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番組バックナンバー
目次 > 2010年1月20日放送の番組バックナンバー


貧困ビジネスの実態・・・食い物にされるホームレス
長引く不況で生活保護を受ける人の数がかつてないほどに増えています。
中でも大阪市で生活保護を受ける人は13万5千人と全国最多なんですが、単に不況だけがその理由ではないようです。「貧困ビジネス」とも呼ばれ、生活保護費から利益を得ようとする業者の存在がそこにはありました。

先月25日。大阪市・西成区役所に、多くの人が列を作りました。
この日は、生活保護費の支給日でした。

【生活保護受給者】「気持ち?あんまりエエことない。働きたい、仕事あったらね」
「お国のお金ですので。ちょっと肩身が狭いと言いますか」

不況が長引く中、生活保護の受給者が爆発的に増えています。
特に、大阪市の受給者数は全国最多で、およそ13万5000人に上ります。
2010年度の生活保護費の総額は2888億円にのぼると見込まれています。

【大阪市生活保護調査担当課・平澤宏子課長】「大阪市で言いましたら、20人に一人が生活保護受けている。かなり異常」

                               こうした中、生活保護が今、違った意味でクローズアップされているのです。深夜の大阪市浪速区。路上生活者たちが、夜を越す為に集まります。しばらくすると…。

【社団法人関係者】「はい、1列に並んでよ〜」「おにぎりやからな」「食べてや」「みんな弁当貰ったかなあ?」

社団法人を名乗る彼らは、毎週こうしておにぎりを配っています。そして、時には、生活保護を受ける権利を強調するこのビラを、併せて配ります。

一方、日雇い労働者や路上生活者が集まる西成区。この場に似つかわしくない身なりの男性が、周囲を物色するように見回し、労働者に声をかけています。記者は、彼らに接触してみました。

【不動産関係者と記者のやりとり】「明日からでもすぐマンション入れるわ。
住むところあったらエエんやろ?(金が無いが?)金なんか要らん。金なんか一切要らん。
全部市から出るけん。区役所行って登録したら、国から12万3610円という金が出る。
(なんですか、それ?)生活保護のお金。(やり方分からないが?)こっちがするけん。
こっちの言葉だけ。役所でバンと言ったらうまいこと通る。大丈夫、大丈夫。ええようにしてあげるよ。悪いようには絶対せえへん」「困っとる人を助けるのがワシらの仕事やもん。
困っとるやろ?」

生活保護の誘いは人助けの為だと、話していましたが、次第に本当の目的が・・・。

【不動産関係者と記者のやりとり音活かし】「(不動産屋さんのセールスマン?)そうそうそうそうそう。もとは不動産屋さん。親方が。そこからワシらが委託されて、紹介して、行くんや。そんだけの仕事、ワシらは。(いつも生活保護受けさせてやるって言って誘ってるんですか?)誘ってる」

契約の空きを埋めたい不動産業者が、生活保護の受給代行をエサに、野宿者を誘う構図です。今、生活保護を巡って、慈善事業なのか、ビジネスなのか、判別しにくい勧誘行為が横行しているのです。

その中で、強く悪質性を指摘され、「貧困ビジネス」と呼ばれている業態があります。

まず業者が、路上生活者を誘って、12万円ほどの生活保護費を受給させます。
そこから、住居費や食事代として毎月10万円近くを徴収します。
その結果、受給者に残る生活保護費はわずか2万円ほどになってしまいます。
部屋も食事も劣悪なものしか与えず、業者は多くの差額を手にします。

事実上のピンハネが横行することで、生活保護の総額が膨らむ一因になっていると指摘されているのです。

こうした中で、特に悪質性を疑われている業者があります。大阪市生野区に事務所を構える業者K。支援団体を名乗り、路上生活者を勧誘していたこともあります。
堺市に住む、59歳の男性Aさん。2004年に住みかを失い、大阪市内で路上生活を送っていたところ、業者の男に誘われました。

【Aさん】「『自分のところについて行ったら寝るところと、衣食住が出る』と」。

すがる思いで誘いにのったAさん。早速、指示に従って生活保護を申し込み、毎月12万円ほどを受け取ることになりました。しかし同時に、不可解な契約を結ばされたのです。
まず、この狭いワンルームマンションの家賃として4万円。しかし、この物件、相場は共益費と水道代を入れても3万3千円です。さらに加えて、5万3000円の「サービス料」なるものも。サービスといっても、就職や生活の世話を受けた事はほとんどなく、1日2回、弁当が配達されるだけだったといいます。1食あたり880円。通常の値段の2倍近くもしました。

【Aさん】「弁当は本当にまずねん」「食べたくない感じ。おかずもまずいし、油っこいし」

こうして、毎月の生活保護費は、支給されたその日のうちに業者によって全額が引き出され、Aさんには残りのわずか2万円ほどが渡されるだけでした。

【Aさん】「2万円足らずで電気ガスとか払うと、ほとんど・・・。僕個人の場合は逆に赤字でした」  
大阪市と堺市は、去年からこの業者の調査に乗り出しました。その結果、業者は400人あまりと契約し、最大で通常の1.9倍の家賃を取っていることが判明したのです。 行政の調査を気にしてか、弁当を1食500円に値下げするなどの措置を取りましたが、サービス料が依然、不透明だとして、堺市から改善を求められています。

【Aさん】「まあ結局、ピンハネやからな。役所の生活保護をピンハネということや。 金儲けの手段や。ひどすぎる。貧困ビジネスや」

Aさんは、あまりの生活の苦しさに、弁護士の力を借りて、ようやく業者との契約の一部を解除することが出来ました。

長年に渡り路上生活者を支援している生田武志さんは、生活保護を狙ったビジネスの背景を、こう指摘します。

【野宿者ネットワーク・生田武志さん】「生活保護を受けた元野宿者としては、このまま部屋を出たらまた野宿に戻るのではないかという恐怖がある。そこで簡単にはアパートを出ることが出来ません。社会的な医療とか、雇用とか、生活保護に関するセーフティネットがきちんとしていれば、こうした業者はあまりはびこらないはず」

【業者K関係者と記者とのやりとり】(生活保護をピンハネしている?)「知らない」(生活保護費をピンハネしていると言われていますが)取材拒否と言っていますが。
(どのように思う?)どうも思いません」。

経営者は、再三に渡る取材の要請に、今も応じていません。困っている人の生活を保障し、自立を促すための生活保護。しかし、弱みにつけこんだビジネスによって、逆に自立の妨げになっていないか、検証が求められています。
2010年1月20日放送

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