【コラム】韓国社会に蔓延する「タレント病」(下)

 タレントはベンチャー業、あるいは一発屋的な仕事だ。成功すれば富と名声を一度に手にできるが、失敗すれば明日食べるものに困るほどどん底まで落ちる。韓国放送映画公演芸術関係者の労働組合が昨年、俳優の組合員403人に調査をしたところ、40%が1年間に1回も映画やドラマに出演できなかったと答えた。同組合のムン・ジェガプ政策委員会議長は「組合員の70%以上がひと月に100万ウォン(約8万円)も稼げない」と話す。さらに深刻なのは、タレントの成否を分ける決定的要素が「運」だということだ。予測がつかない大衆の好みに自分の将来を賭けなければならないのだ。

 それにもかかわらず、猫もしゃくしもタレントになりたいというのは、「地道に努力し、何かを一つずつ成し遂げていくようなやり方では、韓国社会では価値をなかなか認められない」という不信感が広がっていることの現れだろう。ある芸能人専門弁護士は「小学生の半分以上がタレントになりたいという国は、ほかに世界のどこにもない。韓国の将来が心配」と言った。タレントを夢見る子供がいてもいい。だが、科学のすばらしさに魅了される子供も、政治的・軍事的な抱負を持つ子供も、純粋に芸術に情熱を傾ける子供もいなければならない。韓国社会がいくら偏向的とはいえ、タレント病が全土に広がれば、将来どうなってしまうのだろうかと心配になる。

崔承賢(チェ・スンヒョン)エンターテインメント部放送チーム長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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