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殺さないで:児童虐待防止法10年/1(その1) 2歳、ごみ箱で窒息死

 ◇親権喪失の父母、再び

 ひざを曲げられ、肉のそげたおなかにももが押しつけられる。ごみ箱の中は狭く、男児の体にキャベツの芯と紙くずが張り付いた。

 08年12月23日未明、東京都練馬区のマンション最上階。菅野優衣ちゃん(当時2歳)が父親の美広(よしひろ)受刑者(35)=監禁致死罪などで懲役11年が確定=に押し込められたごみ箱は、ベランダでポリ袋をかぶせられ、物干し置き場にゴムひもで固定された。母親の理香被告(35)=同罪で実刑判決後に控訴=がごみ箱を室内に戻した後も夕方近くまで放置され、優衣ちゃんは窒息死した。

 関係者などによると、優衣ちゃんは22日午後、母と参加した地域のクリスマス会で泣き叫んだ。帰宅後、父に腹をけられ、両親や姉が夕食を囲む様子をベランダから立ったまま見させられた。日付が変わるころから台所の出入り口付近に立たされ続けた後、ごみ箱に入れられた。

 手足をベッドに縛り付ける。芳香剤を口に入れる。虐待は優衣ちゃんが1歳半ごろに始まった。「育てにくい子」と両親は自閉症を疑ったが、医師の診察は受けさせなかった。裁判で理香被告は、夫からの暴力のため虐待に逆らえなかったと主張。しかし、携帯電話で夫に「バカの餌も終わった」とメールし、夫のいない時も優衣ちゃんを縛っていた。

 周辺で虐待のシグナルを受け止めた人はいない。「ベランダから泣き声がよく聞こえた。今思えば……」。マンションに住む主婦らは声を落とす。

 虐待対応にあたる区の担当課や東京都児童相談センターは「通告がなく、把握できなかった」と説明する。

 だが実は、父母は母の連れ子の長男も虐待し、同センターが保護していた。03年4月、裁判所から親権喪失宣告まで受けていたが、「兄」の教訓が生かされた形跡はない。

    ◇

 児童虐待防止法成立から10年。2度の改正で、強制調査権付与など児童相談所の権限と責任が強化され、明治以来の民法の親権見直し作業も始まった。しかし、虐待死は後を絶たない。子供の声が届かない背後に何があるのかを追う。

毎日新聞 2010年6月1日 東京朝刊

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