表題に旅の話と書いておきながらも、まずはいきなりこれまでと全然違う写真
から始めます。
こちらのいかにもリビング雑誌にでも載ってそうなお宅は、今回ワタシを欧州
まで招いてくれた恩人の鍵子Lさんちです。
ザルツブルグ中心街から自転車で約15分。庭にプール有り。
隣近所も日本の住居とは違った大きな家ばかりです。
この住居フロア(2フロアです)には、大理石のようならせん階段をぐるぐると
上がっていきます。
こりゃあワタシなら絶対に掃除しきれんな、と余計なことを考えつつたまげるばかり。
ただし借家です(笑)。
家賃は訊ねてませんけど、当たり前ですがウチより全然高いでしょう。
「ワシのおいどん部屋をブログに載せてちょうだい」とのお願いから、ヘボい
写真しか撮れませんでしたが、ご要望通り掲載してみました。
> Lさま。
これでよろしかったでしょうか?
イメージ違ったらごめんなさいね~
今回は自分のブログ史上(笑)、一番長ったらしくかつ自己満足な文面に
なりましたので、エチケットとしてここから下は折り畳んでおきます。
�� * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
��さんとワタシの出会いは、去年の春頃に前のブログへコメントを頂戴したのが
きっかけでした。
"オーストリアに住んでいます"と書いてもらったところで、距離も(そして生活
レベルも)私とはかけ離れてるワケだから、最初は中年男のメシブログなんて
物珍しさで見るかもしれないけど、どうせすぐに飽きられてしまうだろうと
思っていたのです。
私にしたって"だいいちオーストリアって一体どこよ?一生縁が無えなあ"
ぐらいにしか考えておりませんでしたしね。
けれども、その後も不思議とLさんとのテキストのやり取りは続きまして
��さんは音楽でメシを食っていることを教えてもらいました。
ふーん・・・音楽家かあ・・・ますます私とは縁の無い世界だけど、しかし日本人で
外国のオーケストラに所属してるなんてすごいよなあ。
しかしサ、そんなすごい人が一体全体なんでオレのトコなんて来るワケ?
自分で思うのもアレだけど、オレのブログなんて底辺もいいとこだよ??
どう考えてもよくわからんけど、コレってなんかスゴイことなんじゃないの??
いやあ~なんだか笑っちゃうよなァ あっはっは・・・
��さんが所属されているのはカメラータ・ザルツブルグなるオーケストラです。
ザルツブルグを丸一日案内してくれた鍵子Aさんもこちらにおられる方なのです。
��オフィシャルサイト:http://www.camerata.at/)
ウィキペディアで調べてみると、なんでもこちらのオーケストラは50年以上の
歴史があるらしく、"Camerata Salzburg"をgoogleで検索してみれば、
��0万件以上ヒットします。
うむむむむむ・・・自分で勝手に想像してたよりも遥かにスゴそうだな・・・
とは言え、
��さんは地球の反対側に住んでいて、私は声を聞いたことも姿を見たことも無いのです。
あくまでもお互いパソコンに向かってテキストをタイプしているだけ。
本当にLさんがスゴい人であったにしても、私の実生活に登場してくることは
有り得ないし、ネットに繋がらなくなったらお付き合いもオシマイなワケで、
そんなことで実際にお会いするまではあまり現実味を感じていなかったのです。
で、話は急に旅の4日目あたりに飛びます。
あさってから一人でミラノまで旅してきますよ、明日はAさんに教えてもらった
Europarkへ行ってきますよ、なんて話をお酒を飲みながらしておりましたら、
"明日の晩は疲れてなかったら、リハーサルを見に来るのはどうでしょう?"と
��さんが言ってくれまして。
その翌日は初めての単独行動の一日で、かなりクタクタに疲れきっておりました。
正直なところクラシックなんて何もわかんねえし、途中で寝ちゃったらマズいし、
それに寒いし、どうすっかなーバックレて寝ちゃおうかな・・・とも思ったのですが、
せっかく機会を作ってくれたんだし、眠くなったら顔を洗えばとにかくなんとか
なるだろうと考え直して、約束の8時20分にザルツブルグ大学の前で一人待っていました。
"あ~こっちですよこっちー"
休憩時間になったらしいLさん登場。
オレこの中入っていいのかよ・・・と不安たっぷりにLさんに連れられて
ホールへ入っていきます。
ややややや!
��当たり前だけど)外人ばっかりじゃんか!
それに部外者は誰一人いないじゃん!
オレこんなところいられないよ!
