菅直人首相のもとで参院選の勝利を目指す民主党。しかし、選挙に挑む立候補予定者にとっては、2枚看板だった鳩山由紀夫前首相と小沢一郎前幹事長の辞任や新しい内閣の発足はあまりに突然の事態。ポスターを大急ぎで変えたり、自身の肩書をどうするか悩んだりと、その余波は小さくない。
静岡選挙区(改選数2)から出馬予定の会社員、中本奈緒子氏(31)の事務所=浜松市中区。スタッフ2人が5日、窓や壁に張った中本氏のポスター8枚をはがし、下3分の1にはさみを入れた。赤い文字で大書された「鳩山由紀夫」「小沢一郎」の名前と2人の写真の部分を切り離し、中本氏の名前と写真だけの小さくなったポスターを張り直した。
公募組の中本氏を「2人目の候補」として擁立することを決めたのは小沢氏。中本氏は後ろ盾を失った格好となり、スタッフは「鳩山さんと小沢さんの2人が辞めたのは残念で仕方ない」「頑張っていくだけ」とポツリ。
菅首相の地元・東京選挙区(改選数5)から3選を目指す小川敏夫氏(62)は、副総理兼財務相だった菅氏を「東京の顔」として、2人並んだポスターを作製していた。主に菅首相の小選挙区と、民主党の衆院議員がいない「空白区」に集会告知用ポスターとして張り出していた。事務所は「うちは何も変えなくていい」と「予想的中」に胸をなでおろしている様子。
一方、比例代表で出馬予定のある議員は、前首相と一緒に写ったポスターを全国に張り出している。陣営は「張り替えを検討するが、動じることはありません」と話した。
神奈川選挙区(改選数3)で5選を目指す千葉景子前法相(62)の陣営は、選挙運動用法定はがき7万枚余に「法務大臣」の肩書を入れて印刷を済ませてしまった。
ビラやポスターは未発注で、前首相や小沢氏と一緒に撮影したパンフレットなども作製していないため、ダメージは少ない。留任の見通しだが、陣営関係者は「様子見の段階」とやきもきしている。【仲田力行、田村彰子、木村健二】
毎日新聞 2010年6月5日 21時13分(最終更新 6月5日 22時04分)