戦時中、広島県安芸太田町の安野発電所工事に連行された中国人についてまとめた冊子を、広島市の市民団体が発行した。工事を請け負った西松建設に元労働者側が賠償を求めた訴訟をめぐっては、昨年10月に和解が成立。元労働者側を支援する同会は解散を決め、活動の集大成を完成させた。
団体は「中国人強制連行・西松建設裁判を支援する会」。B4判、30ページの冊子に元労働者や遺族、日本人監視員たち計15人の証言を収めた。ある生存者は作業中のけがを放置され、失明した。別の男性は空腹と重労働を耐えきれずに逃げだし、激しい拷問を受けた。過酷な労働実態や苦悩が浮かぶ。
同社との交渉開始から16年に及んだ、和解までの道のりもまとめた。600部を作り、1冊千円(郵送料は別途必要)で販売する。
同発電所では中国人360人が労働を強いられた。同会は提訴前の92年、実態解明のための聞き取り調査を開始。西松建設は最終的に事実を認めて謝罪し、全員に補償するための基金もつくった。
同会の川原洋子事務局長(60)は「多くが無念さを抱えて亡くなった。歴史に埋もれてきた史実を伝えたい」と力を込める。会は、5日に市内で総会を開いて解散。歴史を語り継ぐ会を、新たに結成する。事務局=電話082(293)2774。
【写真説明】完成した冊子を読み返す川原事務局長
|