死迫る繁殖島、油べっとりペリカン…米原油流出
6月6日12時11分配信 読売新聞
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岩場にたたずむ油まみれのペリカン(3日)=小西太郎撮影 |
米国史上最大となった原油流出事故を前にして、被害拡大阻止で有効策を欠くオバマ政権に対して、国民から批判が強まっており、オバマ大統領は苦境に立たされている。
ルイジアナ州グランドアイルからボートで20分ほどの無人島を3日訪れると、オイルフェンスで囲われ、フェンス際に赤茶けたタールの塊がぷかぷかと浮かんでいた。一部はフェンスをくぐって湿地に達し、草の根が茶色く変色している。ペリカンやカモメ、アジサシの繁殖地として知られる島は、死の気配に包まれていた。
ペリカンが1羽海面でもがく。べっとりと全身を覆う厚い油。見開いた目だけがはっきり見える。岩の上では別の1羽が油まみれで突っ伏して動かない。力尽きたようだ。
案内してくれたアンソニー・シェラミー船長(55)は、島の奥の方の野鳥の群れを見て「彼らもみんな死んでしまう」と悲痛な面持ちでつぶやいた。
原油流出は4月20日、英石油大手BPが運営する海底油田の掘削施設を襲った爆発事故が発端となった。水深1500メートルの油井から、一日当たり1900〜3000キロ・リットルの勢いで原油が噴き出している。
グランドアイルの公民館にBPが設けた補償窓口を訪れたラリー・シッグペンさん(48)は、「昨年12月に40万ドルで買ったキャンプ場は、汚染のせいで客を呼べない。次のローンの返済期限が今月中旬に迫っているのに」とまくしたてた。
BPはこれまで、海底で流出を食い止める方策を幾通りも試みたがことごとく失敗した。噴出口に金属のふたをかぶせ原油を吸い上げる方法は4日、噴出口の上部にふたがうまく納まり、流出に一部歯止めがかかった模様だ。それでも油井そのものをふさぐ根本策が完了する8月までは、流出を完全には抑えられない。流出が収まっても、すでに海面に広がった原油は今後も続々と岸に到達して汚染を拡大する。
原油の除去だけで、これまで10億ドル(約910億円)が費やされたとされる。
オバマ大統領は4日、グランドアイルを訪れ被害が広がる海岸を視察した。3度目の現地入りだ。政府が全力で対応していると訴え、地元民の被害はBPに補償をさせると強調した。
米議会からは、安全審査を行う連邦政府のずさんなチェック体制が事故を招いたと批判が噴出している。
流出を止める技術は政府にはなく、BPにまかせる以外ないのが実情だが、国民には政府が指をくわえているようにしか映らず、不満を増幅している。米大使館占拠に匹敵 米メディアで、今回の流出事故を「オバマのカトリーナ」となぞらえる論調が目立つ。ブッシュ前政権が2005年のハリケーン「カトリーナ」災害への対応の不手際で支持率を急落させたことを想起している。さらに、カトリーナを超え、カーター政権末期を444日間にわたり苦しめた在イラン米大使館占拠事件に匹敵する危機になりかねないとの指摘まで出ている。
最終更新:6月6日12時11分
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