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きょうの社説 2010年6月6日
◎歴史博物館改装 「軍都」施設集積の道筋念頭に
石川県が県立歴史博物館(金沢市)の改装に着手するからには、施設内の機能強化にと
どまらず、中期的な課題とされている「軍都」関連施設を集積させる議論も連動させ、実現への具体的な道筋を示してほしい。兼六園周辺文化施設活性化検討委員会が2006年にまとめた最終報告では、旧県庁舎 石引分室の旧陸軍金沢偕行社や第九師団司令部庁舎を、歴史博物館から県立美術館に至るゾーンに移転する方向性が示された。九師団の兵器庫で重要文化財の歴史博物館のそばに関連施設が集まれば、金沢の軍都としての歴史が鮮明になり、全国でも異彩を放つエリアとなる。 明治、大正期の近代化遺産が並ぶ空間の創出は「兼六園周辺文化の森」全体の魅力を高 めるうえでも極めて大事な視点である。リニューアルされる歴史博物館も、周辺施設の再配置を伴ってこそ、歴史遺産としての建物の価値を最大限に引き出せるだろう。 歴史博物館の入館者数は92年度の17万人をピークに下降し、08年度は8万2千人 と半減した。博物館経営が全国的に苦戦を強いられているとはいえ、歴史博物館は建物の外観だけで人を引きつける魅力があり、15万点を超える膨大な資料も保存されている。それらが十分に生かされていないとすれば、基本構想策定では、展示の在り方や経営手法について抜本的な見直しが必要である。 どれほど学術的に価値のある展示であっても、堅苦しい内容では多くの人を集めること はできない。いつ訪れても同じような印象を持たれていないだろうか。求められるのは利用者の視点に立ち、楽しさや知的好奇心をかき立てるような仕掛けである。歴史博物館の「売り」は何かを明確に打ち出す視点もほしい。 今回の改装は県施設の再生にとどまらず、「歴史都市」金沢にとっても魅力づくりの大 きなかぎを握る。軍都関連施設をいずれ移転させるなら、博物館の機能をそこに分散させる選択肢もあり、基本構想のなかで避けて通れないテーマとなる。いつまでも「中期的課題」とせず、移築させる場所やその活用方法、実施時期などが具体化できるよう努力してほしい。
◎児童ポルノ 強制遮断は対策の一歩
インターネット上の児童ポルノ画像のはんらんに歯止めをかけるには、アクセスを強制
的に遮断することが有効な手立てになる。この仕組みについては、憲法や電気通信事業法が保障する「通信の秘密」との兼ね合いで慎重論も根強かったが、政府のワーキンググループ(WG)が今年度中の導入で合意したのは、児童ポルノ対策を前進させる大きな一歩である。児童の性的虐待シーン、裸などを映した画像や動画は事実上、野放し状態になってきた ため、日本は「児童ポルノ大国」と国際的な批判を受け、早急な対応が求められていた。汚名を返上するにはアクセス遮断に加え、取り締まりの強化も大きな課題である。 画像の単純所持を規制する法案については与野党で議論が中断しているが、主要国(G 8)で単純所持を禁じていないのは日本とロシアだけである。法的な整備についても前向きな検討を望みたい。 警察庁によると、昨年摘発したネット絡みの児童ポルノ事件は507件で、前年の2倍 となった。だが、これは氷山の一角に過ぎない。ネットの画像は簡単に複製されて大量に拡散する。ネットを通じて児童のわいせつ画像を性欲の対象にする愛好者も増えているとみられ、画像のまん延が性犯罪を誘発する恐れも軽視できない。 政府のWGがまとめた対策は、画像を発見した場合、接続事業者がアクセスを遮断して 閲覧できなくする「ブロッキング」を、捜査や削除要請の結果を待たずに即時実施する仕組みとなる。新設するアドレス管理団体が違法サイトをリスト化する。事業者側も大筋で合意しており、足並みがそろえば大きな効果が見込めるだろう。 一方で、利用者の同意がない強制遮断は「私的検閲」との指摘があり、運用次第で過剰 規制になる可能性も否定できない。そうした懸念を広げないためにも、リストの基準づくりには客観性や透明性が求められる。今回の規制は児童ポルノの深刻さを重視した「例外的措置」だが、これを機にネット社会の現実に即した犯罪抑止の在り方についても議論を深めたい。
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