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■憤懣本舗「郵便が届かない… 郵便局の事情」 2010/05/31 放送

 月曜日は憤懣本舗。

 今回は毎月届いていた郵便物がある日突然、届かなくなったという女性の憤懣です。

 女性は郵便事業会社にそのワケを尋ねましたが、納得のいく説明は無く、不信感を募らせています。




 大阪府池田市に住む60代のAさん。

 30年以上前に夫を亡くし、子供も独立したため今は一人で暮らしています。

 そのAさんのもとに先日、1本の電話がかかってきました。

 <Aさん>
 「NTT西日本大阪料金センターから『電話料金の領収書を送ったんだけれども宛先不明でこちらに戻ってきています』というお電話が自宅にかかってきたんです」

 これまで毎月、NTTから届いていた領収書が、先月届くはずだった3月分だけなぜかNTTに返されていたのです。

 AさんがNTTにその理由を尋ねたところ、担当者は「郵便事業会社がある理由で届けなかった」と答えました。

 その理由とは・・・

 <Aさん>
 「郵便局には名簿があって、この名簿に(名前が)ない人には配達しないそうです」

 実はAさん、防犯面などを考えて電話帳に載せる名前を夫のままにしていました。

 電話の名義も夫のためNTTの領収書は、夫の名前で郵送されていたのです。

 NTTでは実在しない人物の電話名義は好ましくは無いものの、個人の事情によっては例外的に認めているといいます。

 <Aさん>
 「夫は33年前に亡くなったんですね。子供も2歳半と8か月の頃だったんですが、父親の存在を全く覚えていない訳なんですね。せめてこの郵便物が来ることで…父親がいたと。私自身もそれを頼りにといいますかそれをよすがにと言いますか、1人で生きてきたということもあります」

 ところが郵便事業会社は突然、自分達の「名簿」にAさんの夫の名前がないという理由で配達しなくなったのです。


 この「名簿」とは一体どんなものなのか。

 郵便事業に詳しい専門家は業務上、必要なものだと解説します。

 <中央大学法科大学院 野村修也教授>
 「業務として間違わないで届けるために、内部に届け先のきっちりとした情報を持っていることはむしろ仕事をきっちりやっていくためにはそういう物がなければいけない。当然のごとく、配達先についての情報を管理している」

 とはいえ、この3月まで夫の名前で長年郵送されてきたNTTの領収書。

 なぜ、今になって配達されなくなったのか?

 33年前に亡くなった男性の名前を最近、配達名簿から消したとでもいうのでしょうか?

 真相を知るためAさんは郵便局を訪ねましたが、担当者は不在。

 Aさんは夜になって、かかってき電話を録音しました。

 「私の夫がいないとういう情報を知られたということですか?」(Aさん)
 「知られたというかこちらの資料にはそうなっているんです。正当に私どもの方は処理させていただいていて郵便物をお返しさせていただいているということですね」(郵便局担当者)

 「正当な理由をもう少し詳しく教えていただけないですか?」(Aさん)
 「その内容についてお話できないです。郵便局として正式な手続きを踏んだ上での処理でそうなっています」(郵便局担当者)
 「その手続きを教えていただきたいんです」(Aさん)
 「それが言えないんです。それは言えないんです。それが言えたら私も・・・奥さん、それが言えたら私も楽なんですけど言えないんで」(郵便局担当者)
 「言えないというのは?」(Aさん)
 「私も言いたいんですけど言えないんです。奥様がどうしてもということでしたら情報開示を弁護士さんを通して手続きをふんでいただければ見せることは可能です。絶対ダメだ、100パーセントだめだという訳ではない」(郵便局担当者)

 亡き夫の情報がなぜすんなりとAさんに開示されないのか。

 奥歯に物がはさまったようなはっきりとしない担当者の説明にAさんは不信感を募らせます。


 そこで憤懣取材班が取材を申し込み、1週間後、郵便事業会社から文書で回答がありました。

 Aさんの件はプライバシー保護の観点からノーコメントでしたが、一般的な手続きについてこのように説明しています。

 「ご家族などから亡くなられたといった申し出があった時は返還します。申し出がないにも関わらず郵便物を転送・返還することはありません」(回答書)

 どうやら家族からの申し出がない限り名簿から削除はされないようです。

 しかし、Aさんは郵便配達のセクションに夫が亡くなったことを伝えた覚えはありません。

 <Aさん>
 「正式な質問を受けたことは一度もないですし、郵便事業の方にお話ししたことは一度もないつもりです」

 しかし、ひとつの出来事を思い出しました。

 <Aさん>
 「主人が亡くなった時に(学資保険の)集金に来られた時に夫が亡くなったことをお話しました」

 Aさんは子供の学資保険に入っていて、夫が亡くなった際にかんぽには連絡していたのです。

 もちろん30年も前のことですが。

 郵便、ゆうちょ、保険を一元化していた郵政公社。

 民営化にともない3つの事業に分社化されましたが、その際の個人情報の扱いに原因がありそうです。

 <野村教授>
 「そもそも一つの組織の中にあった情報が、今この分社化がなされた後にどういう風な形で情報が管理されているのか。元々保険のために提供した情報、貯金のために提供した情報、あるいは郵便を運んでもらうための情報というものがそれぞれの事業体に切り分けられて管理されているのか、それとも一体の物として管理されているのか」

 郵便事業会社はAさんのケースについて詳細を語りませんが、仮に保険の死亡情報を流用していた場合、担当者が言うように「正当な処理」といえるのか?

 個人情報に詳しい弁護士は、そもそもAさんの意図しない使われ方をしていることは問題だと話します。

 <坂本団弁護士>
 「目的が定められているときはその目的に使うことを前提に差し出しているので、この目的だと思って提供したのに勝手に違う目的に使われる。こうなるとよくない」

 坂本弁護士は、なぜ郵便事業会社がもっと人間味のある対応がとれないのかと首をかしげます。

 <坂本弁護士>
 「同居の家族に対する同意を取る手続きができるにも関わらず、それを取らずに郵便局の判断で勝手に止めた。聞いたらいいだけですよね。極めて簡単に意向確認ができるのにそれを一切せずに判断するとういうのはトラブルにもなるし、よくない」

 手紙や葉書、通信の秘密を守り、厳格に個人情報を扱う姿勢は郵便事業には必要です。

 しかし、夫の名前を勝手に消し去り、納得のいく説明をしない姿勢は利用者を傷つけるだけでなく、結果的に国民の信頼を損ねるのではないでしょうか。




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