グロービス・グループ代表、グロービス経営大学院学長、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー。
京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。 住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。2006年4月にグロービス経営大学院を開学。学長に就任し、自ら「企業家リーダー シップ」科目の講師として教鞭をとる。
ブログは、コラム「起業家の風景」、オピニオン「起業家の冒言」の2種類を執筆。
TwitterのアカウントはYoshitoHori(http://twitter.com/yoshitohori)。
Ads by Google
国際社会と日本社会の価値観の違い〜東アジア経済サミットでの問題発言に思う〜
2010年06月07日10時14分 / 提供:グロービス代表 堀義人ブログ「起業家の風景/起業家の冒言」
雨のホーチミン。バイクがうごめき、クラクションが鳴り響く。バイクをよく見ると、男女のカップルが多い。後の女性の乗り方で二人の親密度がわかる。
ダボス会議を運営する世界経済フォーラム(WEF)が主催する「東アジア経済サミット」が開幕した。ホテル・ウーマンの水色のアオザイが、映える中、ホテルにチェックインし、会場に向かう。親しい友人と握手をして再会を喜び、日本から来た仲間とも会釈をする。会場は、ホテルのワンフロアで、比較的小ぢんまりとしている。その会議で、大きな問題発言が飛び出した。
「アジアの若者」のセッションでの、人材派遣会社のアデコ社のアジア太平洋地域のCEOのマーク・デュレイ氏による発言だ。彼は、次の通り述べたのだ。「日本の大学で教えており、そのクラスの半分が日本人の学生だ。日本の若者は、価値観を持たない(No Values)」、と。そして、「もう少し詳しく説明しよう」と前置きして、次の通り続けた。
「日本の若者は、ルイ・ヴィトンのバッグと携帯電話さえ持っていれば、それでいいのだ。クラスでも全く授業を聞かないし、携帯電話で遊び、友達と会話して、話を聞いていない」、と。
僕は、唖然とし、モデレーターも、「強い発言ですね・・」と論評しないで、次に話が移った。アデコの日本在のアジア太平洋地域のCEOが東アジア経済サミットの場で発言する内容だろうか。しかも前後の脈絡が全く無い中での発言だった。
僕は、憤慨したので、パネルが終わった後、前に出向きデュレイ氏に質問した。「どこの大学ですか?」と聞いたら、「大分にある立命館である」と答えが返ってきた。公の会議の場で出た発言であり、オフレコではないのだ。立命館関係者には、是非釈明を求めたいし、立命館の学生からは、コメントが欲しいと思っている。
その場にいたオイシックスの高島社長も、憤慨していた。「今回の若者プログラムには日本人が一番多く参加していたのに。アデコ社とはもう取引をしない」と言っていた。
この会議は、主催国のベトナム以外には、ラオス、カンボジア、そしてミャンマーの首相が参加する会議である。当初は、日本から枝野さんが出席する予定だったが、新内閣発足にともない欠席することになった。急遽タイ国首相も参加する重要な会議である。その場で出たのが、上記の問題発言である。
ここで、僕の見解を書きたいと思う。正直言って、僕の大学時代は、サボってばかりの学生だった。つまり、デュレイ氏の言う、全く勉強しない学生の一人だった。今の日本の学生は、以前に比べると就職が厳しくなったからもっと勉強していると聞いていた。だが、もしかしたら昔と似たりよったりなのかもしれない。だが、だからと言って、「日本人の若者には価値観が無い」と言うのは、極論であり、且つ一般化し過ぎだと思う。
「価値観が無い(No Values)」と言うのは、「人間でない」と同義だと僕は捉えている。価値観を持たない人間など、僕にとっては考えにくいし、もっとも侮辱的な発言だと思う。「ヴィトンのバッグと携帯を渡せば満足する」という発言を見過ごすわけにはいかない。日本人として、断固として抗議し、問題発言には責任を持ってもらうべきと考えている。
僕がなぜ、ここまで強くツイッターで発言し、ブログを執筆しようと思ったのか。それは、この問題発言の裏側に、日本人が克服すべき課題があると思っているからだ。日本の環境では、批判・非難されても、「大人の対応」をするように促され、聞き流すことが多いし、それが良しとされてきた。だが、国際社会で、聞き流すと、「反論できない弱虫」と捉えられる事が多いように、経験的に思っている。
