米国:非保有国に核攻撃せず 戦略指針発表

2010年4月6日 23時43分 更新:4月7日 0時41分

 【ワシントン古本陽荘】米政府は6日、米国の核戦略の指針となる「核態勢見直し」(NPR)を発表した。核拡散防止条約(NPT)を順守する非核保有国に対し米国は核攻撃しないことを宣言。生物・化学兵器を含めた大量破壊兵器の使用に対し核攻撃の可能性を排除してこなかった政策を転換した。また、核テロ、核不拡散への取り組みを初めて米核戦略の優先課題として明確に位置づけた。

 NPRは、米国の核兵器の「基本的な役割」を「米国と同盟国に対する核攻撃の抑止」と表明。核兵器使用を検討するのは、米国と同盟国の死活的な国益を守るための「極端な場合」に限定するとした。

 非核保有国に核兵器を使用しないことを原則とするものの、NPTからの脱退を宣言している北朝鮮、加盟国ではあるものの同条約を順守しているとはみなしていないイランについては、核攻撃の可能性を維持。これらの国を孤立化させることで、NPTを順守するよう圧力をかけるのが新政策の最大の狙いとなる。

 一方で、敵国が核兵器で攻撃してこない限り核攻撃しないと宣言する「先制不使用」は見送り、核攻撃に対してのみ核兵器を「唯一」使用するとの方針についても、「現時点では時期尚早」と結論付けた。

 大陸間弾道弾(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の運搬手段はこれまで通り維持する姿勢を明確にする一方、ICBMについてはすべての多弾頭のミサイルを単弾頭に切り替え、安定性を確保する新方針を打ち出した。

 また、米露間の新軍縮条約調印後も、条約対象外の距離の短い戦術核、配備されずに倉庫に保管されている核兵器の管理などについて、ロシアと交渉を続ける意向を表明。核を含めた戦略対話の相手国としてロシアに加え、中国の国名を挙げた。

 新たな核兵器開発は見送り、現有する核兵器の使用期限を延長する政策を継続する。

 従来のNPRは原則として秘密扱いで一部が公表されていたが、今回は全面的な公開に踏み切った。

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