本田圭佑、プレッシャーの中でつかんだタイトルと自信 (1/2)
■歓喜のウイニングラン
4月24日、VVVはハーレム相手に1−0とリードし、ロスタイムの3分を使い切ろうとしていた。フォルトゥナ・シタルトが2位RKC相手に番狂わせを起こし、2−1で勝利。このままならVVVのオランダ2部リーグ2度目の優勝が決まる。試合中にもかかわらず、観客席では花火が飛び始め、危ないことこの上ない。
本田圭佑がタッチラインを割ったボールを拾った。するとレフェリーが近寄り、もうボールを投げるなと指示した。その瞬間、タイムアップ――VVVが緊張感あふれる重苦しい試合を制し、チャンピオンに輝いた。
優勝盾が本田に手渡され、選手がウイニングランを始めると観客が一斉にピッチに乱入し、カオス(大混乱)となった。気がつくと上半身裸の本田が肩車され、両手をぶるんぶるん回しながらファンにコールを煽っている。「ホンダー! ホンダー! ホンダー!」。サポーターは両手を上下に動かし、キャプテン・ホンダをあがめた。
「全部取られたんですよ。もう気づいたらシャツがなくって、その次に気づいたら靴ひもが半分ぐらいほどかれていてスパイク取られて、レガースもくれみたいな感じで、ソックスもくれと言われて。まあまあ、そこまでかなと思ったら、最後におっさんが寄ってきて、お前のパンツもくれと。いやいや、パンツはいるやろと」
その後、スタジアムで仕事をしていると、サポーターが僕に「本田がそこにいる。サインが欲しいからそのペンを貸してくれ」と言ってきたので、「ああ、いいよ」と貸してあげた。しばらくすると、そのサポーターは「いいだろう」と笑いながらサインをもらったばかりの白い、そして芝生がついたスパイクを見せびらかしにきた。そのスパイクには「K.HONDA」というネームが入っていた。おい、お前が盗ったのか。ファンも本田も実におおらかだ。
■シャドーストライカーとしての覚醒
16ゴール。アシストは公式記録がないが、『フットボール・インターナショナル』誌の集計では13を数える。さらにキャプテン。すっかり本田はフェンロの英雄になった。
「昨季半年、オランダ1部リーグでやっていたので、オランダ独特の“中盤での1対1”に慣れるのが非常に早く、今季はいい形でスタートが切れた。だからこそ、前でビッグチャンスをつかむことが多くなってきた。ミドルシュート、貪欲(どんよく)にシュートを狙うこと、ボールを前のスペースへ(ドリブルで)運ぶこと、相手が嫌がることを常にし続けること。そういったクオリティーが今季一番伸びたところだと思います。来季1部リーグでは簡単にいかないでしょうけど、このスタイルを変えることはまったくない。相手がどんなに一流でも、このスタイルを貫けば、相手も人間なんで嫌がるだろうと思う。ミスもするかもしれませんが関係ない。次も仕掛けます。その姿勢が今年得られたものかもしれない」
しかし、今季「いいスタートが切れた」と言うものの、初ゴールが生まれるまで7試合と、案外時間がかかった(北京五輪のため開幕から2試合は欠場)。
「今でも思い出しますけど、1点目を取るまでは本当に苦しかったです。とりあえず1点目を取ってからすごいリラックスし始めて、(得点への)効率がよくなった。今でも昔のビデオを見ますが、点を取れていないときは無駄な動きが多い。それで大切なところでバテている印象だった」
9月27日のエクセルシオール戦。バイタルエリアから打って、DFに当たってコースが変わったちょっとラッキーなゴールから、本田はシャドーストライカーとして覚醒(かくせい)した。
「ゴールが取れ出してからは、ある程度5割6割でプレーしながら、チャンスになると9割10割へと上げている。だからそこで相手との差をつけて、ゴールに至っている。もしかしたら、こうした(シーズン開幕時のような)壁にもう一度ぶつかるかもしれないんで、そのとき初めてこの経験がいるんじゃないか」
・VVVの本田圭佑「おれは“特別な存在”になる」 (2009/1/16)
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