中日−ロッテ 1回表無死一塁、今江の送りバントにダッシュする中田賢=ナゴヤドームで(榎戸直紀撮影)
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心臓の弱い人には刺激が強すぎたかもしれない。大荒れの幕開け。「全然、感覚が…。ボクもよく分かんなかったです」。プレーボール直後の1回、中田賢が完全に制御を失ったのだ。
先頭四球。バントで二塁に送られると、3番・井口のときに2球連続暴投だ。2つ目は、足が引っ掛かって転んだ。スタンドはどよめく。相手は立っているだけ。なのに走者を生還させた。
ただでさえ「暴れ馬」。手綱まで失った。暴走だ。つなぎ留めたのは森ヘッドコーチ。「森さんに、全然下が使えてない、と言われて、それからいいかたちで使えるようになった」。2回は3人斬りと変身した。
劇場の波乱は続く。3、4回とともにブランコの失策で大ピンチに。「苦しかった…、ですね」。亀裂となり、崩れやすいパターン。「起きてしまったことは仕方がないので、その場その場でどうしのぐか考えてました」。粘った。それぞれ最少失点で切り抜けた。
ハラハラドキドキ。最後に待望の星が待っていた。6イニング3失点(自責1)。今季5度目の先発で初勝利だ。「何かのきっかけになればいい」。視界は開けてきた。
苦しい中、支えとなったのが「真っすぐ」だ。「今日は良かったと思います。2回からはだいぶ“かかって”きました。速さとかではなく、ファウルもたくさん取れたし。いい感覚で指にかかってきた」。9奪三振と力感にあふれた。
独自の「かかる」感覚。それさえあれば速球に命が宿る。他人にはマネできない武器。自分の原点を再確認した1勝だった。 (生駒泰大)
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