【エルサレム=井上道夫】イスラエル内務省は1日までにガザ支援船6隻に乗っていた約680人を取り調べ、そのうち約630人を勾留(こうりゅう)したことを明らかにした。残る50人は国外退去に応じ、近く空路出国する予定。
支援船に乗っていた人の中には、負傷者が数十人いるとみられるが、調べを受けた約680人の中に含まれているかどうかは不明。半数以上はトルコ国籍という。勾留された約630人の一部は抗議の意思を示すため、出国を拒否しているとみられる。
イスラエル政府は船団の死者9人の国籍や名前を発表していないが、トルコ外交筋は1日、AFP通信に対し、少なくともトルコ人4人が死亡したと語った。
支援船団に加わったトルコの慈善団体の説明では、欧米やアラブ諸国など約40カ国の計約750人が乗船していた。多くは人権活動家や市民ボランティア、政治家らだったという。
イスラエル軍の説明によれば、特殊部隊の兵士がヘリコプターからロープをつたって甲板への降下を試みたが、乗員が待ち構えていた。棒状のものでたたかれ、同軍兵士が携帯していた銃2丁が奪われた。その後発見されたが、弾はすべてなくなっていたという。
イスラエル沖を航行する船舶をめぐって、同軍はガザや周辺国に武器が流入するのを防ぐため、厳戒態勢をとっている。昨年11月には、キプロス近くを航行中の貨物船を同軍が拿捕(だほ)、ロケット弾や対戦車砲など武器数百トンが見つかったとされる。イスラエル側は、イランがレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに送ったものとみている。
ただ、今回の強硬手段にイスラエルのメディアの論調はさまざま。日刊紙ハアレツは1日、「イスラエル市民や世界を納得させることはできない」と批判。エルサレム・ポストは1面に「激しい抗議に直面」の見出しを掲げ、世界中のイスラエル大使が駐在国で事情説明を求められている現状を報告し、トルコなどとの外交関係悪化を伝えた。
ハアレツのエルダール論説委員は今回の軍の行動について、船団のガザ入港を認めれば、後に続く団体がでてくる▽軍の力を示すことで抑止力とする腹づもりだった▽軍指導部は自信過剰に陥っていた――と原因を分析している。