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■「『セカンドレイプ』という被害」 2010/06/03 放送

 性的暴行などの被害にあった女性が、保護されるはずの現場で心の傷を負うという実態があります。

 無神経な対応や不用意な言葉によって被害者をさらに傷つけてしまう「セカンドレイプ」。

 この2次被害を防ぐ事ことを含め、被害者救済の新たな取り組みがいま静かに広がっています。




 愛知県を中心に活動するアコースティックデュオ、「PANSAKU」。

  ♪〜
 「ずっとぼんやり眺める街灯の光 その向こう側に もしもあなたがいるのなら 今動けないまま震えてる 私のもとへどうか来てください」(PANSAKUの曲「STAND」より)

 今月1日に発表した「STAND」という曲は、ボーカルの山本恵子さんが実際に体験した性犯罪被害を元に作られました。

 山本さんは6年前のある夜、スタジオから車で帰る途中に突然、車内に入ってきた男に羽交い締めにされました。

 人気のないところまで無理矢理運転させられ、暴行されたのです。

 <PANSAKU 山本恵子さん>
 「私は被害にあってしばらくずっと動けなくてぼんやりしていたんですけど、時間が経った後に自分で着るものを着て警察にいったんですね」

 何とか日常を取り戻した山本さんですが、事件直後、身も心もボロボロの状態で診察を受けた時、医者からかけられた言葉がいまも心に突き刺さっています。

 <山本恵子さん>
 「犯人の証拠を体内から採取したんですけど、一通りのことが終わった後に警察の人がおじいさんのお医者さんに『どうでした?』と聞いたら『精子がうじゃうじゃいるよ』って言ったんですね。自分は汚いなって思った。体の中から汚くなってしまって。自分の存在も汚れてしまって。消えてしまいたいって」

 第3者が性犯罪被害者に不用意な発言をし、さらに傷つけてしまう「セカンドレイプ」です。


 この2次被害対策も含め、性犯罪被害者支援のための画期的な施設が大阪・松原市の病院の一室にこの春、オープンしました。

 <支援員・電話>
 「はいもしもし。性暴力救援センター・大阪です。…ちゃんでしたかね。そうですか、レイプですよね」

 児童相談所からのSOS。

 性暴力救援センター・大阪=通称「SACHICO」(072−330ー0799)は性犯罪被害者からの緊急コールを24時間受け付ける全国初の試みで、被害者に対してすぐに心と体のケアを始められるよう、診察室やシャワールームを併設しています。

 <SACHICO 加藤治子代表(産婦人科医)>
 「ホルモン剤なんです。受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠してしまうので それを妨げる。72時間以内にこの薬が飲めればほとんどの妊娠は避けることが可能です」

 またセカンドレイプを起こさないように、きめ細やかな配慮がなされています。

 <加藤治子代表>
 「ここで面談、お話をうかがうんですけれども、たくさんの人間で取り囲むと怖い思いをさせてしまってお話ができないので、天井にカメラと録音機を取り付けて別室でモニターをする」

 スタートから2か月、電話で寄せられた相談はおよそ110件にのぼり、性的暴行を受けた20人以上の女性が実際に訪れて専門家によるケアを受けました。

 <加藤治子代表>
 「ただ診察をするだけではなく、心のケアも含めて総合的に支援できる態勢がなかったので、ぜひ必要だとずいぶん前から思っていた」

 警察庁によると去年1年間の強姦事件数は、全国でおよそ1,400件。
 
 最近は減っているようにも見えますが、警察発表の数は氷山の一角に過ぎないと言われています。


 関東に住む小林美佳さん。

 いまから10年前、帰宅途中に車に乗った男2人組に車内に引きずり込まれ暴行され、その後、病院でセカンドレイプの被害を受けました。

 <小林美佳さん>
 「明確にこれ2次被害と思ったのが、産婦人科医の男の先生で『とりあえず消毒しとくけどこれで妊娠防げるわけでもないし、何されたかはっきり言えないならちゃんと処置できないから、とりあえずの消毒だ』と。とりあえずという言葉を何度も発したんですね、彼は」

 そうした体験を実名で告白した後、同じ思いに苦しんできた性犯罪被害者からのメールが殺到しました。

 <小林美佳さん>
 「2,600人、2,700人くらい。8割9割の方はほとんど誰にも話していない」
 (Q.警察にも言ってない?)
 <小林美佳さん>
 「警察に届けたのは20人ですよ。自分が汚いものになってしまったと思ってこんな被害を受けたって言えない人がほとんど」

 もう一人。

 関西のAさんは7歳の時、近所の男子中学生に暴行された後、母親の言葉に苦しみました。

 <Aさん>
 「母親から『絶対言ったらアカンよ』 と。『世の中に対して、言ったら後ろ指指される』とか、『女として値打ちなくなったから結婚なんかできへん』って言われたり。自尊感情も持てないし、自己肯定感がないです」 

 母の言葉が結果としてセカンドレイプとなり「あの時、男についていった私が悪かった」という思いに、長年さいなまれてきたのです。


 そのように自分自身をさげすむ傾向は、性犯罪被害者に共通しているといいます。

 <加藤治子代表>
 「私が悪いからこういう目にあったんだと被害者はそう思うから、(被害を)人に言うことはなかなかできない」

 アコースティックデュオの山本さんは「この曲で同じ被害にあったひとにあなたは悪くないというメッセージを送りたい」と思っています。

  ♪〜
 「自分を責めないで 心はあなたのもの」(PANSAKUの曲「STAND」より)

 <山本恵子さん>
 「あなたは傷ついたんだから、あなたは悪くないよ。自分を責めないで。大丈夫だからねと…」

 女性の尊厳を踏みにじる性犯罪。

 憎むべきはもちろん加害者ですが、「セカンドレイプ」にも十分な配慮が必要だという理解がいまようやく広がりつつあります。




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