私の不安大爆発な気持ちを全く気にせず、Lさんはオーケストラの仲間に
weblogとかなんとか言って私を紹介しています。
何言ってんだよオレのことなんて紹介しようがねえだろうよ・・・
ここでジローラモさんに似た方と握手。
��00%引き攣ってただろうけど一応笑顔で"な、な、ないすとぅみーちゅー"。
"ねえねえオレこんなトコいられないよぉ~他に誰もいないじゃんよ"
"大丈夫よ私の友達なんだから友達は入っていいの"
"だって今まで来た友達ってみんな音楽やってる人でしょうよ"
"んーまぁそうだけどいいの"
"やっぱダメオレ帰るよこんなトコいたら緊張で死んじゃうよ"
"そんなこと言ったら私も帰るよ。いーから座って見ててください"
ここまで来たらどうしようも無いと観念し、私以外誰一人いない客席に座り
とにかく音を立ててはならん、もし出て行けと言われたらどうしようと
カチンカチンな緊張状態でした。
ステージを見ればさすがにワールドワイドなオーケストラだけあって、メンバー
はLさん以外にもアジア系の方はいらして、ほとんどはヨーロッパ系白色人種の
方ですが、アフリカ系の女性もおられます。
なんだかすげえよな・・・
オレ以外に誰も観客席にいないんだよ??
こんなことって本当にあるの??
事前の心配に反して、演奏が始れば眠気が訪れることはありませんでした。
私はこの歳になるまで一度もクラシック音楽を聴いたこと無かったんですが、
彼らの奏でる音楽は、次第に私の心の奥底まで響いて来ました。
なんて書けばあの時の感情を伝えられるんだろう。
聞こえてくる音は、耳に馴染んだいつも聴いてるロックやソウルとは違う。
けれどもステージにいるオーケストラは、オレ達の、アタシ達の魂を込めた
音を心して聴いてくれとばかりに、皆乗りに乗っているのです。
音楽の種類は違えど皆ロックして、スウィングして、グルーブしているのです。
その気合が思いっきり目一杯どぉーんと心に伝わってくるのですよ。
なぜだか涙が出てきて止まらない。
ああ、音楽はなんて素晴らしいんだ!!
�� * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
ミュンヘンからザルツブルグへ戻った今回の旅行の最後の晩、
��さんからオーケストラのコンサートに招待していただきました。
場所は「モーツァルテウム大ホール」。100年近い歴史のある建物です。
事前にLさんから聞いてはいたんですけど、
んまぁ~来てみたらお客さんは皆正装してクロークで上着を預けるような
大変な場所でありまして、セーターGパンにスニーカー&ずた袋なんて
私ひとりしかいないんですよ!きゃあ~助けてぇ~
ついでに書くと、アジア系のお客さんも私以外に一人しかいなかったです。
いんや~どうせ誰も私のことなんて見ちゃあいないんだろうけどさあ
これは肩身狭いっちゅーかメッチャメッチャ緊張しましたですよ。
ほーんと今回の旅行は色んな緊張をしてばっかりです(笑)
この写真の中、ステージ上に小ぃ~さくLさんは写っております。
最後の曲はベートーベンで知らない曲ではあったけど、こうやってマジマジと
聴いてみると斬新なメロディーってことが私でもわかりますね。
写真も途中までどうすっかどうすっかと躊躇してたんですけど、こんな機会2度と無いんだもの。
フラッシュを焚かなければ大丈夫だろうと、両隣(フランソワーズ・モレシャンとジョルジュ・ムスタキ)を
気にしつつ、それでもなんとか写っていたし、それよりも写真が出てきて本当に良かったあー!
演奏は途中休憩を挟んで、都合1時間半ぐらいの素晴らしいものでしたが、
私はオーケストラの演奏に身を委ねながらも、
・自分は今なんでこんなスゴイ場所にいるのだろう
との思いが浮かんできて、頭の中から消え去らないのでした。
だってなんでサ?
オレは英語も喋れないしがないサラリーマンだよ?
どうして今外国にいるの??
* * * 10年前のある晩のこと。 * * *
��ュ~ドロドロドロン
"だ、誰だオマエは!"
"10年後のオマエ自身だよ"
"な、何だ夢かよ。驚かせんなよ"
"今晩は特別にオマエの未来を教えてやるから何でも聞いてみろよ"
"そんじゃあ聞くけどな。その頃オレはまだ今の会社に勤めてるのか?"
"ああ変わらんよ"
"42歳ならそろそろ課長になっていい頃だと思うけどどうだよ"
"残念ながらこれから10年の間に会社にも色々起きて、オマエは回り道をする
ことになる。課長という職種は会社に無くなるが、オマエは主任止まりだ。
ただ、回り道以前に運と実力が無いのかもしれん(笑)。
ちなみに給料はそれなりに上がっているが、賞与は変わらんかもしれん(爆)"
"ちっ、聞かなきゃ良かったよ。だったら世の中はどうなってんだ"
"今よりもずっとインターネットが進んでいるぞ"
"Windows2005とか出てんのか?"
"いや年号を追うのは2000年までで、今度vistaなるもんが出るらしい。
それよりもweblogなるものが流行っていて、何をやっても続かないオマエが
��年近くもほとんど毎日ずっと続けている。"
"なんだそれは?そんなにも面白いもんなのか?"
"まァ日記みたいなもんだ。オマエが書くその日記を世間一般の人が覗いていく。
それを通してオマエには世界中に友達が出来て、その友達を訪ねてヨーロッパを
旅して、一生忘れることのない大切な秋の一週間を過ごすことになるよ"。
"いいかげんなコト言うなこのヤロー!(爆)そんなことあるワケねえだろ!
