関西テレビKTV NEWS/スーパーニュース アンカー スーパーニュースアンカー
関西テレビKTV NEWS/スーパーニュース アンカー
番組バックナンバー
目次 > 2010年2月9日放送の番組バックナンバー


佐用町水害半年 避難のあり方を検証、早めの情報提供で人的被害を防いだ自治体
兵庫県佐用町に深刻な被害をもたらした水害から、9日で丸半年です。
一方で、家族を奪われた遺族たちに心休まる日はありません。
18人の死者のうち多くが避難の途中に命を落とすという悲劇的な災害を繰り返さないためにはどうしたらいいのか。ある自治体の取り組みにヒントがありました。

兵庫県佐用町の久崎保育園では、およそ半年ぶりに保育が再開され、子どもたちの元気な声が保育園に響き渡りました。
しかし、まちにはまだあの水害の傷跡が残っています。去年8月、台風9号の影響による豪雨で、多くの犠牲者を出した兵庫県佐用町。
あの日、朝から断続的な雨が降り、まちを流れる佐用川の水位は徐々に上昇。
午後7時すぎから雨が急に激しくなり、8時前には「避難勧告」の基準となる水位に達しました。

しかし、町から「避難勧告」が出たのは、それからおよそ1時間半後のことでした。

                               
避難の途中に8人が命を落とし、1人が行方不明となった本郷地区。


井土一馬さんはあの夜、「避難勧告」を聞いて一緒に避難所へ向かった母のさゆりさんと妹の未晴さんを一度に亡くしました。

(写真(2)一馬君顔アップ)

「家から歩いて避難したけど、まともに普通に歩けなくて横の柵とかをつかみながら手すりがないと歩けない状況だった」「お母さんがこの柵の辺りでバランス崩したんです。それで足を取られて流されてもうて・・・」(井土さん)

普段の何倍にも増水した用水路に、2人は一瞬のうちに飲み込まれてしまったのです。
「当時ゴミが流れてたのをお母さんに見間違えたと思いたくて。お母さんが流れたなんて思いたくなくて。お母さんはいると思ったけどいないし。妹までいなくなっていた」
「ちゃんとした正しい避難勧告が出て、あの時間じゃない早い時間に出てたらこんなことにならんかった」(井土さん)

自宅から200メートル離れた小学校へ避難するには、増水した川と用水路の2箇所を越えなければなりませんでした。
少しでも犠牲者を減らすことはできなかったのか。専門家は、水害における避難の難しさを指摘します。

「途中に川を横切らなければいけないとか道の両側に側溝があるとか、非常に危険なところがあることを事前に分かっていないと、いきなり避難行動をするのはとても危険で、行政もそのことを十分に認識しておかなければいけない」(関西大学環境都市工学部 河田惠昭教授)

佐用町は先月、職員や学識経験者らでつくる「災害検証委員会」を立ち上げました。
「確かに避難勧告が遅かったという点については、あろうかと思うんです。それを含めて今検証委員会で聞き取り調査をしたり、その背景や至った状況を検証していただいておりますんでね」(庵逧典章佐用町長)

 一方で、行政と住民による日ごろの防災活動が、功を奏した例があります。
去年10月、紀伊半島のすぐそばを通過した台風18号。
三重県の尾鷲市では、最大瞬間風速42メートルを記録し、92棟の家屋が被害を受けましたが、1人が軽傷を負っただけでした。
実は、「避難勧告」の出た時点で、すでに8割の住民が避難を完了していたのです。

地域の防災リーダーを務める山西敏徳さん(77)。
台風接近の連絡を尾鷲市から受け、朝から地域の住民に知らせてまわりました。
「危機管理室から電話頂いて、12,13名のお年寄りに連絡とって避難したらどうかですかと話した」(山西さん)

東南海地震が起きると、津波で大きな被害を受けるとされる尾鷲市。
津波の被害状況をCGで映像化したものを一般に公開し、日ごろから頻繁に避難訓練などを行なっていました。
台風の日も、避難場所までの道のどこに危険があるのか、住民自身がよく理解していました。

「常々もう最近は情報が、東南海地震についても多いしね、皆関心があると思うんです。それで皆さん、毎日心がけて生活して頂いておると思います。「逃げるが勝ち!」と、とにかく裸一貫で逃げると」(山西さん)

この日、尾鷲市は午後4時に「避難準備情報」を発令。「避難準備情報」とは、「避難勧告」の前段階として自力で避難できない人などへ避難を促すもので、5年前から全国の自治体で規定されています。
その後も、台風の細かい情報は防災無線を通じて避難所や各家庭に伝えられました。
山間部や沿岸部など地域の異なる状況に応じて避難するよう、10分ごとに繰り返し呼びかけたのです。

一方の佐用町では、「避難準備情報」として防災無線で、サイレンの音を鳴らしていました。
しかし、佐用町が行なったアンケートによると、避難した人で防災無線の情報を「聞いていない」と答えた人が、5割にも上っています。また、防災無線による情報の伝達についても、「大雨で聞こえなかった」「情報が曖昧」など、半数以上の人が「改善すべき」と回答しています。

「避難勧告を出すということは、本部長にとっても勇気と決断がいること。「避難準備情報」をすでに4時の時点で出していたので大抵の方が避難していた。尾鷲市は住民の皆様の理解があった上で避難勧告も出したと思っておる」(尾鷲市防災危機管理室 川口明則室長)

佐用町では先月、犠牲者の遺族たちによる「災害事故を考える会」が発足しました。
彼らは佐用町の検証とは別に、実際に犠牲者の出た場所などを独自に調査。
当時の避難状況を明らかにして、再発防止に向けた検証をしています。

井土一馬さんも、家族の死を無駄にしたくないと、会に参加しました。
「犠牲者には俺のお母さんと妹もおるから放っておけない。最後まで会の活動をやり通そうと思う」(井土さん)

いつどこで起きるか分からない災害。 悲劇を繰り返さないために、行政と地域、そして住民の協力が求められます。
2010年2月9日放送

戻る



Copyright(c)2006 Kansai Telecasting Corporation All Rights Reserved.関西テレビ