2010年4月7日 10時9分 更新:4月8日 13時14分
生命の起源となるアミノ酸が宇宙空間から来たとする有力な観測成果を得られたとして、国立天文台などの日英豪米の国際研究チームが宇宙生物学の専門誌(電子版)に発表した。
アミノ酸は、化学組成は同じだが、鏡で映したように対称な右型と左型の二つのタイプがある。生命のアミノ酸はほとんどが左型で、地球上で発生したという説もあるが、その理由は不明だった。一方、地球上の隕石(いんせき)には左型アミノ酸が多く含まれていることから、偏りの原因が宇宙にあるという見方が浮上していた。
アミノ酸は特殊な光があたると、片方のタイプの割合が増える。国立天文台ハワイ観測所の福江翼研究員らは、広範囲でその光を観測できる装置を開発。地球から1500光年離れたオリオン大星雲の中心部を観測したところ、太陽の25倍ほどの重い星が生まれた領域を取り巻くように、特殊な光が広がっていることが分かった。一方、質量が軽く若い星の周りには、その光は見つからなかった。
これらの結果から、生まれたての太陽系の近くに重い星が存在し、特殊な光にさらされたことが原因で、地球上の生物を形づくるアミノ酸が基本的に左型になった可能性があるとしている。チームは「大質量星周辺の特殊な光によって増えたチリ中の左型アミノ酸が、隕石に乗って地球上に運ばれ、やがて生命の起源になったのではないか」と推測している。【須田桃子】