きょうのコラム「時鐘」 2010年6月6日

 4年に一度、即席のサッカーファンになってW杯に夢中になる時が近づいた。本番になると猫もシャクシも応援する。不思議な魅力がある

実に人間くさい競技である。反則すれすれのプレーは当たり前。頭に血が上って退場となる選手が大概出る。選手が抜けて、逆に結束して勝つこともある。審判のえこひいきもある。そんな判定で勝負が決まると、見ている方も血が騒ぐ

超高給取りの選手たちがそろう。自分が一番、オレに任せろというアクの強さをむき出しにする。味方同士が激しく怒鳴り合う。場外では選手が監督を批判し、監督もやり返す。それでいて、建前は「全員サッカー」である

聞き分けの良い選手ばかりのチームもあれば、わがまま選手たちをアメとムチでまとめるサッカーもある。一触即発の緊張感をはらむ集団の方が、もろさもあるが、飛び切りの強さも備え持つ。わが日本は、どっちなのだろう

「全員」好きは、サッカーに限らない。民主党の新代表は、「全員野球」を口にした。建前と本音が違う世界の言葉である。全員サッカーより中身が怪しいことくらい、簡単に分かる。