宮崎県で発生した口蹄(こうてい)疫に対応する「口蹄疫対策特別措置法」が28日、成立した。国主導で、まん延防止策や、農家への支援を推進することが狙いだ。国は、特措法成立を受けて封じ込めを急ぐが、一時より頭数は減少してきたものの発生はまだ収まっていないうえ、殺処分などの対策も遅れている。終息時期はまだ見えない。 (宮崎仁美)
特措法は、家畜伝染病予防法で定めがなかった、感染拡大防止のためのワクチン接種後の殺処分を強制的に行えるようにしたほか、殺処分後の埋却する土地を国が確保することなどを盛り込んだ。
しかし、現地の対応は、十分進んでおらず国の対策が後手に回ったとの批判は避けられそうにない。
農林水産省によると、二十八日までに宮崎県内の口蹄疫発生農場は二百二十四カ所、殺処分対象は約十五万五千頭に拡大した。しかし、宮崎県によると二十七日までに殺処分して埋めた家畜は約九万一千八百頭と、対象の約六割にとどまる。埋める場所の確保が難航し、殺処分が遅れた家畜が、感染拡大を助長したとされる。
さらに、発生地から半径十キロ圏内ですべての家畜を対象にワクチン接種を実施。対象は約十二万五千頭に上り、いずれは殺処分しなくてはならない。
一方、発生地の十〜二十キロ圏内で早期出荷を促し、家畜ゼロの“緩衝地帯”をつくる対策も進んでいない。食肉にならない子豚や、内臓、骨などの処理が区域内では行えず、区域外の処理施設に運ぶことに施設周辺の農家から異論が出て調整が難航しているためだ。
牛や豚を処分した農家は、経営再開への不安を募らせている。
JA宮崎中央会によると、現時点で大半の農家が畜産業を再開する意向とみられるが、個別にどの程度の補償を受けられるのかなどがはっきり分からず、見通しが立てられない状態が続いている。
また、県の種牛にも感染が拡大し特例で経過観察となった五頭を残し、すべて殺処分になる見込みとなり、宮崎牛ブランドも危機にひんしている。担当者は「宮崎の畜産は、一からの出直しになる」と無念さをにじませた。
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