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【口蹄疫パニック(下)】機能しなかった「防疫指針」 甘い認識にウイルス猛威 (2/3ページ)
このニュースのトピックス:口蹄疫
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行政はなぜ楽観的だったのか−。
そこには平成12年の口蹄疫発生を小規模な被害で押さえ込んだ、成功体験が影響していた。
今回は発生から約6週間で、殺処分対象の家畜は約18万頭。これに対して前回、北海道と宮崎県で発生したときの殺処分は計740頭。宮崎県では約2週間で封じ込めた。
「前回は幸運だった」。専門家や関係者は口をそろえる。ウイルスを何倍にも増幅して排出する豚に感染しておらず、今回ほど畜産農家が密集していなかったことなどが理由だ。
今回、感染疑い確認の1例目を起点とするなら、殺処分などの初動対応を始めるまでの日数に前回との大差はない。だが、今回は1例目の約3週間前に症状があった水牛の感染疑いを見逃してもいた。
「防疫指針をウイルスが上回ったということだ」。東京大大学院の明石博臣教授(動物ウイルス学)はそう話す。
前回の経験をふまえ、国は家畜伝染病予防法と、具体的な防疫方法を示す防疫指針を整備している。今回、農林水産省や県はこれに沿って対応した。指針には「殺処分は豚を優先」、埋却地が確保できない場合は「(死体を)適当な場所までコンテナ車両を用いて運ぶ」などと定めている。
だが、指針は「最初に感染を押さえ込むやり方」(明石教授)であって、押さえ込めなかった場合のノウハウはない。