タイ:日本人カメラマン含む13人死亡 元首相派強制排除

2010年4月11日 1時4分 更新:4月11日 3時17分

10日、タイのバンコクで軍と衝突するタクシン元首相支持者=AP
10日、タイのバンコクで軍と衝突するタクシン元首相支持者=AP

 【バンコク西尾英之】タイ政府は10日、首都バンコク中心部で反政府集会を続けるタクシン元首相派組織「反独裁民主戦線」(UDD)の強制排除に乗り出した。軍や警察部隊とデモ隊との大規模な衝突に発展し、地元病院によると、ロイター通信の日本人テレビカメラマン、村本博之さん(43)を含む民間人7人と兵士6人の計13人が死亡。ロイター通信によると521人が負傷した。

 タクシン派に対する軍の鎮圧で死傷者が出たのは、昨年4月にUDDの抗議行動が暴徒化した際以来。

 村本さんが運ばれたバンコク市内の病院によると、村本さんは胸に銃弾を受けて死亡したという。村本さんはバンコク情勢取材のため日本から派遣されていた。

 また、AP通信によると、UDDのデモ隊のトレードマークの赤シャツを着た日本人観光客が兵士たちに殴られ、近くにいた人々に助けられたという。

 UDDは3月中旬からバンコク市内で反政府抗議行動を展開。これに対し、タイ政府は7日、バンコクと周辺部に非常事態を宣言。アピシット首相は「デモを終わらせるため、あらゆる手段を取る」と表明していた。

 軍報道官は10日夜、情勢混乱を受け、攻撃の停止を表明。UDD幹部も政府側と交渉に応じる姿勢を示したが、事態が沈静化に向かうかは不透明だ。

 日本人ジャーナリストが海外で死亡した例は、07年9月、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで反政府デモをビデオカメラで取材していた長井健司さん(当時50歳)が軍兵士に至近距離から撃たれて殺害された。また、04年5月、イラクの首都バグダッド郊外で取材していたフリージャーナリストの橋田信介さん(同61歳)とおいの小川功太郎さん(同33歳)の乗った車が銃撃され、殺害された。

 ◇タクシン派と反タクシン派の対立が激化

 タクシン元首相の支持者は、06年に同元首相がクーデターで政権を追われると、「反独裁民主戦線」(UDD)を結成。その後、タイではタクシン派のサマック、ソムチャイ政権が続いたが、08年12月、選挙違反でソムチャイ政権が崩壊し、反タクシン派のアピシット政権が発足。これを機に、タクシン派と反タクシン派の対立が激化した。

 UDDは09年4月、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の主会場に乱入するなどして同会議を中止に追い込んだ。

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