そんなことよりサ。あのさぁ・・・オレ誰と結婚してんの?"
"・・・・・"
"いくらなんでも40過ぎて一人ってこたあねえだろうし、相手はカワイイのか?
キレイな女か?子供はいくつになってるんだ?"
"おおっと、そろそろタイムマシンが切れてきたんで帰らなくてはな。
何があっても無くてもマジメに自分の信じる道を生きろ。
きっといつか良い日は来る。それまでは挫けずに頑張るんだぞ。"
"あチョットチョット待って。ねぇそこが一番肝心なトコだよ頼むから教えてくれよお~"
��ュ~ドロドロドロン
�� * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
ここ数日の間に有名Jリーガーが移籍することになって、かつて無かっただろう程
ニッポンのマスコミに名前が出ているザルツブルグですが、所詮はヨーロッパの
田舎町です。夜も7時を過ぎれば、ほとんどの店は閉まってしまいます。
コンサートの後、Lさんは最後まで私に付き合ってくれまして
ザルツブルグ駅近辺で唯一開いているこの居酒屋で軽く飲みました。
最後だから「軽く」なんて言わずに「重く」飲みたい気持ちアリアリでしたが、
私は午前2時発のハンガリー・ブタペスト行きの電車に乗って、午前6時に
ウィーンで降りなければならないのです。
ここでいつものように寝過ごしでもしたら、私は翌週会社へ行けないどころか
どうやって日本に帰っていいのかわからない(笑)
実はこの店へ入る前にLさんと少しケンカをしたのですが(笑)、それでも楽しく飲むことが出来ました。
おーしまた来週飲みに行くかあ~てな盛り上がりではありましたが、Lさんとは
多分二度とお会いすることは無いんでしょう。
なんと言っても私の家からLさんちまでは、UFOでも無い限りドアトゥドアで
どうやったって24時間以上かかるのです。
��さんとはザルツブルグ駅前のタクシー乗り場でお別れをしました。
最後はどちらからともなく自然にhug。
だってここはヨーロッパだもん。
親愛の情は身体で示さなくっちゃ。ハハハ!
正月休みはモーリシャスへ遊びに行くかも、なんて言ってたけど、どしたかな・・・
�� * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
ブタペスト行きの国際列車2等車内です。
女の人も椅子を倒して、みんなそのまま寝ています。
話の脈略に全然関係無いけど、この写真は気に入っているので載せました。
問い面に座っている同じアジア人が寝てるうちに写真を撮って、
まさかネットにバカ面写真をUPされてるとは誰も思わんよなあ~(笑)
ま 深夜だもん眠いよね。スイマセン
�� * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
ウィーン西駅へ定刻通り6時前に着いた私は、そのまま空港行きのバスに
乗っても良かったのですが、このままオーストリアを去るには余りにも惜しく、
空港行きの電車が出ているミッテ駅まで歩いていくことにしました。
歩くといっても地図を見ても4キロ以上あり、その地図も心許ないガイド本の
簡単な地図しか持っていないのです。
案の定、途中で道を大幅に間違えてかなりアセりましたが、
それでも私は二度と来ることは無いだろうヨーロッパの光景をたっぷりと
目に焼き付けておきたかったのです。
ヨーロッパの冬の朝は遅いです。
��時を過ぎても薄ぼんやりって感じ。これで7時ぐらいだったかな?
歩きながら、今回の旅は本当に来て良かったなあと一週間を思い出していると、
涙がポロポロ出てきて止まらない。
「うんうん良かった良かった」と心で反芻しながら、他に誰も歩いてないのを
いいことに、しゃくり上げるほど思い切り泣いてしまう。
あの涙はなんだったんだろう。
嬉し涙だったのかな?
それとも翌日からまた現実に戻されてしまうことへの涙だったのか。
私思うに喜びでもあり、もうこれからは感じることが無いかもしれない自分の
「純粋さ」との別離を悲しむ涙だったんじゃないのかな。
そう、それだけ今回私は心の底から旅を楽しんだのですよ。
�� * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
自分用に買ってきたオミヤゲです。結構いいセンスしてるでしょう?(笑)
ずっと大切にしておかなくなくちゃね。
えと、では締めます。
私の人生は多分もう折り返し地点を過ぎていて、
これからまた海外旅行をすることがあるのかわかりません。
旅行から帰ってきて一ヶ月も経ってしまうと、せっかく身につけた「だんけ」や
「ぐーてんもぅげん」や「ぐらっつぇ」や「ぼんじょるのぅ」も、二度とクチにすることも無く、
コレを書いてても本当にそんなこと言ってたんだっけ?なんて思ったりもしています。
それでも私が生きているこの世界には
体験してない事柄や、聞いたことの無い音楽や、出かけたことの無い土地で、
心から感動出来ることがまだまだ沢山ある。
いくつになっても、きっとこれからもずっと。