいりゅうは、僅かにだが力が弱まった。
いける!そう判断して、大輝はさらに魔法力を高めていく。

――ヨロッ――

すると、今度はその巨体全体が身じろぎ、遂には眠ってしまった。
さすがに、疲れているとはいえ、今の大輝の魔法力は並のモンスターを遥かに超えている。
目の前のしんかいりゅうにはそれで十分だった。

(悪い・・・)

大輝は、しんかいりゅうが眠ったのを確認すると、縄張りを荒らした事に心の中で謝罪をし、捜索を再開した。












「あ~あ~何やってるんだが・・・」

そんな大輝を見守る一つの人影があった。

「・・・・ふうぅ~」

その影は小さくため息をついた後、ゴソゴソとポケットを探り始めた。
そして、小さい何かを取り出し、ピンッと指で弾いて、海の中にその小さい何かを放り込んだ。












(はあぁはあぁはあぁ・・・不味いな・・・・)

しんかいりゅうの脅威を取り除いた大輝だったが、そのせいで疲れが一気に増した。
意識が飛ぶほどではないが、眠気と共に体力もかなり失った。
それに、そろそろ日が暮れる。つまり、タイムリミットが迫っている。
大輝の顔に焦りが生まれる。

(後は、この海域だけだな・・・)

大輝は一抹の望みをかけ、最後の海域を捜索し始めた。



(うん?)

最後の海域を捜索していた大輝の目にキラッと何かが光ったのが見えた。
見間違いかと思い、目凝らしてみるが、確かに何かが光っている。
大輝は急いでその場所に向かう。

(・・・あった)

そして、遂に見つけた。自らの目的である、人魚の月を。

(綺麗・・・)

人魚の月は男である大輝でも、思わず見惚れてしまう美しさだった。
海底に届く僅かな光に照らされているだけなのに、不思議と存在感がある。
引きよされるような魅力・・と言うより、何か神秘さを感じる。
なるほど、これなら、おとぎ話に出てくるような伝説として言われても納得する。

(とっと、喜んでばかりいないで、急いで帰ってネックレスを作らないと・・・)

漸く見つけたため、心の中でルンルン気分でいた大輝だったが、正気に戻り急いで島に帰った。









島に帰ってきた大輝は、部屋にこもって、ネックレス作りに没頭していた。
アクセルから、素人でもできる作り方の本やある程度完成した土台の材料を貰っていたため、それほど苦労はしなかった。

「できた~~~」

そして、遂に完成した。
人魚の月が中心に付いているだけで、その他には特に細工が施されていない、非常にシンプルな物。
しかし、だからこそ、人魚の月の美しさが目立った。

「ははっ・・・まあ、俺にしちゃ・・・上出来・・・だ・・・」

完成したネックレスを見て満足していた大輝だったが、カクッと突然机に伏せてしまった。
どうやら、今までの疲れと、完成した安心感から一気に眠気が襲ってきたようだ。
そのまま大輝は、ネックレスを傍らに泥のように眠り続けた。

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

暫くして、大輝の部屋に一つの人影が現れた。大輝より高い身長。その大きさから、どうやらマージではないようだ。

「・・・・・」

その影は大輝が眠っているのを確認すると、机の上にあったネックレスを手に取る。
そして、ジーッとネックレスを観察し始めた。

「・・・たく、こんなんじゃすぐ壊れちまうぞ。」

暫く眺めていた影だったが、唐突にそう言葉を漏らし、ネックレスに手をかけた。
カチャカチャと言う音が明かりが灯っていない部屋に響く。
暗くて確認できないが、壊してる訳ではなく、修正しているようだ。

「・・・こんな事をしてるなんて、俺はこいつの父親か・・・」

自分がしている事を改めて考えて、その影はそんな言葉を漏らした。
すると―――

「あら、結構似合っていますよ。」

その影の言葉に別の声が答えた。

「勘弁してくれ。結婚もしていないのに、子持ちなんかになりたくねぇよ、しかも、こんなでかい子供。」

しかし、その影は特に焦りもせず、少し憂いを含んだ声で答えた。
どうやら、自分以外に誰かがいる事に気付いていたようだ。

「と言うかお前、こう言う時は知らんぷりするものだぞ。」

影は、その声に対して咎めるように言う。

「ごめんなさい。ここ最近、様子が変でしたので・・・」

影の咎める言葉に対してその声は、本当に心配している声音で答えた。
そして―――

「それに、子供を心配するのお母さんの務めですからね。」

優しさを含んだ声で答えた。
その声に嘘偽りはなく、子供を心配する母のようだった。

「おまえなぁ~」

「あら?焼きもちですか?お父さん。」

「・・・勘弁してくれ・・・お母さん。」

その影と声は、眠っている大輝の傍らでそんなやり取りをしていた。
夜が更けていくと、その声と影の持ち主の姿は消えていた。
















「あれ?アンナ様、どうしたんですか?それ?」

アンナはバーンパレスの親衛隊長であると同時に、メイド長も務めている。
当然、メイドの仕事をしていると他のメイドとも出会う。
その内の一人が、アンナの首元に普段ない物があるのに気付き、問いかける。

「これですか?・・・フフッ」

それに対し、アンナは嬉しそうに笑みを浮かべ、それを弄繰り回す。

「もしかして、彼氏からのプレゼントですか?」

一人のメイドがそう言うと、他のメイドもキャーキャーと話し始めた。
異性との恋愛が話しのネタになるのは、何処の世界でも変わらないようだ。

「そうですね・・・男の人と言うのは、間違いありませんね。」

アンナの言葉を聞いて、ますますメイド達はヒートアップしていく。
しかし、それは次のアンナの言葉で一気に冷めた。

「なにしろ、私の息子ですからね♪」

ピキーン、時が止まった。
え?息子?いつの間に?と言うか、相手は?・・・そんな思いがメイド達の心の中に渦巻く。
個人の差はあれ、どのメイドもかなり困惑しているようだ。

「♪♪♪」

アンナは、そんなメイド達を気にする様子はなく、仕事に戻っていった。
その日のアンナは、終始笑顔だったと、後のメイド達は語った。



首に、人魚の月のネックレスを付けながら・・・・・













おまけ

「母ーー♪♪♪」

マージは、マーシャのもとを訪ねた。
いつもだったら、喜んで迎えるマーシャだったが、その日は違った。

「・・・・マージ・・・なんだそれは?」

マーシャは困惑しながら、マージが持っている物を指さし問いかける。

「母の日のプレゼント♪一緒に食べよー♪♪」

マージは笑顔で答える。
こんな小さい子供が、母親にプレゼント、しかも母の日に贈る。
普通だったら、微笑ましい光景なのだが、マーシャも含めてた街の人達は困惑した表情でマージを見つめていた。
いや、正確に言うには、マージが持っているものを見つめていた。
マーシャは、一瞬どうしようと思ったが、意を決してマージに話しかけた。

「・・・さすがに、“やまたのおろち”をそのままと言うのはな・・・・」

困惑しながら、そう呟いた。



*やまたのおろち・・・五つの長い首と頭を持つ、巨大な竜。ドラゴン系最上級モンスター


















あとがき

唐突に思いついたネタを書きました。

本編は、もう少しお待ちください。

では次回。








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