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「密約文書99年に引き継ぎ」元局長が証言 以後破棄か

2010年3月19日3時5分

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 日米の核持ち込み密約をめぐり、外務省の東郷和彦・元条約局長が1999年に関連の極秘文書を整理して後任らに引き継いだと、密約調査に関する同省の有識者委員会に証言していたことが18日、わかった。9日に報告書を発表した有識者委の調査では、東郷氏が引き継いだとする重要文書が欠落しており、99年以降に破棄された可能性が強まった。

 東郷氏は19日の衆院外務委員会に参考人として出席し、こうした経緯も証言する見通し。岡田克也外相は、文書が破棄されたかどうかの調査に慎重姿勢を取ってきたが、改めて判断が問われそうだ。

 密約調査の関係者によると、東郷氏は条約局長室保管の大量の文書を整理した際、核兵器を積んだ米艦船の日本寄港・通過が核の「持ち込み」に当たらないとする密約に関する文書を、「赤ファイル」として知られる赤い箱5箱にまとめたうえ、文書の一覧表を作成し、保管。有識者委にも示したという。

 文書は60年の日米安保条約改定交渉時や、74年にラロック米海軍退役少将が米議会で核搭載艦船の日本寄港の可能性を証言した際の対応など計58件。当時の外務省条約局長と米政府当局者が会談した60年1月20日付の記録もあり、米側はこの会談で、核兵器配備を否定も肯定もしない「NCND政策」を説明していたという。この文書は今回の調査で見つかっていないが、確認されれば、安保条約改定時、核を持ち込む場合に必要として導入された「事前協議」が、当初から形骸(けいがい)化していた裏付けとなる。

 東郷氏の父、文彦氏が北米局長時代の68年、核持ち込みをめぐる米側の立場や日本の対応を詳細に記した「東郷メモ」、安保条約改定時の「討議記録」も含まれていた。外務省の調査で見つかり、今回公表された「東郷メモ」には歴代の首相らに説明した記録が余白に書き込まれていたが、東郷氏の手元にあったものに書き込みはなかった。説明に使われたものとは別の写しだったと見られる。

 東郷氏は有識者委に対し、これらの文書を99年、後任の条約局長の谷内(やち)正太郎・元事務次官に引き継いだと証言。条約局長最終日の8月30日に作成した「核兵器の寄港・通過問題について」と題した対処方針メモも渡したという。核搭載艦船の寄港・通過を容認する可能性なども含めて少人数での議論を呼びかける内容。メモと文書の一覧表は北米局幹部にも封筒に入れて渡したという。谷内氏は朝日新聞の取材に「東郷さんから説明を受け、もらったものはあるが、中身は知らない」と話している。(倉重奈苗)

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