碇家は特撮マニアである。
大黒柱の碇ゲンドウ、実は婿養子。彼が好きなのは昭和仮面ライダー。特に仮面ライダーと仮面ライダーBLACKがお気に入りである。
対してその妻、碇ユイはウルトラマンシリーズがお気に入りだった。帰ってきたウルトラマンとウルトラマンレオの動画を、パソコンに保存するくらいである。彼女にウルトラマンを語らせたら、朝まで付き合わせられるとは惣流博士の弁。
そして、その息子碇シンジは両親の嗜好を受け継いだのか平成仮面ライダーと平成ウルトラマンシリーズがお気に入り。勿論、戦隊シリーズも含んで。
そんな仲良し家族の彼らでも、仮面ライダーとウルトラマンを愛するが故に喧嘩する。
即ち、仮面ライダーとウルトラマンはどちらが強いか。比べる迄もなく、サイズが違うが最近のウルトラマンは人型サイズにもなれる。ユイに言わせれば邪道らしい。最も、仮面ライダーも地球の力とカードの力を使って巨大化する。
ゲンドウは特に何も言わない、「これも時代の流れか…」と受け入れている。そう、『時代が望む時、仮面ライダーは必ず蘇る』のだから。
だがゲンドウも当初、龍騎を受け入れなかった。クウガ・アギトはまだ良かったが、龍騎はいきなり十三人のライダーが登場。実態はバトルロワイヤル、戸惑った。
ラスト、主人公の生きざまに涙。本郷猛・南光太郎、ゲンドウが尊敬する偉人に城戸真司が加わった瞬間である。
それを見ていたユイとシンジも感動、シンジは自分の名前に誇りを持った。
そして彼らに試練が訪れる、碇ユイによる人類初のエヴァンゲリオン起動実験。その場にシンジもいた、結果は失敗。周囲は動揺したが、ゲンドウとシンジは慌てなかった。彼らの交わした会話がそれを証明している。
「シンジ、お前も見ていたな。母さんはウルトラマンになったのだ」
と宣う、母のウルトラマン愛を知っているシンジはそれを受け入れる。
ここに赤木ナオコ博士がいたら、全力で否定するだろう。その場にいないのが悔やまれた。
だが、エヴァンゲリオンをウルトラマンと言う彼ら。あながち間違ってはいない、人造人間だけに。供給されるケーブルを抜いたら、三分間じゃなく五分間弱しか動けなくなるところとか。具体的には、ダイナとネクサスに登場した者が近い。ゲンドウは更に衝撃の真実を告げる。
「シンジ、今から九年後に来る使徒に迎撃する為、お前もウルトラマンになれるのだ。それまで体も心も鍛えておいてほしい」
「任せてよ、父さん!」
笑顔でサムズアップをする二人、脳裏に「鍛えてます」と言う仮面ライダーが浮かぶ。
その後、シンジは体と心を鍛えるため山籠り。それを見ていたシンジの幼なじみ綾波レイは、こう呟いた。
「バカばっか」
彼女はアニメ好きである。
息子が頑張る中、ゲンドウも頑張っていた。人類補完計画と称し暗躍するゼーレとの戦い。表向きは彼らに従うフリをしているが反逆する気満々のゲンドウ。その補佐をしていた冬月コウゾウは、こう証言。
『彼らの会談の後、必ず碇は憤る。「おのれ、ゼーレめ!」と』
元ネタを知らない老人、それを聞いたシンジ。
(きっと、怪人を送り出してくるんだ!それに立ち向かう父さん、変身するのかな?)
太陽を背に、変身ポーズをとるゲンドウが思い浮かんだ。
そしてゼーレは完全に秘密結社扱い。これもまた間違ってはいない、シンジが想像した怪人。それに近いものを終盤に出してくる。
ネルフも秘密結社に近いのだが、ゲヒルン時代から、ユイとゲンドウが頑張って人類からは地球防衛軍扱いである。使徒の存在も公表、それを迎え撃つ兵器エヴァンゲリオンはヒーロー扱い。これはユイが熱心に出張した。
周囲は頭を抱えていたが、利点もある。戦略自衛隊との協力関係。これで、来る使徒の襲来に万全に立ち向かえるだろう。
ちなみに、ユイがいなくなった後の赤木博士、惣流博士はどうなったのかというと…
赤木博士は娘と共にネルフに残り、マッドな研究を続けているため問題ない。
問題は惣流博士である、ネルフドイツ支部で、親友のユイの実験失敗を聞き不謹慎ながら、これで特撮話から解放されると喜んだが……今度は娘に悩まされた。
これには実験ばかりで娘を見なかった自分に非はある、あるのだが…
娘の惣流・アスカ・ラングレー、彼女も特撮マニアに染まった。
海外で放送されるパワーレンジャーシリーズに。
自分が、エヴァンゲリオンの選ばれたパイロットで真っ赤な搭乗機を見た瞬間、
歓声をあげた。
これは、自分がリーダーなんだ!と実感。まだ見ぬ仲間を想い訓練に励む。
彼女の努力は報われるだろう、何せ日本には同志がいるのだから。
報われないのは、惣流博士ことキョウコ・ツェッペリン。娘にも親友にも恵まれなかった。
こうして、それぞれの思惑を絡み時は西暦2015年。
使徒、襲来。
シンジとゲンドウ、そしてユイの戦いが始まる。
おまけ
第三使徒戦、呼び出されたシンジ。父の要請を受けエヴァンゲリオンに搭乗。その際、
「エヴァーーっ」と叫んだ。
それを知ったユイは喜び驚異のシンクロ率を記録。
止めは、アンビリカルケージをパージして五分間弱のピンチを作り出し上空にジャンプ、回転しながらキックを使徒に繰り出した。
第五使徒戦、荷粒子砲を放つ敵にネルフ・戦自敗退。だが碇親子は必勝の策があると自信満々。何故と問い掛けたレイに、シンジはこう返した。
「綾波、光は絆なんだ」
首を傾げるレイ。数秒考えて無表情になり得意の台詞を言った。
月を背に始まる迎撃戦。見守る周囲、初号機の全身がA.T.フィールドを利用して光り輝く。その現象に赤木親子はパニック。
初号機、両腕を十字に組んでA.T.フィールドを放った。ぶつかり合う光、競り勝ったのはエヴァ。
第七使徒戦、初めて三機揃ったエヴァにアスカとシンジはテンション高く名乗りを戦隊風にあげる。嫌々ながらレイも名乗った。
「……静かなる蒼、エヴァ零号機」
「穏やかなる紫、エヴァ初号機!」
「燃えあがる紅、エヴァ弐号機!!」
「「「三機揃って……新世紀戦隊エヴァレンジャー!!」」」
何故か、エヴァ三機の背後で爆発。律儀に使徒は、それを見る。名乗りの邪魔をしない戦隊のお約束を本能的に悟っていたのかもしれない。
その後、初号機と零号機の援護を受け弐号機が止め。だが、アスカは慢心せず注意深く観察。巨大化すると警戒、実際には分離。それでも、テンションの高い二機の敵ではなかった。即席で作った合体技に、使徒撃破。夕日を背に佇むエヴァ三機。
その後も、彼らの快進撃は続いたと言う。