2009年12月24日 (木)時論公論 「献金問題 問われる鳩山首相の責任」
(藤井キャスター)
鳩山総理大臣は、元公設秘書が在宅起訴されたことを受けて、元秘書の不正を陳謝する一方で、総理大臣は辞任しない考えを示しました。これで説明責任を果たすことができるのでしょうか。城本解説委員がお伝えします。
(城本解説委員)
亡くなった人の名前を勝手に使ったウソの記載。母親からの巨額の資金提供。信じられないような事実が次々に明らかになった鳩山総理の献金問題は、元秘書の在宅起訴という事態になりました。記者会見した鳩山総理は、国民に謝罪する一方で、引き続き総理大臣を務めることで責任を果たすと強調しました。それが国民の理解を得られるのか。政権運営にどんな影響を与えるのか。今夜は、予定を変更して、この問題を考えます。
1時間余りに及ぶ記者会見で、鳩山総理大臣は、自分自身は全く知らなかったとはいえ、結果として巨額の政治資金を不正に処理していた責任を痛感しているとして、改めて国民に謝罪しました。その一方で、政権交代を支持した国民の期待に応えるのが自分の使命だとして、引き続き総理大臣の職責を続けることが自らの責任だとも強調しました。
これをどう見ればいいのか。鳩山総理自身が、国民の理解を得ることは難しいだろうと認めていましたが、この会見で、説明責任を尽くしたとは言えないと思います。
問題となった政治資金管理団体の虚偽記載は、5年間で3億6000万円。関連の政治団体の分も含めると4億円にのぼります。その原資も、鳩山総理の個人資産に加えて、月々1500万円、5年で9億円に上る母親からの資金提供の一部が充てられていました。
在宅起訴された勝場被告は「個人献金が集まらなかったので、他の政治家に見劣りしないように、ウソの記載をするようになった」と動機を話し、鳩山総理も「全てを任せていたので一切知らなかった」と説明していましたが、名前を使われた人の中には、長年の支持者もいます。略式起訴された元会計責任者の芳賀被告も、一切知らなかったとしていますが、二人とも、収支報告書を見たこともなかったということになります。自らの政治資金について、全く確認もしないというのは、やはり信じがたいことですし、本当だとすれば、あまりにも無責任な話です。
また母親からの多額の資金提供についても、親子とも、元秘書らに任せていて、これも一切知らなかったと説明していますが、これも説得力はありません。鳩山家は政界屈指の資産家として知られていますが、桁違いの資金を、どう扱っていたのか、はっきり説明できないこと自体が、常識とはかけ離れた金銭感覚と言わざるを得ません。これで厳しい経済情勢の中で、本当に生活の厳しさ、国民の痛みが分かるのだろうかと思う国民も少なくないと思います。
虚偽記載に使われた以外の資金が、何に使われていたのかという問題もあります。鳩山総理は、私腹を肥やしたり不正に使われてはいないと強調していましたが、政治資金と個人的な資金の境目があいまいな丼勘定になっていたことは確かです。その点の説明も尽くされているとは言えません。
政治家としての責任は明確にできたのでしょうか。
政府与党内には、今回の事件が、ヤミ献金や不正な企業献金ではなく、鳩山総理自身が不起訴となったこと。また、鳩山総理が、税金逃れの指摘を受けた母親からの資金も贈与と認めて修正申告する方針を示したことで、これで幕引きを図れるのではないかという声もあります。
しかし、いくら鳩山家の中の資金のやりとりと言っても、ことは政治資金収支報告書に真っ赤な嘘が書かれていたという問題です。また秘書がしでかしたことだからという言い訳は通用しません。
鳩山総理自身、野党時代には、政治家の秘書の不正が問題になる度に、「政治家は秘書のせいにして責任逃れをすべきではない」と繰り返し批判してきました。その批判が、今回は自分自身に返ってきたわけです。自らの責任をどう考えるのか。なお説明が必要だと思います。
政治とカネの問題はこれだけではありません。西松建設事件では、民主党の小沢幹事長の秘書が逮捕・起訴され、自民党の二階前経済産業大臣の秘書が略式起訴されました。小沢幹事長側は、検察の捜査は不当だと真っ向から争う姿勢ですが、事件を受けて、企業・団体献金を全面禁止する方針を打ち出しています。
しかし、今回は、記載そのものがウソだったという事件です。ここまで来ると、政治資金の規制をいくら手直ししても問題解決にはなりません。政治資金の透明性に重大な不信を招いたことにどう対応するのか。このことも、厳しく問われることになりました。
このように、厳しい批判にさらされ続けて、鳩山総理は、乗り切っていけるのでしょうか。
政権発足から100日。政権交代への期待を追い風に、高い内閣支持率でスタートした鳩山政権も、普天間基地問題での迷走、マニフェスト修正にまで追い込まれた予算編成など鳩山総理の指導力が見えないことで、支持率低下が続いています。ある与党幹部は「世論は厳しいが、自民党の支持率も低迷している。国民の期待に応えるには、鳩山総理でいくしかない」と話しています。
しかし、自民党は、小沢幹事長の政治資金の問題と合わせて、国会で徹底追及する方針です。内閣支持率が更に低下すれば、来年の参議院選挙を前に、与党内の動揺が広がるかもしれません。鳩山総理は、辞めろという国民の声が多数になれば、それを尊重すると明言しました。鳩山総理の進退は、世論がどう判断するかにかかってきたと言えそうです。
鳩山総理は、当選一回の頃、自民党の若手議員とともに「ユートピア政治研究会」を結成し、政治資金の収支を公表しました。当時、取材に対して政治資金の実態を全て明らかにすることが政治改革の第一歩だと強調していたことを、私も記憶しています。以来、政治改革の若手リーダーとして、自民党を飛び出し、一貫して政権交代を訴えてきました。その行動が、今回の政権交代、鳩山総理の誕生につながったことは確かです。
それが、自らの政治資金がガラス張りどころか、出鱈目だったことが明らかになったことは、鳩山総理自身の信用が傷ついただけでなく、政権交代を選択した国民の期待を裏切るものだと言わざるを得ません。その意味で総理大臣としての責任が問われています。
鳩山総理は、政治空白を作らない。つまり総理大臣を続けることが責任のとり方だと繰り返しました。しかし、政治資金の問題で批判を受け釈明に追われているようでは、政治を前に進めることはできません。政治家として、この問題にどうケジメをつけて、信頼を取り戻し、責任を果たしていくのか。鳩山総理には、そのことが厳しく問われています。
投稿者:城本 勝 | 投稿時間:23:56