「脱税指南役」民主党ブレーン逮捕の余震月刊FACTA3月 8日(月) 11時29分配信 / 国内 - 政治今回の脱税指南事件は昨年2月、東京・東村山市の不動産会社元社長らが、所得税滞納による差し押さえを免れようとして逮捕された滞納処分免脱事件が発端だった。元社長は、現金など7千万円を知人数人の名義で息子の会社に入金し、息子の会社が知人に債務があるという虚偽の決算書を作成していた。この手口は八木の教えを受けたものだった。 八木は1981年に大学を卒業し、日本マクドナルドを経て88年から住銀リースに勤務。中小企業に対する融資を通じて、債権回収のノウハウを学ぶ。 96年にセントラル総合研究所を設立し、中小企業のサイドに立って、債務の返済をどうすれば合法的に免れるか、アドバイスを開始する。2002年に上梓した『借りたカネは返すな!』は、シリーズ全体で55万部を売り、八木は一躍「中小企業再生の専門家」となった。 こうした八木と民主党との繋がりは、鳩山由紀夫首相の側近で、政権奪取後は首相補佐官(中小企業・地域活性化担当)に任命された中山義活衆院議員(東京2区)によるものだった。 東京・浅草出身の中山は99年、首相の弟、鳩山邦夫が東京都知事選に出馬(結果は落選)したことに伴う補欠選挙で初当選。05年の総選挙では落選するが、民主党が大勝した先の総選挙で復活を果たした。八木との関係が始まったのは、中山の「浪人中」のことだったという。 「八木は東京や大阪で毎月数回、中小企業向けの経営セミナーを開催しているが、その席に浪人中の中山が講師として呼ばれたことがある。中山の秘書がセントラル総研の定例会議に出席していた時期もあった」(セントラル総研関係者) そんな中山が支部長を務める民主党東京都第2区総支部に対し、セントラル総研は07年と08年に計24万円を献金。さらに06年3月には、八木と中山の共著として『金融新時代の再生術』が出版された。 また、セントラル総研の過去の公式サイトには、八木が幹事長時代の首相と会談している写真が掲載されていた。これは民主党政権が誕生した後の昨年 10月に出版された八木の著書『民主党政権で中小企業はこう変わる!』の紹介ページにあったもので、会談の時期は06年6月。声をかけたのは当時浪人中の中山だったという。八木はこの著書の中で08年12月、中小企業の実態について鳩山事務所で民主党議員らに講演したことを明かしている。 実は、八木はさいたま地検に任意同行された1月14日の午前中(逮捕は翌日未明)、首相官邸を訪れている。政府が首相直属の諮問機関として発足させる「中小企業支援会議」作業部会のメンバーに内定していた八木は、会議の事務局長になる中山と打ち合わせをしていたと見られる。 ある検察幹部は「民主党に献金している中小企業の中には、八木から脱税指南を受けた会社が複数ある。金額は数千万円程度で事件化するほどではないが、苦しい財政状況の中で、民主党も徴税の重要性は理解しているはずだ。その民主党が選ぼうとしている人物が脱税指南役なのだから、問題は根深い」と話す。 検察の今回の事件指揮に対して「小沢幹事長の資金管理団体をめぐる捜査と、タイミングが合いすぎている。検事総長人事への介入を目論んでいるとされる小沢民主党への牽制球として、今回の事件が利用されたのではないか」(民主党関係者)という穿った見方もある。さいたま地検は2月3日、八木ら4人を起訴した。さらに間髪を容れず、神戸市の不動産会社が脱税した容疑の共犯で八木を再逮捕した。この先、ある大物の逮捕が囁かれるなど、事件から目が離せない。(敬称略) (月刊『FACTA』2010年3月号、2月20日発行)
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