マサチューセッツ工科大学のMBA(MIT Sloan)留学中の2年生。
技術経営、イノベーション論、組織論を学ぶ。
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出版社が早急に実現すべき電子教科書とは
2010年06月05日23時26分 / 提供:My Life in MIT Sloan
先日、田原総一郎さんがこんなTweetをされていた。
出版社・・・本当にそんなこと思ってる?むしろ逆なのに。
出版社が紙の教科書にこだわりすぎると何が起こるか?今は出版社が抱え込んでいる本当にコンテンツを作成する能力がある人たちが、そんな出版社に愛想をつかし、だんだんインターネットや電子書籍の世界に行ってしまうだろう。
前の記事「電子書籍はフォーマットとアプリを制したものが勝つ」でも書いたが、電子書籍で一番大きな事件は、コンテンツが流通やデバイスと完全に切り離されたことだ。(そのために「本の在庫」という概念が無くなったことも含む)だから、コンテンツを保有してる出版社がその下流まで影響を及ぼす、ということが出来なくなった。出版社が、電子書籍への流れを食い止めたいのは、この既存の影響力を保持するためだ。
しかし、コンテンツ自体の価値がまだ残されてることを忘れてはならない。そして教科書会社は、今それと、それを作る人々とのコネクションを多数持っているということ。本当に怖いのは、コンテンツ作成能力がある人が徐々にインターネットや電子書籍に移行してしまい、出版社がそのレベル高いコンテンツを失ってしまうことなのだ。逆に今、電子教科書に移行すれば、質の高いコンテンツを作る新しい人を取り込むことが出来る!
Twitterでこんな教材を紹介してもらった。
高校の化学の教科書がこんなだったら、もっと楽しく化学を学べたかもしれない、という人は多いんじゃないか?教科書会社は、このユーザビリティを備えて、かつ幅広く広範な教科書を作っていくべきなのだ。
だって、こんなのって、教科書がまだ電子化されてないからすごい、と思うだけだ。ぶっちゃけWikipediaや百科事典に載ってるレベルの情報を集めただけじゃん。高校の化学では、もっともっと面白く、難しい概念を沢山やっている。一つ一つの元素でももっと詳しい話や、酸化還元やそれによる電池の仕組みとか、有機化学反応とか。そういうことが、この教材のレベルで電子書籍化されたら、あの時分からなくて苦労したことが、もっと分かりやすくなるのではないか?教科書会社は、持っているコンテンツ作成人材ネットワークを活用して、電子書籍でわかりやすい教材を作っていくことが可能なはずだ。
更に言おう。Twitterで下の趣旨のTweetをしていた方がいた。
電子教科書は、先生がインターネットなどに弱い人であっても、簡単に使い方が分かって、次々と新しい情報を手に入れられるものでなくてはならないと思う。理想的には、先生がいなくても、子供達が自主的に学んでいけるツールであって欲しいと思う。例えば、Google Mapは色々な情報が入っていて面白いが、それを地理の授業に活用出来るのは、本の一部の情報系に強い先生だけだろう。電子教科書では、教科書のページにそういったネット上の情報が自然とリンクされていて、どんな人でも簡単にネット上にある沢山の情報を活用していけるものでなくてはならない。
どうやらiPadのユーザビリティは、それを可能にしているらしい。私の周りの子持ちiPadユーザによると、もうiPadは子供のおもちゃなのだそうだ。デバイスを子供に渡しておくだけで、いつの間にか使い方を勝手にマスターしているらしい。それくらい、直観的なユーザビリティだってことだ。最近は、iPadをパソコンの使い方がいまいち分からない両親にプレゼントするケースが多いという。
先生が「情弱」だったとしても、気軽に使うことが出来るし、それ以上に子供達が自分で簡単に情報を次々に得ることが出来る、これが電子教科書のあるべき姿だ。(そして情弱な先生が「権威」を失わないように、電子教科書を活用した指導要領をちゃんと作って売るのも教科書会社の価値だ)
教科書会社はAppleだのAmazonだのが持ちたくても持てない、「学生全員にリーチする」というスゴイ販路を持ってる。いまの状況ではどんなに良い教科書的アプリがiPad上で紹介されても、使えるのはお金があって、ついでに情報リテラシーもある人だけだ。教科書会社が電子書籍を作ってくれれば、全員が、素晴らしいコンテンツに触れることが出来るはず。
じゃあ教科書会社が強みを生かしつつ、もっと素晴らしいコンテンツ製作者を引き寄せていくためには、どのような電子教科書を作っていけばいいか、夢想してみる。
<英語編>まず、英単語を辞書で調べなくても語彙が出てくるスクロールオーバー機能は当然ついてる。中学・高校までは、学ぶべき文法も吹き出しが出てきて教えてくれる。教科書の英語読むのが苦でなくなるので、リーディングの分量を増やせる。更に知らない単語をハイライトしておくと自動登録してくれて、それに基づいて定期的にテストもやってくれる。そのうち、現在の単語力で読める本をSuggestしてくれる、自動副読本機能。スポーツとか芸術とか科学とか、自分の興味ある分野から副読本を選べる、最強のオーダーメード教科書になる。(MITメディアラボの某氏と議論したときに出てきたアイディアです。感謝。)
ある出版社から話が聞きたいと呼ばれた。教科書が電子教科書になる流れがある。これを一つ持てば小学校から高校までどんな科目も全部間に合う。そこで出版社としてはこの流れをなんとかして止めたいと思っているのだ。電子教科書になれば紙や印刷はおろか出版社の存在も危なくなってしまうからだ。
出版社・・・本当にそんなこと思ってる?むしろ逆なのに。
出版社が紙の教科書にこだわりすぎると何が起こるか?今は出版社が抱え込んでいる本当にコンテンツを作成する能力がある人たちが、そんな出版社に愛想をつかし、だんだんインターネットや電子書籍の世界に行ってしまうだろう。
前の記事「電子書籍はフォーマットとアプリを制したものが勝つ」でも書いたが、電子書籍で一番大きな事件は、コンテンツが流通やデバイスと完全に切り離されたことだ。(そのために「本の在庫」という概念が無くなったことも含む)だから、コンテンツを保有してる出版社がその下流まで影響を及ぼす、ということが出来なくなった。出版社が、電子書籍への流れを食い止めたいのは、この既存の影響力を保持するためだ。
しかし、コンテンツ自体の価値がまだ残されてることを忘れてはならない。そして教科書会社は、今それと、それを作る人々とのコネクションを多数持っているということ。本当に怖いのは、コンテンツ作成能力がある人が徐々にインターネットや電子書籍に移行してしまい、出版社がそのレベル高いコンテンツを失ってしまうことなのだ。逆に今、電子教科書に移行すれば、質の高いコンテンツを作る新しい人を取り込むことが出来る!