ダボス会議を運営する世界経済フォーラム(WEF)が主催する「東アジア経済サミット」が開幕した。ホテル・ウーマンの水色のアオザイが、映える中、ホテルにチェックインし、会場に向かう。親しい友人と握手をして再会を喜び、日本から来た仲間とも会釈をする。会場は、ホテルのワンフロアで、比較的小ぢんまりとしている。その会議で、大きな問題発言が飛び出した。
「アジアの若者」のセッションでの、人材派遣会社のアデコ社のアジア太平洋地域のCEOのマーク・デュレイ氏による発言だ。彼は、次の通り述べたのだ。「日本の大学で教えており、そのクラスの半分が日本人の学生だ。日本の若者は、価値観を持たない(No Values)」、と。そして、「もう少し詳しく説明しよう」と前置きして、次の通り続けた。
「日本の若者は、ルイ・ヴィトンのバッグと携帯電話さえ持っていれば、それでいいのだ。クラスでも全く授業を聞かないし、携帯電話で遊び、友達と会話して、話を聞いていない」、と。
僕は、唖然とし、モデレーターも、「強い発言ですね・・」と論評しないで、次に話が移った。アデコの日本在のアジア太平洋地域のCEOが東アジア経済サミットの場で発言する内容だろうか。しかも前後の脈絡が全く無い中での発言だった。
僕は、憤慨したので、パネルが終わった後、前に出向きデュレイ氏に質問した。「どこの大学ですか?」と聞いたら、「大分にある立命館である」と答えが返ってきた。公の会議の場で出た発言であり、オフレコではないのだ。立命館関係者には、是非釈明を求めたいし、立命館の学生からは、コメントが欲しいと思っている。
その場にいたオイシックスの高島社長も、憤慨していた。「今回の若者プログラムには日本人が一番多く参加していたのに。アデコ社とはもう取引をしない」と言っていた。
この会議は、主催国のベトナム以外には、ラオス、カンボジア、そしてミャンマーの首相が参加する会議である。当初は、日本から枝野さんが出席する予定だったが、新内閣発足にともない欠席することになった。急遽タイ国首相も参加する重要な会議である。その場で出たのが、上記の問題発言である。
ここで、僕の見解を書きたいと思う。正直言って、僕の大学時代は、サボってばかりの学生だった。つまり、デュレイ氏の言う、全く勉強しない学生の一人だった。今の日本の学生は、以前に比べると就職が厳しくなったからもっと勉強していると聞いていた。だが、もしかしたら昔と似たりよったりなのかもしれない。だが、だからと言って、「日本人の若者には価値観が無い」と言うのは、極論であり、且つ一般化し過ぎだと思う。
「価値観が無い(No Values)」と言うのは、「人間でない」と同義だと僕は捉えている。価値観を持たない人間など、僕にとっては考えにくいし、もっとも侮辱的な発言だと思う。「ヴィトンのバッグと携帯を渡せば満足する」という発言を見過ごすわけにはいかない。日本人として、断固として抗議し、問題発言には責任を持ってもらうべきと考えている。
僕がなぜ、ここまで強くツイッターで発言し、ブログを執筆しようと思ったのか。それは、この問題発言の裏側に、日本人が克服すべき課題があると思っているからだ。日本の環境では、批判・非難されても、「大人の対応」をするように促され、聞き流すことが多いし、それが良しとされてきた。だが、国際社会で、聞き流すと、「反論できない弱虫」と捉えられる事が多いように、経験的に思っている。
1 | 2 |
Ads by Google
グロービス代表 堀義人ブログ「起業家の風景/起業家の冒言」 最新記事
- 国際社会と日本社会の価値観の違い〜東アジア経済サミットでの問題発言に思う〜- 07日10時14分
- 100の行動から始まる「静かな革命」- 07日00時00分
- 世代の責任、リーダーとしての自覚- 18日18時42分
- 「評論知」と「実践知」- 16日20時05分
- 社会起業家&(アンド)起業家- 13日00時20分
- 世論形成の場としてのツイッター・ブログ- 11日13時19分
- オピニオン:「格差社会?」〜二宮尊徳翁から学ぶ精神- 09日10時56分
- 個人の自立心が日本を強くする- 04日14時51分
- 日本のリーダーよ、変化に適応する気概を持て!- 03日16時06分
- オピニオン:一人一人の言動が日本を変える- 01日20時16分