Twitterでこんな教材を紹介してもらった。
高校の化学の教科書がこんなだったら、もっと楽しく化学を学べたかもしれない、という人は多いんじゃないか?教科書会社は、このユーザビリティを備えて、かつ幅広く広範な教科書を作っていくべきなのだ。
だって、こんなのって、教科書がまだ電子化されてないからすごい、と思うだけだ。ぶっちゃけWikipediaや百科事典に載ってるレベルの情報を集めただけじゃん。高校の化学では、もっともっと面白く、難しい概念を沢山やっている。一つ一つの元素でももっと詳しい話や、酸化還元やそれによる電池の仕組みとか、有機化学反応とか。そういうことが、この教材のレベルで電子書籍化されたら、あの時分からなくて苦労したことが、もっと分かりやすくなるのではないか?教科書会社は、持っているコンテンツ作成人材ネットワークを活用して、電子書籍でわかりやすい教材を作っていくことが可能なはずだ。
更に言おう。Twitterで下の趣旨のTweetをしていた方がいた。
PCもインターネットも教育の現場に導入されてしばらく経ちますが、何も変わってませんよ。学校の先生が、PCやインターネットでどうやって有用な情報を手に入れて教育に生かしていけばよいか知らないからです・・」
電子教科書は、先生がインターネットなどに弱い人であっても、簡単に使い方が分かって、次々と新しい情報を手に入れられるものでなくてはならないと思う。理想的には、先生がいなくても、子供達が自主的に学んでいけるツールであって欲しいと思う。例えば、Google Mapは色々な情報が入っていて面白いが、それを地理の授業に活用出来るのは、本の一部の情報系に強い先生だけだろう。電子教科書では、教科書のページにそういったネット上の情報が自然とリンクされていて、どんな人でも簡単にネット上にある沢山の情報を活用していけるものでなくてはならない。
どうやらiPadのユーザビリティは、それを可能にしているらしい。私の周りの子持ちiPadユーザによると、もうiPadは子供のおもちゃなのだそうだ。デバイスを子供に渡しておくだけで、いつの間にか使い方を勝手にマスターしているらしい。それくらい、直観的なユーザビリティだってことだ。最近は、iPadをパソコンの使い方がいまいち分からない両親にプレゼントするケースが多いという。
先生が「情弱」だったとしても、気軽に使うことが出来るし、それ以上に子供達が自分で簡単に情報を次々に得ることが出来る、これが電子教科書のあるべき姿だ。(そして情弱な先生が「権威」を失わないように、電子教科書を活用した指導要領をちゃんと作って売るのも教科書会社の価値だ)
教科書会社はAppleだのAmazonだのが持ちたくても持てない、「学生全員にリーチする」というスゴイ販路を持ってる。いまの状況ではどんなに良い教科書的アプリがiPad上で紹介されても、使えるのはお金があって、ついでに情報リテラシーもある人だけだ。教科書会社が電子書籍を作ってくれれば、全員が、素晴らしいコンテンツに触れることが出来るはず。
じゃあ教科書会社が強みを生かしつつ、もっと素晴らしいコンテンツ製作者を引き寄せていくためには、どのような電子教科書を作っていけばいいか、夢想してみる。
<英語編>まず、英単語を辞書で調べなくても語彙が出てくるスクロールオーバー機能は当然ついてる。中学・高校までは、学ぶべき文法も吹き出しが出てきて教えてくれる。教科書の英語読むのが苦でなくなるので、リーディングの分量を増やせる。更に知らない単語をハイライトしておくと自動登録してくれて、それに基づいて定期的にテストもやってくれる。そのうち、現在の単語力で読める本をSuggestしてくれる、自動副読本機能。スポーツとか芸術とか科学とか、自分の興味ある分野から副読本を選べる、最強のオーダーメード教科書になる。(MITメディアラボの某氏と議論したときに出てきたアイディアです。感謝。)
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